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<論説>現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(二)--民法と憲法の関係および民法と行政法の関係についての一考察

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(1)現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(二). 現代立憲主義国家において国家法として 民法を制定する意味(二) 一一民法と憲法の関係および民法と 行政法の関係についての一考察本一一ー. 宮. 第一章. j 宰. t 角 干 タζ. 否 日. 民法と憲法の関係についての現在の議論状況と本稿の課題. 第一節はじめに 第二節. 民法と憲法の関係についての現在の議論状況と本稿の課題. 第三節. 本稿における考察の視角と本稿の構成. 第二章現代立憲主義国家において国家法として民法が制定される意味. 民法と憲. 法の関係および民法と行政法の関係 第一節. 問題の所在. 第二節. 現代立憲主義のもとで国家に認められる性質一憲法学の議論を基礎にお いて. 第三節. 現代立憲主義国家において国家法として民法が制定される意味一民法と 憲法および民法と行政法の関係の理論的枠組. 一.はじめに 二.現代立憲主義における私法秩序の形成の位置づけ 三現代立憲主義国家において国家法として民法が制定される意味. 民法と憲. 法の関係および民法と行政法の関係の理論的枠組. ( 1 ) 近代立憲主義国家において国家法として民法が制定される意味. 民法と. 憲法の関係についての理論的枠組の考察(以上5 3巻 1 号) ( 2 ) 現代立憲主義国家において変わらないことと変わること. 私法秩序に対. する閏家の介入の法的位置づけ 第四節小括(以上本号〕 第三章. 憲 法2 9条 l項および 2項の解釈一現代立憲主義国家において国家法として 民法が制定される意味を基礎において(以下次号). 第四章本稿の結論と今後の課題. 103(402)一.

(2) 近 畿 大 学 法 学 第5 3巻第 2号. 第二章. 現代立憲主義国家において国家法として民法が制定. される意味一一民法と憲法の関係および民法と行政法の関. 係(承前). 第三節. 現代立憲主義国家において国家法として民法が制定される意味. 一一民法と憲法および民法と行政法の関係の理論的枠組 三.現代立憲主義国家において国家法として民法が制定される意味 一一一民法と憲法の関係および民法と行政法の関係の理論的枠組 ( 2 ) 現代立憲主義国家において変わらないことと変わること. 一一私法秩序に対する国家の介入の法的位置づけ. ( a ) 変わらないこと一一国家法として民法を制定する意味と民法と憲法の 関係 前述(1)仰に示したような近代立憲主義国家において国家法として民法が 制定される意味は,近代立憲主義国家が現代立憲主義国家へと変化するこ とによって何らかの影響を受けるのであろうか。 現代立憲主義国家においては,国家の役割が最小限度に限定されていた 近代立憲主義国家のもとで生じた諸問題を解消するために国家の社会への 介入が一定程度是認されるようになり,それに伴って行政権の役割が増大 した仰。しかし,このような国家の役割を認める現代立憲主義は,近代立 憲主義の基礎のうえに成り立っているとされる ω。すなわち,現代立憲主 義とは,近代立憲主義を原型として維持しながらそれに対して修正を加え *本稿においては敬称を略させていただきました。. C l $ 宮津俊昭「現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味 ( 一) J近法 5 3巻 l号 1 1 8( 81)ー 1 3 0( 6 9 )頁 ( 2 0 0 5年)参照。 仰本章第二節二. ( 5 ) (宮津・前掲注C l $ 1 1 4( 8 5 ) ー1 1 6( 8 3 ) 頁)参照。 仰 本章第二節二 ( 5 ) (宮津・前掲注C l $ 1 1 4( 8 5 ) ー1 1 6( 8 3 ) 頁)参照。 -104(401).

(3) 現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(二). たものであるといえよう O このことを基礎において社会において既に形成 されている私法秩序と現代立憲主義国家の関係を考えれば,現代立憲主義 国家は,近代立憲主義国家と同様にその私法秩序をそれとして認めてそれ に拘束される一方で,社会に介入することによってその私法秩序から生じ る問題に対して修正を加えることができるようになった,という関係であ ると考えられる O 以上から原則として,近代立憲主義国家のもとでの民法 制定の意味が現代立憲主義国家においても同様にあてはまると考えられる 仰。そのため,前述(1)( e )仰に示した近代立憲主義国家における民法と憲法 の関係も現代立憲主義国家において維持されると考えられる O. ( b ) 変わること(その 1)一一裁判規範としての民法に対する国家の介入 吋 (. 「私法秩序の修正」という意味における裁判規範としての民法に対する 国家の介入 それでは,私法秩序から生じる問題に修正を加えるための現代立憲主義. 国家による社会への介入は民法との関係においてどのように考えればよい のであろうか。 まずこのような介入のかたちとして考えられるのが,私法秩序に拘束さ れて制定された裁判規範としての民法そのものに対する国家の介入,すな わち,立法権の属する国家機関が私法秩序において形成された規範の内容 と異なる内容を裁判規範として制定するというかたち(以下「裁判規範と しての民法に対する国家の介入」と記述)である州市。. Cl~. なお,. I 国家法としての民法」の内容が社会において既に形成されている私法. 秩序に拘束されることは, I 私法学(民法学) J が国家の介入をその検討対象か ら外すべきであるということを合意するものではな L、。後述( b )および ( c )参照 0 Cl~. 宮津・前掲注a l @ 1 2 8( 7 1 )1 3 0( 6 9 )頁 。. Cl~. なお,本稿においては既述の通り,近代立憲主義から現代立憲主義へという 流れのなかで国家の役割が変化したことを,裁判規範としての民法に対する国 家の介入の理論的な基礎としている O そのため,この理論構成のもとでは,裁ノ ~105(400) 一.

(4) 近 畿 大 学 法 学 第5 3巻第 2号. しかし現代立憲主義国家も,近代立憲主義国家と同様に私法秩序に拘 束されている例。すなわち,現代立憲主義国家もまた,社会において形成 される私法秩序に含まれる規範の内容を,裁判規範としての国家法として の民法の内容としなければならないへこのような国家に対する私法秩序 による拘束を鑑みれば,国家の介入として私法秩序において定められてい る内容と異なる内容を裁判規範として制定する際には, I 国家による新た な私法秩序の形成」ではなく,あくまでも「自律的に形成された私法秩序 の修正」でなければならな L川。そのため,その介入に際して,立法権の 属する国家機関は,裁判規範として L、かなる内容をも定めうるというわけ. 、判規範としての民法に対する介入を国家に義務づける,という結論を導くこと はできな L、。裁判規範としての民法に対する介入が国家に義務づけられている との結論を導くためには,別個の法理論的根拠が提示される必要がある。そし て,そのような法理論的根拠の提示にあたっては,憲法学,法哲学,更には国 家機関たる行政の介入についての理論の蓄積のある行政法学における議論をも 視野に入れて考察を行うことが求められると考えられる(本稿第一章第二節一.. ( 3 ) ( a ) ( ア ' ) (宮津・前掲注Q~63 ( 1 3 6 )6 7( 1 3 2 ) 頁)および同 ( b ) ( 乃(宮津・前掲注 Q~76. ( 1 2 3 )8 4( 1 1 5 ) 頁)で検討した国家の基本権保護義務論に関する議論. は,本稿に示す理論的枠組のなかにおいて,この問題についての議論として位 置づけることができると考えられる)。 Q 1 I D. このような裁判規範としての民法に対する国家の介入によって制定された法. 律の解釈方法と,前述(1) (宮津・前掲注 Q~118 ( 8 1 )1 3 0( 6 9 ) 頁)において示 した私法秩序の裁判規範化としての民法の解釈方法との差異に関しては本章第 四節(補論)参照。 。市前述( a )参照。 側. 近代立憲主義国家に関して,前述(1)( e ) (宮津・前掲注Q l $ 1 2 8( 71 )1 3 0( 6 9 ). 頁)参照 0 Q l $ なお,本稿において提示している理論的枠組において,私法秩序に含まれる 規範とは,時間的・継続的な流れを射程に収めた法意識を基礎として形成され. l $ 1 1 9( 8 0 ) 頁)参照)。その た規範を意味している(前掲注側(宮津・前掲注 Q ため,裁判規範としての民法に対する国家の介入が法意識に影響を与え,それ によって私法秩序に含まれる規範が影響を受けて変化するということは否定さ れないと考えられる(前掲注側(宮津・前掲注側 1 2 5( 7 4 ) 頁)も参照)。. 106(399)一.

