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精進湖の水質汚濁について(その1)

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精 進 湖 の水 質汚 濁 につ いて(そ

の1)

は じめ に ど ん な湖 沼 で も永 い年 月 の間 に は富栄 養 化 の 現 象 が徐 々 に進 行 して い る こと は,湖 沼 の宿 命 で あ る 。最 近 は湖 の 水 を発 電 や農 工 業 用 水 と し て の利 用 で水 位 が い ち じる し く低 下 した り,交 通 機 関 の 発達 で,観 光 客 は増 加 し,湖 周 辺 に は レジ ャー 施設 や ホ テ ル が乱 立 して建 設 され て い る現 状 で あ る。 この た め湖 水 の汚 濁 現 象 が い た る と こ ろで 現 れ る よ うに な っ た。 しか も こう し た現 象 は,我 が 国 ばか りで な くカナ ダ,北 ア メ リカ,ヨ ー ロ ッパ,ア フ リカ な どの 諸 国 の湖 で も汚 濁 が進 行 して い る。 筆 者 は,す で に 山中 湖,河 口湖 の水 質 調 査 を, お の お の過 去4年 間費 して そ の結 論 を発 表 して い るが,今 回 は富 士 五 湖 中 の 精進 湖 につ い て調 査 を試 み た。 こ の湖 は五 湖 中 で 一番 小 さ くて,古 くか ら河 口湖 と と も に水 質 が 汚 染 され て い る とい わ れ る。 湖 盆 形 態 が ふ く ざつ な閉 鎖 され た湖 で,水 の 流 入 は わず か で流 出 は全 くな い。五 湖 中 で最 も人 にか え り見 られ な い湖 で あ る。 研 究結 果 を記 載 す る に あた って,こ の 湖 に関 す る学術 研 究 の資 料 が乏 しいた め,過 去 に お い て 印刷 発 表 され て い る い くつ か の観 測 値 を利 用 して比 較 検 討 を加 え て調 査 結 果 を書 くこ と に し た 。

精進湖の現状

精 進 湖 は 山梨 県 西八 代郡 上 九 一 色 村 に あ っ て, 水 面 海 抜 高 度896.2m,面 積0.65歴,湖 岸 線 7.0㎞,最 大 深 度11.2m,平 均深 度3.7mの 小 さ い湖 で あ る。 紀 元864年 に富 士 山 か ら の青 木 ケ 原 熔 岩 流 に よっ て分 離 され た結 果,現 在 の西 湖,精 進 湖, 本 栖 湖 の3湖 が 形成 され た と い わ れ る。周 囲 の 人 口 は過 疎 化 の た め きわ め て少 な く,49年4月 現 在404人 に す ぎ な い 。 甲 府 精 進 有 料 道 路 の ゲ ー ト左 側 の精 進 区 に過 半 数 の住 民 が集 中 して い る。 周 辺 の ホ テ ル,旅 館 な どの 施 設 は規 模 が小 さ くて,他 の湖 の周 辺 と比 べ て 数 も少 な い 。 図2 参 照 。 観 光 客 の数 は毎 年50万 人 前 後 で,8月 の15万 人 を ピー ク に して1月 には7千 ∼8千 人 程 度 で あ る。 ま た,五 湖 中 の 山中 湖 と精 進 湖 は浅 い湖 の た め寒 冷 の冬 季 に は結 氷 しや す く,1月 か ら2月 末 ご ろま で の期 間 が凍 結 して,ス ケ ー トや ワカ サ ギ釣 りの恰 好 の場 所 と な って い る。 一43一

