原子力施設の耐震設計
建物・構築物への影響評価
首都大学東京名誉教授
西川孝夫
設計用地震動レベルを超えた最近の地震
(
設計用地震動の応答スペクトルを超えた地震)
•
駿河湾沖の地震
2009年8月11日
マグニチュード 6.5
浜岡原発
・
新潟県中越沖地震
2007年 7月16日 マグニチュード 6.8
柏崎刈羽原発( ほぼ直下か)?
•
能登半島地震
2007年 3月25日 マグニチュード 6.9
志賀原発
•
宮城県沖地震
2005年 8月16日 マグニチュード 7.2
女川原発
発電所の地震観測記録
新潟県中越沖地震における
柏崎刈羽原子力発電所
• 設計用地震加速度が大幅に超えていた可能
性があるが重要構造物、部位に被害がない
実際の耐震的実力は?
余裕度を確認する必要がある
• 地盤災害をどうするか、至急対策が必要
B,Cクラスの設計フィロソフィー ?
目視点検で確認された被害状況
• As, A クラス(現行のSクラス)
被害なし
• Bクラス
天井クレーンの駆動軸の損傷
• Cクラス
変圧器の火災
変圧器防油堤の沈下、ズレ
主排気筒に接続されるダクトのズレ
設計用地震力と応答の地震力の比較
(7号機)
0 500 1000 -8.2 -1.7 12.3 18.1 23.5 31.7 38.2 49.7 せん断力 ×10 3(kN) T.M.S.L. (m) 4.8 設計用地震力 中越沖地震 動的地震力(S1-D) 動的地震力(S2-D) 静的地震力 設計用地震力 中越沖地震によるせん断力 静的地震力 動的地震力(S1-D) 動的地震力(S2-D)せん断力 ×10
3(kN)
建物高さ(m) 0 500 1000 -8.2 -1.7 12.3 18.1 23.5 31.7 38.2 49.7 せん断力 ×10 3(kN) T.M.S.L. (m) 4.8 設計用地震力 中越沖地震 動的地震力(S1-D) 動的地震力(S2-D) 静的地震力 設計用地震力 中越沖地震によるせん断力 静的地震力 動的地震力(S1-D) 動的地震力(S2-D)せん断力 ×10
3(kN)
0 500 1000 -8.2 -1.7 12.3 18.1 23.5 31.7 38.2 49.7 せん断力 ×10 3(kN) T.M.S.L. (m) 4.8 設計用地震力 中越沖地震 動的地震力(S1-D) 動的地震力(S2-D) 静的地震力 設計用地震力 中越沖地震によるせん断力 静的地震力 動的地震力(S1-D) 動的地震力(S2-D)せん断力 ×10
3(kN)
建物高さ(m)最大応答値と設計配筋による
負担せん断力(7号機)
0 1000 2000 3000 -8.2 -1.7 12.3 18.1 23.5 31.7 38.2 49.7 せん断力 ×10 3(kN) T.M.S.L. (m) 4.8 中越沖地震によるせん断力 設計配筋による負担せん断力 中越沖地震によるせん断力 設計配筋による負担せん断力せん断力
×10
3(kN)
建物高さ(m) 0 1000 2000 3000 -8.2 -1.7 12.3 18.1 23.5 31.7 38.2 49.7 せん断力 ×10 3(kN) T.M.S.L. (m) 4.8 中越沖地震によるせん断力 設計配筋による負担せん断力 中越沖地震によるせん断力 設計配筋による負担せん断力せん断力
×10
3(kN)
0 1000 2000 3000 -8.2 -1.7 12.3 18.1 23.5 31.7 38.2 49.7 せん断力 ×10 3(kN) T.M.S.L. (m) 4.8 中越沖地震によるせん断力 設計配筋による負担せん断力 中越沖地震によるせん断力 設計配筋による負担せん断力せん断力
×10
3(kN)
建物高さ(m)最大応答値(7号機)
基礎版上(B3F)
中間階(3F)
シミュレーション解析結果 シミュレーション解析結果 0 500 1000 1500 2000 0 1 2 3 4 せ ん 断 力 Q (× 10 3 kN) せん断ひずみγ (×10-3) S1相当 静的地震力(3Ci) 建屋:シミュレーション条件 設計用地震力 動的地震力(S1相当) 動的地震力(S1相当) 0 500 1000 1500 2000 0 1 2 3 4 せん 断力Q (×10 3 kN) せん断ひずみγ (×10-3) S1相当 静的地震力(3Ci) 建屋:シミュレーション条件 設計用地震力 動的地震力(S1相当)基礎版上(B3F)
中間階(3F)
