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歴史教材の学習における象徴事例の効果 ― 一面提示・両面提示の比較―

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(1)歴史教材の学習における象徴事例の効果 −一面提示・両面提示の比較−. 佐藤浩一 ・ 橋本千夏. 群馬大学教育実践研究 第 26 号. 群馬大学教育学部. 145∼154 頁. 別刷 2009. 附属教育臨床総合センター.

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(3) 145. 群馬大学教育実践研究 第 26 号 145 ~ 154 頁 2009. 歴史教材の学習における象徴事例の効果 ― 一面提示・両面提示の比較 ― 佐 藤 浩 一1) ・ 橋 本 千 夏2) 1)群馬大学大学院 教育学研究科 教職リーダー講座 2)栃木県足利市立北郷小学校 (注). Symbolic instances in teaching history: Effects of one-sided and two-sided messages. キーワード:歴史学習 象徴事例 Keywords:teaching history, symbolic instance (2008 年 10 月 31 日受理). 教授学習においては,どのような具体例を用いるか が学習を規定する重要な要因となる。麻柄・進藤(2004). 信度を高める,といった点が指摘された(麻柄・進藤, 2004;進藤・麻柄, 2004a, 2004b, 2006)。. は「p ならば q」という命題を学習する場面で,p を具. しかし一方で,こうした効果が限定的であることも. 体化した代入例に対して,q を具体化した例を「象徴. 示されている。例えば上記(2)の効果は,提示された象. 事例」として位置づけた。例えば「江戸時代に大名は. 徴事例と類似度の高い事例でしか認められず,(3)の効. 参勤交代の際の大名行列にかかる費用を減らそうとし. 果も部分的にしか支持されていない(麻柄・進藤,. た」という歴史命題の場合、「大名」を具体化して「加. 2004)。(4)についても,学習者は象徴事例を無視した. 賀藩の大名」という代入例を提示することができる。. り別解釈することで,自分の誤った判断に固執するこ. これに対して「費用を減らそうとした」という内容を. とが指摘されている(進藤・麻柄, 2006)。従って,象徴. 具体化して,「大名はお金を少しでも節約するために. 事例を用いればそれだけで学習が飛躍的に進展するわ. トイレかごを利用したりアルバイトのお供を雇ったり. けではなく,象徴事例の有効性を高める手段を探るこ. した」という象徴事例を提示することが考えられる(麻. とが望まれる。そうした手段として,複数の象徴事例. 柄・進藤, 2004)。また教授学習の材料ではないが, 「ク. を提示することや(麻柄・進藤, 2004;進藤・麻柄,. ラシックギターという楽器は日本の音楽界ではまだ正. 2006),学習者が無視・別解釈しにくい事例を用いる. 式に認められていない」 という意見命題に対して, 「芸. こと(進藤・麻柄, 2004a, 2006),象徴事例と命題を結. 術系の唯一の国立大学である東京芸術大学の器楽科に. びつけるルール(論拠)への同意を形成すること(進藤・. は,クラシックギターを専攻するコースがない」とい. 麻柄, 2004b)が指摘されている。. う象徴事例が考えられる(進藤・麻柄, 2004b)。そして. 教授者が学習者に命題を提示して,学習者が誤った. 一連の研究で,象徴事例の効果として(1)教材の面白さ. 認識を改め,その命題を受け入れるという過程は,一. を高める,(2)他の象徴事例を受け入れやすくする,(3). 種の説得的コミュニケーションとも言える。説得的コ. 命題の意味を豊かに学習できるようにする,(4)学習者. ミュニケーションの研究では,説得したい内容だけを. が誤った判断をしている場合にはそれを修正する,(5). 提示する一面提示よりも,反対方向の意見も提示して. 学習者がもともと正しい判断ができている場合には確. 論駁を試みた上で,説得方向の意見を提示する「反駁.

