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局所性脳損傷における神経損傷を再現する衝撃実験用ダミー頭部の開発

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(1)

日本機械学会論文集(A 編) 原著論文 No.2013-JAR-0618

望月

康廣

*1

,西本

哲也

*2

,平山

和雄

*3

Development of Human Head Dummy for Nerve Injury in Focal Impact

Yasuhiro MOCHIZUKI

*1

, Tetsuya NISHIMOTO and Kazuo HIRAYAMA

*1Graduate School of Engineering, Nihon University

1 Nakagawara, Tokusada, Tamuramachi, Koriyama, Fukushima 963-8642, Japan

According to basic research on brain trauma caused by micro-level injury, brain deformation triggers nerve injury. In traumatic brain injury, brain deformation and nerve injury are both important factors for severe brain injury. The purpose of this study is to develop a human head dummy for nerve injury assessment, more specifically, an alternate brain developed for a human head dummy. According to basic research into nerve injury related to traumatic brain injury, mechanical strain to brain neurons causes increase in intercellular Ca2+ as a transmitter substance. Therefore, this alternate brain can rapidly increase the internal Ca2+ amount by mechanical strain. To realize this increase, the alternate brain has interior microcapsules. If the surface of a microcapsule is broken by mechanical strain on the alternate brain, the microcapsule releases Ca2+ into the alternate brain. According to tolerance research on nerve injury in swine cadavers, nerve injury occurs at a compression strain of 30%. Therefore, the microcapsules, which contain carrageenan, must rupture at a compression strain of 30% applied on the alternate brain. To evaluate various bruise situations, frontal, occipital, and side drop tests applied impact load on the evaluation dummy. In the frontal and occipital drop tests, the increase in Ca2+ occurs in the frontal region of the alternate brain. On the other hand, in the side impact test, the increase in Ca2+ occurs in the impact and non-impact regions. These results mimic real brain injury. Hence, this evaluation is a reproducible model for local brain nerve injury.

Key Words : Impact Biomechanics

,

Brain Injury, Alternate Brain, Calcium Ion, Microcapsule, Mechanical Strain

1. はじめにはじめにはじめにはじめに 外傷性頭部傷害は交通事故時,事故被害者の生命を奪う危険性の高い外傷である.Gennarelliら (1) によれば, 交通外傷における脳損傷ではびまん性脳損傷が多く発生するとされている.一方で,著者らが我が国の外傷 を蓄積した日本外傷データバンクを用いた統計解析を実施したところ,自転車,歩行者といった交通弱者の 重症頭部外傷では硬膜外血腫や脳挫傷などの頭部に対する直撃型の衝撃荷重に起因する局所性脳損傷のケー スが多いことが分かった (2) .局所性脳損傷とは頭部が受けた衝撃力により主に大脳の衝撃直下やその反衝方 向に発生する頭部傷害である.日本外傷データバンクでは,これらの外傷は自転車事故・脳挫傷では外傷全 体の23.3%,自転車事故・硬膜外血腫では7.3%,歩行者事故・脳挫傷では15.5%,歩行者事故・硬膜外血腫 では2.7%となっている (2) .したがって,交通外傷における直撃型の外傷性頭部傷害を軽減することは重要で ある. E-mail: [email protected] * 原稿受付 2013 年 8 月 14 日 *1 正員,日本大学大学院工学研究科(〒963-8642 福島県郡山市田村徳定字中河原 1 番地) *2 正員,日本大学工学部 *3日本大学工学部

局所性脳損傷における神経損傷を再現する衝撃実験用ダミー頭部の開発

* 79 巻 808 号 (2013-12)

(2)

現在,頭部傷害を再現する際に人体頭部を模擬したダミーによる傷害評価が自動車安全領域で用いられて いる.評価法としてはHead injury criteria(HIC)が用いられる