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研 究 紀 要 第28集 年 間 を通 して,こ い,ふ な,ワ カサ ギ な ど の フ ィ ッシ ン グ も盛 ん で あ っ た り,精 進 区 に は 可 成 り大規 模 の こい養 殖 用 の生 簀 が あ る た め餌 や 魚 の排泄 物 が汚 濁 の原 因 で も あ る。 か つ て,本 栖 湖 で の水 の発 電 利 用 に よ って 水 位 の低 下 が10mぐ らい下 っ た と きに,す ぐ隣 り の精 進 湖 の水 位 が み る み る う ち に低 下 し,や は り10mぐ らい下 が っ て しま い,も と も と水 深 が 25mぐ らい しか な い この 湖 が10mも 低 下 し現 在 で もその 影 響 が 続 いて い る と され て い る。 む か し,湖 の 底 に あ った 熔岩 が今 は荒 々 しく露 出 し て い るの も この た め で あ っ て,水 容 量 の極 端 の 減 少 も汚 濁 の原 因 に結 びつ い て い る。 自然 環 境 の 中 の 湖 の 水 は 降雨 や周 囲 の森 林 や そ の 他 の 植 物 に よ って永 い 間維 持 され て き た は ず で あ る。 また 水 の 中 の生 物 は水 との調 和 の と れ た生 き方 を して い た 。湖 水 の水 容量 も この た め の 大 切 な 要 因 で あ る。湖 水 の採 水利 用,湖 辺 の 森 林 伐 採,湖 岸 工事,造 成 な ど は 自然 と の調 和 の 上 か ら環 境 へ の影 響 を深 重 に考慮 しな けれ ば な らな い 。 本 調査 に あ た っ て,湖 が小 さ いの で,湖 心 と 他 の2ケ 所 に つ い て行 っ た。 調 査 採 水 箇 所 の 選 択 につ い て は,図3の よ う に湖 心A,広 い砂 浜 のB,こ い養 殖 場 の 生 簀 付 近C の3ケ 所 を選 ん で み た 。 調 査 の 第1回 は 観 光 シ ー ズ ン 中 の 真 夏 の8月 17日(快 晴)と 第2回 目 は シ ー ズ ン の 終 り頃 と 湖 水 の 循 環 期 を 考 え て10月8日(曇,強 風)に 行 っ た 。 こ の 調 査 で 幸 な こ と に は,モ ー タ ー ボ ー トは な く て,手 こ ぎ ボ ー トの み で あ る た め,採 水 や 計 測 は 楽 に 行 う こ と が で き た 。 調 査 の 対 象 は,図4の 水 温 の 垂 直 分 布,日 光 や 水 中 の 植 物 プ ラ ン ク ト ン,水 草 な ど で 影 響 を 受 け や す いDO(溶 存 酸 素),P且(水 素 イ オ ン 濃 度),汚 染 に 直 接 関 係 の あ る 窒 素(NH4N, NO2-N,NOs-N)と 富 栄 養 化 の 指 標 と な っ て い る リ ン(PO4-P),な ら び にCOD(化 学 的 酸 素 要 求 量)に つ い て 計 測 を行 っ た 。 方 法 と し て は,水 温,P且,DOに つ い て は ボ ー ト上 で 採 水 後 た だ ち に 計 り,NH4--N, NOz-Nに つ い て は,ボ ー トよ り降 り た の ち , 岸 辺 に て 計 っ た 。 そ の 他 は500m8の ポ リ タ ン に 入 れ,ア イ ス バ ッ ク の 中 で5℃ の 温 度 に 保 っ て 翌 日 本 学 研 究 室 で 測 定 し た 。 と く に,8月17日 採 水 の と き に は,こ い 養 殖 場 の 生 簀 の 木 や 竹 の 枠 に,河 口 湖 と 同 様 に 球 型

