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「自動車産業の未来と中部圏~EV化の進展による構造変化~」

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第1章 エコカーの市場成長動向 1.エコカーを中心とする自動車市場動向に関する整理 始めに自動車の世界市場規模の推移をみる。 図表1−1−1は2000年以降の世界自動車販売台数の推移を示している。2000年前半 から2006年にかけて販売台数は順調に増加した。しかし2007年のいわゆる世界金融・ 経済危機1)の表面化以降,一転減少に転じ2009年は6年ぶりに6,000万台を割り込む 水準にまで縮小した。 また2010年には各国の景気対策効果と新興国市場の急成長により約7,200万台規模 にまで膨らんだと見込まれる。特に新興国の発展は目覚ましく,なかでも中国市場は 約1,800万台と米国の約1,200万台を大きく上回り2年連続で世界第1位となった。人 口規模からみた潜在需要力と経済の成長力からみて,中国自動車市場は当面急テンポ の拡大が見込まれるということで,世界自動車市場は一大転換点を迎えている。 次にハイブリッド車(以下HVとする)の販売状況に注目する。2008年9月のリーマ ンショック前後からのガソリン価格の急上昇と高額耐久消費財の購入意欲の冷え込み は,世界の自動車販売を大きく減少させた。その中で米国オバマ大統領のいわゆるグ リーンニューディールの表明等を背景として,既に量産車として市場投入されていた HVに注目が集まった。

自 動 車 産 業 の 未 来 と 中 部 圏

∼EV化の進展による構造変化∼

The Future of the World Automobile Industry and the Chubu Region:

The Impact of the Expanding Electric Vehicle Market

M a s a y o s h i S U Z U K I M i c h i n o r i N A K A T S U Y o s h i a k i N A G A I

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図表1−1−1 世界の自動車販売台数の推移 出所:世界自動車統計年鑑 HVは作動原理の異なる複数の動力源を備えており,走行時の状況に応じて動力源 を単独もしくは同時に使い分けることにより走行する。実際にはガソリンエンジンと 電気モーターの2つの動力源の使い分けといってよい。 我が国においては2009年2月に発売開始されたホンダ・インサイト,また同年5月 に投入された3世代目トヨタ・プリウスにエコカーの代表選手として関心が向けら れ,2009年車種別販売台数第1位と第3位を占めるにいたった。同年の我が国の自動 車年間販売台数は約460万台に対し,プリウス約21万台,インサイト約9万台で両車 合計約30万台,シェアにして約6.5%である。 2010年における我が国の自動車年間販売台数は約495万台,そのうちプリウスが約 32万台,インサイト・約4万台,サイ・約3万台,また三菱i−MiEVは約3千台と みられエコカーの合計販売台数はおよそ40万台前後,シェアにして約8%と推定さ れ,ふた桁のシェアまでもう一歩のところである。 2010年末にはホンダがフィット,GMがシボレーボルトを投入し,トヨタは全車種 HV取り揃えを目差しレクサス含め着々とHVの品揃えを充実させている。GM, フォードの米国企業も1,500cc前後の小型HVの投入予定を発表しているだけに,ド イツ車も含めHVを中心とするエコカー市場は成長に向けてドライブが掛かりつつあ るとみられる。 なおプラグインハイブリッド車(PHV)の進展動向にも注目する必要がある。トヨ タ,ホンダともに2012 年にPHVの市場投入を予定している。PHVは高性能なリチ ウムイオン電池を搭載し家庭電源でも充電可能とされる。これまでの発表ではPHV 7500 7000 5500 5000 6000 6500 世 界 自 動 車 販 売 台 数 ︵ 単 位 万 台 ︶ 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 (年)

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のEVだけでの航続可能距離は25km前後とされている。買い物など日常のタウン走 行であればPHVのEV走行だけで間に合いそうであるし,バッテリー切れの恐れの あるときはHV走行となるだけにコストダウンの進展次第ではエコカーの中心に位置 づく可能性も否定できない。 続いて電気自動車(EV)の販売状況について述べる。 電気自動車(以下EVとする)は,一般に充放電可能な二次電池から電力供給を受 け電動モーターによって走行する。電動のため走行中にCO2やNOx,PMを排出しな い。通常,発電所段階でのCO2の発生面を考慮したうえでEVの優位性をみるなら 「小型電気自動車のCO2発生量換算では小型ガソリン車のおよそ1/4弱」2)との試算 もなされており,EVの環境面での優位性は上位である。 EVとして世界初の量産車・三菱i−MiEVは2009年央に市場投入された。リチウ ム二次電池を用いた世界初のEV量産車である。また2010年末には日産リーフも発売 され,市場においてのEVの認知度も急速に高まってきた。 EVのメリットとしては,上述のように走行中のCO2等の排出が無いといったこと だけでなく騒音が極めて小さい,また部品点数が内燃機関に比して大幅に少なくシス テムの単純化が可能なことなどが指摘できる。他面デメリットとしては,二次電池が 現時点で高額かつ大重量でかさばること,航続距離が短いこと,二次電池の充電に時 間が掛かり過ぎること,及び充電ステーションのインフラ未整備等が指摘できる。こ のようなEVのデメリットの殆どは実は二次電池の課題といってよい。 このようなメリットとデメリットの現状を総合的に捉えるなら,EV化は二次電池に 関する今後の研究・技術開発,製品化の進展次第とみることができる。環境対応面で の大きなメリットを踏まえるなら,EV化に向けた我が国の研究・技術開発のスピー ドアップに大いに期待したいところである。 2.HV・PHV・EV進化の方向 前述のとおりHVとは,作動原理の異なる複数の動力源を備え走行時の状況に応じ て動力源を単独もしくは同時に使い分けることによって走行するクルマのことをい う。動力源としてはガソリンエンジン,電気モーター,ガスタービン,ロータリーエ ンジンなどの幾つかの駆動系の組合せが想定される。ただし,現状では「ガソリンに よるレシプロエンジンと電気モーター」の組合せが中心である。 さて,このようなHV市場の将来変化の方向を検討してみたい。図表1−2−1は 「プロダクトとプロセスのイノベーションとインプルーブメント」について一般論を マトリックス整理するとともに,既存自動車,HV,EV等の現状位置を捉え,将来 変化の方向を考察するため基礎的資料として作成したものである。 我が国は伝統的にモノを洗練させることに優れている。過去を振り返ってみると

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1970年代から1980年代に掛けて日本の製造業は世界に誇れる品質と低コストを実現し た。その時代の日本の国際市場での優位性は,従来からのビジネスモデルの改善と磨 き上げ,及び従来からの既存製品の磨き上げ(改良,改善)によって性能と品質アッ プを実現させたものであった。この努力はプロダクトのインプルーブメントとともに 製造プロセスのインプルーブメントによって達成された。既存の同種モデルのもとで の競争に関してはインプルーブメントによるモデルの錬磨競争に突き進むことが有効 だといわれる3) さて同図のマトリックス上に,エコカーの発展の現状位置を示した。まずプロダク トとプロセスともにインプルーブメントのステージには,「マツダ:清ら(直噴エンジ ン用アイドリングストップ機構搭載)」,「メルセデスベンツほか欧州メーカー:クリー ンディーゼル車」などが位置すると考える。 これまでのレシプロエンジンの技術錬磨により「マツダ・清ら」は10・15モード燃 費で32km/rを達成している。またディーゼル車はもともとCO2排出は低水準で相 対的に燃費もよい(ガソリン車に比して2∼3割上回る)が,加えてNOx(窒素酸化 物),PM(粒子状物質)等の排出削減に取組み,平成21年排出ガス規制(ポスト新長 期規制)4)に適応する水準を達成したクリーンディーゼル車がここに位置づくと考え る。いずれも既存のプロダクトと製造プロセスのインプルーブメントによって実現さ れたとみる。 図表1−2−1 イノベーション・インプルーブメントとエコカー化 画期的製品を 既存の製造技術で生産 既存製品の改良品を 既存の製造技術で生産 プロセス プロダクト イノベーション プロセス イノベーション プロダクト インプルーブメント プロセス インプルーブメント 画期的製品を 画期的製造技術で生産 既存製品を 画期的製造技術で生産 PHV HV CDV,GV EV,FCV (注)図中の英文字は以下を示す。EV・電気自動車,FCV・燃料電池車,HV・ハイブリッド車, PHV・プラグインハイブリッド車,CDV・クリーンディーゼル車,GV・ガソリン車 出所:中部大学・産業経済研究所作成

