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自動運転技術の開発動向と技術課題 自動運転技術の開発動向と技術課題 Current activities and some issues on the development of automated driving 1 須田義大 2 青木啓二 SUDA Yoshihiro 1 ; AOKI Kei

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Academic year: 2021

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自動運転技術の開発動向と技術課題

Current activities and some issues on the development of automated driving

須田 義大

1

  青木 啓二

2

SUDA Yoshihiro1; AOKI Keiji2

1 東京大学 生産技術研究所次世代モビリティセンター(〒153-8505 東京都目黒区駒場4-6-1)Tel: 03-5452-6193 E-mail: [email protected] 2 先進モビリティ株式会社(〒153-8505 東京都目黒区駒場4-6-1 東京大学駒場キャンパス連携研究棟506)Tel: 03-5452-6527 E-mail: [email protected] 1 The University of Tokyo, Institute of Industrial science, Advanced Mobility Research Center (4-6-1 Komaba Meguro-ku, Tokyo 153-8505) 2 Advanced smart mobility Co., Ltd. (4-6-1 Komaba Meguro-ku, Tokyo 153-8505) 原稿受理(2014-12-08) 情報管理 57(11), 809-817, doi: 10.1241/johokanri.57.809 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.809)

著者抄録

現在,2020 年までの自動運転の実用化を目指して日本,米国および欧州において技術開発が進められている。自動運 転は人間に代わり認知,判断,操作を行う必要があり,高度な情報処理や走行制御が求められる。このため自動運転 として,数台の車両が車群を構成して走行する隊列走行システムが開発された。この隊列走行システムを通じ,白線 に沿って自動操舵する車線維持制御技術や車車間通信技術を用いた車間距離制御技術が開発された。隊列走行システ ムの後,現在一般道での自動運転を目指した技術開発が行われており,キー技術として,制御コンピューターの故障 時における安全を確保するフェイルセーフ技術や障害物を確実に認識するためのローカルダイナミックマップ技術お よび AI 化を中心とした自動運転アーキテクチャーが開発されている。

キーワード

自動運転,隊列走行,ローカルダイナミックマップ,フェイルセーフコンピューター,車車間通信

1.

はじめに

安心・安全で環境にやさしいモビリティー社会の 実現を目指して,路車間通信を利用した安全運転支 援システムや自動運転車の開発等,自動車と情報通 信との融合による新しい自動車交通システム開発の 取り組みが進められている。特に自動運転車はドラ イバーの認知・判断・操作といった運転操作を補助 する運転支援システムに代わる次世代のシステムと して期待されており,2020年までの実用化を目指し, 日,米,欧で技術開発が進められている。 自動運転技術の開発をさかのぼれば,1975年ごろ にコンピューター・ビジョン技術による自動運転の 研究開発が行われたのを皮切りに,途中で活動が落 ち込んだものの現在まで脈々と研究開発が行われて きた。図1に現在までに開発された自動運転車開発の

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歴史を示す。 法令上の問題や技術レベルの面より残念ながら実 用化までには至らなかったが,交通事故や環境負荷 の低減に対する自動運転への期待から,近年急速に 産学官連携のもと実用化に向けた取り組みが活発化 している。 欧州では自動運転車の開発を重要テーマとして位 置付け,国家プロジェクトとして取り組んでおり, 実用化に向け着実な成果をあげている。また米国に おいてはグーグルが自動運転車の実用化に向け開発 を行っており,公道での自動運転実験を通じ,ネバ ダ州で成立した自動運転車免許に関する新制度での 免許を取得した。 一方,わが国においては2008年から2012年にか け,安全で環境にやさしい次世代の物流輸送システ ムの実現を目指した大型トラックの隊列自動走行技 術が開発されるとともに,2014年度より政府が中心 となり自動運転車の実用化を目指した取り組み(SIP- adus)が開始されている。本稿では近年行われた自 動運転の技術開発を紹介するとともに実用化に向け た動きについても触れる。

2.