(4) 146. 佐藤浩一・橋本千夏. 的両面提示」が有効であるとされている(今井, 2006;. のは平安時代からである」といった正しい命題に対し. O'Keefe, 1999)。象徴事例の有効性を検討したこれま. て,大学生の半数程度が誤りであると判断していた。. での研究は,「命題を支持する証拠として象徴事例を. これはそれぞれ,「江戸時代=鎖国」「平安時代=貴. 提示する」という文脈を用いており,その意味では一. 族の時代」といったラベルにより判断を誤ったと考え. 面提示になっていた。そこで本研究では,象徴事例を. られる。本研究では後述するように,両面群で象徴事. 提示する際に一面提示と両面提示の 2 条件を設定し,. 例を提示する際に「鎖国」という表現を用いている(表. 象徴事例の効果を比較する。またこれまでの研究は,. 2 参照)。しかしこの表現がラベリング効果を引き起こ. 象徴事例の効果を事例提示直後に検討しているに過ぎ. し,象徴事例の両面提示による効果を引き下げる可能. ない。そこで本研究では,象徴事例提示の 1 週間後に. 性がある。そこでラベリング効果の程度を検討するた. 遅延テストを実施し,効果の持続性を確認する。. めに,一面提示の材料に「鎖国」という表現を加えた 一面提示ラベル群を設定した。 第二に,本研究では象徴事例を用いない統制群を設. 方 法 1.参加者. 定していない。例えば麻柄・進藤(2004)では「江戸時. 大学生 181 名(男性 79 名,女性 102 名,平均 20.4. 代に大名は参勤交代の際の大名行列にかかる費用を減. 歳)が授業の一環として参加した。. らそうとした」という歴史命題を教授する際に,「大. 2.デザイン. 名はお金を少しでも節約するためにトイレかごを利用. 象徴事例の提示形態を参加者間で操作し,一面提示. したりアルバイトのお供を雇ったりした」という象徴. 群」(以下「一面群」,61 名),両面提示群(以下「両面. 事例を提示する群と,「加賀藩の大名も米沢藩の大名. 群」,58 名),一面提示ラベル群(以下「ラベル群」,. も,お金を少しでも節約するために早く江戸に着きた. 62 名)の 3 群に,参加者が無作為に割り当てられた。. いと思っていた」という代入例を提示する群を比較し. デザインについて 2 点, 説明を補足する。 工藤(2001). ている。しかし本研究で扱う命題は代入例を作成する. は歴史学習において「鎖国」「縄文時代」といった記. ことが不可能なものであり(次節参照),代入例と象徴. 述的なラベルが,学習者の認識を誤らせる危険性を指. 事例を比較するのではなく,象徴事例の提示形態の効. 摘して,「ラベリング効果」と呼んだ。工藤(2001)の. 果を比較するデザインとした。. 調査では,例えば「江戸幕府は当初,外国との貿易を. 3.命題と象徴事例. 盛んにしようとしていた」「歴史上,武士が登場する. 本研究は,象徴事例を提示することにより,参加者. 表1 予備調査に用いた命題と選択肢,正答率 ①縄文時代にも,石器は使われていた。. (83%). (正しいと思う・間違っていると思う) ②歴史上武士が登場するのは,いつの時代からだと思いますか。. (54%). (奈良時代・平安時代・鎌倉時代) ③戦国時代が終わり,安土桃山時代に入ると,大きな戦乱は起こらなくなった。. (79%). (正しいと思う・間違っていると思う) ④江戸時代は長く平和の続いた時代であり,大きな戦乱はなかった。. (42%). (正しいと思う・間違っていると思う) ⑤江戸幕府は当初,外国との貿易を盛んにしようとしていた。. (58%). (正しいと思う・間違っていると思う) ⑥江戸幕府の鎖国政策により,外国との貿易は完全に途絶えた。. (96%). (正しいと思う・間違っていると思う) ⑦江戸時代には天皇家は途絶えていたが,明治時代になって復活した。. (83%). (正しいと思う・間違っていると思う) ⑧ペリーの要求を拒みきれず,開国を決断したのは誰だと思いますか。. (92%). (江戸幕府・明治政府) ⑨廃藩置県などの明治政府の政策に反対し抵抗したのはどの地域の人々だと思いますか。 (63%) (旧薩長土肥の人々・東北初諸藩の人々・その他の地域の人々) (注)下線は正答。.

(5) 147. 歴史教材の学習における象徴事例の効果. が誤った認識を改めることを狙っている。 そのために,. 対外貿易に対する家康の姿勢は鎖国のような. 参加者の多くが誤って認識している命題を材料として. 消極的なものではなく,積極的であったと考. 用いなければならない。そこで大学生 24 名を対象に,. えた」と結んだ。. 工藤(2001)を参考に 9 つの歴史命題を提示して,判断. ⑤③と同じ標的問題と確信度評定。. を求める予備調査を行った。調査に用いた命題と選択. ⑥④の文章の意外さ・面白さの評定(1~5 の 5 段階,. 肢,正答率を表 1 に示す。 この予備調査の結果に基づき,正答率が高くなく, かつ適切な象徴事例が作成しやすい命題として,表 1 の⑤が選択された。なお本実験では表現の曖昧さを減 ずるために, 「徳川家康は対外貿易に積極的であった」. 数値が大きいほど意外さや面白さが強い)。 ⑦二つの象徴事例を知っていたか否かの評定。 ⑧③と⑤で意見を変えた/変えなかった理由の自由 記述。 5.手続. という表現に改めた。また「対外貿易に積極的であっ. 実験は授業時間を利用して行われた。解答時間は 15. た」ことを示す象徴事例としては,「家康はヤン=ヨー. ~20 分程度であった。また一部の授業で,1 週間後に. ステンやウイリアム=アダムスを貿易顧問とした」. 遅延テストを実施した。遅延テストに解答した参加者. 「日本人の海外渡航もさかんで,幕府はルソン等へ渡. は 76 名であった(一面群 29 名,両面群 21 名,ラベル. 航する商人に朱印状を与えて渡航を許可した」の二つ. 群 26 名)。遅延テストでは標的問題を含む 5 問を提. を用いた。これらの命題も象徴事例もともに,高校の. 示し,解答と判断理由の記述を求めた。遅延テストの. 日本史教科書(例:山川出版『詳説日本史改訂版』2007. 問題は表 3 に示す。. 年)に明記されている。 4.材料. 結 果. 材料は小冊子で提示された。 小冊子は以下のように,. 1.3 群の等質性. 参加者に標的問題を問うた(③)後で象徴事例を提示し. 日 本 史 の 既 習 経 験 は 一 面 群 (60.7%) , 両 面 群. (④),その後で再び標的問題への解答を求める(⑤)とい. (67.2%),ラベル群(69.4%)であり,群間に差は. う構成になっている。④以外はすべて 3 群で共通で. なかった(χ2(2)=1.12)。象徴事例のうち貿易顧問. あった。材料(②③④)の具体的な表現は,表 2 に示す。. について既知だった者は一面群(37.7%),両面群. ①高校での日本史の既習経験等を問うカバー頁。. (25.9%),ラベル群(30.6%)であった。朱印状につ. ②信長と秀吉の対外貿易策に関するリード文。. いて既知だった者は一面群(70.5%) ,両面群. ③家康の対外貿易策が積極的であったか消極的で. (74.2%),ラベル群(71.0%)であった。いずれの象. あったかを問う標的問題と,その解答の確信度評. 徴事例の既知度も,群間に差はなかった(貿易顧. 定(1~7 の 7 段階,数値が大きいほど確信度が高. 問:χ2(2)=1.96,朱印状:χ2(2)=0.23)。従って. い)。. 当該の学習内容に関する予備知識という点では,. ④ 象徴事例の提示 (1)一面群:「③の問題を出されたAさんは次の資. 3 群は等質とみなすことができる。 2.標的問題の正答率. 料を見つけた」という文脈で,二つの象徴事. 図 1 に象徴事例提示前後での,標的問題の正答率. 例を提示し,「Aさんは家康は対外貿易に積. を示す。全参加者を対象に McNemar 検定を行った. 極的であったと考えた」と結んだ。. ところいずれの群でも,象徴事例の提示後に標的問. (2)両面群:「江戸時代の外交策としては鎖国が思. 題への正答率が有意に上昇していた(一面群:. い浮かぶ。家康も消極的であったとも考えら. z=3.88,両面群:z=3.49,ラベル群:z=3.80,いず. れる」という文章に続いて,(1)と同じ象徴事. れも p<.01)。また正答率に群間で有意差はなかった. 例を提示し,「Aさんは消極説と積極説を比. (提示前:χ2 (2)=1.66,提示後:χ2(2)=2.91)。全員. べた結果,家康は対外貿易に積極的であった. の解答の推移を表 4 に示す。. と考えた」と結んだ。 (3)ラベル群:(1)と同じ材料を提示し,「Aさんは. 象徴事例の効果が 1 週間後まで持続したか検討する ために,遅延テストを受けた 76 名について,象徴事.

(6) 148. 佐藤浩一・橋本千夏. 表2 実験に用いた冊子の内容(番号は本文中の番号と対応している) ②リード文 室町時代末の 1543 年,ポルトガル人を乗せた中国船が九州南方の種子島に漂着したのをきっかけに,南蛮 貿易が始まった。南蛮とは,当時日本人がポルトガル人やスペイン人を南蛮人と呼んでいたことに由来する。ポルトガ ル人は 1543 年以降,毎年のように九州の諸港に来航し貿易を行い,スペイン人も 1584 年に肥前の平戸に来航し,日 本との貿易を開始している。南蛮貿易は,キリスト教宣教師の布教活動と一体化して行われていた。織田信長はキリス ト教の布教を認めていたし,織田信長のあとを継いだ豊臣秀吉も当初キリスト教の布教を認めていたが,次第に秀吉は キリスト教が自らのつくりあげようとした国家体制のさまたげになると考えるようになった。秀吉は宣教師による布教 を許可制にしていき,1587 年にはバテレン(宣教師)追放令を出して宣教師の国外追放を命じた。 ③標的課題 豊臣秀吉の死後,関ヶ原の戦いに勝利し,江戸幕府をひらいた徳川家康は,対外貿易に対してどのような姿 勢であったと思いますか。ア・イいずれかを選んで○をつけてください。 ア 対外貿易に対して積極的であった. イ 対外貿易に対して消極的であった. ④象徴事例 一面群 前ページの問題を出されたAさんは次の資料を見つけた。 徳川家康は1600年に暴風のため豊後に漂着したオランダ船・リーフデ号の航海士ヤン=ヨーステンと水先案内人 のイギリス人ウィリアム=アダムズとを江戸に招いて,外交・貿易の顧問としている。