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次にHVについてはマトリックス上のほぼ真ん中に位置すると考えている。上述の ようにHVは,既存のガソリンエンジンに電気モーターを加えた複数の動力源を備え たクルマである。勿論,その機構面の分類側面からみると違いが幾つか認められるも のの,基本的には2つの動力源を巧妙に制御するシステムを備えたクルマと見ること ができる。より具体的にはガソリンエンジン部分については既存のプロダクトとプロ セスのインプルーブメント,電気モーターと電池等の部分については新たな技術開発 によるプロダクトイノベーション及び製造プロセスのイノベーションに取り組んでい る成果が現状のHVだといってよい。すなわちHVは,同図マトリックス上のほぼ真 ん中に位置すると考える。またプロダクト,プロセスともにイノベーションの位置に あるのは,まさにEVとFCV(燃料電池車)と考える。EVは平成21年に三菱自動 車・i−MiEVによって世界で初めて量産車として市場投入された。富士重工のステ ラもそれに続いて市場投入された。 平成21年はEV元年といえる年であった。しかしまだまだエコカーの中心プレイ ヤーへと進展するためには航続距離の延長,充電時間の短縮化等の技術開発・技術 革新とともに製造コストダウンが不可欠の状況である。自動車産業に対して一層のイ ノベーションの必要性が迫られている。同じクルマとはいえこれまでのガソリンエン ジン車とEVでは全く異質なステージからのビジネスモデルが要請されている。 なおFCVについては,トヨタ自動車及び本田技研において既にクルマとしての基 本技術と製造技術面においてほぼ完成段階に到達しているといわれる。しかし水素を 安全に大量に安価に製造するための研究開発,及び水素供給インフラの社会的整備等 にまだ年月を要する段階で一段のイノベーションが要請されるステージにある。 同図に沿って改めて考察を加えたい。大胆に図中マトリックス上のクルマの位置, 及び縦横軸が有する性格を定性的に捉えるなら,マトリックス左下から右上方向に向 けてクルマの進化のベクトルを感じることができそうである。あたかも変化の潮流を 感じさせられる。単純化して述べるならガソリンエンジン自動車と電気自動車の2台 分の機能を併せ持つHVにおいて,技術開発努力の到達点は完全EV化することと いってもよさそうである。 3.EV化に向けての基本的課題と期待 EVの現状の問題点として以下が指摘される。 ・ 航続距離が短い ・ 二次電池への充電時間の長さ ・ 高額車になる ・ 充電施設始めケア・サービス施設がインフラとして未整備

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現段階においてのEVの航続距離はおよそ100km程度に過ぎず,また室内温度調節 のために暖・冷房を入れるとなるとさらに航続距離は短くなるというのが一般的見方 である。充電にも数時間を必要とするとともに社会的なインフラは未整備である。ま た特に二次電池が高コストであるため販売車両価格は高額になる。 このような問題点を背景としてこれまで電気自動車の市場投入は見送られてきた が,平成21年度に初の量産型EVが世に出て以降,急速にEV受け入れ態勢は整備さ れつつある。 しかし上述のような問題点は,インフラ未整備以外はそのほとんどが自動車用二次 電池の問題に行き着いてしまう。実は二次電池としての性能さえ進展すればEVが次 世代車として最も有望であることは関連技術者の殆どが認めてきたことである。 ところで,ガソリンエンジン車が「ガソリン&レシプロエンジン」で動くクルマに 対して,EVは「二次電池&電気モーター」で動くクルマである。つまり二次電池と ともにEVにとっては電気モーターの性能も極めて重要であるだけに各社は一層の技 術開発に向けて努力している。同時に既に一定の水準はクリアされているとも言われ ている。したがって,現段階において最も重視すべきは二次電池に対してであり, 「車載用電池はクルマの性能を決定する心臓部」といっても過言ではない。 さて,電気自動車普及上のネックとして認識されてきた二次電池性能が,HVへの 関心と信頼の高まりとともに急速に向上し始めたことも事実である。HVは平成22年 現在トヨタ・プリウス,ホンダ・インサイトともにニッケル水素電池を使用している。 ニッケル水素電池は単純な回路で充放電が可能,安全性が確立されている等の要因か らHV用の主流電池として使用されているが,EV向けとなると性能面において限界 がある。 EV用二次電池として現在,自動車メーカー,電気関連メーカーともに研究・技術開 発に注力しているのはリチウムイオン電池であり,EV化をめぐっての電池市場での 開発競争は一段と激しさを増している。特にこれまでの自動車完成車メーカーにと っての存立基盤がガソリンエンジン製造の内製化にあったことを考えるなら,EV時 代においては「電気モーター,車載用二次電池」の開発・製造の内製化が最大の戦略 テーマと位置づけられるはずである。事実,電気モーターについてはトヨタ,ホンダ, 日産ともに内製を志向し既に概ね実現させている。また車載電池に関しては電子電気 関連メーカーとの資本提携のもとに,いわばグループ内企業化を進展させている。 その中にあってトヨタ自動車がパナソニックとの共同出資会社・パナソニックEV エナジーへの出資比率を60%から80.5%へと引き上げることを予定している。パナソ ニックが三洋電機を子会社化するにあたっての対応結果と言われているが,トヨタ自 動車の出資比率が大きく高まることになる。 なお我が国の大学,研究所,民間企業等において,現在のリチウムイオン電池に代