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を した寒 天 状 の ク ラゲ コケ ム シの群 体 が び っ し りと付 着 して い るの が見 られ た。 図4水 温 の垂 直 分 布(湖 心A) こ こ で,8月17日 に採 水 の と き,採 水器(北 原 式)の お も りが外 れ落 下 して しま って採 水 不 能 の た め,表 面 水 と水 深1mの 水 につ い て調 査 を した 。 この調 査 結 果 は表1の 通 りで あ る 。 第2回 の10月8日 の調 査 で は 図4か ら明 らか に水 温 が上層,下 層 と もほ ぼ垂 直線 で一 定 温 度 で,循 環 期 を示 して い て,湖 水 が対 流 に よ って, 水 温 や水 質 の 化学 組 成 が上 下 一 様 に な る と き に 測 定 を試 みた 。 温 度,DOは 測 定 場 所A,B,Cと もに表 面 の水 か ら1mご とに計 り,そ の 他 の 栄 養 塩 類 に つ い て は2m∼4mご と に計 っ た。 その 結 果 は 表2,表3,表4で 示 した。 測 定 に あ た って,使 用 器 具 は ア ンモ ニ ア,亜 硝 酸,硝 酸 中 の 窒 素 と リ ン酸 中 の リ ン成 分 は, セ ン トラ ル科 学 の 富 栄 養 計HC1000を 使 用 し た 。

精 進 湖 につ い て の水 質 に 関 す る過 去 の 資料 は 極 めて 少 な くて,五 湖 中 の代 表 的 な富 栄 養湖 と して古 くか ら云 い伝 え られ て い る の で,こ の調 表1 8月17日 調 査 項 目 場 所 水 温 C°C) 透 明度 Cm) PH DO Cppm) NH4-N' (mg/の NOa-N Cmg/1) NO4-P (mg/G) COD (mg/の 表面 A水 深 lm 27 2.6 8.9 9.3 1!1 111 o.of 1.1 27 8.9 8.3 111 111 0.09 2.3 B表 面 27 2.6 8.9 8.4 o.00 111 11・ 1.2 表面 C水 深 lm 27 2.8 8.9 7.9 o.00 o.00 11・ 1.4 26.5 8.9 6.8 111 o.00 11・ 2.4 査 結 果 を 考 察 す る に あ た っ て,い く つ か の 過 去 の 調 査 資 料 を 参 考 と し て 検 討 し て み た 。 (イ)水 温,DOに つ い て は,1930年(昭 和5 年)7月8日 の宮 地 氏 の 測 定値 と今 回 の値 と の 差 はな か っ た。 と くに,夏 季 にお い て は,底 層 でDOが ゼ ロ と な る深 度 は1929年(昭 和4年) 一45

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研 究 紀 要 第28集 表2測 定 場 所A(湖 心)透 明 度2.2m 10月8日 調 査 項 目 水深m 水 温 ゜C) DO 〈mg/の PH NH4-N (mg/1) NOZ-N Cmg/1) NO3-N (mg/1) PO4-P (mg/の COD (mg/1) 0 i7.s 7.5 7.2 0.03 0.003 111 0.06 1.9 i 17.4 7.3 2 17.3 7.2 7.7 o.oa 0.003 111 0.05 1.6 3 17.2 7.4 4 17.2 7.6 7.7 0.03 0.003 1!1 11: 2.0 5 17.2 7.7 6 17.2 7.7 7.6 0.02 0.003 111 0.03 1.6 7 17.1 7.7 8 16.0 2.5 7.4 11・ 0.005 111 0.04 2.9 ・ 8.5mで 低 土 浮 上 混 入 表3測 定場 所B透 明 度2.2m 10月8日 調 査 項 目 水深m 水 温 C°C) DO (mg/1) PH NH4-N (mg/の NOZ-N <mg/1) NO3-N (mg/1) PO4-P (mg/G) COD (mg/の 0 17.5 7.6 7:5 0.03 0.003 0.Ol 0.07 2.0 1 17.4 7.4 2 17.3 7.6 3 17.2 7.7 4 17.1 7.7 7.6 0.05 0.002 0.Ol 0.02 2.3 5 17.1 7.7 表4測 定 場 所C透 明度2.3m 10月8日 調 査