(5) 現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(ニ). ではな L、。すなわち,その介入には限界が存在するものと考えられる O ( イ ) 裁判規範としての民法に対する国家の介入の限界 前述(吋に示したような裁判規範としての民法に対する国家の介入の限界 国家で‘あることによる憲法上の制約」から導かれる限界と, については, i 「自律的に形成された私法秩序の修正であること」から導かれる限界が存在 する O. i) i 国家であることによる憲法上の制約」から導かれる限界 裁判規範としての民法に対する介入を行う主体が国家である以上,裁判 規範としての民法に対する介入においても,当然に憲法の拘束を受ける O そのため,憲法によって限界づけられた範囲でのみ介入を行うことが可能 となる。例えば,憲法に定められている基本的人権を侵害するような内容 を裁判規範として制定することはできな L 。 、 ここで特に問題となるのは,裁判規範としての民法に対する介入を行う 国家機関である O 立法とは,国家と国民との関係に関する一般的抽象的法 規範(実質的意味の法律)を定立する作用であり,司法とは,具体的な争 訟について法を適用し宣言することによってこれを裁定する作用である, という現在の日本憲法学の伝統的・支配的見解に基づけば,このような裁 判規範としての民法に対する国家の介入は,立法権の属する国家機関に よって行われるものであり,司法権の属する国家機関であるところの裁判 所によっては行われえないものと考えられる a 8 a ω。. ~8@. 立法および司法についての現在の日本憲法学の伝統的・支配的見解について は本章第二節二. ( 4 ) (宮津・前掲注C1 @ 1 1 4( 8 5 ) 頁)参照。なお,本稿において 示した理論的枠組のもとでは,私法秩序に関する裁判所による法形成は認めら れる(前述(l)( c ) ( イ ) i i ) (宮津・前掲注~7@124 ( 7 5 ) 頁)参照)口しかしこれは,裁 判時の私法秩序が制定時の私法秩序から変化している可能性のあること,およ び国家が私法秩序に拘束されていることを基礎としている O すなわち,あくまノ. 107(398).

(6) 近 畿 大 学 法 学 第5 3巻第 2号. i i )I 自律的に形成された私法秩序の修正であること」から導かれる限界 自律的に形成された私法秩序の修正であること」からは,次に 他方, I 。 示す四つの限界が導かれる ω ①. 前提となる私法秩序に含まれる規範の確定の必要性を基礎とした限界 裁判規範としての民法に対する国家の介入は,私法秩序に含まれる規範. の実現によって生じる状況を修正するというかたちで認められるものであ るO そのため,その前提として,その時点での私法秩序に含まれる規範が いかなるものであるのかが明確に表現されたうえで,介入が行われなけれ ばならな L川。その時点での私法秩序に含まれる規範の確定がないままに その規範と異なる内容を裁判規範として制定するということは,国家によ る新たな私法秩序の形成となる O そのため,国家に対する私法秩序による 拘束を逸脱することになる O ただし,立法権の属する国家機関によって定 められた規範であるという意味は失われな L、。そのため,私法秩序に含ま れる規範の確定のないままに裁判規範としての民法に対する国家の介入が 行われた場合には,その介入によって定められた規定は,私法秩序に含ま. 、でも私法秩序に基づいた法形成が裁判所によって行われうることを理論的に基 礎つ守けることができるにとどまり,私法秩序に対する修正が裁判所によって行 われうることを理論的に基礎づけることはできな L 。 、 仰. なお,私法秩序に含まれる規範が,事後の状況の変化に合わせて権利. 義務. 関係の内容が確定するというものであった場合,その事後の状況にあわせて権 利一義務関係の内容をその規範に従って裁判所が確定するというのは,私法秩 序に対する修正ではなく,私法秩序に含まれる規範の内容の実現である O 08~. なお,以下のような「自律的に形成された私法秩序の修正であること」から 導かれる限界は,少なくとも財産に関わる私法秩序に関して,憲法 2 9条 l項お よび 2項を通じて憲法上明文を持って確認されていると解釈することができる と考えられる O この点に関しては,本稿第三章第三節(次号掲載予定)におけ る考察を参照。. 仰. なお,私法秩序に含まれる規範を表現するにあたって,法技術的概念および 法技術的構成を用いる必要のあることについて,前述(l)( d ) (宮津・前掲注帥 1 2 5. ( 7 4 ) ー1 2 8( 71)頁)参照。 108(397)一.

(7) 現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(二). れる規範を排除してそれに代わって適用されるということはなく,私法秩 序に抵触しない限りにおいて適用されるにとどまることとなると考えられ る側O I B O. ②. 裁判規範としての民法に対する国家の介入の方法・内容に関する限界 裁判規範としての民法に対する国家の介入があくまでも私法秩序に含ま. れる規範の実現によって生じる状況の修正である以上,その介入の方法お よびその介入によって定められる規定の内容(以下「介入の方法・内容」 と記述)は無限定に定められうるわけではな~. ¥。本稿の考察を基礎におけ. ば,その介入の方法・内容が,私法秩序に根本的な変質を加えるか否かを 基準として,二つの問題に分けてこの介入の方法・内容についての限界に ついて考察を加えることが必要となると考えられる。 なお,以下で検討を加える二つの問題は,それ自体として本格的考察を Oi~. 私法秩序に含まれている規範の実現が国家の義務となることの理論的基礎に ついては前述(l)( a ) (宮津・前掲注0 1 @ 1 1 8( 8 1 )ー1 2 0( 7 9 ) 頁)を,私法秩序を裁 判規範としての国家法として制定する必要性に関しては前述(l)( c ) (宮津・前掲 注側 1 2 2( 7 7 ) ー125(74) 頁)をそれぞれ参照。. 抑 (. この点に関して,現在の状況において重要となることは,対等な私人間の関 係についての規律のみが介入の前提となる私法秩序というわけではない,とい うことである O もし,何らかの構造的格差の認められる私人間の関係につい て,対等な私人間の関係とは異なる内容の規範が私法秩序のもとで形成されて いる場合,それを裁判規範として制定することは国家の介入とは捉えられな L、。このような裁判規範の制定は,国家の義務であるところの私法秩序に含ま. れている規範の裁判規範化の範曙に含まれるものである。この問題に関して は , I 人の法」に関する現在の議論を基礎とした考察が必要となると考えられる (山野目章夫 I~人の法』の観点の再整理」広中俊雄編「民法研究第 4 号 J. 1 2 9. 頁(信山杜, 2 0 0 4年)は, I 私法的法律関係の主体に関する法的規律を考察対象 とする分野領域」としての「人の法」が私法のほかの分野領域との関係での相 対的な独立性を保つこと,およびそのような「人の法」の重要な支柱のーっと して,一定の人々に共通する特徴を発見し,そうした特徴に即応する法技術を 考究することを示す。また, I 人の法Jを論じる意義については,大村敦志「民 法における『人 J J同『消費者・家族と法J246-248頁(有斐閣, 1 9 9 9年,初出・. 1 9 9 8年)においても示されている〉。 109(396).

