転換期 にある
,亀取市財政の現状 と課題
藤 田 安 ― キ は じ め に 一一 問題の所在 ――I現
在のJミ取市財政における歳入 。歳出構造 とその特徴1.現
在′ミ取市の歳入構造 とその特徴2,現
在鳥取市の歳出構造 とその特徴 Ⅱ ′ミ取市における公共事業の展開と市債残高の累積 Ⅲ 財政指標か らみた鳥取市財政の特徴 Ⅳ 鳥取市における人件費の抑制 と市直営業務の委託化の推進V
転換期にある鳥取市財政 お わ り に 一一 鳥取市財政の今後の課題 と展望 一一 は じ め に 一 ― 問 題 の 所 在 一 一 現在 (2000年 度木),国
と地方 自治体 を合わせ た公債残高 は,実
に645兆円にものば り,2001年
度木では666兆 円に達す る見込み となっている。国民 主人当た り約 524万 円の借金 を背負 ってい る計 算になる。2000年度公債残高645兆円の うち,364兆
円は国債,130兆
円は地方債であり,地方債残 高は国債残高の約3分の1に当たる。だが,量
・率だけ比較 して,地
方 自治体 は国より「まだ,ま
しだ」と言 って済 ます ことはで きない。はるかに,地方 自治体 は国より多 くの仕事 を行 ってお り,そ の仕事 はおよそ住民生活に直接関係す る。それだけに,地方 自治体の財政危機 は住民生活 に深刻 な 問題 を投 げかけ ざるをえない。 加 えて,2000年
度 か ら実施 された介護保険制度 は ,そ の実施主体が市町村 となり,また一つ重要 な社会保障 を自治体が担 うことになった。しか し,政
府 の宣伝のわ りには介護保険制度 が順調 に運 用 されているわけではな く,要
介護認定の段階か ら介護サービスの利用段階 に至 るまで,種
々の問 題点が指摘 されて きた。なかで も,介護保険料の負担 と介護サービスの 1割負担の2重 の負担 は,介 護サービスの利用者 にとって重 く,時
には耐 えがたい苦痛 となっている。そのため,財
政的に保険 料の軽減措置 を講 じようとす る地方 自治体 が,最
近増 えて きている。さらに,介
護保険の枠 内では 不十分だ として,「上乗せ」「横 だ し」とい う市町村独 自の介護サービスを提供 している自治体 も少 な くない。いずれの場合 も,介
護保険の実施 は市町村財政への関心 を高める契機 となってい る。 他 にも,国
民健康保険料の滞納問題は ,こ こ数年来,市
町村財政 にとっての悩みの種であ りつづ けている し,現
在具体的に検討 されつつ ある市町村合併 は ,自 治体財政危機 の克服 が一つの重要 な *FWITAYasukazu 経済学 (財政金融論,日 本経済論)専攻藤田安一 :転換期にある鳥取市財政の現状 と課題 課題 とされてい るだけに
,一
層市町村財政への関心 を高 め ざるをえない。これ ら,現
在起 こってい る諸問題 に対 して,市町村財政 はどの ように対処 しようとしてい るので あるうか。本稿の課題 は,こ うした問題意識の もとで,鳥
取市財政の現状 を正 しく把握 し,今
後,鳥
取市財政が対応 しなければ ならない課題 を明 らかに しようとす るもので ある。 まず,簡
単 に鳥取市の概況 を説明 しておこう。 鳥取市は,鳥
取県東部 にあり,千
代川 によって形成 された鳥取平野の 中心部 に位置 してい る。】ヒ は日本海 に面 し,東 は岩美郡 ,西 は気高郡 ,南 は人頭郡 に接 した ,面 積237.09kド ,人 口約 15万 3000 名 (2000年度現在)の
都市で ある。鳥取市 における土地利用の状況 を地 目別 にみ ると,山林原野が56.6%,宅
地 が8.6%,水
面河川 が7,7%,道
路が4.29/9となっている。 鳥取市の年間総生産額 は,2000年度 において6733億 円で あ り,その うち第1次産業 が59億 円 ,第 2次産業が 2,086億 円,第 3次
産業 が4,588億円で ある。年間総生産額 を 100と した場合の割合 は, 第1次産業が0.9%,第 2次
産業32.5%,第 3次
産業71.5%であ り,年々第1次
産業の割合が減少 し ていきつつあるのが 目だつ。現在 (2000年度)産
業別の就業人口の割合 においては,第1次
産業が5.4%,第
2次産業 が28.3%,第 3次
産業が 66.3%と なってお り,傾
向的に第1次産業の減少,第
2 次産業の停滞 ,第3次
産業の増加 を示 している。特 に ,第1次
産業 とは逆 に ,第3次
産業では,1985 年の4万
1400人か ら2000年には5万
800人へ と急激な就業人口の増加が起 きている。 鳥取市民の所得額 については,年
間総所得額4660億円 (2000年 度)で
あ り,市
民 1人 当た りの所 得額 は304万6000円 となっている。近年,順
調 に伸びて きてい るとはい うものの,全
国の1人当た り平均所得額312万1000円 と比較す ると,都
市部のわ りには低位の状況 にある。 以上,簡単 に本稿の問題意識 と研究対象で ある鳥取市 について概説 した。つ ぎに,本
題で ある鳥 取市の財政分析 に入 ろう。I
現 在 の 鳥 取 市 財 政 に お け る 歳 入 ・歳 出 構 造 と そ の 特 徴1.現
在鳥取 市の 歳入構 造 とその特徴 現在2000年度 における鳥取市の予算総額 は,973億
4847万円で あ り,そ の うち一般会計 は,61
%に
当たる592億 3000万円,特
別会計 は39%の 381億
1847万円 となってい る。み るよ うに,特
別会計 は一般会計の4割 の大 きさで あり重要 な存在ではあるが ,本稿 では分析対象 を しぼ るため, 予算の要である一般会計 をとりあげ,現
在の鳥取市財政 における歳入 。歳 出構造の特徴 を明 らか に しよ う。 表1をみ られたい。これは1997年 度か ら1999年 度 における鳥取市の一般会計歳入決算構造 を示 し たもので ある。表 に したがって,その特徴 を1999年 度でみ ると,鳥取市では歳入の第1位
が市税で あり,歳
入総額の30。7%を
占めている。2位
が地方交付税の15.2%,3位
が市債の14.2%,4位
が 国庫支出金の 11,4%と なってお り,こ
の4者
だけで歳入総額の71.5%を占めている。 これ を,1989年
か ら現在 までの推移でみ ると,図
1のようになる。み るように,市
税の伸び率 に 対 して,地方交付税や国庫支出金,地
方債 などの依存財源の伸び率 が年 々高 くなっているのがわか る。とくに近年,市
債である地方債の割合が大 きくなってい るのが特徴で ある。これが,現
在鳥取 市財政の歳入構造 における第1の特徴である。なん といって も,現在2000年の地方債発行額 108億 9500万円は,1989年
の33億 9500万円に比べ ると,実
に3.2倍もの伸び となっている。鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第
3巻
第2号
(2CIC12) 表1
鳥取市 における一般会計歳入決算 (単位 :千 阿・%) (出典)鳥取市監査委員「平成11年度鳥取市歳入決算及び基金運用状況審査意見書」2000年10月 30日 ,66ペ ージ。 図1
鳥取市における一般会計歳入決算の推移 (百万円) 80,000 70,000 601000 50,000 401 000 30t000 201000 101000 0 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 (年 度) (単位:百万円) 田市務 盟地方交付税 田回県支出金 田地方僚 口その他 区 分 1999年度 1998年度 1997年度 金 額 構 成 比 金 額 構 成 比 金 額 構 成 比 自 主 財 源 市 一 税 20,306.818 20,212,547 20,123,216 分 担 金 及 び 負 担 金 1.402.351 1,420,353 1,320,714 使 用 料 及 び 手 数 料 051,148 945,807 000,120 財 産 収 入 75,138 ιl 153,888 は2 213.038 a4 葺 附 金 13.330 24,143 21.847 操 入 金 1,778,080 4,02■827 3,170,355 燥薦 越 金 L068.318 884・776 055,904 一 収 入 5,314・810 5,885,151 8,503,217 計 81,000,103 341378,727 38,203.502 微 存 財 源 ■ 方 醸 与 税 464,215 440,005 701.818 1.1 コ 子 割 交 付 金 198,017 180,050 a3 231,006 &4 地 方 消 費 税 交 付 金 1.622,460 1721721 380.881 ゴルフ場利用税交付金 30,640 451446 儀1 49.300 住1 口 動 車 取 得 税 交 付 金 26S,10o 280,340 201.240 特 別 地 方 消費税交 付 金 5■983 48,148 48.304 坤 方 特 例 交 付 金 474,019 a7 地 方 交 付 税 10.100,808 8,735,820 T,397.960 交翠安全対策特別交付金 30,41? 