手 術 実 績
食道悪性腫瘍手術 食道切除後二期的再建術
H19 年度 5 例 2 例
H20 年度 12 例 2 例
H21 年度 10 例 3 例
食道は喉と胃を結ぶ臓器で、上から順に頸部食道、胸部食道、腹部食道の3つに大別されます。長さは
約 25cm、太さ 2~3cm、厚さ 4mm の後縱隔臓器です。
食道
の
解剖
1
頚部食道
胸部食道
腹部食道
1
特 徴
2
食道がんの患者様は男性に多く、女性の4倍に達しており、年齢では60歳代後半が最も多く、高齢者に
集中しています。
最もがんができやすい部位は胸部食道で大半を占めています。
食道がんの比率はがん全体からみればそれほど高くありません。しかし、進行が早く転移しやすい点、
進行がんになると手術が難しい点などから、やっかいながんの一つとされています。
原 因
アルコール、タバコ、熱い食べ物が食道がんの3大リスクファクターといわれています。
まだ原因は解明されていないものの、特にアルコールとタバコは影響が大きいとされています。
自覚症状
多くの場合、食べ物が喉につっかえたり、しみるような感じがします。また、胸やけ・ゲップ、吐血があったり、
胸骨のあたりが痛むこともあります。
診 断 方 法
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一般的には、内視鏡検査、X 線による食道造影検査を行い、質的・部位診断を行います。食道がんの
広がりなどを調べるために、下記の検査を行います。
・EUS
(超音波内視鏡)
・・・ 深達度診断を見るために使用します。
・CT ・・・ リンパ節転移・他臓器浸潤の有無を確認します。
・MRI ・・・他臓器浸潤の有無を確認します。造影剤を使う場合、アレルギーが
起こることがあります。
・PET・・・ 再発・治療効果判定のために使用します。
(※他院での検査となります)
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進 行 度
食道の壁の内にがんがどの程度深く入り込んでいるかの度合いをみます。
●
壁深達度
●
EP~MM 癌腫が粘膜固有層にとどまる病変です。
SM1~SM3(T1b) 癌腫が粘膜下層にとどまる病変です。
MP(T2) 癌腫が固有筋層にとどまる病変です。
AD(T3) 癌腫が食道外膜に浸潤している病変です。
AI (T4) 癌腫が食道周囲臓器に浸潤している病変です。
● ス テ ー ジ ●
食道がんの治療法を決めたり、また治療によりどの程度治る可能性があるかを推定したりする場合、病気の
進行の程度をあらわす分類法で、「ステージ」とも呼ばれます。
0 期:がんが粘膜にとどまっており、リンパ節、他の臓器、胸膜、腹膜(体腔の内面をおおう膜)
にがんが認められないものです。いわゆる早期がん、初期がんと呼ばれているがんです。
Ⅰ期:がんが粘膜にとどまっているが近くのリンパ節に転移があるものか、粘膜下層まで浸潤
しているがリンパ節や他の臓器さらに胸膜・腹膜にがんが認められないものです。
Ⅱ期:がんが筋層を越えて食道の壁の外にわずかにがんが出ていると判断されたとき、或いは
食道のがん病巣のごく近傍に位置するリンパ節のみにがんがあると判断されたとき、そして
臓器や胸膜・腹膜にがんが認められなければⅡ期に分類されます。
Ⅲ期:がんが食道の外に明らかに出ていると判断されたとき、食道壁にそっているリンパ節か、或
いは食道のがんから少し離れたリンパ節にがんがあると判断され、他の臓器や胸膜・腹膜に
がんが認められなければⅢ期と分類します。
Ⅳ期:がんが食道周囲の臓器に及んでいるか、がんから遠く離れたリンパ節にがんがあると判断
された時、或いは他の臓器や胸膜・腹膜にがんが認められるとⅣ期と分類されます。
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当院
での治療法
日本食道学会「食道癌診断・治療ガイドラン」に基づき治療方針を決定しております。
日本食道学会編「食道癌診断・治療ガイドライン 2007 年 4 月版」(金原出版)より一部改変
「国立がんセンター がん情報サービス」より引用
I
内視鏡的粘膜下層切開剥離術(ESD)
粘膜層の上部 2/3 までにがんが存在する場合は ESD の適用となります。ESD では大きな病変でも一括
して取れるため、取り残しや再発の心配がなく、また病理検査での正確な診断が期待でき、従来のスネアー
を使用した内視鏡的治療と比較し、より確実な治療法であると言えます。
①病変の周囲
にマーキング
②粘膜下に注入液
を 局 所 注 入 し 病 変
を隆起させる。
③粘膜下層より剥離
Ⅱ 手術治療
食道がんでは、手術治療が最も一般的な治療方法になっています。
当院で行っている 5 つの手術について御案内します。
1.開胸開腹による食道切除術
手術時間は約8~10時間です。
出血量は一般的に 500~1000cc 位で、術中輸血を行うことがありますが、当院では術中の出血量は
平均 360cc程度で、術中輸血を 1 例も行っておりません。(平成 21 年度当院実績より)
右
開
胸
開
腹
例
切
除
範
囲
例
4
5
再 建 臓 器 ( 胃 ・ 結 腸 ・ 小 腸 )
A:胃 B:小腸 C:結腸
A.胃・・・・・・・再建臓器として一般的に用いられる方法です。