自動運転に求められる技術

自動車における自動化技術として,ドライバーの 漫然運転や居眠り運転等により事故の危険が迫った とき,制御システムがドライバーの運転操作に介入 し,ドライバーの安全運転を支援する安全運転支援 システムがすでに実用化され広く普及している。自 動運転はこの安全運転支援システムを高度化したも のである。運転支援システムとの違いは走行環境認 識および危険判断をシステムが中心となって行うも ので,図2に運転支援システムと自動運転システムの 違いを示す。現在,運転支援システムや自動運転を 含め,自動車における自動化レベルの定義が国際的 に進められており,自動化レベル定義の一例として, 表1に米国SAE(自動運転標準化委員会)が策定した 自動運転レベル定義の要約を示す。 この自動化レベルにおいて,法令面および技術面 からみて,自動化レベル2までと自動化レベル3以上 では大きく異なり,乗り越えなければならない壁が 存在する。具体的には自動化レベル2までは走行環境 認識の最終責任がドライバーであるのに対して,レ 図1 自動運転車開発の歴史 1STStage(1975~1990)

Vision based automation 2

NDStage(1990~2000)

Infrastructure based automation 3

RDStage(2000~2012)

Fusion based automation

Automated truck Platoon  NavLab VaMoRs KONVOI Urban Challenge 外界認識 ・周辺障害物 ・走行レーン認識 判断 ・走行軌跡(走行ルート) ・危険判断 操作 ・ハンドル ・ブレーキ ・アクセル ドライバー システム(運転支援) + 外界認識 ・周辺障害物 ・走行レーン認識 判断 ・走行軌跡(走行ルート) ・危険判断 操作 ・ハンドル ・ブレーキ ・アクセル ドライバー システム(自動運転) + 図2 運転支援と自動運転の相違 レ ベ ル 名称 制御実行者 外界環境認識責任 システム故障時の バックアップ 運転モード 0 手動運転 人間ドライバー 人間ドライバー 人間ドライバー 手動/自動 1 運転支援 人間ドライバー/ 制御システム 人間ドライバー 人間ドライバー 手動/自動 2 部分自動運転 制御システム 人間ドライバー 人間ドライバー 手動/自動 自動運転 制御システム 人間ドライバー 手動/自動 3 条件付自動運転 制御システム 4 高度自動運転 制御システム 制御システム 制御システム 手動/自動 5 完全自動運転 制御システム 制御システム 制御システム 自動のみ 表1 自動運転の定義(SAE)

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ム側にある。 このため,自動化レベル3以上の自動運転を実現 するには,現在安全運転支援システムで実用化され ているセンシング技術,情報処理技術の性能,知能 化および信頼性において大幅な技術革新が求められ, 日,米,および欧州においてレベル3以上の自動運転 の実現を目指した技術開発が進められている。 表2に筆者らが考える自動運転(レベル3以上)に 求められる新たな技術項目を示す。また,前方障害 物センシング技術として現在製品化されている運転 支援システムと自動運転に求められる目標性能を表3 に示す。 運転支援用の前方障害物センシング技術として, 現在77GHzミリ波レーダーやレーザーレンジファイ ンダーおよび単眼カメラやステレオカメラが実用化 されているが,自動運転システムではセンサーはド 環境変化に対するロバスト(強靭)性が求められる とともに,単に物体までの距離と方位を検出するだ けでなく,物体の形状識別や,移動速度ベクトルの 検出も必要になると思われる。このため,自動運転 では前方距離センサーとして,高精度な距離計測機 能だけでなく,水平方向および垂直方向に対して高 い分解能を有する3Dレーザーレンジセンサーが必要 と考えられる。 以下に自動運転技術の開発状況を紹介する。

3.