シミュレーション解析結果 シミュレーション解析結果 シミュレーション解析結果シミュレーション解析結果 0 500 1000 1500 2000 0 1 2 3 4 せ ん 断 力 Q (× 10 3 kN) せん断ひずみγ (×10-3) S1相当 静的地震力(3Ci) 建屋:シミュレーション条件 設計用地震力 動的地震力(S1相当) 動的地震力(S1相当) 0 500 1000 1500 2000 0 1 2 3 4 せん 断力Q (×10 3 kN) せん断ひずみγ (×10-3) S1相当 静的地震力(3Ci) 建屋:シミュレーション条件 設計用地震力 動的地震力(S1相当) 0 500 1000 1500 2000 0 1 2 3 4 せん 断力Q (×10 3 kN) せん断ひずみγ (×10-3) S1相当 静的地震力(3Ci) 建屋:シミュレーション条件 設計用地震力 0 500 1000 1500 2000 0 1 2 3 4 せん 断力Q (×10 3 kN) せん断ひずみγ (×10-3) S1相当 静的地震力(3Ci) 建屋:シミュレーション条件 設計用地震力 0 500 1000 1500 2000 0 1 2 3 4 せん 断力Q (×10 3 kN) せん断ひずみγ (×10-3) S1相当 静的地震力(3Ci) 建屋:シミュレーション条件 設計用地震力 動的地震力(S1相当)基礎版上(B3F)
中間階(3F)
耐震設計審査指針(新指針)
パンフレット「新しい耐震設計審査指針」原子力安全・保安院 原子力安全基盤機構 より抜粋
耐震バックチェック
• 旧指針で設計された施設の新指針に照らし
ての検証
特に地震動が大きくなったことへの安全性
の検証
昭和
53年以前
27機(東海除く)
平成
18年まで(旧指針)
28機
計55機
泊
3号機、島根3号機(建設中)は旧指針
平成
18年以降(新指針)
大間原子力発電所(建設中)
耐震バックチェックの方針
• 地震動の再評価
水平(断層モデル、震源を特定しない地震動
鉛直地震動(新指針から)
• なるべく実情に即したモデル化を行う
例えば 回転バネを考慮
コンクリートの実剛性を使う
減衰定数など最近の研究による知見を
取入れる (機器系)
中越沖地震からの教訓
中越沖地震に対する柏崎刈羽原子力発電所
の地震後の健全性評価
これからの使用に対する安全性の評価のため
に行われた検討
耐震余裕度の精査と余裕度の確保ーー設計
実機
簡便モデルからより詳細な解析モデルへ
質点系モデル
一部の建屋では、局所的な振動により
質点系モデルでは、床の応答が十分に
評価できない周期帯が見られた。
これらの評価には、3次元FEMモデル
や多軸床柔性考慮モデルが有効である
ことがわかった。
3次元FEMモデル
多軸床柔性考慮モデル
4号機原子炉建屋中間階(NS方向)
観測記録 質点系モデル 3次元FEMモデル図は、耐震・構造設計小委員会構造ワーキンググループ
資料より抜粋
X Y Z
中越沖地震を踏まえた解析手法の高度化
新潟県中越沖地震を踏まえたシミュレーション解析等に
おいて、建屋応答をより精度よく再現するためには、解析
手法について更なる検討の余地があることが確認された。
実現象をより精度よく評価できる地震応答解析手法の
高度化をはかることが重要である。
X Y Z V1 C100 X Y Z V1 C100地盤のFEMモデル(例)
建屋の3次元モデル(例)
図は、耐震・構造設計小委員会構造ワーキンググループ 資料より抜粋
余裕度を明示化した設計法・評価法の確
立について
–設計用の地震動による応答レベルと設計上のクラ
イテリアとの関係は図書に記載されており、審査にお
いて確認されている。しかし、実耐力に基づく余裕や
設計上の余裕については評価されていない。
図は、東京電力ホームページより抜粋
簡便な質点系モデルからより詳細な解析モデルへ
柏崎刈羽6・7号機原子炉建屋
水平方向
鉛直方向
T.M.S.L. 49.7m T.M.S.L. 38.2m T.M.S.L. 31.7m T.M.S.L. 23.5m T.M.S.L. 18.1m T.M.S.L. 12.3m T.M.S.L. 4.8m T.M.S.L. -1.7m T.M.S.L. -8.2m T.M.S.L. -13.7m T.M.S.L 12.0m (GL)中越沖地震における柏崎刈羽原子力発電所のシミュレーション解析
解析モデルは
JEAG4601(追補版を含む)に基づく質点系モデル
T.M.S.L 12.0m (GL)中越沖地震における基礎版上の地震記録を用いて、設計モデルを基本とした
質点系モデルによる原子炉建屋のシミュレーション解析を実施している。
▽:入力点
▽ :評価点
▽ :評価点
▽:入力点
質点
曲げ・せん断
剛性考慮
地盤ばね
図は、耐震・構造設計小委員会構造ワーキンググループ 資料より抜粋
簡便な質点系モデルからより詳細な解析モデルへ
最
大
応
答
加
速
度
NS方向
EW方向
UD方向
0 500 1000 1500 2000 -20 -10 0 10 20 30 40 50 最大応答加速度(Gal) T.M .S.L. (m) K6 R/B UD 0 500 1000 1500 2000 -20 -10 0 10 20 30 40 50 最大応答加速度(Gal) T.M .S.L. (m) K6 R/B NS 0 500 1000 1500 2000 -20 -10 0 10 20 30 40 50 最大応答加速度(Gal) T.M .S.L. (m) K6 R/B EW解析
観測
解析
観測
解析
観測
柏崎刈羽6号機