(3) .HICはヒト屍体の落下実験 (4) によって得られ た頭蓋骨骨折の発生基準に基づいており,この評価では衝撃によって発生する加速度と持続時間の関係から 数値的に損傷の度合いが評価されている.そのため,計測方法としてはHybridⅢと称する人体ダミー頭部の 重心位置に3軸の加速度計を3つ配置し,加速度履歴を取得する.一方で,近年の脳神経レベルの耐性値に 関する研究によると,Morrison ら (5) は培養ラット海馬に対し引張荷重を与え,海馬における神経細胞の細胞 死にはひずみやひずみ速度が重要であることを示し,Elkinら (6) も培養大脳皮質に対し同様の引張荷重を与え たところ,大脳皮質でも脳の変形速度や変形量が細胞死に至るための重要な因子であることを報告した.ま たCaterら (7) は海馬細胞死の時間的推移にはひずみ速度は関係無く,ひずみ量が関係あることを示した.これ らの研究では脳実質に生じるひずみが神経細胞に重篤な傷害をもたらすことが共通した見地として得られて いるが,現在のHICによる傷害評価法では,脳ひずみに起因する神経損傷を評価することはできない.そこ で本研究では,上記のような理由により,ひずみに起因する神経損傷が評価可能な代替脳を作成し,既存の ダミーと組み合わせることによって局所性脳損傷における神経損傷評価を可能とする評価ツールの開発を目 的とする. 2.. 神経損傷評価用ダミー..神経損傷評価用ダミー神経損傷評価用ダミー 神経損傷評価用ダミー 2・・・・1 マイクロカプセルマイクロカプセル及びマイクロカプセルマイクロカプセル及び及び及び代替脳の代替脳の代替脳の代替脳の開発開発開発開発 神経細胞に工学ひずみを与えた神経細胞の損傷研究によると,神経細胞はひずみを負荷されると内部のCa 2+ を 大量に放出する (8) .また,頭部傷害に伴う神経損傷時にもCa 2+ は細胞内で活性化するとの報告 (9) がある.加えて, 脳損傷はカルシウム結合蛋白であるS-100β蛋白を体内(主に血中)で増加させることが動物実験 (10) や臨床データ (11)(12) より明らかになっている.そのため,Ca 2+ は頭部外傷における放出物質として重要な位置付けを持つ物質で ある.またCa 2+ を含む物質として炭酸カルシウムがあるが,この物質は安価でかつ扱いが容易である.そこで本 研究ではCa 2+ を用いてゼラチンをマトリックスとする代替脳の傷害指標とした.この代替脳はひずみを負荷する と内部のCa 2+ 濃度が高くなる性質を持つ.代替脳内部のCa 2+ を増加させるための手法として,本研究ではマイク ロカプセルによる手法を採用した.図1にマイクロカプセルの構造を示す.マイクロカプセルは内部物質,Ca 2+ 放出物質,壁物質の3つの構造から成り立っている. このマイクロカプセルをゼラチンへ導入する. 図2 にマイクロカプセルの作成手順を示す.この製法は人工イクラの製法 (13) を応用した手法であり,内部 物質は1%アルギン酸ナトリウム,1%カラギーナン,1%アラビアゴムと蒸留水が3:2:2:2で混合した水溶液(A 液)である.また,混合時の温度はダミーを用いた実験の際に標準的に設定する 20~25 ℃で混合を実施し た.アルギン酸ナトリウムは海藻に由来し,粘性を高める効果がある.カラギーナンも同様に海藻に由来す る安定剤であり,アラビアゴムはアカシアの樹に由来し,弾性を高める効果を持っている.カプセル作成時 はA液を漏斗に流す.A液が漏斗管通過中に水酸化カルシウムとサラダ油の混合物(C 液)を注入する.C液 はCa 2+ 放出物質にあたり,カプセル破壊時にCa 2+ を放出し,代替脳内部のCa 2+ 濃度を高める効果を有する. Ca2+放出物質を注入した内部物質を20%塩化カルシウム水溶液(B液)に滴下する.滴下されたA液はB液と 反応し,マイクロカプセルの壁物質を形成する.この壁物質は内部物質よりも硬い特性と撥水性を有し,マ イクロカプセルに外力が負荷されると壁物質が破れ,内部から Ca 2+ が放出される.このマイクロカプセルを 5%ゼラチンに導入し,代替脳の完成とした.代替脳中に含まれるカプセルは4.0×10 5 個/m 3 (代替脳300 ml 当り120 個)である.この代替脳にひずみが生じると,同時にマイクロカプセルの変形による壁物質の破壊 が発生し,マイクロカプセル内部のCa 2+ 増加物質が代替脳に放出され,結果として代替脳内部のCa 2+ が増加 する.代替脳作成には従来のHybridⅢダミーに代替脳を導入可能にするためにHybridⅢダミー内部の形状を した型を用いた.代替脳作成の際は図3 に示す方式で合計三回に分けてゼラチン,マイクロカプセルを型に 流し込み,マイクロカプセルのばらつきを防いだ.

