銀行行動理論展望
吉 尾 匡
ⅠはしがきⅠⅠ.ヴイクセル理論に.おける銀行行動ⅠⅠⅠ.ケイン ズ理論における銀行行動ⅠⅤ.アヴェイラビソティ理論 Ⅴ.銀行 行動と資産選択論 ⅤⅠ.信用割当論 ⅤⅠⅠ.銀行行動と預金者 ⅤⅠⅠⅠ.むすび Ⅰ 深刻な不況からの脱出をはかるため,大患の国債を発行して財政面からの総 需要拡大紅力が注がれているが,・一方,金融政策に.ついても,1930年代のよう にその効果が全く無視されている訳ではない。とこ.ろで,金融政策の効果を論 じる際,現在では,金融機関の行動との関連に.おいて考察されることが多い。 これは∴特に,1950年代に‥おける金融政策の復活を支えたアグェイラビリティ理 論以来,−・般化したことである。アブェイラビリティ理論に∴⊃いては,出現の 当初より,妥当性に.ついて疑問が提出され,多くの批判が展開されて来たが, その理論的・政策的意義は無視できない。われわれは,現在,金融政策を再評 価すべき時を迎えているが,この際,銀行行動に関する諸説を回顧してみるこ ほ,今後を展望する上でも有意義であると考える。 もちろん,わが国は特徴的な金融構造をもっており,欧米の金融政策論ない し銀行行動理論が,そのまま妥当するはずはない。「従来の研究紅とらわれる ことなく考察を進める方が,問題の重要性の認識という点でより有効であると 思われる1)」という指摘は確かに傾聴しなければならない。それに.もかかわら ず,ここではまず,欧米の伝統的理論に.今一度立返り,その意義を探ることと したい。それが,わが国の銀行行動と金融メカニズムをより明瞭に.浮・彫りし, 1)城山昌一イわが国の金融メカニズム・一問題点の提起と整理−」島野卓爾・浜田 宏一腐『日本の金融』岩波沓店,1971年,序章,p.1。香川大学経済学部 研究報告18 ヱ97β −ヱ20− ひいては,日本の金融政策のあるべき方向を示唆する道であると思うからであ る。 そこで,いわゆる銀行行動理論でほないかも知れなV、が,銀行の役割りを考 察する上で重要と思われるグィクセルおよびケインズにまで立返って検討して みよう。 Ⅱ (1)累積過程 周知のように,ブィクセルは自然利子率と貨幣利子率との帝離に・よって物価 の累積的変動が引き起こされると説明する2)。いま,貨幣利子率が自然利子率 よりも低くなった場合を想定し,どのようにして累積過程が発生するかを簡単 に見ておこう(第1図参爬)。貨幣利子率(i)の低下に.より,資本価値が上昇 し,資本財価格(Px)は消費財価格(Pc)よりも相対的に高くなる。このた め紅有利となる資本財生産部門に生産要素が引き抜かれ,資本財生産高(ⅩⅩ) 資本財部門 ‥ て
仁一 −
謹⇒Ⅹオ,Ⅹ。J
==きPc†=⇒R†===>iJ㌔去㌔毎
n†=幸Y†も≒畠 C†SJ
i:袈幣利子率, Pc:消費財価桁, Ⅹc:消費財染渡軋 S:貯 r:自然利子率, PK:賛本財価格 Pト:要素‖面相, ⅩK:資本財生産高 Y:∬幣所得, C:消賢財需署 第 1 囲 2)Ⅹ.Wicksell:GβJdzど乃=紬〃端物勃頑−∫β,.Tena,1898(北野熊音男・服部新」・ 共訳『クイクセル・利子と物価』日本評論社,1939年)。銀行行動理論展望 ーヱ2J− の増大と消費財生産高(Ⅹc)の減少をもたらす■。他方,生産要素の引き抜き は要菜価格(PF)の騰貴を伴うから,これが貨幣所得(Y)と消費財需要(C)の 増加を引き起こすこと紅なろう。また,最初の貨幣利子率の低下は,貯蓄(S) の減少を通じても消費を刺激する。このようにして,山方に.おける消費財供給 の減少と,他方に.おける消費財需要の増大は,必然的に消費財価格(Pc)を 勝負せしめることとなる。この消費財価格が高くなった水準のまま持続すると 予想されれば(予想の弾力性=1),将来収益の増加が見込まれ,これが資本 財価格を−一層勝島せしめる。かくして:物価は累積的に変動してゆくこととな る3)。 (2)累積過程における銀行行動 ところで,このような累積過程を引き起こす貨幣利子率と自然利子率との帝 離(Ⅰ≧i)ほ,どのように.して発生するのであろうか。銀行が自発的に貸出 金利(貨幣利子率)を変化させる場合も考えられるが,ゲィクセル紅よればそ のような場合はさはど多くなく,正常利子率(自然利子率)の変動紅貨幣利子 率が直ちに追随しないために帝離が生ずる場合の方がほるかに.多いと指摘し ている41。 自然利子率(ー)は,生産の収益性・資本景・労働盛:・土地供給の状況等, 国民経済のその時々の一切の事情に依存して不断紅変動するものである5)。産 3)自然利子率と貨幣利子率の帝離とほ別に.,物価変動を引き起す原因として,グイク セルは産金国からの財需要の変化をあげている(K.Wicksell:LectuY・eS On Polit−・ オcαJβc〃形0∽.γ,Vol.Ⅱ,1953,pp.197−8〔掘経夫・三谷友吉共訳『国民経済学講 義・罪2巻』1939年,pp.234一句)。すなわち,産金国の財需要が非産金国の金需要 を上回れば,物価は上昇し,下回れば物価は下落するとしている。しかしこの場合 も,自然利子率と貨幣利子率の帝離を伴うから,必ずしも別の原因と考えなくてこもよ い。金の産出盈ならびに膚金国紅よる財需要が増加した場合,非産金国でほ収益率し たがって二自然利子率が上昇する。これが資金需要を増大せしめ,貨幣利子率も上昇す るが,それは自然利子率の上昇には及ばないであろう。このように.して自然利子率と 貨幣利子率の帝離が発生するのである。 4)Wicskell:Leciures,p.205〔邦訳,p.243〕。 5)Wicksell:Geldzins,SS.97−8〔邦訳,pp.157−8■〕。
香川大学経済学部 研究報告18 −・J22− J97β 金国よりの財需要の増加などもその1例である6)。 これに対し,貨幣利子率 (銀行貸出金利)(i)は一・般に硬直的であって,自然利子率の動きに.直ちには 追随しない。銀行は支払準備ないし流動性の状態紅よってのみ金利を動かすと 考えられている7)。 自然利子率が上昇した時,銀行に過剰支払準備金があれば,したがって銀行 の信用供給能力が大であるとすれば,工>iとなり,これが上向きの累積過程を 発生せしめる。この過程は銀行信用の膨脹濫よって支えられて進行するのであ るが,貨幣所得と物価水準の上昇が銀行からの現金流出を増大させ,やがて支 払準備が低下して銀行の信用供給能力の低下と貨幣利子率の上昇をもたらし, 累積過程を終らせる。このようにして,結局,貨幣利子率は自然利子率に.歩み 寄ること紅なる。 Ⅲ (1)『貨幣論』における価格決定機構 ケインズ『貨幣論8)』に.おける価格決定のメカニズムは,ブィクセルの『利 子と物価』の延長線上紅あるが,価格論の背農紅ある生産構造観は,グィクセ ルが澤線進行的生産構造観であったのに射し,ケインズほ−・歩前進して複線回 帰的生産構造を考えてル、る。すなわら,1一山方では消費財生産部門と投資財生産 部門でそれぞれ生産された財が流通し,消費またほ蓄積されていくという実物 側の経済循環を考え,他方でほ,両生産部門からそれぞれ貨幣所得が発生し, 社会の総貨幣所得ほ消費支出と貯蓄に・分割され,午の消費支出と投資財価格に・ よって規定される投資支出とが各生産部門紅還流するという貨幣の循環を考え る。 以上の経済循環を基礎として2つの基本方程式を導き,消費財価格水準(p) と一般物価水準(方)の決定と変動を説明している。 6)注3)参照。 7)Wicksell:Leciures,p.204〔邦訳,pp.241−2〕。 8)−I・M・Keynes:A7’γ鋸励行♂α柁加わ捌.γ,1930〔鬼頭仁三郎訳『ケインズ貨幣論』 同文館,1933年〕。
