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生涯にわたり自ら学び続ける自律した学習者の育成 ―生徒自身が PDCA サイクルを意識する単元・授業構成の改善―

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Academic year: 2021

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英 語 科

生涯にわたり自ら学び続ける自律した学習者の育成

-生徒自身が PDCA サイクルを意識する単元・授業構成の改善-

梶山 和俊・竹島 潤・奥田 陽一・ボンド 良子・James Miller 1 主題設定の理由 (1) 共通研究主題との関連 外国語教育を通して行われる,他者と積極的に向き合い,協働して課題を解決していこうとする生徒の 育成は,国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)17「パートナーシップで目標を達成しよう」につな がる資質・能力を養うと考える。英語科で取り扱う内容には,フェア・トレード,アマゾン熱帯雨林の保 全,Ai・ロボットとの共存,気候変動,戦争・紛争の解決,人種差別など,持続可能な社会づくりを目指 す上で,持続可能な開発目標(SDGs)と直結するものも多い。このことから,一人一人が持続可能な社会 の創り手として,その多様性を原動力とし,予測困難な社会の変化に主体的に関わり,よりよい社会と幸 福な人生の実現に努めることが期されていると考える。英語科では,本校研究主題「学びの意義を理解し 自ら学び続ける生徒を育成するカリキュラム・マネジメント」を受け,英語学習における基礎基本の定着 を図りながら,これからの多様な変化にも主体的に考え,行動できる力を育てたいと考えた。そこで,生 徒自身が PDCA サイクルを意識し,学校教育を終えた後も,自律して学び続けられるよう,「生涯にわたり 自ら学び続ける自律した学習者の育成 -生徒自身が PDCA サイクルを意識する単元・授業構成の改善-」 を研究主題とした。 (2) これまでの研究との関連から 前回研究では,場面や状況に応じた言語表現を選択・抽出して適切に活用できる生徒の育成を目指し, 領域統合型の言語活動を中心とした単元・授業構成の改善を行った。活動の中で,生徒が言いたいけれど 言えなかった表現を共有し,それを補うことを目的とした領域統合型の活動を授業の中に繰り返し取り入 れていくことで,英語であっても日本語と同じように自分の言いたいことが表現できたという肯定的な意 見を持つ生徒が増えた。領域統合型の学習活動を通してインプットされた様々な選択肢から,場面や状況 にふさわしいと思われる表現や,自身の思いがより伝わると考える表現を選びながらアウトプットする姿 だけでなく,表現の違いを楽しみながら選択する姿も見られ,ライティング活動へのモチベーションが向 上していることを感じた。 (3) 生徒の現状から その一方で,生徒の現状として,大半の生徒が与えられた表現の中からしか選択しておらず表現の広が りが限定的であった。要因として,インプットの質や量が十分でないことや,使いたい表現が状況にあっ ているか(社会言語学的側面),実際に正しい表現なのか(文法的側面)を確かめる方法が提供できてい ないことにより,新たな表現へ挑戦する意欲を持てないのではないかと推測された。また,英語を用いた 表現が,どの程度できれば,生徒が自身の表現に自信を持てるかというものさしを具体化する必要がある ことも前回研究から分かった。この点においても,生徒が自身の表現に自信をもつためには,その表現が 適切な表現だと自分で確認できることが重要だと考える。教科書や文法書を見直したり,辞書やインター ネットを用いて調べたりしながら,自身の表現の正確さを確かめる方法を身につけること,すなわち自律 した学習者として生涯学び続ける力が必要不可欠であると考え,今回の研究に取り組みたいと考えた。 英語 1