(8) 近 畿 大 学 法 学 第5 3巻第 2号. 行わなければならない問題であると考えられる O そのため,以下では,あ くまでも本稿の考察を基礎においた問題の整理を行うにとどめる O (α) 私法秩序の核心にかかわる介入の方法・内容の限界 まず,介入の方法・内容が,私法秩序の核心を否定するものである場合 には,そのような介入は認められないと考えらえる O なぜなら,そのよう な介入は,私法秩序を本質的に変質させてしまうものであり,国家による 新たな私法秩序の形成と評価せざるをえないからである O 問題は,このように国家の介入の認められない私法秩序の核心とはどの ようなものであるのかということ,および,その核心を根本から否定する ということをどのように判断するのかということである O 従来,この問題 は,憲法 2 9条 1項における「財産権」の保障の意味という論点に関して, 主に憲法学において論じられてきた久しかし,裁判規範としての国家法 として制定されているか否かにかかわらず,私法秩序,すなわち私人間の 関係の規律に関して前国家的に社会内部で自律的に形成され,かっ実力と しての強制力を通じて実現されうるという性質を持つ規範の集合は,民法 学の本来的な研究対象であるといえよう O そうである以上,国家の介入の 許されない私法秩序の核心の内容に関する問題は,憲法学と民法学の双方 で,かっ互いの体系的理解を基礎においた本格的な議論による正当化を必 要とする問題であると考えられる制。. 側. この問題に関する憲法学における現在の議論の概要に関しては,本稿第三章 第二節二.. 側. ( 2 ) (次号掲載予定)参照。. 例えば,現在の社会における私法秩序を考えた場合,介入の内容が,自然人 の権利主体性,私的自治の原則,契約自由の原則,私有財産制などを根本から 否定するような内容であるときに,そのような規定は認められないという帰結 を導くことには,少なくとも民法学においては異論のないところであると考え られる(ただし,そもそもこれらの原則に対する例外が私法秩序に含まれる規 範として形成されていた場合には,それを制定法化することは国家の介入とは 捉えられな L、)。これらの原則を「私法秩序の核心」として位置づけるためには,ノ. 110(395).

(9) 現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(二). (β) 私法秩序の核心にかかわらない介入の方法・内容の限界. 他方,私法秩序の核心を本質的に変質させることのない国家の介入の方 法・内容の限界が具体的にどのようなかたちであらわれるのかという問題 については,従来の議論において, I 公共の福祉」を根拠とした基本的人 権の制約の限界の問題のうち,とくに経済的自由に対する制約の問題とし て,憲法学において論じられてきた問題と同じものであると考えられる忙 しかし私法秩序に対する介入である以上,やはり民法学においても,国 家が社会に対して L、かなる介入を行 L、うるのかという問題を,憲法学・行 政法学といった実定法学における議論に加えて法哲学・政治哲学などにお ける議論をもふまえて本格的に考察することが必要であると考えられる。 そして,家族・親族関係についての規範もまた私法秩序に含まれる規範で あること仰を鑑みれば,経済的自由に対する制約という論点にとどめるこ となく議論を行うことが必要であろう ③. O. 裁判規範としての民法に対する国家の介入の目的を明示する必要性を 基礎とした限界 裁判規範としての民法に対する国家の介入は,あくまでも私法秩序に含. まれる規範の実現によって生じる状況の修正である. O. そのため,なんのた. めにそのような修正を加えるのか, という意味における目的の明示が必要 となる O すなわち,私法秩序に含まれる規範の実現によって生じる状況に 、民法学と憲法学の双方の議論を基礎において正当化されることが必要であると いえよう O 側 この問題に関する憲法学における現在の議論の概要に関しては,本稿第三章 第二節二. ( 2 ) (次号掲載予定)参照。. l J1 1 1 3頁(有斐閣, 2 0 0 4年)は,家族に 側 大 村 敦 志 『 家 族 法 〔 第 2版捕訂版 J 関する法秩序が,市民社会の法であるところの民法の中心的な問題であること を明確に示している(前掲大村 1 3頁では, I ……,家族法は社会の基本的な構成 原理を定める法なのであり,民法二市民社会の法の中心に位置するものと考え られるのである Jとされている)。. 111(394).

(10) 近 畿 大 学 法 学 第5 3巻第 2号. はいかなる問題が含まれているのかという点,その問題を解消するために 私法秩序に含まれる規範に修正を加えることが必要である点が,それぞれ 明示されなければならないと考えられるヘ さらに,私法秩序に含まれる規範の実現によって生じる状況の修正であ る以上,そこに含まれている問題を解消するために必要な限りの修正であ ることが求められる。いいかれば,裁判規範としての民法に対する国家の 介入によって定められた規定の適用範囲は,その介入の目的によって限界 づけられる,ということになる O 前提となる私法秩序に含まれる規範の機能を基礎とした限界. ④. 裁判規範としての民法に対する国家の介入の前提となる私法秩序に含ま れる規範は,社会において一定の機能を果たしている。裁判規範としての 民法に対する国家の介入は,この私法秩序に含まれる規範の機能に修正を 加えることとなる O しかし,前述③においても示したように,あくまでも 私法秩序に含まれる規範の実現によって生じる問題の解消に必要な限りで の修正であることが求められる O すなわち,当該問題に関わりのない機能 。 、 については,それが失われないようにしなければならな L そのため,裁判規範としての民法に対する国家の介入に際して,当該私 法秩序に含まれる規範の機能のなかで,当該問題に関わりのある機能につ いては,それにいかなる修正を加えるかについての考量が必要となる側。 これに対して,当該問題に関わりのない機能については,当該修正によっ てそれが失われないようにするための考量が必要となる O このような考量 が行われて,当該修正によって当該問題に関わりのない機能が失われない. それぞれの点がどの程度まで明示されれば修正を加えるに十分であると判断 されるかについては,具体的な事案ごとに異なってくるものであると考えられ 。 、 る。この点についての考察は今後の課題とした L 側 この必要性については前述⑧参照。 側. -1 1 2(393)一.

(11) 現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(二). ように裁判規範としての民法に対する国家の介入がなされた場合には,そ の介入によって定められた規定は,私法秩序に含まれる規範に代わって適 用されると考えられる. O. しかし,私法秩序に含まれる規範のもつ機能のう. ちで裁判規範としての民法に対する国家の介入において考量がなされずに 失われてしまう機能が存在する場合,介入によって定められた規定は,そ の機能の失わせることのない範囲に適用が限定されると考えられる。 (補論)裁判規範としての民法に対する国家の介入と消費者契約法. ( 明. i)本補論の目的 本補論においては,以上に示した裁判規範としての民法に対する国家の 介入についての理論構成を具体的に示すために,この理論構成を基礎にお いて具体的な問題における議論の整理を行う は ,. O. その対象として,以下で. 2 0 0 1年 4月より施行された消費者契約法仰の総論に関する実体法的議. 論を取り上げる側。以下,. i i ) において,消費者契約法の立法の背景・趣. 旨・目的についての立案担当者の解説を概観したあとに, i i)において, 消費者契約法成立前後に示された消費者契約法の総論にかんする実体法的 な議論を概観する. O. そして i v ) において,本稿の提示する理論的枠組を基. 礎においた議論の整理を行う. O. i i ) 消費者契約法の背景・趣旨・目的-立法担当官の解説を基礎として ①. 立法の背景 消費者契約法立法の背景としては,近年の高齢化,グローバル化,サー. ビス化等の急速な進展に伴う契約・販売方法に関するトラブルの増加が示. 側. 以下, I 消費者契約法」はこの 2 0 0 1年 4月より施行された消費者契約法を指す ものとして記述する。. 側. 以下本補論においては,あくまでも議論の整理を行うものであり,消費者契 約法の問題点を新たに示すことを目的とする検討を行うわけでも,あるべき消 費者契約法の形を示すことを目的とする検討を行うわけでもな L、。また,個別 の制度・条文に関する議論を直接の検討対象とすることもな L 。 、 一. 1 1 3(3 9 2).

(12) 近 畿 大 学 法 学 第5 3巻第 2号. されている側。このようなトラブルに対処するために適正な消費者契約の 確保が必要となるが,このような適正な消費者契約の確保に向けた従来の 対応には次のような問題点があることが示されるヘ まず,民法による対応について,契約が対等な当事者の合意に基づき成 立することを前提としている意思表示に関する規定(詐欺・強迫・錯誤等) の要件の厳格性,および,公序良俗(民法 9 0条)・信義則(民法 l条 2項) などの一般条項の抽象性による予見可能性・法的安定性の低さ,がそれぞ れ問題点として示される例。 続いて,個別の消費者保護立法に関しては,その適用範囲がそれぞれ特 定の分野に限定されているため,脱法的な悪質商法や規制緩和の進展に伴 い活発となるニュー・ビジネスについて後手に回らざるを得ないことが示 される制。さらに,個別法における中心的な手法である行政規制について は,契約の効力否定など私人間の権利義務に直接的な効果をもたらすもの ではないため消費者の救済は反射的・間接的なものにとどまること,およ び,政策運営の基本原則が事前規制から市場参加者が遵守すべきルールの 整備へと転換しつつあるなかで,消費者政策といえども事前規制の新設・ 強化は厳しく抑制されざるをえないこと,が問題となるとされる側。 そして,各種の非法令的措置(国民生活センター・消費生活センターに おける相談受付体制の確立,国民生活審議会の調査審議をふまえた各業界 の約款見直し)に関しては,消費者が自己の権利を実現するための強制力 ある手段(裁判規範)として活用することはできないことから,結局,消. 側. 内閣府国民生活局消費者企画課編『逐条解説消費者契約法〔捕訂版 J J3 4頁 (商事法務, 2 0 0 3年 ) 。. a~~. 内閣府国民生活局消費者企画課編・前掲注側 4頁 。. 側. 内閣府国民生活局消費者企画課編・前掲注側 4頁o. a~Þ. 内閣府国民生活局消費者企画課編・前掲注側 4頁 。. 側. 内閣府国民生活局消費者企画課編・前掲注側 4 5頁 。. 1 1 4(3 9 1)一.