水 温 C°C) DO (mg/G) PH NH4-N (mg/の NOa-N Cmg/1) NO3-N Cmg/G) PO4-P Cmg/1) COD (mg/1) 0 17.6 8.7 7.6 0.04 0.003 0.01 0.02 2.1 1 17.5 8.6 2 17.5 8.3 3 17.5 8.3 4 17.5 8.3 7.6 0.04 0.004 o.of 11: 2.2 5 17.4 8.3 6 17.4 8.2 7 (7.5) 一 17.3 (16.9) 8.2 (6.6) 7.5 0.04 0.004 0.01 0.02 2.2 7.5mで 低 土 浮 上 混 入 で は14m,1935年 ∼1941年 に は12m,1953年 (昭 和28年)は9.5m,そ し て1968年 に は8.5m と 上 昇 し,無 酸 素 層 が 上 昇 し厚 く な っ て き て い るの は,富 栄 養 化 の 進 行 に よる も の と して 記 載 して い る。 (ロ)昭 和45年8月20日 に 調査 した 山梨 県 公 害

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課 の水 質 検 査 報告 に よる数 値 は次 の 表5に 示 し た。 た だ し湖心 付 近 で あ る 。 の 昭 和55年,山 梨 県 の公 共 用 水 域 水 質 測 定 結 果 に よれ ば,湖 心 につ い ての 資 料 は表6の 通 りで あ っ た。 (⇒ の と同様 な資 料 と して,昭 和48年 か ら57 年 ま で に湖 心 に お け る調 査 結 果 を表7で 示 した。 以 上 は過 去 の貴 重 な資 料 を参 考 に して,今 回 調 査 した数 値 か ら次 の お の おの の 項 目の検 討 を した 。 表5山 梨県公害課水質検査報告書 45年8月4日 調 査

水 温 (°C) 透 明度 Cm) PH DO (mg/の NH4-N (mg/の NOz-N Cmg/1) NO3-N (mg/1) Clイ オ ン (mg/の COD Cmg/1) 湖 心 25 2.0 5.6 7.6 C-) (+) (+) 11.0 1.9 表6山 梨県公共用水域水質測定表

水 温 C°C) 透 明度 Cm) PH DO (mg/1) NH4-N Cmg/1) NOz-N (mg/の NOs-N (mg/1) P(全 リ ン) (mg/G) COD (mg/の 55.8.23 27.8 1:9 7.2 6.8 0.140 0.016 0.183 !! 3.4 55.10.2 19.0 1.0 7.3 7.0 0.189 0.016 0.239 0.033 3.6 表7山 梨 県 公 共 用 水 域 水 質 測 定 に よ る昭 和48年 ∼57年 まで の 年 平 均値

48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 透 明 度 (m) 2.1 2.2 2.2 2.5 2.2 2.7 2.0 i.s 1.4 1.9 PH 7.4 7.3 7.7 7.4 7.7 8.3 7.3 7.8 7.7 7.5 DO (mg/1) 9.6 9.5 9.3 9.0 9.8 7.7 8.8 9.2 9.9 9.6 COD (mg/の 3.7 3.5 3.4 3.3 2.8 2.8 3.0 3.6 5.2 4.0 SS Cmg/1) 3.3 3.9 3.6 3.0 2.6 3.1 4.5 3.6 4.6 3.3 (A)PH(水 素 イ オ ン濃 度) 富 栄 養 湖 のP且 は生 物 作 用 の 影 響 を う け て 大 き く変 化 す る。 日中 は光 合 成 で,植 物 や植 物 プ ラ ン ク トンが水 中 で炭 酸 を消 費 す る と,重 炭 酸 塩(且CO3)は 平 衡 を保 つ た め に 一 部 が 分 解 して 炭 酸 を補 充 し,そ の 際 生 ず る水 酸 イ オ ン に よ って 水 はア ル カ リ性 に な りや す い。 夏 の 日射 の 強 い季 節 の 昼 間 にP且 が 異 常 に高 くな る の は この た め で あ る。 8月 の 調 査 で は,表 層 水 で,平 均8.9の 値 を 示 して い る こ とは,強 い 日射 に よ って植 物 プ ラ ン ク トンの活 動 が可 成 り活 発 に行 わ れ て い る こ とが 考 え られ る。 と く に,こ の湖 の 夏 季 の 水温 は,五 湖 中の ど の 湖 よ り も高 い の で,秋 季 の急 げ き な水 温 の 低 下 に よ って,プ ラ ン ク トンの活 動 が急 に お さえ られ て,平 均7.5付 近 に落 ちつ く よ うで あ る 。 県 の45年 の 同 じ時 季 で の 調 査 表5で はPH が5.6と 可 成 り強 い酸 性 で 示 した の は,何 か外 部 的 の影 響 が考 え られ る。 一47一

