交通行動の地域性に着目した効果的な事
故対策立案方法の開発
― 平成 25 年度(中間報告) タカタ財団助成研究論文 ―
研究代表者
久保田 尚
研究実施メンバー
研究代表者
埼玉大学大学院理工学研究科
2
報告書概要
本研究では,交通事故対策の新たな視点として,「交通行動の地域性」に着目した.人々 の気性などと同じように,交通行動についてもその地域性は「○○地方は運転が荒い」とい った形で従来から認識されてきた.事故そのものを検討するだけではなく,その要因となる 地域の交通行動の特性,住民の意識の違いを検討し,対策を検討することが,効果的な事故 対策の立案に必要であると考えられる.本研究の目的は,交通行動の地域性から事故危険箇 所を見出す効率的な手法を検討し,マニュアル化すること,さらに地域性に合わせた対策を 立案し,その効果を検証することである.そこで,本研究では,(1)全国調査による交通 行動の地域性と発生事故の関連性の整理,(2)道路の形成経緯の違いによる交差点の危険 性に関する検討,(3)事故危険交差点におけるモビリティ・マネジメント(MM)による検 討,の 3 つを実施した.その結果,地域ごとに認識されているの交通行動の特性が,実際の 交通事故に影響を及ぼしていることが見出された道路の形成経緯の違いから,生活道路が幹 線道路により分断された交差点では,急ブレーキの発生回数,交通事故発生回数のいずれも がその他の交差点よりも大きくなり,事故の危険性が高いこと,.また,危険な横断が日常 的に行われている交差点で,MM を用いた安全行動の促進実験を実施した結果,歩行者の安 全の意識を高めることができた.3
目 次
交通行動の地域性に着目した効果的な事故対策立案方法の開発 第 1 章 はじめに 1.1. 背景 1.2. 目的 第 2 章 交通行動の地域性と発生事故の関連性の整理 2.1. 既存研究と本研究の位置付け 2.2. 研究方法 2.3. 調査結果 2.4. 交通行動の地域性と事故の関係性に関するまとめ 第 3 章 地域 DNA 型交差点の危険性に関する分析 3.1. 既存研究と本研究の位置付け 3.2. 研究方法 3.3. 分析結果 3.4. 地域 DNA 型交差点の危険性に関する検討のまとめ 第 4 章 事故危険交差点におけるモビリティ・マネジメントによる検討 4.1. 既存研究と本研究の位置付け 4.2. 実験内容 4.3. 実験結果 4.4. 歩道橋 MM 実験結果のまとめ 第 5 章 研究のまとめ4
第1章
はじめに
1.1. 背景 近年わが国では,交通事故件数・交通事故死者数ともに減少傾向にある.しかし,平成 25 年中の交通事故の死者数は 4,373 人を記録し,交通事故の総件数は 62 万件を,負傷者数 は 78 万人をそれぞれ超えるなど1)交通事故情勢は依然として厳しいものがある. こうした状況から,交通事故のさらなる削減が求められるが,近年の交通事故死者数の減 少に鈍りが見られていることからも,従来の交通工学的アプローチに加え,新しい視点から の事故対策が必要と考えられる.そこで本研究は,地域の文化や歴史といった側面や,その 風土の中で暮らす人々の心理に着目したうえで,交通事故の要因を探り,対策を実施する必 要性について検討する. 1.2. 目的 本研究の目的は,交通行動の地域性から事故危険箇所を見出す効率的な手法を検討し,マ ニュアル化しさらに地域性に合わせた対策を立案し,その効果を検証するための基礎的情報 を得ることである.そこで,本研究では,(1)全国調査による交通行動の地域性と発生事 故の関連性の整理,(2)道路の形成経緯の違いによる交差点の危険性に関する検討,(3) 事故危険交差点におけるモビリティマネジメントによる検討,の 3 つを実施した. 全国調査による交通行動の地域性と発生事故の関連性の整理については,インターネット を利用した全国調査を実施し,地域ごとに認識されている交通行動の特性と,実際に発生し ている事故との関連性を調べることで,地域性が交通事故に及ぼす影響について検証した. 道路の形成経緯の違いによる交差点の危険性に関する検討については,生活道路が幹線道 路に分断されてできた交差点での人々の行動特性,「地域 DNA」による危険性に着目し,そ の危険性について検討を行った. さらに,「乱横断」が日常的に行われている,すなわち,地域 DNA が存在する交差点にお いて,そのような危険な行動を抑制する方策の検討として,モビリティマネジメントの手法 を利用した社会実験を実施し,その効果について検証した.次章より,それぞれの検討結果 について述べる.5
第2章
交通行動の地域性と発生事故の関連性の整理
2.1. 既存研究と本研究の位置付け 人々の行動,気性について,地域性があると言われることは多い.既存の研究においても, 文化人類学の分野では住民の気質・行動の地域性の存在が認められている2).同じように, 交通行動についても「○○地方は運転が荒い」,「○○地方では無理な右折が多い」といっ た形で,従来から地域性が認識されている.田久保3)による研究では,自治体単位の地域の 交通事故の発生状況と社会生活状況,12 都道府県の地域住民の安全意識と交通事故の関連 が分析されており,県民の運転意識と死亡事故件数・死傷者数との間に相関が確認されいる. 大柳ら4)は,埼玉県を対象として,県内を 5 つの地域に分け,それぞれの地域で認識されて いる交通行動と発生事故の件数,事故類型に関する分析を行い,交通行動の特性と発生事故 の類型に関連性があることを見出している. 本研究では,これらの研究を踏まえ,日本全国で発生した人身事故を対象として,交通行 動の地域性に着目した交通事故分析を行った.交通事故データと交通行動に表れる地域性の 存在を見出すこと,また交通行動に表れる地域性が交通事故に及ぼす影響を分析することを 目的とする. 2.2. 研究方法 交通行動の地域性と交通事故の関連性を調べるため,以下の方法でデータを収集した. まず,交通行動の地域性については,アンケート調査会社のモニターを対象とした web 画 面上でのアンケート調査を実施した(調査会社:楽天リサーチ).調査対象は,自動車運転 免許保有者とし,各都道府県ごとに 100 サンプルずつ,合計 4,700 サンプルを回収した.こ のアンケート調査において,回答者が居住している都道府県で見られる交通行動の特性等に ついて回答を得た. 交通事故データについては,交通事故統計年報平成 24 年版(交通事故総合分析センター) から,平成 24 年度中の都道府県別の事故発生件数,事故類型等のデータを得た. 上記のアンケート調査データ,及び交通事故データにより,都道府県ごとの交通行動の特 性,及び,発生している交通事故の関連性について検討した. 2.3. 調査結果 2.3.1. 交通行動の地域性 まず,アンケート調査で得られた結果から,都道府県ごとの交通行動の地域性について見 ていく.図 2.1 は,都道府県による交通行動の違いを感じることがあるか,質問した結果 である.「よくある」,または「ときどきある」と回答した人の割合が 53.3%となっており, 半数の人が地域による交通行動の違いを普段から感じているという結果となった.6 図 2.1 都道府県による交通行動の違いに関する認識 図 2.2 は,自分の住む都道府県と他の都道府県で交通行動が異なることで,恐怖を感じ るかを聞いた設問の回答結果である.「そう思う」あるいは「どちらかといえばそう思う」 と回答した人が 48.2%となっており,半数近くの回答者が,地域ごとの交通行動の違いによ り恐怖を感じることがあることが分かった.これらの結果からは,交通行動には地域性が存 在しており,他の地域から来た人が危険を感じる状況が起こっていることが示唆されている. 図 2.2 都道府県による交通行動が異なることで恐怖を感じているか ここで,地域ごとにどのような交通行動の違いがあるのかについて見ていく.図 2.3 は, 「あなたがお住まいの都道府県における自動車・自動二輪車の特徴としてよくみられるもの を以下の選択肢の中から選択してください.」という設問において,「速度超過」を回答し た回答者の割合を県別に示したものである.これを見ると,北海道,茨城,愛知において, 比較的その割合が高くなっており,反対に,岩手県,鳥取県,島根県ではその割合が他の都 道府県と比べて低くなっている. 14.9 よくある 38.4 ときどきある 28.8 どちらとも いえない 11.9 あまりない 5.9 まったくない 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 全国 凡例
都道府県による交通行動の違いを感じることがあるか
14.3 そう思う 33.9 どちらかといえば そう思う 30.2 どちらとも いえない 13.1 どちらかといえば そう思わない 8.4 そう思わない 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 全国 凡例自分の住む都道府県と交通行動が異なることで恐怖を感じるか
7 図 2.3 自動車・二輪車の特徴として「速度超過」を回答した回答者の割合 図 2.4 は,上記と同様の設問で「信号無視」と回答した回答者の割合を都道府県別に示 したものである.香川と徳島で比較的高い割合となっており,岩手,埼玉,神奈川,新潟で 低い値を示している. 図 2.4 自動車・二輪車の特徴として「信号無視」を回答した回答者の割合 次に,図 2.5 は,同じ設問に「歩行者軽視」と回答した回答者の都道府県別の割合を示 している.沖縄,広島,群馬で他の都道府県よりも比較的高い値を示し,岩手,秋田で比較 的低い値となっている.これらの結果から,都道府県ごとに認識されている交通行動の特徴 には違いが見られており,交通行動には地域性があることが示唆された.
