個の確立を目指す授業の創造 : 集団の学びを個に
返す学習指導
著者
宮? 幸樹, 中熊 豊仁
雑誌名
鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要. 特別号
巻
6
ページ
105-114
発行年
2016-03-02
URL
http://hdl.handle.net/10232/00029442
Bulletin of the Educational Research and Development, Faculty of Education, Kagoshima University
2016, Special Issue No.6, 105-114
報 告
個の確立を目指す授業の創造
ー集団の学びを個に返す学習指導ー
宮
﨑 幸 樹
[鹿児島大学教育学部附属小学校]
中 熊 豊 仁
[鹿児島大学教育学部附属小学校]
Creation of the classes aimed at the establishment of identity
MIYAZAKI Koki・NAKAKUMA Toyohito
キーワード:グローバル社会、汎用的資質・能力、集団の学びと個の学び、学び合い、 比較・関係付け はじめに 子どもたち一人一人が豊かな人生を送ることができるように,生涯に渡って生きて働く資質・能 力を育みたい。これが,私たちの願いである。子どもたちが生きるグローバル社会は,政治・経済・ 文化などの様々な領域において新しい知識や技術が基盤となり,あらゆる地域に属する個人がそれ らを共有し合い,関係を深めることで発展していく社会である。このような社会において豊かな人 生を送るためには,次のような姿勢が大切であると考える。 ◆ 人・もの・ことといった他者とのかかわりを通して,目的や目標の達成に必要な知識や技術 を共有し合おうとすること ◆ 獲得した知識や技術を基に,自分のとるべき言動を責任をもって自己決定し,物事に取り組 もうとすること ◆ 取組の結果としての成功や失敗を同価値ととらえながら,自分自身のさらなる向上を図るた めに前進していこうとすること 私たちは,このような姿を,人が自分という個を確立していくこと目指す姿(個の確立を目指す 姿)としてとらえた。そこで,個の確立を目指す上で特に重要な資質・能力として,「 物事を判断し, 行動する際の基盤となる見方や考え方 」(以下 「 4つの見方や考え方 」)を設定し,この見方や考 え方を,子どもたちが生涯に渡って適用することのできる汎用的資質・能力としてとらえた。そし て,各教科,道徳,外国語活動,総合的な学習の時間の問題解決を通して,この見方や考え方の醸 成に取り組むための授業創造に取り組んだ。 【計画性にかかわる見方や考え方】 確かな目的意識と目的に応じた目標をもち,その達成のために,見通しをもって生活していこう とする見方や考え方 【協調性にかかわる見方や考え方】 目標達成に必要な知識や技術を積極的に獲得しようとしたり,提供したりしようとする見方や考
− 106 − 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 特別号 6号(2016) え方 【責任感にかかわる見方や考え方】 目標達成のために何が必要かを根拠をもって自己決定し,取捨選択しながら,粘り強くやり遂げ ようとする見方や考え方 【自己肯定感にかかわる見方や考え方】 有能感や有用感を高めながら,自他の存在価値を認知していこうとする見方や考え方 1.これまでの研究の総括 授業づくりにおいては,一単位時間の問題解決の各過程に重点化した 「 4つの見方や考え方 」 を表出させるためには,「学ぶ意欲」「思考力・判断力・表現力」「知識・技能」といった「学力 の3要素」をよりよく身に付けさせることが必要である。そこで,それぞれの見方や考え方が表 出するまでに必要であろうと考える資質・能力を独自に設定し,その資質・能力から 「 学力の3 要素 」 との関係性を明確にしていった。その資質・能力が 「 7つの力や態度 」 である (図1) 。 この「7つの力や態度」は,子どものたちの言動として表出され,活動を見取る時の具体的な観 点とすることができる。そこで,物事を未来予測的に,目的整合的に,多面・総合的にみようと する力を知識・技能を活用してコミュニケーションを図る際に働く思考力に内包される力として とらえた。また,参加・協力・つながりを尊重する態度を,物事に臨むときの姿勢としてとらえ た。よって,「7つの力や態度」を 「 学力の3要素 」 に内包される,各教科等を横断して育成す る汎用的資質・能力として設定した(図2)。これらのことから,「 7つの力や態度 」 の発揮を 学力の3要素を測定する上で有効な評価の観点として用いるとともに,この力や態度をよりよく 発揮させるという点から学習指導の改善を図った。 その結果,次のような成果と課題が明らかになった。(○成果,●課題) ○ 取組の過程を省察し,自分があるべき姿や言動といった自己の目標を明確にしようとする子ど もが増えてきた。(子ども) ○ 授業中や日常の生活場面で他者と協力して意欲的に取り組もうとする姿が頻繁に見られるよう になってきた。(子ども) 㮵ඣᓥᏛᩍ⫱Ꮫ㒊ᩍ⫱ᐇ㊶◊✲⣖せ ≉ูྕ➨㸴ྕ ཎ✏
