−J−
生産管理システムの変革と
原価管理への影響
一製番方式,JITとMRPの比較一
井 上 信 一 Ⅰ はじめに ⅠⅠ原価管理のシステム化ⅠⅠⅠニ、−ズの多様化・個性化と生産方式への反映
ⅠⅤ 製品ライフサイクルの短縮とコスナダウン Ⅴ コストダウンの課題とその手法 ⅤⅠ原価構成と棚卸資産の変化 ⅤⅠⅠおわりに Ⅰ 現在アメリカを始め諸外国で日本的生産力式としてジャスト・イン・タイム生産方式(just−in−time,別名かんばん方式,以下JITと略称する),および全
社的品質管理(TQC)が非常にもてはやされ,それぞれの国で,その導入・普及
が盛んになされていることは周知の事実である。しかし,わが国でも,.JITにつ
いての事例紹介は,これまでにも企業での成果がある程度報告されているが,
わが国全体の動向を知る包括的・統計的調査はあまり見掛けない1)。従って,.JIT
1)例えば,.丁IT生産方式の統計的な実態調査としては,門田安弘・蘇建源稿「わが国の自動 車部晶産業におけるジャストインタイム生産方式の導入実態」,(『エ場管理−トヨタ生産 方式[産業別]実践集』5月臨時増刊号),日刊工業新聞社,1988年(1988−a),またケー ス・スタディについては,門田安弘稿「.JIT生産方式と原価計算・原価管理−ダイハツ工業 ㈱のケースを中心に−」,『企業会計』Vol.40 No5,1988年5月(1988−b)などがある。 なお,門田[1988−b]では,日本における.1ITと原価計算・原価管理に関する研究状況を, 次のように述べている。「このテーマ(JITと原価計算・原価管理一筆者)について日本に おける実証研究はほとんど皆無といってよく,JITの本山である日本企業に関するケース・ スタディや質問表調査が強く望まれる次第である」(24ページ)。香川大学経済学部 研究年報 28 J.玖9β −2− の導入とそこにおける原価管理の実態および特徴を関連づけて,包括的・統計 的に明らかにするという試みも,今後に残された課題である。 そこで,本稿でほそれらの課題を填める作業の−・環として,日本企業が利用
している生産管理システムを製番方式,.JITおよびMRP(資材所要量計画
materialsrequirementsplanning)の3つに分類して,それぞれの生産管理シ
ステムと原価管理の実態との関連を比較考察してみたい。そこで,生産管理シ ステムを,これまでの伝統的な「原単位表(quick−deck)をもとにして,それに もとづいて製造指図書を作成し,それにより生産過程を管理する」製番方式, わが国のトヨタ自動車において開発され世界的に普及してきている.丁IT,およ びアメリカにおいて開発されコンビュ.、一夕をべ−・スにした新しい生産管理方式 としてわが国でも普及してきているMRPの3つに分けて2),それぞれの方式と 原価管理の実態がいかに関連しまた相違しているかを,わが国の実態調査の結 果をもとに検討してみたい。他の生産管理方式と比較することにより,.丁ITに おける原価管理の特徴およびその在り方を,より一層明白にすることができる であろう3)4)。 2)生産管理の方式を製番方式,IITおよびMRPの3つに分類するについては,門田安弘稿 「MRP・かんばん方式と原価計算」(岡本清他編著『/\イテク会計』,同友館,1988年)を 参考にした。そこには,それぞれの方式の特徴も概説されている。.JIT,MRPそのものに 関する著書はたくさん出版されているが,とりあえずJITについては,門田安弘著『トヨタ システム』講談社,1985年,MRPについては,藤本邦明著『実践・MRPの進め方』日本 能率協会,1980年などを参照した。 3)本稿で用いるデータは,文部省科学研究費補助金を得て1986−87年度に行った『生産方 式と原価管理に関する調査』(代表者三浦和夫)で得られたものである。ここでは,東京証 券取引所上場製造企業のみのデータを用いている。その部分に関する調査の概要は,以下の とおりである。東証上場企業926社に調査票を郵送し,533社から回答があったので,回収 率は.576%になる。なお,533社のうら,分類基準にした生産管理の方式に回答のない企業 があるため,本稿では,製番方式を採用している企業(232社),IIT(54社),MRP(174 社)およびその他(26社)の合計486社の結果を利用した。なお,以下でほ,.JITを製番方 式およびMRPと比較するため,「その他の方式」の結果は除外した。従って,生産管理の 方式別の合計と製造企業全体との数字とは,必ずしも一L致していない。 なお,回答企業の生産管理の方式別の概要は,以下のとおりである。業種別にみると,製 番方式は,−・般機械(50社,216%),電気機械(47社,203%),化学,鉄鋼(それぞれ 20礼 8.6%)が中心であり,.丁ITは,輸送用機械(20社,37.0%)を中心に,一・般機械 (13社,201%),電気機械(9社,167%)で多くなっている。また,MRPは,化学(61生産管理システムの変革と原価管理への影響 −3−
なお,本稿でほ,原価管理のシステム化,ニ・−ズの多様化・個性化の生産方
式への影響,製品ライフサイクルの変化とコストダウンへの影響,原価管理の
課題とその手法および原価構成と棚卸資産在庫への影響に限って考察する。
ⅠⅠ 最近の情報化・システム化を反映して,ほとんどの企業はコンビュ・−タを経 営管理活動に導入しており,財務会計システムだけでなく,管理会計システム のコンビュ∴一夕化およびデータベース化は急速に進んでいる。そのことは,現 社,351%■)を中心に,食料品(23社,132%),電気機械(23社,132%)および窯業・ 土石(13社,7−5%)などの業種で多くなっている。なお詳細ほ,三浦和夫,田中嘉穂,井 上信一・稿「生産方式と原価管理の最近の動向一昭和61年調査の概要−」,『研究年報』(香川 大学経済学部)27号,1988年をも参照のこと。 4)回答企業の生産管理の方式別の概要(1985年)は,次のとおりである。 企業の概要−1 資 本 金 売 上 高 製造原価 従業員数 エ 場 数 事業部制 製番方式 11,577 159,445 114,028 3,906 4 51 395% 1IT 6,887 165,759 136,170 4,319 417 296 MRP 13,344 185,372 112,973 3,678 5小05 365 全 体 11,654 175,128 119,003 3,825 468 364 *)資本金,売上高,製造原価(単位:百万円),従業員(人),工場数(単位),事業部制(構 成比)。 企業の概要一2 操 業 度 輸出比率 主要製品 設備投資 研究開発費 製番方式 879% 160% 883% 607% 2,62% 1IT 996 136 935 700 2小82 MRP 867 11小0 895 555 3.32 全 体 883 14小0 892 598 2。85 *)主要製品は,業種分類2桁の一位製品の売上高の構成比を示している。設備投資(額),研 究開発費は,売上高に対する比率である。香川大学経済学部 研究年報 28 J.媚 −」− 在の原価管理システムの在り方に.も種々の側面で影響を与えているものと思わ れる。また,コンビュ∴一夕化,データべ・−ス化は,原価管理を実施する場合の前 提になることでもある。そこでまず,原価管理のための組織的・技術的基礎と して,原価管理のコンビニ・・一夕化の実態を,表−1に.よりみてみよう。 まず,原価管理システムのコンビコL・一夕化は,全体では45.1%での企業で全 面的に導入されており,458%の企業が原価管理システムのコンビュ・一夕化を 部分的に行っている。従って,90%以上の企業が,何らかの形で原価管理シス テムにコンビュ.一夕を導入していることがわかる。 次に,生産管理の方式別にほ,原価管理システムを全面的にコンピュータ化