英 語 科

生涯にわたり自ら学び続ける自律した学習者の育成

―生徒自身が PDCA サイクルを意識する単元・授業構成の改善―

梶山 和俊・竹島 潤・奥田 陽一・ボンド良子・ジェームズミラー

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2 研究仮説 英語科では,自ら学び続ける自律した学習者を,自己調整学習を身につけた学習者と捉えることにした。 ジマーマンやデイル・シャンク(1989)によれば「『自己調整』とは,学習者が,メタ認知,動機づけ,行 動(学習方略)において,自分自身の学習過程に能動的に関与していること。」としている。 これをもとに「自分で設定した目標の評価・調整を自分自身で行い(メタ認知),特定の課題を成し遂げる 能力が自分にはあるという経験を積み(動機づけ),それをもとに,学習方略や動機維持方略等の選択・実 行を行っていく(行動)という PDCA(PDS)サイクルを生徒自身が意識できるような単元・授業構成とする ことで,自ら学び続ける生徒を育成することができる」という仮説を立てた。仮説の検証及び研究を進める にあたっては,英語科独自の振り返りシートの活用を軸として研究を行う。 図1 自己調整学習の概要 図2 自己調整学習のイメージ 3 研究計画・経過 (1)対象生徒 令和2年度 第1学年生徒(5学級) 令和2年度 第2学年生徒(5学級) (2)検証方法 英語科独自の振り返りシートによって,自己調整学習を意識できているとみなされる生徒は,外部評価 指標の AiGROW(IGS 社)によって可視化されるコンピテンシー(個人的実行力・決断力・自己効力等)の数値 と英語テストの点数の変化に相関関係があると仮定し,これについて検証していく。そして,その結果を授 業や単元構成の改善にいかしていく。 (3)研究経過 〇英語科独自の振り返りシートの作成(表 1) 生徒に身に付けさせたい資質・能力を意識させるために,本校の教育目標であり,目指す生徒像である 「自主自立豊かな心でたくましく」を関連付けた。生徒が理解しやすいように,「自主自律」を「自分と向 き合う力」に,「豊かな心」を「他者とつながる力」に,「たくましく」を 「自分を高める力」と位置づけ た上で,それぞれの力を伸ばすために英語科の授業の中で意識することを項目としてあげることによって, 自身の学習を振り返りやすいようにした。また,評価シートの中に,どのように学ぶかを記入する「パーソ ナルプロジェクト」欄を設け,認知面だけではなく,情意面の振り返りを行うようにした。どれだけ集中し 行動 メタ認知 動機づけ 英語 2

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〇学習方略の提示(表 2) 生徒たちの動機づけを促すために,学習方略例を提示した。動機づけは,捉えどころのない心の中の動 きのようなものである。やみくもに努力を促すのではなく,手立てを具体的に考えやすいように方略例を 提示することで,生徒自身が PDCA(PDS)サイクルを意識できるよう支援した。適切な学習方略との出会 いが,学習の実感や手応えを促し,自己効力感を高めることにつながると考える。 表 1 表2 英語 3

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4 実践の概要

自己調整学習の力を育む上で,教師の支援を最低限にするために「足場かけ」(scaffolding)が重要で ある。足場かけの中でも,学習者同士が互いに影響しあう「共調整」(coregulation)の場を設定する。 仲間同士で助言や奨励を行うことで,「動機づけ」の基礎となる「自己効力感・有用感」の充足を促進さ せたい。今回の実践では,表現活動の中に ICT を用いたピアコレクション(peer correction)を取り入れ た単元構成とした。英語科独自の振り返りシートの中の,他者とつながる力を意識させる授業構成にも留 意する。以下,1月に本校で行った実践研究発表会での実践授業の具体を示す。

〇 実施時期 令和3年 1 月

〇 対象学年 令和2年度 第1学年生徒(5学級)

〇 題 材 Daily Scene4 ウェブサイト(New Horizon English Course 1 東京書籍) 〇 目 標 自分の学校について,今まで習った表現を使いながら書くことができる。 〇 評価基準 知識・技能 思考・判断力・表現力 主体的に学習に取り組む態度 ・be 動詞と一般動詞の特徴やき まりを理解し,正確に使いわ けることができる。 ・表現したいことによって時制 (現在形・現在進行形)を選ぶ ことができる。 ・助動詞や副使を使って,事実 や自分の考えを詳しく書くこ とができる。 ・本校に興味を持ってもらう ために,どのようなことを学 校のウェブサイトに載せる べきかを考え,掲載内容を選 択することができる。 ・事実や自分の考えを整理し, 簡単な語句や文を用いて,ま とまりのある文章を書いて いる。 ・本校に興味を持ってもらうため に,学校行事や,授業や部活動, 自分のお気に入りの場所や本校 の特色等について,事実や自分 の考えを整理し,簡単な語句や 文を用いて,まとまりのある文 章を書こうとしている。 ・友達からのコメントや助言を参 考にし,自分の学校紹介をより よくしようとしている。 〇 単元計画 全6時間(本時は第三次の2時) 第一次 助動詞 can の導入・練習... 1時間 第二次 Update self-introduction. ~新しく学んだ表現で自己紹介を更新しよう~ 2時間 1 「読んだことに基づいて書くこと」の活動(友達の作品に助言する活動) ... 1時間 2 「読んだことに基づいて書くこと」の活動(助言を基に書き直す活動) ... 1時間 第三次 Daily Scene4 の内容理解... 3時間 1 内容理解および「読んで話すこと」の活動 …... 1時間 2 「読んだことに基づいて書くこと」の活動... 2時間 (本時) 英語 4