30,324 “ 0 35,040 国 庫 支 出 金 ■502,888 8,101.308 5,300,002 県 支 出 金 4,32C032 3,413,438 3.130,8襲 &2 便 0,452.800 1■2 0.586.200 計 34.618.130 30,557,802 4■1 21032,副 合 計 86.518.262 34,030,520 801200,855 1989 1993 1999 税 16,3501 17110( 1752 17421 18.29( 201123 20.2131 20.39i 20.61( 「更 付 税 5197( 8,06i 7.66と 8,73〔 10.101 支 出 金 8.964 9】92〔 「信 11,07( 8,752 その他 10111 11621 1226i 1つ871 17.10( 14,777 14.40モ 15.151 17.22( 14.98〔 17.981 (出典)鳥取市総務部財政課提供資料より作成。藤田安一 :転換期にある鳥取市財政の現状 と課題 そのために,こ の歳入項 目を自主財源 と依存財源 とに分類す ると
,表
1の よ うに,1999年
度では 自主財源が 48.0%に 対 して,依
存財源が 52.0%と なる。 しか し,前
年 までは自主財源が依存財源 を 超 えていたのである。それが ,し だいに依存財源の割合が高 くな り,ついに2000年度 には両者の関 係が逆転 し,依
存財源の割合 が自主財源 を超 えた。これが,現
在の鳥取市財政 における歳入構造上 の第2の特徴である。さらに ,鳥 取市財政の歳入 を一般財源 と特定財源 に分 けると,一般財源が48.2%,特
定財源が 51.8%と な り,使
途が決め られた財源の割合が,自治体の 自由裁量 によって使 える 財源 を超 えている。 つ ぎに,全
国における市の歳入 との比較 において鳥取市の特徴 をみてお こう。いま,地
方 自治法 に したがって市 を分類す ると,大
都市,中
核都市,中
都市,小
都市 となる。大都市 とは,地
方 自治 法第252条の 19項 の指定都市 を さし,札
幌市,仙
台市,千
葉市,横
浜市,川
崎市,名
古屋市,京
都 市,大
阪市,神
戸市,広
島市,】ヒ九州市,福
岡市の12市をい う。また中核都市 とは,自治法第 252 条の22第 1項の指定都市である秋田市,郡
山市,い
わ き市,宇
都宮市,新
潟市,富
山市,金
沢市, 長野市,岐阜市,静
岡市,浜
松市,豊
橋市,豊
田氏,堺
市,姫
路市,和歌 山市,岡
山市,福
山市,高
松市,高
知市,長
崎市,熊
本市,大
分市,宮
崎市,鹿
児島市 をさす。それ に対 して,中
都市 とは, 上記の大都市および中核都市以外の市で,人口 10万 人以上の市の ことをいい,小都市 とは,人口10 万人未満の市 をさす。 以上の分類 に したが うと,鳥
取市 は中都市 に入 る。そこで,他
都市 との比較 で′鳥取市財政の特徴 を明 らかに しようとす る場合,人口 も財政規模 も大 きく違 う大都市 な らびに中核都市 と比較す るよ りも,そ
れ らがかな り類似 している中者卜市 との比較の方が有益である。 図 2を み られたい。これによ り中都市の歳入構造 をみ ると,市
税で ある地方税 が全体の46.1%を 占め,地
方交付税が9.3%,国
庫支出金 が12.1%,地
方債が 7.4%と なってい る。鳥取市財政の特徴 は,これ との比較でみ ると,鳥取市の地方税 は中都市平均 よりも15ポ イン トも低 く,逆に地方交付 税は6ポイン トも高 く,地
方債 も7ポイン トも高 く,国
庫支出金 はほぼ平均並 となっている。 ここ か らわかる現在の鳥取市財政 における歳入構造の第3の特徴は,全
国に比 し,地
方税 が低 く,地
方 交付税および地方債が高い とい う点 にある。 図2 1999年
度全国中都市における一般会計歳入決算の状況 中 都 市 f缶iよ1'認)鰯 囲 ■ 霊
/岡
隠 □
地方税 地方交付税 地方脚較付全地方譲与税等 国庫支出全 地方債 都道府県 その他 支出金 (出典)総務省編『地方財政白書 (平成13年版)』 2001年,138ペ ージより作成。 つ ぎに,鳥
取 市の歳 入 にお け る市税 の内訳 とその推移 をみてお こう。図3に示 した よ うに,2000
年度 現在,市税206億 1900万円の うち最 も大 きな割合 を占めてい るの が固定 資産税 で あ り,全体 の463%を
占め るまで にな って い る。第2は
個 人市民税 の29.7%,第 3位
は法人市 民税 の14.7%,第
4 位 が都市計画税の2.6%の順 で あ る。固定 資産税 と市民税 で市税全体の76.0%と圧 倒 的 な割合 を占め ,鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第
3巻
第2号
(2002) 55
なかで も固定資産税だけで50%近
くを占めている。 さらに,図
3により時系列 的にみ ると,個
人・ 法人市民税の伸びが停滞 してい るの反 して ,固 定資産税の伸び率 が著 しく大 きくなって きてい るの が近年の特徴で ある。ここに,バ
ブル崩壊後の経済状態 を反映 して,経
済不況の影響 を受 け易い市 民税の停滞 と,不
況の影響が比較的少 な く安定 した財源である固定資産税 とい う図式が,は
っきり と現れている。 図3
鳥取市 における市税の推移 (百万円) 2510∞ 20,000 15,000 101000 5,000 0 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 (年 度) (単位:百万 円) ― 回 人 市 民 税 5,537 6,29C 61221 6,26( 法 人 市 民 税 3.03, 2.891 3,231 司 市 督 磨 薄 6.387 6、99℃ 7.56〔 8.03と 部市 計 画 税 その他 1,03, 11 1 (出典)鳥取市総務部財政課提供資料より作成。2.現
在鳥取 市の歳 出構造 とその特徴 つ ぎに,現
在の鳥取市財政 における歳出構造の分析 に入 ろう。 表2をみ られたい。この表 は1999年度一般会計決算額 における〃亀取市の財政歳 出を目的別 に分類 した ものである。その構成比の特徴 をみ ると,支
出項 目の第1位
は民生費であ り,その構成上しは歳 出全体額の22.6%を占めている。第2位
は土木費の17.1%,第 3位
は総務費の11.3%,第 4位
は教 育費の11.2%,第
5位は公債費の 10,7%の 順 になっている。これ を予算 レベルで時系列 的に1992年 度か ら2000年 度 までの推移でみたのが表 3で ある。表 によると,傾 向的に公債費 と衛生費 が増加 し, 農林水産業費 と教育費が低下 してきたのがわかるであろう。土木費は1995年度 まで増加 し,そ の後 は低下 しつつ あるのが確認で きる。 また,全
国の中都市 との比較で鳥取市の特徴 をみ るために,図
4をかかげよう。この図4と表2 とを対照 させ ることによって′島取市の 目的別歳 出構造の特徴がわかる。それによると,鳥
取市の割 合が中都市 よ り特 に高いのは農林水産業費であ り,そ
の他 は′鳥取市の方が低 くなってい る。 つ ぎに,性
質別か らみた鳥取市財政の歳出構造の特徴 を示 しておこう。図5をみ られたい。この 図は1989年 度か ら2000年 度 までの鳥取市における歳出の推移 を決算 レベルで示 した ものである。み 霞個人市民税 口法人市民税 四固定資産税 団都市計画税 ロるように
,人
件費が歳 出全体の割合 と比 べて減少 しているのに対 し,公
債費 と普 通建設事業費の割合が増大 している。 ここで再び,全