(3)

Fig. 1 Configuration of microcapsule

Fig. 2 Production process of microcapsules

Fig. 3 Teeming method of microcapsule and gelatin

Ca2+

Inner element Element of Ca2+ release

Wall element

Gelatin

Liquid A:Alginate sodium + Carrageenan + Gum arabic + Water

Liquid C:Calcium carbonate + Oil

Liquid B:Calcium chloride

Microcapsule

(4)

2・・・・2 圧縮実験圧縮実験圧縮実験圧縮実験 Matsuiら (14) は,ブタ屍体脳を用いた準静的な圧縮試験を実施したところ,神経損傷はひずみ30%から急激に増 加することを示した.また,Matsuiら (14) は頭頂部頭蓋と硬膜を取り除いた生体ブタの脳実質に対して直接圧縮荷 重を与える圧入試験を実施したところ,脳挫傷が発生すると報告している.本研究ではこの見地に基づき,神経 損傷の発生にはひずみが重要な要素であるとし,その損傷が発生していると決定する閾値をひずみ30%とした. マイクロカプセルが封入された代替脳試験片を用い,小型圧縮試験機による圧縮試験を実施した.マイクロカプ セルは内部に含有している化学成分によって力学特性が変化するため,様々な化学成分による配分でマイクロカ プセルを作成,代替脳に封入し,圧縮試験を実施した(図4).表1に圧縮試験を実施した代替脳のゼラチン濃度, マイクロカプセルの壁物質(塩化カルシウム)の濃度,カプセル内の薬品配合と各条件でのカプセル破壊の有無 を示す.変更する代替脳とマイクロカプセルのパラメータはゼラチンの濃度,塩化カルシウムの濃度,カプセル に含有する薬品の配合とした.実験の結果,圧縮ひずみ30%を受けてカプセルが破壊しCa 2+ を代替脳内部に増加 させる薬品の配合は,カラギーナンを含むマイクロカプセルが適することが分かった.また,マイクロカプセル が破壊するゼラチン濃度の条件は5%と10%としたが,本研究ではより実際の脳と特性の近い5%ゼラチンを採用 した.

Fig. 4 Compression test of alternate brain

Table 1 Results of compression test

2・・・・3 神経損傷評価用ダミー神経損傷評価用ダミー神経損傷評価用ダミー神経損傷評価用ダミー 図5に本研究の神経損傷評価用ダミーを示す.このダミーでは自動車安全領域での利便性を考慮し,既存 のHybridⅢダミーを二層に分割した.上部の層は神経損傷が評価可能な代替脳を搭載し,下部には現状のダ ミーと同様にHICによる傷害評価ができるように加速度計を取りつけた.脳挫傷に代表される局所性脳損傷 では主に大脳に傷害が発生する.そのため,上部の層では大脳に発生する局所性脳損傷の神経損傷を評価で き,下部の層では加速度履歴を取得することによるHIC評価が実施できるため,一度の試験で2つの異なる

Initial position 30% strain

Experimental No. Gelatin concentlation(%) Calcium chloride concentration(%) Chemical composition of microcapsule Rupture of microcapsules

No.1 3 20 Alginate sodium+Gum arabic No

No.2 5 20 Alginate sodium+Gum arabic No

No.3 5 20 Alginate sodium No

No.4 5 20 Alginate sodium+Water No

No.5 5 10 Alginate sodium+Carageenan+ Gum arabic+Water Yes No.6 10 10 Alginate sodium+Carageenan+ Gum arabic+Water Yes No.7 5 20 Alginate sodium+Carageenan+ Gum arabic+Water Yes No.8 10 20 Alginate sodium+Carageenan+ Gum arabic+Water Yes No.9 5 10 Alginate sodium+Carageenan+Water Yes No.10 10 10 Alginate sodium+Carageenan+Water Yes No.11 5 20 Alginate sodium+Carageenan+Water Yes No.12 10 20 Alginate sodium+Carageenan+Water Yes

(5)

評価法が解析可能である.ゼラチンは水溶液から固化,生成するため,外気温度によってはゼラチンが液化 し,センサー故障の原因となる場合があるため,代替脳は作成後プラスチックシートで包埋した.さらに両 層の境目にはアルミニウム合金製の分割プレートを挿入し,両層を分割した.ダミーへの衝撃負荷方法とし ては,直撃型損傷を評価できるように落下型の衝撃試験を採用した.落下による衝撃で代替脳が変形し,カ プセルが破壊するとCa 2+ が増加するため,Ca 2+ が増加した部位をひずみによる神経損傷の危険部位とした(図 6).

