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【特別講演】
運動器系理学療法における最新の知見
-ストレッチングと筋力トレーニングのエビデンス-
京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻
市橋 則明
1.ストレッチングのエビデンス
ストレッチングは,理学療法領域だけでなく,スポーツ現場での傷害予防や高齢者の健
康維持等,一般的に広く行われている.ストレッチングの目的としては,関節可動域(柔
軟性)の改善の他に,筋緊張の低下,疲労回復,血流増加,傷害予防,スポーツパフォー
マンスの向上などがあげられている.しかし,ストレッチングにこのような効果があるか
どうかに関してのエビデンスは不十分である.
本講演では,ストレッチングのエビデンスとして,近年注目されている1)ストレッチ
ングが筋力に与える影響,2)パフォーマンスに与える影響,3)傷害予防に与える影響,
4)遅発性筋肉痛に与える影響,5)長期的なストレッチング介入が筋力に与える影響,
6)柔軟性に与える影響に関して述べる.さらに,効果的なストレッチングの方法に関し
て超音波エラストグラフィーを使った我々の最新の研究成果を紹介する.
2.筋力トレーニングのエビデンス
近年,サルコペニアが注目されているが,加齢によりすべての筋が同程度に萎縮するの
であろうか?萎縮しやすい筋,萎縮しにくい筋は何か?本講演では,高齢者や変形性関節
症患者を対象に超音波で測定した筋厚評価に関して紹介する.
我々は筋内の非収縮組織(脂肪や結合組織)の増加といった骨格筋の質的変化を超音波画
像の筋輝度を用いて定量的に評価している.筋輝度は値が大きいほど高輝度で筋内の脂肪
や結合組織などの非収縮組織が増加していることを意味する.加齢に伴い筋内の非収縮組
織の割合が増加するため,高齢者の超音波画像における筋輝度は高くなることが報告され
ている.本講演では,高齢者や変形性関節症患者を対象とした質的評価に関して紹介する.
筋力増強のための重要な2つの原則は,過負荷の原則と特異性の原則である.この2つの
原則は間違いのないものであるが,どんな場合にも適応するものであろうか?例えば過負
荷を与えられない高齢者や術後患者の筋力トレーニングはどのようにしたら良いのか.関
節に負担のかからない低負荷で筋力増強効果を得るためのトレーニング方法を考えるこ
とは理学療法にとって非常に重要である.近年では,最大の 30%の負荷量でも疲労困憊
まで回数を繰り返したら筋肥大が起こったという報告もある.本講演では我々が行ってい
る低負荷でのトレーニング効果に関する研究や関節角度特異性に関する研究を紹介する.