国の中都市における歳 出構造 との比較で′鳥取市財政の特徴 をみ てお こう。図6を
み られ たい。 これ は, 1999年 度全国 中都市における歳出構造 を 決算 レベルでみた ものである。人件費が 歳出全体の21.8%を占め,扶
助費が12.2%,公
債費が10.3%,普
通建設事業費が 19,1%を 占めている。これに対 し,鳥 取市 の場合には図5から2000年度決算 レベル で,そのパーセン トを計算すると,人件費 が歳出全体の11.5%,扶
助費が7.59/9,公 債費が10.5%,普通建設事業費が30.9%と なる。両者 を比較す ると,鳥取市の場合 に は全国に比べて,人
件費の割合が極 めて 小 さく,普
通建設事業費が極 めて大 きな 割合 を占めているのが最大の特徴である。 とりわけ,人件費が占める割合は,全国に 藤田安一 :転換期にある鳥取市財政の現状 と課題 表2 1999年
度鳥取市における一般会計歳出決算 (目的別) (出典)鳥取市監査委員「平成二年度鳥取市歳入決算及び基金 運用状況審査意見書」2000年10月 30日 ,71ペ ージ。 比べ3分
の 1し かない。いかに鳥取市の職員数が少 ないかをうかがわせ る。 表3
鳥取市 における一般会計歳出予算割合の推移 (目的別) (単位 :千 円・%) 区 分 支 出 済 額 金 額 構 成 比 予 算 比 1議 費 438,097 2総 務 費 7.420,301 3民 生 費 14,700,0084衛
生費 5,340,583
5農
林 水 産 業 資 4・842.30G 6高 エ 費 4,271,244 98.5 7土 木 費 n,182,5848消
防費 1,501,872 9教 育 資 7,335,712 10災 害 復 旧 費 L284,405 11公
償
費 6,002.000 12 予 備 資 0 0 0 ︿ ロ 計 85,400,231 科
目 1992年度 1993鞭 1994年度 1995転 1996frE 1997鞍 1998鞭 1999破 2000年度 議 会 費 総 務 費 民 生 費 20.3 20.2 衛 生 費 労 働 費 農 林水 産 業 費 商 工 費 土 木 費 21.5 消 防 費 教 育 費 災 害復 旧費 公 債 費 予 備 費 合
計 100.0% 100.0% 100.OX 100.0% 100.0% 100.OX 100.0% 100.0% 100.0% (出典)鳥取市総務部財政課提供資料より作成。
鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第
3巻
第2号
(2002) 図4 1999年
度全国中都市における一般会計歳出決算の状況 (目的別) 中 都 市£
脇考
露
) 総務費民生費
衛生費 (出典)総務省編『地方財政白書 (平成13年版)
鰯 図 ■ ∞ □ 隠 醒 □
農林水 土木費 教育費公債費
その他 産業費 』2001年,141ペ ージより作成。 図
5
鳥取市 における一般会計歳出決算の推移 (性質別) 四人件棄 □快助費 口公慎費 団青通建設 口その他 50,000トーー ー 十 …_=
1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 (年 度) (単位:百万円) (百万円) 80,000 70,000 00, 000 ■ OC10 30,000 201000 lq 000 0 人件 賛 630〔 狭助費 3,73〔 公信 管 6」 5,53i 7.357 曽通建設 18,684 その他 2339C 23,23( 24,16g (出典)鳥取市総務部財政課提供資料より作成。 中 都 市 図6 1999年
度全国中都市における一般会計歳出決算の状況 (性質別)饉 ■ ∞ □ 隠 囲 甥 露
llllllll□ 人件費 扶助費 公債費 普通建設 補 助 事業費 事業費 省編 『地方財政 白書 (平成13年版) 単 独 その他 物件費 貸付金 その他 事業費 技貨的経費 』2001年,142ペ ージより作成。 (出典)総務藤田安一 :転換期にある鳥取市財政の現状 と課題 ところで,こ うした性質別分類 を少 し加工 して
,経
費を「義務的経費」「投資的経費」および「そ の他の経費」の3つ
に分類することもできる。 義務的経費は,人
件費,扶
助費および公債費からなっており,そ の支出が義務づけられている経 費である。投資的経費は,道
路,橋
りょう,学
校,公
営住宅等の建設等行政水準の向上に直接寄与 する経費で普通建設事業費,災害復旧事業費,失業対策事業費からなっている。その他の経費は,義 務的経費及び投資的経費以外の経費で,物
件費,維
持補修費,補
助費等,繰
出金,積
立金,投
資及 び出資金,貸
付金等である。 この分類にしたがって,鳥
取市における歳出構造の推移をみると,人
件費 と扶助費および公債費 を合わせた義務的経費の割合が小 さく,普通建設事業費など投資的経費の割合が大 きいとい う特徴 をもっている。 ここで,非 常に重要なことを指摘 しておかなければならない。すなわち歳出を義務的経費と投資 的経費,そ の他に分類する性質別分類について,これまで財政学的に,つ
ぎのような説明が行われ てきたが,果
たして正 しいであろうか。 「この ように地方公共団体の経費 を義務的経費,投資的経費,その他の経費の3つに分類す るのは, 財政の健全性,弾力性 を測定す る場合重要 なポイン トとなるか らである。す なわち茂 出総額 に占め る義務的経費の割合が低 く,建 設事業費のよ うな行政水準の向上 に積極 的に寄与す る投資的経費の 割合 が高いほど財政構造は弾力性 が大であり,健全 な財政であるといえるので ある。」(石原信雄,嶋 津昭監修 『四訂 地方財政小辞典』 ぎょうせい,1998年
) この指摘にみ られ るように,これ まで義務的経費や投資的経費などの性質別分類 が用い られて き た理由は,主
として,地
方財政の健全性や弾力性 を把握す るためであると説明 されて きた。すなわ ち,義務的経費は,地方 自治体 にとってはその支出が任意 に削減で きない義務づ け られた ものであ り,極
めて硬直性の高い経費であるとされ る。 したがって義務的経費が増加す ることは,投
資的経 費に振 り向けられる財源が減少 して,財
政運営の自由度が低下す るとい うわけで ある。 周知のように,こ のような理解 か ら,地
方財政運営において,公
務員定数や人件費の増大 が絶 え ず問題視 され,「ラスパ イレス指数」等 を指標 に してその抑制 が国によって指導 されて きた。また, 1980年 代以降繰 り返 されてい る自治省通達 による「地方行革」の最大眼 目は,職
員定数 。人件費の 合理化で あった。しか し,こ の よ うに,地
方財政運営 において もっぱ ら投資的経費財源 を大 きくす れば,「健全財政」だと評価す ることは,果
た して妥 当なことであろうか。 た しかに,地方 自治体の建設事業 は,地域社会の共同需要 を充足 させ るために必要 な社会資本整 備 とい う重要な役割がある。 しか し,地
方 自治体の建設事業の内容や性格の吟味 もな く,マクロの 数値で義務的経黄抑制=投
資的経費割合の増大 が財政運営上健全で あり,すべて住民の共同需要 を 充足す る有益な事業であるとい う前提 をお くことは極 めて一面的である。この ことは,平
成不況対 策のために国による公共事業促進措置の もとで,住
民需要や維持管理費,採
算性 を無視 した不要不 急の大規模プロジェク ト事業や「ハ コモ ノ」づ くりの建設事業 を増大 して,地
方債残高の膨張 と地 方財政危機 を深めて きた現状 をみれば,間
違いであることは明 らかである う。 したがって,従
来の見方のよ うに,地
方財政の不健全性や硬直性 を,主
に人件費 を原 因 とす る義 務的経費の増大にある,と す る考 えは事実 を反映 していない。つ まり,これか らの地方財政 は,公
債費の増大 による義務的経費の圧力 と,普
通建設事業費による投資的経費の圧力 と,大
型施設の経 常的維持費 と,こ の3面
か ら,地
方財政歳出の硬直性 は,さ らに進んでい こうとしているのであっ て,従来の人件費を主要因 とす る義務的経費の増大 を,地方財政の硬直性や不健全化の指標 とす る鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第
3巻
第2号
(2002) 59
ことは,も はや現実的ではないとい うことで ある。 もともと,行政主体 における人件費の性格 は,企