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わる次世代型革新電池の研究開発も重ねられている。 代表例として以下の3タイプがあげられる。 ・ リチウム硫黄電池 ・ 金属空気電池 ・ 多価イオン電池 ここでの詳述は割愛するが,現在のリチウムイオン電池の5∼10倍の性能アップが 見込まれる。経産省においても次世代型電池の開発,EVへの利用推進を強く謳って いるとおり,革新電池の研究開発はいわばオールジャパンで取り組むべきテーマであ る。同時に個別に有力民間企業レベルでの研究開発テンポも上がっており,今後の進 展が大いに期待されるところである。 ところで,これまでの成熟したガソリン自動車産業とは一線を画したベンチャー企 業が積極的に市場参入を果たしていることに注目する必要がある。日米欧を中心とす るガソリン自動車のトップ企業及びその顧客の多くはEVに対してもガソリン自動車 並みの航続可能距離,ゆとりある室内空間などを追い求めがちである。しかしながら 既存の有力完成車メーカーの多くが慎重なスタンスを継続しているうちにベンチャー 企業は次々にEVを市場投入している。米国のテスラモーターズ,フィスカ・オート モーティブ,中国のBYD,韓国のCT&Tなど多くのベンチャー企業が積極的に市 場開拓しつつある。特に中国においては,リン酸鉄系電池を使用するローコストなタ ウンカー・EVを国内標準にしようという動きがあり,小資本の新規参入企業がさら に輩出される可能性さえある。このようなEV市場におけるベンチャー企業の積極的 な市場参入の動向は,既に「スモール・ハンドレッド」時代が幕開けしていると言え る。 EV化がスモール・ハンドレッド時代をもたらす基本的な背景としては,EV化が 電気製品型のユニット化,モジュール化を進展させることによって擦り合せ・設計プ ロセスを簡略化させ,徐々にEVの組立を相対的に容易にしてしまうという一面を見 落とせない。ゼロエミッションとITとの相性もよいEV産業が,新たに強力なグロー バル・プレイヤーを産み出す可能性さえ感じさせる。ただし安心・安全への取組みは 常に最重要なテーマであることを見落としてはならない。 第2章 我が国のモノづくり特性に関する分析 中部大学経済産業研究所の昨年度(平成21年度)と今年度(平成22年度)との有識者 及び経営者に対するアンケート調査の結果1)2)から,中部圏の自動車産業にもEV化

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の波が押し寄せそうな兆候が現われて来ているように考えられる。中部圏を中心とし た我が国のモノづくりの在り方を考えるために,我が国のモノづくりの特性に関する 分析を行い,今後の展望を検討する基礎を構築することを目指した。 1.「擦り合せ型」と「選択・組合せ型」の特徴と優位性 日本のモノづくりの特性を捉えようとする場合,日本の現実の生産現場に踏み込ん で研究を行うことが重要である。現代日本のモノづくりの中心となっている自動車産 業のモノづくり現場の研究が重要である。藤本隆宏教授のグループは長年の日本の自 動車産業の現場の研究から「擦り合せ型」,「選択・組合せ型」というモノづくりアー キテクチャーについてのモデル化を行い,日本のモノづくりの特徴,強み,弱みを分 かり易く捉えることに成功してきている3) 「擦り合せ型」と「選択・組合せ型」というモノづくりアーキテクチャーの視点は, 日本のモノづくりを見るために極めて効果的な道具を与えていると考えられる。我々 はこの視点を使うことにより日本のモノづくりの風景をクリアに見ることができるよ うになったと思われる。しかし,今後10∼15年後の自動車産業を展望しようとする と,今までクリアに見えていたものが焦点の定まらない状態に陥ってしまった。具体 的には, ① EVの今後の普及を考えると,今までのガソリンエンジンの時代の「擦り合せ型」 アーキテクチャーから「選択・組合せ型」アーキテクチャーへ移行していくの か。もし移行していくならば,既存の完成車メーカーはどのような立場となる のか。 ② 「選択・組合せ型」となった場合,自動車業界のイニシアティブはどのような 企業が握ることになるのか。また,イニシアティブを握るよりどころとなるも のは何か。 ③ 現状のガソリンエンジンからEVへ徐々に移行するとした場合,「擦り合せ型」 「選択・組合せ型」の両方が同時に(場合によれば,同じ企業内で)存在するこ とになるのか。あるいは,「擦り合せ型」「選択・組合せ型」というタイプ分け があまり意味を持たなくなり,生産アーキテクチャーの変質が進んでいくのか。 ④ 「選択・組合せ型」の典型的な例として取り上げられるPC(パソコン)の事例 のように,ハードウェア製品では主要な部品メーカーのインテルが,ソフトウェ ア製品では,デファクトスタンダードとなったOSを提供しているマイクロソフ トがイニシアティブを握ったように,自動車業界の主要ハードウェア部品メー カーがイニシアティブをとるのか,マイクロソフトのような基盤ソフトウェア 部品を提供した企業が握るのか。

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モノづくりアーキテクチャーでの「擦り合せ型」と「選択・組合せ型」との分かれ道 は,対象製品の製造特性によるところが大きい。つまり,対象製品の主要部分の構造 が相互に密接に影響し合う部品で構成されているか否かにより決められると考えられ る。相互に密接に関連した部品から構成された製品は「擦り合せ型」のアーキテク チャーで生産されないと良質で安価な製品を大量に製造することはできない。「選 択・組合せ型」が力を発揮する製品は互いにあまり密接に関係し合わない部品から構 成できることが業界で認知され,個々の部品がコモディティー商品として容易に入手 できる状態であると考えられる。「選択・組合せ型」への生産アーキテクチャーの移 行には次の2つのタイプが起こり得る。 1つは,「擦り合せ型」で作っていた製品が設計の進展によりあまり密接に相互関 係を持たない複数の部品から構成されることが認知されたとき。密接な相互関係を持 たないとは,広く認知されたインタフェースが存在しそのインタフェースの向こう側 のことを考える必要がないことである。広く認知されるためには国際機関による標準 化と市場で認知されるデファクト標準化とがあり,どちらも「選択・組合せ型」への 移行の契機となり得る。 2つ目は製品が変わってしまうとき。「擦り合せ型」を必須とした特性が不要ある いは重要ではなくなり,あまり相互に密接に関係しないような部品から構成されるよ うになると一挙に「選択・組合せ型」へ移行することになる。ガソリンエンジン車か らEVへの転換期である現状はまさにこのケースに該当すると思われる。 「擦り合せ型」と「選択・組合せ型」という類型化とは別のモノづくり類型化として 「垂直統合型」と「水平分業型」とがある。これらの2つの類型化は異なる視点からの 生産アーキテクチャーを見るものであるが,2つの視点を合わせた分析をすると更に モデルの見通しが良くなると考えられる。「擦り合せ型」の場合は本来的に「垂直統合 型」に対応すると考えられる。現時点までの自動車産業はこの型である。一方,「選 択・組合せ型」の場合は,「垂直統合型」も「水平分業型」も存在しうると考えられる。 例えば,現在のPCの中の Windows OS 搭載PCは「選択・組合せ型」で「水平分業 型」であり,アップル社の携帯端末の iPadなどは「選択・組合せ型」で「垂直統合型」 であると考えられる。一般に,「選択・組合せ型」が始まる初期段階では,「垂直統合 型」の製品が市場に受け入れられることが多いと考えられる。「垂直統合型」モノづく りアーキテクチャーにおいてイニシアティブを有する企業の支配力は強い。一方, 「水平分業型」生産アーキテクチャーにおいてイニシアティブを有する企業の支配力 は弱い。逆に,市場規模でみると「水平分業型」の方が大きくなる傾向がある。「垂直 統合型」の場合,支配力に付随する収益源の独占が起きやすいので,イニシアティブ を持たない企業は支配下から抜けたり,他のイニシアティブを持つ企業の傘下へ加わ るなど「垂直統合型」のイニシアティブを握る市場は小さくなりがちである。