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北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 新潟県 富山県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県回答率(%)
自動車・二輪車の特徴-速度超過
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北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 新潟県 富山県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県回答率(%)
自動車・二輪車の特徴-信号無視
8 図 2.5 自動車・二輪車の特徴として「歩行者軽視」を回答した回答者の割合 2.3.2. 交通行動の違いと発生交通事故の関連性 上記の結果からは,都道府県ごとに交通行動の違いがあることが示唆された.ここで,ア ンケート調査から得られた,都道府県ごとの交通行動の違いと,都道府県別の交通事故の関 係を見ることで,地域性が事故にどのように関連しているかについて見ていく. 図 2.6 は,都道府県別の平成 24 年中の交通事故件数(人口 10 万人当たり)と,自動 車・二輪自動車の交通行動の特徴として「安全運転」と回答した人の割合の関係を見たもの である.これらの間には,関係性は弱いものの,負の関係が見られることから,「安全運転」 という特徴が,交通事故を減少させている可能性が見られる. 図 2.6 事故件数と自動車・二輪の特徴として「安全運転」と回答した回答者の割合の関係 このような関係をより詳しく見ていくため,アンケート調査で得られた各交通行動と,そ のような行動に関連して発生すると考えられる類型の事故について,個別に関係を見ていく こととする.
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北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 新潟県 富山県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県回答率(%)
自動車・二輪車の特徴-歩行者軽視
y = -22.118x + 644.16 R² = 0.0577 0 200 400 600 800 1000 1200 0 2 4 6 8 10 12 事 故件数 (件 /人口 10 万人) 安全運転と回答した割合(%)安全運転行動と事故件数の関係
9 図 2.7 は,「追突-駐停車中」の事故類型にあたる事故件数と,自動車・二輪の特徴とし て「ながら運転」と回答した回答者の割合との関係をみたものである.ここでは,これらに 正の相関が見られており,ながら運転が多い都道府県では,駐停車中の追突事故が多くなっ ていることが考えられる. 図 2.7 追突-駐停車中の事故件数と自動車・二輪の特徴として「ながら運転」と回答した回答者 の割合の関係 図 2.8 は,「横断中-その他」の事故類型にあたる事故件数と,自動車・二輪の特徴とし て「歩行者軽視」と回答した回答者の割合との関係をみたものである.ここでは,これらに 正の相関が見られており,自動車の特徴として歩行者軽視が多い都道府県では,横断中の事 故が多くなっていることが考えられる. 図 2.8 「横断中-その他」の事故件数と自動車・二輪の特徴として「歩行者軽視」と回答した回 答者の割合の関係 図 2.9 は,「横断歩道横断中」の事故件数と,歩行者の特徴として「ながら歩行」と回 答した回答者の割合との関係をみたものである.ここでは,これらに正の相関が見られてお
茨城県
岡山県
香川県
佐賀県
宮崎県
y = 6.098x - 74.102 R² = 0.2356 0 100 200 300 400 500 0 10 20 30 40 50 60 追 突-駐 停車中 の事故 (件 /人口 10 万人 ) ながら運転を選択した回答者の割合(%)ながら運転と追突-駐停車中の事故
兵庫県
広島県
福岡県
沖縄県
y = 0.3068x + 4.9559 R² = 0.2717 0 5 10 15 20 25 30 0 5 10 15 20 25 30 35 40 横 断中- その他 の事故 (件 /人口 10 万人 ) 歩行者軽視を選択した割合(%)歩行者軽視と横断中-その他の事故
10 り,歩行者のながら歩行が多い都道府県では,横断歩道横断中の事故が多くなっていること が考えられる. 図 2.9 「横断歩道横断中」の事故件数と歩行者の特徴として「ながら歩行」と回答した回答者 の割合の関係 次に,図 2.10 は,「横断中-その他」の類型に分類される事故件数と,歩行者の特徴と して「飛び出し」と回答した回答者の割合との関係をみたものである.ここでは,これらに 正の相関が見られており,歩行者の飛び出しが多いと考えられている都道府県では,道路横 断中の事故が多くなっていることが考えられる. 図 2.10 「横断中-その他」の事故件数と歩行者の特徴として「飛び出し」と回答した回答者の 割合の関係 以上の結果から,地域による交通行動の違いが,交通事故の発生に関連していることが考 えられる.
東京都
神奈川県
兵庫県
福岡県
y = 18.985x + 440.47 R² = 0.1981 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 横 断歩道 横断中 の事故 (件 /人口 10 万人 ) ながら歩行を選択した割合(%)ながら歩行と横断歩道横断中の事故
兵庫県
香川県
福岡県
沖縄県
y = 0.2596x + 5.6856 R² = 0.1602 0 5 10 15 20 25 30 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 横 断中- その他 の事故 (件 /人口 10 万人 ) 飛び出しを選択した割合(%)飛び出しと横断中-その他の事故
11 2.3.3. 気質の地域性と事故の関連 前節では,各都道府県で認識されている交通行動の違いと,発生している交通事故の特徴 との関係について見てきた.ここで,都道府県ごとの気質の違いと事故との関係性について 見ていく.図 2.11 は,都道府県ごとの「追い越し・追い抜き」の類型にあたる事故発生件 数と,回答者が住んでいる都道府県の気質の特徴として「せっかち」と回答した人の割合と の関係をみたものである.両者には正の関係がみられており,地域にみられるせっかちな気 質が,追い越し・追い抜きの事故を増加させている可能性が見られる. 図 2.11 「追い越し・追い抜き」の事故件数と気質の特徴として「せっかち」と回答した回答者 の割合の関係 2.4. 交通行動の地域性と事故の関係性に関するまとめ 本章では,全国アンケート調査結果と平成 24 年度中の交通事故データから,交通行動の 地域性と事故の関連性について検討を行った.全国アンケート調査の結果からは,各都道府 県で認識されている交通行動の特徴には違いが見られていることが分かり,約半数の回答者 がそうした交通行動の違いによって恐怖を感じる状況を経験していることが分かった.これ らの交通行動の違いと発生している事故の類型について検証することで,都道府県ごとの交 通行動の違いが,発生している交通事故に関連している可能性が示された.また,都道府県 ごとの住民の気質の違いについても,発生する事故に影響している可能性が示唆された. このことから,交通事故の抑止にあたっては,都道府県ごとの交通行動の違いを踏まえた 対策をとることが,より効果的な対策を実施することになると考えられる. 愛知県 大阪府 兵庫県 岡山県 香川県 高知県 福岡県 佐賀県 y = 0.0935x + 3.3547 R² = 0.1773 0 5 10 15 20 25 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 追 い越し ・追い 抜きの 事故 (件 /人口 10 万人 ) せっかちと回答した割合(%)
せっかちな気質と追い越し・追い抜き時の事故の関係
12
第3章
地域 DNA 型交差点の危険性に関する分析