Fig. 5 Injury assessment dummy for nerve injury

Fig. 6 Mechanism of nerve injury evaluation

3. . . . 落下衝撃試験落下衝撃試験落下衝撃試験落下衝撃試験 本章では従来の評価法である加速度を基準とした評価の結果について示す.本研究の落下試験は,落下形態と して額部を打撲する前面衝突試験(以下前突),後頭部を打撃する後面衝突試験(以下後突)と頭部側面を打撃す る側面衝突試験(以下側突)を採用した(図7).落下高さは500 mmと1000 mmとし,前突,後突試験ではそれ ぞれ5回,側突試験では4回実施した.また,試験時の温度は薬品混合時の温度と同様に,ダミーを用いた実験 で標準的に設定される20~25 ℃で行った.表2に各実験の実験条件を示す.加速度計より得られる加速度-時間 線図からHICを算出した.HICによって頭部外傷の重症度を表す場合,米国自動車医学振興協会が人体に生じた 外傷をスケール化するために開発したAISコードを用いる.このコードは外傷の重症度を1~6段階に区分し, 数値が大きければより重篤な外傷を表わす.特にAISが3以上の場合は重症外傷を示す. HICの算出値から米 Capsule Division Plate Gelatin Sensor Space Physical Model Space Dummy: 3.88kg Ca2+

(6)

国運輸省道路交通安全局(NHTSA)によって提唱された (15)HIC 値からAISが3以上を呈するリスクを予測する手法 を用いて本研究の落下試験における傷害リスクを予測すると,500 mmの落下試験では約20~50%程度のAISが 3以上の損傷リスクを伴うのに対して,1000 mmの落下試験ではほぼ100%のリスクで重症頭部傷害が起こる結果 となった.表3に各落下形態と衝撃形態におけるHIC値の平均値を示す.NHTSAが提唱するリスクによると, HIC=1000を上回る衝撃ではAISが4以上になるリスクが20%以上で発生するため,一般にはこの値が傷害基準 値として定められている (16) .本研究の落下試験では,1000 mmではHIC=1000を上回るが,500 mmでは全ての条 件で1000に満たなかった.

Fig. 7 Drop test in each impact direction

Table 2 Results of HIC based test(※:

more than AIS3 injury)

Table 3 Average values of HIC each impact experiment Frontal impact Occipital impact Side impact

Face

Face

Face

Experimental No. Drop hight(mm) Impact direction HIC Risk of AIS3+(%)

1-1 500 Frontal 606 19 1-2 500 Frontal 751 30 1-3 500 Frontal 701 26 1-4 500 Frontal 721 27 1-5 500 Frontal 740 29 2-1 1000 Frontal 2118 99 2-2 1000 Frontal 2869 99 2-3 1000 Frontal 3021 99 2-4 1000 Frontal 1985 99 2-5 1000 Frontal 2756 99 3-1 500 Occipital 1150 61 3-2 500 Occipital 1096 51 3-3 500 Occipital 945 48 3-4 500 Occipital 903 44 3-5 500 Occipital 903 44 4-1 1000 Occipital 2889 100 4-2 1000 Occipital 3195 100 4-3 1000 Occipital 3023 100 4-4 1000 Occipital 2868 100 4-5 1000 Occipital 3107 100 5-1 500 Side 767 31 5-2 500 Side 922 46 5-3 500 Side 727 28 5-4 500 Side 945 48 6-1 1000 Side 3113 100 6-2 1000 Side 3166 100 6-3 1000 Side 2241 100 6-4 1000 Side 2445 100 Height(mm) 500 1000 500 1000 500 1000

Average value of HIC 704 2550 999 3016 840 2741

(7)