−J23− 銀行行動理論展望
(舞1基本方程式)p=+
(第2基本方程式)汀=十
ここで,p:消費財価格水準,方:一−・般物価水準,E:意外の利潤を除く総貨幣所 得額,Ⅰ:純投資額,Ⅰ′:純投資財の生産費,S:Eからの貯蓄,0:社会の純生 産患,R:消費財生産量,である。ところで,(Ⅰ′−S)ほ消費財部門の売上げ (E−S)から同生産費(E−Ⅰ′)を差引いたものであるから,同部門紅おける 意外の利潤に他ならない〔(E−S)−(E−Ⅰ′)=Ⅰ′−S〕。また,第2基本方程式 の(トS)ほ.,全企業の売上高〔(E−S)+Ⅰ〕と総費用Eとの差であるから, 全社会の意外の利潤である。つまり,消費財価格水準ほ平均費用(能率収入率) E/0紅消費財部門の平均利潤(消費財1単位当りの意外の利潤)を加え虎もの であり,−小般物価水準は平均費用に全企業の平均利潤(全生産物1単位当りの 意外の利潤)を加えたものである。それ故,価格水準を左右するものは意外の 利潤の動向,したがって貯蓄と投資の相対的関係である。この貯蓄・投資関係 は市場利子率によって動かされることが多いが,貯蓄=投資を実現する利子率 をゲィクセルに.ならって,自然利子率と呼んでいる9)。したがって,市場利子 率が自然利子率に.等しい場合は,意外の利潤が発生せず,生産物価格水準は平 均費用に.鵬・致して:物価ほ.変化しない。その市場利子率ほ銀行の行動紅よって影 脅されるのである。 (2)『貨幣論』に.おける銀行の役割 銀行組織は,銀行信用の供給能力の諷整を通じて:銀行利子率を変化せしめ, ひいては市場利子率(i)を自然利子率(r・)と異なった高さ紅することができ る。いま,銀行利子率の引き上げに.よって,i>工となれば,・−・方でほ.固定資本 の価格したがって投資財価格(P′)の下落をもたらし,これが投資財生産を 減少せしめる。また,市場利子率の上昇ほ,他方では貯蓄の増加と消費の減少 をもたらし,これが消費財価格を低下せしめる。かくして,両部門の企業者利 9)Keynes,0ク・C姑,Vol,1,p.158〔邦訳,欝2分冊,p・50〕。・−ヱ24− 香川大学経済学部 研究報告18 ヱ97∂ 潤を低下せしめ,雇用の減少さら紅ほ能率収入率(E/0)の低下を引き起こす こととなる(第2図参照)。 舘肝利川
㌔i
急・♂ルS)!=⇒P,庫鴇
芸 −−‥・二 券利州り) 融強の 金︵気 の態弱︶ 衆状・態 公的気状 i:市場利イ軋 S:貯乱 (E−S):消軋 P:披賛財価格水軋 P:摘興掴価格水軋 フて:一俄物価水準,Ⅰ′:技則相成軋 Ⅰ:投馴相撲, 0:′▲ト産札 Eノ0:、四祀腑=能率収入呼) 第 2 鼠 これが,物価水準紅影智を及ぼす主たる作用径路であるが,貯蓄。投資関係 ほ,銀行信用の供給能力を通じて動かされるはか,公衆の金融的状態つまり強 気・弱気の状態の変化に.よっても動かされる。すなわち,強気・弱気の状態の 変化ほ,・一方では貯蓄預金盈の変化を通じて銀行利子率に影響し,他方では 証券価格変化(したがって証券利回り変化)を通じて,市場利子率ならびに.投 資財価格を変化せしめる。 かくして,貯蓄。投資関係が動かされ,諸価格 (p,方)に影替を及ぼすのである。 ところで,銀行ほ信用供給を無制限に増大し得る訳ではない。いま,銀行の 貸出能力が過大であって−i<r・となった場合,投資増加が物価の勝負と能率収 入率の上昇をもたらす。しかし,やがて新しい均衡紅到達したときに.は貨幣の 産業的流通が増大し,貨幣の需要と供給ほ一致して,銀行ほ.過剰な貸出能力を もたず,銀行利子率の上昇をもたらす。このため市場利子は上昇して自然利子 率と一致する紅至る。このように,結局ほ,市場利子率は自然利子率に引き寄 せられることに.なるのである。 (3)銀行貸付市場の不完全性 これまでは,貨幣の需給は完全な市場で行われ,したがって銀行利子率によ−ヱ2∂− 銀行行動理論展望 って貸出額が調整せられると想定してきた。しかしケインズは「銀行貸付に関 する限り,貸出しは−少なくとも英国に‥おいては−完全なる市場の原則に 従って行われるものではない。そこに.は借手の満足されざる従属的部分が存し 勝ちであって,その大きさは拡大または収縮され得る10).」ことを指摘している。 それ故銀行ほ,銀行利率の水準・借手の需要表または銀行以外の貸出額に何等 の変化がなくても,銀行からの貸付額を変化せしめ,ひいてほ投資患に・影響を 及ばすことができるのである。E,れはいわゆる信用割当て(credit rationing) 軋他ならない。ケインズによれば「英国においてほ,借手に対する銀行の態度 の中に割当て−の習慣的な制度が見出され−すべての個々人に・貸出される額 は,単に提供される担保と利子歩合によってではなく,借手の目的および大切 なまたは有力な得意先としての彼の銀行に.対する地位に・関連してこ支配され る1い。」このことは英国のみならず,ケインズがはるかに自由競争的であると 考えた合衆二国の市場12)において:も妥当するこ.とであろうし,また,わが国の 貸付市場を考察する場合には殊に看過すべからざる点であると思われる。 (4)『・一般理論』匿おける銀行行動 『貨幣論』が価格水準を問題にしたのに.対し,『一般理論』が雇用ないし産 出高を問題に.したことは改めて言うまでもないが,・その産出高に・影響を及ぼす 要因として銀行信用の増加をあげている131。しかし,銀行組織の貨幣供給者と しての意義を無視している訳ではないが,『・一般理論』においては,その分析 の重点は公衆の貨幣需要の側に届かれていて,銀行組織の行動を追究してはい ない。『貨幣論』に.おいて−は,その作用径路の中でむしろ従属的位置しか与え られていなかった公衆の金融的状態つまり強気・弱気の状態の分析を,『一一・般
10)Keynes,Ob.cit.,Vol.1,p.212〔邦訳,欝2分冊,p・1241〕。
11)Keynes,Ob.cit.,Vol.2,P.365〔邦訳,算5分冊,p・210〕。