B.小腸・・・・・胃に近い食道がんの場合に用いられる方法です。
C.結腸・・・・・胃切除後や胃がん合併の場合に用いられる方法です。
再建経路(胸壁前・胸骨後・後縦隔)
再建経路(胸壁前・胸骨後・後縦隔)
A:胸壁前 B:胸骨後 C:後縱隔(胸腔内)
A:胸壁前食道再建・・・・・・・・・・ 皮膚と胸骨の間を剥離して、消化管を挙上します。
B:胸骨後食道再建・・・・・・・・・・・胸骨の裏側を剥離して、消化管を挙上します。
C:後縱隔(胸腔内)食道再建・・・切除した食道と同じ場所に、消化管を挙上します。
2. 胸腔鏡補助下食道切除術
従来の手術と異なり、大きく開胸せずに、小さな創から胸腔鏡を挿入して胸腔操作を行う術式です。
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現在は、早期の食道癌を対象としていますが、将来的には手術の主流となる可能性があります。
※通常は○の 6 箇所に挿入しますが、縱隔下部の操作が困難な時は●を追加します。
3.二期分割手術
高齢者、肺機能障害などのハイリスクな患者さまに対し、食道切除、再建を二期に分け行うことで、
手術の安全性を高めています。
当院ではハイリスク症例に対して積極的に行い、良好な結果を得ております。
食道切除(一期手術)
再建術(二期手術)
約 1 ヵ月後
食道
胃
食道瘻造設
胃を挙上
します
食道と胃を
吻合します
4.非開胸食道切除術
高齢者、低肺機能症例などハイリスク症例に施行しております。
開胸せず頚部と腹部から操作します。
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5.
Salvage
(サルベージ)手術
Salvage(救済)手術と呼ばれ、CRT(放射線化学療法)後の遺残・再発症例に対して行います。
根治手術ができれば予後は良いとされています。 (R0 の5年生存率は50%程度)
ただし、通常の手術と比較して合併症のリスクが 2~3 倍と高く、難易度も非常に高い手術です。
肺合併症・・・33%
感染症・・・・・18%
縫合不全・・・33%
Ⅲ
化学療法
1.抗がん剤治療
当院では、外来通院で行っております。(初回のみ入院が必要なケースもあります)
治療は、がん細胞を殺す薬を注射します。抗がん剤は血液の流れに乗って手術では切り取れないところや、
放射線を当てられないところにも全身に行き渡ります。多くは他の臓器にがんが転移しているときに行われる
治療ですが、単独で行われる場合と、放射線療法や外科療法との併用で行われる場合とがあります。
○抗がん剤の副作用について
抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼします。
特に髪の毛、口や消化管などの粘膜、骨髄など新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすく、脱毛、口内炎、
下痢が起こったり、白血球や血小板の数が少なくなることがあります。
その他、だるさ、吐き気、手足のしびれや感覚の低下、心臓への影響として動悸や不整脈が、また肝臓や
腎臓に障害がでることもあります。
現在では、抗がん剤の副作用による苦痛を軽くする方法が進んでいますし、副作用が著しい場合には治療
薬の変更や治療の休止、中断などを検討することもあります。
「国立がんセンター がん情報サービス」より引用
2.化学放射線療法
化学療法と放射線療法を同時併用し、手術のできない患者様や手術を希望されない患者様に対して、
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治療効果を高めます。
当院では、放射線治療設備は備えておりませんので、近隣の提携医療機関を受診していただくことに
なります。
○放射線治療の副作用について
・・・・・首(頚部)に照射した場合
食べ物を飲み込むときの違和感・痛み・のどの渇き・声のかすれなど
・・・・・胸部に照射した場合
食べ物を飲み込むときの違和感・痛みなど
・・・・・腹部に照射した場合
腹部不快感・吐き気・嘔吐・食欲低下・下痢など
上記の症状がでる可能性があります。
照射部の皮膚には、日焼けに似た症状がでてきます。その他、だるさや白血球の減少がありますが、
個人によって程度が異なります。症状が強い場合は、和らげる治療をしますが、通常は治療後 2~4 週
間くらいで改善します。
治療後しばらくして出る症状もあり、心臓や肺が照射部に含まれていると、放射線による肺炎や心外膜炎
などが出ることがあります。脊髄に大線量が照射されると神経麻痺の症状が出ることがあります。通常は
神経症状が出る危険性がないとされている程度に線量を設定します。
「国立がんセンター がん情報サービス」より引用 一部改変
3.術前化学療法 neoadjuvant chemotherapy)
手術前に化学療法を行い、腫瘍を縮小させてから手術を行います。
リンパ節微小転移に対しても非常に効果的であるだけでなく、術後の化学療法の感受性の指標となります。
この療法は、術前無治療群と比較して、治療成績が良いため、今後の食道癌外科治療の標準治療になると
考えられており、当院でもこの方法を積極的に取り入れております。
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