4. CaCaCaCa 2+ 2+2+2+ の検出 の検出 の検出 の検出と分割方法と分割方法と分割方法と分割方法 衝撃試験実施後は代替脳内部に増加した Ca 2+ の測定を行った.Ca 2+ の検出は試料をプラズマによって射出し, 特定の波長で発光するCa 2+ を検出するICP-AES発光分析法を用いた.衝撃試験を実施したダミーより代替脳を摘 出し,摘出した代替脳を図8に示す分割法で衝撃形態別に分割した.すなわち,前突と後突試験では前後の部位 に分け,側突試験では左右の部位に分けた.分割した個々の部位をそれぞれ高温の蒸留水で融解した.このとき, 正常なマイクロカプセルは不溶性であるので融解しないため,この溶液を検査対象とした.なお,部位によるCa 2+ 増加特性を検出するために代替脳を分割して検出を行った.

Fig. 8 Divide method of alternate brain

5. Ca. Ca. Ca. Ca 2+ 2+2+ 2+ 検出結果 検出結果 検出結果 検出結果 本章では代替脳のCa 2+ 増加量に関する実験結果を示す.図9~11のグラフに各衝撃形態の500 mmと1000 mm におけるCa 2+ 増加量を示した.各グラフの縦軸はCa 2+ の検出量,横軸には分割した代替脳のサンプル番号,奥行 き軸には実験番号を示す. 5・・・・1前突,後突試験前突,後突試験前突,後突試験前突,後突試験 (1) 前突500 mm(図9-(a)):HIC<1000 前突500 mmの実験では衝撃部(分割サンプル番号1, 2, 5, 6番)と非衝撃部(分割サンプル番号3, 4, 7, 8番)に Ca2+が増加する傾向があった.例えば,実験番号1-2では衝撃部である1番,2番にそれぞれ10.0 mg/l,11.5 mg/l 発生し,非衝撃部には3番に17.4 mg/lの増加が認められた.加えて,実験番号1-3のサンプルでは衝撃部の2番 で14.6 mg/l,非衝撃部の3番で20.0 mg/lが検出されており,前部と後部の両者にCa 2+ が増加する傾向が高い. Side impact Frontal and occipital impact

1

2

3

4

5

6

7

8

Front Rear

1

2

3

4

5

6

7

8

Front Rear Alternate Brain Brain

1

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3

4

5

6

7

8

Front

Rear

1

2

3

4

5

6

7

8

Front

Rear

Alternate Brain

Brain

(8)

(2) 前突1000 mm(図9-(b)): HIC>1000,後突500 mm(図10-(a)):HIC≒1000, 後突1000 mm(図10-(b)):HIC>1000 この条件の実験群では前突,後突問わず代替脳前面部(分割サンプル番号1, 2, 5, 6番)にCa 2+ の増加が多い. 特にこの傾向が著しいのは図10-(b)に示す後突の1000 mm落下試験である.この実験条件では,衝撃部位(後頭 部)にCa 2+ 増加が発生するのは実験番号4-3の1つの実験だけであり,他は全て非衝撃部位(前頭部)にCa 2+ の 増加が認められた. (a) 500 mm (b) 1000 mm

(9)

(a) 500 mm

(b) 1000 mm

Fig. 10 Detectable amount of Ca2+ in occipital impact

5・・・・2側突試験側突試験側突試験側突試験 側突試験では衝撃部位と非衝撃部位の両者にCa 2+ の増加傾向があった(図11).もう一つの特徴としては,500 mm の試験(図11-(a))では打撃点,非打撃点共に同じ割合でCa 2+ が出現するのに対して,1000 mm(図11-(b))では約10% 高くCa 2+ が出現することが分かった.加えて,側突実験では落下打撲を行う際に代替脳の2,3 番を打撲する落 下を行っているが,500 mmでは打撃部(分割サンプル番号1, 2, 3, 4番),非打撃部(分割サンプル番号5, 6, 7, 8番) 共に広汎な範囲にCa 2+ が増加するのに対して,1000 mmでは打撲部位とその反衝方向に集中してCa 2+ の増加が起 こることが分かった.すなわち,落下するエネルギが大きければ大きいほど,局所的な部位に集中してCa 2+ が増 加した.Ca 2+ の増加量は前突,後突試験同様500 mmでは最大値が13.6 mg/lで1000 mmでは21.3 mg/lであり, 1000 mmの増加が高かった.