業経営における人件費の性格 とは必ず しも同一 ではない。企業経営の場合 には,原
貝町として人件費は明 らかにコス トの一部であり,他
の条件 を一 定 とすれば,人
件費が少 なければ少 ないほど,相
対的に利潤の上昇 をもたらし,企
業活動 の成果 を 増大 させ ることがで きる。しか し,これに対 し行政活動の分野 においては,人
件費の支出その もの が直接行政サービスを意味 し,行
政上の成果 につ ながる場合 が少な くない。 とくに,行
政主体の中で も,国
の場合 には,一
般会計 に属す る職員の大部分は企画・立案等の内 部管理業務 に従事 しているので,行政の最終成果 とい う観点か らは,人
件費は間接的経費 に属す る ものが多い。それに対 して ,地 方 自治体の場合 には,義務教育諸学校や高等学校の教職員,警察官, 消防職員,保
健所職員,社
会福祉施設関係の業務 に従事す る職員,農
業改良普及員,清
掃業務 に従 事す る職員など,そ の大部分が住民への直接サー ビスに従事す るものであり,そ のための人件費が 大部分 を占めているのである。したがって ,こ の よ うな地方 自治体の人件費の性格 には,社
会経済 の発展や行政の進歩 に伴 って ,必 然的にその規模や財政全体 における支出を増大 させ る要 因 を含ん でい ることを理解 しておかなければな らない。 Ⅱ 鳥 取 市 に お け る 公 共 事 業 の 展 開 と市 債 残 高 の 累 積 ところで,鳥取市の場合,図 5でみたように公債費 と普通建設事業費は,いずれ も1990年代 に入 ると顕著 に増加 しは じめている。これは,言
うまで もな く,バ
ブルの崩壊 とそれに ともな う景気対 策の ために地方債の発行 に依存す る公共事業が大規模 に展開 されたことによる。とりわけ,現
在公 債費 はます ます大 きな割合 を占めるようになって きてお り,鳥 取市財政の硬直化 をすすめ る最大の 要因 とな りつつ ある。他方,普
通建設事業費の増加 は,公
共事業 が,バ
ブルの時代 には内需拡大の テコとして,また1990年 代のバ ブル崩壊の時期 には景気浮揚策 として強力に推進 され,この政府の 政策 に地方 自治体が広範 に協力 させ られた ことが,そ
の主な原因である。 すなわち,国の補助金支出を削減 しなが ら,しか も政府の経済対策に地方 を動員 してい く手段 と して,地
方単独事業 を拡大 させ,そのための財源 に地方債の大量発行 を認め,地
方債の元利償還 と 一般財源補填のために地方交付税 を利用す る,と い う手法がとられた。つまり,国
は補助金のつか ない地方の単独事業 について も起債 をみ とめ,その元利償還金の一部 を地方交付税で返済で きるよ うに した。これによって,地
方 自治体は借金が し易 くなる。政府 による,こ の地方債許可 と地方交 表4
鳥取市の普通建設事業費における補助事業費 と単独事業費の推移 単fII: 年 度 1996年度 1997年度 1998年度 1999年度 2000年度 項 目 金 額 一 般 財源 金 額 一般財 源 金 額 ―般 財源 金 額 一般財源 金 額 一般財源 6普通建 設事業 費 iS,318,03】 3,974,971 14,764,012 3,031,75〔 17,643,111 3,352,40( 16,792,051 41171,761 19.827,4S( 5,45S,812 (1)補助 6.210.541 22S,40, 5,391130〔 244,SS( 41503,32( 169,89〔 6,354.44( 73,431 41199,954 107,686 (2)単独 91203,24` 3.500,503 8.684,481 2.598,231 12,428,841 3,128,23【 91576,78〔 4,086,Sl 14,940,97〔 5,091,714 (3)受話 286,93( 119,30C 9,801 67,931 96.48イ (4)事業負担金 667,311 2491061 568,92e 188,964 701,14( 2541281 792,871 11,817 590.図 (出典)鳥取市総務部財政課提供資料より作成。藤田安一 :転換期にある′ミ取市財政の現状 と課題 付税措置 とをセ ッ トに した地方単独事業拡大への誘導策 に す地方 自治体の多 くが相乗 りし,結局,公 共事業 が拡大 し地方財政の借入金 を急増 させ る結果 になったので ある。 鳥取市で も,この政府の財政手法によって
,表 4に
み られ るよ うに1996年には92億円で あった 単独事業が,2000年
には149億 4000万円へ と,急膨張 していった。しか も,増
加 しつづ ける単独事 業に毎年多額の一般財源が使われて きたことは ,一 般財源の投入が縮小 しつづける補助事業 とは極 めて対称 的である。こうして,補
助事業の膨張 を超 えるスピー ドで単独事業の割合が急増 し,全
体 としての′ミ取県における公共事業費は,1990年
代 に入って顕著 に膨張 していったのである。 ちなみに,1"2年
度から現在までの間で,鳥取市が建設 した主な大型プロジェク トの一覧 を表5に示 しておこう。これ らは,10億円以上の建設費を要 した事業 をピックアップ したものである。驚 くべ きこ とに,こ こに掲げたいずれの事業 も全て単独事業である。 表5
鳥取市 における大型プロジェク ト事業 事 業 名事業年度
事
業
費
わ らべ 館 1992∼1994
30億 4900万
円バ ー ドスタ ジアム
1998∼1994
40億 3000万
円 な ごみ苑 1993′ψ
199423億 800万
円や まび こ館
(歴史博物館
) 1995′Ψ2000
56億 7300万
円とっとり出合いの森
1995-1998
25億 2300万
円 湖 山池周 辺 整 備 1995′Ψ2000 40億 7800万
円 鳥 取 環 境 大 学1998-2000
71億 3400万
円さわ やか会館
(障害者福 祉 セ ンター
)2000
20億 1200万
円 (出典)鳥取市総務部財政課提供資料より作成。 以上の ような経緯 によって,公共事業の遂行 を主 な原 因 とし て生 じた鳥取市財政の借入金で ある市債残高は,表6お
よび図 7に示 したように,1991年には366億 円であった ものが,2000 年度末現在では約800億円と,この 10年 間で2.2倍にのぼ って いる。そ して,この額は,先に示 した′烏取市の年間一般会計予 算総額 をはるかに超 えるもの となっている。 こうした莫大な市債の借入先は,ど こなのであろうか。それを 示 したのが表7である。19"年
度末市債現在高路7億円の うち,そ の62.9%は政府資金によって借 り入れ されている。第2位
には市 中銀行の21.6%,第
3位は公営企業金融公庫14.79/9の順である。 鳥取市債の最 も有力な借入機関である政府資金は,資 金運用部 資金と簡保資金から成 っている。資金運用部資金は,郵便貯金,厚 生年金保険 ,国民年金保険の保険料からの預託金などを原資とし ており,これまで大蔵大臣が運用管理 してきた。また,簡保資金 表6
鳥取市の市債残高の推移 区 分 年度 末現 在 高 1991年度 366億 3592万円 1992年度 380億 8554万円 1993F辛1屡圭 427億 7900万円 1994年度 498億 6500万円 19954辛1屋毒 566億 0722万円 1996年度 602億 5009万円 1997年度 638億 9409万円 1998年度 686億 5459万円 1999年度 737億 0450万円 21X10年度 799億 6515万円 (出典)鳥取市総務部財政課提供資料に より作成。鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第
3巻
第2号
(2002) 図7
鳥取市の市債財高の推移 は,簡易生命保険および郵便 年金の積立金であり,郵政大 臣が管理運用 してきた。この2種
類の政府資金は,従来は 利率 も低 く,償還期間も一般 会計債では最高25年,公営企 業債 な どで は最高30年
と なってお り,地方債の原資と しては最 も良質のものとされ てきた。しか し,近
年は,民
間資金等の金利低下により, 利率の面では特に低いとはい えなくなってきている。鳥取 市の場合には,資金運用部資 金 は政府資金の68.1%を
占 め,簡保資金は31,9%で あり, 表7
