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阪神地域編 (1) 第 1 回 (2014 年 12 月 3 日配信分 ) 不整脈専門医からみた地域医療連携の実情とあり方 監修 井上耕一先生桜橋渡辺病院心臓 血管センター不整脈科科長 心房細動診療の最前線を学ぶマスターシリーズ第 2 弾 地域でまもる心房細動患者 ~わがまちの医療連携 ~ の最初の

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─阪神地域編─

─阪神地域編─

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6

紙 上 再 録

地域医療連携の実情とあり方

1

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2

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7

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11

不整脈専門医からみた地域医療連携の実情とあり方

井上 耕一 先生

脳卒中専門医からみた地域医療連携の実情とあり方

吉村 紳一 先生

3

プライマリケア医からみた地域医療連携の実情とあり方

勝部 芳樹 先生

4

5

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15

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18

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24

適切な抗凝固療法の実施、心房細動の早期発見をめぐって

心房細動アブレーション治療の位置づけをめぐって

6

脳梗塞急性期治療の現状と課題、そして望まれる3者連携の形とは

桜橋渡辺病院 心臓・血管センター

不整脈科 科長

桜橋渡辺病院 心臓・血管センター

不整脈科 科長

井上 耕一 先生

井上 耕一 先生

兵庫医科大学 脳神経外科学講座

主任教授

兵庫医科大学 脳神経外科学講座

主任教授

吉村 紳一 先生

吉村 紳一 先生

勝部医院 院長

勝部医院 院長

勝部 芳樹 先生

勝部 芳樹 先生

~鼎談・不整脈専門医×脳卒中専門医×プライマリケア医~

 

地域医療連携の実情とあり方

       井上 耕一 先生、吉村 紳一 先生、勝部 芳樹 先生

心房細動マスターシリーズ第2弾

〒101-0065 東京都千代田区西神田3丁目5番2号 http://www.jnj.co.jp

ジョンソン・エンド・ジョンソン 株式会社 

メディカル カンパニー バイオセンス ウェブスター事業部

(2)

1

不整脈専門医からみた

地域医療連携の実情とあり方

阪神地域編(1)

井上 耕一 先生

桜橋渡辺病院 心臓・血管センター 不整脈科 科長 監修 (2014年12月3日配信分) 3 2 3 2  心房細動診療の最前線を学ぶマスターシリーズ第2弾「地域でまもる心房細動患者 ~わがまちの医療連携~」の 最初の舞台は、大阪市から神戸市にかけて人口約600万人が暮らす阪神地域です。この地域には、高度専門医療を 提供する大規模な中核病院から地域住民に密着してプライマリケアを担うクリニックまで、多数の医療機関がひしめ き合っており、全国でも有数の充実した医療環境を形成しています。そうしたなか、心房細動患者さんのための医療 連携は実情として、どのように行われているのでしょうか。また、連携を担う先生方自身は今後、どういった取り組み が必要と考えていらっしゃるのでしょうか。こうした話題について、阪神地域の心房細動患者さんをそれぞれ異なる 視点で診ていらっしゃる、プライマリケア医、不整脈専門医、そして脳卒中専門医の3名の先生方から、率直なご意見 を伺ってまいります。  今回まずお話を頂戴するのは、大阪市にある桜橋渡辺病院心臓・血管センター不整脈科の井上耕一先生です。全 国屈指の心房細動アブレーション治療実績を誇る施設の不整脈専門医として、阪神地域全体から訪れる心房細動患 者さんを診ていらっしゃいます。そのご経験をもとに、日常的な臨床実感を交えて語っていただきました。  心房細動患者さんをお持ちのプライマリケア医の先生方との医療連携という点に関して言えば、この地域では現在、非常に円滑な実 践が可能になってきているのではないかと思っています。  かつては、脳梗塞といえば動脈硬化性の脳梗塞を想定することが多く、心原性脳塞栓症についてはあまり認知されていない印象が ありました。そのため、予防のための心房細動治療の重要性も過小評価される傾向があり、この地域でも、心房細動治療の視点から特 別にプライマリケア医と不整脈専門医の間で連携するということは、あまりなかったように思います。しかし最近になり、新規経口抗凝 固薬(NOAC)の登場やカテーテルアブレーション治療の進歩等で、心原性脳塞栓症の予防を含む心房細動の治療は大きなブレークス ルーを遂げました。そうしたことをきっかけに、心房細動や心原性脳塞栓症をテーマとした地域の先生方のための勉強会が、私たち不整 脈専門医も交えてたくさん開催されるようになり、結果として、現在ではこの地域の医療連携は大きく前進したと感じています。

NOAC登場やアブレーション治療の進歩を機に地域の勉強会が増加。

それを足掛かりとしてプライマリケア医―不整脈専門医の連携は大きく前進

井上先生のご施設には、多くの心房細動患者さんが他施設からのご紹介で来院されると思います。

そうしたなか、心房細動患者さんのための医療連携という点に関して、先生は貴施設の位置する阪神地域の

現状をどのようにご覧になっていらっしゃいますか?

 勉強会を通じ、まず地域のプライマリケア医の先生方に、抗凝固療法の重要性や基礎疾患・リスクファクター管理の重要性、それから 根治療法であるアブレーション治療の存在など、心房細動診療に関する知識や最新の情報を知っていただく機会が増えました。そして、 そのような場で顔を合わせることによって、地域の先生方が「不整脈で分からないことがあればこの先生に頼めばいい」と思ってくださ るようになり、私たち不整脈専門医としても地域の先生方のニーズが分かるようになってきました。こうした顔の見える関係が第一歩と

地域での勉強会の増加が、心房細動をめぐる医療連携構築の大きなきっかけになったのですね。

具体的にどういった形で、そうした場が連携の実践に発展したのでしょうか?

(3)

1

不整脈専門医からみた

地域医療連携の実情とあり方

阪神地域編(1)

井上 耕一 先生

桜橋渡辺病院 心臓・血管センター 不整脈科 科長 監修 3 2 3 2  一つはやはり人口も医療機関も多い地域ですので、先ほどお話ししたような勉強会などが多く、プライマリケア医と不整脈専門医で コミュニケーションを取れる機会が比較的豊富に存在することだと思います。加えて、新しい診療知識の習得と実践に熱心な、意識の高 いプライマリケア医の先生方が多くいらっしゃることも、この地域の恵まれているところではないかと思います。

こうしたプライマリケア医と不整脈専門医との間の活発な連携が実現できるようになった背景に、何か地域

的な要因などはありますか?

 医療機関が多い地域ということはそれだけ様々なお考えの先生がいらっしゃるということですので、やはりプライマリケア医の先生の 中には、大変熱心に、毎回のように勉強会に参加される先生もいらっしゃれば、勉強会のような場にはあまり足を運ばれず、交流をもちづ らい先生も一定数いらっしゃいます。そうした先生方に対し、不整脈専門医としてどのような働きかけを行っていったらよいか、どのよう な働きかけができるのか、それを考えることが今の課題だと思っています。

逆にこの地域の課題として挙げられる点があるとすれば、どのようなことでしょうか?

