あなたはすでにドーピング違反かも !?
あなたはすでにドーピング違反かも !?
目 次
１ はじめに （公財）三重県体育協会 スポーツ医・科学委員会 副委員長 加藤 公 ２ あなたもすでにドーピング違反 !? ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ P1 ～ 2 ３ 薬剤師からのメッセージ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ P3 ～ 5 ４ ドクターからのメッセージ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ P6 ～ 8 ５ ドーピング防止 Q＆A ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ ･ P9 ～10 ６ おわりに （一社）三重県薬剤師会 会 長 上村 武 ７ 付 記2020 年に「東京オリンピック・パラリンピック競技大会」が開催されることが決定し、 さらに三重県ではその前後の年である 2018 年に「全国高等学校総合体育大会」、2021 年に は「国民体育大会・全国障害者スポーツ大会」が開催される予定となっており、全国的に、 特に三重県ではスポーツへの気運がますます高くなっていくことが期待されます。 さて、スポーツ選手におこりうるケガや病気などへの対応の一環として、ドーピング防 止が非常に大切ですが、今回、三重県内の医師および薬剤師を対象にアンケート調査を 行ったところ、ドーピング防止に対する意識、知識といった点においては、まだまだ不十 分な点が多いことがあらためてわかりました。 ドーピング違反は、みなさんが一生懸命取り組んでいる競技を奪うことにもなりかねな い大きな問題ですので、選手そして指導者のみなさんにも必ず学んでいただきたいもので あると考えています。特に近年では、競技力を向上するために意図的に行うドーピングで はなく、日常生活の中でさえも起こりうる『うっかりドーピング』による処分が増えてい るのが実情です。このうっかりドーピングは、みなさんご自身が学び、注意することで必 ず防ぐことができるものです。 今後は三重県での「国民体育大会・全国障害者スポーツ大会」に向かって、スポーツ 医・科学が三重県スポーツの競技力向上の一助となれるよう、医療従事者へのドーピング 防止教育を今以上に充実させて、選手・指導者のみなさんが自らドーピングから身を守る ための啓発活動とその相談ができる環境を整えていくための活動をわれわれの目標にしな ければならないと考えています。 まずその第一弾として、三重県スポーツ界の未来を担うみなさんにドーピング防止への 学びの助けとなるようにと本冊子を作成させていただきました。是非ご活用していただけ れば幸いです。 公益財団法人三重県体育協会 スポーツ医・科学委員会 副委員長 加藤 公
は じ め に
こんな乱暴な表現をすると、みなさんに怒られるかもしれませんが、あなたが全く気付 いていないうちにドーピング違反をしているケースが年々増加しています。自分の不注意 で発覚するドーピング違反のことをしばしば『うっかりドーピング』というような言葉で 表現され、これも立派なドーピング違反となりますので、競技会に参加できないなどの処 分を受けることとなります。では、なぜそのようなことが起こるのでしょうか？ まず、実例をご紹介したいと思います。 こういった実例から、みなさんに気をつけていただきたいことを 本冊子でご紹介したいと思います。 １、『うっかりドーピング』とは？ 『ドーピング』という言葉を聞くと、『あっ、筋肉増強剤だ』とか『薬を使って勝つなん て卑怯だ』なんて思う方がたくさんいると思います。しかし、この『うっかりドーピン グ』というのは、こうした悪意を持った違反ではなく、本人のちょっとしたうっかりミス で禁止物質などを体内に取り入れてしまい、ドーピング検査によって違反と判定されるよ うなドーピング違反のことです。これまでに報告されているケースには、漢方薬、栄養ド リンク、サプリメント及び薬局で購入する市販薬、さらには病院で処方される薬でも発生 しています。 ２、漢方薬 漢方薬は“生薬”といわれ、中国古来の天然成分から作られる薬効性のある物質を調合 して作られているものです。だからこそ安全では？と、みなさん思うかもしれませんが、 実は大きな落とし穴があります。漢方薬の中には、興奮剤やホルモン剤類似物質（つまり ステロイド系）の成分を含むものがいくつもあることがわかっています。漢方薬の中で最 も有名な葛根湯の中にも、興奮剤成分が含まれており、禁止物質に該当します。漢方薬は まだ十分には解明されてないものがあり、安全とは言い切れないものと考えられています。
あなたもすでにドーピング違反 !?
