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の水鳥シャトルの販売量 1 位 ( 約 75%) を占めるヨネックスが 安い輸入品を排除する目的で 輸入品を取り扱う取引先販売業者に対してのみ廉価版ヨネックス製品を提供するとともに バドミントン競技大会主催者に対し 輸入品販売業者の協賛を受けるのであれば ヨネックスは協賛しないとして輸入品を取り扱わ

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第9回 公益財団法人公正取引協会主催「独占禁止法研究会(平成25年度)」 不公正な取引 IV-東京重機工業審決、東急パーキングシステムズ審決- I 競争者に対する取引妨害の禁止 競争者に対する取引妨害は、独禁法19条が禁止する不公正な取引方法の1類型として、 独禁法2条9項6号ヘを受けて、一般指定14項に「自己又は自己が株主若しくは役員で ある会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引につい て、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法もってするかを問わず、 その取引を不当に妨害すること。」と定められている。 競争者に対する取引妨害は、正当な競争による競争者の顧客奪取との区別がつきにくい こと、私的民事紛争の側面を有することが多いこと、一般条項的であることなどから、制 定当初、あまり重要視されず、適用されることも少なかった。しかし、近年では、14項 の適用例が増え、その重要性は高まっている。 14項が定める競争者に対する取引妨害は、「不当」な場合に不公正な取引方法として 違法となる。「不当」とは、公正な競争を阻害するおそれ(以下、「公正競争阻害性」と いう。)があること(2条9項6号)であるが、この場合には、①競争手段の不公正さを 意味する公正競争阻害性と②競争の減殺を意味する公正競争阻害とが含まれるものと解さ れている。①の場合は、行為自体の不公正さ・不当さを問題とし、市場への影響を問題と しない。一方、②の場合は、原則として、市場を画定し、競争の回避効果又は競争者の排 除効果を問題とする。①と②とを区別することは難しく、両者が混在していることも珍し くない。このうち、元来は、①のみが問題となっていたが、近年では、②が問題とされる ことも増えている。 ①が問題とされた事件に、古いが、卸売市場内の競争者のせり場の周囲に障壁を設ける とともに、競争者の取引先(買受人)に威圧を加え、競争者のせりに参加するのを妨害し た熊本魚(株)事件(昭35・2・9審決審決集10・17)がある。近年の事件では、 実際には契約違反(競合避止義務の違反)はないのに、競争者が自己との契約に違反してい るとの自己の認識を当該競争者の複数の取引先に知らせる誹謗中傷により取引を妨害した ドライアイス仮処分申立事件(東京地決平23・3・30、Westlaw Japan 文献番号 2011WLJPCA03306001)(独禁法24条に基づく差止請求認容)がある。 ②のうち競争の回避効果が問題とされる代表例は、総代理店による並行輸入妨害である。 流通・取引慣行ガイドライン第3部「総代理店に関する独占禁止法上の指針」「第三 並 行輸入の不当阻害」は、総代理店が競争者である並行輸入業者の並行輸入を妨害するため に行う、(i)海外の流通ルートからの真正商品の入手の妨害(星商事事件審決平8・3・2 2審決集42・195)、(ii)取引先販売業者に対する並行輸入品の取扱い制限、(iii)並行 輸入品を取り扱う小売業者に対する契約対象商品の販売制限、(iv)並行輸入品を偽物扱い することによる販売妨害、(v)並行輸入品の買い占め、(vi)並行輸入品の修理等の拒否、(vii) 並行輸入品の広告宣伝活動の妨害が、契約対象商品の価格を維持(ブランド内の価格競争 を回避)するために行われる場合に、競争者に対する取引妨害に該当すると述べている。 ②のうち競争者の排除効果が問題とされた事件には、ヨネックス事件(審決平15・1 1・17審決集50・398)がある(公正取引639・80)。本件は、バドミントン