(13) 現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(二). 費者トラブルの根本的な解決につながらないことが指摘されている爪 ②. 立法の趣旨・目的 消費者契約法の趣旨は,契約の締結・取引に関して消費者と事業者との. 間に存在する構造的な「情報の質および量並びに交渉力の格差」に着目し, 消費者に自己責任を求めることが適切でない場合のうち,契約締結過程お よび契約条項に関して消費者が契約の全部または一部の効力を否定するこ とができるようにする場合を,新たに法律によって定めることであるとさ れる例。 他方,消費者契約法の目的としては,消費者をめぐる環境が急速に多様 化,複雑化する中で,消費者と事業者双方が自己責任に基づいて行動でき ……,消費者をめぐる契 る環境の整備が不可欠であることを基礎として, I 約に関してトラブルが生じた際に,消費者自らによる救済を行 L、やすくす ることを通じて『消費者の利益の擁護』を図ること」が直接の目的となる とされている側。. i i)学説における総論に関する議論の概観 消費者契約法に全面的な肯定的評価を加える見解ω. ①. この見解においては,まず,消費者契約法の五つの意義が示される側。 それは,消費者と事業者との契約(消費者契約)そのものをターゲットと した特別な民事ルールをはじめて立法化した点目的,すべての事業者をもれ なく対象とするという意味において包括的な民事ルールである点胸,法的. 。 帥. 内閣府国民生活局消費者企画課編・前掲注側 5頁 。 内閣府国民生活局消費者企画課編・前掲注側 3 5 3 7頁 。. 側. 内閣府国民生活局消費者企画課編・前掲注側 3 7頁 。. ~9$. ( J O $ 落合誠一「消費者契約法j] 1 7 1 1 8 7頁(有斐閣, 2 0 0 1年 ) 0 ( J O $ 落合・前掲注( J O $ 17 ト1 7 3頁 。 7 1頁 。 時 。 落合・前掲注側 1 J O $ 17 2頁。 。時落合・前掲注( 1 1 5(3 9 0).

(14) 近 畿 大 学 法 学 第5 3巻第 2号. ルールとしての予見可能性に極力配慮、している点側,市場メカニズ、ムをよ り重視する経済社会システムへの転換をはかるという明確な政策目標のも とに,その環境整備の一環として自覚的に立法された法律であるという 点眠現行の民法および商法あるいは業法による消費者保護を排除するの ではなく,それに加えて新たな消費者保護の法的ルールを創設した点の五 つである側。 以上のような意義を持つ消費者契約法の目的として,この見解では,次 の二つが挙げられている。第一が,わが国の現在極めて深刻な状況にある 消費者契約関連紛争への緊急の対応という現実的目的である慨。第二が, 市場メカニズムをより重視する社会への転換のための環境整備という理念 1 0 0 的目的である 0. さらに,この見解においては,消費者契約立法による国家介入の正当性 ……,わが国の経済社会 に関して次のように述べられている O すなわち, I システムを市場メカニズムをより重視するものに転換させることが国家目 標となると,国家による立法であっても,それが国家による介入である以 上,国家介入に正当性が認められるもの以外は基本的に認められないこと になる O 市場メカニズ、ムは本来的に自律的なものであり,いわゆる見えざ る手により自動的に調整されるシステムであるから,そのメカニズムを阻 害するような介入は許されないのである O したがって,消費者契約法立法 についても当然,市場介入につき正当理由がなければならず, もしそれが. 時 。. 落合・前掲注 (~OU 7 2頁 。. (~O~. 落合・前掲注(~O~172-173 頁。. 側 落 合 ・ 前 掲 注 側1 7 3頁 。. 時 。 落合・前掲注側 1 7 3頁。この目的の具体的な内容については落合・前掲注側 1 7 5 1 7 7頁参照。. 。 1 @. 落合・前掲注 (~O~173 頁。この目的の具体的な内容については落合・前掲注側. 1 7 7 1 7 8頁参照。 116(389)一.

(15) 現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(二). ないとなれば,消費者契約法そのものの立法化は,否定されるべきことに なる」とされる叱そのうえで,消費者契約法の正当理由として,第一に, 消費者と事業者との聞に存在する情報力の格差を原因とする市場の失敗の 防止・是正日I~ が,第二に,社会的価値として維持すべき公平性の観念日I~ が,. それぞれ示される. O. なお,消費者契約法にかんする今後の課題として,この見解では,消費 者契約法の運用・定着状況を見極めつつ見直すべき問題点を明らかにし, 早期の改善を図ることが示されている 0 1 4 0 しかし, I 見直しにあたっては, 市場メカニズムをより重視するとの観点の維持は重要であり,したがっ て,今後とも国家による介入は,効率性と公正性の観点からともに正当性 が認められる範囲内で行われるべきである. O. 消費者契約法といえども,基. 本的な経済社会システムとの整合性は維持されねばならな l 'からである」 とされる仰。 ②. 消費者契約法の問題点を指摘する見解 前述①のような消費者契約法に全面的な肯定的評価を加える見解が存在. する一方で,消費者契約法の問題点を指摘する見解も多く存在する. O. (α) 指摘される問題点. 第一に,市場メカニズムのなかで自己決定・自己責任に基づいて行動す ることを可能にするための環境の整備という目的のみが消費者契約法の立 法の理念的目的として示されている,という点が問題とされている O この 点を指摘する見解は,民事ルールとしての消費者契約法の立法を正当化す るためには, 自己決定・自己責任を可能とする環境整備という市場メカニ. 。 l D 落合・前掲注( i O n7 9頁. 0. 。. ( i l $ 落合・前掲注側 1 7 9頁 。 1 $ 落合・前掲注( i O n7 9 1 8 0頁0 (îl~ 落合・前掲注( i O n 8 3頁 。 。1~ 落合・前掲注側 1 8 3頁 。 -1 1 7(388)一.

