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線量測定の基礎

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Academic year: 2021

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総  説

線量測定の基礎

診断参考レベルに用いられる線量

佐藤 健児

The Basis of Dosimetry for Oral and Maxillofacial Radiology

―The Doses for Diagnostic Refernce Levels―

Kenji Sato

Dental Radiology 2015 ; 55(1): 30-34

Key words: Dosimetry, Diagnostic reference level, Dose index / 線量測定,診断参考レベル,線量指数

は じ め に

 X 線診断における患者の被曝は,医療被曝であるため線 量限度は適用されないが,X 線診断の最適化1,2は行われ

るべきである。X 線診断の最適化とは,「線量を合理的に 達成できる限り低く保つ(as low as reasonably achiev-able, ALARAの原則)」ことであり,この目的を達成する ために,国際放射線防護委員会(International Commis-sion on Radiological Protection, ICRP)は診断参考レベ ル(diagnostic reference level, DRL)1,3–5の使用を勧告し

ている。DRL は,一般的な X 線診断の手法に適用され, 容易に測定できる線量を用い,平均的な体格の患者または 標準的なファントムに対応するものである。DRL に用い られる線量(以下 DRL 線量)は,X 線診断のモダリティ によって異なる。そこで今回は,今後 X 線診断に深くか かわる歯科医師が知っておくべき DRL 線量とその測定方 法について概説する。 基 本 線 量  DRL 線量を測定し理解するために必要な基本となる線量 は,照射線量(exposure),吸収線量(absorbed dose)およ びカーマ(kerma)である。Appendix 1 の 1 ~ 3 に国際放 射線単位および測定委員会(International Commission on Radiation Units and Measurements, ICRU)6–8によ

る照射線量,吸収線量およびカーマの定義を示す。  照射線量は,記号 X で表され,X 線やγ線などの光子 (電磁放射線)の電離によって生成された二次電子が,空 気中で完全に止められた場合に空気中で発生する電荷量, つまり電離能力の大きさを表す線量である。単位はC kg-1 旧単位はレントゲン(R)である。  吸収線量は,記号 D で表され,電離放射線によってある 物質の単位質量あたりに与えられた平均エネルギーを表す 線量である。吸収線量はすべての放射線および物質を対象 とする。単位は J kg-1,特別名称はグレイ(Gy)である。  カーマは,記号 K で表され,X 線,γ線,中性子線な どの非荷電粒子とある物質との相互作用によって発生した 初期の荷電粒子(主に電子)の運動エネルギーの総和で表 される。カーマはすべての物質を対象とする。単位は吸収 線量と同じ J kg-1,特別名称はグレイ(Gy)である。カー

マという名称は,kinetic energy released per unit mass の頭文字をとったもので,「単位質量あたりに放出された 運動エネルギー」を意味する。

 対象を X 線と空気に限定すると,これらは照射線量, 吸収線量およびカーマそれぞれの定義を満たす共通な放射 線と物質となる。空気を対象とした場合,吸収線量とカー マは,それぞれ空気吸収線量(absorbed dose in air)と 空気カーマ(air kerma)と呼ばれる。照射線量は電離す る(二次電子に運動エネルギーを与える)場所が空気であ り,電磁放射線のみに適用されることから,空気カーマや 空気吸収線量が照射線量に代わって多く用いられるように なっている。  測定された照射線量(電離による電荷量)を質量エネル ギー吸収係数(mass energy absorption coefficient, μen/ρ),

質量エネルギー転移係数(mass energy transfer coefficient, μtr/ρ)および W 値(気体中で 1 個のイオン対を生成す

Received February 12, revision accepted February 12, 2015. 著者所属:日本歯科大学生命歯学部歯科放射線学講座

別刷請求先:〒 102-8159 東京都千代田区富士見 1-9-20 日本歯 科大学生命歯学部歯科放射線学講座 佐藤健児

From Department of Oral and Maxillofacial Radiology, School of Life Dentistry at Tokyo, The Nippon Dental University, 1-9-20 Fujimi, Chiyoda-ku, Tokyo 102-8159, Japan

Address reprint requests to the author, Dr. K. Sato 版権:Ⓒ 2015 日本歯科放射線学会

(2)