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の水鳥シャトルの販売量1位(約75%)を占めるヨネックスが、安い輸入品を排除する 目的で、輸入品を取り扱う取引先販売業者に対してのみ廉価版ヨネックス製品を提供する とともに、バドミントン競技大会主催者に対し、輸入品販売業者の協賛を受けるのであれ ば、ヨネックスは協賛しないとして輸入品を取り扱わせないようにさせた事件である。 ①の競争手段の不公正さと②の競争者の排除効果とがともに問題とされたといわれる (菅久編著『独占禁止法』180頁(商事法務 2013))のは、第一興商事件(平2 1・2・16審決審決集55・500)である。本件では、1位の通信カラオケ事業者が、 競争者(3位)との間における別件の特許紛争の報復措置として、組織的・計画的に、従 来平穏かつ継続的に行われてきた子会社のレコード会社と競争者との重要な管理楽曲の取 引につき、当該子会社をして更新拒絶させた上で、競争者が当該子会社の管理楽曲を使え ないこととなった旨を競争者の取引先に対し告知して取引を妨害し、競争者の排除を図っ た事件であった。最近のディー・エヌ・エー事件(平23・6・9排除措置命令審決集5 8(第1分冊)・189)でも、①の競争手段の不公正さ(ソーシャルゲーム提供業者の 取引先選択の自由を奪うことを問題とする)と②のうち競争者の排除効果の2つが問題と されたといわれる(公正取引733・91)。本件は、携帯電話向けソーシャルネットワ ーキングサービス(SNS)(ディー・エヌ・エーはモバゲータウン、グリーは GREE)を 登録ユーザーに提供する事業で売上高1位のディー・エヌ・エーが、ソーシャルゲームの 提供において有力であると判断して選定した事業者に対し、2位のグリーが運営する GREE を通じて 新たにソーシャルゲームを提供した場合には、ディー・エヌ・エーが運営 するモバゲータウンを通じて提供するソーシャルゲームのリンクをモバゲータウンのウェ ブサイトに掲載しない措置を採ることにより、有力と判断して選定したソーシャルゲーム 提供業者の少なくとも過半について、GREE を通じて 新たにソーシャルゲームを提供しな いようにさせていた、という事件であった。 公取委の事前相談事例であるが、レーザープリンタに使用されるトナーカートリッジに IC チップを搭載して、トナーカートリッジの再生品取引をさせないようにしていた事例に つき、公取委は、「技術上の必要性等の合理的理由がないのに、あるいは、その必要性等 の範囲を超えて」再生品を利用させないようにする行為は競争者に対する取引妨害に該当 するおそれがあるとしている(公取委「レーザープリンタに装着されるトナーカートリッ ジへの IC チップの搭載とトナーカートリッジの再生利用に関する独占禁止法上の考え方」 (2004・10・21))。 USEN 民事事件(東京地判平20・12・10判タ1288・112)(不法行為とし て損害賠償請求認容)は、競争者を排除する目的で大量かつ一斉に競争者の従業員を引き 抜き、引き抜いた従業員を使って競争者の顧客を奪う行為が、競争者に対する取引妨害に 該当するとされた。本件は、競争手段の不公正さを問題にしたものとみられる。また、最 も最近の事件にタクシー妨害民事事件(神戸地判平26・1・14判例集未登載)(不法 行為として損害賠償請求認容、独禁法24条に基づく差止請求棄却)では、鉄道駅前のタ クシー待機場所を事実上専用してきたタクシー事業者が、新規参入のタクシー事業者の当 該タクシー待機場訴への乗り入れに対し、実力で阻止する旨を通知し、実際に物理的に取 引妨害する行為が、競争手段として不公正であり、公正競争阻害性が認められると判示し ている。当該駅前のタクシー待機場所という市場における競争者の排除効果が認められる

