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[講演要旨] 1793寛政西津軽地震に関する一考察(その1)

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Academic year: 2021

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(1)歴史地震 第26号(2011) 96頁. [講演要旨] 1793 寛政西津軽地震に関する一考察(その 1) 弘前大学. 白石 睦弥. 弘前大学農学生命科学部地域環境工学科. 檜垣 大助. 弘前大学農学生命科学部地域環境工学科. 古澤 和之. §1. はじめに 寛政西津軽地震は,寛政四年十二月二十八日 (1793 年 2 月 8 日)昼八ツ時(午後 2 時半)頃に発生し た地震で,その直後に津波も発生した.主な被災地 域は鰺ヶ沢・深浦を中心とする津軽領西海岸の湊町 や村である. 本報告では,主に弘前藩の史料により,同地震に よる主に人的被害を中心とした被害及び弘前藩の対 応について検討する. §2. 寛政西津軽地震の人的被害 「要記秘鑑」(弘前市立弘前図書館蔵)には,寛政 五年二月条に「右地震ニ付,弘前町々破損并在 浦々津浪・山崩等ニ而,潰死人馬并潰家,其外破損 所調,寛政五年二月朔日御登セニ相成候」とあり,被 害について翌年の二月に入ってすぐに江戸に被害 報告がなされており,「御国日記」には被害一覧が記 されている. 被害の中で興味深いのは,山崩れによる天然ダム (河道閉塞)の形成や 300cm 以上の海岸隆起といっ た地形の変化が見られるにもかかわらず,人的被害 が少ないという点である. 河道閉塞地点からほど近い松原集落での墓石調 査において,寛政年間の死者を確認することはでき なかった.しかし,明らかに天明年間の死者が多く刻 まれており,もともと人口の少ない支村である松原村 では天明飢饉の際に既に人口が極端に減少してい た可能性が考えられる.それは津軽領全域について 言えることでもある. 当該地震は冬期に発生した災害であり,また地震 発生から雪の続いていたことに鑑みても倒壊率の上 昇は否めない.また,飢饉後のように生活が貧弱にな れば,被災しやすい環境にあると考えられ,その上で 死者の少ない状況は,当時の村落の人口の少なさを 示しているのではないか. §3. 弘前藩の対応―祈祷と占日を中心に― 災害対応についてはこれまで御救いや物的な復 興について検討されることが多かったが,本報告では 弘前藩の精神的な災害対応・人心統制と取り締まり の対象となった災害に関する民間信仰や治安状態に. ついても検討する. 3.1 弘前藩の祈祷 弘前藩は当該地震を重くとらえており,地震発生の 翌日に「重き御祈祷」を命じていたことが「御国日記」 に記されている.しかも,五山や両社(弘前神明宮・ 弘前八幡宮)をはじめ,藩主家の菩提寺である長勝 寺など多くの有力寺社に「御武運長久」「国家安全」 の祈祷を同時に命じているのである. 弘前藩では,地震などの災害発生の際に,度々有 力寺社に祈祷を命じており,それは災害が国家安全 を阻害するほどの事態であると,同藩が認識していた ことに他ならない.この「国家安全」祈祷は,近世期津 軽領最大の地震とされる明和三年(1766)の明和津軽 地震や,元禄飢饉・天明大飢饉,寛政期の異国船来 航などに際して執行されたものと同様である.同地震 は対外危機や食糧危機などの国家的危機と同等,も しくはそれに準ずるものとして捉えられていたと言えよ う. 3.2 津軽領内の占日 先述の公式な祈祷と対照的に見られるのが,「占 日(卜日)」という,今後の災害発生の日時について 占いをする民間宗教者である.弘前藩に限らず,宗 教者は領主権力の手中でしか活動を許されておらず, このような民間宗教者は非公認のものであった.デマ や虚説は災害が発生すると必ずと言って良い程見ら れるものであり,特に津軽地域では藩非公認の「イタ コ」など伝統的に民間祈祷や占いを行う者がおり,こ のような虚説が出回る原因となった. 被害の大きかった地域よりも,城下などの都市部を 中心に活動していた民間宗教者について,弘前藩は 人心を動揺(「人情動」「人気を相驚」)させて不届き であるとしており,そのような者は取り締まりの対象に なった.藩庁が最も恐れたのが,人心の動揺による騒 動の発生と領内の治安悪化であった. しかし,治安の悪化についても,「投火」(放火)が 確認され,藩では町同心に吟味を申し付けた.この 顛末は,平素から不人情者であった久次郎という者 が疑わしいとして捕らえられ入牢となった.久次郎は, はっきりした証拠があって下手人とされた訳ではなく, 人心の動揺を防ぐため,藩庁はとにかく放火犯を捕 獲しなければならなかったようである.. - 96 -.

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