るのに必要な平均エネルギー)などの相互作用係数で換算 することによって,空気吸収線量および空気カーマを得る ことができ,さらに照射線量,空気吸収線量および空気 カーマを互いに関連付けることができる。診断領域の X 線エネルギーでは,空気吸収線量と空気カーマは等しいと 考えて良い。 測 定 機 器  X 線の照射線量,空気吸収線量,空気カーマを測定する 測定機器として代表的なものに電離箱(ionization cham-ber)と半導体検出器(solid state detectors, SSD)がある。  電離箱は陰極(cathode)と陽極(anode)があり,主 に空気で満たされている。電離箱に X 線が入射すると電 離箱壁と光電効果やコンプトン散乱などの相互作用を行い, その結果二次電子を発生し,その二次電子が電離箱内の空 気を電離する。この電離箱内の電離によって生成された陰 イオンが陽極に引き寄せられると回路に電流が流れ,その 電流を測定し,電離箱内の空気の質量で除することによっ て C/kg や R 単位の照射線量が得られる。また,空気の質 量エネルギー吸収係数などを演算回路として組み入れるこ とによって Gy や J/kg 単位の空気吸収線量や空気カーマ が得られる。電離箱は,環境放射線や X 線発生装置の漏 洩 X 線などの低線量から X 線診断や放射線治療などの高 線量放射線に対応した多くの種類がある。X 線量および線 量率が低い場合は,感度を上げるために電離箱の空気容量 は大きくなる。  半導体検出器は,固体での電離を測定するものと解釈し てよい。半導体は,気体よりも原子番号および密度が大き いことから,電離箱に比べて線量計のコンパクト化および 広範なエネルギーの放射線の計測が可能である。 DRL 線量  歯科における DRL 線量と単位を Table 1 に示す。  1.面積線量(dose-area product, DAP)

 ICRU による DAP の定義8を Appendix 1 の 4 に示す。

DAPは,空気吸収線量と照射野面積の積で表される。空 気吸収線量の代わりに空気カーマを測定した場合は,記号 は D に代わって K が用いられ KAP で表現される。単位 は DAP と同じ J kg-1m2または Gy cm2である。  DAP の特徴は,①空気による減弱,散乱線および焦点 外 X 線が無視できるならば,測定や計算位置が患者やファ ントムに近づき過ぎないならば焦点からの距離に依存せず, ②診断レベルの X 線の大部分は患者に吸収されることから, 患者への付与エネルギーつまり患者線量を反映することで ある。また,DAP は面積線量計を X 線発生装置のビーム 射出口に装着してモニターできるが,面積線量計を日本品 質保証機構(Japan Quality Assurance Organization, JQA)などで国際標準にトレーサブルな標準電離箱によっ て校正することで正確に測定することができる。

 2.口内法 X 線撮影

 口内法 X 線撮影で用いられる DRL 線量は,患者入射線 量(patient entrance dose, PED)および面積線量(DAP または KAP)である。PED はコーン先端での空中空気 カーマを測定し,KAP は PED にコーン先端での照射面

Table 1 歯科における DRL 線量と単位

線 量 単 位1) 対 象

患者入射線量

patient entrance dose, PED mGy 口内法 X 線撮影 入射表面線量

entrance surface dose, ESD mGy 頭部 X 線規格撮影 線量 – 幅積

dose-width product, DWP mGy mm パノラマ X 線撮影 面積線量

dose-area product, DAP kerma-area product, KAP

mGy cm2 口内法 X 線撮影 パノラマ X 線撮影 頭部 X 線規格撮影 歯科用コーンビーム CT 加(荷)重 CT 線量指数

weighted CT dose index, CTDIw mGy

一般 CT

歯科用コーンビーム CT 線量 - 長さ積

dose-length product, DLP mGy cm 一般 CT歯科用コーンビーム CT 1) 単位の接頭語は状況に応じて,μ(マイクロ),m(ミリ),c(センチ)な ど適宜用いてよい。また,長さの単位を状況に応じて,m(メートル), cm(センチメートル),mm(ミリメートル)を適宜用いてよい。

(3)