新体操競技での出来事です。大会２日前に風邪をひいてし まった選手は、病院を受診して風邪と診断されました。処方を 受けて風邪薬を服用しました。しかし、大会直前になっても思 うように回復しなかった選手は、役員に相談したところ、さら に役員からも別の薬剤を渡されて服用しました。 その後、大会でドーピング検査を受ける対象となり、検査の 結果、興奮剤成分である禁止物質が検出されました。選手は、 大会参加資格の停止及び大会成績の取り消しという処分を受け るに至りました。３、栄養ドリンク 栄養ドリンクに“滋養強壮”といった言葉が書かれているのをみたことがありません か？滋養強壮という言葉には『体を強くする』という意味が含まれています。“体を強く する＝ドーピング”ということですよね。すべてのドリンクに禁止物質が含まれているわ けではありませんが、ドリンクの中には禁止物質である興奮剤成分や先ほど説明した漢方 薬を使用しているものが多くあり、うっかりドーピングの危険性が含まれています。 ４、サプリメント サプリメントをみなさんは使用していますか？筋力アップのためにトレーニングの前後 で『プロテイン』を摂取したり、練習後の疲労回復に『ビタミン』や『アミノ酸』を摂取 している方がいるかと思います。 サプリメントは医薬品には当てはまらないので、製品にすべての成分を表示する義務が 実はありません。そのため一部のサプリメントの中には、『筋力アップ』と称して『筋肉 増強剤』の成分を含むものが混ぜられていたり、『ダイエットサプリ』と称して『利尿剤 （おしっこをたくさん作る違反成分）』や『興奮剤成分（脂肪燃焼作用や食欲抑制作用があ る）』が混ぜられていることがあります。国際オリンピック委員会の調査では市販のサプ リメントの 14.8％に蛋白同化ホルモンが含有していたと報告されており、海外のサプリメ ントは使用しないほうが安全です。当然これらのものを摂取している場合にはドーピング 違反となります。しかし、すべてのサプリメントが違反というわけではありません。実際 に日本のトップアスリートの約 85％がなんらかのサプリメントを使 用しています。日本アンチ・ドーピング機構（以下 JADA）という ドーピング防止に関する活動を行う組織によって使用が認められてい る安全なサプリメントが販売されていますので、この認定マークがつ いたサプリメントを使用するようにしてください。 ５、市販薬と処方薬 市販薬というのは、医師の診断処方が必要なく、薬局などで購入できるお薬です。また 処方薬というのは病院を受診し、医師の診断のもとに処方されるお薬です。実はこれらで あっても、ドーピング違反となるものが存在します。薬を購入または処方される場合には、 ドーピング禁止物質が含まれていないかどうか医師（スポーツドクター）や薬剤師（ス ポーツファーマシスト）などに必ず相談してください。これらについての詳細は、次ペー ジの『薬剤師からのメッセージ』の中で解説します。
薬の服用方法
薬を服用する際は、医師や薬剤師に相談してください。禁止薬でも治療のため服 用できる場合があります。また、どうしても上記の薬を服用したい場合は、競技会 の７日前に服用を終えると体外へ排泄されます（かぜ薬・咳止め・アレルギー薬の 場合は、３～４日で体外へ排泄されます）。身体の大きさや個人差によって排泄に時 間差があります。薬局での相談方法
薬剤師のいる薬局であれば、禁止物質かどうかを調べてもらうことは可能です。 薬局では、自分がスポーツ選手であること、ドーピングに違反しないかを薬剤師 に必ず聞くようにしてください。 また、三重県薬剤師会では下記のとおり電話相談を行っています。 薬の相談テレホン（通年 平日のみ 9:00 ～ 16:30） TEL：059-228-1113 FAX：059-225-4728スポーツファーマシストとは？