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事件であったともいえるかもしれない。 II 東京重機工業審決(昭38・1・9審決集11・41)(公正取引150・24) 1 事案の概要 東京重機は、家庭用ミシン機、編機等の製造販売業者である。東京重機は、家庭用ミシ ン機及び編機(以下、「ミシン等」という。)を国内向けに販売するに当たり、従来の現 金及び月賦による販売のほか、昭和33年4月から、月掛けの前払いによる販売方法であ る予約販売をも開始し、同社の販売規定の一部として、新たに、昭和34年1月、予約販 売規定を設け、同規定の1の3において、「他社に予約済みのものを当社ミシン又は編機 予約に変更する場合は、他社に払込済の金額を1000円を限度として負担することが出 来る。但し、負担額は予約入金扱とせず、転換又は満期の際に差引くものとする。」こと、 また、2の5において、「他社に予約済みのものを当社ミシン又は編機の現金(又は月賦) に変更する場合は、他社に払込済の金額を1000円を限度として、現金特価(月賦変更 の場合が月賦定価)より値引する事が出来る。団体販売に変更する場合は、当該団体販売 価格で売上げ、金額入金時に負担金1000円を返還する。」ことを定めている。 東京重機の販売員は、ミシン等の販売に当たり、他社と予約販売契約をしている需要者 に対し、他社への掛金の払込みをとりやめてミシン等の購入先を東京重機に変更するよう 勧誘しており、その際、前記の規定に基づき、他社に払込み済みの掛金の全部又は一部に 相当する500円又は1000円を値引きすることを申し出ている。例えば、蛇の目社、 リッカー社と家庭用ミシン機の予約販売契約をしていた東京や鹿児島の需要者に対し、当 該他社への掛け金の払込みをとりやめて購入先を東京重機に変更するように勧誘し、その 際、前記規定に基づき、他社に払込済みの掛金1回分ないし3回分相当額のうち500円 から1000円を値引きすることを申し出、その結果、他社とミシン等の予約販売契約を している需要者のうちには、購入先を東京重機に変更した者が相当数ある。 2 審決要旨 2-1主文 (1)東京重機は、他社と家庭用ミシン機又は編機の購入について月掛けの前払いによる販 売方法である予約販売契約をしている需要者に対し、購入先を同社に変更する場合には他 社に払込済みの掛け金の全部又は一部に相当する金額を値引きするとの申出をし、又はこ れに基づく値引きを実施してはならない。 (2)東京重機は、その販売規定のうちの予約販売規定の1の3及び2の5の各規定を削除 しなければならない。 2-2法令の適用 東京重機は、自己と国内において競争関係にある他社とミシン等の予約販売契約を締結 した者に対して、その不履行を誘引することによって、他社のミシン等の販売を不当に妨 害しているものであり、これは、不公正な取引方法の旧11(競争者に対する取引妨害) に該当する行為を用いているものであって、独禁法19条に違反するものである。

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3 検討 本件では、東京重機は、自己と国内において競争関係にある他社とミシン等の予約販売 契約をしている需要者に対して、他社に払込済みの掛け金を1千円を限度として自己が負 担することを申し出て、他社との予約販売契約を解消させ、自己と取引するように勧誘し ている。 本件行為の公正競争阻害性は、競争手段の不公正さに求められている。市場の画定もな く、行為者の市場における地位についても示されていないからである。しかし、本件行為 は、どのような意味において競争手段として不公正であると評価できるのか、必ずしも明 らかではない。本件のような行為は、自由競争の範囲内の行為なのか、正常な競争手段の 範囲を逸脱する行為なのか、必ずしも明らかではない。 「既に競争業者と契約している者に対して、より有利な条件を提示して、自己と同種の契 約を締結させ、その者の競争者との契約を破棄させること自体は、自由競争の範囲内のもの として許容される。従って、東京重機が他社のミシン等の予約販売契約をしている需要者 に対して、他社より有利な条件を提示して、他社とのミシン等の予約販売契約を解消させ、 自己のミシン等を購入させること自体は、一般指定(旧)11に該当しない。しかし、本 件においては、東京重機は、他社とミシン等の予約販売契約をしている需要者に対して、 単に他社より有利な条件を提示して他社との予約販売契約を解消させようとしているので はなく、他社と予約販売契約をしている需要者に対して、特に他社への払込済みの金額を 1000円を限度に値引きすることによって自己のミシン等を購入させ、他社との予約販 売契約を解消させようとしたのである。