(10)

(a) 500 mm

(b) 1000 mm

Fig. 11 Detectable amount of Ca2+ in side impact

6. . . . 神経損傷の脳物理モデルによる再現神経損傷の脳物理モデルによる再現神経損傷の脳物理モデルによる再現神経損傷の脳物理モデルによる再現 脳神経細胞体に対して力学刺激を加えると細胞体が Ca 2+ を放出することを示した研究は生体外で実施する In vitro 実験によって報告されている.例えば,Lusardi ら (17) によると,海馬細胞に引張ひずみを与えると,ひずみ が12%~50%の間で持続時間の大きさに関わらずCa 2+ 増加細胞が出現するとしている.また,大脳皮質の培養細 胞に対して50%ひずみを負荷すると通常約50 nmol/m 3 のCa 2+ を保っている軸索が10倍の500 nmol/m 3 へ増加する ことが報告されている (18) .これらの研究では細胞に対して引張荷重を負荷しているが,脳内の神経細胞は様々方 向に配置されており,圧縮ひずみが脳実質に負荷された場合であっても,圧縮面と平行に神経細胞が配置されて いると引張ひずみが生じる.そのため,神経損傷に伴う脳内のCa 2+ の増加には脳実質に生じる引張,圧縮力が必 要であり,ひずみから発生する代替脳内部のCa 2+ 増加を用いて神経損傷の危険部位を特定できる本モデルは局所

(11)

性脳損傷における神経細胞の損傷時の特徴を模擬しているものと考える.ただし,実際の頭部傷害におけるCa 2+ の脳全体での増加量については未だ明らかになっておらず,増加量にまで言及することができない限界を有して いる. 6・・・・1 実損傷との比較実損傷との比較実損傷との比較実損傷との比較 中村ら (19) の研究によれば前頭部を打撲した20症例の頭部外傷患者のうち,全体の95%に直撃損傷,すなわち 前頭部に損傷が発生することを報告している.これを本研究で得られた代替脳におけるCa 2+ 増加部位と比較する と,500 mm落下試験では両側にCa 2+ が増加し,1000 mm落下試験では前部にCa 2+ の増加傾向があることから, 前者は中村らの報告と一致せず,後者は一致した. 同様に中村らの報告によれば,後頭部を打撲した27症例の頭部外傷患者のうち全体の 85%の脳前面に損傷リ スクが存在することを報告している.この報告と本研究におけるダミーのCa 2+ 増加部位を比較すると,後頭部か ら落下させた実験の場合は前面にCa 2+ の増加が多く発生することから,中村らの報告と500 mm,1000 mm落下 試験が共に一致する.後頭部打撃の場合は500 mm落下試験では代替脳前面に40%のCa 2+ の増加があり,1000 mm の場合は65%が反衝部位で増加する傾向にある.すなわち,より重篤な症状を引き起こすと予測される実験条件 は代替脳前面にCa 2+ が増加した.後面衝突の場合,病態が重症で有ればある程,反衝方向に脳損傷が発生する危 険性が高まることが同じく中村らより報告されていることから,後面衝突の場合も同様にダミー評価による神経 損傷評価が似た特徴を持つことが分かった. 側面衝突の場合は23症例の外傷患者のうち直撃部位だけでなく反衝方向の損傷が57%を占めると報告されて いる.本研究でダミー側面部を打撃した実験では,500 mm落下実験(HIC平均値:840),1000 mm落下試験(HIC 平均値:2741)共にCa 2+ が代替脳両側面に出現することから,実傷害における側面衝突の脳損傷好発部位と一致 した.

6・・・・2 HICHICHICHIC 値と値と値と Ca値とCaCaCa 2+ 2+ 2+ 2+ 増加量と 増加量と増加量と 増加量との関係の関係の関係 の関係 本節では各実験条件のHIC値とCa 2+ 増加量の特徴を加味し,本研究の適用性について考察する.それぞれの実 験条件を前部と後部のカテゴリに分け検出量の平均値を算出した結果を図12に示す.前突1000 mm,後突500 mm, 1000 mmに関しては検出量の平均値に有意に差があった.一方,前突500 mm,側突500 mm,1000 mmにおける 前部と後部のCa 2+ 検出値の平均には有意差が無かった.以上を総合すると,前突の1000 mm,後突,側突は実傷 害を再現可能であるが,前突の500 mmでは実傷害を再現することができなかった.この結果をHIC値と照合す ると,前突試験,後突試験のHIC値では前突試験の500 mm以外は損傷発生の基準値として用いられる1000と 同等かそれ以上の値である.本研究の評価法はHIC>1000では神経損傷の発生部位を再現できていることから, HIC1000以上の領域において神経損傷の好発部位を再現することができた.