自動運転システムの開発状況

自動運転システムの開発において,技術開発の容 易さや自動化に対するニーズの観点より,自動運転 隊列走行システムが先行して開発されている。次節 に代表的な自動運転隊列走行システムを紹介する。 システムの安全性・信頼性向上 認識・判断の高度化 (人口知能) ・制御ECUのフェイルセーフ化技術の開発 ・冗長化技術の開発 センシングの 高度化 障害物 ・落下物 ・歩行者 ・自転車 交通標識・信号 車線・走行路 全天候対応型の車線識別センサーの開発 HMIの高度化技術(ドライバーモニタリング技術,表示技術等) ・ドライブレコーダーの高度化(センシング情報,車両制御情報) ・物体形状の識別 ・移動速度ベクトルの検出 ・ローカルダイナミックマッピング技術(周辺環境認識) ・走行環境認識のモデル化,危険事象のデータベース化 ・走行路軌跡生成技術 HMI・ドライブレコーダーの高度化 高分解能3Dレンジセンサーの開発(移動ベクトル等) 測位技術の高度化・高信頼性化 3Dレンジセンサーと画像認識のフュージョン ・準天頂衛星(QZSS)の利用による高精度・高信頼化 ・3Dデジタル地図 ・IMU用センサー(3軸ジャイロ) 外部情報との連携 ・クラウド連携/車車間通信/路車間通信・セキュリティの高度化技術 表3 前方障害物センシングに対する目標性能 用途 検出対象物 要求性能 距離 水平方位 垂直方位 範囲 精度 検出幅 分解能 検出幅 分解能 現 運 転 支 援 ACC (車間距離制御) ・自動車 ・自動2輪車 ~120m 2% ±42.5° 0.125° ±1.6 0.8° PCS (衝突被害軽減ブレーキ) ・前方障害物 自 動 運 転 一般道自動運転 ・落下物 ・自動車 ・自転車 ・歩行者 ・ガードレール ・電柱 ・走行空間 2m~ 60m 2% ±60° 0.45 ° ±30 0.5° 10m~ 60m 2% ±30° 0.3° ±20 0.25° 表2 自動運転(レベル3以上)に求められる技術

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3.1 エネルギー ITSにおける自動隊列走行 極めて近接した車間距離での走行により空気抵抗 が低減し燃費が向上することはすでに知られている が,ドライバーによる手動運転により,近接した車 間距離で走行することは人間の運転能力や安全性を 考えて,極めて困難である。大型トラックでの15% の省エネ化を目指して,車間距離4mでの隊列走行を 実現するための自動運転隊列走行技術がわが国にお いて開発された。 車間距離4mでの隊列走行を実現するには近接車間 距離走行のための精密な車間距離制御のみならず, 車線に沿って走行する車線維持制御や周辺を走行す る一般車両との衝突を回避するための衝突防止制御 等の高度な走行制御が必要になるとともに,制御シ ステムが故障した場合,ドライバーによる運転操作 が期待できないため,制御システムには高い信頼性 と安全性が求められる。図3に自動隊列走行のコンセ プトを示す。 (1)車線維持制御システム 車線維持制御システムは,走行区画白線と前輪タ イヤとの間隔が常に一定になるようタイヤ操そう舵だ角度 を自動制御するもので,図4に車線維持制御システム 構成を示す。 区画白線と前輪タイヤとの間隔を正確に検出する とともに太陽光や雨による影響を避けるため,小型 カメラが路面に対してほぼ垂直に車両側面に取り付 けられている。このカメラ画像により,区画白線が リアルタイムで認識されるとともに,白線と前輪タ イヤ間の距離(以下,横偏差)が1 ~ 2cmの精度で 検出される。検出された横偏差を用いて車両運動モ デルに基づいた非線形制御アルゴリズムにより最適 な前輪タイヤ角度が算出されるとともに,ステアリ ングコラムに取り付けられた操舵モーターにより前 輪タイヤが操舵される。また曲線部を走行する場合, 人間が真下の白線を見ただけでは運転できないのと 同様,フィードバック制御だけでは制御系の遅れ要 素等のため,走行速度が高くなるにつれ制御性が低 下し,最終的には白線を追従できなくなる。この問 題を解決するため,道路の曲率に応じてあて舵を行 うフィードフォワード制御が同時に行われている。 (2)車間距離制御システム(CACC) レーダー等を用いて前方を走行する車両と自車と の車間距離を速度に応じた安全な車間距離に保持す るACC(Adaptive Cruise Control)はすでに実用化さ れ多くの車両に搭載されているが,前方車両が急ブ ①車線保持制御 ・白線認識技術(画像,レーザー,高速カメラ) ③衝突回避技術 ・ミリ波レーダー/レーザーレーダーの フュージョン技術 ・遠赤外線ステレオカメラ ④共通基盤技術 ・ECUフェイルセーフ化技術 ・準天頂衛星による測位技術 ②車間距離制御技術 ・車車間通信技術(DSRC,光) ・車間距離検出技術(レーダー,レーザーレーダー) 図3 自動隊列走行コンセプト 横偏差(前) ヨーレート 速度 現在位置 白線画像認識装置 側方カメラ(前後) 横偏差(後) 廻頭角 道路 線形 データ 制御ECU 車線保持制御 アルゴリズム 道路曲率 道路カント 操舵モーター 指示ハンドル角 ハンドル角 図4 車線維持制御システム構成