鳥取市償の借入先および借入金額 (一般会計) (単 位 :千円) 区 分 1999年 度末現 在高 1.政 府 資金 46,3381030 (62.9χ ) (1)資 金運用 部 31,570,484 (2)簡 易保 険局 14,7651546 2.公 営企業 金 融 公庫 10,8381446 (14.7%) 3.市 中銀 行 15,940,025(21,6%) 4.保 険会社 等 16,700 (0,0%) 5.共 済 等 554,767 (0.8%) 6。 そ の他 18,530 (0.0%) 合 計 73,704,498(100.0%) (出典)鳥取市総務部財政課提供資料により作成。 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 (出典)鳥取市総務部財政課提供資料 よ り作成。 圧倒的に資金運用部資金に依存 している。今後,こ の資金運用部資金の利用は,郵便貯金の資金運用部 への委託制度の廃止など財政投融資の改革にとも なって,どのように変化 してい くか。地方自治体が 対応 を迫 られる課題 となっている。 つ ぎに,公庫資金で あるが,公庫資金 は公営企 業金融公庫 によって融資 され る資金で ある。公営 企業金融公庫 は,と くに低利 かつ安定 した資金 を 必要 とす る地方団体の公営企業の地方債 に資金 を 融通す る目的をもって,1957年
に設立 された政 府関係金融機 関であり,本来の融資対象は公営企 業債 である。しか し1977年 度以降 においては,臨 時的な措置 とは されてい るものの,一般会計事業 である地方道整備事業・河川等整備事業 。高等学 校整備事業に係 る地方債 について も融資対象 とし ている。鳥取市の場合 には ,こ の公営企業金融公庫 による市債の引 き受 けは,全
体の 14.7%と なっ てい る。 Ⅲ 財 政 指 標 か らみ た 鳥 取 市 財 政 の 特 徴 以上の分析 か ら,鳥
取市の財政は,1990年
代 に入 り,市債の発行額 を急増 させ,その結果 として 市債残高の累積 を招いて きた ことがわかる。この′亀取市の傾向は,類
似都市 との比較 において も際 度 00 年 20藤田安一 :転換剤にある′亀取市財政の現状 と課題 立っている。その比較 をする前に
,類
似都市 とは何かについて説明 しておこう。 類似都市とは,毎
年度,市
町村か らの報告に基づいて,総
務省が作成す る「類似団体別市町村財 政指数表」にいう類型別の類似団体のことである。たとえば,1999年 度では,都 市について31類型 が設定 されている。鳥取市は 1986年度から「Ⅳ-3」 に分類 されてお り,こ の「Ⅳ-3」 には全国 で9団
体ある。それ ら9団
体は,鳥
取市の外に帯広市,つ
くば市,上
越市,松
本市,米
子市,松
江 図8
鳥取市 と類似都市における市債の推移 (百万円) 12,000 101000 310∞ 61000 41000 2,000 0 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 (盗 F潟露) 図9
鳥取市 と類似都市における市債残高の推移 一◆一 鳥取市 …6…類似都市 (百万円) 901 000 8α000 70,000 601000 50,000 ■ 000 30,000 201000 101000 0 ― 鳥取市 … Ⅲ…類似都市 (単位 :百 万円) 1992 1999 1 2000 島取 市 3.39t 8,752 9,8931 10,89( 障似 部 帝 3.9791 440e 5.99C 6.9581 7.71G 8.08〔 7.2141 6,97( (出典)鳥取市総務部財政課提供資料より作成。 (単位 :百 万円) 299701 3244と 380861 427791 4986! 56160i 34,6791 37,2381 40,50( 61,518 621795 (出典)鳥取市総務部財政課提供資料より作成。 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1998 1999 2000 (年 度)鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第
3巻
第2号
(2002) 市,山
口市,都
城市で ある。この「Ⅳ-3」 の基準 は,人
口 13万 人∼23万人,産
業構造が第2次産 業 と第3次
産業の合計で85%以
上∼95%未
満で,か
つ第3次産業 が55%以
上の都市 となってい る。 そこで,2種
類の図 を掲 げることによって,現
在鳥取市の困難な財政状況 をみておこう。1つは 図8で
あ り,鳥取市および類似都市の一般会計 における市債発行額の推移 を示 した もので あり,も う1つは図9で
,鳥取市および類似都市の一般会計 における市債残高の推移 をみたものである。い ずれ も,1990年代 に入 るまでは,鳥取市の市債の発行額および市債残高 は類似都市に比べ低 かった のに,1990年
代 には急速 に増加 し,鳥
取市 は類似都市 を追い越 して,なおかつ ,そ のひ らきはます ます広 がる傾向にある。この点 は,現
在鳥取市財政の状況 をみ る場合,決
して見のがす ことので き ない特徴 となっている。 しか し,これ をもって′烏取市財政 が危機 的な状況 にあると早断す ることはで きない。なぜ な ら,た とえ多額の借金 をかか えてい ると して も,そ
れ を返済で きる余裕 が あれば,い
ずれ改善す る見込 みが あるか らである。そこで,市債残高 以外の指標 を用いて,鳥取市財政の 状況 を多面的に分析 してみよ う。 表8をみ られたい。 この表 は鳥 取市 を含 んだ類似都市 を,さ まざ まな財政指標 を用いて比較 した も のである。 第1に,財
政力指数か らみた鳥 取市の財政の特徴 について。 財政力指数 とは,地方交付税法の 規定により,算定 した基準財政収入 額を基準財政需要額で割って得た数 値の過去3年
間の平均値である。こ の数値 が1を超 える場合 は もちろ ん,Hこ
近い地方自治体ほど普通交 付税算定上の留保財源が大 きいこと にな り,財源に余裕があることを意 味 し,自治体の財政力を示す指数 と して用い られている。 この財政力指数か ら類似都市の 財政状況 をみ ると,表8の
よ うに, 鳥取市 は9市
の うちで7番
目にあ り,財
源 に余裕があるわけで はな 表8 1999年
度類似都市9市および県内4市の財政指標比較 く,財
政力が弱い方に属 しているのがわかる。 第2に,自
主財源比率か らみた鳥取市の財政の特徴 について。 自主財源比率 とは,地方 自治体の財源総額のなかで ,そ の自治体が自主的に収入 しうる財源の割 合 をい う。その財源 とは,地
方税,分
担金及び負担金,使
用料,手
数料,財
産収入,寄
付金,繰
入 区 分 財政力指教 比率自主財源 (%) 義務的経費 比 率 (%) 経常収支 比率 (%) 鳥取市 ⑦ ⑦ ① ① 帯広市 0.538 44.6 つ くば市 0,948 65,6 上越市 0.740 77.0 松本市 58,8 米子市 0.760 松江市 山口市 0,732 部城市 卿1期頭 華 ヽ出 │ 一 報 〓 金 鳥取市 ② ② 31.4 ① 71.2 ① 米子市 0,760 倉吉市 39.3 境港市 0.556“
燃
一
軸
441き鞠
※丸数字は、 4市 及び類似都市の中での鳥取市の)慎位 を示す。 (出典)鳥取市総務部財政課提供資料より作成。藤田安一 :転換期にある′亀取市財政の現状 と課題 金
,繰
越金 などがそれにあたる。自主財源が多い ことは自治体行政の 自主性 と安定性 を確保す るこ とになるので,自
主財源比率 が高い ことが望 ま しい。 この 自主財源比率か らみると,鳥
取市は類似都市の 中では7番
目に低 く自主性,安
定性 とい う点 か らは弱い財政構造 になっている。 第3に ,義
務的経費比率か らみた鳥取市財政の特徴 について。 義務的経費比率 とは,地方 自治体 の歳 出総額の中で,その支出が義務づ け られ任意 に節減で きな い経費が占め る割合 をい う。この義務的経費には人件費,扶
助費,公
債費の3つ
の費 目が入 る。そ こで義務的経費比率が低 いほど財政構造の弾力性が高いことを意味 し,財政の健全性 を計 る代表的 な指標 といわれている。 この義務的経費比率か らみ ると,鳥
取市のそれは非常 に低 くなっている。また,類