すなわち、他社と契約している需要者に対して、 差別的な対価を提示して、他社との契約を解消させたのである。このような東京重機の行為 は、競争業者の取引相手との取引の、競争を阻害するおそれのある妨害であり、一般指定 の(旧)11に該当する。」ともいわれる(神崎克郎・百選(第二版)98頁)。 しかし、他社と契約している需要者に対して、差別的な対価を提示して、他社との契約を 解消させたことが、なぜ競争手段として不公正であるとして評価されるのか、必ずしも明 らかではない。今日では、差別的な対価の提示自体が、不公正な取引方法として問題とな るわけではなく、差別対価(2条9項2号、一般指定3項)は、競争者の排除効果が認め られる不当廉売(略奪廉売)型又は取引拒絶類似(準取引拒絶)型として問題とされるの にとどまるものと解されている(金井=川濱=泉水『独占禁止法[第4版]』(弘文堂 2 013)292~293、295~300頁、白石『独占禁止法[第2版]』(有斐閣 2 013)171頁)からである。 私は、かつて、「既に契約上の拘束を受ける債務者に対し、その義務違反を奨励・助長 し、あるいは少なくともこれを十分に認識しつつさらに債務者との間で取引をなそうとす る競争者の行為は、自由競争の範囲外のものであり、第三者の違法な債権侵害として不法 行為を構成するという上記の学説(民法)や裁判例が、東京重機事件において独占禁止法 上の不公正な取引方法として違法とされる実質的根拠を提示している。ここに、私法秩序 と競争秩序とが相互に連動し合う関係にあることが示されている。」(拙稿「民法と独占 禁止法(上)」法曹時報46・1・1、13~14頁)と述べたことがある(金井=川濱 =泉水・前掲著380頁はこれに賛成する。)。米国では、州法上、他人の契約関係(契 約上の権利)への妨害行為が business tort を構成するものとして取り扱われ、かつて、契

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約破棄の勧誘が不公正な競争方法を禁止する FTC(連邦取引委員会)法5条を構成するも のとして取り扱われていたことがあり、競争者に対する取引妨害を定める不公正な取引方 法の一般指定14項は、これを参考にしたものとみられる。しかし、今日でも、このよう な捉え方を維持すべきかは、必ずしも自信はない。 白石・前掲著285頁は、競争者の顧客に対し、競争者に解約金を負担してまで、自己 と取引するようにさせる行為は、現実の取引社会において日常茶飯事として行われている ことであり、これを規制することは、価格競争を萎縮させることから、不当廉売の基準に より判断されるべきであるとする。このような行為が日常茶飯事に行われているのに、公 取委がこれに規制を加えていないとすれば、公取委は、今日では、本件のような行為を競 争者に対する取引妨害として取り上げないことを示しているのであろうか。しかし、菅久 編著・前掲書178頁は、依然として、成立した契約を不当に破棄させることによる取引 妨害の例として本件を掲げている。 III 東急パーキングシステムズ審決(平16・4・12審決集51・401)(公正取引 645・72) 1 事案の概要 東急パーキングシステムズは、二段方式及び多段方式の機械式駐車装置(以下、「駐車 装置」という。)の販売業、保守業、保守用部品の販売業等を営む事業者である。 駐車装置は、耐用年数が長いことから、経年変化による機能の低下がないようにするた め、常時、当該駐車装置の機能、安全性及び作動の円滑性を確保するべく、適切に保守す ることが必要であり、また、駐車装置の管理業者、所有者等(以下、「管理業者等」とい う。)は、管理し、又は所有する駐車装置を適切に維持するよう努めている。 東急パーキングシステムズは、東急車輌が全額出資しているメーカー系保守業者であっ て、自社が保守契約を締結している管理業者等の東急車輌製駐車装置について保守業務を 行うほか、東急車輌が保守契約を締結している管理業者等の東急車輌製駐車装置について、 東急車輌から委託を受けて保守業務を行っているところ、東急車輌製駐車装置のほとんど の保守業務を行っており、我が国における駐車装置の保守業務において1位の地位を占め る。