している企業が,MRP(497%),JIT(46.3%)では比較的高く,両者では
相対的に導入が進行しているといえる。逆に,製番方式では40.3%と低くなっ ている。一・部導入を合わせると,.丁ITでは,ほとんどの企業が原価管理になんら かの形でコンビュ・一夕を導入しており,MRP,そして製番方式という順番に導 入が遅れている。 それでは,原価管理データの多目的利用の技術的基礎になる原価管理システ ムのデータべ・−ス化の実態ほ,どうであろうか。全体では,データべ、−スは, 31.1%の企業ですでに導入されており,40い6%の企業が導入を計画中である。 個別的にはぃIITで40%近くの企業がデータベースをすでに原価管理に導入し ており,製番方式とMRPでは30%弱と,かなり導入の比率が低くなっている。 ただ逆に,それらの企業でも,導入を計画中の企業は多く,原価管理システム 表−1 原価管理のコンピュータ化 コ ン ピ ュ ー タ 化 デ、一 夕 ベ ー ス 化 全 面 的 ー・部導入 導 入 済 計 画 中 製番方式 40.3% 481% 286% 39.9% JIT 46.3 519 396 35.9 MRP 497 416 299 44.8 全 体 45.1 45り8 31小1 40.6 *)製番方式(n=203),JIT(n=53),MRP(n=154),全体(n=434)。生産管理システムの変革と原イ面管理への影響 ー5一 のデータベー ス化ほ,今後急速に進展していぐであろうと思われる。 ⅠⅠⅠ
この節では,原イ面管理のもう一つの前提になる,生産方式の多様化・弾力化
の実態を検討する。すなわち,生産方式を,生産の技術的特性,製品種類,製
品生産量,工程管理および市場的特性の側面からみて,製番方式,JITとMRP
で,どのように異なるのかを明らかにしておきたい。
まず,生産の技術的特性との関係でみたのが,表−2である。それによると,
日本の製造企業は,組立生産が賂1%と最も多く,機械的進行生産25・5%そ
して化学的進行生産20%と,組立生産中心の産業構造になっている。
生産管理の方式別に.は,製番方式では,組立生産が547%と過半数を越えて
おり,機械的進行生産30い2%と,組立生産と機械的進行生産が中心である。.JIT
では,組立生産が77.8%を占めており,大部分が組立生産である。MRPでは,
どちらかというと,化学的進行生産が中心、(35.1%)であるが,組立生産,機
械的進行生産もそれぞれ1/4を越えており,その実態ほ多様である。
表−2 生産の技術的特性 技術的特性 組立生産 ’ 機械的進行 化学的進行 そ の 他 製番方式 547% 30.2% 10.3% 4.7% 丁IT 778 111 1り9 9.3 MRP 276 264 35‖1 10.9 全 体 46.1 25“5 20。0 8小4 *)製番方式(n=232),JIT(n=54),MRP(n=174),全体(n=486)。 次に,企業が生産している製品種類の多様性を,表−3によって検討してみ よう。全体では,多品種生産が約76%と圧倒的に多くなっており,日本企業に おける生産の多品種化が大いに進んでいることがよくわかる。また,.JITでほ, 多品種化が約89%と飛び抜けて高く,はとんどの企業が多品種生産になってい る。製番方式とMRPでは,ほぼ75%前後であり,傾向も比較的良く似ている。香川大学経済学部 研究年報 28 −6− J災渚 表−3 製品種類の特性 製 品 種 類 多 品 種 中 品 種 少 品 種 そ の 他 製番方式 75“8% 11小7% 10=8% 173% JIT 88.9 37 7.4 MRP 74.6 145 110 0 全 体 758 12“2 11.0 103 *)製番方式(n=231),JIT(n=54),MRP(n=173),全体(n=484)。 第三に,企業が生産している製品のある−・定期間の生産量の側面から,一・製 品当たりの生産量を比較してみよう。全体でほ,製品の生産量は,少量生産が
47.1%,大量生産26.8%,そして中量生産が234%と,少量生産が中心にな
、つている。とくに製番方式での少量生産は55..4%と,飛び扱けて少量生産化が 進行している。これは,個別(単品)生産の企業が製番方式に多く(約3割二) 含まれているためであろう。MRPでも,少量生産が最も多くなっているが,大 量生産もかなり多い。.JITでも,少量生産が最も多い(37.て%)が,中量,大 量生産も相対的に多く,生産量は多様に分布している。 表−4 製品生産量の特性生 産 量 少
量 中 畳 大 量 そ の 他 製番方式 55“4% 212% 20“8% 2.6% JIT 37.7 28り3 32.1 1り9 MRP 41.6 24.9 31小2 2.3 全 体 47小1 23.4 26小8 27 *)製番方式(n=231),JIT(n=54),MRP(n=173),全体(n=482)。 第四に,一度(回)に生産する生産量(ロットサイズあるいはバッチサイズ) の変化を,表−5によって検討してみよう。全体では,(個別+混合+小ロット) を合わせた,いわゆる小型ロット生産が690%と,7割近い数字を占め,それ だけニ・−ズの変化に即応して弾力的に生産を行う体制が整っていることがわか生産管理システムの変革と原価管理への影響 −7− る。中ロット生産は17,ノ7%そしていわゆる大型ロット生産(大ロット+大量) は11.8%と少なくなっている。 具体的にほ,製番方式でほ,個別生産と小ロット生産がそれぞれ29.4%と最 も多く,混合生産と中ロット生産もそれぞれ16い0%と15ハ2%と,ついで多く なっている。大口ット生産は82%,大量生産は1。.3%と少なくなっている。 その結果,小型ロット生産が74.8%を占め,小型ロット中心の工程管理になっ ている。 また,JITでは,混合生産(mixedproduction)が53.7%と過半数を占めてお り,いわゆる「かんばん方式」における混合生産が広く普及しており,製品の 最終組立から部品製造企業まで,ジャスト・イン・タイムに製品(部品)を供 給するシステムが広く行き渡っていることが理解できる。また,JITでほ,小口 ット生産が31.5%もあり,両者(混合+小ロット)を合わせるといわゆる小型 ロット生産が85.2%と,最も広範に小型ロット生産が普及してきていることが わかる。