スポーツファーマシストとは、「JADA」の認定を受けたドーピングの専門知識を 有する薬剤師です。病院でもらう医療用医薬品のほか、薬局で購入する薬、サプリ メントなどにも広く対応しています。三重県では、現在約 50 人のスポーツファーマ シストが国体ドーピング活動や窓口対応に当たっています。スポーツファーマシス トに直接相談を行いたい場合は、三重県薬剤師会の上記「薬の相談テレホン」まで お問い合わせください。服用してはいけない薬一覧
別表に薬局やドラッグストア等で入手できる薬剤の中で、代表的な一部の商品名 を記載します。そのほかにも禁止物質の入った商品もありますので注意してくださ い。 なお、商品名は一部を簡略化して記載しています。 同一のシリーズは避けるようにしてください。薬剤師からのメッセージ
総合感冒薬（かぜ薬） ルル ベンザブロック コルゲンコーワ カコナール パブロン コンタック プレコール ストナ エスタック 改源 ジキニン 他 咳止め、去痰薬 エスエスブロン錠 浅田飴クール クールワンせき止め アネトン咳止め ベンザブロック咳止め 他 パブロン S せき止め コルゲンコーワ咳止め サプリメント 多くの選手が補助的にサプリメントを使用しています。しかし、海外のサプリメント には禁止物質が入っていることが多く注意が必要です。どうしてもサプリメントを使用 する場合は、国内産の安心なメーカーのものを購入してください。 プロテイン 海外製品については、禁止物質のタンパク同化ステロイドを含んでいるケースが見ら れます。プロテインを服用する際は、「JADA」の認定を受けている商品の購入をして ください。 アレルギー薬（鼻炎用含む） パブロン鼻炎カプセル プレコール持続性鼻炎カプセル エスタック鼻炎カプセル コルゲンコーワ鼻炎持続カプセル コンタック 600 プラス 他 ドリンク剤 金蛇精 強力バネロス オットピン 他 マヤ金蛇精 トノス オットローヤル プリズマホルモン 延寿回生 麝香・海狥腎を含むもの 便秘治療薬（ダイエット薬） コッコアポ 他 ナイシトール L 防風通聖散 胃腸薬 ホミカロート錠 ワクナガ胃腸薬 G ガロニン 他 バンジアス顆粒 漢方薬 葛根湯 麻黄湯 他 小青竜湯 五積散 防風通聖散 麻黄附子細辛湯 別表 服用してはいけない薬一覧 （2014. ２現在）
〈薬剤師へのアンケート調査結果より〉
設問：今まで窓口・病棟でドーピングに関する
質問を受けたことはありますか？
設問：今まで窓口・病棟でドーピングに関する
質問を受けたことはありますか？：
〈前記１. ある の回答内訳〉
上記のアンケート調査によって、薬局の窓口や病院において、選手の皆さんからのドー ピングに関する質問が非常に少ないことがわかりました。ドクターからのメッセージ
サプリメントの使用について 医師へのアンケートでは、サプリメントの使用を“積極的にまたは必要時に”という医 師が 56％と約半数以上を占めておりました。ただしこの使用を勧めるにあたっては、安 全性が確保された商品のみを使用するという意見が大半でした。海外のサプリメントには 成分が表示されていない場合や、筋力増強剤などの禁止物質が含まれていることもあるた め、海外のサプリメントは使用しないほうが安全です。必ず JADA 認定マークの付いた 商品を使用するようにしてください。（図１） 栄養ドリンクの使用について 栄養ドリンクの使用については、“使用を勧める”とした医師が 47％と半数以下でした。 栄養ドリンクにも禁止物質が含まれる商品がたくさんあり、サプリメントとは異なって認 定商品等がないことが、サプリメントよりも栄養ドリンクの使用を勧める医師が少なかっ た原因ではないかと考えられます。このことから安易に栄養ドリンクを飲むべきではない と考えます。 特に『今日は競技会だから、栄養ドリンク飲んで頑張ろう』なんてことがないようにし てください。