東急パーキングシステムズは、東急車輌製駐車装置用の保守用部品を一手に供給して おり、当該保守用部品は東急パーキングシステムズ以外からは入手できない。東急パーキ ングシステムズは、自社のパーツセンター及びサービス技術センターにおいて、保守用部 品のうち、取替頻度の高いものなどについて、保守用部品ごとに、その年間出荷数量に基 づき、最低在庫数量と最高在庫数量を定め、在庫数量が最低在庫数量に近づくと部品メー カー等に最高在庫数量と在庫数量の差に相当する数量を発注して補充を行い、常時、最低 在庫数量を上回る数量の在庫を保有し、自社又は東急車輌が保守契約を締結している管理 業者等及び独立系保守業者に供給している。東急パーキングシステムズは、自社の契約先 管理業者等向けの保守用部品の販売価格について、原則として部品メーカー等からの仕入 価格の約2倍としている。 東急パーキングシステムズは、かねてから、東急車輌製駐車装置の保守は自社が請け負 うべきものとの方針の下で受注活動を行ってきたとことろ、独立系保守業者の受注活動が 自社又は東急車輌の保守契約率の低下や保守料金の低下につながるとして、独立系保守業

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者に対して、原則として保守用部品を販売しないこととしていた。しかし、東急パーキン グシステムズは、独立系保守業者に保守用部品を販売しないことは問題があるとの指摘を 受けたことから、平成12年10月ころ、独立系保守業者に保守用部品を販売することに 方針を転換したものの、東急車輌製駐車装置に係る保守契約率の維持及び向上を図るとと もに、保守料金の低下を防止するため、独立系保守業者又は自社と取引のない管理業者等 への保守用部品の販売について、(1)納期は、部品メーカー等に新たに製造委託して保 守用部品を販売する「生産出荷」により対応することを名目として、受注日の3か月後を 目途とする、(2)販売価格は、自社の契約先管理業者等向け販売価格の1・5倍から2 ・5倍(部品メーカー等からの仕入価格の3倍から5倍に相当)を基準とする、(3)販 売数量は、部品メーカー等に新たに製造委託する場合の最低発注可能数量とする、旨の保 守用部品を円滑に入手し得ないようにすることを内容とする販売方針を決定し、社内に周 知した。その後、東急パーキングシステムズは、概ねこの販売方針に沿って、独立系保守 業者等に対する保守用部品の販売を行ってきたが、平成13年10月ころ以降、東日本地 区においては、前記(1)の納期を概ね入金確認日の約1か月後を目途とし、前記(3) については販売数量を独立系保守業者の希望数量とするなどして運用してきた。さらに、 平成14年7月以降、(i)見積依頼に対して速やかに対応を行わないことが少なくない上、 当該申込に係る保守用部品を現に在庫しており、遅滞なく出荷することが出来るにもかか わらず、見積り時においては「生産出荷」を名目として出荷時期を入金確認日の約1か月 後とするなどして、著しく出荷を遅らせている、(ii)現に在庫している保守用部品を販売 しているにもかかわらず、自社の契約先管理業者等向けの販売価格の約1・5倍から2・ 5倍の価格を販売価格とし、西日本地区においては、前記価格を販売価格とし又は部品メ ーカー等に製造委託する場合の最低発注数量を単位としている。 東急パーキングシステムズの上記行為により、独立系保守業者は、東急車輌製駐車装置 の保守業務を迅速かつ低廉に行うことが困難となっており、このため、保守用部品の調達 能力に関する信用を失うことなどにより、東急車輌製駐車装置の管理業者等との東急車輌 製駐車装置についての保守契約の維持及び獲得が妨げられている。 