Fig. 12 Average value of Ca2+ amount each impact test in frontal and occipital region of alternate brain (F: Frontal impact, O: Occipital impact, S: Side impact)

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 F:500mm F:1000mm O:500mm O:1000mm S:500mm S:1000mm A v e r a g e v a lu e o f C a 2 +a m o u n t (m g /l ) Frontal region Occipital region * * * *p<0.05

(12)

6・・・・3 本研究の評価フロー本研究の評価フロー本研究の評価フロー本研究の評価フロー 以上Ca 2+ 各代替脳部位の放出量とHICの条件を加味し,本研究で提案する神経損傷の評価フローを図13に示 す.前節にも述べたが,本研究で実施する神経損傷評価では,HICが1000を超えると実傷害の傷害部位と一致す る.つまり,本研究の評価法はHIC>1000の範囲で有効である.そこで,本研究の評価手法としては,まず,得 られたHICの値から1000を下回る物についてはこの評価手法の基準に基づき,非損傷と判定する.一方1000を 超えた時は前突,後突であれば前面に神経損傷のリスクを有し,側突の場合は両側にリスクを有することが判明 する.以上より,神経損傷を評価可能な代替脳を既存のダミーに導入することによって,HIC値が1000以上の領 域でより厳密に部位による損傷を評価することを可能にできると考える.例えば自動車乗員のシートベルト着用 でエアバック展開時のより厳密な傷害評価が行え,歩行者の自動車ボンネット衝突による傷害部位が断定可能に なるように,これまでHICしか判断できなかったのに対して,この神経損傷評価ダミーを用いると,脳実質の受 傷部位まで再現できるので,安全評価が重篤な傷害を引き起こす脳実質傷害の危険性を示すことが可能となる.

Fig.13 The flow of nerve injury evaluation

7. おわりにおわりにおわりに おわりに 本研究では神経細胞に重篤な傷害をもたらすのは脳実質のひずみであると先行研究を踏まえて判断した上で, ひずみを負荷されると急激にCa 2+ が増加する脳神経細胞の特性に着目し,神経細胞の細胞損傷閾値のひずみ30% で急激にCa 2+ を増加させる代替脳を作成した.その代替脳を既存のダミー頭部に導入し,直撃型の落下並進衝撃 試験を実施し,Ca 2+ の増加部位による神経損傷のリスクを評価した.以下に結論を示す. (1) ひずみ30%で代替脳内のマイクロカプセルが破壊するためには安定剤であるカラギーナンが必要である. (2) 前突,後突試験では,HIC≧1000 の条件下でCa 2+ の検出量が代替脳前部に有意に増加し,実傷害の好発部位 と一致する. (3) 側突試験では両側にCa 2+ の検出量が増加し,前突,後突同様実傷害の発生部位と一致する. 文献 文献 文献 文献

(1) Gennarelli, T.A., “Head Injury in Man and Experimental Animals: Clinical Aspects”, Acta neurochirurgica. Supplementum, Vol. 32 (1983), pp.1-13. (2) 望月康廣,西本哲也, 富永茂,阪本雄一郎,益子邦洋,“日本外傷データバンクを用いた交通傷害の詳細解析”, 自 動車技術会論文集,Vol. 42, No.5 (2011), pp.1211-1216. No Injury Injury Non-Injury Non-Injury

The risk of nerve injury

Frontal Both side Yes Yes HIC≧1000? HIC≧1000? No Frontal Occipital Side Impact direction

(13)

(3) 社団法人自動車技術会インパクトバイオメカニクス部門委員会編,“工学技術者と医療従事者のためのインパクト バイオメカニクス”,社団法人自動車技術会, 改訂第2版 (2007) pp.60-61.