また,日本人の海外進出 もさかんで,ルソン・トンキン・アンナン・カンボジア・シャムなどに渡航する商人らの船も多かった。幕府は 彼らに海外渡航を許可する朱印状を与えている。 上の資料を見つけたAさんは資料の内容から,徳川家康は対外貿易に積極的であったのではないかと考えた。そこで, 問 1 の答えは「ア 対外貿易について積極的であった」の可能性が高いだろうと考えた。 両面群 江戸時代の外交というと鎖国が思い浮かぶ。また,江戸幕府がキリスト教をよく思っていないといったイメージもあ る。ゆえに江戸幕府初代将軍の徳川家康も対外貿易について消極的であったとも考えられる。しかし,前ページの問題 を出されたAさんは次の資料を見つけた。 象徴事例の提示は,一面群と同じである。 上の資料を見つけたAさんは,この資料は家康が対外貿易について積極的であったという証拠になるのではないかと 考えた。Aさんは消極説と積極説とを見比べ,吟味した。その結果,徳川家康は対外貿易に積極的であったのではない かと考えた。そこで,問 1 の答えは「ア 対外貿易について積極的であった」の可能性が高いだろうと考えた。 ラベル群 前ページの問題を出されたAさんは次の資料を見つけた。 象徴事例の提示は,一面群と同じである。 上の資料を見つけたAさんは資料の内容から,徳川家康の対外貿易に対する姿勢は,鎖国のような消極的なものでは なく,積極的なものであったのではないかと考えた。そこで,問 1 の答えは「ア 対外貿易について積極的であった」 の可能性が高いだろうと考えた。. 表3 遅延テストに用いた冊子の内容(問4が標的問題,その他はダミー問題である) 問1 縄文時代にも,石器は使われていたと思いますか。 a.使われていたと思う. b.使われていなかったと思う. 問2 歴史上武士が登場するのはいつの時代からだと思いますか。 a.奈良時代. b.平安時代. c.鎌倉時代. 問3 戦国時代が終わり,安土桃山時代に入ると,大きな戦乱は起こらなくなったと思いますか。 a.起こらなくなったと思う. b.起こっていたと思う. 問4 江戸幕府初代将軍の徳川家康は,対外貿易に対してどのような姿勢であったと思いますか。 a.積極的であった. b.消極的であった. 問5 廃藩置県などの明治政府の政策に対し,抵抗したのはどの地域の人々だと思いますか。 a.旧薩長土肥の地域の人々. b.東北諸藩の人々. c.その他の地域の人々 (注)下線は正答。.

(7) 歴史教材の学習における象徴事例の効果. 例の提示前後と 1 週間後の成績を比較した。結果を図 2 に示す。提示前後で,いずれの群でも標的問題への 正答率は有意に上昇していた(一面群:z=2.58, p<.01, 両面群:z=1.79, p<.05,ラベル群:z=2.21, p<.05)。 提示後と 1 週間後では正答率の変化は,いずれの群で も有意ではなかった(一面群:z=0.35,両面群:z=0.00, ラベル群:z=-0.71)。また正答率に群間で有意差はな かった(提示前:χ2(2)=2.34,提示後:χ2(2)=4.64,1 週間後:χ2(2)=3.27)。なおこれら 76 名の解答の推移 を,表 5 に示す。 従って,象徴事例の提示によって,参加者の判断は 修正されること,その効果は 1 週間後も持続すること が示された。しかし群(一面群,両面群,ラベル群)の 効果はなかった。そこで以下の分析では,特に必要な 場合以外は,3 群の結果をまとめて分析する。 3.確信度の変化 象徴事例の提示前後での確信度を,一面・両面・ラ ベルの 3 群をまとめて,標的問題に 2 回とも正答だっ た参加者(73 名)と 2 回とも誤答だった参加者(43 名) について集計した(表 6)。正誤(正答,誤答)×反復(提 示前,提示後) の分散分析の結果,反復の効果 (F(1,114)=23.0, p<.01) , 正 誤 × 反 復 の 交 互 作 用 (F(1,114)=31.8, p<.01)が有意であった。交互作用は, 一貫して正答だった参加者においてのみ,象徴事例の 提示後に確信度が高まったことによる。ただし一貫し て誤答だった参加者は,象徴事例の前後で確信度を まったく変えなかったわけではない。一貫して誤答 だった 43 名の中には,確信度を変えなかった 16 名の 他に,確信度を上昇させた者 10 名,下降させた者 17 名が混在していた。 さらに,象徴事例の提示前後と 1 週間後のすべての 標的問題で一貫して正答だった参加者 27 名について, 確信度を検討した。確信度の平均は象徴事例の提示前 が 3.8(SD=1.5),提示後が 5.4(SD=1.1),1 週間後が 5.2(SD=1.6)であった。分散分析の結果,反復の効果が 有意であり(F(2,50)=15.3, p<.01),下位検定の結果, 象徴事例の提示前に比べて提示後と 1 週間後の確信度 が有意に高かった。従って,最初から正答だった参加 者は,象徴事例に接することで確信度を高め,その効 果は 1 週間後も持続していたと言える。 一貫して正答だった者で確信度が上昇した過程を検 討するために,象徴事例提示後の標的問題で記述され. 149.