積を乗ずることで得られる。ここで空中という意味は,患 者が存在しないこと,つまり背面散乱がないときの空気 カーマを意味する。コーン先端での照射面積はフィルムま たは IP などを用いて測定することができる。  3.パノラマ X 線撮影  パノラマ X 線撮影で用いられる DRL 線量は,線量 - 幅 積(dose-width product, DWP)および DAP または KAP である。DWP は通常 2 次スリット位置での空中空気カー マとスリット幅の積で表され,KAP はビームの高さ方向 での線量分布が一様ならば,DWP 測定と同じ位置でのス リット高さを DWP に乗ずることで得られる。スリット高 さは,フィルムまたは IP などを用いて測定することがで きる。  4.頭部 X 線規格撮影  頭部 X 線規格撮影で用いられる DRL 線量は,入射表面 線量(entrance surface dose, ESD)および DAP または KAPである。ESD はイヤロット位置での空中空気カーマ を測定し,これに管電圧や半価層などの線質および照射野 に対応した背面散乱係数を乗ずることで得られる。実際の 患者あるいはファントムに熱蛍光線量計(thermolumines-cence dosimeter, TLD)や蛍光ガラス素子などを貼って実 測することもできる。KAP はイヤロット位置での空気 カーマと照射面積を乗ずることで得られる。  5.一般 CT および歯科用コーンビーム CT  一般 CT で用いられる DRL 線量は,加(荷)重 CT 線量 指数(weighted CT dose index, CTDIw)および線量 - 長

さ積(dose-length product, DLP)である。Appendix 2 に ICRP Publication 879の APPENDIX A に示されている

一般 CT における CTDIwと DLP の定義を示す。CTDIw は直径 16 あるいは 32cm,長さ 14cm 以上の PMMA つ まりアクリル製の CT 用標準ファントムと CT 用電離箱を 用いて測定する。成人の体幹部の測定には直径 32cm の ファントムを,成人の頭部と小児の体幹部の測定には頭部 用ファントムを用いる。DLP は CTDIwに実効的なスキャ ン長さを乗ずることによって得られる。  歯科用コーンビーム CT で利用できると考えられている DRL線量は,一般 CT で定義されている CTDIwと DLP および DAP または KAP などである。  CTDIwは患者体幹部の中心と皮膚などの表面に存在す る組織・臓器の線量分布を考慮した撮影線量を意味し, DLPは CTDIwにスキャン長さを掛け合わせた線量である ことから DAP または KAP 同様に患者線量を反映してい る。したがって,病院や診療室で実際に行われている撮影 条件における CTDIwを予め測定し,後日,撮影記録から

撮影範囲(field of view, FOV)やスキャン長さなどを集 計することによって,歯科用コーンビーム CT あるいは一 般 CT による年間の患者線量などを推定することができる。 お わ り に  歯科における X 線診断の最適化は,出来るだけ少ない 撮影線量で必要十分な画質を担保することであり,この目 的のためには DRL 値の設定は不可欠であるが,日本では 欧米に比べ大幅に遅れているのが現状である。DRL 値の 設定は,画像と線量評価によって行われ,その一翼である 線量評価では線量測定が基本的な手段である。そこで,今 回の研修によって歯科医師の先生方に線量測定の概念を理 解していただき,その結果,歯科における X 線診断の最 適化が推進されれば幸いである。

1. ICRP. The 1990 Recommendations of the International Commission on Radiological Protection. ICRP Publication 60, Annals of the ICRP 21 (1-3), 1991.

2. ICRP. The 2007 Recommendations of the International Commission on Radiological Protection. ICRP Publication 103, Annals of the ICRP 37 (2-4), 2007.

3. ICRP. Radiological protection and safety in medicine. ICRP Publication 73, Annals of the ICRP 26 (2), 1996. 4. ICRP. Radiation and your patient: A guide for medical

practitioners. ICRP Supporting Guidance 2, Annals of the ICRP 31 (4), 2001.

5. ICRP. Radiological protection in medicine. ICRP Publica-tion 105, Annals of the ICRP 37 (6), 2007.

6. ICRU. Quantities and units in radiation protection dosim-etry. ICRU Report 51. 1993.

7. ICRU. Fundamental quantities and units for ionizing ra-diation. ICRU Report 60. 1998.

8. ICRU. Patient dosimetry for x ray used in medical imag-ing. ICRU Report 74. 2005.

9. ICRP. Managing patient dose in computed tomography. ICRP Publication 87, Annals of the ICRP 30 (4), 2000.

Appendix 1 照射線量,吸収線量,カーマおよび面積線量

1.照射線量(exposure)