3.1. 既存研究と本研究の位置付け 前章では,全国を対象として,交通行動の違いと事故の関係について見てきた.本章では, 埼玉県内を対象として,個々の交差点の形成された経緯を地域性としてとらえ,その危険性 について検討を行うこととする. 交差点の形成の経緯と事故危険性に関しては,吉田雅俊ら5)は古くからある生活道路が幹 線道路に分断されて形成された交差点の場合,地元住民が,分断される前と同じようにその 交差点を横断することで事故が起こっている可能性を見出している.吉田進悟ら6)は生活道 路が幹線道路によって分断され形成された交差点では,分断前から生活道路を利用していた 住民が交差点において優先・非優先の意識が異なった行動をとってしまうといった,地域独 自の特徴があることを着想し,幹線道路によって分断された生活道路の交差点上で発生する 地域特性による行動を「地域 DNA」と定義した上で,このような地域の交通行動の特徴によ って引き起こされる事故を「地域 DNA 型交通事故」と定義した.この研究では,埼玉県内の 事故データをマクロ的に分析することで,地域 DNA 型交通事故について検証を行い,道路形 成の経緯の違いによって事故の発生状況に違いがあるという結果を得ている.これらの研究 により,道路形成の違いによって,交差点における事故発生の危険性に違いがあることが示 唆されている. こうした背景を踏まえ本研究では,生活道路が幹線道路によって分断され形成された交差 点を「地域DNA型交差点」と定義し,交通事故との関係を調べることを目的とした.そのた めに,既存研究で用いられた埼玉県警察事故原票に加え,事故が起こる前に事故の未然防止 に役立つ可能性があることや,事故より件数が多く観測されるため有用と考えらえるため, 車両の急ブレーキ件数をヒヤリハットデータとして用いて分析を行った.地域DNA型交差点 では非優先側道路からの飛び出しなどにより,事故件数や急ブレーキの回数が多いことが考 えられるので,この危険性について検証を行った.さらに,既存研究4)では事故発生交差点 にのみ着目して分析を行っていたが,本研究では事故の発生していない交差点も分析の対象 とした. 3.2. 研究方法 本研究では,カーナビゲーションシステムの位置情報から得られる急ブレーキデータと埼 玉県警察事故原票を用いて分析を行った.分析は,対象交差点を路線から抽出して,分析期 間内に事故が発生していない交差点を含む全交差点対象とし,道路形成の経緯別にみた交差 点の危険を検証した. 3.2.1. 対象交差点抽出 分析では,対象地域を埼玉県南部(図 3.1 の枠の範囲)とし,その範囲から無作為に国 道・県道の幹線道路を選択した.分析対象とした幹線道路と範囲を表 3.1 に示す.これらの 路線上の全交差点の内,国土地理院が発行する 2.5 万分の 1 地形図において確認できる全て13 の交差点を対象とし,分析期間内に事故が発生していない無事故交差点を含め分析を行った. なお,国道・県道などの幹線道路同士の交差点は対象外とした. 3.2.2. 交差点情報の付加 交差点の危険性が,地域 DNA によるものではなく安全設備や規制の有無が関係しているこ とが考えられるため,この検証を行うために Google ストリートビューを用いて安全設備や 規制の有無を調べた.調べた項目は,幹線道路と生活道路の両方に共通する項目として信号 機・歩道・横断歩道,生活道路限定の項目として一方通行について調べ,対象交差点の現況 情報を付加した. 図 3.1 対象地域
14 表 3.1 対象路線・区間 道路名 対象範囲 県道 272 号 県道 113 号~国道 254 号 県道 79 号 内間木公民館前交差点~末無川交差点 県道 332 号 上青木交番交差点~本町三丁目交差点 県道 68 号 宮町交差点~戸田公園(西)交差点 国道 4 号 袋山交差点~綾瀬川交差点 県道 115 号 花田(西)交差点~草加市境 県道 110 号 蕨陸橋西交差点~仲町小学校西交差点 県道 35 号 芝スポーツセンター西交差点~川口陸橋下交差点 県道 111 号 蕨陸橋東交差点~上青木五丁目交差点 県道 89 号 川口陸橋下交差点~本町小学校前 国道 254 号 岡の坂交差点西~羽倉橋西交差点 県道 36 号 志木市役所前交差点~膝折町 4 丁目交差点 県道 266 号 みずほ台駅入口交差点~東入間警察署入口交差点 県道 113 号 南古谷駅前交差点~志木市境 県道 335 号 南古谷駅前交差点~亀久保交差点 県道 112 号 本町 4 丁目交差点~朝霞駅東口入口交差点 県道 236 号 蕨駅入口~大前交差点 3.2.3. 道路形成経緯の付加 対象交差点を,道路形成史の観点から分類を行っていく.国土地理院の二万五千分の一の 地形図を利用した.20 年間隔で古地図を見ていき,生活道路,幹線道路それぞれが作られ た時期を調べ,先に生活道路が作られたものを地域 DNA 分断型,幹線道路が先に作られたも のを非地域 DNA 型とした.20 年間でどちらの道路も作られていたものは「同時期型」とし た.次に幹線道路の拡幅に着目し,交差点形成後に幹線道路が拡幅された交差点を地域 DNA 拡幅型と定義した(図 3.2). 表 3.2 の道路形成経緯分類例では,地域 DNA 分断型は,大正 13 年の地図では生活道路の みが存在しているが,昭和 33 年の地図では幹線道路も存在していることから生活道路が幹 線道路の整備により分断されたため地域 DNA 分断型交差点となる.地域 DNA 拡幅型の例では, 昭和 20 年の地図では,幹線道路と生活道路が形成されておりこの時点では同時期型である が,昭和 53 年の地図では幹線道路が拡幅されているため地域 DNA 拡幅型交差点となる.同 時期型の例では,昭和 20 年の交差点形成から現在まで幹線道路の拡幅は見られないため同 時期型交差点となる.非地域 DNA 型の例では,大正 13 年には幹線道路のみが存在している が昭和 33 年に生活道路が形成され交差点が形成されたため非地域 DNA 型交差点となる.
15 図 3.2 道路形成の経緯別分類 表 3.2 道路形成経緯分類例 生活道路のみ存在 幹線道路のみ存在 生活道路・幹線道路と もに存在 生活道路・幹線道路 ともに存在 交差点が形成 交差点が形成 幹線道路が拡幅 幹線道路に変化無し
16 3.2.4. 事故データの付加 本研究では,平成 19 年から平成 24 年までの埼玉県警察の事故原票データを用いた.埼玉 県警察では平成 18 年から交通事故原票に緯度経度データの記載を開始したため,この緯度 経度データから,地点情報を付加した交通事故分析を行うことが可能になった. 幹線道路と生活道路の交差点において発生した交通事故を対象とするため車道幅員から対 象交差点を絞った.本研究では車道幅員 5.5m 以下の道路を生活道路と定義し,車道幅員 5.5m 以下の道路とそれを超える幅員の道路との交差点を対象とした.埼玉県警察の事故原 票から対象の事故抽出条件は表 3.3 の通りである.なお表中の「抽出内容」において, 『小』は車道幅員 5.5m 以下の道路,『中』は車道幅員 5.5m 以上 13m 未満の道路,『大』が 車道幅員 13m 以上の道路を意味する.この抽出条件以外の事故のみが発生している交差点は 分析対象外とし,事故が発生していない交差点は無事故交差点として扱った. 表 3.3 対象事故抽出条件 3.2.5. 急ブレーキデータの付加 本研究では,自動車の急ブレーキデータとして,本田技研工業株式会社がカーナビゲーシ ョンシステム「インターナビ」の GPS 情報から作成した,減速発生地点情報(経度,緯度, 方位,減速度,発生日時等の情報を有している)を利用している.データ期間は平成 23 年 6 月 1 日から平成 24 年 5 月 31 日までである.減速度は,連続する走行情報の車速(km/h)か ら減速度(G)を算出されている.なお,0.3G 以上の減速度を検出したものを急減速と定義し ている. このデータを株式会社ケー・シー・エスの交通情報管理解析システム「Protanas」を用い て扱った.交差点手前 30m 以内で発生した急減速を抽出し,交差点付近での急減速して扱う こととした.この内,進行方向が交差点から離れる方向のデータは削除した.次に,急減速 発生位置から交差点までの距離を上記のシステム上で計測し,計測された値をデータに付加 した. 2.2.6 交通量の付加 交差点ごとの事故件数,急ブレーキ発生回数を比較するための標準化に,幹線道路の交通 量を用いた.幹線道路の交通量として 24 時間上下交通量を平成 22 年度道路交通センサスを 利用し付加した.これを用いて 1 万台当たりの年間平均回数・件数として算出した.なお, 生活道路側の交通量は本研究では考慮できていない.