(8) 150. 佐藤浩一・橋本千夏. た判断理由を分析した。象徴事例の提示前後とも正解. レかごを用いた」「行列にアルバイトを雇った」とい. だった参加者は,181 名中 73 名であった。73 名のう. う象徴事例を用いた。小学生を対象とした調査では,. ち 69 名が判断理由を記述しており,そのうち 34 名が. 面白さと意外さの間に強い相関が得られたが,大学生. 象徴事例に言及していた(例:「資料を読むと対外貿易. では有意な相関は得られなかった。 ここから麻柄らは,. に対して積極的であると思えたから」「問 1 で答えた. 大学生は参勤交代の主旨(大名統治)や,大名がその費. 答が B の資料文で裏づけられたから」)。象徴事例に. 用捻出に苦労したことを知っているので,象徴事例に. 言及していない参加者の場合は,当該の命題に関して. 意外感を覚えても,教材の面白さには結びつかなかっ. 知識を有していたケース(例:「家康が対外貿易に積極. たのではないかと考察している。このように,学習者. 的と知っていたから」「中学の歴史の授業の記憶がぼ. に教材についての予備知識がある場合には,事例の意. んやりとあったので何となく」)や,何らかの根拠から. 外さと教材としての面白さが直結しにくいと言える。. 自分で推測したケース(例:「織田信長は貿易に積極的. (3)文章構成・判断の正誤と面白さ・意外さ. だったので,それを継いだ秀吉も積極的だと思ったか. では学習者にとって既知の内容を含む教材は,必然. ら」「日本にはないものを欲しがるから貿易は必要」). 的に面白くないものになるのだろうか。必ずしもそう. が混在していた。象徴事例の提示前後で確信度の変化. とは言えない。本研究で象徴事例を提示するのに用い. を検討すると,判断理由として象徴事例に言及した者. た文章は,3 群それぞれで構成が異なっており,面白. は提示前に比べて提示後では平均 2.1(SD=1.3)の増. さに影響を及ぼすと予想される。また,江戸初期の対. 加,それ以外の者は平均 1.1(SD=1.3)の増加を示して. 外貿易に関してどういう認識を持っているかによっ. おり, 差が有意であった(t (67) = 3.27, p<.01)。 従って,. て,象徴事例から受けとる面白さや意外さは異なると. もとから正解だった参加者は,同じ正答をくり返すだ. 予測される。. けでもある程度確信度が高まるが,2 回目の解答の際. そこで面白さと意外さのそれぞれについて,群(一. に象徴事例という根拠を意識した場合には,いっそう. 面,両面,ラベル)×標的問題に対する 1 回目の正誤(正. 確信度が高まったと言える。. 答・誤答)の分散分析を行った。評定結果は表 7 に示す。. 4.象徴事例の面白さと意外さ. 面白さについては群の主効果のみ有意であり. 標的問題に 2 回目の解答を行った後で, 参加者には,. (F(2,175)=4.77, p<.01),下位検定の結果,両面群は他. 象徴事例を含む文章の面白さと意外さを評定させた。. の 2 群よりも文章を面白いと評定していた。意外さで. (1)既有知識と面白さ・意外さ. は 1 回目の正誤の主効果のみ有意であり. 象徴事例について既知であった程度(まったく知らな. (F(1,175)=23.22, p<.01), 1 回目に誤答だった参加者は. かった,一つのみ既知,二つとも既知)により,面白さ. 正解だった参加者に比べて,文章を意外だと感じてい. や意外さの評価が異なるか検討した。 面白さについては. た。. 既知度の効果は有意ではなかった(F(2,178)=0.42)。意外 さについては既知度の効果が有意であり (F(2,178)=9.96, p<.01),下位検定の結果,二つとも既 知であった参加者は他の参加者に比べると, 意外さを低 く評定していた(まったく知らなかった:平均 3.0,. SD=1.1,一つのみ既知:平均 2.8,SD=0.9,二つとも 既知:平均 2.2,SD=0.9)。 (2)面白さと意外さの相関 面白さと意外さの相関を求めたところ,r =.15 とい う弱い相関しか認められなかった。象徴事例の効果を. 以上より,標的問題について誤った認識を有してい. 検討した麻柄・進藤(2004)の実験では,「大名が参勤. た参加者は,命題を支持する象徴事例に接して意外感. 交代の際の大名行列にかかる費用を減らそうとした」. を感じることが示された。また両面群の参加者は,象. という命題を取り上げ,「時間を節約するためにトイ. 徴事例を含む文章を面白いと評定していた。この文章.