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研 究 紀 要 第28集 (B)DO(溶 存 酸 素) 8月 の 調 査 で は,lm深 く な る と1ppmの 割 合 でDOは 減 少 し て い く傾 向 に あ っ た が, 10月 の 湖 心Aで は,水 深3mま で はDOの 値 は 低 下 し,水 深5m∼7mで はDOが7.7mg 〃 と い う い ず か に 高 い 値 を 示 し て い た 。 水 深 8mで はDOが2.5mg〃 と 急 に 減 っ て い る の が 測 定 さ れ た 。 こ れ は8.5mが 湖 底 で あ る た め, 湖 底 の 沈 殿 物 の 分 解 の た め に,バ ク テ リ ア が DOを 消 費 して い る た め で あ る 。 測 定 場 所Bで は 湖 底 が5.5mな の で,水 深 3m∼5mでDOは 一 様 な7.7mg〃 と な っ て い た 。 C地 点 で は 上 層 で1ま8.6mg〃 の 濃 度,2m∼ 7mで は8.3mg〃 の 値 で,7.5mで はDOは 6.6mg〃 で あ っ た 。 C点 で の 値 が 高 い の は,こ い 養 殖 の 生 簀 が あ っ て 日 中 に お い て は 餌 や 排 泄 物 な ど が 植 物 プ ラ ン ク トン の 活 動 を 活 発 に し て い る た め で あ る 。 ち っ素 と リン この二 つ の 物 質 は,た ん 白 質 の構 成 成 分 で あ っ て,精 進 湖 に お いて は 自然 に これ らの物 質 が 流 入 す る こ と は ほ んの わ ず か で あ っ て,生 活 排 水 や家 畜 や 鳥 類 の 排 泄 物,釣 り人 の餌 や魚 の養 殖 場 の餌 な ど で,こ れ らの 物 質 は補 給 さ れ て い る 。栄 養 塩 と して 水 中 の植 物 や植 物 プ ラ ンク ト ンの生 産 を高 めて 富 栄 養 化 現象 を促 進 す る代 表 的 な物 質 で あ る。 貧 栄 養 湖 と富 栄 養 湖 を区 別 す る の は,こ の2 つ の物 質 の 多 少 に よ って 決 定 され る と い っ て も よ い 。1939年 に 湖 沼 学 者 吉 村 信 吉 は ち っ そ 0.15ppm以 下,リ ン0.02ppm以 下 の 湖 が 貧 栄 養 湖 で あ る と して い る。 今 で も,こ れ らの値 に 妥 当性 が あ る数 値 と して 信 じられ,湖 沼 を論 ず る とき に利 用 され て い る。 8月 の 調 査 で は,ち っそ の存 在 はABCの3 箇 所 と も認 め られ なか っ たが,リ ンにつ い て は 0.ogmg〃 の値 で 存 在 し,ま た10月 に は 湖 底 の 近 く の水 を 除 い て は,ち っ そ の 存 在 は0.04mg /4以 下 で予 想 外 に少 な く,逆 に リン は 場 所 に よ っ て異 な っ て い た が0.02∼0.08mg〃 の 程 度 で富 栄 養 湖 と して 認 め ざる を得 な い数 値 で あ っ た。 こ こで,一 般 に湖 沼 の 富栄 養 化 の現 象 は ち っ そ と リンの 共 存 に よ って進 行 す る も の と考 え ら れ て い るが,8月 と10月 の 調査 で は ち っ そ は少 くて も リ ン成 分 が 多 い場 合 で も富 栄 養 化 は進 む もの と思 われ る。 これ は ち っそ を含 有 して い る 物 質 は 自然 か ら リ ン成 分 に比 べ て容 易 に補 給 さ れ る ため で はな い か と推 察 され る。 COD(化 学 的 酸 素 要 求 量) 湖 沼 や 海 の 汚 れ はCODの 値 で 表 わ す こ と に な っ て い る 。 こ れ は 湖 沼 や 海 の 水 に 含 ま れ る 被 酸 化 物 を 酸 化 剤 で 酸 化 す る と き に 消 費 す る 酸 素 の 量(mg〃e重 量ppm)をCODと い っ て, こ の 値 を測 る こ と で 水 の 汚 濁 の 程 度 を 知 る こ と が で き る 。 8月 で の 調 査 はA,B,Cの3箇 所 でCOD は1.1∼2.4mg〃(表1)の 値 で,10月 で は 湖 心Aの 垂 直 分 布 か ら も1.6∼2.omg〃(表2), B箇 所 で は2.3mg〃(表3),C箇 所 で は2.1∼ 2.2mg〃(表4)の 値 で あ っ た 。 こ れ ら の 値 は何 れ も 生 活 環 境 を守 る 湖 沼 の 環 境 基 準 のA類 型,COD3ppm以 下 で あ る こ と を 満 し て い る こ と に な る が,類 型AA型 の1 ppm以 下 を 望 み た い 。 表7に よ る と,昭 和47年 ∼57年 の10年 間 の 平 均 値 は3.5ppmで あ り,最 近 の56年 の5.2ppm, 57年 の4.Oppmの 値 と,今 回 の 測 定 結 果 を 比 べ て み る と,CODに 関 す る 限 り,良 好 の 方 向 に 進 ん で い る 。 ク ラ ゲ コ ケ ム シPectinatellamagnifica (Leidy) 8月17日 採 水 の と き,C箇 所 の こ い 養 殖 場 の 生 簀 の 木 や 竹 枠 の 水 面 下 に,直 径15∼20cmの ぶ

