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子どもの虐待における人間の関係性 : プレイセラピーにおける「枠組み」づくりの再構築

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Academic year: 2021

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(1)子 どもの虐待 にお ける人 間 の 関係 性 ―一 プレイセラピーにおける「枠組み」づ くりの再構築―一. 南. 部. 真理子. 要 旨 :本 論文 は,子 どもの関係発達論 の立場 か ら人間の関係性 につい ての研究 で あ る。研究 テ ーマ は,「 子 どもの虐待 における人 間の関係性」 で あ り,そ れは,文 献 ,臨 床 による研究 を基盤 に してい る。虐待問題 は,現 代社会 にお ける子 どもの様 々な問題 を解 く糸口 とな り,本 来あるべ き人間関係 を 損 なうのが虐待問題 であると考 える。 本文 の着 目点 は,子 どもの虐待 を人 間の関係性 の問題 である と捉 えるがゆえに,「 子 どもとセラピ ス トとの関係性」 を従来の「枠組 み」 と異 なる捉 え方 をするところある。 本論文 は,「 虐待 を受 けた子 どものプレイセラピー」 の焦点 を「子 どもとセラピス トとの 関係性」 にあわせ ,「 虐待 を受 け た子 ど ものプ レイセ ラ ピー」 の空間,時 間の「枠」 の あ り方 につい て考察 し,臨 床事例 を通 して再構築 された「枠組 み」 について論 じるものである。. 稲垣 は じ め に. (2001)(‖. は,「 子 どもの発 達段 階 は,そ れぞ れ. の発達が他 の発達段 階 にあ る人の発 達 に よって支 え ら れ ,“ 育 つ ―育 て られ る"と い う関係 の生 命 サ イ ク ル. 臨床心理現場 での虐待 を受 けた子 どもの 関 わ りの ひ. 過程 の 中 で展 開 され る」 として い る。 セ ラ ピス トもク. とつ として , プ レイセ ラ ピーがあ る。 プ レイセ ラ ピー. ライエ ン トである子 どもも,ま さに この サ イクル過程. とは,プ レイを通 して言葉 の発達 が まだ充分 ではない. の 中で子 ども達 の発達 に よって支 え られ ,育 て られて. 子 ども達 と関係 を築 い て い こ う とす る ものである。 セ. い る と感 じて い る。. ラ ピー で は,虐 待 で 受 け た トラ ウ マ を プ レイ を通 し. 子 ども達 の成長 の過程 を言語化す る こ とに よつて 明. て ,再 び体験 し,解 放 し,そ して再 統合 しよ う として. らか に され るこころの動 きは,子 ども達 自身 の もので. い る子 ども達 に出会 う。. あ る。 で きれば,子 どもとセ ラ ピス トとの 関係性 とし. 大人 のセ ラ ピー にお い て も,広 義 の意味 での虐待 を. て ,子 ど も とセ ラ ピス トの心 の 中 に しま ってお きた. 受 けなが らも立 派 に成 長 し,結 婚 を して母 親 となった. い。 しか し,子 どもの成長 へ の希望 ,回 復 力 に畏 敬 の. クライエ ン ト達 と出会 う。彼女 たちは,自 分 の子 ども. 念 を もちつつ ,あ えて言語化す る こ とによ り,虐 待 を. が思春 期 に不登校 な どの一 見 問題 と思 われ る行動 を起. 受 けなが らも関係性 を築 こ う としつつ 今 を生 きて い る 子 ども達 へ の メ ッセ ー ジ とす る。. こす 中で ,自 分 自身 の過去 の 問題 に気 づ い て い く。彼 女 たちは,セ ラ ピー を通 して,過 去 の 問題 に気 づ くこ との大切 さ,辛 さ,そ して意 味 を くり返 し考 えつつ. ,. そ の トラウマ を解放 しそ して再 統合 して い く。. 1. 虐 待 を受 け た 子 ど も の プ レイ セ ラ ピー の 意 義. 臨床現場 で は,虐 待 を受 けた子 ども達 との 関 わ りの 中 で多 くの こ とが 示 され る。 そ の ほ とん どの子 ども達 に とっては,こ れ までの環境 が子 ども達 の知 ってい る. 本論文 では,虐 待 は関係性 の障害 である と言 う視点 か ら,「 ポス トトラウマ テ イック・プ レイ」 を可能 に. 唯 一の環境 とい える もので あ った。子 ども 自身が置 か. す る基盤 としての「子 どもとセラ ピス トとの関係性」. れた環境 が 虐待環境 で あ った と気 づ くこ とは,想 像以 上 の苦 しみ を伴 う。 そ の子 ども達 とい わば成 長 の過程. に着 目する。ギル (1997)や 西澤 (1994)の ように トラウマ に焦点 をあてたアプ ローチは,Do M.ド ノ. を共 にす る こ とで ,セ ラ ピス ト自身 も成長す る。. ヴァン (2000)ら の発達 ― コンテクス ト的アプローチ. ,.