MRPでは,小ロッt生産が24.4%と最も多くなっているが,中ロット生産
(22‖7%),混合生産(20い4%)や個別生産(145%)もかなりの程度に達し ており,小型ロットと中ロット生産が中心ではあるが,なおロットサイズはか なり多様に分布している。 以上,小型ロット生産(個別+混合+小ロット)は,製番方式(74ノ9%),.JIT (87.0%),MRP(593%:)と,製番方式とJITで特に進行している。もとも と単品生産である個別生産を除外して考えると,JIT(85い2%),製番方式(45 表−5 工程管理上の特性 ロ ットサイズ 個 別 混 合 小口ット 中ロット 大ロット 大 量 その他 製番方式 294% 16.0% 29.4% 15.2% 8“2% 1.3% 04% IIT 1‖9 53.7 315 56 56 1.9 MRP 145 20,4 24。4 227 87 7“6 17 全 体 199 226 265 17‖6 8.1 37 17 *)製番方式(n=231),JIT(n=54),MRP(n=172),全体(n=483)。香川大学経済学部 研究年報 28 J鰯 −β−
5%.)およびMRP(448%)と,JITでの小型ロット生産の比率がとりわけ高
くなっている。 最後に,製品の市場的特性の側面から,生産方式の変化をみてみよう。時系 列的には注文生産が増加の傾向にあり,逆に見込生産は減少傾向にあるが, 現 状は表一6のとおりである。 全体では,注文生産と見込生産の比率ほほば均衡しており,それぞれ50%弱 である。製番方式と.丁ITでほ,注文生産の比率が60%を越えており,受注生産方式が中心であり,逆にMRPでは,見込生産が67%近く,見込生産中心の生
産形態になっている。 表−6 製品の市場的特性 市場的特性 注 文 生 産 見 込 生 産 両 者 併 用 製番方式 60.77% 3707% 216% 丁IT 6111 3704 185 MRP 30.06 6647 347 全 体 4804 4948 247 *)製番方式(n=232),.IIT(n=54),MRP(n=173),全体(n=485)。 ⅠⅤ この節では,まず第一・に,企業で生産している製品の売上高を,ライフサイ クル別にみて,どのようになっているかを検討する。ついで,製品ライフサイ クルの変化がコストダウンにどのような影響を与えているかを考察したい。 製品のライフサイクル別の売上高に占める構成は,表−9のとおりである。 全体では,単純平均で,3年未満の製品と3年以上6年未満の製品の割合が, それぞれ2割強であり,6年以上の製品の占める比率は572%となっている。加重平均になると,3年未満,3年以上6年未満が各1/4強を占め,6年以上
の製品は477%と半分以下に.低下しており,規模の大きい企業でライフサイク ルのより短い製品を多く生産し,それだけ早く消費着こ−ズの多様化・個性化生産管理システムの変革と原価管理への影響 −.9− 性化に即応しようとしていることが理解できる。 生産管理の方式別には,ライフサイクルの短い製品の割合は,.JITで最も多く なっている。加重平均でみると,製番方式の大規模な企業(電気製品を生産し ている企業を中心に)での,製品ライフサイクルの短縮化ほ顕著であり,製品
ライフサイクルが3年未満の製品が目立って多くなっている。製番方式と
MRPでほ,3年以上6年未満の製品が多くなっている。いずれにしても,規模
のより大きい企業では,新製品を次から次へと市場に投入し,消費者ニーズの 変化に比較的より柔軟に対応している(、出来ている)ことがわかる。 表−9 製品ライフサイクル別売上高比率 3年未満の製品 3年以上6年未満 6年以上の製品 単純平均 加重平均 単純平均 加重平均 単純平均 加重平均 製番方式 214% 33小1% 197% 200% 589% 46.9% IIT 251 25.6 331 380 418 36“4 MRP 20‖0 199 206 330 594 47“1 全 体 213 255 216 268 572 47‖7 *)各年数は,新製品の販売開始からの経過年数である。加重平均は,売上高ウェイ トによる。製番方式(n=i99),JIT(n=49),MRP(n=151),全体(n= 423)。 それでほ,以上のような製品のライフサイクルの変化の中で,原価の管理の ウェイトほどのように変化してきているのか。新製品が構想・企画されてから 具体的に製品が出来上る■までの段階を,製品企画,基本設計,詳細設計,製造 準備そして製造の5段階にわけ,どの段階でそれぞれどれだけ原価の管理が可 能かを検討した結果が,表−10(現在),義一11(将来)である5)。 表−10によると,全体でほ,上記5段階のうち,製品企画での原価の管理可 能性が最も高く(23.8%)なっており,基本設計(21.6%),製造(20.5%), 5)このことについては,BSBlanchard,DesなnandManageto L,ifizCycleCbst,M/A Press,1978(宮内一・郎訳『ライフサイクル・コストの実際』日本能率協会,昭和54年), および東京理科大学・原価工学研究室編『「新製品開発における原価目標・VE・原価見療」 の実態調査』日本バリュー・エンジニアリソグ協会,1985年を参考にした。香川大学経済学部 研究年報 28 J一媒 −JO− 詳細設計(183%)そして製造準備(15.9%)という順に,原価の管理可能性 が小さくなってきている。製造段階にはいる前(すなわち製品企画から製造準 備の段階まで)と製造段階を比べると,ブランチャ・−ドが言っているはど(95 %)にはならないが,製造にはいる前に,すなわちブラニソグの段階で製造原 価の80%近くがすでに決まっており,製造段階でのコントローリレ可能性ほわず か20.5%に過ぎなくなってきている。 生産管理の方式別にはぃJITでは製品企画段階,MRPでは製品企画と基本設 計を合わせた段階,そして製番方式でほ,.丁IT,MRPに比べると,コントロー ルすなわち製造段階を,より重視する傾向にあるのが現状である。 表−10 原価の管理可能性(現在) 製品企画 基本設計 詳細設計 製造準備 製 造 製番方式 20.0% 223% 19‖4% 16“5% 21.9% JIT 33亘5 167 14小6 15.8 19.4 MRP 25.6 229 18小7 15小4 175 全 体 238 216 183 15小9 205 *)製番方式(n=209),JIT(n=51),MRP(n=152),全体(n=435)。 それでほ,次に将来の場合を,表−11によってみてみよう。全体的には,製 品のブラニソグの段階,とりわけ製品企画と基本設計の段階が重視されており, 製品コンセプト形成の段階での原価の絞り込みおよび管理が重要かつ可能であ 表−11原価の管理可能性(将来) 製品企画 基本設計 詳細設計 製造準備 製 造 製番方式 354 3小79 303 239 202 JIT 4“00 4“00 3.14 2。43 180 MRP 3.86 3.59 2.91 2.45 202 全 体 3小73 3.72 2.98 2“41 198 *)1位(5点),2位(4点),3位(3点),4位(2点)そして5位(1点)とし て計算し,その各段階の合計を回答企業数で割って平均をだした。製番方式(n= 196),JIT(n=50),MRP(n=148),全体(n=415)。