 そうですね。プライマリケア医の先生方に心原性脳塞栓症一次予防に あたってお願いしたい役割として、私自身も日頃から、地域の勉強会など で、心房細動の早期検出、適切な抗凝固療法の継続、そしてリスクファク ターとなる基礎疾患の管理という3点の重要性をお話ししています。  ただ、この地域の現状として、少なくとも私が関わっている範囲に限っ て言えば、そうしたプライマリケア医の先生方の役割はすでに十分果たさ れている印象があります。例えば、リスクファクターの管理に関しては、心 房細動患者さんでは高血圧を合併している場合に抗凝固療法による出血 のリスクが高くなりますので、通常の高血圧患者さんよりも低めに血圧を コントロールすることが大切になります。当院と連携されている地域の先 生方はこうした点を十分理解されており、このような合併例では特に注意 を払って厳格な降圧を実践してくださっているという印象があります。

基礎疾患の管理および抗凝固療法は、プライマリケア医により適切に実践されている。

心房細動の早期検出は日常診療での検脈が鍵であり、今後さらなる取り組みが求められている

心原性脳塞栓症一次予防のための連携にあたっては、よく不整脈専門医の先生からプライマリケア医の先

生に向けて、抗凝固療法、基礎疾患の管理、そして心房細動の早期検出の3つを特にお願いしたいという声

が聞かれます。井上先生も同じご意見ですか?

なって、徐々にプライマリケア医の先生方からのご相談やご紹介が増え、それによってよりいっそう意見交換や情報共有が進み、結果と して、地域全体で心房細動に対する早期の適切な治療介入が実現されるようになってきた、というのが私の印象です。  抗凝固療法についても、ワルファリンしかなかった頃は確かに課題が多かったのですが、管理が簡便なNOACが登場してからは、プ ライマリケア医の先生方がご自身で抗凝固療法を適切に開始・継続されることが多くなりました。例えば、当院にはカテーテルアブレー ション治療目的でプライマリケア医から紹介されてくる心房細動患者さんが多くいらっしゃいますが、そうした患者さんのほとんどで、 既に適切な抗凝固療法を開始していただけているのが現状です。また、世間一般的には、専門医のところで処方したNOACがいつの間 にかワルファリンやアスピリンに変更されてしまっていた、というようなケースがあると伺いますが、私自身は、この地域でそうしたケー スを経験したことはありません。NOAC登場後、少なくともこの地域のプライマリケアにおける治療のクオリティーは向上していると感 じています。

先ほど先生が実現しつつあるとおっしゃっていたプライマリケア医との円滑な連携が、適切な心原性脳塞栓

症の一次予防という形で、まさに成果として現れてきているということですね。

抗凝固療法についても同様ですか?

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5 4  当院の場合、ご紹介いただく心房細動患者さんのうち二次予防目的の患者さんは10%程度で、非常に少ないのが現状です。

脳卒中専門医―不整脈専門医の連携が、心原性脳塞栓症既往患者さんの予後改善につながる可能性がある。

不整脈専門医からの積極的な働きかけが連携構築・強化の鍵

ここまで、主に心原性脳塞栓症一次予防のための連携について伺ってまいりましたが、貴施設にご紹介されて

くる心房細動患者さんの中に、心原性脳塞栓症の二次予防のために紹介されてくる方はいらっしゃいますか?

 そう思います。ただ、当院に心房細動患者さんを紹介してくださるプライマリケア医の先生というのは、やはりカテーテルアブレーショ ン治療まで選択肢として考えてくださるような先生方ですから、心房細動治療について特別に意識が高いのかもしれません。地域全体 の実情がどういった状況であるかを考えるうえで、その点は注意が必要ですね。

心房細動患者さんにとっては、この地域は非常に理想的な治療環境ですね。

 心原性脳塞栓症一次予防に向けた心房細動の早期検出は、まだ今後よりいっそう取り組んでいくべき点だと思っています。そしてそ のうえでは、やはり検脈が欠かせません。  2015年から、日本不整脈学会と日本脳卒中協会が共同で「脈の日」「心房細動週間」を設定し、患者さんご自身に対して直接脈の チェックを呼び掛ける全国的な取り組みも始まりますが、プライマリケア医の先生方には、ぜひ引き続き日常診療での検脈を大切にして いただきたいと思います。実際に私が経験した症例で、プライマリケア医の先生のところで心房細動が検出され、その後も通院していた にもかかわらず、一度も脈をとられなかったという患者さんがいらっしゃいました。心原性脳塞栓症の一次予防のためには、心房細動を 早期に検出し適切な介入を行うことが欠かせません。落ち着いている患者さんであってもぜひ、継続的な脈のチェックだけはお願いし たいと思います。

心房細動の早期検出については、どんな現状でしょうか?

 最近はイベントレコーダー(携帯型心電計)を活用しています。以前は動悸症状がある患者さんでもなかなか通常の心電図検査では 心房細動がとらえられず、診断の難しい場合がありました。しかし今はイベントレコーダーを持ち帰っていただくことで、少なくとも症状 のある患者さんでは比較的容易に心房細動を検出でき、早期介入に役立っています。

不整脈専門医として、井上先生ご自身が心房細動早期検出のために工夫されていることは何かありますか?

 紹介の流れとしては、脳卒中専門医の先生のところで心原性脳塞栓症の急性期治療を終えた後、プライマリケア医の先生のもとに戻 された患者さんを、プライマリケア医の先生が当院にご紹介くださることがほとんどです。カテーテルアブレーション治療を目的にご紹 介いただくケースのほか、脳梗塞発症をきっかけに初めて心房細動が検出されたため、その精査や今後の治療方針決定を依頼されてご 紹介いただくケースが多いです。

どのような流れで紹介されていらっしゃるのでしょうか?

 心原性脳塞栓症既往の心房細動患者さんについて、脳卒中専門医の先生から不整脈専門医へ、という流れでご紹介いただくケース は、現状ではなかなかありません。心房細動のための医療連携では、この両者の連携が確かに不足していると思います。

二次予防目的での心房細動患者さんの紹介は非常に少なく、しかもそのほとんどはプライマリケア医の先

生から、という現状なのですね。急性期治療を行った脳卒中専門医の先生から直接ご紹介を受けるケースは

ないのでしょうか?

(5)

5 4  脳卒中専門医の先生が不整脈専門医へ、二次予防目的でのご紹介をされることが少ないのは、急性期治療を終えた回復期の患者さ んに対してさらなる治療の負担を掛けたくない、それよりも機能予後を改善するためのリハビリにできるだけ注力させたい、とお考え になるからだと思います。そもそも一般的には、心原性脳塞栓症を発症した患者さんのうち、少なくない割合の方が亡くなってしまうか、 寝たきりになってしまいます。それ以外の患者さんもご高齢であったり麻痺が残っていたりして、通院するだけでも大変な負担になるこ とが多いです。しかもリハビリの優先度が高いことを考えると、二次予防のために不整脈への介入治療を行う必要があるという判断に は、なかなかたどり着かないのだろうと思います。また、特にこの地域に関して言えば、二次予防は現状、抗凝固療法とリスクファクター の管理を中心に、脳卒中専門医の先生とプライマリケア医の先生の連携の中で適切に実践されていると思います。そのためなおさら、 脳卒中専門医の先生が不整脈への介入治療の必要性を感じられるケースは少ないのではないか、と推察されます。

脳卒中専門医の先生から不整脈専門医の先生へ、という連携が希薄になってしまっている背景には、どう

いったことがあるとお考えですか?