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よぶ よ した寒 天 状 の 球 型 の群 体 が珠 数 つ な ぎに 付 着 して い た。 北 アメ リカ産 の コ ケ ム シの一 種 で 「大 玉 コ ケ ム シ」 「ク ラゲ コケ ム シ」 な ど の 名 で呼 ばれ て い る。 日本 産 の コ ケ ム シ に群 体 が 似 て い るが,こ の 体芽 の ま わ りに は碇 型 の棘 を 10数 本 も って い る こと で 区別 され て い る 。 た い へ ん 特 異 で 面 倒 な 生物 で,本 種 の体 腔 液 は人 体 に は直 接 の 被 害 は な い が,魚 貝 類 に はか な り強 い毒 性 を も って い る と い わ れ る。 この コケ ム シ は,昭 和47年10月 に河 口湖 と同 時 に発 見 され て い る。 現 在 は,こ の外 柴 山潟,印 旛 沼 に生 息 し て い る。 夏 季 の 水 温 が 高 く,汚 濁 が進 ん で い る浅 い湖 や沼 に発 生 す る傾 向 が あ る 。 この コケ ム シの体 腔 液 は ア ンモ ニ ア イオ ンで 15mg/.Q,亜 硝 酸 で0.2mg〃,リ ン酸 で0.77mg 〃 の 高 濃 度 の 液 で,川 魚 特 有 の 強 い魚臭 が極 め て強 い。 ま と め 精 進 湖 は 水 の は け 口 の 全 く な い 湖 水 で,水 位 の 一 番 あ が る の は 秋 季 の 降 雨 に と も な う こ と が 多 く,降 雨,蒸 散 の く り返 しの 中 で 水 位 が つ ね に 変 化 して い る 。 富 士 五 湖 の 中 で も,と く に 西 湖,精 進 湖,本 栖 湖 の 水 位 は い ち じ る し い 変 化 が あ る 。 例 え ば, 西 湖 で は1911年9月 か ら1927年8月 ま で の16年 間 に16.9mも 水 位 が 低 下 し,こ れ に加 え て 発 電 利 用 に 水 が と ら れ る た め さ ら に 減 少 し,こ の 後 遺 症 は 現 在 ま で 続 い て い る 。 本 栖 湖 の 水 の 発 電 利 用 で 減 水 し て か ら そ の 影 響 が 精 進 湖 に あ ら わ れ て,か つ て は 最 大 深 度 が25mも あ っ た が 現 在 で は そ の 半 分 以 下 の11.2mと な っ て い る 。 しか も 昭 和10年 ご ろ の 透 明 度 は5.Omも あ っ た が 今 は2.2∼2.6mと 低 下 し て い る 。 DO,PH,ち っ 素 に つ い て は 今 回 の 調 査 で は 特 に 強 調 す る よ う な 結 果 は 現 れ な か っ た 。 り ん の 含 有 量 は 可 成 り多 か っ た 。 