2 審決要旨 2-1主文 (1)東急パーキングシステムズは、東急車輌製駐車装置の管理業者等から委託を受けて同 駐車装置の保守業を営む独立系保守業者に対して、同駐車装置専用の保守用部品を供給す るに当たり、(i)保守用部品を在庫しており、遅滞なく出荷できるにもかかわらず、部品メ ーカー等に新たに製造を委託して保守用部品を販売する「生産出荷」により対応すること を名目として、出荷時期を著しく遅らせる、(ii)合理的理由なく、自社又は東急車輌が保 守契約を締結している同駐車装置の管理業者、所有者等向けの販売価格を著しく上回る価 格で販売し、又は部品メーカー等に新たに製造を委託する場合の最低発注可能数量を単位 として販売することにより、独立系保守業者と同駐車装置の管理業者、所有者等との保守 業務の取引を不当に妨害している行為を取りやめなければならない。 (2)東急パーキングシステムズは、(1)に基づいて採った措置及び今後(1)と同様の 行為を行わない旨を、前記駐車装置の管理業者、所有者等から委託を受けて同駐車装置の

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保守業を営む独立系保守業者に通知するとともに、自社の従業員に周知徹底させなければ ならない。 (3)東急パーキングシステムズは、今後、(1)の行為と同様の行為により、前記駐車装 置の管理業者、所有者等から委託を受けて同駐車装置の保守業を営む独立系保守業者と同 駐車装置の管理業者、所有者等との保守業務の取引を不当に妨害してはならない。 2-2法令の適用 東急パーキングシステムズは、自社と東急車輌製駐車装置の保守業務の取引において競 争関係にある独立系保守業者と東急車輌製駐車装置の管理業者等との取引を不当に妨害し ているものであって、これは、不公正な取引方法の一般指定の(旧)15項に該当し、独 禁法19条に違反するものである。 3 検討 本件は、アフターマーケットの競争のあり方を問う事件であった。本件に従えば、装置 は安く納入してアフターサービス(当該装置の保守点検サービス)で利益を稼ぐビジネス モデルが困難になるかもしれない。本件に従うと、特定メーカー製装置の保守用部品につ いて、メーカー系保守業者は、原則として、事実上、競争者である独立系保守業者に部品 を適時・適量に供給しなければならないことになり、独禁法上本来認められないはずの競 争者に協力する義務ないし競争者を育成する義務があることを認めることにならないかが 問題となる。ブランド内(特定メーカー製装置の部品・保守をめぐるメーカー系保守業者 と独立系保守業者との間の)競争とブランド間(装置メーカー間の)競争の関係も問題と なる。 本件に類似・関連する事例に、三菱ビルテクノ事件審決(平14・7・26審決集49 ・168、公正取引627・66)、日立ビルシステム民事事件(不法行為に該当すると して損害賠償請求認容)(新潟地判平23・1・27審決集・361)があるが、その原 点は、東芝エレベータ民事事件(大阪高判平5・7・30審決集40・651、判例時報 1479・21、判例タイムズ833・62)(不法行為に該当するとして損害賠償請求 認容)にある。 東芝エレベータ事件には原告が異なる2件が含まれていた。1件の原告は、東芝製エレ ベータの所有者(管理者)であり、設置する東芝製エレベータが故障し部品が必要となり、 保守を委託している独立系保守業者には部品調達ができないことから、東芝製エレベータ 部品の一手販売業者(メーカー系100%子会社)に部品の納入を求めたところ、部品の 納入はその取替調整工事と併せてでないとできないという文書を送信してきた。そこで、 この行為は、不公正な取引方法の一般指定10項が定める抱き合わせ販売に該当すると判 示された。他の1件の原告は、独立系保守業者であり、保守契約先の東芝製エレベータが 故障し部品が必要となったことから、東芝製エレベータ部品の一手販売業者に部品の納入 を求めたところ、新たに部品を生産することを前提して部品納入を数ヶ月先に遅らせたこ とから、保守契約先から保守契約を解約された。そこで、この行為は、競争者に対する取 引妨害に該当すると判示された。本件では、安全性確保の必要性とノウハウ秘密保持の必 要性の存否が争われたが、独立系保守業者においても安全性の確保が可能である、ノウハ ウは曖昧でありその秘密保持の必要性が明らかでないと判示された。