−JJ− 生産管理システムの変革と原価管理への影響 り,従って原価の管理上今後ますます重要性を増していきそうである。 生産管理の方式別には,いずれの場合にも,製品企画,基本設計という段階 を重視する傾向には変わりないがトJITで製品企画,基本設計の段階のコストダ ウンを重視する傾向が顕著になってきている。 Ⅴ この節では,企業のコストダウンにおける重要な課題とその手法についてし らべた。結果は,表−12,13のとおりである。 表−12 コストダウンにおける課題 課 題 製番方式 一丁IT
MRP 全 体
原材料の購買管理 2り16(1=) 282(1) 221(1) 225(1) 品質管理(TQCを含む) 1.76(2) 190(2) 159(3了) 1.73(2) 歩留りの向上 1.35(3) 092(7) 181(2) 1い46(3) 機械設備の更新・増設 129(4) 086(8) 135(4二) 127(4) 設計の合理イヒ 115(6) 132(3) 102(6二) 112(5) 適切な操業度の維持 1.08(7) 0.86(8) 127(5) 1=11(6) 作業時間の缶縮 1.16(5) 1.26(4) 087(9) 1.04(7) 工場経費の節減 0.95(8) 112(5) 097(7) 1.01(8) 在庫管理 0て3(9) 0.36(14) 0て2(11) 0.69(9) 工程組合せの合理イヒ 0け57(11) 1.06(6) 073(10) 0‖68(10) 外注管理 086(10) 0.80(10) 045(12) 0.68(10) 原材料の転換 057(11) 048(12) 088(8) 0小67(12) 製品品種の標準化 0.42(14) 016(15) 036(13) 038(13) 作業の標準化 0小49(13) 072(11) 036(13) 045(14) 研究開発管理 0.38(15) 040(13) 0。34(15) 037(15) その他 0.08(16) 0小00(16) 0‖14(16) 0.09(16) *)製番方式(n=211),JIT(n=50),MRP(n=159),全体(n=442)。数字 は,重要性のポイントを示す。括弧内の数字は,順位である。ポイントは,1位→ 5点 ,5位→1点に換算し,それぞれの項目ごとに集計し回答企業数で険し て計算した。香川大学経済学部 研究年報 28 −J2− J鎚7g 51コストダウンの課題 コストダウンのための主要課題とその重要性のランクほ,表−12のとおりで ある。全体では,原材料の購買管理が最も高く(2。25),2位以下を0‖5ポイン ト以上も引き離し,最も重要な課題に.なっている。それに関連して,設計の合
理化(1“12,5位)や外注管理(0.68,10位)があり,製品の企画,設計,お
よび部品などを内製するか外注に出すかという製造準備という製品のブラニソ グの段階に関連する課題が,まず緊要であることがわかる。次に,品質管理(TQCを含む)が1”73,2位となっており,現場のQCサー
クルなどを活用して,全社的に製品の品質を向上させようという取組みが,従 業員のモラ1一ルの向上とも結び付いて重視されている。これほ,表からもわか るように,いずれの生産管理形態をとっている場合にもほぼ同様であり,日本 的な経営では普遍的に重視されており,個々の原価管理の課題を追求する前提 条件であり,最近,品質コスト(qualitycost)などとしてアメリカなどでも注目 されてきている。 第三には,原材料などのロスを少なくする歩留りの向上(146),第四に,FA, FMS化などの最近の傾向を反映して,設備投資の問題(機械設備の更新・設計) (1.27,4位)がいわれており,ついで操業度の向上,作業時間の短縮や工場経 費の削減といった課題が挙っている。 生産管理の方式別に,コストダウンの課題の特徴を列挙すると,次のように なる。製番方式では,ほぼ全体の僚向と似ているが,ただ作業時間の短縮,外 注管理,在庫管理という項目が重要になっている点に,組立生産,機械的進行 生産の企業が多いという業種の特性が反映されている。 IITでほ,原材料の購買管理が2い82と飛び抜けて高くなっており,設計の合 理化も第3位(1..32)と,原価管理のプラニングに関する事項がとりわけ重要 になっている。次に,作業時間の短縮(1‖26,5位)や工程組合せの合理化(1 06,6位)という生産工程の合理化(コントロール)に関する事項が重視され ている。それに加えて,エ場経費の節減(1.12,5位)という工場全体の間接 部門の合理化も重要になっている。もちろん,TQCを含めた品質管理は,他の 場合と同様2位であるが,そのポイントほより高くなっている。逆に,歩留り生産管理システムの変革と原価管理への影響 ーJ3− の向上,設備投資,在庫管理などほ,重要性のポイントが低くなっている。 MRPで特徴的な点は,歩留りの向上(1.81,2位),機械設備の更新・増設 (1.35,4位)および適切な操業度の維持(1.27,5位)であり,他の場合に比 べて重視されている。もちろん,原材料の購買管理とTQCを含めた品質管理 は,ここでも最も重要な課題であることに変わりない6)。 52.コストダウンの手法 ここでは,原価管理の課題を達成するために,どのようなコストダウンの手 法が用いられているか,表−13によって検討しよう。いずれの生産管理の方式 にも共通する特徴ほ,予算編成・統制が最も重要であること,原価企画・原価 見積および全社的品質管理が重要な手法になっていることである。 6)なお,各企業にコストダウンのための重要課題として−上位5つを選択Lてもらった結果 は,以下のとおりである。 課 題 製番方式 .JIT MRP 全 体 原材料の購買管理 140(606%) 38(704%) 111(64.5%) 303(629%) 品質管理(TQCを含む) 118(511) 28(519) 88(512) 250(519) 歩留りの向上 92(398) 16(296) 93(54一1.) 213(442) 工場経費の節減 96(416) 24(444) 81(471) 212(440) 機械設備の更新・増設 96(−416) 20(370) 76(442) 206(427) 作業時間の短縮 88(381) 26(482) 49(285) 169(351) 適切な操業度の維持 78(338) 13(241) 67(390) 167(347) 設計の 合理化 80(346) 23(426) 48(279) 157(326) 在庫管理 76(329) 9(167:) 52(302) 144(299) 外注管理 71(307) 18(333) 33(192) 126(261) 工程組合せの合理化 57(247) 19(352) 37(215) 117(243) 原材料の転換 45(195) 8(148) 44(256) 102(212) 作業の標準化 46(199) 15(278) 25(145) 89(185) 製品品種の標準化 35(152) 4(74) 24(140) 67(139) 研究開発管理 28(121) 10(185) 17(9,9) 60(125) その他 4(17) 0( 0) 8(47) 13(2−7) *)製番方式(n=231),JIT(n=54),MRP(n=172),全体(n=482)。上位5位までの 項目として,○を付けた企業の合計数(構成比)である。