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「擦り合せ型」「選択・組合せ型」の類型化と「垂直統合型」「水平分業型」の類型化 とに焦点を合わせたモノづくりアーキテクチャーの進化モデルを図表2−1−1に示 す。 図表2−1−1 モノづくりアーキテクチャーの進化モデル タイプ1進化モデルは,徐々に「擦り合せ型」から「選択・組合せ型」へ移行して行 くモデルであり,ラジオ,テレビ,テープレコーダーなど家電品において低価格製品 を中国や東南アジアなど海外に生産を移行するにつれて進んで行き,現在は日本の シェアが失われてきた状況を表現した進化モデルである4) 一方,タイプ2進化モデルは,コンピュータ産業で現われたモデルである。当初は IBM,日立,富士通などの大手電機メーカーが大型のメインフレーム・コンピュー タを製造・販売していたが,隣接した製品カテゴリーの市場ニーズから出発したマイ クロプロセッサーを使用したPCが登場し,やがてメインフレーム・コンピュータが 押さえていた市場を席巻してしまった事例は,タイプ2進化モデルによる技術転換で ある。 2.自動車産業と電子電気機器産業のモノづくり特性 日本のモノづくりを更に深く考察するため,日本の代表的な産業である自動車産業 と電子電気機器産業を取り上げて比較検討することは有益であると考えられる。自動 「擦り合せ型」で「垂直統合型」 「擦り合せ型」で「垂直統合型」 「選択・組合せ型」で「垂直統合型」 「選択・組合せ型」で「垂直統合型」 「選択・組合せ型」で「水平分業型」 「選択・組合せ型」で「水平分業型」 統合 タイプ1進化モデル タイプ2進化モデル

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車産業の製品の特徴は,中心となる技術要素がガソリンエンジン(間欠燃焼を用いた 内燃機関)によることである。ガソリンエンジンは極めてコンパクト(単位重量当た りのエネルギー発生量が大きい)ではあるが,良く考えてみると矛盾に満ちた動力エ ネルギー発生装置であるため,微妙な制御を行わないと期待したほど動力を作り出す ことが難しい方式である5)。特に,燃料をタンクからエンジン近くまで,パイプを通 して運び,空気と絶妙な制御の元で混合して爆発させている。燃料と空気の混合のさ せ方,点火プラグで着火するタイミング,瞬間的な爆発力からスムースな回転運動へ 変換するためのシリンダーとクランクシャフト,シリンダーの微妙な密閉状態を維持 しながら,シリンダーを上下させるためのピストンリングなどエンジン回りの多数の 相互に深く影響し合う部品から構成されている。しかも爆発により熱を発生させなが ら連続的に運動エネルギーを取り出すために適切に冷却しなければならない。全体を 効率的なガソリンエンジンとするためには,中心となるエンジン設計部門が緻密に設 計するだけでは良いガソリンエンジンは製造できず,エンジンを構成する多数の部品 の製造やテストを行なう機関や,あるいは,自動車ユーザーからの苦情や要望などの フィードバックを含めた多数の関連構成主体が密接に絡み合ったまさに「擦り合せ型」 の設計製造アーキテクチャーが必須とされるものであった。 一方,電子電気機器製造業は,当初の製造現場では自動車産業と似たように「擦り 合せ型」のアーキテクチャーであったが,マイクロプロセッサーが開発され制御部品 として利用されるようになって大きく変貌を遂げた。電気信号により家電機器の動作 を制御する仕掛けがそれまでは個々の製品ごとに別々の制御回路を作成し,個別の制 御部品を使って制御を行う方式を採用していた。ところが,マイクロプロセッサーを 使用した標準基板を用いて,個々の製品に特有な機能部分の多くをソフトウェアで実 現できるようになってきた。このことにより低コスト化だけではなく,製品開発期間 の短縮化,信頼性の向上などの複数の効果があることが判明し,業界で広範に活用さ れることになった。また,付帯的な効果として,標準的なモジュール部品の組合せで 製造できるため,高度な製造技術を必要とする部品は日本で生産し,組み立てはアジ ア諸国で製造できるようになってきた。更に家電の製品ラインの中で低価格のものは 組み立てと共に部品もアジア諸国で製造できるようになってきた。コモディティ化し た家電製品は,アジア諸国だけで充分製造可能となり,徐々に低付加価値の家電製品 のシェアは我が国からアジア諸国に移って行くことになった。 電子電気機器製造業の中で,コンピュータ産業のモノづくりアーキテクチャーに関 する技術転換の経緯を分析することにより,自動車産業の今後の技術転換について考 察を行うこととする。コンピュータは大きく分けるとメインフレーム・コンピュー タとパーソナルコンピュータ(PC)に分けられる。メインフレーム・コンピュータ は,高速性や信頼性を重視したため集積度を高められないバイポーラICを使用した

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演算装置であったため,演算機構のモジュール化が進まず,IBMをはじめとする世界 の大企業が「擦り合せ型」アーキテクチャーで生産してきており,この流れは現在に 続いている。一方,PCは1971年にインテルが4ビットCPUである4004(MOS IC: 高集積度ではあるが当初は高速処理には不適で,汎用電卓の技術から派生した)を開 発して以来,市場規模も拡大の一途を辿った。現在は,メインフレーム・コンピュー タの市場は相対的に小さなものとなってしまった。自動車産業の参考とするために, PCの技術転換の分析を進めた。 パーソナルコンピュータの開発史を次に示す。 1971年 インテルが世界初のマイクロプロセッサー4004開発(4bit CPU) 1974年 インテル8080開発(8ビットCPU) 1974年 M I T S 社世界初の消費者向けPCであるAltair 8800(S100バス)開発。 S100バス(拡張スロット)に差し込む周辺回路ボードや,S100バス用のメー カーなどサードパーティーが多数参入し,電子機器マニアの注目を得た。 ― S100バス マニア向けパソコンの時代(第1次プラットフォームの時 代)― 1981年 IBMが IBM PCを開発。Word Star(ワープロ)がIBM PCに移植さ れ使い勝手が良かったので,一般オフィスのタイプライターの代わりに使 われ大ヒット商品となった。IBM PCはそれまでのIBM製品と異なり 殆ど全ての部品を社外のメーカーから調達して製造を行った。しかも,知 財権を強く主張しなかったため,サードパーティ企業が多数参入し,互換 機を開発するようになった。特に,IBM PCの周辺回路用のバス(拡張 スロット)は仕様も公開され,多数の弱小メーカーも互換の周辺回路ボー ドを開発し,市場が急拡大した。 1984年 IBM PC/ATを開発。インテル80286(16ビットCPU)を使用した改良 版で,ISAバス(拡張スロット)と言われる16ビットの周辺機器制御回路 向けのバスを公開したので,多数のサードパーティ企業が参入し,市場規 模が更に拡大した。ソフトウェアでもIBM PCで動作するLotus 1−2−3 が1983年に発売され,大ヒット商品となった。 ― I S A バス 一般ユーザ向けパソコンの時代(第2次プラットフォームの 時代(前期))― 1985年 IBM PCの開発チーム全員がデルタ航空機の墜落事故で死亡した。それ までのIBM経営(内製,知財クローズ)に戻り,知財権をサードパーティー

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企業に追加要求するようになり,これ以後イニシアティブを失っていった。 インテルがチップセットという概念を開発するまでの間は,イニシアティ ブを目指して幾つかの企業が覇権を競った。 ― ISA,EISAバス IBM PC互換機の時代(第2次プラットフォームの時 代(後期))― 1995年 インテルが Pentium 用にチップセットを開発。以前もIBM PC/AT以 来のISAバスにより,キーボード,マウス,ハードディスク,FD,ネッ トワークや音声など比較的低速な周辺回路を制御する拡張回路ボードは サードパーティ企業でも比較的容易に設計/製造可能であったが,CPU 周りのメモリや高速グラフィックデバイスの制御は高度な技術を必要と し,コンパック,HP,DECなど大手メーカーにしか開発できなかった。 しかし,インテルがチップセットを開発し,チップセットを使ったPCマ ザーボードの開発方法を公開し,リファレンス用のマザーボードを出荷す る よ う に な っ た 。1997年 か ら 毎 年 イ ン テ ル IDF( Intel Developers Conference)を開催し,開発者向けに情報公開を行っている。