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ている。車間距離情報だけの制御では,前方車の減 速度の発生開始から車間距離に変化が現れるまでに は大きな遅れ時間が発生するとともに自車の減速が 発生するまでにも遅れが発生するため,衝突を防止 するには長い車間距離が必要となる。 この問題を解決するため,隊列走行では前方車両 の速度情報や加速度情報を後続車に通信を用いて伝 送し,この前方車情報と車間距離を用いて車間距 離制御を行うCACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)が開発されている。図5にCACCのシステム 構成図を示す。 先頭車の速度や加減速度が20msec(0.02秒)ごと に後続車に送信され,車間距離を一定にするため後 続車の速度は常に先頭車と同じ速度になるよう制御 されるとともに速度制御誤差により発生する車間距 離誤差が車間距離センサーからの情報をもとに補正 される。 図6に示す自動隊列トラックを用いて,4台隊列走 行が行われ,空積状態ではあるが単独走行に比べ,約 15%の省エネ効果が確認された。図7に速度80km/h, 車間距離4mでの4台隊列走行の実証実験風景を示す。 3.2 SARTREの開発 SARTRE(SAfe Road Train for Environment)はトラッ クと乗用車混在の隊列走行で特徴は手動運転された が数台の隊列で自動追尾するシステムで,追尾車の 省エネ化と他の一般車両の割り込みを防止するため に隊列内の車間距離は6m程度に制御される。この自 動運転隊列システムの特徴は白線を追従するのでは なく先行車両と自車との横方向のずれをステレオカ メラとレーザーレーダーで認識して自動操舵制御を 行うシステムである。図8に使用されているカメラと レーザーレーダーを示す。SARTREにおいて,手動運 転される先頭の大型トラックと後続の自動運転車3台 制御モデル(CACC) ・車間距離制御 ・加速度制御 先頭車速度 車 車 間 通 信 車 車 間 通 信 車間距離 速度 車間距離 車車間通信 :通信周期(20ms) ミリ波レーダー(76GHz) /2Dレーザーレーダー(IBEO) エンジン/ブレーキ 加減速度 設定車速(CC) 設定車速(CC) エンジン/ブレーキ/TM 速度(自車) 加速度(自車) 先頭車加速度 先頭車目標加速度 先頭車目標速度 先頭車制御値 制御モデル(ACC) ・車間距離制御 ・速度制御 シフト位置 図5 車間距離制御システム(CACC)構成 図7 4台隊列走行実験風景 ・ Camera ・レーザーレーダー ・ 自動操舵装置 レーザーレーダー HMI ミリ波レーダー 図6 自動隊列トラック構成

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による隊列走行実験が実際の高速道路を用いて行わ れた。図9にSARTREの走行実験風景を示す。

4.