12〕J∂オd.,Vol.2,p.365・ 13)J.M.Xeynes:TゐβGβ〝β′・αJTカβ〃7二γ〃ノ■E研♪わγ沼β玖J乃fβrβ・ざ≠α〝d駒形β.γ, 1936,p.83〔塩野谷九十九訳『雇傭・利子及び貨幣の−・般理論』東洋経済,19叫 p・104こ〕。香川大学経済学部 研究報告18 −・J26− ヱ97β 理論』に・おいては流動性選好理論として発展せしめ,中心的な役割を与えてい る。それ放,それぞれの執筆の意図からの当然の結果でほあるが,銀行行動理 論という観点より見る限り,『−・般理論』は『貨幣論』よりも後退したもので あることを否定するととほできない。 また,ケインズまでの諸理論に.おいては,中央銀行の行う金融政策成否の鍵 を撮るものとして市中金融機関の行動を認識することはなかった。政策当局と 銀行組織とははとんど−一体として:とらえられ,銀行組織株政策当局とは独立的 な行動をとる主体として−ほ取扱われでいない14)。 ⅠⅤ (1)金融政策の没落と復活 ケインズがその理論構成に.おいて貨幣ないし利子率に中心的な役割を与えつ つも,流動性選好関数が利子率の低い水準では無限に.弾力的紅なる(liquidity t工・apが存在する)ことから,金融政策の無効を主張し財政政策の必要性を強 調したことは,改めて言うまでもない。これ紅加えて,オックスフオ」−ド調査 等によって,投資の利子弾力性が非常にノJ\であることが確認されるに.およん で,金融政策の没落ほ決定的となった。このような事態は1930年代の大不況期 を特徴づけるものであった。それ紅続く1940年代の前半は,第2次世界大戦中 であって政府に.よる資金統制は実行されても,自由な金融政策などほ.あり得な かった。1940年代後半は.戦後の経済的混乱の時期であった。日本やドイツなど の敗戦国でほ激しい戦後インフレを経験し,これが戦時中紅蓄積された膨大な 国債の価値を低下させ,事実上,これを切り捨ててしまったが,アメリカやイ ギリス紅おいては国債に悩まされ続けることとなる。第2次大戦後のアメリカ では,一般企業も商業銀行も多額の公債を所有しており,その売却に・よって通 貨需要を満たすことができた。この公債(特紅短期政府証券)売却紅対し,連 邦準備銀行が無制限に.買い向かわざるを得なかったのは.,財務省が公債価格の 14)例えば,Ⅹeynes;GeneralTheory,p・205〔邦訳,p・249)9
銀行行動理論展望 −∫27− 低落と利回りの高騰を忌避したからであった。その時期に.ほ,通貨ほ民間の望 むままに.供給されたわけで,金融政策は不在の時期であったと言うことができ る。 財務省当局は,投資の利子非弾力性に.立脚し,金融政策の有効性を否定する と共に,国債管理上の観点から政府証券価格の維持と利回りの低位安定化を主 張したのであった。これに.対し連邦準備制度ほ,民間信用膨脹を防ぐことに.よ りインフレ−・ジョンを抑制することが急務であるとし,国債管理政策と矛盾し ない程度の政府証券利回りのわずかな上昇でも引締め効果を上げることができ ると主張した。この論争ほ1951年3月のいわゆる「了解(accoI・d)」によって 一応終結し,金融政策の復活を迎えることとなったのである15)。この時,連 邦準備制度側の主張を支えた理論が,特に.ロ−ザを中心とするアヴェイラビリ ティ理論である。 (2)アグ工イラビリティ理論の概要 ロ−ザはその画期的な論文「利子率と中央銀行16)」に.おいて,ブィクセルの 『利子と物価』からケインズの『−一・般理論』に㌧至るまで,次の3つの基礎的命 題を暗黙のうちに.容認して1、ることを指摘する17)。 ① 中央銀行の利子率変更ほ.商業銀行の利子率をそれに.対応して変化せしめ る。 ④ 長短あらゆる利子率が同時的に.変動する。商業銀行利子率の変化は短期 市場に拡散し,中・長期債軋も波及する。 ⑧ 投資は利子弾力的である。貯蓄もおおむね同様である。 しかし現実紅は,公定歩合の変更は貨幣当局の信用情勢に対する公式判断と して注目されるのみであり,短期利子率の変化が地の利子率紅波及する程度は 15)戦後アメリカの金融政策の推移についてほ,伊東政吉『アメリカの金融政策−そ の論争点の分析−−』〔一層大学経済研究道春・19〕(岩波書店,1966)に詳しい。 16)R.Ⅴ.Rosa:‖InteIeSt Rates and the CentzalBank,”Monqy,Trade
β即偶の抑わ(み・の現場j〝助〝〃′・〃ノ■.ハ摘花.甜石材.γ Ⅳよ−JJ査α∽.ざ,1951,pp.270「295〔水
野正一・・山下邦男監訳『現代の金融理論Ⅱ』勤草寄房,1966年,罪4車,pp.103∼131〕。 17)∫∂よ■dリ p・273〔邦訳,p・106〕。
香川大学経済学部 研究報告18 J97β ーJ2β− 弱く,また,利子費用ほ無視し得る程にノJ\さかった。したがって,投資が利子 非弾力的であることほ否定し得なかった。そこで,ロ−・ザが投資に作用するも のとして重視したのほ「信用の利用可能性(credit availability)18)」である。 アヴェイラビリティ理論と称せられるゆえんである。 ロ−ザがこのように考える背景に.は,第2次大戦後におけるアメリカの金融 構造の変化がある。すなわち,①金融市場に.大屋の公債が累積していること, ㊥各種貸手の相対的重要性が変化し,かつそれら各種貸手の資産選択にはそれ ぞれ特殊性があること,そして⑨貸付資金市場紅.は不完全競争的性格がある こと,等である。①について:ほ前述のように.,籍2次大戦以来,国債を中心 とする金融資産が多鼠に蓄積されていたことが,金融政策不在の1因になった と思われるが,アグェイラビリティ理論でほ,これらの金融資産をめぐる市中 金融機関の行動が,かえって,金融政策の効果を保証する根拠にもなり得ると 考える。すなわち,金融機関の資産構成において−政府証券の占める比重が著し く大に.なったことから,金融政策によって引き起される政府証券の価格ないし 利回りのわずかの変動に.対しても,貸手(金融機関)はかなり敏感紅反応し, 信用のアヴュイラビリティが左右されると見るのである。これを一般にロ−ザ 効果(Rosa effect)と呼んでいる。⑧の点に.関して一ほ,民間貸付けよりもむ しろ公債の保有を選好する傾向のある貯蓄貸付組合。保険会社。相互貯蓄銀行 ・年金基金等の,商業銀行に対する相対的比歪が高まったことによる効果が考 えられる。 そして,⑧が注目すべき点である。もし貸付資金市場が不完全で,借手が現 行の利子率を容認しても欲するだけの資金を借入れることができないというの が実情であれば,何が投資恩を左右するのであろうか。それほ結局,企業の利 用し得る資金昂であるが,企業が現に.保有する資金嵐を−・定とすれは,利用可 能な資金昂は金融機関からどれだけ借入れ得るかに.依存する。つまり,信用の アグェイラビリティ紅左右されるのである。したがって事実上は,貸手の判断 18)言うまでもなく,信用のアブェイラビリティとは商業銀行その他の金融機関の「追 加的貨幣ないし信用を創り出す意欲と能力」を示す概念である。これは借手の側から 見れば,資金社得の難易の程度を示すものである9