(4) Lissner, H.R., Lebow, M. and Evans, F.G., “Experimental Studies on the Relation between Acceleration and Intracranial Changes”, Surgery, Gynecokogy and Obatetrics, Vol. 111 (1960), pp. 329-338.

(5) Morrison, B.3rd., Cater, H.L., Wang, C.C., Thomas, F.C., Hung, C.T., Ateshian, G.A. and Sundstrom, L.E., “A Tissue Level Tolerance Criterion for Living Brain Developed with an In Vitro Model of Traumatic Mechanical Loading”, Stapp Car Crash

Journal, Vol. 47 (2003), pp. 93-105.

(6) Elkin, B.S. and Morrison, B.3rd., “Region-Specific Tolerance Criteria for the Living Brain”, Stapp Car Crash Journal, Vol. 51 (2007), pp. 127-138.

(7) Cater, H.L., Sundstrom, L.E. and Morrison, B.3rd., “Temporal Development of Hippocampal Cell Death is Dependent on Tissue Strain but not Strain Rate”, Journal of Biomechanics, Vol. 39, No. 15 (2006), pp. 2810-2818.

(8) Geddes, D.M. and Cargill, R.S.2nd., “An in Vitro Model of Neural Trauma: Device Characterization and Calcium Response to Mechanical Stretch”, Transactions of the ASME, Journal of Biomechanical Engineering, Vol. 123 (2001), pp. 247-255. (9) Sahuquillo, J., Poca, M.A. and Amoros, S., “Current Aspects of Pathophysiology and Cell Dysfunction after Serve Head

Injury”, Current Pharmaceutical Design, Vol. 7 (2001), pp. 1475-1503.

(10) Costine, B.A., Quebeda-Clerkin, P.B., Dodge, C.P., Harris, B.T., Hillier, S.C. and Duhaime, A.C., “Neuron-specific Enolase, but not S100B or Mylin Basic Protein, Increases in Peripheral Blood Corresponding to Lesion Volume after Cortical Impact in Piglets”, Journal of Neurotrauma, Vol. 29, No. 17 (2012), pp. 2689-2695.

(11) Vajtr, D., Benada, O., Linzer, P., Samal, F., Springer, D., Strejc, P., Beran, M., Prusa, R. and Zima, T., “Immunohistochemistry and Serum Values of S-100B, Glial Fibrillary Acidic Protein, and Hyperphosphorylated Neurofilaments in Brain Injuries”,

Soudni Lekarstvi, Vol. 57, No. 1 (2012), pp. 7-12.

(12) Gradisek, P., Osredkar, J., Korsic, M. and Kremzar, B., “Multiple Indicators Model of Long-term Mortality in Traumatic Brain Injury”, Brain Injury, Vol. 26, No. 12, pp. 1472-1481.

(13) ケニス株式会社,“人工イクラを作ってみよう”,おもしろ実験http://www.kenis.co.jp/experiment/chemistry/012.html p.1 (参照日2010年4月1日).

(14) Matsui, Y. and Nishimoto, T., “Nerve Level Brain Injury in in Vivo/in Vitro Experiments”, Stapp Car Crash Journal, Vol. 54 (2010), pp. 197-210.

(15) NHTSA, “Injury Risk Curves and Protection Reference Values”, Head,

http://www.nhtsa.gov/cars/rules/rulings/80g/80gii.html p.1(参照日2009年3月1日).

(16) 日本機械学会編,生体工学,初版1刷 (2007) ,pp.126-127.

(17) Lusardi, T.A., Wolf, J.A., Putt, M.E., Smith, D.H. and Meaney, D.F., “Effect of Acute Calcium Influx after Mechanical Stretch Injury In Vitro on the Viability of Hippocampal Neurons”, Journal of Neurotrauma, Vol. 21, No. 1 (2004), pp. 61-72.

(18) Geddes-Klen, D.M., Serbest, G., Mesfin, M.N., Cohen, A.S. and Meaney, D.F., “Pharmacological Induced Calcium Oscillations Protect Neurons from Increase in Cytosolic Calcium after Trauma”, Journal of Neurochemistry, Vol. 97 (2006), pp. 462-474.

Fig. 2 Production process of microcapsules
Fig. 4 Compression test of alternate brain
Fig. 5 Injury assessment dummy for nerve injury
Fig. 7 Drop test in each impact direction
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参照

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