ソフトウェアの面では,マイクロソフトが Windows 95 を発売し,OSの 市場を独占すると同時にPCの販売台数を飛躍的に拡大することに貢献し た。このときからPCがマニアでなく一般人に広く認知されることになっ た。また,WindowsのAPI(Application Program Interface)の元で多数の サードパーティ企業がPC用のソフトウェアやソフトウェアとハードウェ アを一体化した製品を発売し始め更にPC市場が急拡大した。

― Wintel(Windows のマイクロソフトとインテル)イニシアティブのパソコ ンの時代(第3次プラットフォームの時代)―

2002年 amazon.com が Amazon Web Serviceを開始。クラウド的な運用が開始。 2006年 Google の CEO のエリック・シュミットが「クラウド・コンピューティン

グ」という表現を使用。

2008年 Googleが Google Application Engineの一般公開を発表。実際にクラウド が利用できるようになった。多種多様な多数の企業がクラウドを使用した サービス製品を開発してきた。

―クラウドコンピューティングの時代(第4次プラットフォームの時代)―

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ンフレームコンピュータとパーソナルコンピュータ(パソコン:PC)とに対応する。 自動車の場合と対比して示すと次の図表2−2−1のようになると考えられる。 コンピュータ業界の場合のメインフレームコンピュータとPCとの事例から類推す ると,EVが市場に登場した現在の自動車産業では,従来のガソリンエンジン車とEV との並立状態が続くが,徐々にEVへ重点が移って行くものと考えられる。 図表2−2−1 コンピュータと自動車の生産アーキテクチャーの比較 内燃機関であるガソリンエンジンを使った自動車は,すぐには無くならない。コン ピュータの事例と同様に,自動車もガソリンエンジン車のユーザー層とEVのユー ザー層は必ずしも同じではないと考えられる。EVも最初はマニア層に広がるだけで あると思われるが,徐々に一般ユーザー層に使われるようになると考えられる。一般 ユーザー層に広く受け入れられるためには,コンピュータの世界でIBM PCが果た した役割を担う製品が出現する必要があると考えられる。コンピュータ産業における メインフレーム・コンピュータの場合のように,自動車産業におけるガソリンエンジ ン車は小規模な企業が参入できるようなものではなかった。自動車業界でもガソリン エンジン車を製造販売できる企業は,GM,フォード,トヨタ,日産などの大企業の みであった。自動車産業の現状は,EVの可能性が世の中で認知され,「選択・組合 せ型」の初期段階が始まろうとしている状態と思われる。その1つの流れが,既存の 自動車を改造してEVを作ろうとするビジネスモデルのように思われる。現在,試行 されている例では既存の軽自動車からガソリンエンジンとその関連部品(燃料タンク, 排気管など)を取り外し,別のメーカーが市販し始めたEV化キットを取り付けて調 整を行って出荷する方式である6)。現状ではまだまだ「選択・組合せ型」の良さを生 かせていないが,ガソリンエンジンを取り外した車台などの自動車部品の標準化が進 めば,この標準に合わせたEV化キットが各社から多数製品化される可能性が出てく るものと思われる。 コンピュータの例ではIBM PC(IBM PC/AT)とそのISAバスで実現されたよ うに,極めてスマートな(機能的,価格的なバランスが良く,ユーザビリティが高い) デザインの自動車車台を提供する企業が現われ,その製品が市場に認知され,大きな 擦り合せ型 選択・組合せ型 コンピュータ メインフレーム・コンピュータ パソコン 自動車 ガソリン(ディーゼル)エンジン車 電気自動車(EV)

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シェアを握ることになると,その自動車車台に合わせたサードパーティー製品が豊富 に出荷されるようになると思われる。この自動車車台メーカーの製品が良好なもので あれば,EV化により「選択・組合せ型」に転換する議論の中で弱小メーカーでは自動 車の安全性の問題を解決できないと言われた課題を解決できると思われる(ガソリン エンジンという危険な爆発物を扱うこと以外の安全性の問題は,走行時の運転性能や 制動(ブレーキ)性能となるが,これらは殆ど自動車の車台の部分で対応可能と考え られる)7) ガソリンエンジン車は,ガソリンエンジンの熱対策の問題やピストン運動を回転運 動に変換するときに発生する強い振動に対応する配慮からボディーに鋼鉄を必要とさ れていたが,EVの自動車車台部分はこの部分をもっと軽量でかつ加工しやすい強化 プラスティックあるいはカーボンファイバーなどが利用できるため,自動車完成車 メーカー以外から自動車車台製造への参入が激しくなり,イニシアティブをとってい た当初の自動車車台メーカーの力が弱まり乱戦状態になる。これは丁度PCの場合の IBMに対し,コンパックなどの互換機メーカーが乱立し競争が激しくなってきた状 態に相当すると考えられる。「選択・組合せ型」へ転換することによりイニシアティ ブを握るのはEVの主要部品で全体のEVになくてはならないものを握る企業と考え られる。これにはバッテリーとEVシステム全体を制御するソフトウェアが有力な候 補と考えられる。コンピュータ産業で言えばインテルのCPUとオペレーティングシ ステムのマイクロソフトに相当する。次の段階では,モビリティシステムとして捉え たインフラを含めたプラットフォームを握った企業がイニシアティブを握ると予想さ れる。これは,コンピュータでのクラウド+高機能UI端末に相当すると考えられる。 第3段階と第4段階はまだ先の事柄であるので,時期や期間は特定できないが,この ように自動車産業は進化して行くと類推される。 コンピュータの技術転換のモデルと自動車の技術転換のモデルとを対比しながら記 述すると図表2−2−2のようになる。 自動車産業についても,既存の化学的な反応(ガソリン燃焼)や機械的な制御構造 が中心の仕組から,コストダウンと均質な製品を早期に大量生産可能な電子制御を取 り入れて行くに従い,必然的に「選択・組合せ型」のモノづくりアーキテクチャーに 近づくように感じられる。一方,ガソリンエンジン車では,「擦り合せ型」を抜け出 ることはできず,コンピュータの場合のメインフレーム・コンピュータのように徐々 に市場における重要度が減少して行き,EVのような新エネルギーを使用した自動車 へ市場を譲ることになると類推される。 自動車産業において第1次プラットフォームになるのは,最近マスコミなどで注目 されているコンバートEVであると考えられる。丁度,PCの場合,S100バスがデ ファクトスタンダードとなり,S100バスのプラットフォーム上に多数の中小企業が製