(9) 歴史教材の学習における象徴事例の効果. では「江戸時代の外交策としては鎖国が思い浮かぶ」. 151. 5.判断理由の分析. という文を提示した上で,象徴事例を示すことで一種. 参加者には,象徴事例の提示前後で,標的問題に対. の反駁を試みており,こうした論議の過程が面白さの. する解答を変えたか否か,またその理由は何であった. 評定を高めたのであろう。命題の学習効果という点で. かを問うた。また 1 週間後の遅延テストでも,判断理. 3 群には差がなかったが,教材や論証過程に対する関. 由を問うた。参加者 181 名のうち,最初に誤答だった. 心を学習者に抱かせるには,両面群で用いたような教. のは 103 名であった。この 103 名のうち,象徴事例を. 材構成が有効であると言える。. 提示されたことで正答に変わった者が 60 名,誤答を. (4)文章の面白さ・意外さと象徴事例の効果. 続けた者が 43 名であった。 (1)象徴事例に接したにも関わらず誤答を続けた. 象徴事例から受ける面白さ・意外さによって,誤っ た判断を修正する効果が異なるか検討する。象徴事例. ケース. 提示前の標的問題で誤答だった参加者に限定して,象. ここではまず,象徴事例を提示したにもかかわらず. 徴事例提示後に正答に変化した参加者(60 名)と誤答の. 一貫して誤答だった参加者 43 名のうち,判断理由を. ままだった参加者(43 名)で,面白さ・意外さの評定値. 明記していた 40 名について理由を分析し,象徴事例. に差があるか検討した。面白さの評定値は,正答に変. の受け入れを阻む要因を探る。進藤・麻柄(2004a,. 化した参加者が平均 3.2(SD=1.0),誤答のままの参加. 2006)に準じて,「別解釈」「無視」の 2 カテゴリー. 者が平均 3.4(SD=1.1)であった。意外さの評定値は正. を設定した。別解釈とは,「ここで提示された象徴事. 答に変化した参加者が平均 3.0(SD=1.0),誤答のまま. 例は,積極的な対外政策とは別の視点で解釈できる。. の参加者が平均 2.9(SD=1.1)であった。いずれも有意. 従ってやはり家康の貿易政策は積極的ではなかった」. 差は見られなかった。. というものである。無視とは,象徴事例に言及せずに,. また意外さは,象徴事例に対する既知度と結びつい. それ以外の理由を述べているケースである。「無視」. ている。そこで象徴事例の既知度と象徴事例の効果と. はさらに,「鎖国」(江戸時代の鎖国政策への言及),. の関連を検討した。象徴事例提示前に誤答だった参加. 「過去の学習」(自分の意見と整合する内容を過去に学. 者のうち,提示後に正解になった参加者の人数比は,. 習したことへの言及),「資料不足」(象徴事例だけで. 象徴事例を二つとも知っていた人で 19 名中 12 名. は判断材料として不十分),「意見固執」(自分の判断. (63.2%),一つのみ既知だった人で 55 名中 32 名. を重視する),「その他」の 5 カテゴリーに分類した。. (58.2%),まったく知らなかった人で 29 名中 16 名. 具体例と各カテゴリーのケース数を表 8 に示す。2 名. (55.2%)であり,差は有意ではなかった(χ2(2)=0.30)。. の評定者によって独立に判断理由を分類したところ,. 従って, 象徴事例から意外さや面白さを受けとったか,. 一致率は 82.5%であった。象徴事例に対して別解釈を. あるいは象徴事例をどの程度知っていたかということ. 試みて自己の判断を維持するよりも,象徴事例を無視. は,象徴事例の効果とは関係していないと言える。. するケースの方が多かった。また「無視」のなかでは, 「鎖国」を判断理由としているケースが多かった。. 表8 象徴事例の提示前後とも誤答だった参加者の解答理由(例) カテゴリー. 人数 6. 別解釈. 解答理由の例 ・消極的だったために,本人にとっても珍しいから江戸に招いた可能性もある。朱印船も,数 が少なければ消極的と言える。 ・朱印状は許可のためと同時に制限のためともとれる。これだけでは積極的であったというに 足りない。. 無視. 鎖国. 14. 過去の学習. 5. 資料 不足. 6. ・具体的な数値が書かれていないので,資料よりも自分の意見を尊重。. 意見 固執. 6. ・自分の考えを尊重した結果です。. その他. 3. ・積極的かというとそうでもないので,どちらかというと消極的にした。. ・江戸時代は鎖国をしていたということを知っていたから。 ・歴史の授業ではずっと消極的な様に学習してきたから。A さんが見つけた資料では,確かに 積極的に思えるが,積極とまではいかないと思った。.