似都市の中で も鳥取市の義務的経費比率 は最 も低 い。その原因は,鳥取市の人件費の割合 が極 めて低 くい ことに よる。ちなみに,鳥取市の歳 出の総額 に占める人件費の割合 は11.2%である。これ を類似団体の16.5%と
比較す ると,かな り低 い。したがって義務的経費比率か らみると,鳥
取市財政 は弾力性 が高 く 財政が健全であることになる。 第4に,経
常収支比率か らみた鳥取市財政の特徴 について。 経常収支比率 とは,人件費,扶助費,公債費等の義務的性格の経常経費に,地
方税,地方交付税, 地方譲与税 を中心 とす る経常一般財源収入が当て られ る割合 をい う。通常,都
市 にあっては759/9, 町村 にあっては70%程
度が妥当で あると考 えられ,これがそれぞれ5%を
超 えると,そ の地方 自治 体は弾力性 を失いつつあると考 えられている。 この経常収支比率か らみ ると,鳥
取市は 71,2%と 極 めて低 く,類
似都市の中で も最 も低 い比率 と なっている。その理由は,ま
た して も鳥取市の人件費の低 さによることはい うまで もない。 以上,4種
類の指標 によって,鳥
取市財政の特徴 を分析 した。分析結果か らわか るように,第
1 と第2の観点か らは,鳥
取市財政の基盤 は弱 く,安
定性 に欠けるとい う結論が導 かれ る。他方,第
3と 第4の観点か らは,弾
力性 があ り健全な′島取市財政 とい うイメージが浮かび上 がって くる。一 見す ると相互 に矛盾 した結果が出た ことになる。どち らが本当なのか。その答 えの結論 をいえば,ど れ も本当なのである。物事は,どの視角か ら眺めたかによって,異なった姿 に見 えることが多い。財 政 もその例外ではないのである。 しか し,以
上の結論で満足す るわけにはいかない。上記の分析か らは,異
なった角度 か ら見た鳥 取市貝お・政の姿 を述べたにす ぎない。 トータル に見た鳥取市財政の姿 を,つぎに明 らかに しなければ ならない。第1,第 2,第
3,第
4の
観点か らの分析 を総合す ると,鳥
取市財政 は全体 として,つ
ぎのような特徴 をもっていることがわか る。すなわち,鳥
取市の財政構造は,他
の類似都市に比べ て,財
政基盤 は弱 く安定性 に欠 ける。 しか し,鳥
取市は財政歳出に占める人件費の割合 が著 しく低 いために,財
政の弾力性 が保 たれ ,こ れによって財政基盤の弱 さを補 っている。一一 ここに,現
在 鳥取市の財政構造の特徴がある。 Ⅳ 鳥 取 市 に お け る 人 件 費 の 抑 制 と市 直 営 業 務 の 委 託 化 の 推 進 では,人
件費の割合 が′ミ取市では,な
ぜ こんなに低 いのか。そこには何 ら問題 はないのか。この 点を,つ
ぎに検討 しよう。 64鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第
3巻
第2号
(2002) 65
鳥取市財政 における人件費の割 合が低 い原因は,格段,市役所職員 の給与 が低 いか らとい うわけでは ない。では,つぎに考 えられ ること は,行
政の規模のわ りに職員の数 が少 ない とい うことで あろう。そ こで再 び,鳥
取市の職員数 を類似 団体 との比較でみておこう。 表9をみ られたい。2000年度現 在 ,鳥 取市では ,一般行政職 713名 と特別行政職58名とを合わせて, 771名の職員が働 いている(公営企 業等の職員は除 く)。 他方,類似団 体 の平 均 職 員数 は一般 行 政 職 員 800名 ,特別行政職177名で,計 977 名 となってい る。鳥取市の職員数 と類似団体の職員数 を比較す ると, 鳥取市 は類似 団体 よ リー般行政職 の職員で 87名 少 な く,特
別行政職 で119名 も少な く,全体で206名 も 少ない ことがわかる。明 らかに,鳥 取市の人件費が低 く抑 えられて き たのは,こ
うした行政規模のわ り には職員の数が少ない ことが原因 となっている。 では,な
ぜ鳥取市 においては職 員の数 が少 ないのか。鳥取市 にお いて も,ムロでは1980年 には13万 1060人 であった ものが,2000年
度 には15万 3000人 と順調に伸びつづ けて きた し,そ
れに ともなって鳥 取市 も市民のニーズの増大 と多様 化 に応 えるため,さ まざまな試み を行 って きた。仕事の量 も増大 し, その範囲 も拡大 して きたことはま 表9 2000年
度現在鳥取市の職員数 (出典)鳥取市総務部財政課提供資料より作成。 ちがいない。 しか し,そ
れに対応 して職員の数 を抑 えて これたのは,な
ぜ だったか。 その答 えは,こ れ まで鳥取市が直営で行 っていた業務 を,積極的に市の外郭団体や民間会社 に委 託 して きたためである。これによって,鳥
取市は,その分野の職員の数 を減 らし,人
件費の増大 を 抑 えようとして きたのである。 鳥取市の場合,1980年代の後半か ら,これ までの市直営の業務の委託が積極的に行われ るよ うに藤田安一 :転換期にある鳥取市財政の現状 と課題 なった。業務委託の対象 となった分野 は
,市
民会館や体育館,文
化 センターなどの公共施設の管理 運営,小
中学校の警備,学
校給食の調理業務 などで ある。具体的には,つ
ぎのように して業務の委 託がすすめ られていった。 1985年 度 には市の下水道ポ ンプ場業務の管理 が民間の建設会社 に委託 された。また,1987年度 に は,小中学校の警備 がセコムと山陰警備保障に委託。1994年度 には,市立の養護老人ホームで ある 敬生寮の管理運営が,社
会福祉法人で ある鳥取福祉会 に委託。同年 には,鳥
取市民会館の管理運営 が財団法人′鳥取市教育福祉振興会に委託。また同年 には,市
のテニス場やアーチェ リー場 な どの体 育施設の管理運営が民間に委託 された。1997年 度 には,小中学校の給食調理業務 を財団法人学校給 食会に委託。1998年 度 には,文
化 センターや こども博物館,勤
労青少年 ホームの管理運営 を財団法 人′鳥取市教育福祉振興会 に委託。同年,市
民体育館の管理運営 を財団法人鳥取市公園・スポーツ施 設協会に委託 している9 以上のよ うに して ,広 範に従来の鳥取市の直営業務 が市の外郭団体や民間会社 に委託 されていっ たのである。こうした委託 によって,どれほど′鳥取市 は人件費 を節約す ることができたので あろ う か。手元 に,非
常 に興味深い資料がある。これ までに委託 された諸施設の うち,1998年
に委託 され た鳥取市民体育館 と勤労青少年 ホームについて,委
託前 と委託後の人件費 を比較 した資料で ある。 まず,鳥
取市民体育館 について,委
託前の人件費は市職員分7人
分 (非常勤職員4人
を含 む)で
3019万 7000円 であった。しか し,委託後では,6人
分 (すべて非常動職員)で
1120万 円である。ま さに,3分
の1弱
にまで人件費は低下 している。つ ぎに,勤
労青少年 ホームでは,委
託前の人件費 は市職員3人
分 (非常動 2名 を含む)は
1210万 円であった。 しか し,委
託後 には,4人
分 (すべて 非常勤職員)で
620万円に下がっている。 まさに,2分
の1の人件費になった。 こうした手法 によって′ミ取市 は,従来の直営業務の職員 を他の業務分野へ と移動 させ,全
体 とし て職員数 をさほど増やす ことな く,行政の需要の増大 と多様化 に対応 して きたのである。ここに,鳥 取市財政の歳 出において,人
件費の占める割合 が他の 自治体 と比較 して著 しく低 い理 由がある。 現在 までの ところ,鳥取市 は民間への業務委託 も行 っているとはいえ,上
記のよ うに,財
団法人 などの市の外部団体への委託が主流 をな している。しか し今後,民間への委託が拡大 して くれば,鳥 取市のコン トロールがおよばない事態 とな り,営 利 目的のために市民へのサービスの質が低下 した り,そこで働 く従業員の労働条件 が著 しく悪化す る可能性 がある。鳥取市 としては,民
間や法人 に か ぎらず委託先の状況 を調べ,上
記の問題がないか どうかをよく調査 した うえで,今後の業務委託 については慎重 に対応すべ きで あろう。V
転 換 期 に あ る 鳥 取 市 財 政 ところで ,こ の ように,鳥取市 が人件 費の抑制 によって財政の硬直化 を防 ごうとして きた理 由 に は,忘
れてはいけない重要 な歴 史的教訓 があった。それ は1955年,鳥