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東芝エレベータ事件の最大の争点は、メーカー系保守業者に競争者である独立系保守業 者に保守用部品を供給する義務があるか、にあった(拙稿・前掲論(下)法曹時報46・ 2、1~6)。裁判所は、エレベータの所有者(管理者)に対する部品の供給義務は認め たが、独立系保守業者への部品供給義務まで認めるものではない。しかし、エレベータの 所有者(管理者)に対する部品の供給義務は認めることは、事実上、当該所有者(管理者) が保守業務を委託する独立系保守業者への部品供給義務まで認めることになるものとみら れる。この点について、裁判所は、エレベータのメーカーである東芝とその子会社である 部品の一手販売業者は、東芝製エレベータ及びその部品の数・耐用年数・故障の頻度を容 易に把握できること、並びに、エレベータの所有者が容易にはそのエレベータを他社製に 交換し難い(ロック・インの状況にある)ことを考慮すれば、安全に係る部品を一定期間 常備し、必要の都度、求めに応じて迅速にこれを供給することは、当該部品の販売者であ る東芝ないしその子会社である部品の一手販売業者が負うべき、東芝製エレベータを購入 して所有する者に対する、販売に付随した当然の義務であると判示した。そして、エレベ ータが交通機関の一種であって、これに不備が生じた場合迅速な回復が望まれるのは極め て当然であることからすると、保守契約先でないからといって、手持ちしていた部品の納 期を3か月も先に指定することに合理性があるとは到底みられず、不当とされても止むを 得ない、と判示している。本件では、競争手段の不公正さを意味する公正競争阻害性が問 題とされたものとみられる。しかし、ロック・イン状況にあることを考慮し、市場は、東 芝製エレベータのみの保守市場として画定されると、競争者の排除効果が認められ、ひい てはメーカー系保守業者が保守料金をコントロ-ルできる状態をもたらし、不公正な取引 方法を超えて、排除型私的独占が成立するといえるかもしれない。 いずれにしても、東芝エレベータ事件判決に従えば、東急パーキングシステムズ事件に おいても同じことが当てはまることになる。もっとも、契約法上、装置本体の売買契約に 付随して信義則上部品(特に安全に係る部品)の供給義務が認められるか否か、認められ るとしても、当初の売り主と買い主ではない場合にまで、その権利・義務関係は承継され ることになるのか、という問題がある。また、このような義務が認められる範囲も問題と なる。安全性に係る部品に限定されるのか、また、装置本体が一旦設置されると、相当長 期にわたり他社製の装置に乗り換えることが困難であるロック・インの状況が発生する場 合に限られることになるのか、という問題がある。 なお、日立ビルシステム事件判決は、競争者に対する取引妨害の公正競争阻害性を競争 手段の不公正さに求めている。判決では、競争者に対する取引妨害を禁止する趣旨は、そ のような行為が価格と品質による競争を歪め、顧客の商品・役務の選択を妨げるおそれが あることによるものと解されることからすれば、顧客に対する働きかけについての不当な 手段の判断は、勧誘に用いられた手段が客観的にみて顧客の自由な意思における意思決定 に支障を来す程度のものであった否かによって判断されるというべきである、と判示され ている。本件での顧客は病院であり、そのエレベータの保守業務を原告の独立系保守業者 に委託していたが、故障により部品が早急に必要となり、被告のメーカー系保守業者に部 品納入を依頼したところ、独立系保守業者からメーカー系保守業者へ契約先を切り替える ことを条件に早期の部品納入を行うといわれ、独立系保守業者との保守契約を解約し、メ ーカー系保守業者と新たに契約を締結するに至ったというものであった。裁判所は、顧客

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は保守契約の切り替えを拒むことが著しく困難な状況に置かれたもので、メーカー系保守 業者の勧誘に用いられた手段は客観的にみて顧客の自由な意思決定に支障を来すものとい うことができ、競争者である独立系保守業者の取引を不当に妨害する行為に該当すると判 示している。

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