 はい、そう思います。心原性脳塞栓症既往患者さんの中には、カテーテルアブレーション治療によって予後を改善できる可能性のある 患者さんが一定数含まれていると考えています。確かに心原性脳塞栓症の転帰は極めて不良ですが、一方で3割程度の患者さんは退 院時に機能障害が軽度であり1)、社会復帰することができると聞いています。そうした患者さんで、特に再発のリスクが高い方や若年の 方においては、将来のことを考えて可能な限り心房細動自体へのアブレーション治療も検討し、抗凝固療法との二段構えで再発予防に 努めていく方がよいと考えます。  また、心原性脳塞栓症既往患者さんの中には、心房細動の背景に基礎心疾患をお持ちの方がいらっしゃいます。基礎心疾患の適切な 治療とコントロールは、心房細動の進展や心不全の増悪等を防ぐうえで不可欠であり、心原性脳塞栓症既往患者さんのフォローにおい てもぜひ見逃してほしくないところです。そうしたことも考慮すると、やはり二次予防の面で脳卒中専門医の先生と不整脈専門医がより 積極的に連携していく意義は大きいと思います。

井上先生としては、地域の不整脈専門医と脳卒中専門医の連携が強化されることにより、心原性脳塞栓症既

往患者さんに対してより効果的な二次予防ができるようになるとお考えですか?

 私たち不整脈専門医の側から脳卒中専門医の先生方に向け、心房細動に対する介入治療への興味、さらには信頼を持っていただけ るように、働きかけや情報発信の努力が必要だと思います。例えばアブレーション治療の現状として、まだ有効性に限界点はあるものの 手技はほぼ確立されており、施行経験の多い施設では安定して高い治療成績が得られるようになっています。そうした情報について、エ ビデンスを交えて知っていただけるように私たちの側が働きかけなければなりません。  また、脳卒中専門医の先生方のなかには、アブレーション治療に期待されていてもその適応に関する十分な情報がなく、実際の紹介 がしづらい、という先生もいらっしゃると伺います。基本的にはご紹介いただいた後に不整脈専門医の方で適応判断するということでよ いと思いますが、どういった患者さんに介入治療を考慮すべきかを分かりやすい形で整理して提示させていただくことも、私たち不整 脈専門医の責務かと思います。

そうした連携の強化に向け、先生は不整脈専門医として現状、どういったことをすべきとお考えですか?

 脳卒中専門医の先生は急性期治療という非常に大きな役割を担っていらっしゃり、治療後の患者さんはできるだけ早くリハビリ病院に 送らなければならないという事情があると思いますので、リハビリ病院の先生方にアプローチしていくことも大事でしょうね。  ただ、脳卒中専門医の先生にしろ、リハビリ病院の先生にしろ、働きかけを効果的に行っていくためには、心房細動のアブレーション治 療が患者さんの予後を改善できるという、レベルの高いエビデンスが新たに構築される必要があると思います。現在、アブレーション治 療が心房細動患者さんの脳梗塞や死亡のリスクを低減し得ることを示唆した観察研究報告2)はありますが、前向き研究による確固とし たエビデンスはありません。また、アブレーション治療が心房細動患者さんの心不全を予防して予後を改善するということも、私たち術 者としてはその実感があるものの、やはりまだエビデンスは乏しいのが現状です。今後、脳卒中専門医の先生やリハビリ病院の先生と二 次予防に向けた連携を深めていくにあたっては、こうした予後に対するアブレーション治療の有効性を前向き研究で示す必要があると 思います。

そのほか、二次予防において不整脈専門医の先生がより大きな役割を果たすためには、どんなことが望まれ

るでしょうか?

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7 6 7 6  不整脈専門医が連携の中で果たすことを求められている最も大きな役割は、やはり一次予防ですので、そのために不可欠なプライマ リケア医の先生との連携は、引き続き強化していくべきだと思います。そしてそれにあたってはまず、初めにお話ししたとおり、地域の勉 強会などの場にあまり顔を出されず、コミュニケーションの機会を持ちにくい先生方への働きかけが、今後この地域では大切になってい くと思います。例えば、従来の勉強会だけでなく、本ウェブサイトのようなインターネット媒体も有効な一手段として活用するなど、私た ちとしても働きかけの方法に工夫が必要かもしれません。加えて、もう一つ大切な点は、私たち不整脈専門医が一人ひとりのプライマリ ケア医の先生が求めていらっしゃるものに応じた、柔軟な連携を行うことだと思います。プライマリケア医の先生によってご専門や得意 とされる領域は様々ですから、そのニーズも様々です。それを見極め、一番患者さんにとって良い形のバランスで連携していければと 思っています。  一方、脳卒中専門医の先生との連携、もしくはリハビリ病院の先生との連携に関しては、まさにこれからだと思います。まずは私たち 不整脈専門医の側から、アブレーション治療に関する情報の周知に加え、基礎心疾患合併例のように不整脈専門医による管理が必要な 心原性脳塞栓症既往例があることの周知を図っていくことが、連携構築の第一歩だと思います。そして、そうした情報を先生方が信頼し、 連携を実践に移すモチベーションとしてくださるよう、私たちは並行して、アブレーション治療をはじめとする心房細動治療のエビデンス の蓄積に、引き続き取り組んでいかなければならないと考えています。

心房細動患者さんのための連携における不整脈専門医の最も重要な役割は一次予防。

接点の少ないプライマリケア医へのリーチが今後の課題。

二次予防目的の脳卒中専門医との連携もこれからである

これまでのお話を踏まえまして、今後さらにこの地域で心房細動患者さんを脳梗塞からまもっていくために

は、どのような点を重視して連携のネットワークを強化していく必要があるとお考えですか?

■ 参考文献 1) 北川一夫ほか. 病型別にみた入院時重症度と退院時予後との関係. 小林祥泰(編). 脳卒中データバンク2009. 中山書店, 東京, 2009. P.34-35. 2) Bunch TJ, et al. Patients treated with catheter ablation for atrial fibrillation have long-term rates of death, stroke, and dementia similar to patients without atrial fibrillation. J Cardiovasc Electrophysiol. 2011; 22: 839-845.  また、当院に二次予防目的で紹介される心原性脳塞栓症既往患者さんを治療するときですが、リハビリ中であったり体が不自由であっ たりして、患者さんご本人、ご家族とも負担を抱えて生活されていることがしばしばあります。したがって、できるだけ負担が増えないよう な方針で治療を行えるように心掛けることが大切ですね。

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2

脳卒中専門医からみた

地域医療連携の実情とあり方

阪神地域編(2)