銀行行動理論展望 −・J29− による信用割当てL(Credit rationing)が重要な意味をもつものであって,借 手たる企業が利子率を考慮した上で,借入額ないし投資鼠を決定するというの ではない。それ故,仮に.投資が利子非弾力的であっても,それとほかかわりな く金融政策が効果をあげ得る余地があることに.なる。 さて,前述のローーザ効果をもう少し具体的私見ておこう。.以上のような金融 構造のもので,通貨当局が公開市場操作を行った場合の効果を,リンドペック が整理し,図示している19)。第3図がそれである。売操作の場合に.ついてこ 実物††j場に 刈して伝達 された効呆 実物苗場に 刈する 隠棲的効果 第 3 園 れを説明すれば,「ポ・−トフォリオ価値効果(value of portfolioeffects)」 ほ,政府証券の市場価格の下落のため流動性の不足を感じて,より流動的で安 全な資産の保有を増加させようとする効果であり,「利回り格差効果(yield− dif董erentialeffecこS)」は,利回りが相対的に上昇して有利となる政府証券の 保有を選好し,民間貸出しが縮少される効果である。また,「閉じ込め効果 (lockingin effects)」は政府証券価格の下落による資本損失の現実化を嫌い, 19)A.Lindbeck:7ゐ♂㍑Ⅳβ紺”Tカβ〃7二γ〃ノCγβdよ≠Cα吼わ・OJ∠乃fカβひ〝如d5f〃≠β.S, Almqvist&Wiksell,Stockholm,2tlded.1962,p.43〔水野正一・・山下邦男監訳 『現代の金融理論Ⅱ.』勤草沓房,1966年,欝5畢,p.174‘〕。
香川大学経済学部 研究報告18
ーヱ3クー J97β
政府証券の売却を避けようとする効果であり,「貸手および借手の期待に及ぼ
す効果(effects onlenders’and borrowers’expectations)」は,利子率変
化の不確実性のために,貸出しまたは借入れに対し日和見的態度をとることを 言う。これらの諸効果のため紅総じて.信用のアヴェイラビリティほ減少し,市 中の貸出金利も上昇することに.なり,こ.れが現実の貸出額を減少させ,結局ほ 投資を抑制するという間接的効果を生み出すこと紅なる。この場合,現実の市 中貸出額を規定するのほ,主として信用のアブェイラビリティの減少であると み.られて.−いる加)21)。 (3)アグェイラビリティ理論の評価 ローザ理論が発表せられてから既に80年近い歳月が経過し,この間にアブェ 20)リンドペックやカレ−キンが,公開市場紅おける売操作の場合も買操作の場合も含 めて,一・般的に.,政府証券価格と利回りの変動の効果を論じて:いるのに対し,川口慎 二教授はアグェイラビリティ理論の基本命題を「政府証券価格の下落ないしその利回 りの勝負は,金融機関をしで,民間部門への信用供給よりも,政府部門への信用供 給,すなわら,政府証券の保有を選好させるから,民間部門への信用供給に.おいて, 削減的ないし抑制的な効果をもつ」ことであると理解せられ,買操作の場合を除外し ておられる(川口慎ニ『現代金融政策論』東洋経済,1973年,p.147)。 21)川口慎二教授はアグェイラビリティ理論の作用様式を次表のように.整理せられる。 ここで「流動性効果」はポ」一トフォリオ価値効果,「収益性効果」は利回り格差効果 にあたるが,いずれも政府証券保有「促進」効果があると考えられる。また,「資本 損失効果」はいわゆる「閉じ込め効果」に.あたり,「利子予想効果」は「貸手および 借手の期待に、及ぼす効果」に.あたるものであって,いずれも,既に.所有している政府 証券の流動化を阻止し,現行の資産構成を維持継続せしめる効果,つまり政府証券保 有「維持」効果,換言すれば「閉じ込め効果」をもつと見られる。それ故,前者のみ を「閉じ込め効果」と称することを慎蚤に.避けておられる(川口慎ニ,前掲苔,pp, 150−152)。
銀行行動理論展望 ー∴㍍り− イラビリティ理論ほ多数の論者碇・よって批判され,また評価を受けて来た。そ の1つは前述のリンドペックのそれであり,ロ−ザ理論の整理拡充を行った。 またカレ−キンは,政府証券利回りの変化が民間貸付資金の需要または供給を 変化せしめる程度を示す交差弾力性(crosselasticities)と,民間資金利子率 の変化が民間資金自体の需要または供給を変化せしめる程度を示す自己弾力性 (own elasticities)の概念を用いた伝統的な経済モデ)L/に.より,ロー1ゲ理論を 精緻化すると共紅,論理的斉合性を吟味して次のように腐諭している。「貸手 の行動を強調するとしても.ト民間市場における需要の自己弾力性の値が準備制 度の操作の有効性軋影響を及ばし,また需要が比較的非弾力的なところでは, 準備制度の有効な操作が民間証券利回り紅かなり大きな変動をもたらすであろ う22リ と。このことほ公開市場での売操作が必ずしも政府証券保有を有利なら しめるような利子率格差を生ぜしめないことを意味するものである。そして 「信用割当て−の議論の導入ほこれら特定の障害(引締効果を無くさせるような 事態−・引用者注)を除きはするが,他の議論の基礎にある行動上の仮定に若 干の修正を要求する231」として,ロ−ザ理論の論理的斉合性に.問題があること を指摘している。 以上のようないわば純理論的な評価の他に.,より実際的な視点からする批判 も多い。その多くはアヴュイラビリティ理論の主張と現実との帝離を指摘して いるが,それらの帝離ほ.「了解」以後に.おけるアメリカ金融情勢の変化の結果で もあるので,あながち,ローザ理論の全面的欠陥とは言えないかも知れない。 実際的な批判の1つに・,例えばW.L.スミ.スのそれがある24)。スミスほ国債が 大恩に民間に保有されている状況のもとでほ,アグェイラビリティ理論の主張 とは逆に,金融引締政策の効果を弱める傾向があると見ている。政府証券の売 操作が行われた時,利子率格差が縮小して政府証券保有が相対的に有利紅なる
22),.H.Kareken,㍑Lender’S,Preferences,C工edit Rationing,and the Effec− tiveness of monetary Policy,”Re2)iew of Economics and Staiisti’cs,Vol.39,
No.3,Au臥1957,p.302.
23)∫∂メd.,p.302.
24)W.L.Smith:以OntheEffectivenessof MonetaryPolicy,”AmericanEconomic Reviteu),Vol.46,No.4,Sept.1956,pp.588−・606.
