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高濃度スクロース存在下のペクチンは酸のみならずカルシウムイオンによってもゲル化する

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Academic year: 2021

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原 著

高濃度スクロース存在下のペクチンは酸のみならず

カルシウムイオンによってもゲル化する

団 野 源 一

大阪青山大学健康科学部健康栄養学科

The mixture of pectin and sucrose is gelatinized not only by an acid

but also by ionized calcium

Genichi DANNO

Department of Health and Nutrition, Faculty of Health Science, Osaka Aoyama University

Summary The mixture of pectin (high methoxylated pectin) and sucrose were gelatinized not only by an acid but by ionized calcium. The gelatinization by calcium was in uenced by the concentration of sucrose. This calcium-induced gelatinization of pectin in the presence of sucrose seems to be due to blockade of the electric charge of the carboxyl group by a calcium ion. Namely, the gelatinization of pectin by ionized calcium in the presence of sucrose is suggested to be essentially similar in mechanism to its acid induced gelatinization.

実験方法

1.試料

リンゴ由来ペクチン(Wako, pectin, from apple)を ペクチンとして本実験に用いた。スクロースは市販の グラニュー糖(三井製糖)を、クエン酸(特級試薬) 及び塩化カルシウム(特級試薬)は和光純薬(株)か ら購入した。 2.ペクチンゼリーの調製 100 mL容ビーカーに、ペクチンを1.5 g、スクロー スを60 g、脱塩水40 gを入れて攪拌し、ペクチンを分 散させた。このビーカーを140℃のホットプレート上 で、時々攪拌して30分間加熱した。加熱中に蒸発し た水分は、最終的に水分量40 gとなるように脱塩水を 補充した。このペクチン液20 mLずつクエン酸(3 M) 200μLを入れた50 mL容ビーカーに注ぎ、気泡が入 らないようにして攪拌した。ビーカーをパラフィルム でシールし、約1時間室温に保った後、冷蔵庫(5℃) に1夜保存した。

緒  論

果実は、含まれているペクチンのゲル化機能を利用 して、ジャムに加工することができる。ペクチンは、 ガラクツロン酸がα―1,4結合で連結したポリマーで、 そのウロン酸のカルボキシル基の一部がメトキシル化 した構造をもっている。カルボキシル基の43%以上 がエステル化しているものを高メトキシペクチン、エ ステル化率43%以下のものを低メトキシペクチンと称 し、ゲル化能に差異のあることが知られている。一般 に果実に含まれているペクチンは高メトキシペクチン に属する。高メトキシペクチンは、酸と高濃度のスク ロースの存在下でゲル化するのでジャムの製造に用い られる。低メトキシペクチンは、カルシウムイオンに よりゲル化するので低糖度のジャムをつくるときに用 いられると説明がなされている1− 3)。また低糖度食 品のゲル化剤としての低メトキシペクチンの製造法も 開発されている4)。本報告では、ペクチン(高メトキ シペクチン)がスクロースの存在下、カルシウムイオ ンによっても、酸によると同様にゲル化することを見 出し、そのゲル化機構を推論した。 *E-mail: [email protected] 〒562-8580 箕面市新稲2-11-1

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A

B

Fig. 2. Gelation of pectin with 40%(w/w) sucrose. A㸸 citric acid㸦20 mM㸧 B CaCl2㸦30 mM 㸧

A

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Fig. 3. Gelation of pectin with 35%(w/w) sucrose. A㸸 citric acid㸦20 mM㸧 B CaCl2㸦30 mM㸧

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Fig. 1. Gelation of pectin with 60%(w/w) sucrose.

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J. Osaka Aoyama University, 2011. vol.4

A

B

C

Fig. 4. Effect of sucrose on the gelation of pectin with 30 mM calcium chloride. A㸸 sucrose 35%(w/w) B㸸 40%(w/w) C㸸 60%(w/w)

A

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C

Fig. 5. Effect of calcium chloride on the gelation of pectin with 40%(w/w) sucrose. A㸸 CaCl2 8 mM B㸸 15 mM C㸸 30 mM

A

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Fig. 6. Effect of sucrose on the gelation of low-methoxypectin with 30 mM calcium chloride. A㸸 sucrose 40%(w/w) B㸸 60%(w/w)

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3.エステル化率の定量5) ペクチン0.5 gを水100 mLに溶解し、フェノールフ タレイン指示薬を用い0.1 M水酸化ナトリウム規定液 で滴定する(V1)。次に、0.5 M水酸化ナトリウム規定 液を20 mL加えて激しく振とうする。15分後0.5 M塩 酸規定液を20 mL加えて振とうする。フェノールタレ イン指示薬を用いて0.1 M水酸化ナトリウム規定液で 滴定する(V2)。エステル化率は次の式で求めた。 エステル化率=100 × V2 / (V1 + V2) 