吉村 紳一 先生

兵庫医科大学 脳神経外科学講座 主任教授 監修 (2014年12月17日配信分) 7 6 7 6  前回の「地域でまもる心房細動患者:阪神地域編(1)」では、阪神地域における心原性脳塞栓症の一次予防・二次 予防のための医療連携について、不整脈専門医の視点から、桜橋渡辺病院心臓・血管センター不整脈科の井上耕一 先生にお話を伺いました。今回の第2回では、同じテーマに対して、脳卒中専門医である兵庫医科大学脳神経外科の 吉村紳一先生にお話を伺います。脳卒中治療のエキスパートとして、同大学の脳卒中センターで心原性脳塞栓症患 者さんの急性期治療に日々尽力されている吉村先生は、阪神地域の心房細動診療をめぐる医療連携について、どの ような印象やご意見を持たれているのでしょうか。その現状や課題、今後目指すべき方向性などを語っていただきま した。  私たち脳卒中専門医にとって心房細動患者さんのための医療連携というと、主に心原性脳塞栓症を発症した方の急性期治療と二次 予防におけるプライマリケア医との連携が中心になります。その点に関して言えば、この地域では適切に行われているというのが印象 です。私がこの地域に赴任してきてからの年数はまだ浅いのですが、脳神経を専門とされない地域の先生方に向け、脳梗塞の最新治療 法の紹介や心原性脳塞栓症既往患者さんの抗凝固療法を含め、脳卒中をテーマにした地域勉強会等を積極的に行っており、この地域 の連携を今後もさらに強化していきたいと考えています。

心原性脳塞栓症二次予防におけるプライマリケア医との連携は順調。

一次予防ではまだ課題があるものの、NOAC登場で改善の兆し

吉村先生のご施設には、心房細動が原因で心原性脳塞栓症を発症した患者さんが多く搬送されてくること

と思います。そうしたなか、貴施設の位置する阪神地域での心房細動患者さんをめぐる医療連携の現状に

ついて、先生はどのような印象をお持ちですか?

 二次予防のためのプライマリケア医との連携については問題ないと思う一方、一次予防に関してはやはりまだ改善する余地があると 思っています。これは、当院に搬送されてくる心原性脳塞栓症患者さんの中には依然として、抗凝固療法の未実施やコントロール不良の 結果として搬送されてくる方が少なくないからです。  以前、自施設に搬入された心原性脳塞栓症例100例を調べてみたところ、30名の患者さんは既に心房細動と診断されていたにもか かわらず、その7割は抗凝固薬を服用していませんでした。また、ワルファリンを内服していた患者さんも全員PT-INR<1.6で、抗凝固療 法によって適切に管理されていた例は1例もなかったという結果でした。私たちは脳主幹動脈閉塞による脳梗塞患者さんに対して血管 内治療を積極的に行っていますので、地域の中でも特に抗凝固療法に問題のあった例が集中したのだろうとは思います。しかし、これら の患者さんに適切な抗凝固療法が行われていれば発症を防げた、あるいは軽症におさえられた可能性は否定できないと思います。

課題を感じることもありますか?

 原因の多くはワルファリンの使いづらさによるものだったと思います。ワルファリンは頻繁な採血検査が必要ですが、採血が苦痛で患

心房細動と診断されているにもかかわらず抗凝固療法が不十分になってしまう背景として、先生はどういっ

たことがあるとお考えですか?

(8)

9 8  はい、明らかに良くなってきていると思います。NOACを飲んでいて脳塞栓症になった患者さんが全くいないわけではないのですが、 その数はワルファリン服用者に比べると明らかに少ないと感じます。NOACでは採血に伴う患者さんの負担や出血合併症に対する懸念 が軽減されますので、服薬アドヒアランスについても改善されていくのではないかと思います。  また、NOACの登場でプライマリケア医の先生方との連携が促進されている印象があります。これまではワルファリンによるコント ロールの難しさから、急性期治療後の心原性脳塞栓症患者さんをプライマリケア医に戻しにくく、抗凝固療法だけは私たちが外来で管 理することもありました。しかし、投薬管理の容易なNOACが出て、私たちも以前ほど施設情報を気にすることなく患者さんをお戻しで きるようになりました。結果として、プライマリケア医と脳卒中専門医の連携には大きく拍車がかかったと感じています。

今はワルファリンほど頻繁な採血検査が不要で、投薬管理の容易な新規経口抗凝固薬(NOAC)が使用可能

となっていますね。こうしたNOACの登場後、抗凝固療法の実施状況に変化はみられていますか?

 はい、いらっしゃいます。先ほど、自施設に救急搬送された心原性脳塞栓症例100例中の約3割は既に心房細動の診断を受けていたと お話ししましたが、ほぼその同数の患者さんは心房細動と診断されないまま、いきなり心原性脳塞栓症を発症した症例です。

脳卒中専門医は、心原性脳塞栓症二次予防のための徹底した心房細動検出と病型診断を。

プライマリケア医・不整脈専門医の先生方には、一次予防のための心房細動検出と治療を

心房細動と診断されていたにもかかわらず心原性脳塞栓症を発症してしまう患者さんがいらっしゃる一方で、

心房細動と診断されることなく発症してしまう患者さんもいらっしゃるのでしょうか?

 心房細動の検出自体が十分に行われていないため、一次および二次予防も不十分になっているということだと思います。特に注意す べきなのは脳梗塞の病型診断です。私たちは頭部CTやMRIだけでなく、ホルター心電図や経食道心エコーまで必ず行って総合的に判 断しています。しかし実際にはMRIのみでアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞などと診断され、心房細動の十分な検出が行われない まま抗血小板薬を処方されてしまうケースが後を絶ちません。そうなると患者さんの内服が規則的であっても脳塞栓症を再発してしま い、その時になってはじめて心原性であったことに気づくことになります。残念ながら現在でもこのようなケースは多く存在します。  私たちは病型診断を徹底する必要性を一次搬送先である急性期医療機関に対して啓発していかなければならないと考えています。 そしてこれこそが脳卒中専門医と急性期医療機関との連携の重要ポイントであると言えます。

これにはどのような背景があるとお考えでしょうか?

 まずは一次搬送先となる急性期医療機関の先生方に対し、急性期治療を終えられた患者さんが退院さ れるまでの間の適切な病型診断の必要性をお伝えしたいと思います。ただし、経食道心エコーなどはど の施設でもできるわけではありません。したがって正確な病型診断が難しい場合には脳卒中専門医へ紹 介することの必要性を呼びかけていく必要があります。そしてプライマリケア医の先生方に対しても、一 過性脳虚血発作(TIA)や脳梗塞を起こしたら必ず一度は脳卒中専門医にかかるよう、患者さんを導いて いただきたいと思います。つまり「脳梗塞例に対しては必ず専門医が病型診断をする」という意識改革が、 脳梗塞に関わる全ての先生方の間でまずは必要なのだと思います。  そのうえで紹介を受けた脳卒中専門医の先生方にお願いしたいのが、的確な検査の実施です。先ほど、 本当は心原性であるにもかかわらず十分な検査がなされないまま動脈硬化性と診断され、再発したとい う例を紹介しましたが、こうした例には、発症時に心電図検査、経胸壁心エコー、および頚動脈エコーしか 行われていないことが多いのです。私の経験からすると、たとえ頚動脈エコーで動脈硬化所見が認めら れたとしても、そこから一歩踏み込んで経食道心エコーまで行うと、心内血栓やもやもやエコーが見つかったりするケースがあります。 ぜひ専門医の先生方にはそこまで徹底していただき、次の診療につなげていただきたいと思います。

適切な病型診断が行われるために、具体的にはどのようなことを啓発していく必要があるとお考えですか?