(16) 近 畿 大 学 法 学 第5 3巻第. 2号. ズムを原理的な基礎とした目的だけではなく,経済的・社会的な構造的格 差のなかで劣位にある消費者の利益保護という「公正」あるいは「配分的 正義」という概念を原理的な基礎とした目的も必要となるとする Ol~。また,. この問題に関連して,私法における契約自由・自己責任・市場原理の再検 V および私法の自立性・自律性のもつ意味の再検討の必要性側 討の必要性。I. 。 1 $. 河上正二「総論」河上正二ほか『消費者契約法. 立法への課題(別冊. NBL. n o .5 4 ) J 7頁(商事法務研究会, 1 9 9 9年),落合誠一=磯村保(司会) I~ 消費 者契約法」をめぐる立法的課題一一討論」私法 6 2号 5 8頁 [ } I [演昇発言 J ,同 7 3 7 4 頁〔河上正二発言 J(2000 年),星野英一 I~ 消費者契約法(仮称)の具体的内容 について」を読んで JNBL6 8 3号 1 5 1 6頁. ( 2 0 0 0年),潮見佳男「比較法の視点 から見た『消費者契約法 J J 同「契約法理の現代化 J4 1 4 4 1 6頁,同 4 2 2 4 2 3頁 (有斐閣, 2 0 0 4年,初出・ 2 0 0 1年)。 側. 落合=磯村(司会)・前掲注( J 1 $ 5 7頁〔広渡清吾発言J ,落合=磯村(司会)・前 掲注0 1 $ 6 3 6 4頁〔星野英一発言 J ,潮見佳男「ドイツ債務法の現代化と日本債権. 0 9 4 1 0頁(有斐閣, 法学の課題」同『契約法理の現代化 J4. 2 0 0 4年,初出・ 2 0 0 1. 年 ) 。 。1~. 小塚荘一郎「消費者契約法と商法」ジュリ. 1 2 0 0号 8 8頁 ( 2 0 0 1年)。なお,“消. 費者契約法と規制緩和"に関する研究会(第 2期)報告書『私法としての消費 者 契 約 法 一 一 実 効 性 の ケ ー ス ス タ デ ィ ー ( 損 保 ジ ャ パ ン 記 念 財 団 叢 書 No.. 6 8 ) J1 3頁 ( 2 0 0 4年)では,消費者契約法が「規制」そのものであるならば改 革の対象となる規制と同様の費用・便益分析がなされるべきであること,およ び「規制」であるならば「市場の失敗」があり得るというだけではその正当化 としては十分とは言い難いこと,並びに,消費者契約が「民事ルール」ないし「私 法」に属する点にも疑問は持たれていないこと,および「私法Jとは時局の変 化や政策の選択から独立した自立性を有するものであると伝統的には理解され てきたこと,がそれぞれ示されたうえで次のように述べられる O 「もとより,このような「私法』としての側面を強調することは,規制の費 用・便益分析を省略するための遁辞となってはならな L、。言いかえると,消費 者契約法が政策判断とは別次元の存在として,費用や効率性による正当化から 解放されるためには,. もはや,技術的に定義された「事業者』と『消費者』の. 関係に限定して適用される特殊なルールではなく,契約法のより根源的な理念 に位置づけられる必要があるのである。そして,法律家には,時代を超えてそ の価値を守る覚悟が要求されよう o ~規制改革と消費者契約法」を真に論じよう とする限り,規制の効果を本格的に分析するか,私法の自律性を擁護する立場 を貫くか,いずれかに与する緊張感を免れることは許されないのではあるまいノ. 1 1 8(3 8 7).

(17) 現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(二). という,私法そのものに対する根本的な問題提起もなされている O 第二に,消費者契約法の立法に際して,予見可能性にもとづく「明確性」 の要請が強調され,その結果として明確でない規定はおかないという基本 的態度決定がなされた,. と考えられる点を問題点として指摘する見解があ. る( 1 1 9 0. 、か(前掲“消費者契約法と規制緩和"に関する研究会(第 2期)報告書 1 3頁)J o. ( i l $ この点について,星野・前掲注( i l$ 15頁では, I 明確性」とは「公正」を実現す るための手段であるので「公正」の要請が「明確性」の要請に優先することを 仮に『明確性」が確保できなくても,それはやむをえないことと 理由として, I せざるをえないはずである」とされている O また,沖野員己 I~ 消費者契約法. (仮称 ) J に お け る 「 契 約 締 結 過 程 』 の 規 律 JNBL 685号 20-21頁,同 23-25頁. ( 2 0 0 0年)は,①行政的規律における空間面・時間面での間隙, I 規制緩和」の もとでの行政的手法自体の見直しおよび現在の民法における消費者契約の特質 に即応した規定の不存在を理由として消費者契約の特質に即した規範の立法が 必要になったにもかかわらず,明確性を強調して抽象的規定を排除することは 消費者契約法の意義を大きく減殺すること,並びに②特に規制が必要とされる 必要最小限にとどめ可能な限り明確性を追求するという「行政規制的ないし業 法的色彩」をもっ立場から明確性の要請を相当程度満たしているルール以外は おかないという態度により,限定された個別行為に関する立法となっているこ と,をそれぞれ指摘する(以上に加えて,一般条項的規定の新設によってもた らされる利益と,濫訴などによる一般条項的規定による弊害とを比較考量した としても一般条項的規定の否定にはつながらないともされている)。このほか, 山本敬三「消費者契約法の意義と民法の課題J民 商 1 2 3巻 4= 5号 5 2 5 3頁,同. 5 5 5 6頁,同 5 9 6 0頁 ( 2 0 0 1年)は,契約締結過程について立法化の必要が指摘 されながら実際には規定されなかった三つの問題(情報提供義務の問題,意思 決定の誘導に関する問題,契約内容の確定に関する問題)に関してそれぞれ検 討を加えている O そのうえで,それぞれの問題についての結論のなかで,一義 的で明確なルール化ができないことを理由として立法化を否定するあるいは保 護の範囲を切り詰めるということは,本来の立法趣旨を忘れた本末転倒の議論. 2 5 3頁,同 5 5 5 6頁,同 5 9 6 0頁 , であることが共通して示されている(前掲山本 5 ただし契約内容の確定に関する問題に関しては,不意打ち条項についてのみ示 されている)。このほか,山本豊「消費者契約法( 1 ). 新法の背景,性格,適用. 範囲」法教 2 4 1号 8 0頁 ( 2 0 0 0年)は,消費者規約法の諸規定の解釈にあたって業 法的な解釈ではなく民法の規定を解釈するような柔軟な解釈を心がけるべきで あるとする O. 119(386)一.

(18) 近 畿 大 学 法 学 第5 3巻第 2号. 第三に,消費者契約法の立法の背景として,民法の限界が語られる点に ついての問題が指摘される。すなわち,消費者契約法で規定された民事 ルールは,現在の民法理論を基礎とした民事ルールとして論じられている ことの抽象度を下げて具体的なルールとして明確化したという確認的な意 味もかなりある,という指摘である側。 以上のほか,各個別の規定の規定全般について,妥協的性格を持つこ とω,そもそも消費者契約法の目的・原理から導かれる「あるべきルール」 のうち規定されていないルールのあること ω,がそれぞれ示されている O (β) 肯定的評価の示される部分. 構造的格差と民事ルール. 前述 (α) に見たように,消費者契約法には問題のあることを指摘する 見解が多 L、。ただし,このように問題点を指摘する見解においても,消費 者一事業者間の情報格差・交渉力格差という意味での構造的格差仰を明文に 倒. 落合誠一=河上正二ニ潮見佳男=高橋宏志. r (座談会)消費者契約法の役割と. 2 0 0号 3 4頁〔潮見佳男発言 J( 2 0 0 1年),同 4頁〔河上正二発言〕。 展望」ジュリ 1 この点を基礎とした具体的な問題として,消費者契約法から反対解釈の力学が 働く可能性のあることが示される(前掲落合=河上二潮見=高橋 4頁〔河上発 言J )。また,本文に述べたこの点から,消費者契約法の民事ルールは体系的に 民法の民事ルールの枠内に取り込まれるべきであるものであること,および消 費者契約法は現代契約社会に対応するものとしての民法の現代化という意味で の「民法の継続形成」と捉えられること,がそれぞれ示される(前掲落合=河 上=潮見=高橋 3 4頁〔潮見発言 J ,同 4頁〔河上発言J ,同 5頁〔潮見発言 J , 同7 8頁〔潮見発言J )。. ( i l D 松本恒雄「規制緩和時代と消費者契約法」法セ 5 4 9号 7頁 ( 2 0 0 0年)。また, 民法理論との整合性が十分ではないとも指摘されている(前掲松本 7頁 ) 。 (îl~. 潮見住男「消費者契約法と民法理論」法セ 549 号 12-13 頁 (2000 年) ,山本. (敬)・前掲注( i l $ 51 7 5 2 8頁参照。 (îl~ 情報格差・交渉力格差・脆弱な取引耐性という意味での構造的格差のもとで の劣位という消費者の構造的特性については,消費者契約法関連の論考とし て,沖野正己. r r消費者契約法(仮称)Jのー検討( 2 ) JNBL 6 5 3号 1 5 1 7頁. 0998. 年),河上・前掲注 (îl~9-1 0 頁,河上正二「総論 ( r消費者契約法』をめぐる立法 的課題 )J 私法 62 号 12 頁 (2000 年),潮見・前掲注 (îl~11-12 頁,潮見・前掲注 (îl~. 4 1 4 4 1 6頁等を参照。また,消費者法領域一般を論じるなかで前述の消費者のノ 一 1 2 0(3 8 5)一.