17 3.3. 分析結果 3.3.1. 分析対象交差点数 表 3.4 は対象とした交差点 431 カ所道路形成の経緯別交差点数を示したものである.図 3.3 に示す通りこのうち,事故発生交差点は 309 カ所(地域 DNA 分断型交差点 45 カ所,地 域 DNA 拡幅型 106 カ所,同時期型 77 カ所,非地域 DNA 型交差点 81 カ所),無事故交差点は 122 カ所(地域 DNA 分断型交差点 7 カ所,地域 DNA 拡幅型 19 カ所,同時期型 37 カ所,非地 域 DNA 型交差点 59 カ所)であった.地域 DNA 分断型と地域 DNA 型拡幅型は事故発生交差点 比率が他の道路形成経緯の交差点と比較して高いことが示された. 表 3.4 道路形成経緯別対象交差点数 地域 DNA 分断型 地域 DNA 拡幅型 同時期型 非地域 DNA 型 合計 交差点数 52 125 207 172 431 図 3.3 道路形成経緯別事故発生交差点比率 45 106 77 81 7 19 37 59 0% 20% 40% 60% 80% 100% 地域DNA 分断型 (N=52) 地域DNA 拡幅型 (N=125) 同時期型 (N=114) 非地域 DNA型 (N=140) 事故発生交差点数 無事故交差点数
18 3.3.2. 道路形成の経緯別比較 図 3.4,及び,図 3.5 は,道路形成の経緯別に平均急ブレーキ回数,平均事故件数を示 したグラフである.平均急ブレーキ回数および平均事故件数とも地域 DNA 拡幅型が最も高く, 地域 DNA 分断型がこれに続くという結果になった.平均急ブレーキ回数の地域 DNA 拡幅型は, 同時期と非地域 DNA に対し有意水準 5%で平均値が大きいことが検定から示された.また平 均事故件数では,地域 DNA 分断型は非地域 DNA 型に対し有意水準 5%で,地域 DNA 拡幅型は 同時期型と非地域 DNA 型に対し有意水準 1%で平均値が大きいことが示された.このことか ら,地域 DNA 型交差点の危険性が急ブレーキと事故の両面から確認することが出来た. 図 3.4 道路形成経緯別平均急ブレーキ回数比較 図 3.5 道路形成経緯別平均事故件数比較 5.00 5.77 3.73 3.59 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 平均急ブレーキ回数 交通量 1 万台 /日 あたり 年平 均急 ブレ ーキ 回数 地域DNA 分断型 (N=52) 地域DNA 拡幅型 (N=125) 同時期型 (N=114) 非地域 DNA型 (N=140) 0.52 0.64 0.42 0.37 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70 平均事故件数 交通量 1 万台 /日 あたり 年平 均事 故件 数 地域DNA 分断型 (N=52) 地域DNA 拡幅型 (N=125) 同時期型 (N=114) 非地域 DNA型 (N=140)
19 図 3.6 は,減速度を 0.5G ごとに集計し道路形成の経緯別に比較したグラフである.地域 DNA 分断型において 0.35G 以上の強い減速度の比率が高いことが示された.しかし比率の差 の検定を行ったところ有意差は確認されなかった. 図 3.6 減速度別急ブレーキ比率 図 3.7 は,急ブレーキが発生した位置から交差点までの距離を 5m ごとに集計し道路形成 の経緯別に比較したグラフである.同時期型において,10m 未満の近い距離での急ブレーキ 比率が高いことが示された.これについて比率の差の検定を行ったところ,他の 3 種の交差 点に対して有意水準 1%で高い比率であることが確認された. 図 3.7 交差点距離別急ブレーキ比率 77.2% 80.9% 79.6% 80.7% 17.0% 14.6% 15.2% 14.8% 4.2% 3.4% 3.7% 3.4% 1.3% 0.4% 1.0% 0.9% 0.3% 0.7% 0.4% 0.2% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 地域DNA 分断型 (N=52) 地域DNA 拡幅型 (N=125) 同時期型 (N=114) 非地域 DNA型 (N=140) 0.3G以上0.35G未満 0.35G以上0.4G未満 0.4G以上0.45G未満 0.45G以上0.5G未満 9.8% 10.9% 11.3% 8.0% 10.8% 10.2% 13.4% 13.3% 16.1% 13.8% 16.1% 16.7% 18.6% 16.6% 18.5% 19.1% 21.9% 23.2% 21.3% 23.0% 22.8% 25.3% 19.4% 19.9% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 地域DNA 分断型 (N=52) 地域DNA 拡幅型 (N=125) 同時期型 (N=114) 非地域 DNA型 (N=140) 0m以上5m未満 5m以上10m未満 10m以上15m未満 15m以上20m未満 20m以上25m未満 25m以上30m以下
20 図 3.8 は,事故原票の道路幅員から第一当事者が生活道路と幹線道路のどちらを通行し ていたかを示したグラフである.不明の割合が 5 割を超えている.不明を除き,生活道路を 通行していた割合を見ると,地域 DNA 拡幅型が最も高く,地域 DNA 分断型がこれに続いてお り地域 DNA 型交差点では生活道路を通行している側が第一当事者になっていることが多いこ とが示された. 図 3.8 第一当事者通行別事故比率 図 3.9 は,事故を死亡事故・重傷事故・軽傷事故と死傷程度別に集計したグラフである. 同時期型では,死亡事故が高いが重傷事故が低い割合となっているが,他の道路形成経緯の 交差点での比率はほぼ横ばいとなっており,道路形成の経緯とは無関係であることが示され た. 図 3.9 死傷程度別事故比率 28.7% 32.2% 27.5% 26.1% 17.7% 16.3% 18.9% 20.7% 53.6% 51.5% 53.7% 53.2% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 地域DNA 分断型 (N=52) 地域DNA 拡幅型 (N=125) 同時期型 (N=114) 非地域 DNA型 (N=140) 生活道路通行 幹線道路通行 不明 0.7% 0.7% 2.3% 1.0% 14.4% 13.9% 10.3% 14.2% 84.9% 85.3% 87.4% 84.9% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 地域DNA 分断型 (N=52) 地域DNA 拡幅型 (N=125) 同時期型 (N=114) 非地域 DNA型 (N=140) 死亡事故 重傷事故 軽傷事故
21 図 3.10 は,事故類型から車両相互事故・人対車両事故・車両単独事故の 3 つに分類した グラフである.地域 DNA 分断型では車両相互事故が 9 割を超え,他と比較して高い値である ことが示された.また,非地域 DNA 型では人対車両事故が多い傾向が示された. 図 3.10 車両相互・人対車両・車両単独事故比率 3.3.3. 回帰分析による要因分析 急ブレーキ回数と事故件数をそれぞれ被説明変数とし,説明変数に地域DNA分断型ダミ ー・地域DNA拡幅型ダミー・幹線道路の24時間上下交通量・現況調査で調べた安全設備や規 制の有無をダミー変数(表 3.5)として用いて回帰分析を行った. 表 3.5 回帰分析の変数と説明 変数 説明 地域 DNA 分断型ダミー 先に形成された生活道路が幹線道路によって分断された (ある場合1,ない場合 0) 地域 DNA 拡幅型ダミー 交差点形成後に幹線道路が拡幅された (ある場合1,ない場合 0) 幹線道路交通量(台) 幹線道路の 24 時間上下交通量 幹線道路信号機ダミー 幹線道路に設置されている信号機 (ある場合1,ない場合 0) 幹線道路横断歩道ダミー 幹線道路に設置されている横断歩道 (ある場合1,ない場合 0) 幹線道路歩道ダミー 幹線道路に設置されている歩道 (ある場合1,ない場合 0) 生活道路信号機ダミー 生活道路に設置されている信号機 (ある場合1,ない場合 0) 生活道路横断歩道ダミー 生活道路に設置されている横断歩道 (ある場合1,ない場合 0) 生活道路歩道ダミー 生活道路に設置されている歩道 (ある場合1,ない場合 0) 一方通行ダミー 生活道路に設置されている一方通行 (ある場合1,ない場合 0) 91.0% 82.6% 84.6% 77.6% 8.9% 16.8% 15.0% 22.0% 0.1% 0.7% 0.4% 0.4% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 地域DNA 分断型 (N=52) 地域DNA 拡幅型 (N=125) 同時期型 (N=114) 非地域 DNA型 (N=140) 車両相互事故 人対車両事故 車両単独事故