者さんの受診が不規則となり、結果として内服を中止してしまうケースが多いと感じていました。一方、プライマリケア医の先生方から は、「ワルファリンは出血合併症が多いので使用しにくい」との声も聞いておりました。当時は抗凝固療法としてはワルファリン以外の選 択肢がありませんでしたし、一次予防になかなか踏み出せないというのは、ある意味仕方のないことだったのかもしれません。

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9 8  不整脈専門医の先生方との連携となると、主に心原性脳塞栓症既往患者さんの二次予防が目的になると思います。しかしこの地域に おいて不整脈専門医と脳卒中専門医が直接的に意見交換やコンサルテーションをするような機会は、残念ながら現状ではほとんどない と思います。  確かにNOACの登場によって、講演会や勉強会を通じて不整脈専門医の先生方とお会いする機会は以前よりも増えました。しかし、こ うした講演会等は両者の連携というよりも現状はあくまでNOACをテーマとしたものですので、どうしても脳梗塞未発症の心房細動患 者さんを主に診ていらっしゃる不整脈専門医の先生方は一次予防の観点から、脳梗塞発症後の患者さんを主に診ている脳卒中専門医 は二次予防の観点から話すことが中心になります。お互いの患者さんのバックグラウンドが異なる以上、なかなか連携についての意見 交換とはいかないですね。

プライマリケア医との連携とは異なり、不整脈専門医との連携は希薄。

より効果的な心原性脳塞栓症二次予防を目指して一歩踏み出す努力を

心原性脳塞栓症の一次予防という観点から不整脈専門医に言及がありましたが、この地域における不整脈

専門医-脳卒中専門医の連携はどのような現状にあるとご覧になっていますか?

 確かに、なかには心原性の可能性を否定できないものの、経食道心エコーやホルター心電図まで行っても心房細動の診断がつかず、 専門医ですら病型診断が困難な症例が存在します。こういった症例群は近年Embolic Stroke of Undetermined Source(ESUS)と 呼ばれるようになり、研究が進められています。最近では、24時間心電図で心房細動が検出されなかった潜因性脳卒中患者さんに埋込 み型の心電計をつけて経過観察したところ、半年間で約9%、1年間で約12%の患者さんに心房細動が検出されたという報告がありまし た1)。つまり、たとえ24時間心電図で心房細動が検出されなくても、翌日、翌々日に心房細動が起こるかもしれず、必ずしも非心原性とは 言い切れないことが分かってきたわけです。ESUSについては今後もだんだんと解明されていき、将来的にはより適切な診断と治療が できるようになると思っています。

病型診断がどうしても困難な例もあるとお聞きしますが、そうした例ではどのようにされていますか?

 一次予防の視点からの心房細動検出に関しては、やはりプライマリケア医の先生と不整脈専門医の先生に期待させていただきたい ところです。ここ阪神地域は人口600万人を超える地域ですので、心房細動の潜在患者さんは多く存在すると考えられます。そうした患 者さんを早期に見つけ出したうえで、理想を言えば、不整脈専門医の先生方には、心原性脳塞栓症の元凶である心房細動そのものを治 していただきたいと思っています。薬物治療であろうとアブレーション治療であろうと、心原性脳塞栓症を未然に防げる可能性があるの であれば、リスクとのバランスがとれる範囲で、できる限り積極的に取り組んでいただきたいと思います。

こうした心房細動の検出努力は、心原性脳塞栓症の発症後だけでなく、発症前の一次予防のためにも重要

ですね。一次予防の観点からはどのような改善を期待されますか?

 そもそも心原性脳塞栓症の患者さんは一般に予後不良なので、心房細動治療について不整脈専門医へ相談できる程度にまで回復 される患者さん自体が少ないのです。結果として、実際の治療現場でも、脳卒中専門医から不整脈専門医へという流れはほとんどでき ていません。  加えて、やはり私たち脳卒中専門医としては急性期治療を通じ、脳梗塞を発症した患者さんを少しでも良い状態にすることに大きな 力を注いでいます。したがって、二次予防に必要な投薬やリハビリ等まではもちろん行いますが、そこからさらにもう一歩踏み込み、心 房細動治療のために不整脈専門医の先生方と連携するところまではなかなか力が及んでいないのが現状です。

実際の治療現場ではいかがですか?

 数としては少ないですが、私自身は紹介して奏効した経験があります。  心原性脳塞栓症を起こす方の中には、若くして発症し、急性期治療によって劇的に回復するという方が、多くはないですがいらっしゃい ます。そうした患者さんに対しては、私は一度不整脈専門医に相談してみることをお勧めしています。こうした患者さんでは今後を考え て元凶である心房細動の治療に取り組む必要がありますし、さらに最近はカテーテルアブレーション治療も進歩していると聞いていま すので、紹介してみる価値は大きいと思っています。実際、そのようにしてアブレーション治療を受けられ、心房細動が治ったという患者 さんがいらっしゃいました。

先生ご自身も、心原性脳塞栓症既往の患者さんを心房細動の治療のために不整脈専門医へ紹介されたご

経験はないのでしょうか?

(10)

11 10 11 10  私自身はこうした経験もあり、不整脈専門医との連携は今後取り組むべき課題だと思っています。実際、2015年に神戸で私が代表幹 事をつとめるワークショップがありますが、主題である急性期脳梗塞治療の話だけでなく、カテーテルアブレーション治療などの不整脈 治療の最前線に関するお話も取り上げられればと考えています。  私たちとしても心房細動が治るならそれに越したことはなく、その可能性があるのなら、従来の心原性脳塞栓症二次予防法である抗 凝固療法から一歩踏み出して、不整脈専門医の先生方とできる限り連携していきたいですね。

そうした先生ご自身のご経験も踏まえ、今後、不整脈専門医と脳卒中専門医の連携はどのようになっていく

ことが望ましいとお考えですか?

 カテーテルアブレーション治療の適応と有効性、安全性等に関する情報を始め、心房細動治療の現状について、脳卒中専門医にも積 極的に発信していただきたいです。私たちもどういった患者さんであればアブレーション治療が奏効するのかなど、現状では分からない 部分が多くありますので、そういった理解が進めば、安心して患者さんを紹介できるようになると思います。

そのために地域の不整脈専門医の先生方に期待することはありますか?

 これまでに申し上げた通り、まずは心原性脳塞栓症既往患者さんの再発を防ぐ目的から、抗凝固療法の適切な継続、そして脳卒中専 門医による病型診断という2点は、プライマリケア医との連携強化というなかで今後も一層啓発の必要があるところだと思います。

 加えて、近年はCHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアといった脳梗塞のリスクを見極めるための指標が普及してきていますので、

こうしたスコアが高い、いわゆる脳梗塞ハイリスクの患者さんについては、一次予防の段階から脳卒中専門医とプライマリケア医が連 携していくと良いかもしれません。具体的には、未発症のうちに脳血管や心臓の精査を行って状態を把握し、そのうえでプライマリケア 医の先生方に抗凝固療法や基礎疾患の管理を行ってもらうという形ですね。今後は高齢化に伴ってハイリスク患者さんは増えると思い ますので、こうした連携が必要になるのではないでしょうか。

プライマリケア医との連携も、一次予防まで視野を広げてより強固に。

今後は患者さんへの正しい情報提供に向けた協力も不可欠

最後に改めて、プライマリケア医の先生方との連携についてですが、今後この地域ではどのような形での連

携の強化が求められるとお考えですか?