自動運転のための要素技術

自動運転には表2に示したように新しい技術が求め られ,近年これらの技術開発が精力的に進められて いる。 以下に主要な要素技術の開発状況を紹介する。 4.1 走行制御ECUのフェイルセーフ技術 自動運転レベル3以上のシステムでは制御システム が故障した場合,ドライバーによる即時の運転操作 が期待できないため極めて信頼性の高いシステムを 構築する必要がある。現在,自動運転車についての 国際的な安全性・信頼性基準は定められていないが, 電気・電子機器に関する国際標準規格IEC61508では 自動制御機器に対し,故障率が10-8/Hr(1時間当たり 1億分の1の割合)以下のSIL4注1)の安全性レベルを自 動運転システムに求めている。 自動運転にはSIL4レベルの安全性が求められると考 えられ,機器の高信頼化のみならず制御装置の冗長 化やフェイルセーフ化が必要になると思われる。 冗長化はシステムに異常が発生した場合,ドライ バーが瞬時に走行環境を理解し,通常の運転操作が できるまでの時間を確保するために必要であり,ま たフェイルセーフ化は制御装置が故障した場合の異 常動作を防ぐ機能であるが,フェイルセーフ化は自 動運転車の安全性を考えるうえで信頼性以上に重要 な課題である。特に車両制御ユニット(以下,車両 制御ECU)に使用されるマイクロプロセッサーが故障 もしくは暴走した場合のフェイルセーフ化は極めて 重要である。この事例として,鉄道の信号保安装置 ATC(Automatic Train Control)で実用化されている フェイルセーフコンピューターの設計概念に基づい た車両制御ECUがエネルギー ITSの自動隊列走行プロ ジェクトにおいて開発された。図10に車両制御ECU のフェイルセーフ構成と試作器を示す。 CPUボードはメイン,サブの2系のCPUとメモリー 部,比較器およびリレー回路から構成され,CPUで演 算されたメイン,サブ2個の演算結果が比較照合器に 図9 SARTREの走行実験風景 図8 SARTREにおける先行車認識センサー 故障検出・フェイルセー フ部 図10 車両制御ECUのフェイルセーフ構成

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の出力と外部制御機器の結線はリレー回路にて自動 的に遮断される。これによりCPUが故障やノイズ等 により誤動作した場合,異常値が外部制御機器に送 出されるのを防止している。 4.2 ローカルダイナミックマップ技術 車両周辺に存在する物体の認識性能の向上も自動 運転における大きな課題である。 図11に示すような一般道における非常に複雑な シーンにおいて自動運転を行うには交通信号や道路 標識,電柱,ガードレール等の構造物と道路および もに道路上の物体がどの方向に移動しているかを認 識することが求められる。 現状画像センサーやミリ波レーダー,レーザーレー ダー等のセンサー単独で複雑な環境を認識すること は困難なため,これらのセンサーを複数用いて認識 性能を向上するセンサーフュージョン技術が開発さ れているが,これらを完全に区別することは極めて 困難である。そこでセンサーによる物体までの距離 情報と高度化された道路地図を組み合わせたローカ ルダイナミックマップと呼ばれる距離センサーと地 図のフュージョン技術によりこの問題を解決する技 術が開発されている。このローカルダイナミックマッ プ技術の概念を図12に示す。 GPSからの位置情報より電柱や信号機等の道路構 造物情報をもつ周辺の詳細道路地図情報が算出され る。同時に車載3次元レンジセンサーより物体までの 3次元距離が検出される。 このセンサーからの3D距離データと道路地図をリ アルタイムで合成することにより,レンジセンサー で検出された物体が道路構造物か道路上の物体かど うかが正確に区別される。 上記に示すようにローカルダイナミックマップに 図11 一般道の走行環境 GPS 高分解能3Dレンジセンサ 詳細道路データ情報 自車位置 直線開始点 曲線 中間点 直線 終了点 曲線 開始点 曲線終了点 白線 縁石 図12 ローカルダイナミックマップ技術