0 10 20 30 40 0.1 1 観測 解析 加速度応 答スペクト ル( Ga l) 周期(秒) K6 R/B UD (TMSL23.5m) h=0.05 0.02 5 0 10 20 30 40 0.1 1 観測 解析 加速度応 答スペクト ル( m/ s 2) 周期(秒) K6 R/B EW (TMSL23.5m) h=0.05 0.02 5 0 10 20 30 40 0.1 1 観測 解析 加速度応 答スペクト ル( m/ s 2) 周期(秒) K6 R/B NS (TMSL23.5m) h=0.05 0.02 5質点系モデルによる地震応答解析は、全体として中越沖地震時の建屋の
挙動を表現できている。
床
応
答
ス
ペ
ク
ト
ル
図は、耐震・構造設計小委員会構造ワーキンググループ 資料より抜粋
原子力発電所建屋の裕度明示化
設計地震動による応答レベルを超えた領域における挙動に
ついて検討・把握し、安全裕度を評価し、明示する方法につい
て検討することが重要である。
地
震
に
よ
る
水
平
力
せん断ひずみ
終局ひずみ
▽
許容限界
▽
設計地震動による
応答レベル
設計上の余裕
実力による余裕
耐震壁のせん断力~せん断ひずみ関係
▽
実終局ひずみ
設計に用いるカーブ
実構造物のカーブ(イメージ)
将来の技術動向
ハザード曲線
×
=
フラジリティ曲線
損傷確率
免震構造を原子炉施設に採用し
耐震性の大幅な向上をはかる。
これまで排気筒等に採用された制
震装置の使用範囲を拡大し耐震性
の向上をはかる。
施工性の改善、工期短縮を目指
して、SC構造等これまでのRC
構造と異なる構造を採用する。
地震時の安全性を確率論により評
価し、原子力発電所の総合的な安
全性を明示する。
免震構造の導入
制震装置の導入
地震PSAの評価
SC構造の採用
今後原子力の耐震分野においても、新技術の導入、新構造の採用、将来
の設計法・評価法の採用等、さらなる安全性を目指して努力することが、
求められている。
免震構造
•
構造物の下に特殊な支承を
設け地盤から切り離し、系全体を
長周期化し、構造物への入力を
減らす。
地盤が硬く、建物が
剛なほど有効なシステム
地震入力を低減する方法
各種免震構造の特徴
耐震構造
基礎免震構造
中間層免震構造
特
徴
•一様な剛性・耐力分
布にすることが必要
•用途と最適な構造
形式の整合が困難
•建築計画に制約
•地震入力を低減可能
•比較的自由な構造計
画が可能
•用途と構造形式の整
合が困難
•建物周囲にエキスパン
ションジョイントが必要
•マスダンパー効果によ
り、建物全体の地震入
力が低減
•自由度の高い建築・構
造計画が可能
•用途と構造形式の整
合が可能
上部構造
免震層
上部構造
Exp.J.上部構造
免震層
下部構造
23
Isolators
○ Elastomeric Isolator Natural rubber bearing
Lead plug rubber bearing
High damping rubber bearing
○ Slider
○ Rotating Ball Bearing
Slider with elastomer
retainer
steel ball
plate
retainer
sliding material
elastomer
Elastomeric Isolator
24
Dampers
○
Elastoplastic Damper
Steel damper
Lead damper
○ Fluid Damper
Oil damper
Viscous damper
○ Friction Damper
Oil Damper
Lead Damper
0
0.5
1
1.5
0
100
200
300
X 方向
Y 方向
(免
震
層
直
上
/基
礎
上
)
基礎上最大加速度 (cm/s
2
)
最大加
速度比
近年の地震における免震建物の応答値
2003年十勝沖地震
7棟
2003年5月26日宮城県沖の地震
1棟
2004年新潟県中越地震
2棟
2005年福岡県西方沖の地震
2棟
0
0.5
1
1.5
0
200 400 600 800 1000
X 方向
Y 方向
(免
震
層
直
上
/基
礎
上
)
基礎上最大加速度 (cm/s
2
)
最大
加
速度
比
2003年十勝沖地震の記録
その他の地震の記録
当協会会員によるデータ集積結果(2008年12月末まで) 福井県 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県 ⑥免震建築物の県別分布(戸建住宅を除く) 鳥取 43 北海道 15 青森 9 岩手 92 宮城 6 秋田 9 山形 13 福島 36 茨城 23 栃木 10 群馬 98 埼玉 138 千葉 625 東京 322 神奈川 24 新潟 8 富山 14 石川 7 福井 山梨 19 長野 29 岐阜 136 静岡 179 愛知 30 三重 9 滋賀 21 京都 99 大阪 180 兵庫 4 奈良 14 和歌山 8 5 島根 13 岡山 20 広島 4 山口 8 徳島 8 香川 8 愛媛 22 高知 46 福岡 2 佐賀 6 長崎 15 熊本 8 大分 9 宮崎 6 鹿児島 4 沖縄 201 ~ 101 ~ 200 51 ~ 100 1 ~ 20 21 ~ 50 17