(10) 152. 佐藤浩一・橋本千夏. (2)最初は誤答だったが正答に転じたケース. 象徴事例により正答に対する確信度が高まること,(3). 次に,誤答から正答に転じた 60 名のうち,理由を. 最初に誤答だった参加者の中には,象徴事例に別解釈. 記述した 59 名の判断理由を分析する。これらのケー. を試みたり象徴事例を無視して,最初の判断に固執す. スでは,象徴事例に言及した者が 49 名(83.1%),言及. るケースが少なくないこと,等が示された。. していない者が 10 名(16.9%)であった。前者は,象徴. 1.標的問題の正答率. 事例に接することで自分の誤りに気づいたというケー. 象徴事例を接することにより,参加者は誤った認識. スであり,「二つ目の資料で,徳川家康は外国人を江. を改め,その効果は 1 週間後も持続した。これまでの. 戸に招くなどして,積極的な姿勢が感じられるから」. 研究はいずれも象徴事例提示直後に効果を査定してお. や「(資料を)読み,自分の解答が間違っていたことに. り(麻柄・進藤, 2004;進藤・麻柄, 2004a, 2004b, 2006),. 気づいたため」があげられる。こうした記述内容にも,. 遅延テストで効果が確認されたことは,象徴事例の有. 象徴事例の効果を認めることができる。. 効性を強く示すものである。また本研究で用いた命題. 後者に多いのは,もともと最初の解答がしっかりし. と事例は,先行研究(麻柄・進藤, 2004;進藤・麻柄,. た根拠に基づいていなかったので,2 回目は解答を変. 2004a, 2006)とは異なる内容であり,象徴事例の効果. えたというケースである。「実際問題として,消極的. の一般性が高いことが示されたと言えよう。. とも積極的とも思わなかったため」「鎖国をしたのは. 2.確信度. 江戸幕府だから外交に消極だと思ったが,いつから鎖. また象徴事例を提示することは,もとから正答だっ. 国が始まったかあいまいだったので変えてみました」. た参加者の確信度を高めるという効果を有していた。. といった例があげられる。これらのケースは結果的に. これは先行研究(進藤・麻柄, 2004a)と合致する結果で. 正答に転じてはいるが,提示された象徴事例を判断の. ある。さらに本研究では,象徴事例を自身の判断の根. 材料として活用していないという点では,(1)で分析し. 拠として強く意識した場合に,確信度の上昇が顕著で. た「無視」に近いものである。. あることが示され,判断プロセスの一部が明らかにさ. (3)1 週間後の判断理由. れた。. 象徴事例に接して正答に転じた 27 名のうち 21 名. 3.教材の魅力. は,1 週間後の遅延テストでも正答であった。では彼. 代入例に比較すると象徴事例を用いた教材は,面白. らはどのような根拠で正しく解答したのだろうか。21. いと評価されることが指摘されている。この効果は,. 名中,象徴事例に言及していたのは 4 名(例:「アダム. 学習者が当該の命題やそれに関連する内容を未習であ. スとか招いた」「朱印船貿易などを行っていたような. る場合に,明確に現れる(麻柄・進藤, 2004)。本研究の. 気がするから」),前回の資料に言及していたのは 11. 面白さの評定は平均 3.2(SD=1.0),意外さの評定は平. 名 (例:「前回の調査資料にあった」),その他は 6 名. 均 2.7(SD=1.0)であり,必ずしも高くない。大学生で. (例:「聞いたことがある」「なんとなく…」) であっ. あり,日本史を履修済みであることがこうした結果を. た。従って約 70%(21 名中 15 名)のケースで,象徴事. もたらしたのであろう。. 例あるいは前回の資料に言及している。ただし前回の. しかし,対立する意見への反駁を行うという構成の. 資料に言及した人が,象徴事例まで覚えていて解答し. 両面群では,面白さの評定が有意に高まった。このこ. たのか,あるいは「家康は対外貿易に積極的だった」. とは,教材として何を提示するかということだけでな. という前回の自分の判断を覚えていて,それに従って. く,それをどのような文脈で提示するか,そこにどの. 1 週間後も解答したのかは不明である。. ような論証の過程を含ませるかということが,教材と しての魅力にとって重要な要因であることを示してい. 考 察 本研究では象徴事例の提示形態を操作することで,. る。 4.象徴事例の効果を阻むもの. 歴史命題の学習における有効性が高まるか検討した。. 象徴事例に接して判断を変えた参加者がいる一方. その結果,(1)象徴事例に接することで標的問題の正答. で,誤答をくり返す参加者もいた。象徴事例に面白さ. 率が高まり,その効果は 1 週間後も持続すること,(2). や意外さを感じるかということと,象徴事例に接して.