22 上記の変数を用いた,急ブレーキ回数,及び,事故件数に関する分析結果について見てい く. 急ブレーキ回数に関する分析結果(表 3.6)では,P 値が 0.05 以下の有意な変数は,「地 域 DNA 分断型ダミー」,「幹線道路交通量」,「幹線道路信号機」,「生活道路信号機」 の 4 つである.いずれも正の係数であることから急ブレーキ回数増加の要因であることが示 された. 表 3.6 急ブレーキ回数に関する回帰分析結果 次に事故件数に関する分析結果(表 3.7)をみていく.P 値が 0.05 以下の有意な変数は, 「地域 DNA 型分断型ダミー」,「地域 DNA 拡幅型ダミー」,「幹線道路交通量」,「幹 線道路横断歩道」,「生活道路横断歩道」の 5 つである.急ブレーキ回数同様,正の係数で あることから,事故件数増加の要因であることが示された. 以上の結果から地域 DNA が急ブレーキと事故を増加させる要因となっていることが示さ れた. 急ブレーキ回数 回帰統計 重相関 R 0.520361 分散分析表 重決定 R2 0.270776 自由度 変動 分散 観測され た分散比 有意 F 補正 R2 0.253413 回帰 10 16827.61 1682.761 15.59544 7.64E-24 標準誤差 10.38753 残差 420 45318.34 107.9008 観測数 431 合計 430 62145.95 係数 標準誤差 t P-値 下限 95% 上限 95% 下限 95.0% 上限 95.0% 切片 -2.1417 2.183034 -0.98107 0.327125 -6.43274 2.149332 -6.43274 2.149332 地域DNA分断型ダミー 5.730232 1.751361 3.271874 0.001157 2.287708 9.172756 2.287708 9.172756 地域DNA拡幅型ダミー 1.158825 1.164771 0.994895 0.32036 -1.13068 3.448332 -1.13068 3.448332 幹線道路交通量(台) 0.000283 5.21E-05 5.423865 9.87E-08 0.00018 0.000385 0.00018 0.000385 幹線道路信号機ダミー 6.361045 1.983037 3.207729 0.00144 2.463132 10.25896 2.463132 10.25896 幹線道路横断歩道ダミー -0.11692 1.548602 -0.0755 0.939851 -3.1609 2.927053 -3.1609 2.927053 幹線道路歩道ダミー 0.33304 2.112174 0.157676 0.874788 -3.81871 4.484789 -3.81871 4.484789 生活道路信号機ダミー 4.68969 2.092535 2.241152 0.025538 0.576543 8.802836 0.576543 8.802836 生活道路横断歩道ダミー 0.644511 1.593908 0.404359 0.686155 -2.48852 3.777543 -2.48852 3.777543 生活道路歩道ダミー -1.26152 1.386785 -0.90967 0.363518 -3.98742 1.464387 -3.98742 1.464387 一方通行ダミー -2.61462 1.42019 -1.84104 0.066321 -5.40619 0.176944 -5.40619 0.176944
23 表 3.7 事故件数に関する回帰分析結果 3.3.4. 交差点形成時期に着目した分析 ここでは,交差点が形成された時期について着目した分析結果をみていく.なお,幹線道 路が拡幅された交差点については,拡幅されたときを形成時期とした.まず,交差点形成時 期別に事故発生交差点数比率を見ると,昭和 50 年から平成 5 年までに形成された交差点で 事故発生交差点比率が低くなっているが,他の時期ではほぼ横ばいとなっており,交差点形 成時期と事故発生交差点比率との間に関係は見られない(図 3.11). 図 3.11 交差点形成時期別事故発生交差点比率 事故件数 回帰統計 重相関 R 0.553818 分散分析表 重決定 R2 0.306715 自由度 変動 分散 観測され た分散比 有意 F 補正 R2 0.290208 回帰 10 2519.036 251.9036 18.58111 3.07E-28 標準誤差 3.68198 残差 420 5693.929 13.55697 観測数 431 合計 430 8212.965 係数 標準誤差 t P-値 下限 95% 上限 95% 下限 95.0% 上限 95.0% 切片 1.288086 0.773802 1.664621 0.096734 -0.23292 2.809093 -0.23292 2.809093 地域DNA分断型ダミー 2.770816 0.62079 4.463372 1.04E-05 1.550574 3.991058 1.550574 3.991058 地域DNA拡幅型ダミー 1.218846 0.412866 2.952156 0.003333 0.407304 2.030388 0.407304 2.030388 幹線道路交通量(台) 8.99E-05 1.85E-05 4.864638 1.62E-06 5.36E-05 0.000126 5.36E-05 0.000126 幹線道路信号機ダミー 0.563779 0.70291 0.802064 0.42297 -0.81788 1.945439 -0.81788 1.945439 幹線道路横断歩道ダミー 1.255273 0.54892 2.286807 0.022704 0.176301 2.334245 0.176301 2.334245 幹線道路歩道ダミー -1.27681 0.748684 -1.70541 0.088857 -2.74845 0.194821 -2.74845 0.194821 生活道路信号機ダミー -0.37066 0.741723 -0.49973 0.617524 -1.82862 1.087288 -1.82862 1.087288 生活道路横断歩道ダミー 2.053335 0.564979 3.634355 0.000313 0.942796 3.163874 0.942796 3.163874 生活道路歩道ダミー 0.878996 0.491562 1.78817 0.074469 -0.08723 1.845224 -0.08723 1.845224 一方通行ダミー 0.676703 0.503402 1.344259 0.17959 -0.3128 1.666206 -0.3128 1.666206 34 40 196 39 14 15 73 20 0% 20% 40% 60% 80% 100% 大正 昭和初期以前 (N=48) 大正、昭和初期 ~昭和30年頃 (N=55) 昭和30年頃~ 昭和50年頃 (N=269) 昭和50年頃~ 平成5年頃 (N=59) 事故発生交差点数 無事故交差点数
24 次に,図 3.12,及び図 3.13 は,交差点形成時期別に平均急ブレーキ回数と平均事故件 数を示したものである.昭和初期から昭和 50 年頃にかけて形成された交差点では急ブレー キ回数と事故件数ともに低い値となっている傾向がみられた. 図 3.12 交差点形成時期別急ブレーキ回数 図 3.13 交差点形成時期別平均事故件数 3.3.5. 道路形成時期差に着目した分析 次に,生活道路と幹線道路の形成された時期に着目した分析結果について見ていく.道路 形成時期差は以下の式の通り,幹線道路の形成された年から生活道路が形成された年を差し 引く形で算出した.幹線道路が拡幅された場合には,拡幅された年を用いた. (幹線道路の形成年)-(生活道路の形成年) = 道路形成時期差 4.75 3.05 4.22 6.44 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 平均急ブレーキ回数 交通量 1 万台 /日 あたり 年平 均急 ブレ ーキ 回数 大正 昭和初期以前 (N=48) 大正、昭和初期 ~昭和30年頃 (N=55) 昭和30年頃~ 昭和50年頃 (N=269) 昭和50年頃~ 平成5年頃 (N=59) 0.62 0.39 0.46 0.53 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70 平均事故件数 交通量 1 万台 /日あ たり 年平均 事故件 数 大正 昭和初期以前 (N=48) 大正、昭和初期 ~昭和30年頃 (N=55) 昭和30年頃~ 昭和50年頃 (N=269) 昭和50年頃~ 平成5年頃 (N=59)