香川大学経済学部 研究年報 28 −J・J− J一対β 製番方式では,予算編成・統制の重視度が(6.90,1位)であり,ついで原 価企画・原価見積(5日揖,2位)が高く,全社萬品質管理層.(4..67,3位)に なっている。伝統的な原価管理の手法である会計的な管理手法は,実際原価計 算(374)や標準原価計算(3..69)がそれぞれ4位,5位になってトおり,他の 場合に比較して,原価管理上それらの伝統的な会計手法がいまなお重要である ことを示唆している。次に,生産管理的な物量標準(6位),VE・VA(8位) やIE(9位)という手法である。また,現場からの参加的な管理の方法である 目標管理も7位になっている。 JITでも,予算編成・統制が1位(7,.69)であり,そのポイントも高くなって いる。ただ,.IITで特徴的なことは,原価企画・原価見積のウェイトが高い(6 表−13 コストダウンの手法 手 法 製番方式 .丁IT MRP 全 体 予算編成・統制 6小90(1) 769(1) 7小69(1) 735(1) 原価企画・原価見横 5。63(2:) 620(2) 4.25(3) 505(2) 全社的品質管理(TQC) 467(3) 445(4) 4小63(2) 4小61(3) 実際原価計算 374(4) 403(5) 3小53(7) 3。79(4) 生産管理的な物量標準 358(6) 3小07(7) 4“01(4) 3.67(5) 標準原価計算 369(5) 2.66(8) 3,74(5) 3.55(6) 価値工学(VE)・価値分析(VA) 3.10(8) 5.13(3) 3.45(8) 3小47(7) 目標管理(MBO) 3.20(7) 3小12(6) 356(6) 3小24(8) IE 1り64(9) 2小65(9) 2。40(9) 2.08(9) シュ ミ レ・−ショ こ/ 0.19(11) 0.10(13) 0“74(10) 0.39(10)
PERT/CPM
023(10) 0。00(14) 0“10(14) 0.15(11) 回帰分析 016(12) 020(10) 0小11(11) q小14(12) 数理計画法 0.08(13) 018(12) 0小11(11) 0.12(13) その他 003(14) 0小20(10) 0。11(11) 0い10(14) *)製番方式(n=222),JIT(n=51),MRP(n=166),全体(n=464)。数字 は,重要性のポイソトを示す。括弧内の数字は,重要性の順位である。なお,ポイ ントは,1位から14位までそれぞれの企業で採用している手法に重要性の順位を付 けてもらい,1位→14位,…14位→1点に換算し,それぞれの項目毎に集計し, 回答企業数で険し,10/14倍して算出した。生産管理システムの変革と原価管理への影響 −J5− 20,2位.)ことであり,またその際に原価の絞り込みのために用いられるVE・ VAも同様にウエイトが高く(5“13,3位)なっていることである。また,全社 的品質管理(4.45,4位■)と相まって目標管理(312,6位)も重視されてお り,現場の総力を結集する手法として重要である。道に,標準原価計算や生産 管理的な物量標準による方法は順位が低くなってきている。 最後に,MRPの場合にも,予算編成・統制のポイントが飛び抜けて高くなっ ている。そのつぎにほ,生産管理的な物量標準や標準原価計算が重視されてい ることである。全社的な品質管理や目標管理という現場管理の手法ほ,MRPの 場合にも,同様に重視されていることがわかる7)。 7)なお,質問票に■ぁるコストダウンの手法を,どのくらいの企業が導入しているかものとし て)を尋ねた結果は,次のとおりである。 手
法 製番方式 IIT
MRP 全 体 予算編成・統制 173(752%) 47(870%) 144(842%) 387(806%) 原価企画・原価見横 147(639) 38(704:) 85(497) 278(579) 全社的品質管理(TQC) 127(552) 29(53“7’) 94(55小0) 263(54小8) 実際原価計算 101(439) 26(48.2) 71(415) 214(446) 生産管理的な物量標準の設定 94(409) 20(370) 83(485 二) 207(43.1) 標準原価計算 96(417) 18(333) 76(444) 198(413) 価値ユ学(VE)・価値分析(VA) 82(357) 34(630) 67(392) 193(402) 目標管理(MBO) 82(二357) 19(352) 72(421) 178(37.1) IE 48(20−9) 19(352 二) 51(298) 126(26.3) シ/ユ ミ レーシ′ヨ ン′ 9(39) 1(1小9) 17(99) 28(5.8) 回帰分析 6(26 二) 1(19) 4(23) 11(23) 数理計画法 5(22) 1(19) 4(2小3) 11(2小3) P耳RT/CPM 8(35) 0( 0) 4(23) 12(2小5) その他 2(09) 1(1小9) 2(12) 5(1.0) *)製番方式(n=222),JIT(n=51),MRP(n=166),全体(n=464)。表中の数字は採 用企業数、括弧用の数字は採用企業の割合を示す。香川大学経済学部 研究年報 28 J脱 −ヱ6− ⅤⅠ この節では,最近の原価管理のシステム化,消費者こニ‥−ズの多様化・個性化 による生産方式の変化,製品ライフサイクルの短縮,コストダウンの課題とそ の手法などが,原価の構成と棚卸資産の在庫にどのように反映しているか,生 産管理の方式別に比較してみよう。同時に,原価管理上,それぞれの費目の重 要性,また各費目の過去および将来の推移をも合わせて検討することにより, 原価の構成の変化から,それらの事項の管理上の意義を推測してみたい。 6..1..製造原価の構成 (1)直接材料費
まず,直接材料費については,JITとMRPでは,いずれも単純平均で60%
強,加重平均で67%と,製番方式(単純平均54.1%,加重平均53..6%)に比