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図1 問題解決の過程に沿った 「 7つの力や態度 」 の発揮 図2 各教科等を通して育成する汎用的資質・能力宮﨑 幸樹・中熊 豊仁:個の確立を目指す授業の創造 ● うまくいかなかったり,失敗したりしても,試行錯誤しながら工夫改善し,最後まで粘り強く やり遂げようとする意識の弱さが見られた。(子ども) ● 「やればできると感じるか。」「自分は学級の中で必要とされているか。」など,有能感や有用感 を問う調査において,よりよく変容した人数に大きな変化が見られなかった。(子ども) ○ 「 7つの力や態度 」 をよりよく発揮させることを目的にすることが,教材解釈の新たな視点と なり,その結果,新単元や新題材をうみだしたり,指導計画や学習課題・問題を再構成したりす ることができるようになった。(教師) ○ 「 7つの力や態度 」 の7つの観点から,教師は,発問等の具体的な働きかけを複数検討するこ とができるようになった。その結果,学級全体の状況に応じて,働きかけを修正することができ るようになった。(教師) ● 全体指導だけでなく,子ども一人一人の状況に応じてどの力や態度を発揮させることが有効か, また,そのための働きかけ方について具体化する必要がある。(教師) 【総括】 協調性にかかわる見方や考え方を基盤とした参加・協力の態度の下,コミュニケーョンを行う力 を発揮しながらペア・グループで課題解決に取り組むなど,学ぶ意欲を高めながらも,思考力・判 断力・表現力の育成や知識・技能の定着に個人差が生じた。 よって,未来予測・目的整合,多面・総合の力といった,思考面にかかわる力をよりよく発揮さ せるための学習指導を具体化する必要がある。 このような課題が見られた原因を明らかにするために,ペア・グループなどの集団の学びの中で 見られる個の課題を明らかにした。 (1). どんな目的で,何について,どこまでを目標として話し合ったり,協力し合ったりするの かを明確にもつことができていない子どもがいる。 (2). (1).の結果,どんな情報を求めればよいかが分からず,何としても自分に有効となる情 報を獲得しようとする意欲が見られない子どもがいる。また,情報を獲得しても,その情報は 次の活動を促進させる情報に成り得ていないことがある。 (3). 教える側と教わる側の固定化が見られる。また,それらが,顕著になるにつれ,両者には, 問題解決の過程の中で次のような傾向が見られるようになる。 【教える側に見られる顕著な傾向】 □ 目の前の問題解決にとどまってしまい,疑問を連続・発展させながら,さらなる追究を求めよ うとすることが少ない。 □ 問題解決の速さや正否にこだわり,他者と共に解決を進めたり,試行錯誤しながら解決の道筋 を多様に見いだしたりするなど,解決の過程に喜びや楽しさを見いだそうとすることが少ない。 【教わる側に見られる顕著な傾向】 □ 始めから自己の能力に限界感を抱きながら問題解決に臨むようになる。 □ 誰かが手助けしてくれるだろうといった他者依存の意識をもつようになる。
− 108 − 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 特別号 6号(2016) □ 考えに自信がもてず,正否にかかわらず自分の考えを他者へ表出することを嫌うようになる。 このような個の課題が見られた原因を,目指す資質・能力の面から次のように分析した。 集団の学びを通して,未来予測や目的整合,多面・総合といった思考力・判断力・表現力にかかわ る力を発揮するために必要な目的や目標に合った有効な情報を獲得することができていない。その 結果,問題解決に必要な思考へと発展せず,活動が停滞する。 これらのことから,集団の学びを,教え合いではない学び合いへと転換させていくことが重要で あると考えた。その学び合いとは,次のような学び合いである。 子どもたちが対等の立場でかかわり合い,互いの思いや考えをすり合わせながら,皆で価値ある 情報へと高めていこうとする学び合い そして,学び合いの中で共有される情報を基に,思考面にかかわる力(=未来予測,目的整合,多面・ 総合,コミュニケーション)をよりよく発揮させ,1単位時間で目標として設定した学力の3要素 によりよく到達させる。そのためには,目標によりよく到達させるための学び合いのある学習活動 設定の在り方や,学び合いを通して獲得した情報を基に,よりよく思考させるための指導方法を具 体化していく必要がある。 