25 まず,道路形成時期差別に事故発生交差点数比率を見ると,生活道路が形成されてから, 幹線道路が形成されるまでの期間が長い程,全体の交差点の内,事故が発生している交差点 の比率が高いことが示された(図 3.14). 図 3.14 道路形成時期差別事故発生交差点比率 次に,図 3.15 と図 3.16 は,交差点形成時期別に平均急ブレーキ回数と平均事故件数を 示したものである.生活道路が形成されて幹線道路が形成されるまでの期間が長い交差点で は急ブレーキ回数と事故件数ともに高い値となっている傾向がみられた. 図 3.15 道路形成時期差別平均急ブレーキ回数 66 85 109 21 28 13 13 45 16 35 0% 20% 40% 60% 80% 100% 40年以上 生活道路先 (N=79) 1~40年 生活道路先 (N=98) 同時期 (N=154) 1~40年 幹線道路先 (N=37) 40年以上 幹線道路先 (N=63) 事故発生交差点数 無事故交差点数 5.53 5.56 3.54 2.82 4.41 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 平均急ブレーキ回数 交通量 1 万台 /日 あたり 年平 均急 ブレ ーキ 回数 40年以上 生活道路先 (N=79) 1~40年 生活道路先 (N=98) 同時期 (N=154) 1~40年 幹線道路先 (N=37) 40年以上 幹線道路先 (N=63)
26 図 3.16 道路形成時期差別平均事故件数 3.4. 地域 DNA 型交差点の危険性に関する検討のまとめ 本研究では無事故交差点を含む全交差点を対象に地域 DNA 型交差点の危険性検証の分析を 行った.分析からは,地域 DNA 分断型,地域 DNA 拡幅型の危険性が急ブレーキ回数と事故件 数の両面から確認することができた.また,急減速度から地域 DNA 分断型の危険性が確認さ れた.さらに,地域 DNA を持つ交差点では第一当事者が生活道路を通行している場合が多い ことが示された.急ブレーキ回数と事故件数の回帰分析から,地域 DNA が危険性の要因とな っていることが示された. また,交差点形成時期からは交差点の危険性は確認されなかったが,道路時期差からは生 活道路が形成されて幹線道路が形成されるまでの期間が長い程危険であることが示された. 以上のことから,交差点の事故危険性には,交差点の形成の経緯が影響することが考えら れることから,個々の地域性を踏まえて,事故対策を実施することが必要であると考えられ る. 0.58 0.62 0.47 0.26 0.27 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70 平均事故件数 交通量 1 万台 /日あ たり 年平均 事故件 数 40年以上 生活道路先 (N=79) 1~40年 生活道路先 (N=98) 同時期 (N=154) 1~40年 幹線道路先 (N=37) 40年以上 幹線道路先 (N=63)
27
第4章
事故危険交差点におけるモビリティ・マネジメントによる検討
4.1. 既存研究と本研究の位置付け 前節まで,交通行動の地域性と発生事故の関連性についてみてきた.本章では,歩道橋が あるにも関わらず,歩行者,自転車による乱横断が多く発生している,事故危険交差点にお いて,モビリティ・マネジメント(MM)を利用した交通安全対策を実施した結果について見 ていく. MM とは,社会心理学の要素を取り入れたコミュニケーション技術を用いた施策であり, 本来は車利用者の自発的な交通行動変化を望む施策である7)8)9).これまで,いくつかの事例 において,交通事故対策に MM が利用されており,その効果が見られている.小嶋ら10)の研 究では,生活道路の抜け道ドライバーに対して,沿道住民への迷惑と抜け道利用のメリット の小ささを知らせるパンフレット,及び抜け道をしない行動プランを立てるアンケートを配 布しており,対象道路で交通量が減少する効果が見られている.また,府中ら11)による,速 度超過による周囲への迷惑を知らせるパンフレット,及び自らの走行を見直す行動プランを 立てるアンケートの配布,さらに速度超過ドライバーに対して個別に走行速度の表示を行っ た,速度 MM 実験では,コミュニケーションを行ったドライバーは,およそ実験1ヶ月後ま で,走行速度を落とすという結果が得られている. 本研究では,MM の手法を歩行者に対して適用し,地域の危険な行動を抑止する,新たな 交通事故対策のとしての可能性を検証する.研究に当たっては,平成 24 年度に埼玉県戸田 市で実施された,歩道橋 MM 実験に改良を加える形で実験を行った.ここでは,埼玉県戸田 市内の交通事故多発地点である路線において,乱横断を行っている住民に対し,歩道橋の利 用を促進するなど,安全に横断するよう訴えるための「歩道橋 MM」実験が実施されており, この実験を改良することで,住民の交通安全意識及び交通行動の変化について検証を行った. 4.2. 実験内容 4.2.1. 実験対象地区 本実験対象地区は埼玉県戸田市を走る埼玉県道 68 号練馬川口線にかかる戸田市本町歩道 橋である. 本研究対象地域の戸田市本町を走る主要地方道練馬川口線(県道 68 号)では, 過去に走行中の自動車同士,また歩行者・自転車と自動車が接触する交通事故が多発してい ることから,早急な対応が求められている.そこで平成 24 年度,県道 68 号線を対象とした 交通事故対策のワークショップを官民学の三者が連携して開催し,安全な道路を実現するた めに交通対策の検討が行われた.28 図 4.1 戸田市本町歩道橋の位置 ワークショップの中で挙げられた問題箇所のうち,戸田市本町歩道橋下の交差点は歩道橋 があるにもかかわらず,県道を横断する歩行者・自転車が非常に多く,県道を走行する自動 車との接触事故が危ぶまれている.過去には横断中の歩行者と自動車による重傷事故も発生 している.また地元住民に歩道橋を利用するという習慣が見られないため,安全対策として 歩道橋の利用を促進することが必要である. 平成 24 年度の実験では,MM 実験後のアンケート調査により地域住民に対象地点での道路 の横断が危険であるという意識付けができたことを確認できたが,実態調査では,実際に歩 道橋を利用している人は数少なく,さらにパンフレットを見て歩道橋を利用する人は確認で きなかった.本実験では,平成 24 年度年度に引き続き,対象箇所において周辺住民に歩道 橋の利用を促進するべく,新たなモビリティ・マネジメントの手法を用いて周知し,その後 の歩道橋利用への効果を検証することを目的とした. 写真 4- 1 戸田市本町歩道橋の様子 戸田市本町歩道橋 戸田公園駅 戸田南 小学校
29 4.2.2. 実験スケジュール 実験のスケジュールを表 4.1に示す. 表 4.1 実験スケジュール 実験 交通調査 実験前 ■事前調査 ビデオ観測調査 1 月 27 日(月):7:00~5:00 実験中 ■学校にてパンフレットの 配布,歩道橋利用の説明 1 月 31 日(金):午後 ■各世帯へコミュニケーシ ョンツールの配布 2 月 6 日(水):13:00~16:00 ■歩道橋周辺でのコミュニ ケーションツールの配布 2 月 14 日(水):15:30~17:30 実験後 ■事後調査 ビデオ観測調査(5 日間) 2 月 18 日(火):7:00~5:00 2 月 21 日(金)~2 月 26 日(水) 【土日を除く】:7:00~5:00 ヒアリング調査(5 日間) 2 月 18 日(火):7:00~5:00 2 月 21 日(金)~2 月 26 日(水) 【土日を除く】:7:00~5:00 ■実験結果の分析と評価 4.2.3. 本実験への MM におけるコミュニケーション技術の利用 MM とは「ひとり一人のモビリティ(移動)が,社会的にも個人的にも望ましい方向に自発 的に変化することを促す,コミュニケーションを中心とした交通政策」と定義され,車の利 用に対して行われる施策である.また MM は個別的に,ひとり一人の意識に働きかけること を重視して行われるものであり,そのコミュニケーション技術が非常に重要である. 主として自動車利用を公共交通に転換してもらうことを目的とする MM 施策において用い られるコミュニケーション技術のうち,本研究ではその技術を車利用ではなく,日常生活の 歩行時における歩道橋の利用促進に活用できる手法として(1)事実情報提供法,(2)依頼法, および(3)行動プラン法の 3 つを用いることとした.以上の 3 つの手法を利用し,歩行者・ 自転車利用者に対して歩道橋利用または横断歩道のある地点での横断してもらうよう働きか けを行った.それぞれのコミュニケーション技術について,通常の MM で用いられる手法と 歩道橋 MM における利用方法の対応表を表 4.2 に示す.