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品を出荷したように中古のガソリン自動車からガソリンエンジンとその関連部品を取 り外したものにEVコンバージョンキットを付けたEVが先ずマニア層に普及すると 考えられる。ここで重要なことは,自動車の安全性の問題が中古車あるいは新車の車 台を使うことにより担保されることである。現時点のEVコンバージョンキットは回 生エネルギー機構が不十分など改善の余地は大いにあるが,これから市場が大きくな って行くに従い急速に改良されて行くと考えられる。 図表2−2−2 コンピュータと自動車の技術転換のモデル 第2次プラットフォームであるが,これば,PCの場合に丁度IBM PCが開発さ れて爆発的に市場が拡大したように,自動車の車台部分にEVの特性を活かした改良 が進展すると思われる。EVは,ガソリンエンジンのように高温を発生する部分がな い,また,レシプロエンジンに起因する強い振動を発生することもない。従って,鋼 鉄以外の強化プラスティックなどの成型加工の容易な素材の利用割合を大幅に増やす ことが可能となる。このことから,軽量化,低コスト化が図れるとともにデザイン面 での自由度が飛躍的に拡大する。また,中小企業でも容易に参加できるようになると 考えられる。市場の立ち上げ時にはPCの場合のIBMのような大企業がデファクト スタンダードとなるEV用の自動車の車台を開発し,これを用いたEVコンバージョ ンキットの市場が形成されるようになる可能性がある。 第3次プラットフォームは,PCで丁度 Wintel 連合(Windowsのマイクロソフト, 1945 1900 2010 2020 2030 1900 2010 2020 2030 1970 2010 メインフレーム IBM S360 IBM S360 ガソリン/ ディーゼル エンジン車 コンピュータ 自 動 車 PC (マイクロプロセッサ応用機器) S100バス (第1第1次プラットフォーム) IBM PCバス (第2第2次プラットフォーム) Wintel プラットフォーム (第3第3次プラットフォーム) クラウドコンピュータ (第4第4次プラットフォーム) S100バス (第1次プラットフォーム) IBM PCバス (第2次プラットフォーム) Wintel プラットフォーム (第3次プラットフォーム) クラウドコンピュータ (第4次プラットフォーム) 第1次 プラットフォーム 第2次 プラットフォーム 第3次 プラットフォーム 第1次 プラットフォーム 第2次 プラットフォーム 第3次 プラットフォーム 第4次 プラットフォーム EV

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CPUのインテル)がプラットフォームを構築したようにEVの重要部品に大きな技術 革新が起こると思われる。候補としては,先ず,第1に考えられるのは,電池で,次 にEVの制御ソフトウェア共通基盤(PCの場合のOSに相当する)と思われる。電池 については,現状のリチウムイオン電池の効率及びコストが2倍∼10倍ほど向上する 技術が期待される。あるいは,金属空気電池が実用化されるかも知れない。金属空気 電池の場合は2次電池ではなく,金属リチウムあるいは金属マグネシウムを使った燃 料電池になる可能性が存在する。 第4次プラットフォームは,相当先のことになるが,PCで丁度クラウド・コン ピューティングが重要性を高めて来ているように,自動車産業でもスマートグリッド やITSなどのインフラ環境まで含めたプラットフォームがイニシアティブを議論す る上で中心になって行くように思われる。 ここで,我が国の自動車産業として留意すべきことは,第3次あるいは第4次のプ ラットフォームに向けてどのような戦略で事業展開を図るか戦略の見極めが重要であ ると思われる。コンピュータも含めた電子機器分野で「選択・組合せ型」で成功を収め ている例として,2つのタイプが報告されている8)。1つは,PCにおいてインテル が実施している① CPUのブラックボックス化,② CPU周辺の技術のインタフェー スの標準化(デファクトも含む)オープン化であり,2つ目はノキア・モトローラに よるヨーロッパでの携帯電話システムのインフラ側のブラックボックス化と連動した 携帯電話端末の製品化戦略である。EV化の進展に伴い,選択組合せ型の自動車生産 方式への転換が進むものと考えられるが,自動車の「選択・組合せ型」アーキテク チャーで何がキー要素となって誰がイニシアティブを握るかが注目される。 自動車産業のエコシステム(生態系システム)の中でなくてはならない構成要素を 為し,且つ,その構成要素の生産に責任,権限がある企業(主体)がその全体の製品 の支配を行おうとする意思を持つ企業(主体)である場合にイニシアティブを握るこ とができる。自動車を中心とした社会システムを含めたエコシステムという「場」を 構築し,生産者およびユーザーの両方の関係者を集め,運命共同体とし,この中で イニシアティブをとって行く戦略が重要と思われる。最近の議論の一つに「プラット フォーム戦略」9)がある。これはインターネット中心で主に議論されているのに対し, 自動車の場合は,実世界の「場」を構築するものである。自動車産業におけるプラッ トフォーム戦略を実施して行くためには, (1)常に最先端の技術を持ち,関係者に理解/納得される (2)その事業のビジョンを持つと共にそのビジョンをエコシステム(生態系)関係 者に理解/納得され,強固な「場」を形成する (3)そのプラットフォームが成功しそうに皆が思える雰囲気を創り出す

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が必要と思われる。(1)では常に他より一歩先んじている必要がある。少しでも停 滞すれば,リバースエンジニアリングで後発企業がプラットフォームを奪う危険性が 強くなる。我が国の自動車産業が進むべき道は,自動車産業の付加価値が大きい基礎 部品の設計/製造,あるいは,製品サービス,運営,課題解決/システム提供の部分 に焦点をあてるべきと考えられる。基幹部品については,蓄電池が第1候補と考えら れるが,インテルのCPUのようにほぼ独占的な立場になるためには,特許など知的 財産権を確保することが要求されるが,現状の最先端製品であるリチウムイオン電池 では既に各企業が製品を開発しており,これから1社が独占できるようになるか疑問 である。 PCの例では,インテルがCPUでほぼ絶対的な地位を確保できたのは,IBM PC に使われ,その後,度重なる技術革新を継続的に成功させ,市場の強い支持を得たこ とにより手に入れたものである。インテルの共同創業者のゴードン・ムーアの法則 「ICのトランジスタ数は18カ月で2倍になる」の通りに,ICの集積度が上がれば上 がるほど設計は難しくなり,それまでのノウハウの重要性が増してくる。競合メー カーはインテル社のCPUと外見上は等価な命令(インストラクション)を実装しな がらインテル社よりも顧客にとって良い設計をしなくてはならないという困難に直面 した。イニシアティブをとることは継続的な努力が必須であり,これを継続すること ができる企業のみがイニシアティブを握っていることができる。 一方,製品サービス,運営,課題解決/システム提供の領域は,EVで特に重要と なるインフラ部分と考えられる。 自動車産業の場合,インフラでイニシアティブをとる候補として次のような事項が 考えられる。 EV用の充電インフラのハードウェアとソフトウェア 家電製品の殆どのものがアジア諸国にシェアを握られている中で,唯一我が国 がシェアを確保できているデジタルカメラの例が参考にできる。EVでは,SIM ドライブ社10)が採用している戦略で,バッテリー,モーター,インバーター, ステアリング,ブレーキなど運航に直接関連する部分をEVシャーシーとして 提供し,ボディーや周辺の付属品などについてサードパーティーに参画を促す ビジネスモデルが考えられる。 自動車をモビリティ提供システムの一部と捉えて,モビリティ提供システムの インフラを提供するハードウェアとソフトウェア イニシアティブを握るためには,継続的に技術の進化が必須である。通信(特 に無線)インタフェースはまだまだ継続的に進化が予想されるので通信を軸と したインフラシステムは期待できる。将来的には,自動運転システムへの発展