実験結果

1.高濃度スクロース条件でのペクチンのゲル化  60%(w/w)スクロースを含むペクチン溶液20 mLに 3 Mクエン酸0.2 mL を添加すると、Fig. 1に示すよう に、ペクチン溶液はゲル化した。これは高メトキシペ クチンのよく知られている特性である。本実験で用い たペクチンのエステル化率は65%であった。このペク チン溶液に、クエン酸の代わりに塩化カルシウム溶液(6 M)0.2 mL添加すると、クエン酸添加と同様にペクチ ン溶液のゲル化が認められた。(Fig. 1) 2.低濃度スクロース条件でのペクチンのゲル化 40%(w/w)スクロースを含むペクチン溶液に3 Mク エン酸0.2 mLを加えて酸性したときペクチン溶液は流 動性を保ちゲル化が認められなかった。この低濃度の 糖の存在ではゲル化しないことはペクチン(高メトキ シペクチン)の特性として知られているところである。 40%(w/w)スクロースを含むペクチン溶液に塩化カル シウム溶液(6 M)0.2 mL添加するとFig. 2に示すよ うにペクチン溶液のゲル化が認められた。 35%(w/w)スクロースを含むペクチン溶液において も塩化カルシウムの添加によって、ゲル強度は弱くな るが、ゲル化することが認められた(Fig. 3)。 3.カルシウムによるペクチンのゲル化とスクロース濃度 ペ ク チ ン 濃 度1.5%、 塩 化 カ ル シ ウ ム 濃 度60 mM の条件でスクロース濃度の影響を検討した。Fig. 4に 示す よ う に、60%(w/w)ス ク ロ ー ス の ゲ ル に 比 べ 40%(w/w)スクロースではゲルの高さが低くなり、ゲ ルの強度が減少することが認められた。35%(w/w)ス クロースではさらにゲル強度は弱くなることが認めら れた(Fig. 3)。 4.ペクチンのゲル化に及ぼすカルシウム濃度の影響 ペクチン濃度1.5%、スクロース濃度40%(w/w)の 条件で、ペクチン溶液のゲル化に及ぼす塩化カルシウ ムの濃度の影響を検討した。塩化カルシウム濃度8∼ 30 mMにおいてゲル化が認められたが、ゲルの強度 は塩化カルシウム濃度により影響を受け、8 mMの塩 化カルシウムでは強度の高いペクチンゲルは得られな かった(Fig. 5)。 5.低メトキシペクチンのゲル化 比較のため、低メトキシペクチンのゲル化性を試み た。水酸化ナトリウムを加え、アルカリ性条件で脱メ トキシして得られた低メトキシペクチンを用い、スク ロース濃度60%(w/w)、およびスクロース40%(w/w) の条件でクエン酸添加ではゲル化しないが、塩化カル シウムを60 mMとなるように添加するとゲル化した。 Fig. 6に示すように、ゲルの状態は、寒天ゲル類似の 感触をもつ硬く、伸展性の乏しいゲルが得られた。ス クロース40%のゲルは60%のゲルとほぼ同じ硬さとな り、Fig. 4におけるようなスクロースの影響は認めら れなかった。

考  察

60%スクロースを含むペクチン(高メトキシペクチ ン)はクエン酸の添加によりゲル化したが、40%スク ロースではクエン酸を加えてもゲル化しなかった。こ れは高メトキシペクチンの特性である。クエン酸の代 わりに塩化カルシウムを加えると、60%スクロースを 含むペクチンは、クエン酸添加と同様にゲル化した。 さらに40%スクロースを含むペクチンにおいてもゲル 化が認められた。カルシウムイオンによるペクチンの ゲル強度はスクロース濃度に影響される結果となった。 それに対して、比較のため用いた低メトキシペクチン のカルシウムイオンによるゲル化はスクロース濃度に よる影響をほとんど受けず、伸展性の乏しいゲルが得 られた。 ペクチン類のゲル化機構として2つの形式が知られ ている。一つはペクチン(高メトキシペクチン)のゲ ル化機構として説明されているものである。酸性条件 においてペクチンのカルボキシル基の解離が抑制され ることによるペクチンの負荷電が減少と高濃度のスク ロースによる脱水効果によってペクチン分子の凝集が 引き起こされる。2つ目の形式は低メトキシペクチン やアルギン酸ナトリウムのゲル化に見られもので、カ

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J. Osaka Aoyama University, 2011. vol.4 ルシウムイオンなどの二価金属イオンが低分子ペクチ ンのカルボキシル基と架橋構造を形成するとするゲル 化機構である6)。 ペクチン(高メトキシペクチン)とスクロースの混 合物は酸のみならずカルシウムイオンによってもゲル 化した。カルシウムイオンによるゲルの強度はスクロー ス濃度によって影響を受け、また伸展性のあるゲルが 得られた。この結果から、高濃度のスクロースとカル シウムイオンによるペクチンのゲル化は、低メトキシ ペクチンにみられるようなカルボキシル基のカルシウ ムイオンの架橋によるゲル化ではなく、カルシウムイ オンによるカルボキシル基の負イオンの封鎖によるも のと思われる。すなわち、スクロース存在下のカルシ ウムによるゲル化は酸によるゲル化と本質的に類似の ものと推察される。

文  献

1) 渡辺達夫、炭水化物、 食品学Ⅰ食品の化学・物 性と機能性 改訂第2版 加藤保子、中山勉編集、 南江堂、2011, p.40.  2) 三浦洋、ペクチン、 新版食品工業事典 光琳、 1993, p.115. 

3) Southgate, D. A. T., The structre of dietary fiber, Dietary  ber health disease , ed. by Kritchevsky, D. and Bon eld, C., (1995), p.26.

4) 三重県工業研究所、 低糖度食品のゲル化剤と

しての低メトキシペクチンの製造法の特許 特 1131639(2010).

5) Meloan, C. E. and Pomeranz, Y., "Food analysis laboratory experiments , The AVI publishing company, inc., 1980, p.136. 

6) 塩谷敏明、デザートゼリーの製法と特性、日食工

Fig. 2.   Gelation of pectin with 40%(w/w) sucrose.
Fig. 6.  Effect of sucrose on the gelation of low-methoxypectin with 30 mM calcium chloride

参照

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