（図２） （図１） （図２）うっかりドーピングを防ぐための受診の仕方 これまでのドーピング違反の実例を見てみると、持病などのために病院を受診して、医 師の診断・処方を受けたにもかかわらず、検査の結果ドーピング違反と判定され、処分を 受けた事例があります。 なぜ、そんなことが起こってしまうのでしょうか…？ 診察室での様子を再現してみましょう… 全国大会に参加するために、三重県に遠征してきた A くんとコーチ。長距離のバス移動のために、 少し風邪をひいてしまったようです。 コーチ『三重に来たとたんに体がだるいと訴えてきまして…。』 A くん『少し熱がありそうで、咳が出ていて。明日から試合なのでなんとかなりませ んか？？』 医 師『わかりました。診察させてください。』 （診察終わる…） 医 師『乾燥したバスの中でのど風邪をひいちゃったかな。 薬を出しておきますので、きちんと飲んで休んでください。』 A くん & コーチ『ありがとうございました。』 A くん『すぐに飲んで、今日は休みます！明日は頑張りますよ。』 さて、みなさん、このよくありそうな診察風景の中に、どれほどの危険が潜んでいるか わかりますか？？ A くんは“明日から試合”と医師に伝えていますが、これでドーピング違反対策になっ たというのは到底考えられません。このままでは、風邪薬の中に含まれる違反成分によっ て、選手生命を失ってしまうかもしれません…。 さて、どうしたらいいのでしょうか !!! １、ドーピング検査を受ける可能性があると医師に必ず伝える ２、処方された薬が禁止物質を含んでいないか再度医師に尋ねる ３、処方された薬を飲む前に、禁止されていな いかを自分で確認する では、これらを参考にして、次のように受診し てください。
A くん『少し熱がありそうで、咳が出ていて。明日から試合なのでなんとかなりませ んか？？ただ明日からの大会にはドーピング検査がある可能性があって、検 査対象になるかもしれません。』 医 師『わかりました。診察させてください。』 （診察終わる…） 医 師『乾燥したバスの中でのど風邪をひいちゃったかな。 薬を出しておきますので、きちんと飲んで休んでください。』 A くん『ありがとうございました。このお薬は、飲んでもドーピング違反にならない 種類のものでしょうか？』 医 師『これは違反にはなりませんよ。』 A くん『わかりました。ありがとうございました。』 薬品に対する問い合わせが必要な場合には、都道府県薬剤師会に設置された薬剤師 会ドーピング防止ホットライン（本書３ページ参照）、日本アンチ・ドーピング機構ま たは公益財団法人日本体育協会のドーピング防止ホットラインに問い合わせてください。 A くん『コーチ、検索しましたが違反ではないようです。薬を飲んでしっかり休むこ とにします。明日は頑張ります！！』 スポーツドクターのご紹介 選手・指導者の皆さんは、『お医者さんだから、ドーピン グのことも詳しいはずだ』と思っているかもしれません。し かし、大変申し訳ないのですが、実際にはそうではないとい うのが実情です。医師になる過程で、どのような薬がドーピ ング違反にあてはまるかということを知る機会はあまりない のが一般的です。しかし、医師の中にもスポーツへの関心が高く、ドーピングのことを自 発的に学ぶ医師がいるのも事実です。 日本には、3 種類のスポーツに関する医師の資格（日本体育協会公認スポーツドクター、 日本整形外科学会認定スポーツ医、日本医師会認定健康スポーツ医）があり、これらの資 格を有する医師は、ドーピング防止の知識を得る機会があるといえます。資格を有する医 師は、ホームページなどで検索することが可能ですので、受診先を決める参考にしていた だくことができます。
ドーピング防止Ｑ＆Ａ