(19) 現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(二). よって認めたうえで,その構造的格差のなかで劣位にある消費者の正当な 利益を民事ルールによって実現するという原理を基礎として消費者契約法 が立法されたことについては, I 両期的」であるという肯定的な評価を示す 見解がある ω。 (,)消費者契約法に対する対応 また,以上のように問題点を指摘する立場からは,現行の消費者契約法 に対して,次のような対応をとるべきであるとされている O 第一に,立法以前から承認されてきた民法理論が,現行の消費者契約法 によって後退することはないことが確認されている倒。この点は,とりわ. 、構造的特性を示すものとして,大村敦志「消費者・消費者契約の特性」同『消. 1 2 2 8頁(東京大学出版会, 1 9 9 9年,初出・ 1 9 9 1年),同『消 費者法第 2 版~ 2 0 2 2頁(有斐閣, 2 0 0 3年),鎌田薫 r r消費者法』の意義と課 題」岩村正彦ほか(編集委員)r 現代の法 1 3 消費生活と法~ 7 9頁(岩波書庖, 1 9 9 7年)等を参照。 (î1~ 松本・前掲注 ( i 1 D6頁,山本(豊)・前掲注( i l $ 7 7頁。潮見・前掲注( i l $ 4 1 8 4 1 9頁 費者・家族と法~. では,. r 実際のところ,今回の消費者契約法において世界に誇ることのできる最. 大の価値は,締結過程の具体的規律(条文)でも,内容規制の具体的規律(条 文)でもなく,この『消費者・事業者聞に情報格差・交渉力格差が存在する中 で,自己決定権の保障がないままに締結された契約・契約条項が私法上の効力 を否定される』とのルールを単に経済法・競争法のレベルのルールにとどめず, 明確に民事ルールとして基礎つeけた原理レベルでの功績にある O しかも,そこ では,一方で情報格差是正の観点から,競争基盤(自己決定基盤)そのものを 維持するという目的が民事ルールの基礎に織り込まれているとともに,他方で 交渉力の格差是正の観点から,公正な取引(競争)の促進. 不公正な取引. (消費者の意思決定の脆弱性につけこんだ契約自由の濫用,意思決定の不当誘 導等)に対する無価値評価一ーを図るという目的も民事ルールの基礎に盛り込 まれている点で,民法理論として画期的とも言える視点を内包しているもので ある」とされている O (î1~. 落合二河上=潮見ニ高橋・前掲注( 3 1 $4頁,同 2 5 2 6頁. C l、ずれも河上発言〕。な. お,契約締結過程・不当条項に関する消費者契約法の規定と民法の規定との関. 1条 l項,同 6条 , 係については,明文の規定が設けられている(消費者契約法 1 同 7条 2項),この点については,内閣府国民生活局消費者企画課編・前掲注側. 2 5頁,同 1 3 0頁,同 1 8 2 1 8 5頁,潮見佳男編著『消費者契約法・金融商品販売ノ 同1 1 2 1(3 8 4).

(20) 近 畿 大 学 法 学 第5 3巻第 2号. け従来の理論・実務において承認されてきた情報提供義務・説明義務が消 費 者 契 約 法 3条 l項 に よ っ て な ん ら の 影 響 も 受 け な い こ と と し て 具 体 的 に 示される例。 第二に,消費者一事業者間の構造的格差のなかで劣位にある消費者の正 当な利益の実現にかかわる問題はそもそも本来的に民法の領域の課題であ るとされたうえで,その課題の解決に向けて「民法の現代化」あるいは 「民法の継続形成」の必要となることが示されている ω。. i v )本 稿 の 提 示 す る 理 論 的 枠 組 を 基 礎 に お い た 議 論 の 整 理 以下では,前述 i i ) および i i)において概略した消費者契約法の総論に 関する議論について,本稿において提示した理論的枠組を基礎においた整 理を行う O 具体的には,前述(イ)において示した裁判規範としての民法に対 する国家の介入の限界のうち,. I自 律 的 に 形 成 さ れ た 私 法 秩 序 の 修 正 で あ. ること」から導かれる限界慨を視角として議論の整理を試みる。ただし,. 、法と金融取引Jl1 4 1 5頁〔千葉恵美子執筆 J(経済法令研究会, 2 0 0 1年),松本恒 雄±畔柳達雄二高崎仁 ~Q&A 消費者契約法解説Jl 1 6 0頁〔畔柳達雄二高崎仁執 筆J(三省堂, 2 0 0 0年)も参照。 (îl~ 山本豊「消費者契約法( 2 ) 一一契約締結過程の規律」法教 2 4 2号 8 8頁 ( 2 0 0 0年), 潮見編著・前掲注 (îl~30-31 頁〔潮見執筆 Jo 横山美夏「消費者契約法における情. 報提供モデル」民商 1 2 3巻 4= 5号 1 0 3 1 0 4頁 ( 2 0 0 1年)は,消費者契約におい て,どのような場合に,何を根拠として,事業者が消費者に対して情報提供義 務を負うのか,また,情報提供義務違反によってどのような法的効果が生じる のかについては,民法の解釈によることとなった,とする なお,山本敬三「消 5 9 6号 9 1 2頁 ( 2 0 0 0年)は,消費者契 費者契約法と情報提供法理の展開」金法 1 約法 3条 1項は情報格差を理由とした一般的情報提供義務を否定する趣旨であ ると解さざるをえないが,特別な理由(事業者の専門性,情報の危険性など) がある場合の情報提供義務(特別情報提供義務)を否定する趣旨ではない,と する。 仰 潮見・前掲注仰 1 0 1 4頁,山本(豊)・前掲注(i1$ 8 4頁注( 3 ),山本(敬)・前掲注 1 $ 8 4頁 , (落合=河上=潮見=高橋・前掲注側 3 4頁,同 5頁,同 6 7頁,同 2 7頁 ( l、ずれも潮見発言J ,同 2 5 2 6頁〔河上発言 J ),潮見・前掲注 (îl~483-485 頁。 O. 。. 122(383)一.

(21) 現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(二). 本補論においては消費者契約法の総論に関する実体法的議論を対象として その整理を試みており,個別の制度・条文に関する議論は考察の対象から 外している例。そのため,以下では,個別の制度・条文が問題となる「前 提となる私法秩序に含まれる規範の機能を基礎とした限界側」という視角 からの議論の整理は行わな L、。その他の三つの限界をそれぞれ視角とした 議論の整理を以下順次行なって L、 く ①. O. 前提となる私法秩序に含まれる規範の確定の必要性という視角からの 整理. (α) 一般法としての民法の意味・性質に対する考察の不十分性. この視角からの議論の整理において問題となるのは,消費者契約法を立 法するということの意味である O 本稿において提示した理論的枠組におい て,立法機関の属する国家機関によって私人間の関係を規律する裁判規範 が制定されるのは,私法秩序に含まれる規範の内容を裁判規範としての国 家法として制定するという意味における民法の制定の場合(以下「私法秩 序の裁判規範化としての民法の制定」と記述),または裁判規範としての民 法への国家の介入(私法秩序において形成された内容と異なる内容を裁判 規範として制定すること)の場合のいずれかであるへそのため,私人間の 関係に関する裁判規範として制定された消費者契約法は,私法秩序の裁判 (ïj~. 前述(イ)i)参照。. 却 。 前述 i),および前掲注側参照0 ( i i @ 前述(イ) i i ) ④参照。. ( i i u 本稿で示した民法と憲法の関係についての理論的枠組を基礎におくことを前 提とすると,私人間の関係を規律する裁判規範の立法がなされる場合として, 少なくとも現在示されている現代立憲主義国家の枠組のもとでは,私法秩序の 裁判規範化としての民法の制定の場合と,裁判規範としての民法に対する国家 の介入の場合という二つの場合のみが考えられる,ということである O むろ ん,それ以外の場合の存在することや,あるいはそもそもまったく異なる類型 化がなされるべきであることが指摘されることも考えられる,. しかし,その際. には,本稿の理論的枠組とは異なる理論的枠組が示されることが必要になるとノ. 123(382).