べてかなり高ぐなっている。また同時に,規模の大きい企業では,直接材料費 の比率がかなり高くなっていることもわかる。逆に,製番方式では,規模の大 小にほほとんど関係なく,54%前後とかなり低くなっている8)。 直接材料費ほ,その構成比からしても,とりわけ管理上重要であることほ, いずれの生産管理の方式の場合にも言えるようである。また,増減率について は‥JITでは,これまで若干増加の傾向にあったようであるが,将来は,いずれ の場合にも減少すると考えている企業が2倍以上になっている。このことは, HTにおける原材料の購買管理などが大変重視されている原因にもなってい 8)JITを採用している企業のうら20社が,外注加工費を直接材料費に含めて処理している ので,留意するる必要がある。なお,直接材料費と外注加工費を合計すると次のようになる。 単 純 平 均 加 重 平 均 製番方式 6524% 6324% IIT 6843 7224 MRP 6574 7138 合 計 65小77 6872生産管理システムの変革と原価管理への影響 −J7− 表−14 直接材料費 構 成 比 重要性 増 減 率 単純平均 加重平均 過 去 将 来 製番方式 5406% 53.63% 9.51 0.61 058 JIT 6144 67.25 960 1.25 061 MRP 60小04 67.59 962 0.63 0小62 全体 5715 61.53 9.56 0.68 0.60 *)製番方式(n=223),JIT(n=49),MRP(n=167),全体(n=465)。ウェイ トは製造原価ウェイトである。重要性のポイントは,1位→8点,・,8位→1 点として得点を集計し,それを10/8倍して,10点満点で何点かを計算した。増減率 =(増加と回答した企業数)/(減少と回答した企業数)。なお,「変化なし」と回 答した企業は除外した。以下同様。 (2)間接材料費 間接材料費は,いずれの場合にも,単純平均では3%台の前半であり,加重 平均では2.4%と,規模の大きいところでは,相対的に間接材料費の比率は小 さくなっている。ただ,JITでほ,規模の大小にかかわらず比較的高く,また過 去/将来とも増加する傾向にあると考えている企業の方が,多くなっているの が目立った点である。 表−15 間接材料費 構 成 比 重要性 増 減 率 単純平均 加重平均 過 去 将 来 製番方式 3.15% 274% 382 0.59 0.63 JIT 333 3.09 438 1.33 1.50 MRP 339 2小07 336 0.76 0.92 全体 322 2小40 372 0.73 0.78 *)製番方式(n=223),JIT(n=49),MRP(n=167),全体(n=465)。ウェイ トは製造原価ウェイトである。
香川大学経済学部 研究年報 28 J9ββ −Jβ− (3)直接労務費 直接労務費は,表−16のとおりである。全体では,若干規模の大きい企業で, 直接労務費の構成比が小さくなっている。個別的には,製番方式とMRPで同 様の傾向が見られるが‥JITでは,逆に規模の大きいところで若干高くなってい る。重要性についてほ,構成比が,直接材料費についで2番目に・大きいことも あり,現在もなお管理上重視されていることに変わりはない。また,直接労務 費の増減率は,.JITでは過去/将来とも減少傾向にあると考えている企業が若 干多くなっている。 表−16 直接労務費 構 成 比 増 減 率 重要性 単純平均 加重平均 過 去 将 来 製番方式 12.24% 1175% 7小86 1.26 072 丁IT 1101 1150 830 0小80 089 MRP 1192 932 802 1.03 0.85 全体 11.85 1035 793 1.10 0.67 *)製番方式(n=223),JIT(n=49),MRP(n=167),全体(n=465)。ウェイ トほ製造原価ウエイトである。 (4)間接労務費 間接労務費については,表−17のとおりである。全体でほ,規模の大きい企 表−17 間接労務費 構 成 比 増 減 率 単純平均 加重平均 重要性 過 去 将 来 製番方式 5“68% 373% 447 228 0“88 JIT 5.38 324 485 1.19 0‖89 MRP 4小28 311 4。02 1小63 0.85 全体 5小10 333 4小31 1小92 084 *)製番方式(n=223),JIT(n=49),MRP(n=167),全体(n=465)。ウェイ トほ製造原価ウェイトである。
生産管理システムの変革と原価管理への影響 ーJ9−
業で,間接労務費は2%近く減少している。また,増減率をみると.,間接労務
費ほ,過去には増加しているが,将来的には減少傾向にあると考えている企業
が若干多くなっている。また,その僚向は製番方式で顕著にみられる。
(5)外注加工費外注加工費については,表−18のように,製番方式で最も高く,JITそして
MRPの順に低くなっている9)。これは組立生産で外注加工費が高くなっている
ため,それぞれの生産管理の方式に風立生産の企業がどれだけ含まれているか,
と関係が深くなっている。そのことほ,管理上の重要性にも反映されている。
また,増減率をみてみ.ると,過去にはいずれの場合に・も増加値向にあり,製番
方式とMRPでほ,なお今後も増加すると考えている企業が若干多くなってい
る。ただ一丁ITでほ,将来は減少するという企業の割合がとりわけ高くなってい
る。最近の傾向からすると,今後とも外注加工費の管理は,材料費の管理とも
関連して重要であることに変わりない。
表−18 外注加工費 構 成 比 重要性 増 減 率 単純平均 加重平均 過 去 将 来 製番方式 1118% 9‖61% 6小22 2小02 119 JIT 6.99 4.99 4.92 146 037 MRP 570 413 4“49 229 158 全体 862 719 543 195 1.21 *)製番方式(n=223),一JIT(n=49),MRP(n=167),全体(n=465)。ウェイ トは製造原価ウエイトである。 (6)減価償却費 最近,ライフサイクルの短い製品の生産のため,FA,FMSを始めとする生 産技術のための設備投資が重要になってきている。それに関連して,減価償却 費の管理は,特に重要性を増している。そのことは,この5年間に,減価償却 9)注8)を参照のこと。香川大学経済学部 研究年報 28 −ヱ()− J.卿 費の構成比が,単純平均で3.47%(1980年)から4い56%(1985年)に増加し ていることからも窺える。 生産管理の方式との関連では,JITとMRPでの構成比の割合(単純平均で二) が高ぐなっている。また,減価償却費の管理の重要性も,.JITとMRPで若干高 くなっている。また,増減率については,過去にはいずれの方式でも増加傾向 にあり,とりわけ.JITでは,ほとんどの企業で増加傾向にあったようである。 また,今後ともいずれの場合に.も,増加するという企業が2倍以上になってお り,将来にわたって減価償却費の管理は重視されるであろう。 表−19 減価償却費 構 成 比 重要性 増 減 率 単純平均 加重平均 過 去 将 来 製番方式 3‖88% 4.63% 424 357 227 JIT 504 4‖96 507 5.00 289 MRP 5.16 4。65 4‖70 2。76 2て1 全体 456 455 452 3.35 262 *)製番方式(n=216),JIT(n=50),MRP(n=164),全体(n=454)。ウエイ トは製造原価ウエイトである。 (7)動力費 動力費については,表−20のごとく,全体で3.13%(単純平均で)であり, 表−20 動力費 構 成 比 重要性 増 減 率 単純平均 加重平均 過 去 将 来 製番方式 285% 3小13% 350 075 0.77 丁IT 2.52 1.78 3.57 350 2..00 MRP 3“32 2.93 419 102 0.67 全体 3.13 288 383 1.03 0‖82 *)製番方式(n=223),JIT(n=49),MRP(n=167),全体(n=465)。ウェイ トは製造原価ウェイトである。