■ 参考文献 1) Sanna T, et al. Cryptogenic stroke and underlying atrial fibrillation. N Engl J Med. 2014, 370: 2478-2486.  そうですね。心房細動を基礎疾患に持つことや発症前の脳血管の状態がわかっていれば、脳梗塞を発症してしまった場合に病型診断 の大きな助けになりますね。現在も、心房細動の既往については、かかりつけのプライマリケア医の先生への問い合わせやお薬手帳、紹 介状などから知ることができますが、それでもやはり情報が得られない場合があります。普段からプライマリケア医の先生方と脳卒中 専門医との連携がしっかりとれているほど、患者さんにとっては有益になると考えます。

一次予防の段階から連携しておけば、患者さんが万一脳梗塞を発症してしまった場合の病型診断も迅速に

行われそうですね。

 プライマリケア医の先生方とは今後、患者さんへの正しい医療知識の啓発という点でも連携する必要があると思っています。最近は 医療に関する本が増え、インターネットも普及した結果、情報が交錯し、なかには「薬は全て毒であるので中止すべき」というような情報 も目にするようになりました。実は先日も、そうした情報の影響で脳梗塞既往患者さんが抗凝固薬の服用をやめてしまい、再発して搬送 されてしまいました。  医学においても情報の公開は大切ですが、病状というのは一人ひとり異なるものです。ですから情報が正しいかどうか、自分に合って いるかどうかを、信頼できる医師と相談できるように環境を整えていく必要があります。私自身は市民講座やマスメディアの取材を積極 的に引き受けて啓発に努めていますが、一人でできることには限界があります。地域全体の医療者が協力し、一体となって啓発に取り組 むことができれば、患者さんがより安心して適切な医療を受けられる環境を構築できるのではないかと思います。

その他、阪神地域でのプライマリケア医の先生方との連携にあたって、強化が必要と思われる点はありますか?

(11)

3

プライマリケア医からみた

地域医療連携の実情とあり方

阪神地域編(3)

勝部 芳樹 先生

勝部医院 院長 監修 (2015年2月4日配信分) 11 10 11 10  3回目となる「地域でまもる心房細動患者:阪神地域編」ですが、地域医療連携の現状を不整脈専門医の視点か らとらえた第1回、脳卒中専門医の視点からとらえた第2回に続き、今回は兵庫県西宮市で開業医をされている 勝部芳樹先生より、プライマリケア医のご視点からのお話を伺います。長年この地域に根差して心房細動患者さん の総合的な治療と管理に取り組まれていらっしゃる勝部先生にとって、地域の心房細動患者さんのための医療連携 は今日どのような状況にあると映っているのでしょうか。地域中核病院の専門医と連携していく“コツ”なども交えな がら、プライマリケア医の視点からみた、阪神地域の心房細動診療をめぐる連携の現状と課題、今後の展望などにつ いて語っていただきます。  この地域は医療機関が非常に多く、連携にあたっては比較的恵まれた地域といえます。当院の位置する西宮市近隣だけでも、診療所 の数は400を超えますし、兵庫医科大学や関西労災病院、県立西宮病院といった中核病院も数多く存在しています。他にも循環器に力 を入れている中堅病院などがあり、場合によっては大阪や神戸の高次医療機関に行くこともできる距離です。おかげで私たちプライマ リケア医としては、患者さんに特段大きな負担を強いることなく設備の整った医療機関を紹介することができますので、循環器疾患の 救急対応を含め、医療連携は全般的に充実している地域だと思います。  また、医療機関が多いため、循環器に限らず、さまざまな診療分野をテーマにした地域勉強会が規模の大小を問わず盛んに行われて います。こうした場では、脳卒中や不整脈を専門とする中核病院の先生方を含め、地域の先生方が多数集まりますので、結果的に顔の見 える関係が構築され、地域の活発な病診連携につながっているのではないかと思います。

阪神地域は医療機関が多く、連携には恵まれた環境。

不整脈専門医とは主にアブレーションの適応判断や基礎心疾患の治療で、脳卒中専門医とは主に脳卒中の

発症時とフォローで連携を実践

勝部先生は、長年プライマリケア医としてこの阪神地域の心房細動診療に携わっていらっしゃることと思い

ますが、先生からご覧になって、この地域の心房細動診療をめぐる地域医療連携はどのような現状といえま

すか?

 そうですね。阪神地域というのは広いですから、場所によっては状況が変わると思いますが、少なくとも当院のある阪神南地区に関し ては連携で困っているという先生は少ないと思います。

プライマリケアから高度医療まで提供できる環境が近隣で整っているうえ、先生方同士が交流できる機会

も多いということですね。

 まずなにより、こうした専門医の先生方がいらっしゃる地域の中核病院とのコミュニケーションを日頃から大切にしています。近隣病院

先生ご自身は普段、心房細動患者さんについて不整脈専門医および脳卒中専門医の先生方とどのような

連携をされていらっしゃいますか?

(12)

13 12  脳卒中専門医の先生との連携は、主に脳卒中のリスクが高い方の検査や、発症してしまった方の紹介・逆紹介が中心です。脳卒中急性 期は時間との勝負ですから、発症時の連携については日頃から気を配っていますね。ただ幸いにしてこの地域ではそうした急性期の連 携は比較的密に実践されてきていますので、プライマリケア医として何か特別な連携をしているというようなことはありません。  また、心房細動が原因で心原性脳塞栓症を起こした患者さんのうち、狭心症あるいは心筋梗塞のような冠動脈疾患の既往がある ケースでは、私は積極的に脳卒中専門医とコンタクトをとるようにしています。特に薬剤溶出性ステントで冠動脈疾患を治療した症例 では、少なくとも1年間は抗血小板薬を2剤併用することが推奨されていますので1,2)、そのうえで心原性脳塞栓症再発予防のための抗 凝固薬投与となると出血リスクがさらに高まります3)。したがって、このような合併例では専門医と連携しながらフォローアップするよう にしています。

脳卒中専門医の先生とはどのような連携をされているのですか?

 そうですね。心房細動に関する勉強会では、地域で開業されている眼科や精神科の医師など、他科の先生方も熱心に参加されていま す。私たちのように循環器を専門とするプライマリケア医も、他科の先生方も来てくださるよう積極的にお声掛けしますし、実際に他科 でも心房細動を合併する患者さんはいらっしゃるということでご参加くださいますので、連携の下地は比較的よく整っている方ではない かと思います。  また循環器以外でも、日常診療に役立つ知識を互いに教え合うような小規模の勉強会をよくやっています。ここはプライマリケア医 が多いため、こうした個人単位での勉強会も比較的気軽に開け、プライマリケア医同士の関係作りと知識の共有に役立っているのだと 思います。

専門医との病診連携に加え、診療科を超えた地域のプライマリケア医同士による診診連携が、地域の心房

細動診療のもう一つの支え

心房細動を診ている地域のプライマリケア医の先生方のなかには、循環器をご専門とされない先生も多く

いらっしゃると思います。そうした先生方にとっても比較的連携しやすい環境にあると思われますか?