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もこの分野では期待される。EVになれば制御が全て電気,電子となるので, コンピュータ制御の自動運転には極めて馴染みやすくなる。 自動車のブランド化 デザインを中心に自動車という商品を捉え直し,継続的なデザインの改良を 行ってプラットフォームのイニシアティブを握って行くことが考えられる。 PC業界の例では,アップル社の iTunes,iPod,iPhone,iPad がこれに相当 すると考えられる。EV化が進めば,自由な発想のデザインが出てくる可能性 は高いと考えられる。特に,家の一部ともなり得るので,家電品,家具,イン テリアの延長線上でのデザインが受け入れられる可能性も出てくる。 何れにしろ基幹部品(要素)のシェアが高くても,その製品のエコシステム(生態 系システム)を支配しようとする意思がなければ,イニシアティブを握ることはでき ない。次のような諸点も重要と思われる。 ① 製品エコシステム(生態系システム)をどのように定義するのか。 ② 支配するという意思を持つ。 ③ 世の中にビジョンを公開し,インタフェースの標準化を行いオープン化する ④ 世の中の支持を集め,リーダーとなる。 ⑤ 常にリファインを行いながら,常に進化させて行く。他社が追随して来たら すぐ引き離すようにする。 中部圏の現在の主要な産業である自動車産業が,丁度,EV化という技術転換点を 迎え,今後の見通しに霞がかかったような状態にあるように感じられる。早急にこの もやもやから抜け出さねばならないと思われる。本研究を更に深めて行き,中部圏の 自動車を中心とした産業が今後どのように進んで行くべきか,有識者及び経営者の 方々の叡智の集まり(集合知)から有益な解を模索して行きたいと考えている。 第3章 EV化に伴うマーケティング視点,及び業務プロセス変化に関する検討 1.マーケティング戦略視点からの変化見通しの検討 前章までで自動車産業におけるHV及びEVの現状と変化動向,及びHVからEV に向けての変化方向を見てきた。エコカーに関する開発競争は,一見HVに焦点が当 てられているように見えるが,大手各社は間違いなくその先となるEVを見据えて取 り組んでいる。

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このような状況の下,中部大学・産業経済研究所では有識者及び経営者の方々を対 象に「エコカー(環境対応車)の進展と自動車産業の将来変化に関するアンケート調 査」を実施した。実施時期は平成22年3月,調査方法はインターネットアンケート法 (調査票の送付・回収ともにインターネット利用)により実施した。このアンケート 調査の対象層は,事業の周辺環境を敏感に嗅ぎ取り速やかに事業経営に反映し実践す ることに留意されている経営層の方々,また社会変化や技術革新・開発の変化方向を 常にウォッチし深い見識と洞察力をお持ちの学者,経営コンサルタント,調査研究者 の方々である。その方々に対して我々研究メンバーが想定した変化仮説を質問形式で 尋ねご回答いただいた。その貴重なデータである。 以下ではその貴重な調査データをもとに,EV化に伴う自動車業界のマーケティン グ戦略策定に関連する環境変化の可能性といった視点から考察,検討を行う。 図表3−1−1(質問)「10∼15年後の自動車のエネルギータイプの見通し」 出所:中部大学・産業経済研究所「エコカーの将来に関するアンケート」2010年 ①10∼15年後の自動車のエネルギータイプ 始めに10∼15年後の自動車エネルギー・タイプに関する見方から把握する。 最も支持率が高かったのは,「EV等化石燃料に頼らないクリーンエンジンが主流 になっていると思う」という見方で44%,それに続いて「ガソリンと電気モーター併 用のハイブリッド車が主流になっていると思う」で41%であった。「これまでのガソリ ンエンジン,ディーゼルエンジンが低燃費化を実現し主流になっていると思う」は 9%と低水準である。 これまでの化石燃料エンジンの低燃費化に期待する見方も約1割の支持があるもの の,EV等クリーンエンジンとHVを支持する割合が圧倒的である。地球環境重視の 価値観の高まりを背景に自動車のクリーンエンジン化に向けての変化ニーズは大変強 く,この変化期待ニーズをベースに自動車産業は変革を進めるべきと見ることができ る。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 アンケート (平成 22 年3月) (%) 9% 41% 4444% % 66% % 1% ①ガソリンエンジン  が主流 ②ハイブリッド車  が主流 ③EV等クリーンエンジン  が主流 ④その他 ⑤解答なし

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②EV化の中での業界のモノづくり文化,統率力の変化の可能性 この質問を用意した趣旨は,クルマの電子電気機器化の進展がこれまでの自動車づ くりの産業構造を今後大きく変革させるのではないかといった問題意識と仮説によ る。この質問に当たって用意した説明文を参考までに以下に掲載する。 〈質問説明文〉日本の技術開発力が誇る代表的なグローバル製品は,「自動車」と 「デジタル家電,特にパソコン(PC)」といわれます。ところがこの2つの製品は, 「自動車が高付加価値」を維持発展させてきたことに対して,「PCは急速に価格低 下し付加価値は限定的」と非常に対照的な一面があります。 この状況に関する1つの見方として,「自動車は多くの部品がメーカーや車種に固 有の設計となっており,それらを製品統合に向けて擦り合せることが不可欠」,それ に対して「PCはほとんどの部品・機能が業界標準に準じており,それらを選択・組 み合せる能力があれば求める機能は比較的容易に実現可能」とされます。そのような PCに代表されるデジタル家電製品は,早期に急速な価格低下に見舞われかねず,結 果としてコモディティ化が進むと見られています。 ところで,電気自動車に代表されるエコカーの時代になると,これまでの自動車業 界の「擦り合せ型」の中に,デジタル家電業界の「選択・組合せ型」の特徴を部分的 であれ,併せ持つことになるといった見方も一部に見られます1) この説明文でも示しているように,EV化はおそらく自動車産業構造に一大変革を 招来する可能性があるが,この点についてはまた後の質問回答結果とともに触れるこ ととする。 回答選択肢は以下の4つで,その回答率は以下のようである。 〈①〉 既存完成車メーカーが「擦り合せ型」の取組みを継続・ 強化し,統率力を発揮し続けると思う。 :11% 〈②〉 「擦り合せ型」と「選択・組合せ型」が混在するが,従 来の「擦り合せ型」の重要度が依然強いと思う。 :41% 〈③〉 「擦り合せ型」と「選択・組合せ型」が混在するが,PC のような「選択・組合せ型」の重要度が上回ると思う。 :28% 〈④〉 デジタル家電業界と同様に「選択・組合せ型」中心へと 移行し,これまでの自動車完成車メーカーの統率力は弱 くなると思う。 :15% 〈⑤〉 その他&回答なし :5%

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図表3−2−2には昨年のほぼ同時期に我々で実施した全く同じ質問でのアンケー ト結果2)も掲載した。僅か1年間においての意識変化から把握することとしたい。 平成22年度で最も支持率の高かったのは「〈②〉両型混在するが擦り合せ型重要度 が依然強い」で41%である。しかし1年前の平成21年度の同支持率は50%であったこ とからすると1年間で約10%減少したことになる。 また以下のように同種の選択肢の支持率を合算し,1年前と比較すると以下のよう である。 『擦り合せ重視』 〈①〉+〈②〉:52%(1年前 62%) 『選択組合せ重視』 〈③〉+〈④〉:43%(1年前 36%) ほぼ同じ対象層からの回答結果のもと,僅か1年間での支持率変化が7∼10%見ら れるという事実は重要な変化と受け止めるべきではなかろうか。 図表3−1−2 (質問)「EV化の中での業界のモノづくり文化,統率力の変化の見通し」 出所:中部大学・産業経済研究所「エコカーの将来に関するアンケート」2010年 なお『擦り合せ重視』の見方には,世界に誇る日本の自動車産業界の強さへの信頼 感や期待へのこだわりに基づく既存構造への継続希望意識が,また『選択組合せ重視』 の見方には既存構造の変化に向けての改革期待と不安意識などが複雑に入り混じって いるのが実情ではないかと考えられそうである。 実はこの2つの型の支持層の間には,他の多くの質問に対する回答において非常に 大きなギャップがあることも分かった。多くの場合,『選択組合せ重視層』は変革へ 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 昨年度アンケート (平成 21 年 2 月) 12% 50% 2424% % 12% 1% 0% 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 今年度アンケート (平成 22 年 3 月) (%) 11% 41% 2828% % 15% 3% 2% ①既存完成車メーカーが  「擦り合せ型」を強化し  統率力を発揮 ②両型混在するが、  「擦り合せ型」  重要度が依然強い ③両型混在するが、  「選択・組合せ型」  重要度が上回る ④「選択・組合せ型」中心へ  移行し既存完成車メーカー  の統率力は弱体化 ⑥回答なし ⑤その他