生産管理システムの変革と原価管理への影響 −2J− 重要性は3い83,そして増減率については,過去1.03,将来0い82と今後は若干 減少傾向にある。JITでは,動力費の構成比は低いが,増減率が過去,将来とも に増加すると考えている企業が多いのが目立っている。 (8)直接費と間接費 直接費と間接費の構成によっても,製造原価の管理の仕方が異なってくると 思われる。直接費と間接費の比率ほ,表−21のとおりである。全体では,規模 の大きい企業で,若干直接費の比率が高くなっていることがわかる。 生産管理の方式別では卜JITでの直接費の比率が高くなっており,とりわけそ の儀向は規模の大きい企業で強くなっている。また,製番方式では,逆に規模 の大きい企業での直接費の比率が低くなっている。そのことは,コストダウン の課題にも反映されており,.HTでの原材料の購買管理,設計の合理化などの課 題が重視されていたことにも表れている。 表−21直接費と間接費
直 接 費
間 接 費
単純平均 加重平均 単純平均 加重平均 製番方式 77小48% 7499% 22“52% 2501% JIT 79.45 8374 2055 1626 MRP 7766 8104 2234 18。96 全体 7763 7906 22小37 20。94 *)製番方式(n=223),JIT(n=49),MRP(n=167),全体(n=465)。ウエイ トは製造原価ウェイトである。ここで,直接費=直接材料費+直接労務費+直接経 費(外注加工費)をいう。 (9)固定費 FA化,FMS化を反映して減価償却費などが増加した結果,表−22に示すよ うに,固定費は増加傾向にある。そのことは,固定費の増減率にもあらわれて おり,過去にはいずれの場合にも増加したという企業が多くなっている。また, 具体的な構成比をみると,全体では,規模の小さい企業でその構成比が大きく香川大学経済学部 研究年報 28 ー22− J9ββ なっている。 JITと製番方式では,全体と同じ傾向にあり,とりわけJITでは小規模な企 業での固定費増加の割合が著しい。MRPでは,逝にり大規模な企業での比率が 高くなっている。将来の傾向についてほ,増減同数か若干減少傾向にあるとい う場合が多くなっている。減少の傾向は,刀Tで若干高くなっている。 表一22 固定費
構 成 比
増 減 率 単純平均 加重平均 過 去 将 来 製番方式 2612% 20“62% 1.58 0.98 丁IT 2820 17小85 169 0小63 MRP 23.03 2679 1。79 104 全体 2538 2142 1.65 096 *)製番方式(n=173),JIT(n=36),MRP(n=119),全体(n=349)。固定費 率=固定製造原価/製造原価×100。 62‥ 製通原価以外の費用 企業全体のトータルなコストダウンという観点からは,製造原価だけでなく 販売費,一・般管理費および金融費用のような製造原価以外の費用の管理にも目を向ける必要がある。以下,それらの費用の動向を検討してみよう。
(1)販売費 まず,販売費の売上高に対する比率を,表−23によって,検討してみよう。 全体では,8.62%(単純平均),7い77%(加重平均)と,規模の小さいところ で,販売費の比率が高くなっている。また,生産管理の方式別にみてみると, 注文生産が60%を越えている製番方式と.JITでは,販売費の比率が低く(とり わけ.JITで低い)なっており,逆に市場見込生産が66%を越えているMRPで は,販売費の比率が10%を越えている。製品の市場的特性との関係が強くみら れることがわかる。 増減率については,過去・将来ともに増加すると考えている企業が2倍以上生産管理システムの変革と原価管理への影響 −まヲー になっており,販売費の管理は,今後、ますます重要になってくるであろう。 表−23 販売費 比 率
増 減 率
単純平均 加重平均 過 去 将 来 製番方式 7.80% 6小39% 256 209 JIT 568 558 230 1小58 MRP 1051 1018 289 3小08 全体 8小62 7.77 264 229 *)製番方式(n=173.),JIT(n=36),MRP(n=119),全体(n=349.)。販売費 比率=販売費/売上高×100,ウェイトほ,売上高ウェイトである。 (2)「・般管理費 次に,−・般管理費の場合を,表一24によって検討してみよう。全体では,7 15%(単純平均),6.47%(加重平均:)と規模の小さいところで若干高くなっ ている。また,増減率についても,過去にほ282と増加傾向が強く,将来は若 干減少と回答している企業が多くなっている。 個々にほ,.JITにおける−・般管理費の比率が4%台(単純,加重平均とも)と 他の場合に比べて,非常に低くなっているのが特徴的である。増減率について は,いずれの場合にも,過去には増加したという企業がかなり多く(とりわけ IITで)なっている。 表−24 一般管理費 比 率増 減 率
単純平均 加喜平均 過 去 将 来 製番方式 714% 7“36% 253 072 丁IT 4小68 408 3小75 089 MRP 8。22 699 3。11 112 全体 715 6.47 282 087 *)製番方式(n=173),JIT(n=36),MRP(n=119),全体(n=349)。一・般管 理費比率=−・般管理費/売上高×100。ウエイトほ売上高ウェイトである。香川大学経済学部 研究年報 28 J.鰯 −24− (3)金融費用 企業の負担する金融費用も,全社的/トータルなコストダウンという観点か らは,重要な課題である。表−25によると,全体では,2い3%前後(単純平均, 加重平均とも)となっており,増減率は,過去・将来ともに減少傾向にある企 業が非常に多くなっている。 生産管理の方式別にみると.トJITでの金融費用の負担が,他の場合に比べて約 半分になっており,ここでも.JITにおけるトータルなコストダウンの方向がみ られる。ただ,増減率についてほ,いずれの場合も,過去・将来ともに減少傾 向にある企業が2倍以上になっており,金融費用の負担は,わが国製造企業で ほ自己資本の充実につれて,今後ともかなり減少していくことが予想される。 表−25 金融費用 比 率
増 減 率