(22) 近 畿 大 学 法 学 第5 3巻第 2号. 規範化としての民法の制定であるのか,それとも裁判規範としての民法へ の国家の介入であるのかが,まず明らかにされる必要がある O 消費者契約法に全面的な肯定的評価を加える見解においては,この消費 者契約法の立法が国家の介入であるとの認識が示されている ω。その他の 見解においては,消費者契約法の立法が国家の介入であるのか否かという 点は,この議論の論点として明示的には論じられていないが,いくつかの 見解においてはこれが国家の介入であるとの認識が示されており ω,他方, これを否定する見解は明示的には示されていな L 。 、 しかし,以上のような現在の議論の状況をもって,ただちにこの消費者 契約法の立法が,裁判規範としての民法への国家の介入であると判断する ことはできな L、。なぜなら,少なくとも消費者契約法の総論に関する議論 において,特別法としての消費者契約法に対する一般法としての民法の性 質・意味に関する考察が不十分であると考えられるからである側側。 本稿において示した理論的枠組を基礎として,消費者契約法の立法が私. 、考えられる (îî~. 0. 前述 i i),および落合・前掲注( i O H7 9頁参照。. ( i i $ 潮見佳男「不当条項の内容規制 総論」河上正二ほか「消費者契約法 立法への課題(別冊 NBLn o .5 4 )J7頁(商事法務研究会, 1 9 9 9年),落合ニ 磯村(司会)・前掲注( i l $ 7 1頁〔山田卓生発言J ,同 7 4頁〔河上正二発言J ,同 1 0 2 頁〔潮見佳男発言〕。なお,大村・前掲注( i i $I 特性J3 5 4 2頁,同 4 9 5 0頁は,消 費者契約についての規律を国家の介入と捉えることが一般的であるとする。 側. このような不十分性は, I 私法」と「規制」を対比して,私法の自立性・自律 性のもつ意味の再検討の必要性を指摘する見解(前掲注 (îl~ 参照)が示されてい. ることからもそのような現在の議論の状況が裏付けられると考えられる O (îî~. この点は,消費者契約法によって規律されるところの領域がそもそも本来的 に民法の領域の課題であるとし,その課題の解決に向けて「民法の現代化」あ j ) (r) 参照) るいは「民法の継続形成」の必要となることを示す見解(前述 i. にとっても重要な問題であると思われる。なぜならば「民法の現代化」あるい は「民法の継続形成」のもつ意味を明らかにするためには,一般法としての民 法の性質・意味を明らかにしなければならないと考えられるからである O. 1 2 4(3 8 1).

(23) 現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(二). 法秩序の裁判規範化としての民法の制定であるとするならば,前述(1)仰に 示した近代立憲主義国家のもとでの裁判規範としての民法の制定と同じ理 論構成のもとでその立法が検証される必要がある側0 1 8 0 他方,消費者契約 法の立法が裁判規範としての民法への国家の介入であるとするならば,前 述(ア)および(イ)に示した理論構成にもとづいた検討を行う必要がある O 本補論はあくまで裁判規範としての民法への国家の介入についての理論 構成を具体的に示すことを目的としている。そのため,以下では,仮に, 消費者契約法の立法が裁判規範としての民法への国家の介入である, とす る立場に立ったならばという視点から議論の整理を進める側。 (β) 消費者契約法の前提となる私法秩序に含まれる規範. 立法担当官による解説においては,契約が対等な当事者の合意に基づき 成立することを前提としていることが,消費者契約に関する従来の対応の 問題点として示されている側。この点を鑑みれば,消費者契約法の立法に よる裁判規範としての民法に対する国家の介入の前提となる私法秩序に含. ( 81)ー 1 3 0( 6 9 )頁。. 抑 。. 宮津・前掲注~1@118. (ll~. 私法秩序の裁判規範化としての民法の法解釈および立法の方法に関しては, 本章第四節三. (補論)を参照。. (ll~. むろん,特別法としての消費者契約法に対する一般法としての民法も国家の 3 ) ( a ) (宮津・前 介入であるとの理論構成も可能である(本稿第一章第二節一. (. 掲注側 6 3( 1 3 6 )7 5( 1 2 4 )頁)参照)。しかし,本稿においては,そのように 民法を立法することを国家の介入であるとする理論構成として現在主張されて いる理論を考察し,少なくとも現在主張されている限りにおいてはそれには問 3 ) ( b ) (宮津・前掲注 題点があるとの結論を導いている(本稿第一章第二節一. ( ~m76 (l~$. ( 1 2 3 )8 8( 1 1 1 )頁)参照)。. なお,筆者(宮津)は,この消費者契約法の立法が,裁判規範としての民法 への国家の介入ではなく,私法秩序の裁判規範化としての民法の制定であると の印象を強く持っている(前掲注側参照)。. i ) ①参照。 。崎前述 i. 1 2 5 ( 3 8 0 ).

(24) 近 畿 大 学 法 学 第5 3巻第 2号. まれる規範は,対等な当事者の関係を前提としている現行民法の規定であ るということとなる側。 ②. 裁判規範としての民法に対する国家の介入の方法・内容に関する限界 という視角からの整理. (α) 私法秩序の核心にかかわる介入の方法・内容の限界ω. 現在の議論において,自律的な自己決定を基盤とする私的自治原則・契 約自由原則が私法秩序の核心の一つに数えられることについては異論がな いものと考えられる ω。他方,消費者契約法の総論に関する議論において, 立法担当官の解説においても,消費者契約法に全面的な肯定的評価を加え る見解においても,消費者契約法の目的として,当事者の自己決定の尊重・ 公正な自由市場のための環境整備が挙げられているへそのため,私法秩 序の核心の一つであるところの私的自治原則・契約自由原則に関しては, 消費者契約法の立法がそれを根本的に否定するものではないと捉えられて. ( i 4 D なお,消費者契約法の立法が私法秩序の裁判規範化としての民法の制定であ. ると捉えた場合にも,対等な当事者の合意に基づき成立することを前提として いる現行民法の規定が問題となることには変わりがな L、。ただし,この場合に は,一定の構造的格差の存在する私人間の関係についての規範が対等な私人間 におけるそれと異なる内容を持つものとして私法秩序において形成されている にもかかわらず,その規範を立法権の属する国家機関が制定法化していない, という問題の捉え方となる。 (ï~. 本来であれば,個別の規定の内容が私法秩序の核心を根本から否定するもの となっているかどうか,についても考察を加えることが必要となるが,本補論 はあくまでも消費者契約法の総論に関する議論のみを対象として議論の整理を 行っているため,以下では個別の規定の内容についての検討は加えな L 。 、. 側前掲仰参照。 ( 湖. 前述 i i ) ②および、 i i)①参照。また,国民生活審議会消費者政策部会報告に おいても, I 消費者,事業者双方の自己責任を問うためには,十分に理性的な自 己決定をなしうる状況の下で消費者の自由な意思形成がなされるための環境整 備がなされる必要がある」とされていた(経済企画庁国民生活局消費者行政第 一課編『消費者契約法(仮称)の制定に向けてJl 6 7頁(大蔵省印刷局, 1 9 9 9年))。. -1 2 6(3 7 9).