取市 が財政再建 団体 に転落 して以降1964年までのほぼ 10年 間にわた り,国の厳 しい管理の もとで ,困 難 な財政運営 を余儀 な くされたことで ある。再び,そ
の時の ようなみ じめな財政状況 にな らないように,鳥
取市の財政 担当者が 日頃の財政運営 に心がけて きた。財政の硬直化 を招 きやすい人件 費の増大や市債 の発行 を汀「えた り,た とえ借金が必要 になって も返済で きるよ うに減債基金 をた えず蓄積 して きた こと も,そ
の努力の あらわれで ある。'
基 金 の 名 称 1991年度末 1992年度末 1993年度末 1994年度末 1995年度末 1996年度末 1997年度末 1998年度末 1999年度末 2000年度末 1財 政調整 1,240.294 1.240.295 1,240,295 1,240,295 1,240,003 1,240,002 540,002 540,002 541,626 2減 債 7,284,017 9,148.258 9,943.191 10.419,387 10,808,740 10.420.515 9,274,367 8,321,009 8,347,125 6,730,322 3人づくり。まちづくり 201,416 202,160 202,353 200,228 299,672 302,157 313,002 314,046 314,045 314.045 4大 学設立 441,368 468,719 489,617 506,199 511,494 5201072 1,223,586 629,704 1,183,598 1,286,863 市制施行100周年記念 986.913 1.109,303 1,077,266 538,330 5福 祉施設整備 3,050,641 3.393,892 3.414.594 1.484,690 957.099 784,992 458,949 513,076 472,926 6生 涯学習振興 120,067 125,387 130,763 132.343 234.168 210,595 136,600 137,196 137,590 図書整備 28,346 文化施設整備 76,572 7体 育施設整備 49.980 453,267 412,800 228,306 230,612 236,573 237.629 238.339 8地域 福祉 102,000 305,000 549,340 545,000 545,000 545,000 545,000 547,600 547,600 9腎 ぞう疾患等難病対策 51,288 52,052 53,297 52,184 52,748 52,519 46.770 10市行造林 11.623 11,623 12,579 13,795 15,720 15,721 16,907 16.907 16.907 11市営住宅建設 389,967 365.063 346,466 268,546 204,130 190,986 123,955 10,537 10,802 12教育福祉振興 57,673 57,814 57.120 54.520 51,476 50,733 50,023 50,223 50,159 13市立学校 3,242 3,376 3,484 4,059 6.182 6、212 6,232 6,249 14特殊学級教育振興 1,200 1.200 1,200 1,200 1,200 1,200 1,200 15青少年育成 11,582 11,859 11,856 11.858 12,864 12,770 12,620 12,552 12,372 16少年 スポーツ振興 12,078 15,657 15,725 15,729 15,879 15,950 16,042 16.066 水田農業確率 8.759 17中山間地域農村滑隆化 10,000 10,073 10,276 10,487 10,555 10,656 10.688 18農集事業推進 45.563 123,375 246,508 385,433 460,847 480,565 19公共下水道推進 4.510 25,526 43,554 43,663 20農業振興 334,721 385,031 435,650 468,035 21少子化対策基金 213,039 18,112 22環境大学奨学金基金 107,000
ⅢⅢヽ1瑯導繊韓群篤輩IⅢlllll:I 脚 77留! tiVAlη酪薄1出7A
「I II,キtj4,│ i484
1重
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鋤 理, ,熔灘
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,│ユ番1導割帥観転雇23国民年金印紙購入 5,000 5,000 5.000 5,000
肉用牛特別導入事業 5,780 5,785 5.815 5,821
Ⅷ
41la IIヽI■■171 30舒 無 尊倒雌拗:一 2
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主
I::::│:::IIIIIIIIIII 1■むを摯おユJ 719V懲11 騒128霊 帥 a v │ユ鬱と =こ 11132§i 24介護給付費等準備基金 72.728 25介護保険円滑導入基金 919,388 26土 地 開 発 1,472,746 2,066,503 2,150.002 2,223,140 2,259,902 2,283,879 2,299,434 2,314.597 2.324.918 2,329,920 (出典)鳥取市総務部財政課提供資料より作成。 (単位 :千円) 表10
鳥取市 にお ける基金残 高の推移 か 鋼 > 報 蝉 叫 さ 齢 摯 報 幾 苗 瑠 ド 雛 嘲 沸 韻 ︹︺ 蝶 韻 い] 帥 ︵遇 儲 ︶ 亀藤田安一 :転換期にある鳥取市財政の現状と課題 しか し,こ うした努力に もかかわ らず ,鳥 取市の財政 は ,現在大 きな歴史的転換期 を迎 えている。 それはどうい う意味なのか。 第1に ,1990年代の鳥取市 における大規模異 な公共事業の展開が,前述 したように市債の発行 を 活発に し
,現
在,膨
大 な市債残高 をかか えていることである。そのために毎年の歳 出における公債 費の割合 が高 まり,鳥
取市財政の硬直化がすすんでいる。これは,以
前 にはなかった新 たな財政上 の変化である。従来は人件費の低 さが義務的経費の増大 を抑 えて財政が硬直的になることを防げて きた。ここに′烏取市財政の特徴 があった。 しか し,現
在では,公
債費の割合 が年々高 まり,これが 義務的経費を膨張 させ財政硬直化 をすすめつつ ある。 第2に,これ まで鳥取市が借入金の返済のために蓄積 して きた財政調整のための基金が,この間, 急速 に減 って きていることで ある。表10をみ られたい。これは鳥取市 における基金の種類の推移 を 示 した ものである。これ らの基金の中で財政調整 に使 える基金 は1の財政調整基金 と2の減債基金 であり,他 はそれ以外の 目的 をもつ基金 である。この 1と 2の基金 は,いずれ も1997年 頃か らとり くず され始めている。とりわけ ,こ れ までの多額の積立が行われて きた減債基金の減少のスピー ド は年々激 しくなっている。鳥取市の試算では,市
の第7次
総合計画の2001年か ら2005年まで,毎
年 11億 づつ減 り,2005年
度では,減
債基金 は2000年度残高67億 3000万円か ら56億減の ■ 億程度 しか残 らないとみ られている。この ことか ら鳥取市は,2006年
以降,厳
しい財政運営 に直面す るこ とが予想 される。 第3に,国
家財政の莫大 な赤字 と地方分権化の進行 を理由に,現
在,国
は地方へ配分す る地方交 付税や国庫支出金 を削減す る方針 を打 ち出 している。このため,各
自治体 は今後,地
方交付税や国 庫支出金が減額 され ることを見越 して ,歳 入計画 を立て ざるをえないほど切迫 した事態 となってい る。この影響 を最 も受 けるのは ,こ れ まで,国
か らの依存財源に多 くたよって きた地方 自治体であ ることは言 うまで もない。前 にみたように,地
方交付税や国庫支出金,地
方債 など依存財源が歳入 の5割を超 えている鳥取市 は,この影響 を非常 に強 く受 けることになる。 以上3点は,明らかに鳥取市財政が,従
来 とはちがった局面 に至 っていることを示 してい る。ま さに,「転換期にある鳥取市財政」 と述べ るゆえんである。 お わ り に 一 ― 鳥 取 市 財 政 の 今 後 の 課 題 と展 望 ― ― では,今