植 物 プ ラ ン ク ト ンの 増殖 で消 費 され る に もか か わ らず,こ れ だ け湖 水 中 に溶 解 して い る こ とは,周 囲 か ら流 れ 込 む 生活 排 水 や こい の養 殖 場 の影 響 と しか 考 え られ な い 。 カ ナ ダ陸 水 セ ン タ ー研 究 員 のJ.R.バ レ ン タ イ ンに よ れ ば,エ リー湖 と オ ンタ リオ湖 か ら採 取 した水 に富 栄 養化 下 水 を加 え た も の と加 え な い もの に分 けて10日 間 と30日 間 に わ た り培養 し た後 の植 物 プ ラ ンク トン増 殖 の様 子 につ い て実 験 して,下 水 中 の りん を除 去 す れ ば,エ リー湖 と オ ン タ リオ 湖 か ら採 取 した水 に対 す る下 水 の 植 物 プ ラ ン ク トン増 殖 促 進 効 果 はみ られ な い こ と と,除 去 され た りん を埋 合 せ るた め に りん を 加 え る と下 水 の増 殖 促 進 効 果 が完 全 に も と に も ど る こ と を明 らか に した。 この研 究 も富 栄 養 化 を抑 圧 す る重 要 な糸 口 と な るか も知 れ な い。 ク ラゲ コケ ム シ につ いて は厄 介 な 問題 で,一 部 の 学 者 は外 来 の生 物 は,一 時 的 な環 境 の 適応 で 繁 殖 して い る の だか ら,そ の うち に,減 少 す るで あろ うと の見 か た を して い る が,実 際 に 昭 和49年 か ら河 口湖 で観 察 を続 けて い る人 に とっ て は,一 向 に減 少 す る気配 はな く,む しろ この よ うな生 物 が,水 鳥 や 魚 な どに付 着 して 他 の湖 や 沼 に移 動 し発 生 す る こ とを心 配 して いる 。 CODに つ い て は,1.6∼2.4mg〃 の 範 囲 で あ って,河 口湖 を除 く他 の3つ の湖 と比 べ る と き満 足 すべ き数値 とい え な いが,昭 和53年 ∼57 年 ま で の 年 平 均 の 値 の み か ら見 れ ば,1.6∼ 2.4mg〃 は湖 が きれ い に な って きて いる と推 察 で き る と同 時 に湖 辺 住 民 の ク リー ンキ ャ ンペ ー ンの努 力 を うか が う ことが で き る。 私 は 今 夏 の8月27日 ∼8月31日 ま で の'84世 界 湖 沼 会 議 に 参 加 し た 。 国 連 環 境 計 画 局 長 の MostafaK.Tolba氏 は,湖 沼 環 境 の 悪 化 は, 人 々 が 自 然 の 生 態 系 の 弾 力 性 を 十 分 に 理 解 し て い な い と こ ろ か ら起 こ る 。 経 済 開 発 活 動 と環 境 と の 密 接 な 関 係 を,人 々 が 理 解 し て い な い と こ ろ に 問 題 の 根 本 が あ る と い っ て よ い 。 つ ま り, 一49一