 プライマリケア医はさまざまな疾患を診ますので、病診連携はもちろん大切ですが、プライマリケア医同士で互いの得手不得手を補 い合う診診連携も重要だと思います。特に心房細動についてはすべての科に関わる疾患ですので、診診連携の意義は大きいですね。  ただ一方で、現在のこの地域での診診連携は、私が知る限りまだあくまで個人レベルのつながりだと思います。そのため、つながりを 多く持つ先生もいれば、逆にあまり持たない先生もなかにはいらっしゃるようです。そうしたつながりを拡大していく方策を、今後も地域 の先生方と考えていきたいと思っています。

専門医との連携だけでなく、プライマリケア医同士の連携も地域の心房細動診療を支えているのですね。

 これといって特別な工夫と呼べるようなものはありません。ただプライマリケア医として当たり前のこと、私の場合は循環器を専門と するプライマリケア医としてやるべきことをやっているだけです。

専門医との連携において大切なことは、逆紹介後は専門医の治療方針を忠実に引き継ぐこと、そしてそのた

めの情報や知識・技術の習得

まさに理想的な形で発展してきているように見受けられる阪神地域の医療連携ですが、そのコツのような

ものはあるのでしょうか。例えば、勝部先生は実際に専門医の先生方と紹介・逆紹介といったやり取りを行う

際、プライマリケア医としてどのようなことを工夫していらっしゃいますか?

がほぼ毎月のように主催する勉強会等にはできる限り参加するようにしていますし、専門医の先生が中心となって開かれる会では私たち が世話人を務めたりもしています。また逆に、私たちが専門医の先生に依頼して勉強会を開いていただくこともあります。  私の場合はこうした日頃の関係をベースにしながら、不整脈専門医の先生とは主にカテーテルアブレーション治療が適応になり得る 心房細動例や、弁膜症や心筋症といった基礎心疾患を合併しており、それらの合併症の細かな管理が必要な心房細動例を中心に連携し ています。それ以外の心房細動例に対するレートコントロールや抗凝固療法などではあまり困ることはありません。心不全や虚血性心 疾患などの合併例も可能な限り当院でフォローできるように努めています。

(13)

13 12  そうですね、その点は常に勉強が必要だと思います。プライマリケアは診療範囲が広いので確かに大変ですが、幸いにしてこの地域で は、先ほどお話ししたように大小さまざまな勉強会があり、診診連携も活発です。万一心房細動の治療・管理で不安に思う点があれば、そ うした勉強会やプライマリケア医同士のつながりを通じて情報や知識を得ることができますし、自分で対応が難しければ循環器を専門と するプライマリケア医へ紹介するという対応もできます。つまり重要なことは、勉強なり他のプライマリケア医との連携なり、自分の診療 範囲をきちんと見極めて、専門医の先生から指示された方針を的確に実践するために必要な行動をとるということではないでしょうか。

プライマリケア医に求められていることを実直にこなすということが、連携の大きなコツなのですね。他方

で、最近は新規経口抗凝固薬(NOAC)やアブレーション治療などの新しい診療情報も多く、高齢化でさまざ

まに基礎疾患を抱えた患者さんも増えています。求められていることをこなし続けていくことも容易ではな

いのでは?

 先ほどお話しした通り阪神地域は医療機関が非常に多いことから、患者さんが分散しており、1医療機関あたりの平均患者数はそれほ ど多くないと思います。また、当院では再診の方が大半ですので、新規の心房細動患者さんを見つけることはそうそうありません。たと え新規で心房細動が見つかる場合であっても、その多くは動悸を訴えて来院される患者さんです。ただ、それでもやはり心房細動患者 さんのなかには無症状の方がいますし、当院の通院患者さんでたまたま脈が飛んでいて気づいたという発作性心房細動のケースも実 際に経験しています。ですので、プライマリケア医が日常診療の一環として脈を診ることは、当たり前のことではありますが心房細動の 検出に大切なことだと思います。

実際に脈を診ることで心房細動が見つかる患者さんは多いのですか?

 私は、脈を正確に診ることは心房細動を見つけるためのみならず、プライマリケア医としての日常診療の基本だと思っています。実際、 例えば糖尿病や消化器疾患で通院されている方であっても、血圧測定と脈拍測定は通常ほぼ必ず行います。

専門医の先生がプライマリケア医に求めることとして、よく脈を診ることが挙げられるのですが、プライマリ

ケア医として先生はどう思われますか?

 例えば、不整脈専門医の先生にアブレーション治療の可能性を考えて紹介する際には、レントゲンや心電 図検査、場合によっては心臓エコー検査やホルタ―心電図検査など、当院でできる範囲の検査はしっかりと 行い、患者背景や心房細動罹患歴、心機能などの検討をしたうえで紹介をしています。そして患者さんが治 療を受けて当院へ戻られた後は、専門医の先生が指示された術後管理の方針を忠実に実践するよう努めて います。  脳卒中専門医の先生との連携についても同様で、逆紹介時には必ず専門医の先生からの治療・管理に ついての方針を引き継ぐよう努めています。それを基礎疾患等にも注意しながらしっかりと継続していくこ とが、プライマリケア医としての私の務めだと思っています。  まず、不整脈専門医の先生には引き続き、プライマリケア医とのコミュニケーションや心房細動治療に関する情報共有を目的とした 地域の勉強会等の開催にご協力をいただきたいと思います。その際、先ほど申し上げた通りプライマリケア医にはさまざまなバックグ ラウンドの医師がおりますので、最近、頻繁に耳にするNOACの話題ばかりではなく、アブレーション治療や抗不整脈薬使用の現状も まじえて、心房細動治療全般に通じる話をしていただけると有意義なのではないかと思います。実は、先日まさにこうした内容のご講演 を桜橋渡辺病院の井上耕一先生注)がしてくださったばかりで、今日の心房細動治療の全体像を大変分かりやすくお話しくださったので、

今後のよりよい連携に向けて、不整脈専門医の先生にはアブレーションを含めた心房細動治療全般に関す

る情報発信を、脳卒中専門医の先生には情報発信に加え、引き続き脳卒中急性期治療へのご尽力を期待。

プライマリケア医は求められる役割を果たすための継続的な努力と互いの啓発を

これまでのお話から、この地域では、プライマリケア医の先生が心房細動診療におけるご自身の役割や連携

のあり方を、専門医の先生方と高い意識で共有され、かつ実践に努めていらっしゃることを強く感じます。す

でに患者さんにとって理想的な環境ができつつあるように思われますが、今後さらに連携を強化していくと

すれば、不整脈および脳卒中専門医の先生方にどのような役割を期待しますか?