(2) 甲南女子大学 大学 院論集 第 2号. 102. 人間科学研究編 (2004年 3月. ). とは異なる。本論文 では,間 主観的な観点か ら子 ども. レイル ーム の 中 で ,子 ども自身が秘 めて い た世界 を表. 1を 基 の発達 を提 えてい る鯨 岡 (1999)の 関係発達論 の ピス トと 関係 盤 にする ことによ り,「 子 どもとセラ. 現す る。 プ レイとは,虐 待 を受 けた子 どもに とって. 性」 に焦点 をあてる。なぜ ならば,虐 待 は関係性 の障. もの プ レイは具体 的 な ものか ら投影 的 な もの ,さ らに. 害 で あ り,本 論文 の臨床事例 を通 して,「 虐待 を受 け た子 どものプレイセラ ピー」 の特徴的 な側面 は,「 子. は,ロ ール プ レイヘ と展 開す る。 この プ ロセ ス を通 じ て子 ども達 は,象 徴 や隠喩 を発 見 し,自 分 の世界 を理. どもとセラ ピス トとの関係性」 にあると考 えるか らで. 解 して い くc. ,. 具体 的 な遊 びを通 した成長 プ ロセス なので ある。子 ど. 子 ども達 はプ レイ を通 して ,過 去 の トラウマ体験 を. あ るc. 単 に表現 す るだけで はない 。 プ レイの 中 でセ ラ ピス ト ① 「虐待 を受 けた子 どもの プ レイセラ ピー」 の定義 ヽ プ レ イセ ラ ピー とは″ 理療法 の一 種 で あ り,プ レイ 亡. は,子 どもが演 技 と現実 との境界 を理 解 して い るの に. が主 たる表現媒体 と して用 い られ る もので あ るcプ レ. り保 ちなが ら遊 ぶ 。 そ の プ レイの 流 れ の 中 で は,「 こ. 、 理療法 の諸法 の うちで 中心 亡 イセ ラ ピーは,子 どもの′. の プ レイは, もう これ くらい で終 わ らせ た い」 とい う. 的 な もので ある。 プ レイセ ラ ピーは,子 ども 自身 が プ. 気持 ち も子 ども側 か ら自然 に表現 されて くる。大 人の. レイす る こ とによ り自分 を表 し, 自分 を知 る こ とがで. セ ラ ピーの場 合 ,自 己開示 を し過 ぎて ,自 らは歯止 め. きる療法 であ り,そ の子 どもが プ レイす る こ とを手段. が きか な くな る こ ともあ り,混 乱す るケ ース もある。. ヽ とす る″ 亡 理療法 であ る。大 人 の場 合 ,心 理臨床 に必 要. プ レイの不安 を軽減す る機能 は,子 どもをその混乱 か. な治療 関係 は,言 語 を媒 介 に して治療者 と被 治療者 の. らま もる こ とになる。 プ レイセ ラ ピーで は,子 どもの. 間 に創 りだ され るcし か し,子 どもの場 合 には言語発. 傷 つ きの危険1生 が よ り少 な くてす むのであ る。. 達 が不十分 なため ,言 語 のかわ りに 「遊 びを介在 させ て治療 関係 を作 る」 こ とか ら,プ レイセ ラ ピー と呼 ば. 虐待 を受 けた子 どもに とって ,プ レイとは どんな活 ゜ 動 であ ろ うか。 フ レイの 意義 は ,「 身体 的活動 を通 じ. れて い る。. ての 身体 の鍛錬 ,エ ネ ルギー放 出 による緊張 の低減 な. 「虐待 を受 けた子 どもの プ レ イ セ ラ ピー」 とは,虐 待 の トラウマ性 の 出来事 を再 体験 しつつ ,そ の 時 の認. は驚 か され る。