(25) 現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(二) いると考えられよう(問。 しかし,現在の議論においては,. 自律的な自己決定を基盤とする私的自. 治原則・契約自由原則とは異なる理念が私法において存在していることが 指摘されているへそのため,これらが私法秩序の核心と捉えられるのか, そしてそれが消費者契約法の立法によって否定されていないのか,という 点も論じられる必要があろうへ. (β) 私 法 秩 序 の 核 心 に か か わ ら な い 介 入 の 方 法 ・ 内 容 の 限 界 側 この視点からの議論の整理において第一に問題となるのは,規定の明確 性 の 問 題 で あ る O 現在に議論においては,. 潮見・前掲注 (ïl~409-410 頁では,. 制. I 予見可能性にもとづく明確性」. ドイツ債務法の現代化を論評するなかで,. 「……,民法典に統合されようとしている消費者契約に関する規律は, もはや, かつての福祉国家の考えに依拠したものではなく, もっぱら市場競争原理に裏 付けられた自己決定・自己責任原則を基礎としたものである O そして,同原則 が機能するための環境整備を私法レベルで制度化しようとしたものである O こ のことが,原理レベルでの深刻な対立を生むことなく私的自治原則・契約自由 原則を基礎にすえた近代民法典に消費者契約に関する規律を統合する方向,そ してこれにより民法典(契約法)が現代化する方向を推進している O ドイツで の特殊事情を措いてなお,わが国でドイ、ソ債務法現代化へ向けた議論を参照す る価値が, ここにある」とされている O この指摘は,本文に述べた内容を基礎 づけうるものとして理解することもできる。ただし,このようなドイツを含む 欧米諸国における消費者法(政策)の原理レベルでの転換は, 日本における消 費者契約法の立法においては十分に議論されていないことも指摘されている (潮見・前掲注( i l $ 4 1 5 4 1 6頁 ) 。. 。 制. 前述 i i)② (α) および前掲注( i l $に引用した文献参照。. 側. 以上の記述は,あくまでも仮に消費者契約法が裁判規範としての民法に対す る国家の介入であるとしたうえでの議論の整理である。そもそも自律的な自己 決定を基盤とする私的自治原則・契約自由原則という理念以外に,私法秩序の 核心となる理念が存在しているのであれば,それを基礎として私法秩序におい てどのような規範が形成されているのか,そしてそれをどのように裁判規範と して制定法化するのか,という点をまずもって問題とするのが本稿において示 した枠組における論理的な筋に合致すると考えられる。. 側. 以下では消費者契約法の総論に関する議論に対象を限定して整理を行うこと について(前述。注側参照)。. 1 2 7( 3 7 8)一.

(26) 近 畿 大 学 法 学 第5 3巻第 2号. の要請の強調されたことが問題点として指摘されている(ゆ。この指摘にお いて示される具体的な問題点として,予見可能性に基づく明確性の要請は あくまでも実質的な理念たる公正を実現するための手段であって,実質的 理念の実現のために明確性が確保できなくてもやむをえないとすべきであ るという点,および,明確性の要請を強調して規定の要件をしぼった結果 として,明確性の欠けると位置づけられた現行民法のルールによらなけれ ばならなくなった点が示されている側。これらの指摘は,私人間の関係に ついての実体法規定としての消費者契約法の規定の定め方として,当事者 の視点に立った「予見可能性にもとづく明確性」の要請を問題の対象とし たうえで,その要請と消費者契約法の立法の目的との衡量を行い,その結 果として明確性の要請の緩和が必要かっ可能であることを示しているもの であると考えられる刷。 しかし,消費者契約法の立法を裁判規範としての民法に対する国家の介 入であると位置づけるのであれば, I 予見可能性にもとづく明確性」とは区 別して,前国家的に社会内部で自律的に形成された規範は国家によってい かなる限度で変更されうるのか,という意味における国家の介入の限界と いう視点からも,明確性の要請について議論を行う必要があろう仰。いい. 。 制. 前述 i i D② (α) 参照。. 。時前述 i i D② (α),および前掲注 ( i l $参照。 。 i D 他方,消費者契約法の立法に全面的な肯定的評価を示す見解においては,規 定の明確性に関して次のように述べられている o i 消費者契約は,基本的に消 費者と事業者との取引交渉の結果と観念されるから,その法律関係を規律すべ き法的ルールは,交渉当事者において交渉の時点で高度の予見可能性を有する ものであることが望まし L、。法的ルールによる当事者聞のリスク分配が,事前 的に ( e xa n t e ) 明確であれば,当事者は,取引交渉にそれを反映させること ができるし,また自己の負担すべきリスクへの対応も容易となるからである (落合・前掲注(30~ 1 7 2頁 ) J。 。í~. 沖野・前掲注 ( 3 1 $ 2 5頁の示す「行政規制的ないしは業法的色彩J(前掲注 ( 3 1 $参 照)は, i 当事者の予見可能性にもとづく「明確性 J Jの要請に関わるものではノ. 1 2 8(3 7 7).

(27) 現代立憲主義国家において国家法として民法を制定する意味(二). かえれば,明確性の要請の緩和を主張する場合には, I 予見可能性にもとづ く明確性Jに関してのみならず, I 国家の介入の限界にもとづく明確性」 に関しても,その緩和が必要かっ可能であることを示す論理を示す必要が あるといえよう仰o 続いて,第二に問題となるのは,規定の内容に関する費用便益分析の必 要性である O 消費者契約法の立法を国家の介入と捉えるのであれば,現在 の議論において私法の自立性・自律性のもつ意味の再検討の必要 e性を指摘 する見解仰の示すように,消費者契約法の規定を経済政策の一環としての 規制として取り扱うことが求められ,その正当化のためには費用便益分析 の行われることが求められることとなろう側。 裁判規範としての民法に対する国家の介入の目的の明示とそれによる. ③. 限界という視角からの整理 立法担当官による解説において,消費者契約法の目的は,消費者と事業 者双方が自己責任に基づいて行動できる環境の整備が不可欠であることを 基礎として,消費者自らによる救済を行いやすくすることを通じた「消費 者の利益の擁護」である,とされる例。この消費者契約法の目的に関して 、なく, I 国家がし、かなる範囲で介入しうるかという視点からみた『明確性 J Jの 要請に関わるものであると考えられる O. ( J a $ なお,消費者契約法の立法を裁判規範としての民法に対する国家の介入では なく,私法秩序の裁判規範化としての民法の制定であるのならば,本文に述べ たような「国家の介入の限界としての明確性」は問題とならないと考えられる。 また,私法秩序の裁判規範化としての民法の制定に関しては,その適用範囲の 広さ,および私法秩序の変化に対応する必要性を根拠として,予見可能性にも とづく明確性の要請についても,一定程度の緩和が必要となると考えられる (要求される明確性の程度が目的によって変わってくることについては,碧海 純一『新版法哲学概論〔全訂第. 2版補正版J J1 2 2 1 2 4頁(弘文堂, 2 0 0 0年)参. 照 ) 。 。時前述 ji)② (α) 参照。 側前掲 (Jl~ 参照。 。a~. 前述 j i)②参照。また,前述 ji)①も参照。. 1 2 9 ( 3 7 6 ).

(28) 近 畿 大 学 法 学 第5 3巻第 2号. は,経済的・社会的な構造的格差のなかで劣位にある消費者の利益保護と いう「公正」あるいは「配分的正義」という概念を基礎とした目的の設定 も必要となる,との主張が示されている制。消費者契約法の立法は裁判規 公正」ある 範としての民法に対する国家の介入であるとの立場に立てば, I いは「配分的正義」を基礎とした目的の設定も必要となるとの議論は,さ らなる国家の介入が必要かっ可能となる,という論理につながるものと考 えられる O ( c ) 変わること(その 2)一一行政法領域における変化を基礎とした民法. と行政法の関係の変化. 対 (. 行政法領域にみられる変化 現代立憲主義における私法秩序から生じる問題に修正を加えるための国. 家による社会への介入に関してもう一つ重要となるのが,近代立憲主義か ら現代立憲主義への流れのなかで,行政権の属する国家機関の活動を質 的・量的に拡張することによって行政法領域に変化が生じたと評価しうる ことである O 伝統的に行政法の規律の対象となる主体関係は行政対市民の関係とされ, 市民の権利を行政による侵害から防衛することが行政法の課題の中心とさ れてきた側。しかし,現在の行政法学では,国家の役割の変化を基礎として, 行政法の規律の対象となる主体関係を行政とその相手方という二面関係に とどめるのではなく,行政活動によって影響を受ける第三者をも含めた三 面関係あるいは多面関係として捉えるのが共通認識であるとされている制。 側 前 述i i)② (α) 参照。 阿部泰隆『行政の法システム(上) [新版]j 3 7 3 8頁(有斐閣, 1 9 9 7年),大. 制. j5-7頁(有斐閣, 2004年),原田尚 橋洋一「行政法現代行政過程論[第 2版 J 1頁(学陽書房, 2 0 0 5年)。 彦『行政法要論(全訂第六版)Jl 8 ( J a $. 阿部・前掲注 (Ja~38-40 頁,大橋・前掲注(Ja~7-11 頁,原田・前掲注側 82-84 頁。. 以上については塩野宏『行政法 1 [第四版]行政法総論 j 4 4頁,同 3 2 8 3 3 4頁 (有斐閣, 2 0 0 5年)も参照。 一. 130(375).

参照

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