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の反応が相対的に強く,『擦り合せ重視層』は変革への反応が相対的に慎重であるこ とが特徴的である。以下においては参考のためこの両者を表側としてクロス集計を 行った結果も併せて掲載する。 図表3−1−3(質問)「新たな価値判断基準の設定必要性」 出所:中部大学・産業経済研究所「エコカーの将来に関するアンケート」2010年 ③これまでのエンジン排気量に代わる新たな価値判断基準設定の必要性 「自動車の価値基準が走りのよさから地球環境への対応力へと変化すると思う。」と の質問で「はい」との回答率は全体で68%,クロス集計による「選択組合せ重視層」の 同回答率は74%,「擦り合せ重視層」は65%と選択組合せ重視層が約1割上回った回 答結果となっている。 これまでの自動車の価値基準は排気量をベースにした馬力,トルク,運転操作性と いった要因が重視されてきた。しかし今後はCO2,NOx・PM等の厳格な排出抑制対 応が必須のものとして受け止められるべき時代が到来するとみるべきである。この変 化はクルマの全体的なコンセプト,さらには設計思想を根底から変革させるものとし て受け止めるべきものである。アンケート回答率で7割弱の方々が,自動車の価値判 断基準は地球環境への対応力に移行するとみており,自動車コンセプトの基本設定を 見直すべき時期が到来していることが認識される。 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) (%) 68% 65.4% 74.4% 24% 26.9% 18.6% 8% 8% 7.7% 7.7% 7% 7% 全 体 擦り合せ 重視層 選択・ 組合せ 重視層 はい いいえ 無回答

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④ エンジン駆動系の機械部品メーカーの取引量減少,反面モーターや電装品供 給メーカーとの取引量増加可能性 「自動車の部品調達額は,電子・電機機器部品メーカーからの調達が増大すること によって,自動車部品メーカーの部品市場での地位が低下すると思う。」との質問で 「はい」との回答率は全体で61%,クロス集計によると「選択組合せ重視層」72%, 「擦り合せ重視層」52%である。 自動車完成車メーカーによる部品調達額に占める電子関連部品の割合は既に40% 強,とりわけHVでは60%以上3)に達している。また現在の自動車の部品点数は約3 万点とみられるがEV化の進展次第では1千点以下4)にまで減少する可能性があると いわれる。勿論単純な部品点数計算ではなく,電子関連部品のモジュール化の一段の 進展が想定されてのことである。アンケート結果において,特に「選択・組合せ重視 層」の反応が相対的に高いことが注目される。 図表3−1−4 (質問)「機械部品メーカーとの取引量減少,電装品 関連メーカーとの取引量増加の可能性」 出所:中部大学・産業経済研究所「エコカーの将来に関するアンケート」2010年 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) (%) 61% 51.9% 72.1% 36% 48.1% 23.3% 3% 0.0% 4.7% 全 体 擦り合せ 重視層 選択・ 組合せ 重視層 はい いいえ 無回答

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⑤ 走りの性能はモーター,電池,インバータによる走行制御技術が重要に。大 手自動車メーカーはこの技術の内製化,提携関係強化を推進可能性 「電子制御技術が基幹部品となり,大手自動車メーカーはこの基幹部品技術の内製 化や提携関係強化を推し進めると思う。」との質問で「はい」との回答率は全体で 87%,クロス集計による「選択・組合せ重視層」86%,「擦り合せ重視層」90%ある。 我が国の主要完成車メーカーは既にモーターの内製化を志向し,現状では内製化を ほぼ実現してHV,EVに取り組んでいる。また二次電池,インバータについても内 製化に向けて注力しているとみられる。電池については主要な電子電気・バッテリー 関連メーカーが本業の拡大・発展を目指して開発に取り組んでおり,完成車メーカー としては資本関係も含めより密接な取引を求めている。この両者の相互関係は,当面 電池製造関連企業群の技術開発・製品化力に依存した関係が強く認識されるであろう が,次第にクルマ全体の構想力,企画力,コンセプト設定,事業化力のある企業にイ ニシアティブは移行していくと見るのが自然ではなかろうか。最も近い存在はこれま での完成車メーカーのように思えるが,電子電気関連企業もパワーの蓄積次第では本 格的なイニシアティブを握る可能性も十分あると思われる。経営戦略,事業戦略, マーケティング戦略等の立案・策定・実行力が問われることを意識した取組みがのぞま れる。 図表3−1−5 (質問)「走行制御技術の内製化,提携関係の強化推進可能性」 出所:中部大学・産業経済研究所「エコカーの将来に関するアンケート」2010年 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) (%) 87% 90.4% 86.0% 10% 7.7% 10.0% 11.6% 3% 1.9% 全 体 擦り合せ 重視層 選択・ 組合せ 重視層 はい いいえ 無回答 2.3%

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⑥ EV化でエンジン関係整備の不要化可能性(各種調整・整備作業,エンジン& ブレーキ等オイル交換などの不要化で販売店収益は大幅減少化) 「電子化の進展により,メンテナンス・サービスの中心はこれまでの機械修理型か ら電子機器に対する保守サービス型に変化すると思う。」との設問で「はい」との回答 率は全体で67%,クロス集計による「選択・組合せ重視層」86%,「擦り合せ重視層」 52%である。両者の反応のギャップは大変大きい。この後でも触れる事となるが,流 通・アフターケア関連の質問に関する両者の反応のギャップは大きく,とりわけ選択 組合せ重視層の反応率が全般的に高いのが特徴的である。 一般的見方としてEV化の進展に伴ってメンテナンスの中心は電気モーターはじめ 電子機器関連部品へのケアに重点が移行する。さらに電子機器関連の単純修正から アップデートへの移行可能性も高くなる。またこれまでの機械部品メンテナンスの領 域は格段に縮小することも予想されるだけに,ディーラー,(ガソリン)サービスス テーション等においては,教育研修の実施も含め新たな仕組み構築が要請されること になろう。なおHEVの販売台数が急激に伸長しているが,HVへの流通・アフターケ アへの取組みは将来のEV化への移行のための事前準備段階として受け止めるべき重 要なステップと位置付けることができる。 図表3−1−6 (質問)「電子化の進展がクルマのメンテナンスサービスを変革させる可能性」 出所:中部大学・産業経済研究所「エコカーの将来に関するアンケート」2010年 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) (%) 67% 51.9% 86.0% 31% 48.1% 11.6% 2% 0.0% 全 体 擦り合せ 重視層 選択・ 組合せ 重視層 はい いいえ 無回答 2.3%

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