香川大学経済学部 研究報告18 J.97β ーJ32− よりも,むしろ格差が拡大しで民間貸出しが−一層有利になる可能性があること を指摘している。この場合,・一般投資家が遊休残高をもって.政府証券の買手と なり,銀行ほ.売手となって資金を調達し,民間紅対する貸出しないし投資の増 大紅つながると見る。なお,税制の関係で,資本損失の現実化が必ずしも忌避 されないということもあり得る。また,例えばガ−レィおよぴショウのよう に,商業銀行以外の金融仲介機関を重視すれば,その活躍償よって金融引締政 策の効果ほ削減され,アブェイラビリティ理論の主張とは相反する結果もあり 得ると考えられる25)。 さらに,アブェイラビリティ理論の実際的評価紅関して,「了解」以後,連 邦準備制度がビルズ㌧オンリー政策(bills only policy)を採用したことが重
要な意味をもつ。従来の経済学が各種利子率の同時的変動を想定していたのに. 対して,アブェイラビソティ理論でほ,特定の利子率の変化が他の利子率に盾 ちに拡散しないで利子率格差を変化させ,これが銀行の資産構成を変化させる と主張する26)。ところでビルズ。オンリ一政策は,政府証券(bi11s)の操作に. よる短期利率の変動が直ちに長期利率に波及するから,中・長期証券を操作対 象紅加える必要はないという主張を含んでいる。加うるに.,アグェイラビリテ ィ理論ほその提唱する諸効果の中で,特に資本損失効果(閉じ込め効果)を重 視するものであるが,それは長期証券の売操作による長期証券価格の下落に.よ って−最も効果的軋なるはずである。したがって,ピルズ・オンリ−政策の採用 それ自体が,事実上,アブェイラビリティ理論を無視するものであったのであ る。 かくして,ロ−ヂ理論はそ・の前提ならびに推論が必ずしも現実的でないこと が指摘され,また実際の政策においても無視される結果になってしまった。さ 25)貝塚啓明「金融政策の有効性」館龍一・郎編『ケインズと現代経済学』東京大学出版 会,1968年,pp.98p9,pp.102−3参照。 26)ロ−ザ理論において−も,確か紅,金融市場の一部分紅加えられた衝撃は他の部分に 伝播する可能性のあることが指摘されている(R。Ⅴ叫Rosa:∂♪.c多才.,p.286〔邦訳, p.121り。しかしその伝播ほ必ずしも「急速紅.」でほなく,ロ−ザ理論の基本的主張 は本文のように選解すべきものと考える。この点に.おいて筆者は,千田純一氏と理解 を異紅する(千田純一・『現代の金融政廣』春季社,ユ974年,pp.120−121,参照)。
銀行行動理論展望 −ヱβ3− らに日本へのこの理論の適用紅ついては,わが国の金融事情が,アヴュイラビ ソティ理論を発生せしめたアメリカやイギリスの事情とほかなり異なるので, ロ−ザ効果についで−・■層懐腰的にならざるを得ない。 しかしながら,「金融政策の復活」の際に,連邦準備制度側紅理論的支柱を 提供したという歴史的意義を看過することほできない。また理論的意義も決し て′J\さくない。すなわち,従来,利子率変動の効果を云々する場合,最初の 資金供給者(貯蓄者)と,最終的資金需要者(投資者)に及ばす影替だけが分 析の対象であったのに.対し,アヴェイラビリティ理論では.,貯蓄者と投資者の 間紅介在する貸手(金融機関)の行動に重大な意味を認めている。したがっ て■,いわゆる銀行行動理論の本格的な出発点をここ紅見ることができるのであ る。それ故,実際問題として一口ーザ効果が現れないとしても,その理論的意義 は極めて大と言わなければならない。もちろん,アヴュイラビリティ理論は銀 行行動理論としてはまだ素朴なものであり,いくつかの方向で,精緻化され拡 充されなければならない。その1つ,スコットに.よる分析ほ資産選択(portfolio selection)の理論を利用して,ロ−ザ理論を精緻化しようとするものである が,節を改めてとりあげることとする。また,アヴュイラビリティ理論紅おい て重要な論点の1つは,金融市場の不完全性であるが,これは銀行貸付市場を 論ずる瞭に極めて重要な点であり,この延長線上紅信用割当理論が展開される ことになる。 Ⅴ さてここで,資産選択理論を用いてアグェイラビリティ理論を精緻化しよう とするスコットの理論を概説しておこう27)。まず,銀行が選択することのでき る2種類の確定利付き証券(政府証券gと民間証券p)を仮定し,両者ほ等し い満期と一山定の額面をもつものとする。それぞれの収益率は確率変数であっ
27)Ⅰ.0.Scott,Jr.:hThe Availability Doctrine:TheoreticalUnderpinning,” 月初山β紺 ∂ノE“昭卯戒c£わ化㍑β・ざ,Vol咄25,Oct.1957,pp.4ト48,Ⅰep工・intedin
香川大学経済学部 研究報告18 J.97∂ −J34・− て,その期待値等は次表のようであるとする。 収益率 収益率の期待値 収益率の榛準偏差 政府証券(g) γ伊 ∈p=e〔グ・グ〕 Jグ 民間証券(p) ㌢・p ∈p=封 グp いま或る銀行が,その収益資産をgとpと軋分割して保有する割合を,それ ぞれⅩク,Ⅹp(Ⅹク+Ⅹ伊=1,Ⅹ灯≧0,Ⅹp≧0)とすると,その銀行のポートフォ リオの期待利回りEほ, E=Ⅹp∈ク+Ⅹ〆p=(∈好一∈p)Ⅹ伊+・句 となり,そ・の利回りの分散は, Ⅴ=Ⅹぴ2¢・ダ2+2Ⅹ伊ⅩppJ9グp+ⅩpJp =(伊伊2−2βグ・タグp+♂・p2)ⅩⅣ2+2(pグ¢Jp一打p2)Ⅹダ十Jp2……… (2) となる。PはⅠpと‡・ダの相関係数である。ここで,グ灯<Jp,∈葺くFp,0くpく1と 仮定し,(g,∈p,ケダ,Jpはそれぞれ定数であるとする。 この(1)(2)式に射し て−,未知数はE,ⅤおよびⅩ伊の3個 であるから,これだけでほ決定でき
ない。それ故,何等かの選好条件等
を追加しなければならない。Ⅴほ危 険の程度を示す指標と考えられるか ら,Ⅴを最/トならしめるようなⅩクを 選好することもできるし28),また一 定のⅤのもとでEを極大ならしめる Ⅹダを選好することもできる。ここで は,まず,後者を考えることにして, Ⅴ一点=0…… ‥い(3) なる条件を追加すれば1つの解Ⅹダ* が得られる。これを図示すると第4 図の如くである。 E,Ⅴ ︰∵ りー ー Ⅴ Ⅹダ O x〝Ⅹわ Ⅹ苛 1 第 4 図28)(2)式をⅩダで微分し,畏=0と置くと,Ⅹク=
ググ2−βすタグp =Ⅹグ肌が得られ J白2−・2pJ伊♂p+Jp2 る0ここでβJp<グダと仮定すれば,1=2(グタ2−・2仰p+Jp2)>0であるから, このⅤは極小値である。−J35− 銀行行動理論展望 右下りの直線(1)は(1)式を図示したものであり,曲線(2)は.(2)式を示したもの に他ならない。曲線(2)に.おいて,グ伊2より下の部分でほ.一定のⅤに.対して2個 のⅩ伊が対応しているが,そのうちEの大きい方のみが選好されるはず∴である から,曲線(2)に.お亘、て有効であるのは最低点(Ⅹダ=Ⅹ伊刑)より左の部分であ る。ここで,Ⅴ=Kなる条件が与えられるとⅩ伊=又ダが決定されることに・なる。 ところで,アグェイラビリティ理論の1つの主張を,政府証券の危険増大が 政府証券の保有を減少せしめるのではなく,逆に.増大せしめること,つまり >0であると解釈することができる0これはJダ<巾なる条件と危険欄
する制約(3)式との結果導かれる。すなわち,金融政策の変化によって政府証
券市場の不安定性(グ伊)が打伊から♂ダ′へ増大した時,Ⅹダを不変に・維持すれば 甘−トフォリオの危険が増大する隠ずである。その際,危険を・一・定水準に・維持 しなければならない(Ⅴ=烏)とすれば,句の増大に.もかかわらず,なお〆好くJp であるから,相対的に危険の小さい政府証券を一層選好することに・なる。第4 図に.ついて言え.ば,グダ2がJ′㌔に.上昇したため,曲線(2)は曲線(2)′のように移動する。したがってⅤ=烏との交点紅対応するⅩ伊はⅩ伊からⅩグ′紅増大するこ
とに.なるのである。 次に.,これまでより一般的な選好関数を仮定し,マーコブィッツ流の平均・ 分散接近に・よる均衡解を考えよう0(1)式より得られるⅩダ=若君を(2)式に代 入して次の性)式を得る。Ⅴ=(グク2−2糊付p2ノ〔彗諾誤判