子 どもは ,演 技 と現実 の境界 を しっか. どの カ タル シ ス (鬱 積 した感情 や葛藤 を表現 によつて 発散 す る こ と),仲 間 との適切 な社 会 関係 の 維持 0確. 知 や感情 な どを解 き放 ち,そ の プ ロセ ス を繰 り返す こ とに よって , トラウマ性 の体験 の 自己へ の再統 合 を促. 立 ,規 則 ・正否 の基準 な ど道徳的活動 の学習 ,自 己統. す作業 で あ る。. もに とって プ レイは,子 ども自身が今 おかれて い る世. 制 の仕方 の 習得」 な ど多様 で ある。虐待 を受 けた子 ど. 本論 文 で は,「 虐待 を受 けた子 ど もの プ レイセ ラ ピ. 界 の状況 を理解す るため に苦 しみ を伴 いつつ 進 む もの. ー」 とい う療法 を 「子 ども 自身が プ レイ を通 して生 身. で あ る と同時 に,喜 び も伴 う活動 で もあ る。 プ レイが. の 自分 に傷 つ け られた ものが あ る と気 づ き,子 どもが. 本来 もってい る歓 喜 を もた らす 部分 で ,子 ども達 は守. セ ラ ピス トとの 関係性 に よつて 変化 した とい う実感 を. られて い る。 さらに,プ レイの 「不安」 を減 らす機能. もつための療法である」 と定義したい。. は,子 ども達 の こころ を守 って くれ る大切 な基盤 の ひ とつ で ある。. ②「虐待を受けた子どものプレイセラピー」の意義. で は,「 不安」 とは ,ど ん な もの な ので あ ろ うか。. Ann Cattanach(1993)は ,「 虐待 を受 けた子 どもの. 「恐 れ」 と同 じもの なのか 。「不安」 と「恐 れ」 は,こ. プ レ イセ ラ ピー」 につ い て ,「 プ レイは,子 ど も達 に. となる概 念 で あ る。「恐 れ」 は,ど こか ら くるか特 定. とって 自分 自身 の 世 界 を理 解 す るの に大 切 な道 で あ. で きるが ,「 不安」 は そ の対 象 を特 定 で きな い 。子 ど. る」 と強調 して い る。 さ らに,「 プ レイは,子 ど も達. もは,ど こか ら来 るのか分 か らなか った「不安」 をプ. petJ:求 心 性 を も って外 か. レイの なかで具体化す る こ とに よって 「恐 れ」 にす る. に とって の 向心 性. (cent」. ら中心 に向 か う)を 引 き出す もので あ り,子 ども達 は. ので はな い か。子 ど もは,「 不安」 の状 態 にあ る 時. 遊 ばなければな らな い」 と表現 して い るЭ. 単 に動物 レベ ルで 「不安」 に向 き合 ってい るのではな. ,. 臨床現場 での子 ども達 の プ レイは,劇 的 で ドラマ テ. くて ,人 間 の情動 の深 い所 で ,虐 待 された 「不安」 に. イックな もので あ る。 プ レ イルームで は,子 どもが本. 向 き合 ってい るので はないだろ うか。 この「不安」 な. 来 も ってい る 自然 な演 技 力 が 発揮 され る。子 ど も達. 状態 とは,子 どもが生 きて い る生 活 して い る場所 自体. は,象 徴 的 な演技 を使 って , 日常 の生 活 とは異 なるプ. がすで に「不安」 とい う情調 で 充 た されて い る状態 で.