 記号:X

 定義:照射線量 X は dQ を dm で除した値であり,ここで dQ は質量 dm の空気中に光子によって放出あるいは生成され た陰電子と陽電子が空気中で完全に止められた場合に空気中で発生する一方の符合のイオンの全電荷の絶対値である。

(4)

 単位:C kg-1  備考:旧単位レントゲン(R)との関係は,      1 R = 2.58

×

10-4 C kg-1 である。 2.吸収線量(absorbed dose)  記号:D  定義:吸収線量 D は dεを dm で除した値であり,ここで dεは質量 dm の物質に付与された平均エネルギーである。 (εについては後述)  単位:J kg-1  特別名称:グレイ(Gy)      1 Gy = 1 J kg-1  備考:旧単位ラド(rad)との関係は,      1 rad = 10-2 J kg-1 である。 3.カーマ(kerma)  記号:K  定義:カーマ K は dEtrを dm で除した値であり,ここで dEtrは質量 dm 中の非荷電粒子によって発生した全荷電粒子の 初期運動エネルギーの総和である。  単位:J kg-1  特別名称:グレイ(Gy)      1 Gy = J kg-1  備考:カーマは,光子や中性子などの非荷電粒子放射線(間接電離放射線)に適用され,電子や陽子などの荷電粒子放射 線(直接電離放射線)には適用されない。物質が空気の場合は空気カーマという。

4.面積線量(kerma-area product, KAP and dose-area product, DAP)  記号:PKA

 定義:面積線量 PKAは X 線ビーム軸に垂直な照射野 A 全体におけるにおける自由空気中での空気カーマ Kaの積分である。

 単位:J kg-1m2または Gy cm2

 備考:もし,空気カーマ K(A)が照射野全体で一様ならば,微小面における空気カーマを Ka aとすると,

(5)

Appendix 2  ICRP Publication 87, APPENDIX A. Reference dose quantities

for computed tomography

 (A1)CT で用いられる主な線量計測量は computed tomography dose index(CTDI)である。CTDI はある固定した寝 台位置での一回転スキャンにより得られる回転軸(z)に平行な線量プロフィール(D(z))の線積分を X 線ビームの公称 ビームコリメーションで除したものとして定義される。CTDI は有効長 100mm のペンシル型電離箱を用いて容易に評価で きることから空気吸収線量で表す(IEC, 1999): (mGy) (1)  ここで n は,一回転のシングルスキャンにより得られる公称スライス厚 T の断層像の数である。  (A2)CT の参考線量は標準線量測定ファントムを用いて測定する。標準線量測定ファントムとしては,現在のところ均 質な PMMA の円柱であり,直径は 16cm(頭部)と 32cm(胴体部)の 2 種類である。このファントムの中心(c)と表面 から深さ 10mm(p)での測定から次の 2 つの参考線量を導く(CEC, 1999):  (a)臨床で用いられているある照射条件において,一回のシングルスキャンによる頭部または胴体部の標準ファントム 中の荷重 CTDIwは: (mGy) (2)  ここで,CTDI100,pはファントム周辺の 4 つの異なる位置における測定値の平均である。  (b)一つの検査全体についての dose-length product(DLP)は: (mGy cm) (3)  ここで i は,検査におけるスキャンシークエンスの回数,nT(cm)は各シークエンスにおける公称ビームコリメーショ ン[(1)式],C(mAs)は一回転あたりの照射量,N は各シークエンスにおける回転数であり,nCTDIwは各シークエンス の印加電圧と公称ビームコリメーションに対して照射量 mAs で規格化された荷重 CTDI(mGy mA-1s-1)である。  (A3)これらの量はシングルスライスあるいはマルチスライス両方の CT に対して連続スキャンあるいはスパイラルス キャンにも適応できる。初期 DRL は実態調査に基づき,いくつかの一般的な検査について成人(CEC, 1999)と小児 (Shrimpton and Wall, 2000)の患者について発表された。これらの値が表 A1 と A2 に示されている。このような調査レ ベルは,ある CT 施設で代表的な患者グループの検査について評価された局所的な線量表現(CTDIwや DLP)の平均値と

比較するためのものであり,個々の患者に適用されるべきではない。

CEC (1999) Quality Criteria for Computed Tomography, European Directive. EUR 16262, Commission of the European Communi-ties, Luxembourg.

参照

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