2 「 集団の学びを個に返す学習指導 」 とは 集団の学びを個に返す学習指導とは,互いの思いや考えをすり合わせながら,皆で価値ある情 報へと高めていこうとする学び合いを通して,目標として設定した学力の3要素によりよく到達 させるための学習活動設定や指導方法である。 子どもが互いの思いや考えをすり合わせながら,皆で価値ある情報へと高めていくためには, まず,問題解決の状況に応じて思考するための情報が必要となる。次に,情報を基にどのように 考えるのか,思考方法を駆使する必要がある。 そこで,学び合いの場における情報の獲得と活用の過程を探ることを通して,子どもが学び合 いを介して問題解決に向かう際,どのように思考していくことがよりよい解決につながるのか, 子ども自身の考え方の有り様をさぐった。 3 「子どもが身に付ける考え方」とは 学び合いの場では様々な情報が発信される。その際,既有の情報と他者から発信された情報と を比較したり,関係付けたりしながら,考えが異なる要因や考えの妥当性を明確にすることで, 個の考えは深まっていく(図3)。この 「 比較 」 と 「 関係付け 」 の思考の様相は,問題解決の場 面に応じた内容によって変化するものである。しかし,内容は異なっていても,比較する場合は, 対象(何を)と観点(何で)を変え,関係付ける場合は,対象(どれらを)と順序(どのように) を変えながら,その場面に応じた思考を行っている。つまり,「 比較 」 と 「 関係付け 」 の思考が, どの思考過程においても基盤として働くのである。 これらのことから,「 比較 」 と 「 関係付け 」 を基礎的な思考の型としてとらえ,これを 「 子ど
宮﨑 幸樹・中熊 豊仁:個の確立を目指す授業の創造 もが身に付ける考え方 」 として設定した(図4)。 4 「子どもが身に付ける考え方」を育成することの価値 比較したり,関係付けたりする思考方法は,様々な問題を解決する際の基盤として有効に働く と考える。例えば,諸問題に直面した際,「AとBを,Cという点から比べると同じと違いがはっ きりして,解決につながるかもしれないな。」「AとBをつなげて考えると何か解決のヒントが得 られるのではないかな。」など,子どもが演繹的に 「 比較 」 と 「 関係付け 」 の思考方法を用いる ことができれば,学習や生活の中で起こる数々の問題に遭遇した場合でも,自ら解決を進めるこ とができると考える。これが,子どもにとっての価値である。 5 学習指導具体化の手順 学び合いを通して獲得した情報を基に,子どもが 「 比較 」 と 「 関係付け 」 といった基礎的な思 考の型を用い,未来予測的に,目的整合的に,また多面・総合的に思考することができるように するためには,思考の過程を可視化するような働きかけを繰り返し行うことが必要であると考え る。そのために,次のような手順で学習指導を具体化していく まず,目標達成に向け,何を,どのように思考させ,何を学び取らせるのかを明確にするため に,単元及び題材の位置とねらい,教材の特性,子どもの実態に基づいた学習活動を設定する。 次に,設定した学習活動のねらいを達成させるための効果的な学び合いを導入するために,本 校児童の課題から,三つの目的に重点化した学び合いから,どの学び合いを導入するかを吟味す る。 重点化した学び合いの目的とは,次のア・イ・ウの学び合いである。 学び合いア:取り組もうとする話題や問題を明らかにするための学び合い 学び合いイ:現時点での自分の状態(到達度)を認知し,解決の方向性を見いだすための学び合 い 学び合いウ:考えを高次なものへと高めるための学び合い このように,導入する学び合いの目的を明確にすることによって,教師は,学級全体の問題解 㮵ඣᓥᏛᩍ⫱Ꮫ㒊ᩍ⫱ᐇ㊶◊✲⣖せ ≉ูྕ➨㸴ྕ ཎ✏
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図3 情報を比較したり関係付けたりする様相 図4 子どもが身に付ける考え方− 110 − 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 特別号 6号(2016) 決の状況を判断し,効果的な学び合いを取り入れることができるようになると考える。また,こ のような学び合いを価値あるものにするためには,子ども自身に学び合いの目的を明確にもたせ ることが重要である。そのためには,教師が,学び合いを通してどのように個を変容させるのか, その姿をイメージした上で学び合いを設定することが大切である。 さらに,学び合いの中で獲得した情報を基に,「 未来像を予測する力,目的に対する整合を吟 味する力,多面的・総合的に考える力 」 のどの力を発揮させて思考させることが有効かを考え, 発揮させる力の重点化を図る。