・2(仰p−Jp2)〔吾莞〕恒p2リ・・ (4) これを簡単化して t(Ⅴ,E)=0 と表すことができるが,ⅤはEに関して放物線となり,第5図の曲線(左)のよ う紅示される。これが機会軌跡(opportunitylocus)である。また効用関数は u(Ⅴ,E)=C と仮定され,曲線(g∠)のような無差別曲線群が描かれるが,パラメ・一夕ーC香川大学経済学部 研究報告18 J97β ーヱ36一 1 又んⅩ〝 第 5 図 の催,つまり効用が大であるはど右に位置することになる。そこで(∠)の制 約条件のもとで(査一之■)を極大ならしめるようなⅤとEの組合せを求めれば,均 衡点は第5図のP*点で示される。したがって,これ紅対応するⅩ灯が銀行に・と って最適な政府証券の構成比である。いま金融政策に.よってJ♂2がグp′2に増 大したとすれば,機会軌跡は(∠■)から(∠)′にシフトし,Ⅹpの均衡はⅩ伊から Ⅹダ′に.移動する。この場合も前のケL−・スと同様紅句の増大がⅩダの増大をもた らすわけである。 さて,アブェイラビリティ理論の中心的な論点は,公開市場操作に.よる政 府証券収益率の上昇紅伴う効果についでである。スコットも最後に.それを分 析しているが,そこでは簡単化のため危険の程度グダは不変のまま,∈ダだけが 上昇する場合を考えている。まず∈灯が句から∈グ′へと増大したとすれば,機 会軌跡は(Z)から(よ)′へと移動する(第6図参照)。そのため均衡点ほPlか らP2紅移動する。このことによるⅩ9の変化を示したものが貨6図の下部〔撃
ーJ∂7一− 銀行行動理論展望 Ⅹダ 第 6 図 者付加〕である。これで明らかなようにⅩダはⅩクからⅩダ′へと増大すること紅 なる29)。また,∈灯の増大とグ♂の増大ほ同時に起こる傾向があるから,相互に
補強し合ってⅩ伊を増大せしめること紅なろう。いずれ紅せよ,銀行が銀行自身
の流動性を増大させようとすれば,デフレ的効果をもつこととなる。 以上がスコット理論の概要である。それは特に新しい何等かの主張をしよう とするものではなく,アグェイラビリティ理論の主要な論点の説明ないし緻密 化に.過ぎない。しかし,不確実性を明示的に導入して銀行の資産運用を分析し 29)スコットは指摘していないが,無差別曲線の形状いかんに・よってこは,Ⅹダが減少す る場合も考えられる。すなわち,(∠)′曲線と無差別曲線との接点がP$より右方紅・あ れば,Ⅹいは減少することとなる。しかし,通常の場合はⅩpは増大するであろう。香川大学経済学部 研究宰艮告18 ー・ヱ3β− J97β ようとするこの試みほ,銀行行動論を1歩前進せしめたものであると言えよ う。 Ⅴ 信用割当て(credit rationing)は通常,「銀行貸付市場に‥海いて商業貸付 利率が資金の需給を完全にほ調整せず,超過需要が存在するままで,貸手が借 手に資金を割当て−る状況である」と説明される30)。そこでほ,市場は不均衡状 態に.あり,ケインズの言う「満足せざる借手の部分311」が存在することにな る。この状況紅対して積極的に理論的検討が加えられるようになったのは,ア ヴュイラビ.リティ理論以来のことである。アブェイラビリティ理論の中心的論 点は,金融政策に貸手が敏感に反応して信用のアブェイラビリティが変化する ことにあり,事実上,投資を左右する貸手の行動の1つとして,信用割当てほ 重要な意味をもつのである。その後,ホッジマン,ライダー・,ミラ一−,プライ マーおよびゴ−ドン,ジャツフェおよぴモ汐リアーニなどによって−信用割当て の理論的展開が行われた32)。 30)例えば,貝塚啓明・小野寺弘夫「信用割当紅ついて」『凝済研究』Vol.25,No.1, Jan.1974。
31)Keynes,A Treaiise onMoney,Vol.2,p.365〔邦訳,算5分冊,P.210〕。 32)次の文献を参照。
D.R.Hodgman:パC工edit Risk and Credit Rationing.”Quarierわ70urnalof Economics,Vol.74,No.2,May1960;Do.:“CreditRiskandCreditRationing:
Reply,”6?uarieYl.yJournalofEconomics,Vol.75,No.2,May1961;Do.: 〃Credit Risk andCzeditRationing:Reply,”Quarter[yJo附・nalof Economics,
Vol.76,No.3,Aug.1962;H.E.Ryder,Jr.:“Credit Risk and Credit Rationing:Comment,”Quarter[y]ournalo.f Economics,Vol.76,No.3, Aug.、1962;M.H.Miller:“Further Commet,”QuarierLy.70uY・nalof
Economics,Vol.76,No.3,Aug.1962;M.Freimer&M.J.Gordon:りWhy Bankers Ration Credit,”(?uaYlteYIlyJouY・nalof Economic・S,Vol.79,No.3,
Aug.1965;D.M.Jaf董ee&F.Modigliani:hA Theory and Test of Credit Rationing,”American Economi’c Review,Vol.59,No.5,Dec.1969;D.M. Jaffee:Credit Rationing and the CommercialLoan Market,John Wiley
&Sons,1971;D.M.Jaffee&T.Russe11:‘‘ImperfectInformation,Uncer− tainty,and Credit Rationing,”QuarieY・l.yJournalofEconomics,Vol.90,
−・J39−− 銀行行動理論展望
これらの中で注目すべきものはジャッフェの分析であるが,彼は信用割当て
の問題を銀行組織ないし1銀行全体の問題としてとらえるのではなく,個別の
借手と銀行との間の相対取引の問題としてとらえる。したがって,需要曲線と
いうのは銀行貸付けに.対する1企業の需要曲線であり,供給曲線も当該1企業
に.対するものである。まず資金需要億線を考.えよう。・一定額の投資資金を外部金融に・頼らざるを得
ない籍去企業を仮定する。銀行がその企業に課する貸付利子率で£が上昇(利子
要素Rが=1十∫£も上昇)するにつれて,当該企業は銀行以外の資金に・より多く
依存するようになってくるから,銀行貸付けに対する需要曲線(D宜〔R乞‘〕)は右
/′\ 下りとなる。次に,最適貸付供給曲線(し〔も〕)は,籍7図のように・,R£=Ⅰ
の水準で水平であるが,やがて右上りとなり,さら紅或る点からは左に湾曲す
る。なお,Ⅰは銀行の機会費用要素(1十機会費用)である。左常・湾曲するの
第 7 図 ほ借手に課する貸付利子率が余り紅高くなると,貸倒れの危険が増大するか ら,貸付けが抑制されることを示している33)。この最適貸付供給曲線は,任 33)詳細は,拙稿「信用割当理論とわが国の銀行行動」『香川大学経済論叢』第47巻, 罪4・5・6号(昭和50年2月)を参照せられたい9ーーJ40− 香川大学経済学部 研究報曽18 J97β 意の利子要素(R£)のもとで最大の利潤が期待されるような,第よ一企業への貸
〈 付額(L名)(これを最適貸付額と呼ぶ)を示す曲線であって,算よ■企業への貸
付けに関する銀行の等利潤曲線(算7図紅点線で示されている)の最低点の軌 跡である。より大なる期待利潤に対応する等利潤曲線はど,上方に位屈して いる。またPoでは期待利潤がゼロである。 そこで,銀行が算g企業に対して差別的独占者として行動することができ, したがっていかなる貸付利子率(利子要素)をも課するこ.とができるとすれ ば,その銀行軋とって,発音企業紅対して信用割当て(信用制限)をすることは有利ではない。なぜならば,銀行の期待利潤を極大ならしめる利子要素