30 表 4.2 本実験へのコミュニケーション技術の利用方法 コミュニケー ション技術 MMにおける手法 歩道橋 MM 実験における利用方法 事実情報 提供法 公共交通の路線図や時刻表 の情報を伝えてクルマから 公共交通への転換を促した り,クルマの使用による環 境問題を伝えることで道徳 意識に働きかけたりする. 過去に発生した交通事故の情報と,現在横 断者のほとんどが歩道橋を利用せずに道路 を横断しているという事実を伝えること で,対象交差点での横断が危険であるとい うことを示す. 歩道橋を使わず,道路を横断することが危 険であることを客観的に見てもらうため に,対象地点の危険な道路横断の様子を 撮影した横断動画 DVD を作成し,地域 住民と道路横断者に視聴してもらう. 道路を横断する際の待ち時間を含めた所要 時間と,歩道橋を利用した際の所要時間の 比較を示し,歩道橋を利用する方が早く横 断できる場合があることを示す. 運動を継続して行った場合,運動をしない 場合より健康なからだになれることを示 し,運動の一環としての歩道橋利用を促 す. 依頼法 「 ク ル マ の か し こ い 使 い 方」を呼びかける. 戸田市本町歩道橋を利用してもらうこと, もしくは横断歩道のある地点で横断をして もらうよう呼びかける. 行動 プラン法 「いつ,どこで,どのよう に行動を変えるのか」を尋 ね,その具体的内容の記述 を要請する.具体的な実行 意図を形成する. アンケート票にて普段の横断頻度を聞き, 歩道橋利用に転換した際の 1 ヶ月に消費す るカロリーを計算してもらう. さらに今後の横断をどのようにするかを尋 ねる. 4.2.4. コミュニケーションツールの配布 本実験では,歩道橋利用を訴えるための手段として,昨年度と同様,対象交差点の現状や 道路横断と歩道橋利用の横断時間の比較などを示した自覚促しパンフレット,行動プラン法 を加えたアンケート票の 2 点と,今回新たに対象地点の危険な道路横断の様子を撮影した横 断動画 DVD をコミュニケーションツールとした.DVD を再生できない家庭があることも考慮 して,動画サイトに投稿し,動画の映像を紙面に印刷した「DVD 概要版」を作成し同封した. またアンケート票の回収の為,返信用封筒を同封した.こうして完成したコミュニケーショ ンツールを対象交差点利用者に配布を行うため,①小学校での説明会,②歩道橋周辺での配 布,③実験対象地区へのポスティング配布を行った.以下にそれぞれの概要を説明する. ① 小学校での説明会 本実験ではまず,協力していただく教育現場として,昨年ワークショップに参加をしてい た戸田南小学校に依頼をした.さらに戸田南小学校の児童は戸田市本町歩道橋を通学路とし
31 ており,多くの児童が利用していることも依頼した要因の一つである.学校には,小学 4 年 生を対象に,歩道橋利用に関する交通安全について説明会を行わせていただくことで了承を いただいた.説明会は 2014 年 1 月 31 日(金)に小学校を訪問し,15 分程度の説明を 4 クラ ス回ることで行った. 本説明会の狙いは,小学生に歩道橋利用の教育をすることはもとより,学校で学んだ知識 を家で保護者に説明してもらうことにある.これは,通常のポスティングや配布ではなく, 子供の口から保護者に訴えることで,保護者を MM 施策により参加させるという狙いである. 児童への説明では,自覚促しパンフレットに記載した内容と横断動画 DVD をパワーポイント にて発表を行い,その最後に保護者に直接話をしてもらうようお願いをした.また説明を聞 いた全児童にはコミュニケーションツールを配布し,保護者に読んでもらうよう重ねてお願 いをした. ② 歩道橋周辺での配布 戸田市本町歩道橋下を横断しようとしている歩行者,自転車に対し,コミュニケーション ツールの手渡しでの配布を行い,歩道橋の利用を訴えた. ③ 実験対象地区へのポスティング コミュニケーションツールは小学校での配布,歩道橋周辺での直接配布に加え,対象歩道 橋周辺の地区にポスティングを行った.ポスティングの対象としたのは,対象交差点を普段 よく利用すると考えられる,住宅と駅の間に歩道橋がある世帯を対象にした.(図 4.2) 図 4.2 対象地区へのポスティング範囲
32 以上のように,コミュニケーションツールは 3 つの手段で配布を行った.表 4.3 にアンケ ートの配布回収概要を示す.なお,小学生へ配布したコミュニケーションツールと,ポステ ィングを行ったコミュニケーションツールにはアンケートを 2 部ずつ封入した. 表 4.3 アンケート票の配布回収概要 4.2.5. 交通調査概要 歩道橋 MM 実験の効果を検証には,アンケート票による意識調査に加え,実際の横断状況 を把握するため,ビデオ観測による横断者実態調査を行った.調査を行ったのは歩道橋 MM 実験前の 2014/1/31(金)の1日と実験後の 2014 年 2/18(火)と 2/21(金)~2/26(水)(土日を 除く)の 5 日間行い,時間は通勤時間帯を含む 7:00~17:00 に行った. また,歩道橋 MM 実験後はビデオ観測調査と同時に歩道橋利用者に対して,ヒアリング調 査を行った.ヒアリング内容は,①コミュニケーションツール(パンフレットと DVD)を見 たことがあるか,②歩道橋を以前から利用していたか,パンフレット,横断動画 DVD,及び 関連の活動をきっかけに,歩道橋を利用するようになったかの2点である. 4.3. 実験結果 4.3.1. アンケート調査による歩行者の横断行動の意識変化 配布を行ったアンケート票では,前述の行動プランの記入の他に,普段の対象交差点の横 断頻度や横断手段など,さらに自覚促しパンフレットを受けての交通安全や健康に対する意 識などについても尋ねた.ここでは,回収したアンケート票の結果から歩行者や自転車利用 者に対する交通事故対策としての MM の効果を分析する.また,昨年度のアンケート結果と 比較して,継続して取り組みを行うことで効果がみられるか検証を行う. (1) 普段の交差点の横断 対象交差点を歩いて横断する際,どのように横断をしているかという問いでは,48%がい つも道路上を横断していると回答した.歩道橋をたまに横断している人と合わせると 84%で あり約 8 割が普段道路上を横断していることがわかった(図 4.3).昨年のアンケート結果 と比べると,昨年はいつも道路を横断していると回答した人が 60%(n=145)だったので,常 に利用するわけではないが,歩道橋を利用しする人が増えたと考えられる. 配布部数 回収部数 回収率 小学校での配布 264 144 54.5% ポスティング 1230 歩行者配布 86 合計 1580 221 14.0% 77 5.9%
33 いつも歩道橋 利用している 16% たまに歩道橋 利用している 36% いつも道路を 横断している 48% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 凡例 n=105 歩いて横断するとき、どのように横断していますか? 図 4.3 対象交差点の横断方法 (2) 今後の意識変化 自覚促しパンフレットや横断動画 DVD で周知した,歩道橋下の横断が危険であることを受 け,今後の横断の際には交通安全の面でどのように考えるかを尋ねたところ,一番多い意見 は「今までより気を付ける」で 63%であった.「今までと同じように気を付ける」と回答し た人は 36%であり,合計 99%が今後横断する際は気を付けると回答した(図 4.4).昨年の アンケート結果と比べると,昨年は 98%(n=211)の人が今後横断する際は気を付けると回答 していたので,昨年と同等な結果が得られた. DVD の視聴有無別で検証すると,「今までより気を付ける」という回答が DVD 視聴した人 の方が高い割合を占めていることが分かった(図 4.5) .以上より,横断動画 DVD を視聴し てもらうことで交通安全面での意識変化が見られることが分かった. 今までより 気を付ける 63% 今までと同じように 気を付ける 36% 特に気を付けはし ない 1% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 凡例 n=215 今後横断するとき、交通安全の面で どうしようと思いますか? 図 4.4 今後の交通安全面での意識変化