(14)

15 14 15 14 ■ 参考文献 1) 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012年度合同研究班報告), ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版) 2) 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2010年度合同研究班報告), 安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版) 3) Dewilde W, et al. Design and rationale of the WOEST trial: What is the Optimal antiplatElet and anticoagulant therapy in patients with oral anticoagulation and coronary StenTing (WOEST). Am Heart J. 2009; 158: 713-718. 4) 阪神医療福祉情報ネットワーク「h-Anshinむこねっと」(http://www.mukonet.org)  脳卒中専門医の先生方にも不整脈専門医の先生方と同様、プライマリケア医に対する勉強会や講演会などを通して、脳卒中の治療 等に関する最新の情報を地域全体に発信いただけることをお願いします。  加えて、脳卒中専門医の先生方にはこれまで通り心原性脳塞栓症への迅速なご対応をお願いできればと思います。この地域の脳卒 中急性期治療の水準は非常に高いのですが、脳卒中患者さんの予後をさらに良くしていくためには、これまで以上に効率的な救急搬送 のネットワーク作りが求められていると思います。現在、当院のある西宮市近隣では「h-Anshinむこねっと」4)という二次救急システムの 構築が進められていますが、このシステムが稼働すれば、地域の登録医療機関の診療機能情報や患者情報などが閲覧できるほか、病院 のリアルタイムな救急受け入れ状況が検索できるようになると聞いています。心房細動患者さんが万一心原性脳塞栓症を発症してし まった場合も、時間をロスすることなく適切な急性期医療機関への救急搬送が可能になるでしょうし、脳卒中既往患者さんの紹介、逆紹 介などもやりやすい環境が整うと期待しています。

では、脳卒中専門医の先生方の役割についてはどのようにお考えですか?

 プライマリケア医の役割は、日常診療で心房細動を見逃さないこと、そして心房細動に対する基本的な治療である抗凝固療法やレー トコントロールができるようにしておくことです。そのためにも、専門医による勉強会や講演会にはできる限り参加し、必要な知識や情報 を積極的に取り入れていくことが大切だと思います。  一方、そうした基本的な役割を既にしっかりとこなされている先生方にとっては、専門医の先生方から得た知識や情報を自分の地域の プライマリケア医全体でいかにして共有していけるか、それを考えることが重要な役割になるのではないかと思います。何度も申し上げ た通り、プライマリケア医にはさまざまなバックグラウンドの方がおられるので、プライマリケア医同士のネットワークを活かしてお互い に声をかけ合い、専門医の先生方とも協力しながら、地域全体で対応していく努力が必要になっていくように思います。

では最後に、今後の阪神地域の心房細動患者さんをめぐる医療連携でプライマリケア医に期待される役割

について、プライマリケア医である勝部先生ご自身のお考えを教えてください。

出席された他科の先生方からも「来てよかった」と大変好評でした。  また、近年急速に進歩してきているアブレーション治療には、循環器を専門とするプライマリケア医としては特に興味があります。最 新の実施状況や成績など、不整脈専門医の先生方には積極的に発信していただければと思います。当院では適応となる症例がまだ少 ないのですが、あと5~10年もすれば、持続性の心房細動等でも治療成績が向上し、さらに多くの患者さんの治療が可能になるのでは ないかと期待しています。アブレーション治療は急速に普及してきていますから、今後もその進歩には注目していきたいですね。 注)桜橋渡辺病院の井上耕一先生は、本シリーズ第1回「地域でまもる心房細動患者:阪神地域編(1) ~不整脈専門医からみた地域医療連携の実情とあり方~」でご登場いただきました。

(15)

~鼎談・不整脈専門医 × 脳卒中専門医 × プライマリケア医~

地域医療連携の実情とあり方①

4

適切な抗凝固療法の実施、

心房細動の早期発見をめぐって

阪神地域編(4)

(2015年2月18日配信分) 15 14 15 14  心房細動に対する地域的な医療連携の実践に焦点をあてる本マスターシリーズ第2弾「地域でまもる心房細動患 者 ~わがまちの医療連携~」では、最初の舞台として阪神地域を取り上げ、これまで3回の配信を通じ阪神地域で 診療にあたられている3名の先生方――不整脈専門医の井上先生、脳卒中専門医の吉村先生、プライマリケア医の 勝部先生から、それぞれ順にお話を伺ってまいりました。今回からの計3回ではその締めくくりとして、3名の先生方 全員に鼎談という形で直接、情報・意見交換を行っていただきます。  鼎談の1回目となる今回は、地域医療連携の実情についてそれぞれの先生方が感じていらっしゃる手ごたえと課 題を、抗凝固療法の普及と心房細動の発見という題材のもと、語り合っていただきました。 心原性脳塞栓症の予防を考えるうえでまず欠くことのできないトピックは、抗凝固療法だと思いますが、先生方はご自身の心房細動患 者さんを診療されているなかで、この阪神地域での抗凝固療法の実施状況に関し、どのような印象をお持ちでしょうか?新規経口抗凝 固薬(NOAC)が登場したことによる変化等も踏まえてお聞かせください。 井上: 適切な抗凝固療法による心原性脳塞栓症の予防が心房細動患者さんの予後を改善するうえで非常に重要であることは、今や議 論の余地がないところだと思います。特に近年のNOAC登場以降、心房細動に対する抗凝固療法をテーマに取り上げた勉強会 が数多く開催されるようになりました。そのおかげもあってかと思いますが、この地域では、プライマリケア医の先生方が抗凝固 療法について非常に豊富な知識を持たれるようになっていて、適切な抗凝固療法がかなり普及してきていると感じています。実 際、以前は紹介医の先生から「抗凝固療法はよく分からないのでお任せします」と言われたり抗血小板薬を処方されていたりと いったケースが多々ありましたが、今では当院にプライマリケア医の先生から心房細動患者さんが紹介されてくると、すでに適 切な抗凝固療法を開始していただいている、というケースが大変多くなっています。 勝部: 私はプライマリケア医としてこれまで主にワルファリンを処方してきましたが、確かに、NOACが出たことで抗凝固療法は以前よ り管理しやすくなったと思っています。ワルファリンはやはり管理が煩雑でしたので、とりわけ循環器を専門としないプライマリケ ア医の先生にとっては使いづらさがあったと思いますし、循環器専門医でもワルファリン処方時の出血リスクにはしばしば不安を 感じているように思います。私の場合は、例えば高齢で認知症のある方や同居家族のいない方など、服薬アドヒアランスの不良 が懸念される患者さんの場合には、出血リスクを恐れてついPT-INRを低めに管理してしまう傾向がありました。NOACにはPT-INRのような明確な指標がありませんので、適切に管理ができているかどうか不安を感じる面もありますが、プライマリケア医に とっては、ワルファリンほど繊細な管理の必要性がなくなり、処方を躊躇するようなことも少なくなったのではないかと思います。 吉村先生はいかがでしょうか?先生は井上先生や勝部先生とは少し異なり、心原性脳塞栓症を発症してしまった心房細動患者さんを主 に診ていらっしゃいますが、この地域における抗凝固療法の実施状況についてどのような印象をお持ちですか? 吉村: NOACが登場したことで、私たち脳神経外科医を含め、心臓を専門としない医師でも抗凝固療法を比較的容易に実施できるよ うになり、ワルファリンしかなかった頃と比べて適切な脳塞栓症の予防がより広く行われるようになってきていると感じます。た

NOAC登場以降、適切な抗凝固療法の知識が地域全体に浸透してきた印象。

出血リスク指標がないことで不安感がある半面、プライマリケアでも処方しやすくなった。

しかし抗凝固療法が不十分で脳塞栓症になる例もまだ少なくなく、抗凝固療法のより良い実践の形について、

今後も地域全体で考えることが大切

参照

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