(3) 南部真理子 :子 どもの虐待 における人間の関係性. 103. あ る。言 い換 えれば ,虐 待環境 に包 み込 まれて い るの. しか し,子 ども達 にとって「セラ ピス トとの対人関. だ。 この 「不安」 を何 らかのすが たのあ る「恐 れ」 に. 係」 を築 くのには困難が伴 う。なぜ なら,虐 待 を受け. 変 える こ とを可能 にす るのが プ レイであ る。. た子 どもは,こ れまでの人間関係 を繰 り返す傾向にあ. 子 どもの プ レイ表現 は,言 語 に よる 自己表現 に比 べ て ,よ り身体活動 に結 びつい て い る。 プ レイの 中で 自. るか らだ。子 ども達 の多 くは,セ ラ ピス トにもこれま での人間関係 で迫 って くる。. 由 に遊 ぶ こ とに よって :時 にはか な り象徴 的 な もの も. あ るネグレク トの子 どもは,「 ボケ」「死 ね」「あほ. 表現 され る。 このため ,感 情 の カ タル シス や感情 の象. んだれ」 とい う暴言 をセラピス トに長 い期間投げかけ. 徴化 に よって秘 め られて い た子 どもの感情 が 表 出 され. 続けた。 セラピス トはその暴言 に対 して受容的に関わ. た り,促 された り,展 開 された りす る。結果 として. り続けた。子 どもはセラ ピス トとの忍耐強い受容的な. ,. この 自己実現 が 治療効果 を持 つ こ とにつ なが る。 プ レイの 意 義 は,虐 待 を受 け た 子 ど もに とって の “自分 自身 を発 見す る旅 "で あ り,そ の 子 どもが ,過. 関係 か らこれまでの 自分 に気づ き,新 しい人間関係 を 感 じるのだ。 E・. ギ ル (1997)は ,「 虐待 を受 け た子 どもの プ レ. 去 ,現 在 ,未 来 を理 解 す る ひ とつ の 方 法 と もい え よ. イセ ラ ピー」 を 4つ の側面 か ら捉 えて い る。そ れ ら. う。. は,「 セラピス トとの対人関係」,「 自我 プ レイ」,「 セ マ テ イック・プレイ」,「 ポス トトラウマ テ イック・プ. ③ 「虐待 を受 けた子 どものプレイセラピー」の 治療計画. レイ」 である。. 「虐待 を受 けた子 どもの プ レイセ ラ ピー」 は ,虐 待. では,従 来捉 えられてい る「虐待 を受けた子 どもの. を受 けた子 どもの 回復 のための総合 的 な治療計 画 の一. プレイセラピー」 の特徴的 な側面 とは何 か。ギルの 4. 部 で あ る。 そ の 中でセ ラ ピス トの役割 は,子 どもの こ. つの側面 の中で,虐 待 を受けた子 どもに特徴的 だ とさ. ころの 回復 に寄 り添 う こ とである。 セ ラ ピス トの役割. れるのが トラウマ となった体験 の具体的,逐 語的な再. は,決 して虐 待 の詳細 を見 つ け出 した り,証 拠 や情 報. 現 を特徴 とするプレイである。ギルは, トラウマ に焦. を得 るため にその子 どもに圧 力 をか けた りす る もので. 点 をあてたアプ ローチか ら,「 ポス トトラウマ テ イッ. はない 。 もし子 どもが 自分 の生 命 を脅 か された り,生 命 を守. ク・プレイ」 の重要性 を指摘 してい る。西澤 (1994) も「ポス トトラウマ テイック 0プ レイ」 の重要性 を指. れ ない ほ どの危険 にさらされて い る こ とをセ ラ ピー で. 摘 し,セ ラ ピス トの介入の重要性 を示唆 してい る。 で. 表現 した時 には ,緊 急介入 の必要性 が ある。 セ ラ ピス. は,虐 待 を受けた子 どもに特徴的 とされる「ポス トト. トは,子 どもが これ以上 の虐待 を受 けない よ うに子 ど. ラウマ テイック・プレイ」 は,子 どものなかで どうこ. もを守 る義務 が ある。. ころの 回復 の 中 に位 置づ けられてい るのか。「 自我 プ レイ」 と「セマ テ イック・プ レイ」 を通 して考察 す. 2. プ レ イセ ラ ピー にお け る. 「子 どもとセラピス トとの関係性」. る。 まず ,「 自我 プ レイ」 は,自 我 機 能 の 発 達 や 自我 の 拡張 に応 じて生 じる もので あ り, と くに知的 に障害 を. 前節 の プ レイセ ラ ピーの 基盤 には,「 子 ども とセ ラ. 持 った子 どもや ,思 春期 の新 たな 自我 の認識 に意 味 が. ピス トとの対 人関係」 が あ る。本節 で は,事 例 (虐 待. あ る とされ る。 しか しなが ら,虐 待 を受 け た子 どもに. を受 け て施設入所 して い る子 ども達 )を 通 して ,そ の. お い て も,セ マ テ イック ・ プ レイやポ ス トトラウマ テ. 「子 どもとセ ラ ピス トとの対 人関係」 の 重 要性 につ い. ィック ・ プ レイの後 に しば しば この 「 自我 プ レイ」 が. て考察す る。. み られ る。 ある心理 的虐待 を受 けた子 どもは,母 親 に. セ ラ ピス トの子 どもへ の 関係性 は,受 容 的 で支持 的. 現実 で は言 えない暴言 を吐 い た後 , トラ ンプゲ ーム を. な ものであ る。他者 との 間 で虐待 的 な人 間関係 を繰 り. した り, しりと りをす るな どの年齢相応 の 「 自我 プ レ. 返 して きた子 ども達 に とって ,こ れ まで とは異 な った. イ」 がみ られた。 この こ とは,子 どもの 自我 が トラウ. 人間関係 を体験 す る こ とに よって ,今 までの人間関係. マ か らある程度 解放 されたか ,あ るい は次 なる段 階ヘ. を見 つ めて考 える機 会 となる。子 どもとセ ラ ピス ト双. の 中継 ぎの休憩 とも捉 え られる。. 方 が主 体 を も った 人 間関係 が ,プ レ イ を通 して 築 か. 次 に,「 セマ テ イ ック ・ プ レ イ」 とは ,テ ーマ を象. れ ,「 枠」 を関係性 で 築 い て い くこ とが セ ラ ピーの 要. 徴 的 に表現 したプ レイで あ り,象 徴 を含 む さまざまな. 素 として働 くので あ る。. テ ーマ を中心 に展 開す るプ レイの こ とで あ る。「象徴.