(R名*)のもとでほ,超過需要ほ存在しないからである。銀行に.とって,信用 割当てが有利になる可儲性があるのほ,差別的独占者として行動する場合でほ なく,或る顧客グルー・プに対して−共通の利子率を適用しなければならない場合 である。その共通利子率を,銀行が自由紅選択できるものとすれば,当該グル −プ全体からの期待利潤を極大ならしめるような利子要素を最適共通利子率と して一週ぶことに・なろう。こ.の時,グループ内のある顧客に対しては信用割当て をすること転有利ではないが,他の顧客に対しては信用割当てが有利となる場 合がある。 以上がジャッフェ理論の極めて簡単な説明であるが,差別的独占者としての 銀行紅とってほ.信用割当てが有利でないというのは,常識的理解とかなり異な ったものである。もっとも,法的または慣習的制約があって利子要素がR宜以下 に・押し下げられるとすれば,信用割当てが行われる訳で,これが実情に近いか も知れないが,ジャッフェ理論は制度的な枠に.よるよりも,期待利潤極大の合 理的行動として信用割当ての問題を分析しようとするところに.特徴がある34)。 ところで,この節の最初に信用割当ての通常の定義を示したが,ここでそれ をもう一度検討してみたい。この通常の考え方を図示すれば,第8図のようで ある。商業貸付利子率が制度的要因その他によって−,均衡利子率r* よりも下 34)D.M.Jaffee & T.Russell:“ImperfectInformation,Uncertainty,and CIedit Rationing,”Q〟αrfg7J.γ/〃〝r〃αJ〃/動明描扉巧 Vol.叫No.4,Nov,ー一山け− 銀行行動理論展望 A B 貸付鰊 第 8 医l 方に.押し下げられ,rlになっ′ているとすると,事実上の貸付額はOAとなり, ABの超過需要が残されたままとなる。この場合,特定の1企業紅ついての資 金の需要と供給ではなく,再び,1銀行全体の資金需給を問題としている。確 か紅,債券市場が完全競争的であるの紅対して,商業貸付市場は不完全競争的 であるのが特徴である。しかし,その不完全競争的市場を算8図のような道具 立てで論ずることに.は問題がある。そもそも需要曲線は任意の価格(または利 子率)が与えられた場合,それに対応する需要盈を示すものであるが,その全 需要鼠に対し,つまりすべての借手に.対して同一の利子率が適用されるこ.とを 意味する。したがって需要曲線ほ平均収入曲線紅他ならない。 商業貸付市場が不完全競争的であるということは,平均収入曲線としての需 要曲線と供給曲線との交点以外の利子率が,すべての借手に適用されるために 需要と供給がバランスしない状態というよりは,相対取引のために.,借手によ ってそれぞれ特別の利子率が適用されるような状態を意味していると見ること の方が安当である9「個別銀行ほ債券市場に・おいてはプライス・デイか−であ
一−J42− 香川大学経済学部 研究報告18 ヱ.97∂ るが,貸付市場に.お1、ては不完全競争者35)」であって,プライス・メイカー・と して行動し,しかも需要者紅差別的価格を適用するのである。 独占企業の利潤増大ほ・限界費用と限界収入の−−激する供給鼠によって:達成 される。したがって,通常の独占理論によれば,価格または利子率は舞9図需 貸付 T A 第 9 図 貸付鰍 要鼠OAに・対応する工LにJ決定されるほずである。しかし差別的価格を適用する 銀行ほ,すべての借手に.利子率王を適用する訳でほない。利潤極大貸付額ほ OAであるが,借手に.応じてそれぞれエ・lからⅠ・2に至る利子率が個別に適用さ れることとなる。収入合計は台形OABrlであって∵長方形OACi・ではない(金 額ほ等しいとしても)。それ故,信用割当て−を第8図のような仕方で理解する のは問題であり,ジャツフェがしたようにっ 借手別の個別の問題として理解す るのが妥当である。「借手ごとに.信用が割当てられたり割当てられなかったり して,その結果,銀行貸付市場に.信用割当てが成立すると考えるぺきであろ う36〉」と漆崎健治教授も述べておられる通りである。そうだとすれば,たとえ
35)J.H.Wood:CommercialBank Loan andInvestment Behaviour,John Wiley&Sons,1975,p.9.
銀行行動理論展望 −J4∂− 不況期で資金需要が減少し,銀行ほ優良な借手を求めて努\力しなければならな いというような事態が発生したとしても,銀行の歓迎しない借手に対して,信 用割当てないし信用制限は絶えず行われていると考えられるのである。 ⅤⅠⅠ そこで次紅,銀行がいかに.して差別的利子率を決定し適用するかを考察しな ければならない。このために.重要であるのほ銀行預金との関係である。銀行の 貸付資金の源泉ほ預金であるから,預金額の多寡が貸付額ひいては利潤を決定 することとなる。ところで銀行からの借手ほ同時に預金者であるのが普通であ る。したがって貸付けの仕方いかんが預金に.影響し,結局は利潤に影響する。 しかるに.,これまでの分析では預金額を一・定として,資産構成のみを問題とし てきた。スコットの分析に.おいてもジャッフェのそれも預金匿.は触れなかっ た。 筆者は.かって,銀行貸付けと預金の関係を取扱うのに.貸付けに伴う派生的預 金の歩どまり率との関連に.おいて実効金利を問題とした37)。すなわち,算∠一企 業への約定貸出金利を【・ゎ 派生的預金の平均金利を工・d,派生的預金の歩どまり
/\ 率をkg,預金支払準備率をpとすれば,第∠一企業への貸出しに.よる実効金利Ⅰ■宜は
/へ Ⅰ・慮Ⅶ工・dk名 ー エ£== 1−(1−β)k乞/へ である。いま工■dとβを一一・定とすれば,貸出実効金利Ⅰ乞を大ならしめるため紅
ほ,Ⅰ・′£かk名が大であることが要求される。Ⅰ£が制度的に.固定されるものであ るとすれば,k乞の増大紅よってはじめて一利瀾の上昇を実現することができる。 ところでk乞は借手企業によって固有の大きさをもっと考えられる38)。・一・般に. 系列企業はどk仁ほ大になる傾向があり,また,全国的営業基盤を有する大銀 37)拙稿,前掲論文,pp.162−・164。 38)この場合の預金歩どまり率は,借手企業自体の預金として滞留する部分のみなら ず,その企業から支払いを受けた企業が,それを当該貸付銀行に預け入れる部分をも 含めて考察するものとする。したがって∴鳥よは眉=企業に貸付けを行った場合紅,銀 行が期待し得る歩どまり率であって,必ずしも辞去企業自体の歩どまり率を意味する ものではない9香川大学経済学部 研究報告18 J.97∂ ーJ・JJ− 行はど虹の平均値が高くなろう。かくして銀行ほk宜の大なる企業へ優先的紅 貸付けを行うであろうと考えたのであった。その際考えたk乞は,過去におけ る銀行と借手との間の取引関係を,例えば系列企業というような形で,一応念 頭に届いているものの,そ・の点の考察ほ不充分で,かなり機械的に取扱ってい た。そしてまた,約定貸出金利Ⅰ・乞ほ変更不可能であるかのように.処理したが 実際に.は全く固定されている訳でほない。これらの点紅ついて,より明示的な 分析をしたのがホッ汐マンないしケインおよびマルキ、−ルである。 ホッ汐マンはまず簡単化のため次の2つの仮定を置く39〉。第1は不確実性と それに.伴う危険のない場合を考える。算2に例えば1年というような期間につ いての平均預金残高と平均貸付額に.よって分析する。さて,銀行が第よ顧客 から受入れて.いる預金の平均残高はd電ドルであるとして−,この預金残高から 銀行はどれ時どの利益を獲得できるであろうか。この預金額の或る部分ほ収益 資産に.運用可能である。・その割合が銀行全体の預金残高(D)に対する収益資産 (L)の平均比率(L/D)であるとすれば,銀行はd£(L/D)を貸出すことができ る。預金関係のない借手への貸出しの(危険調整済みの)利子率をⅠ・とすれ r ば,預金d宜からの収入は d乞÷ 巨Cも である。Cいは預金サ−ビス・コストである。ここでほ無利子の要求払預金の みと考えているから,利子貿用は含まれない。もしこの値が正であれば,銀行 は預金獲得競争をしようとするであろう。預金抵得の1つの方法は預金利子の 支払いであるが,合衆国では要求払預金の利子支払いほ許されていない。預金 獲得の他の方法は,非預金者への貸出金利fノよりも低い金利で,預金者に.対■し て貸出しを行うことである。これは・嶋・般的に.実行されている。 ここで次のように.3種類の利子率を区別する。(1)市場利子率(market工ate) L b ーこれは預金者でない借手または中 −C乞<0 となるような預金者に.