Ｑ１ 私は高校でハンドボール部に所属して、高体連の大会に出場しますが、捻挫 しているので痛み止めを飲んでいます。ドーピングに違反しないか心配です。 Ａ１：服用している痛み止めがドーピング違反になるかどうかは、この質問では断定でき ませんので、病院など受診した医師に再度相談してください。また、薬局などで薬 を買う場合もスポーツ選手であることを伝えた上で、薬剤師に相談してください。 判断に困った時は、所属している競技団体や体育協会などに相談し、自分の判断だ けで使うことは避けてください。 Ｑ２ 明日、体操の競技会が開催されますが、風邪気味で微熱があり病院でビタミ ン入りの点滴を行いました。事前の申告は必要ですか？ Ａ２：ビタミンそのものだけでは禁止物質には該当しませんが、50ml 以上の静脈注射は ドーピング違反とされています。そのため、治療上必要であれば、事前に申告を行 うのが原則とされています。 Ｑ３ 薬を飲んでスポーツをしたら何故いけないのですか？ Ａ３：競技者の健康を害する、フェアプレーの精神に反する、反社会的行為であることか ら競技ルールで禁止されています。競技能力を高めるために薬物などを使用したり、 その使用を隠ぺいしたりする、いわゆるドーピングに違反するからです。一方、病 気やケガの時にも薬を使いますが、治療目的で使っている場合とドーピングで使用 している場合と区別ができません。そのため、治療で使用している場合は所定の手 続き（事前申請）をしなければ、ドーピング違反と判断される場合があるため、安 易な薬の使用は認められていません。Ｑ４ ドーピング検査は血液・尿検査の他に何がありますか？ Ａ４：現在のところ、基本的には尿検査が中心で、競技や大会によっては血液検査を実施 しています。フェミニティ（性別）検査を実施することがありますが、ドーピング 検査として必ず実施するものではありません。 Ｑ５ プロ選手もドーピング検査を受けなければいけないのですか？ Ａ５：プロ競技は各々の規定がありますが、基本的には世界アンチ・ドーピング機構ある いは日本アンチ・ドーピング機構で制定されたルールに基づいて、ドーピング防止 ならびにドーピング検査を実施しています。検査を求められた場合は受けなければ なりません。検査を拒否した場合は、陽性とされます。
現在、国民体育大会をはじめとする全国大会の競技会ではドーピング検査が多く行われ ています。また、ドーピング検査は今後ますます増えていくことが予想されます。 さて、国民体育大会実施競技の約４割の競技において、男女とも中学 3 年生から「少年 の部」に出場することができます。ところが、多くの中学生や高校生は「ドーピングは自 分とは関係ない」と思い込んでいることでしょう。しかし、そのように考える選手こそ ドーピング検査で陽性を示すことがあり、このことはコーチ・監督においても同様のこと が言えます。 ドーピング検査を受け、違反となると「２年間の試合出場停止」という処分が下され、 選手にとって選手生命の危機のみならず、名誉を著しく汚します。常日頃より自分は 「うっかりドーピングをしているのでは？」と心がけることが重要です。 また、過剰に意識しすぎて「試合前に薬は飲んではいけない」と思い込むことも競技力 を低下させます。例えば、頭痛で苦しんでいる選手が「痛みを止めれば最高のパフォーマ ンスを発揮できたにもかかわらず、薬を敬遠し痛みのあるまま試合に出場したために結果 を残せなかった。」ということも多々あります。薬はスポーツ選手にとって決して悪い物 ではなく「じょうずに付き合うもの」です。 これから本県においては、「全国高等学校総合体育大会」、「国民体育大会・全国障害者 スポーツ大会」を控え、そして日本で開催の「東京オリンピック・パラリンピック競技大 会」も控えています。みなさんにとっては最高のモチベーションとなる目標と思います。 ここへ辿り着くためには、最も効果的な練習と最短の道を進むことが大切です。しかし、 ドーピング違反となればとても大きな遠回りを強いられます。 私たち薬剤師は、本気でスポーツに取り組む人たち、結果や目標を高く持って成長を意 識している人たちを応援しています。 一般社団法人三重県薬剤師会 会長 上村 武