単純平均 加重平均 過 去 将 来 製番方式 2。40% 281% 0小31 0。31 丁IT 1“38 120 048 0。42 MRP 2“32 2.04 039 0小20 全体 2.25 231 036 0.27 *)製番方式(n=173),JIT(n=36),MRP(n=119),全体(n=349)。金融費 用比率=(支払利子+支払割引料)/売上高×100。ウェイトは売上高ウェイトであ る。 6.3.棚卸資産の変化 ここでは,原材料,仕掛品,製品およびそれをあわせた棚卸資産の在庫期間 と,それらの将来の増減率を検討する。そのことにより,生産管理の方式別に, わが国企業の棚卸資産の在庫期間の実態と今後の動向を見極めたい。 (1)在庫期間 まず,現在の棚卸資産の在庫期間は,表一26のとおりである。全体では,原 材料在庫期間が0.33月(単純平均,加重平均とも),仕掛品在庫期間は071月生産管理システムの変革と原価管理への影響 −25−
(単純平均),076月(加重平均),そして製品在庫期間は0・・88月(単純平均),
0.67月(加重平均)と,製品在庫期間ほ規模の大きい企業で若干短くなっている。
生産管理の方式別には,.JITでほ,在庫期間が原材料,仕掛品,製品のいずれ
をとっても,従って,また棚卸資産の在庫も,他の二つの場合に比べて特に短
くなっている。とりわけ,大規模な.丁IT企業で,その傾向が顕著になっている
ことがわかる。次に,棚卸撃産の在庫期間が短いのは,MRPの場合であるが,
MRPの特性から来るのだと思われるが,製品在庫期間ほ最も長くなっている。
これはMRPにおいて,市場見込生産が多かったこととも関連している。製番
方式については,相対的に在庫期間はいずれの場合も長いが,とりわけ仕掛品
在庫期間が長くなっている。しかも規模の大きい企業で,その儀向が強くなっ
ている。これは,製番方式には,組立農産と機械的進行生産(とりわけ機械的
進行生産の比率が高くなっている)の割合が高いためであろう。
表−26 棚卸資産在庫期間 原材料在庫 仕掛品在庫 製品在庫 棚卸資産 単 純 加 重 単 純 加 重 単 純 加 重 単 純 加 重 製番方式 0“35 0‖38 106 130 075 062 2“17 231 JIT 0.15 0小08 0.33 0.27 045 040 0.93 076 MRP 0小35 0小30 0.39 0小39 1.17 079 1小91 148 全体 0.33 033 071 0.76 0り88 067 1小92 1小77 *)製番方式(n=232),JIT(n=54),MRP(n=174),全体(n=486)。棚卸資 産在庫期間(月)=棚卸資産期末在高/年間売上高×12。「単純」は単純平均,「加 重」は加重平均。ウエイトは売上高り・エイトである。 (2)将来の傾向 最後に.,棚卸資産在庫の将来の推移を,表−27によって検討しよう。表から もわかるように,いずれの生産管理の方式の場合にも,今後,原材料,仕掛品, 製品在庫のいずれをとっても,在庫は減少すると考えている企業が圧倒的多数 になっている。日本の製造企業では,これまでもいずれの業態の企業でも棚卸 在庫の削減に努め,実際にも在庫を削減してきているが,今後とも「ゼロ在庫香川大学経済学部 研究年報 28 −26− エ卿 (zero−inventory)」にむけて,その努力ほ継続されるであろう。 表−27 棚卸資産の増減率 原材料在庫 仕掛品在庫 製 品 在 庫 製番方式 0“10 0.15 015 JIT 0.09 0小12 0.09 MRP 011 0.14 018 全 体 011 014 014 *)製番方式(n=232),JIT(n=54、),MRP(n=174),全体(n=486)。 ⅥI 以上の節で,わが国製造企業における原価管理のシステム化 こニ−・ズの多様 化・個性化と生産方式への反映,製品ライフサイクルの短縮とコストダウン, 原価管理における重要課題とその手法,および原価構成と棚卸資産在庫の変化 を,生産管理の方式別にどのように異なるかを考察してきた。 まず,原価管理のシステム化については,.JITを中心にいずれの方式でも何ら かの形でコンビュ・−・タが環極的に原価管理に導入されており,また情報の多目 的利用のためのデータベース化についても同様に,.JITを中心に導入が進んで おり,今後導入がより一層進展していくものと思われる。 また消費老ニーズの多様化・個性化に対応するため,個々の製造企業は多品種・ 小ロット生産の傾向を強めている。多品種・小ロット生産化は,とりわけ.JITで 最も進行しているが,その他の場合にも同様に多品種・小ロット生産が進行し ている。ただ,生産量についてほ,生産方式などの違いにより若干異なるが, 少量生産を中心に,中量,大量生産もそれぞれ1/4前後を占めており,必ずし も少量生産の方向にだけ向かっているとはいえない10)。 10)詳しくほ,拙稿「わが国企業における多品種・少量・小ロット生産の動向一欧米企業との 比較において−」,『香川大学経済論叢』第61巻第3号,1988年12月,124−135ページを 参照のこと。
生産管理システムの変革と原価管理への影響 −27− 製品ライフサイクルの短縮化も‥IITを中心に進行しており,また製番方式で も電気機械等の大規模な企業では,同様の傾向にある。製品ライフサイクルの 短縮の原価管理への影響は,製品企画,設計の段階を中心にブラニソグの段階 における原価の絞り込みの重視が目立つことであり,とりわけ.JITにおける製 品企画の段階の重視が目につく。このような儀向から判断すると,現在だけで なく,将来にわたってますますブラニソグの段階の原価管理が強化されていく であろう。 コストダウンの課題とその手法についても,上述のようにブラニソグの段階 が重要になってきているのに相応しい設計の合理化,原材料の購買管理など川 上での管理(「上流管理」)が重要になってきていることが理解できた11)。また, 原価管理の課題の変化に応じて,原価企画・原価見積などの新しい原価管理の 手法が,.JITを中心に広く普及してきている。 原価の構成の側面から眺めると,.IITでは,製造原価の低減だけでなく−・般管 理費,販売費,金融費用などを含めた企業のトータルな原価の削減・低減の方 向を目ざしている様子が窺え.た。 最後に,棚卸資産の回転期間については,日本ではいずれの企業でも在庫の 削減に積極的に取り組んできていることが,これまでにもよく指摘されてきた。 実際に調査してみても,一JITにおいては,原材料,仕掛品,製品のいずれの段階 でも在庫回転期間が,他の場合に比べて,非常に短くなっていることが改めて 理解できた。また,日本企業では,.丁ITだけでなくいずれの場合にも,これまで も在庫の回転期間が短縮されてきているだけでなく,今後とも積極的に「ゼロ 在庫(zero−inventorIy)」をめざして,在庫期間の短縮の努力がなされていくであ ろうことも明らかになった。(1988.12.26) 11)例えば,広本敏郎稿「管理会計覚書」,『一層論叢』第100巻第5号,1988年11月を参照 のこと。