39)D.R.Hodgman:仏Credit Riskand Credit Rationing,”QuaY・ierl.yJournal
∂./■β‘〃乃¢椚よc.s,Vol.74,No.2,May1960,p.258小 なお,以下で用いている記号 は,おおむね Ho鴎manのそれであるが,紛らわしい部分について若干の変更をし
銀行行動理論展望 −J尋∂− 対する貸出し利子率r,(2)優遇利子率(preferentialrate)叫預金者である借 手に対する貸出利子率p,(p<r),(3)プライム・レ−ト(prime rate)嶋 特定の優遇利子率。 さて,優遇利子率ほどのよう把決められるであろうか。いま,策i顧客へ優 遇利子率p慮で1せドルだけ貸出したとすれば,貸出しからp£1£の収入を得るは L 5
か,その顧客の預金からⅠイd宜
トC官の純収入を得ることができる 。した がって,この合討が非預金者への同額の貸出しからの収入に等しくなるように p官を決めても特紅損失はない。p抽(d竜十Cf
それ故, (Ⅰ・dよ÷−C名) p宜=Ⅰ− が得られる。したがって優遇利子率は貸出し1.単位当りの預金純収入だけ市場 利子率Ⅰ■よりも低くなっている。いまd名=0ならばC名=0であるから(7)式の 右辺第2項は0となりp£=工である。つまり非預金者には優遇利子率は適用さ れない。また工■,L/Dが所与でさらにdゎC£も一軍だとすれば1名の減少する 紅つれて第2項の値ほ増大しp電の工との差が拡大する。要するに.d官主1乞との 相対的大きさが優遇利子率を決定すること紅.なる。第10図のpp′曲線がこれを 示している。預金・貸出比率1乞/d威が非常にノ」\さい時に.は,優遇利子率は負紅 なることすら考えられるが,現実にほ.通用可能な最低貸付利子率(例えばプラ イム。レ−ト)があってpl以下に.ほなり得ないとすると,実際の利子率は 1乞/d乞がll/dlに達するまでほplの水準に固定され,その点を越えて拡大して ゆくときpp′曲線に・沿って上昇し工に.接近することに.なる。預金・貸出比率 が11/dl以下で,例えばlo/doである場合,pOの優遇利子率で貸しをしても 特別に損失ほないはずであるにもかかわらず,実際にはplで貸出すのである から(pl−pO)の超過利潤が発生することになる。したがって銀行はこのよう な優良顧客つまり1乞/d乞の小さい顧客との関係を極力碓持するように行動する であろう9香川大学経済学部 研究報告18 ヱ97β −J46−・ 第 10 園 ところで1£/d£は,筆者がかつて派生的預金歩どまり率kiで表わしたものの 逆数紅近い40)。したがって−k宜が大なる企業はど優良企業ということ紅なるが k電の大きさがすべて事実上の収入額(実効金利)紅反映されるように.論じた。 それは貸出利子率をはぼ固定して:考えたからであった。優遇利子率を考える場 合にほk宜の大きさが全面的に.短期的な純利益軋反映されるのではなく,むし ろ現在の利潤を幾分犠牲にすることによって,長期的な利潤の極大を図ること となるのである。 さて,銀行が上記のような優良顧客との関係を極力維持しようとする点に・関 する分析はケインおよびマルキーールにおいて詳細になされてt、る。既に・そのポ −トフォリオが均衡状態にあった銀行に.対して,優良顧客41)から貸付け要請が 40)逆数そのものでないのはぃ翫は借手の預金から支払いを受けた企業の預金に・移し 変えられた部分をも,預金残高と考えて∴規定されているからである。〔注38)参照〕 41)ケインおよびマルキ−ルは,次の条件を備えた顧客を優良顧客と見ている。①預金 額が多いこと。④預金が増加しつつあること,⑧安定的預金であること,④高く から継続した預金勘定であること。⑨結びつきが強周であること,の5点である
(E.J.Kane&B.G.Malkiel:パBank PortfolioAllocation,Deposit Variability, andthe Availability Doctrine,”QuarierlyJournalofEconomi(S,Vol・79,
銀行行動理論展望 −ヱ47・− あったとすれば,銀行ほ次のようなジ1/ンマに.落ち入ることに.なる。すなわ ち,貸付け要請に応えるとすれば,貸出し構成が最適水準を越えることから,利 潤に・対して相対的紅危険を増大せしめることに.なる。逆に.貸付けを拒否する場 合は,顧客関係を損ない,利潤の源泉たる預金を失なうこと紅よって長期期待 利潤を低下せしめるという危険をおかすことになる。貸付けを行う場合の危険 と,拒否する場合の危険を比較して行動が決められることに.なるが,通常は.貸 付けを行なうことによって顧客関係を維持する方が選ばれる。資金需要の多い 金融引締期匿少々の危険をおかしても顧客関係を維持しておくことが,金融緩 和期に優良な資金需要を確保することに.もなり,長期的に.利潤を高めることに なるからである。これは,引締政策を行った際に民間貸出しを縮少して政府証 券保有を選好するというアヴ‡.イラビリティ理論の主張に㌧反する結論である。 ⅤⅠⅠⅠ 以上,銀行行動に.関する諸理論を,必ずしも歴史的発展の順序ではなく,今 後を展望する上で適当と思われる順序にしたがって配列し,批判的に紹介して 若干の私見を述べた。ここでとりあげた文献は,膨大な関係文献中のごく一部 に過ぎない。しかし,日本の銀行行動を分析し,さら紅は金融政策の効果を論 ずるための基礎を或る程度固めることができたと思う。 わが国の銀行行動紅ついては,鈴木金三成の古典的労作421,鈴木敏夫戌の優 れた日本金融分析43)を始めとして,浜田宏一氏等に.よる一連の貴重な文献があ る44)。これらを1つの手謝りとして−,わが国の銀行行動と金融政策に.関する研 究を進めることを次の課題としたい。 42)鈴木金三『銀行行動の理論』東洋産済,1968年。 43〕鈴木敵失『金融政策の効果一銀行行動の理論と計測−−』東洋経済,1966年。同 『現代日本金融論』東洋経済,1974年。 44)浜田宏一・・岩田一政・島内昭・石山行忠「金融政策と銀行行動一日銀信用の役割 について」経済企画庁経済研究所『経済分析』第56号,1975り7。 浜田宏一‥石山行忠・岩田一政「わが国の貸出市場構造−一都市銀行と地方銀行の貸 出金利を中心として」経済企画庁経済研究所『経済分析』欝61号,1976,3。同「コ 」−ル市場と貨幣の供給過程」同号。同「日本の貸出市場に.おける不均衡についてニ」一・ 棒大学『経済研究』Vol.28,No.3,J山y1977。