(11) 153. 歴史教材の学習における象徴事例の効果. 判断を変えるかということの間には,関連は見だされ なかった。進藤・麻柄(2006)でも,意外さと誤った認. しての重みを強めることができたかもしれない。 第二に, 個別の事例の有効性を高めるだけではなく,. 識の修正には直接の関連がないことが指摘されてい. 複数の命題や事例から教材を構成して学習者に全体像. る。象徴事例に意外さを感じたから即,自分の判断を. を提示することで,命題や象徴事例の確からしさを高. 変更するという単純な過程ではないのだろう。. めることが考えられる。例えば徳川幕府は徳川家以外. 誤答をくり返した参加者による記述からは,象徴事. の大名に対する経済統制策をとっていた。大名行列を. 例に別解釈を加えることで自身の判断との整合性を保. 制度化したことや,徳川家が対外貿易を独占したこと. つというよりは,象徴事例を無視して自身の最初の判. (例外はあるものの)は,それぞれが歴史学習で不可欠. 断を支持する論拠を探したり(鎖国,過去の学習),象. な命題であると同時に,経済統制を象徴する事例でも. 徴事例の重みを過小評価したり(資料不足),一度下し. ある。そして大名行列が莫大な費用を要するために大. た判断を変更したくない(意見固執)といった過程が伺. 名は費用の節減を工夫したことや,徳川家が密貿易を. われる。また「江戸時代=鎖国」という定型的な知識. 防ぐため統制を行ったことは,大名行列や貿易統制を. に依拠しているケースが多いのも, 誤解をしながら 「わ. 象徴する事例となる。このように大命題-中命題(大命. かったつもり」(西林, 2005)でいる学習者の姿を示して. 題を象徴する事例)-小命題(中命題を象徴する事例)と. いる。こうした過程が強力にはたらいた場合には,象. いうかたちで,命題や象徴事例が構造化された教材を. 徴事例という証拠を提示してもなお,判断を揺さぶる. 提示することで,無視・別解釈を起こりにくくし,そ. ことが難しいのである。. れぞれの命題や事例が持つ意味を精緻に学習すること. 誤答を続けた参加者の確信度を検討すると,象徴事. につながるのではなかろうか。. 例に接することで確信度を低下させた者だけではな. 第三に,提示する事例の内容や提示方法を工夫する. く,確信度が変わらない者や,反対に確信度を強めた. のではなく,学習者の推論過程に介入することが考え. 者もいた。こうしたケースが存在することは,進藤・. られる。既有知識や定型的な解釈に依存し,象徴事例. 麻柄(2004a)でも示されている。誤答を続けた者も,表. を無視・別解釈して誤った判断を続けた参加者が少な. 8 に示したように何らかの根拠をもって判断を下して. くなかった。自分の仮説や既有知識に合致する情報に. いる。たとえ誤りであっても「自分の判断は根拠に基. 選択的に注意を向ける傾向は,人の判断バイアスとし. づいている」と考えることで,確信度が高まるのであ. て一般的なものである。 こうしたバイアスに気づいて,. ろう。. 論理的な思考を行うようになるには,相応の学習が必. 5.象徴事例の有効性を高めるために. 要である(三宮, 2002;吉田, 2004)。例えば,自分の判. ではどうすれば,象徴事例の有効性を一層高めるこ とができるのであろうか。. 断理由が本当に根拠として説得力があるのか,自分の 考える理由と象徴事例のいずれが確からしいのかと. 第一は,象徴事例そのものに工夫を凝らすことであ. いった点について明示的な判断を求めて,自身の思考. る。本研究では,両面提示・一面提示という提示形態. 過程に気づかせるような機会を設けることが,有効で. の違いは,象徴事例の効果に影響をしなかった。両面. はないだろうか。. 群では「江戸時代は鎖国政策をとっていたので,家康 も対外貿易に消極的だったのではないか」という意見. 引用文献. を提示した上で,象徴事例によってそれらを反駁し,. 今井芳昭 2006 依頼と説得の心理学-人は他者にどう影響. 積極説を支持する構成になっていた。しかし象徴事例. を与えるか- サイエンス社. の提示後も誤答を続けた参加者が少なくないことか. 工藤与志文 2001 歴史的事実の誤認識における「ラベリング. ら,今回の手続で用いた事例が消極説を反駁するほど. 効果」について 札幌学院大学人文学会紀要, 70, 51-61.. の強い証拠としては受けとられなかったことが示唆さ. 麻柄啓一・進藤聡彦 2004 「象徴事例」概念の提案と歴史学. れる。参加者の解答理由(表 8 参照)によると,資料不. 習に及ぼす象徴事例の効果の検討 教育心理学研究,. 足と判断して消極説に固執した参加者もいた。例えば. 52, 231-240.. 対外貿易の規模を示す数値等を含めることで,反証と. 西林克彦 2005 わかったつもり-読解力がつかない本当の.

(12) 154. 佐藤浩一・橋本千夏. 原因 光文社 O'Keefe, D. J. 1999 How to handle opposing arguments in. 徴事例の効果 読書科学, 48, 61-69. 進藤聡彦・麻柄啓一 2006 歴史における学習者の誤った認識. persuasive messages: A meta-analytic review of the. を修正する象徴事例の条件. effects of one-sided and two-sided messages. In M. E.. 2(1), 1-11.. Roloff (Ed.), Communication yearbook 22. CA: Sage. Pp.209-249.. 教授学習心理学研究,. 吉田寿夫 2004 児童・生徒を対象とした「心のしくみについ ての教育」 心理学評論, 47, 362-382.. 三宮真智子 2002 考える心のしくみ 北大路書房 進藤聡彦・麻柄啓一 2004a 学習に有効な象徴事例の条件に. (注)本研究のデータは,橋本千夏による群馬大学教育学部平. 関する探索的研究-歴史に関する誤った考えの修正を. 成 19 年度卒業研究『歴史教材の学習に及ぼす象徴事例の効. めぐって 山梨大学教育人間科学部紀要, 6, 151-159.. 果の検討』に基づく。本研究の一部は,日本教育心理学会第. 進藤聡彦・麻柄啓一 2004b 意見命題の受け入れに及ぼす象. 50 回総会(2008 年 10 月 13 日, 東京学芸大学)で発表された。. (さとう こういち・はしもと ちなつ).

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参照

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