後,どのよ うにすれば鳥取市 はこの局面 を打開で きるのか。その点 を,最
後 に鳥取市財 政の課題 として述べてお こう。 本稿 におけるこれ までの分析 によって,現
在の鳥取市が,従来 にはなか ったような財政局面 に さ しかかっていることが明 らかになった。それだけに鳥取市は,こ の局面 に対応 しようと,さ まざま な試み を行 っている。その具体的な現れの1つが,市
町村合併の推進で あ り,鳥
取市 において も具 体的な検討がすでに開始 されている。しか し,合
併によるこの広域行政 が,果
た して現在の財政危 機 を克服 しなが ら住民へのサービスを充実 させ ることがで きるのであるうか。市町村合併が もたら すデメ リッ トをよく考 え,地
元住民や行政関係者の下からの声 をよく聞いた上で,判
断す る必要が あるう。財政危機 だか らといって,自治体100年の計であるこの市町村合併問題に早急な結論 を下 してはな らない。 私には ,市 町村合併 を推進す る前に考 えておかなければな らない重大 な課題があるように思われ鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第
3巻
第2号
(2002) 69
る。それは,以
下の とお りである。 第1に ,1990年代のバ ブル崩壊以降 における国 と地方 自治体 による財政政策が,膨大 な自治体の 財政赤字 を生み財政危機 を招いた。その深刻 な反省の上 にたって,今後の財政政策 を立て ることで ある。 すなわち,現
在の地方財政危機 の根本原因は,バ
ブル崩壊以降,国
が景気対策 と630プヒ円に もの ぼる公共投資基本計画に もとづ き,景 気回復のための公共事業の推進に自治体財政 を動員 して きた ことにある。国の補助金支出を削減 しなが ら,しか も政府の景気対策に地方 を動員 してい く手段 と して ,地 方単独事業の拡大→そのための地方債の大量発行→地方債の元利償還 と一般財源補填のた めの地方交付税の利用,とい う巧妙 な手法がとられた。つ まり,補
助金のつかない地方の単独事業 について も起債 をみ とめ,その元利償還金 が一部 を地方交付税 に算入で きる,事
実上の「地方債の 補助金化」 と「地方交付税の補助金化」 とい う事態が押 し進め られたのである。政府 による,この 地方債許可 と地方交付税措置 とをセ ッ トに した地方単独事業拡大への誘導策に ,地 方 自治体の多 く が相乗 りし,結
局,地
方財政の借入金 を急増 させ る結果になった。 この ように,景
気対策 を優先 した公共事業の あり方 といい,地
方債 と地方交付税 との組み合 わせ による地方単独事業の拡大 といい,さ らに,本
来一般財源で あるべ き地方交付税の特定財源化 とい い,いずれ も軌道 を逸 した財政政策の手法がとられ ,自 治体の財政 を急速に悪化 させていったので ある。再び,このような事態 を引 き起 こしてはな らない。そのためには,公
共事業 に過度の景気回 復効果 を期待す るのではな く,公 共事業 は国民の生活安定 と経済基盤の整備 を目的 としたインフラ 整備 とい う本来の役割 にもどす ことが必要である。公共事業の景気刺激効果が年々弱 まってい るこ とが実証 されて きている以上,従
来のよ うなや り方は根本的に反省 されなければな らない。 第2に ,地域経済の活性化のためには,従来のような公共事業 に過度の期待 をよせ るのではな く, 社会保障の もた らす経済効果に注 目す る必要がある。 すなわち,景気 を刺激す る点では,公共事業 よ りも社会保障の方がその効果は高いとい うデーター がある。表 11を み られたい。この表 は鳥取県が作成 したもので,1000億
円を社会保障部門,医
療・ 保険部門,公共事業部門それぞれに投資 した場合の経済効果 を試算 したものである。み るよ うに,社 会保障部門の方が生活誘発額,粗
付加価値誘発額,雇
用効果 ともに公共事業部門 を上 まわ るとい う 結果が出ている。そうである以上 ,こ れ までの公共事業 に偏 った景気対策か ら,社
会保障 を重視 し た景気対美へ と視点 を変 えてみ ることが必要で あろう。この ことは同時に,高齢社会における安心・ 安定の地域社会 を築 くことになるとい う一石二鳥の効果が期待で きることで もある。 表11
鳥取県においてlo00億円投資 した場合の経済効果 生産 誘発額 (億 円) 粗 付加価 値 誘 発額 (億 円) 雇 用 効 果 (人) と次 波 及 2次 波及 総 額 1次波及 2次 波及 総 額 社会保障部 門 [,251 1,677 278 と,106 25,062 医療・ 保 険部 門 1,212h512
705 12,289 公共 事 業 部 門 1,380h611
10,579 (出典)鳥取県企画部統計課提供資料により作成。藤田安一 :転換期にある鳥取市財政の現状 と課題 第3に ,「市場の失敗」 を克服す るとともに,「政府の失敗」をも修正す るため
,実
質的に住民の 参加 を促進 し,住
民の自主的な活動諸団体 と協力す ることによって,住
民のニーズに依拠 した地方 自治体 を創 ることで ある。 最近,特
に高齢者介護や地域福祉,地
域医療,健
康 スポーツ,生
涯教育,文
化活動 など住民の行 政需要の多様化や,廃
棄物,ゴ
ミ処理 に関わ る リサ イクル問題 などの分野において,公
共サ ー ビス が地域住民の参加や協力な しには行 なわれに くい領域 が広 がって きている。そ うした状況 を反映 し て,住民の自主的な組織 としてのNPOを
は じめ とす るボランテ ィア活動や協同組合活動 などの広 が りがみ られ る。したがって,地
方 自治体 はこうした諸団体 とパ ー トナーシップをむすび なが ら,多 様な住民ニーズの実現 をめ ざすための社会 システムづ くりとい う,新 たな地平 に向かって積極 的に 取 り組んでい くことが必要である。 しか し,現在の自治体 には,上記の課題 を避 けて,ただちに経済的効率性 にもとづ く規制緩和 。民 営化によって公的サービスの守備範囲を見直 し,市場原理 にゆだねた競争的地方 自治 を実現 しよう とす る動 きがある。だが ,こ の傾向によって過度 な経済的効率性 を追求す ることになれば,な
るほ ど,地
方財政の赤字 は減 るにちがいないが,それでは,切
実 に福祉 を必要 としなが らも福祉 サービ スヘの対価 を支払 えない人達 を生活不安 におとしいれ ,結 果 として社会の不安定化 を一層増大 させ ることになって しまう。こうした地方 自治体の政策では,今
後の高齢社会 を支 えられない ことは明 らかであろう。 私 たちは短絡的に,財政赤字がな くなれば財政危機 も克服 され ると考 えてはな らない。必要 な財 政支出を削減 したために,国
民生活 が極 めて不安定 にな り社会の不安定化 を一層高め る。一― この ようになれば,一
体 なんのための財政 なのか,根
本的に問われ ることになるで あるう。財政 は手段 であって,そ
れ 自体が目的ではない,とい うことを忘れてはなるまい。 主 な 参 考 文 献 鳥取市企画部企画課『2001市勢要覧』2001年8月。 鳥取市企画部企画課『第 6次 鳥取市総合計画』1997年 3月。 鳥取市企画部企画課『第 7次 鳥取市総合計画』 鳥取市企画部まちづくり推進課「鳥取市報」2000年 4月 15日号。 鳥取市監査委員「平成11年度 鳥取市歳入歳出決算及び基金運用状況審査意見書」2000年 10月 30日。 鳥取市『鳥取市誌1』 1972年。 鳥取市企画部統計課F平成11年度版100の指標からみた鳥取県』1998年 12月。 鳥取県総務部地方課『平成元年度市町村財政概況 (第33集)』 1991年 3月。 鳥取県総務部地方課『平成 2年 度市町村財政概況 (第34集)』 1992年 3月。 鳥取県総務部地方課『平成 3年 度市町村財政概況 (第35集)』 1993年 3月。 鳥取県総務部地方課『平成 4年 度市町村財政概況 (第36集)』 1994年 3月。 鳥取県総務部地方課 F平成 5年 度市町村財政概況 (第37集)』 1995年 3月。 鳥取県総務部地方課『平成 6年 度市町村財政概況 (第38集)』 1996年 3月。 鳥取県総務部市町村振興課・財団法人鳥取県市町村振興協会『平成7年度市町村財政概況 (第39集)』 1997年 3月c鳥取大学教育地域科学部紀要 地域研究 第