そして,その力を発揮するということは,子どもが何を,どのよ うに思考することなのか,比較・関係付けを基盤に,その思考の過程を子どもの側から具体的に とらえる。 以上の手順を整理すると,次のようになる(図5)。 このような手順に沿って学習指導を具体化することを通して,単元・題材全体や1単位時間の 目標として設定した学力の3要素に,どの個もよりよく到達できるようにする。また同時に,よ りよい学び合う集団へと高めていく。 6.学習活動の改善 切実な学びを促し,学び合いの必然性をもたせるといった点から,次のような要素を基に,学 習活動の改善を図った。 (1).主に 「 導入 」 場面において取り入れる『教材』と,それによって生まれる『学習課題・問 題』の設定要素 㮵ඣᓥᏛᩍ⫱Ꮫ㒊ᩍ⫱ᐇ㊶◊✲⣖せ ≉ูྕ➨㸴ྕ ཎ✏
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図5 学習指導具体化の手順宮﨑 幸樹・中熊 豊仁:個の確立を目指す授業の創造 ・ これまでに獲得した知識・技術などから,直感的に解決できそうだ感じるものの,その解決 は一筋縄ではいきそうにないといった困難さを感じさせるもの。また,同時に,解決すること の楽しさやよさといった期待感を抱かせるもの ・ 課題解決を通して,今後の生活への自己決定や活用を促すもの (2).提示した『学習課題・問題』のとらえさせ方 ・ 解決までの手順や考え方のどこかしらに不十分さがありそうだということを,子どもたちそ れぞれに認知させるようにすること ・ 最終的に,集団内の誰もがよりよく解決することを集団全体への条件とすること このような教材の導入や学習課題・問題の設定により, 「 学び合いア 」(=問われている事や解決しようとしていることは何かを明らかにするための学び合い) 「 学び合いイ 」(=現時点での自分の到達度を認知し問題の所在を明らかにしたり,解決の見通しをもた せたりするための学び合い 」) がより活性化すると考える。 また,主に問題解決を展開する過程において,情報のやり取りを促進させるための教材の要素 として,次のようなことも重要である。 (3).主に 「 展開 」 場面において取り入れる『教材』の要素 ・ 予想とは異なる,子どもにとっては失敗と感じる教材(=反証がうまれる教材等) ・ 子どもが工夫・応用させるなど,試行錯誤の余地が十分にあり,解決に向けた複数の情報を 獲得できる教材 ・ 他者との分業による協力がうまれる教材 このような教材の導入により,「 学び合いウ 」(=考え同士を比較し,差異点や共通点を見い だすための学び合い)がより活性化すると考える。 7.教師の具体的な働きかけ方の立案 設定した学習活動の目的を達成させるための,教師の働きかけ方を具体化するに当たっては, 図5に示した手順を踏む。 まず,設定した学習活動においては,「 未来像を予測する力,目的に対する整合を吟味する力, 多面的・総合的に考える力,コミュニケーションを行う力 」 のどの力を発揮させて思考させるこ とが有効かを考え,発揮させる力の重点化を図る。 次に,その力を発揮するということは,子どもが何を,どのように思考することなのか,比較・ 関係付けといった 「 子どもが身に付ける考え方 」 を基に,その思考の過程を,子どもの側から具 体的にとらえる。 例えば,未来像を予測する力を発揮するということは,「 ○○について,○○しながら,○○ のような見通しをもつ(未来像を予測する)。」 のように,未来像を予測する力を発揮した結果 だけでなく,その力を発揮するまでの思考の過程を想定するのである。 このような手順を経て生み出された働きかけの具体例が図6である。
− 112 − 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 特別号 6号(2016) 図7の指導案例の比較から分かるように,これまでは,活動の結果を思考の結果としてとらえ, 働きかけを立案していた。しかし,比較と関係付けを基本とした 「 子どもが身に付ける考え方 」 を 軸に置くことで,子どもがどんな観点で何と何を比べるのか,また,どんな順序で何と何を関係付 けるのか,瞬間瞬間の思考の流れを想定しやすくなる。そうすることによって,教師は,その流れ に沿った働きかけをこれまで以上により具体的に立案することができるようになるのである。 このような働きかけを実行することによって,目的に応じた思考を促進させることができると考 える。そうすれば,設定した学び合いの目的が達成されるだけでなく,その達成がその後の問題解 決に効果的につながっていくと考える。また,その学びが連続することで,どの子どもも目標とす る学力の3要素によりよく到達することができると考える。 8.学びの振り返りと価値付け 集団の学びを個に返す学習指導をよりよく展開するためには,比較・関係付けたりしながら思 考することのよさや学び合うことのよさを,子どもたちに実感させることが大切である。そのた めには,学び合いを行った結果,その学びが自分自身へとどのように返ってきたか,子どもたち 自身に認知させることを繰り返し行うことが重要であると考える。そこで,図8のようなタイミ ングと観点から,活動の振り返りと価値付けを行っていく。 観点1:思考の過程から ※特に重要 例) AとBをCの点から比べたのだね。 (比較した対象と観点を明確にする発問) 㮵ඣᓥᏛᩍ⫱Ꮫ㒊ᩍ⫱ᐇ㊶◊✲⣖せ ≉ูྕ➨㸴ྕ ཎ✏