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は2次元面における距離データが必要である。レー ザー光を用いた既存のレーザーレンジセンサーでは, レーザー光はポリゴンミラーと呼ばれる回転ミラー を用いて水平方向および垂直方向にスキャニングさ れるが,垂直方向のスキャニング分解能が粗いため, 自動運転用レーザーレンジセンサーでは垂直分解能 の高い新しいレーザーレンジセンサーが必要となる。 4.3 自動運転のアーキテクチャー 安全運転支援システムはドライバーの安全運転タ スクの一部を担うものであるため,個々の制御シス テム規模は比較的小さいものである。それに対して, 自動運転システムはドライバーに代わり全運転タス クのほとんどを担う必要があり,ローカルダイナミッ クマップや目標走行軌跡生成,環境理解や危険判断 等の人工知能機能等,安全運転支援システムには必 要のない高度な情報処理機能が求められる。また制 御的にも,横方向と縦方向制御が絡み合う非常に複 雑なシステムである。したがって,すべての入力情 報をもとに1つのソフトウェアで処理する集中制御方 式で自動運転システムを構築した場合,システム変 更に対する自由度や,システムの安全性・信頼性の 検証が非常に複雑になるとともにバグ発生の要因に もなるなどの問題がある。 したがって,自動運転システムを構成する場合, 分散型制御方式が好ましいといえる。自動運転は認 知機能,判断機能,操作機能で構成されることを考 えると,自動運転のシステムアーキテクチャーもこ の考えで設計されるのが合理的であり,この考えに 基づいて筆者らにより設計された自動運転のシステ ムアーキテクチャーの事例を図13に示す。 自動運転システムは4つのモジュールとセンシング 部,外部通信部で構成されている。地図モジュール は道路地図とローカルダイナミックマップから構成 され,GPSおよび障害物情報より,現在の道路線形情 報に加え車両周辺の障害物情報や道路空間情報,目 標走行軌跡等を出力する。人工知能モジュールはロー カルダイナミックマップからの障害物情報をもとに 周辺の走行環境理解や危険予知を行う。また,出力 モジュールとして縦方向と横方向それぞれ独立した 出力モジュールをもち,上位の指示なしに単独で最 小限の安全機能をもっており,上位からの指示に基 づいて補正されることにより,信頼性や安全性の確 保がはかられる構成となっている。 人工知能モジュール ・環境理解 ・判断 ・目標走行軌跡修正 操舵制御モジュール (車線維持制御) 走行環境センシングおよび障害物認識 ・前方の障害物のセンシング(ミリ波レーダー, レーザーレーダー, TVカメラ) ・白線レーンセンシング 速度制御モジュール (ACC, PCS) ビッグデータ, 道路・交通情報等(車外データ) 地図モジュール ・固定道路地図 ・ローカルダイナミッ クマップ ・目標走行軌跡生成 車間距離 白線距離 道路地図 障害物 位置等 交通情報等 エンジン・ブレーキ ハンドル 道路線形 修正指示 修正指示 HMI モジュール 図13 自動運転のシステムアーキテクチャーの事例

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本文の注

注1) SIL(Safety Integrity Level)とは,要求される安全性の等級を表す指標。要求される安全機能を維持 し続ける確率のレベルを意味している。レベル1からレベル4に等級分けされている。

参考資料

a) Steve E. Shladover. Demonstration of Automated Heavy-Duty Vehicles. Path Report. b) 青木啓二. 自動運転技術の開発動向と実用化に向けた課題. ISITS第14回カーエレクトロニクス研究会「自 動車運転技術の開発動向と実用化に向けた課題」. c) Yoshida, Jun; Sugimachi Toshiyuki; Fukao Takanori; Aoki Kenji. Autonomous Driving of a Truck Based on Path Following Control. 10th Int. Symposium on Advanced Vehicle control.

Author Abstract

Currently, automated driving systems are being developed toward the introduction in commercial market by 2020. Advanced control technologies on perception, judgment and maneuver function will be needed instead of human driver. Truck based automated platooning system has developed by Energy ITS project in Japan and white line based lane tracking control and cooperative adaptive cruise control technologies using vehicle-to-vehicle communication were developed. Currently, fail-safe control technology, the local dynamic map technologies and system architecture are being developed in order to establish automated driving on urban road with traffic light.

Key words

automated driving, platooning, Local Dynamic Map, fail-safe computer, vehicle-to-vehicle communication 自動運転の実用化には技術面以外にも法令面や社 会的受容性,国際標準化等解決すべき課題がさまざ ま残されている。海外では公道での自動運転実験が 広く実施されている。一方わが国では法令面での制 約上,公道での実験が限定されており,複雑な走行 環境での技術的知見や社会的受容性を得ることが困 難な状況にあったが近年自動運転の走行実験が承認 されるなど社会環境が大きく変化しつつある。一方, も活発化している。欧州各国の交通法令の根拠となっ ている1968年に制定されたウィーン道路交通国際条 約において,自動運転を可能とする条文の追加提案 がなされ,承認に向けた審議が行われている。 また米国ネバダ州議会やカリフォルニア州議会に おいて,自動運転を可能とする自動運転受け入れ法 案が承認されるなど,自動運転の実現に向け大きく 動き出しており,2020年までの実用化が期待されて いる。

参照

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