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研 究 紀 要 第28集 環 境 保 全 に 心 を用 い る こ と な く して,正 しい 意 味 で の 開 発 の 成 功 はあ り得 ない し,ま た,開 発 な く して,わ れ わ れ の生 活 の 質 的 向上 は あ り得 な い とい う事 実 で あ る。 と説 いて い る。 ま た湖 沼 と人 間 と の絆 は,人 間 の親 子 関 係 に似 て い る。 地 球 上 の資 源 は無 限で はな い 。従 って,も しわ れ われ が地 球 上 の 「人 間」 とい う 「種」 と して 生 き残 る とす るな ら,わ れ わ れ の 開発 行 為 は, 持 続 的 に安 定 した もの で な けれ ば な らな い。 真 水 の湖 沼 は,わ れ わ れ が先 祖 か ら受 け継 い だ天 然 資 源 の重 要 な一 つ で あ る。 十 分 な 注 意 の も とに賢 明 に管 理 をす れ ば,湖 沼 は人 類 の 生 活 を 末 永 く支 え続 け る こ とが で き る 。 しか し,湖 沼 が そ の生存 の 限界 を超 え た無 謀 な利 用 の され 方 を す れ ば,親 も子 も等 し く死 滅 の 運 命 を辿 る こ とに な る で あ ろ う とい ま しめ て い る 。 そ して,28ケ 国 の 世 界 の 科 学 者 が 「湖 沼 再 生 」 の 目標 に 向か って 手 が か りをつ か も う と, 活 発 な報 告 や討 議 が行 わ れ た 。 その 中 で も,破 壊 へ の 道 を進 む湖 に科 学 者, 行 政,湖 辺 住民 が ば らば らで 取 り組 む 問題 で は な くて,研 究 室 に閉 じ こも りが ちだ った 科学 者 た ち が,住 民,行 政 の声 に謙 虚 に耳 を傾 け よ う とす る姿 勢 が欲 しい。 そ して 人 類 の生 存 と密 接 にか か わ りの あ る環 境 保 全 の 問 題 で は,科 学 の 成 果 が社 会 へ還 元 され な けれ ば何 の 意 味 もな い との 説 明 が 印 象 的 で あ っ た。 参 考 文 献 1)小 泉 清 明:昭 和56年 川 と 湖 の 生 態P.20∼30 共 立 出 版KK. 2)鈴 木 静 夫:昭 和50年 日 本 の 湖 沼P.137内 田 老 鶴 剛 新 社 3)津 田 松 苗:昭 和50年 日 本 湖 沼 の 診 断P.7P. 8,P.104∼ 共 立 出 版KK. 4)富 士 急 行KK.:昭 和47年 創 立45周 年 記 念 誌, 富 士 山 周 辺 の 湖 沼P.191∼197富 士 急 行KK. 5)馬 渡 静 夫:昭 和48年Proe.Jap.Soc.Syst. Zoo1.No.9動 物 分 類 学 会 6)山 梨 県:昭 和45年 富 士 五 湖 の 水 質 調 査 報 告 書 P.13 7)吉 田 保 健 所,日 本 医 科 大 学:昭 和40年 河 口 湖 水 汚 染 環 境 調 査 報 告 書P.4 8)吉 村 信 吉:昭 和51年 湖 沼 学P.56,P.58, P.93,P.214,生 産 技 術 セ ン タ ー 9)高 橋 恒 夫:昭 和56年 汚 染 と 環 境P.104鳳 書 房

参照

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