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図6 教師の働きかけ方の立案までの具体例 図7 より具体化された 「 教師の具体的な働きかけ 」 の例 図8 振り返り・価値付けのタイミングと観点宮﨑 幸樹・中熊 豊仁:個の確立を目指す授業の創造 AとBを○○のようにつなげて考えたのだね。 (関係付けた対象と順序を明確にする発問) 観点2:思考の結果から 例) ○○という考えをもつことができたね。 ○○な点についてはよく考えることができたね。(正否不問) 観点3:他者とのかかわり方から 例) Aさんから,こんな考えを学ぶことができたね。 例) Aさんのおかげで,Bさんも考えをもつことができたのだね。 9.学び合う集団の性質や個の具体的な姿 このような学習指導を通して,学びの集団が次のような性質をもつ集団へと変容していった。 学び合う集団としての性質 ※ 「 性質 」 とは,その集団がうみだす雰囲気ととらえてよい。 ・ 問題が全員に共有され,その追究に全員が参加する。また,その問題を連続・発展させよう とする。 ・ 相互にわかり合い,理解することは簡単なことではないことを認識しつつも,全員が共有で きる学びの成果を生みだそうとする。 ・ 協力して問題を解決する過程によさや意義を感じている。 ・ 結果としての成果や課題を仲間と共に分かち合うことに喜びを感じている。 学び合う集団の中で表出してくる具体的な姿 ・ 分からないこと,できないことを隠さず表出するようになる。 ・ 情報を積極的に獲得しようしたり,提供したりしようとする姿が自然にうまれる。(動かず にはおれず,席を立って動き回る。) ・ 優劣のない対等な立場で,素直に聞き合う。また,良いことは賞賛し,修正すべきことも指 摘し合う。 自らの疑問を発展させ,学級全体へその疑問を投げかけ,納得を求めようとする。 10.今後の展望 これまでの実践研究を通して,各教科等の授業だけでなく,普段の学校生活の中でも自己の目 的や目標達成のために 「 7つの力や態度 」 を能動的に発揮しようとする姿が見られることが多く なった。これらのことから,行動する際の基盤となる 「 4つの見方や考え方 」 の醸成が図られつ つあると考える。また,他者理解に努めつつ,自分の考えや意見を積極的に主張する子どもが増 えてきた。さらに,1単位時間の終末時においては,熟考しながら問題に対する考えを自分の言 葉で記述したり,手を挙げて発表したりする姿が多く見られるようになってきており,その内容 には,考えに至るまでの明確な理由付けが見られるようになった。これらのことから,目標とし て設定した学力の3要素によりよく到達できるようになった子どもが以前よりも増えてきたと考 える。
− 114 − 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 特別号 6号(2016) そこで,今後の展望として以下のような実践研究を積み重ねていきたい。 ・ 集団の学びの中での個の状況をとらえ,その状況に応じた,さらなる個への働きかけ方を明 らかにした指導と評価の一体化を図る。 ・ 教科等内の他領域についても実践を重ね,個の確立を目指す授業創造の考え方に基づく教科 等カリキュラムを作成する。 ・ 各教科等の授業を通して身に付けた汎用的資質・能力を,その他の教育活動の中で活用させ, それらをより高めることを目指した学校カリキュラムを作成する。 付記 本報告は,鹿児島大学教育学部附属小学校平成25 年度研究紀要で発表した研究内容等に基づき, 教科等指導において研究をさらに発展させ,その研究成果をまとめたものである。 参考文献 1 文部科学省(2008),「小学校学習指導要領」,東洋館出版社 2 文部科学省(2008),「小学校学習指導要領 総則編」,東洋館出版社 3 国立政策研究所教育課程研究センター(2012),「学校における持続可能な発展のための教育(E SD)に関する研究- 最終報告 -」 4 今西幸蔵他(2006),「キーコンピテンシー国際標準の学力をめざして」,明石書店 5 佐藤学(2012),「 学校を改革する - 学びの共同体の構想と実践 」,岩波書店 6 佐藤学(2006),「 学校の挑戦 」,小学館 7 杉江修治(2011),「 協同学習入門 」- 基本の理解と 51 の工夫,ナカニシヤ出版