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本 時 案(計画 第三次の第2時) 目 標 〇友達からの意見や助言を参考にし,自分の学校紹介を改善することができる。【学びに向かう力・人間性等】 〇既習事項を用いて,本校の魅力を伝える文章を書くことができる。【思考・判断力・表現力】 学 習 活 動 指導・支援と留意点 評 価 等 1 あいさつをする。 2 帯活動を行う。 (1)前時までに学習した 教科書の表現を復習 する。 (2)スピーチ「改良版自 己紹介」を行う。 3 本時の目標を知る。 4 ワークシートに書 かれた,コメントやア ドバイスを読み,気づ いた点を共有する。 5 自分の書いた学校 紹介を加筆修正する。 6 本単元の振り返り を行う。 1 英語で簡単な質問をし,授業の雰囲気を作る。 2 ウォームアップとして,既習内容を用いて英語を使う。 (1) 教科書の基本文を定期的に確認することで,長期記憶に繋 げる。 (2) Unit3 終了時に行った,主に現在形の一般動詞を用いた自 己紹介に,現在までの既習事項を使った文を付け足した改良 版自己紹介を行うことで,表現の幅の広がりを感じられるよ うにする。 3 本時の目標とともに,この単元の流れについても確認 することで,見通しを持って活動に取り組めるようにする。 4 グループ活動とすることで,自身のワークシートへの記述 だけではなく,班員のワークシートへの記述内容も共有でき るようにし,より多くの視点を持てるようにする。また,コ メントや助言はあくまで参考にし,それらを採用するかどう かは自分で考えるように指示する。参考になりそうな生徒の 名前を伝えることで,生徒が個別に良い作品にアクセスでき るようにする。 5 言語活動であることを留意させ,レイアウト(文字の大き さ・色・写真やイラストなど)の調整に時間を使いすぎない ようにする。机間支援をしながら,上手な言い回しや 気になる表現を紹介する。 6 前期後期に実施している振り返りシートの項目を,本単元 の活動に即したものとし,この単元を通して身についた力を 生徒が意識できるようにする。 学びに向かう力・人間性等 友達からのコ メントや助言 を参考にし, 表現を改善す ることができ る。 思考・判断・表現 事実や自分の 考 え を 整 理 し,簡単な語 句や文を用い て,まとまり のある文章を 書いている。 友達からの意見や助言を参考にし、自分の学校紹介をよりよくすることができる。 英語 5

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5 成果と課題 (成果) ・これまで,ピアコレクション(peer correction)では,生徒同士が指摘や助言をしあうことがなかなか できないという課題があった。しかし,対面ではないという点や,指摘や助言を即興でしあう必要のな い今回の活動では,伝えたいことを教科書や辞書で確認したり,友達と相談したりすることができ,積 極的に活動に取り組む様子が見られた。 ・生徒たちは助言するために,自身の理解を再確認する必要があり,その過程は自律した学習者を目指す 上で必要なものであると感じた。また,自身の作品にコメントや助言がなされることで,協働することの 楽しさや大切さを感じる活動にもなった。 図3 第二次 第2時 授業ワークシート 図4 第三次 第2時授業の様子 (課題) ・生徒たちが自分の表現を確認する際,使用している辞書では用例が少なすぎ,比較・検討がしにくい様 子が見られた。COCA (Corpus of Contemporary American English)や SkeLL (Sketch Engine for language learning)などのコーパスを用いた表現の精選も授業に取り入れていきたい。 ・振り返りを実施する時期に課題があった。期間が空きすぎると,自己調整学習の意識が薄れてしまう。 定期考査や単元終了ごとのように,頻度を増やして行えるようにカリキュラムを整えていく。また,外 部評価指標の AiGROW(IGS 社)によるコンピテンシー計測においても,伸びた力を生徒が実感しやすいよ うに,計画的に実施していきたい。 引用・参考文献 1) 文部科学省(2017)『中学校学習指導要領解説 外国語編』 2) 文部科学省(2020)「指導と評価の一体化のための学習評価に関する参考資料 中学校外国語」 3) 中山芳一(2020)『自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』 東京書籍 4) 伊藤崇達(2009)『自己調整学習の成立過程』 北大路書房 5) 竹内理,津田敦子(2020)『英語教育 4 月号』自己調整学習で引き出す生徒の主体性 pp.34-39 英語 6

参照

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