34 今までより 気を付ける 63% 50% 74% 39% 今までと同じように 気を付ける 35% 50% 26% 43% 特に 気を付けはしない 1% 0% 0% 4% 無回答 1% 0% 0% 13% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 凡例 DVDで観た(n=128) 動画サイトで観た (n=20) 紙面【DVD概要版】 で観た(n=42) 観ていない(n=23) 図 4.5 今後の交通安全面での意識変化(DVD 視聴有無別) (3)今後の歩道橋の利用意向 今後の戸田市本町歩道橋の利用意向について尋ねたところ「常に歩道橋を利用する」と回 答した人は 25%あった.「できるだけ歩道橋を利用する」と回答した人は 34%であり,対象 地点での横断をやめ,「横断歩道のある他の地点で横断する」と回答した人は 33%でとなっ た.「歩道橋は利用せず,道路を横断する」と回答した人は 8%であり,残りの 92%の人は今 後の横断で行動を変化させる意思があることがわかった(図 4.6).昨年のアンケート結果 と比べると,昨年は「歩道橋は利用せず,道路を横断する」と回答した人が 20%(n=216)だ ったので,昨年より行動を変化させる意向がある人の割合が高いことが分かった. 交通安 全面での意識変化と同様に,DVD 視聴有無別で検証したが,大きな差は見られなかった(図 4.7). 常に歩道橋を 利用する 25% できるだけ歩道橋 を利用する 34% 歩道橋は利用 せず、道路を 横断する 8% 横断歩道のある 他の地点で横断す る 33% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 凡例 n=216 今後、戸田市本町歩道橋の地点をどのように横断しますか? 図 4.6 戸田市本町歩道橋の今後の利用意向
35 常に歩道橋 を利用する 28% 20% 17% 29% できるだけ 歩道橋を利用する 39% 20% 38% 14% 道路を横断する 8% 15% 5% 10% 横断歩道のある ところで横断する 25% 45% 40% 48% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 凡例 DVDで観た(n=126) 動画サイトで観た (n=20) 紙面【DVD概要版】 で観た(n=42) 観ていない(n=21) 図 4.7 戸田市本町歩道橋の今後の利用意向【DVD 視聴有無別】 4.3.2. ビデオ観測による実際の横断状況調査 アンケート票にて行った意識調査に加え,実際の交差点の横断状況の変化を把握するため に行った,ビデオ観測調査についてその結果を図 4.8 に示す.ただし,25 日:16:00~ 16:30 と 26 日:14:35~15:05 に実験対象地区の近くの戸田中学校の教員による歩道橋利用 の指導が交差点にて行われており,道路横断しようとする中学生に対して注意し,歩道橋利 用を促された中学生も含まれている(25 日:60 人,26 日:70 人). また,指導を行っている教員に対して,ヒアリングしたところ,歩道橋 MM が始まる前か ら定期的に指導を行っていることが分かっている. 実験前と実験後を比較すると,道路上を横断する歩行者・自転車は,70 人ほど減ってい る日があることが分かった.毎日ではないが,他の横断歩道のある交差点を利用している可 能性が考えられる.歩道橋利用者に関しては,中学生に対しての指導が行われた日を除き, 大きな差は見られなかった. 921 847 903 947 844 878 497 485 461 413 452 467 39 32 34 30 88 102 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 道路横断(歩行者) 道路横断(自転車) 歩道橋利用者 *小学生は通学路として通行しているので除く *2/25,26は中学校の教員による歩道橋利用の指導あり (調査時間7:00~17:00) 図 4.8 ビデオ観測調査の結果
36 4.3.3. 歩道橋利用者に対するヒアリング調査結果 自覚促しパンフレットと横断動画 DVD の効果を検証するため,歩道橋を利用して横断して いる人に対し,ヒアリング調査を行った. ヒアリング調査では,5 日間で 92 人から回答を得ることができた.92 人のうち自覚促し パンフレットと道路横断 DVD の存在を知っていた人は 19 人であった.そのうち,10 人が以 前から歩道橋を利用しており,2 人が昨年のパンフレットを見て歩道橋を利用するようにな り,7 人が今年のパンフレットと横断動画 DVD を見てから歩道橋を利用するようになったと 回答が得られた. 昨年のヒアリング調査では,9:00~16:00 の 1 日しかヒアリング調査を行っておらず, パンフレットを見てから歩道橋を利用するようになった人はいなかったので,ヒアリング調 査期間を増やすことで自覚促しパンフレットと横断動画 DVD のコミュニケーションツールと しての有効性を確認することができた. 4.4. 歩道橋 MM 実験結果のまとめ 本研究では昨年度に引き続き,対象交差点において周辺住民に歩道橋の利用を促進するべ く,MM の手法を用いた検討を行った.その際,昨年度の手法に加えて,危険な横断実態を 示す動画の DVD を作成し,コミュニケーションツールとして配布した.その効果を検証する ため,配布したアンケート調査の結果,および横断実態調査から分析を行った.以下にその 結果をまとめる. ①周辺住民への意識調査 歩道橋 MM 実験で配布したアンケート票から,戸田市本町歩道橋の周辺に住む住民に対し, 歩道橋利用に関する意識を調査した.アンケートの結果から,回答者のおよそ 8 割が普段か ら道路上を歩いて横断していることがわかった.その理由としては,階段の昇り降りが面倒 または困難という意見が多くあった.つまり,歩道橋を利用する必要がないと考え,普段か ら道路上を横断しているということであり,それが習慣的な行動になっていると考えられる. 今後の横断に関しての意識としては,99%が今後横断する際は交通安全に気を付けて横断 すると回答しており,交通安全を意識するという面では大きな効果が得られた. こうして意識形成を行った上で今後の歩道橋利用について尋ねたところ,6 割弱が常にま たはできるだけ戸田市本町歩道橋を利用するようにすると回答した.さらに 3 割が道路の横 断をやめ,横断歩道のある地点で横断するようにすると回答しており,合計 9 割が今後の横 断において行動を変化させる意思があることがわかった.昨年から継続的に取り組みを行う ことで,昨年より行動を変化させる意思がある人が増えたと考えられる. ②横断実態調査 周辺住民に対する意識調査では,今後の横断で歩道橋を利用する人が増えることが見込ま れた.この住民が持った意識を実際に行動に移しているかを検証するため,ビデオ観測調査 とヒアリング調査による実態調査を行った.しかし結果は,MM 実験前と実験後の横断状況 と比較して差を見ることはできなかった.しかし,歩道橋を利用している歩行者に対してヒ アリングを行ったところ,歩道橋 MM の自覚促しパンフレットと横断動画 DVD を見てから歩 道橋を利用するようになった歩行者は,9 人確認された.このうち,昨年のパンフレットを
37 見てから歩道橋を利用するようになった人は 2 人確認しており,昨年では確認できなかった 行動の変化が,実態調査期間を増やしたことで確認することができた.このことから,若干 ではあるが,歩道橋利用促進に対して MM 手法の有効性を示すことができた. 今回で 2 回目の歩道橋 MM 実験では,昨年以上の歩道橋利用の意向が見られ,行動の変化 も若干ではあるが,確認できた.しかし,歩道橋 MM 実験後も歩道橋や他の横断歩道のある 交差点を利用せず,道路を横断する歩行者・自転車が多く見られ,改善されていないのが現 状である.ヒアリング調査により,歩道橋 MM が有効である可能性が見られたが,歩道橋利 用者の 8 割がコミュニケーションツールを知らない現状であったので,今後は,歩道橋周辺 での直接配布の期間を増やすなど,コミュニケーションツールの配布方法の検討が必要であ ると考えられる.