(4) 甲南女子 大学大学 院論集 第 2号. 104. 遊 び」 とも表現 され る。「ポ ス ト トラ ウマ テ イ ック ・. ^人 間科学研 究編. (2004年 3月. ). 「ポス トトラウマ テ イック・プレイ」 である。. プ レイ」 との違 い は,防 衛機制 に よって加 工 された も. 「虐待 を受 けた子 どものプ レイセ ラ ピー」 の場合. の になる こ とが 多 い ところである。 これは,虐 待 に よ. 再体験後の解放 と再統合 にあたってセラピス トの治療. って 曲げ られた 自己 イメー ジや他者 イメー ジや 両者 の. 的介入が特 に必要 となる。「虐待 を受けた子 どものプ. 関係性 で もある。 あ る ネグ レク トの子 どもは ,プ レイ. レイセラピー」 では,こ うした危険1生 に対 して,セ ラ. のは じま りで は,ほ とん ど育 てて もらってい な い母親. ピス トの治療的介入が求め られる ことが特徴的である. を現実 には存在 しない理想 の 母親 と して演技 した。 ま. とい える。 セラピス トの治療的介入を考 える時,そ の. た,あ る心理 的虐待 を受 けた子 どもは ,実 際 には もう. 基盤 に「子 どもとセラピス トとの対人関係」が存在す. い ない 父親 をテ ーマ に数 ケ月 にわたって箱庭 をつ くっ. る。他 の 3つ の側面 は,む しろ「子 どもとセラピス ト. た。 そ の子 どもは,あ る時 は父親 を自動車 事故 で入院. との 関係性」 に基盤 を置 くもので あ り,本 論文 では. させ ,ま たある時 は,雪 の道 で 父親 の運転す る車 を ス. 「子 どもとセラ ピス トとの関係性」 の上 に積み上 げ ら. リップ させ た。彼女 は,父 親 を何度 も災難 に合 わせ た. ,. れた 3つ のプレイであると捉 える。. 後 ,家 庭 に戻 した。子 ども達 は,実 際 には経験 して い. では,「 ポ ス トトラウマ テ イック・プ レイ」が子 ど. ない こ とを,虐 待 に よって影響 された対 象 イメー ジ と. もにさらなる無力感や恐怖感 を固定化する危険性 を回. して表現 して い たのだ。. 避す るには,セ ラ ピス トはどのように子 どもと関われ. 最 後 に,「 ポ ス ト トラ ウ マ テ イ ッ ク・ プ レ イ」 と. ば よいの か。鯨 岡 (1999)の 関係発達論 を引用す れ. は, トラウマ となった体験 の具体 的 ,逐 語 的 な再現 を. ば,「 表現 された トラウマ に何 とか対処 しようとして. 特徴 とす るプ レイで あ る。具体的 には ,子 どもが 人形. い る子 どもの心 を理解す るには,周 りの人が どんな思. を使 って ,自 分 が 受 けた虐待 の再現 をプ レ イす る こ と. いでその子 に関わっているか とい う関係性 に着 目す る. 等 があげ られ る。 あ る心理的 虐待 を受 けた子 どもは. ことが原点である」 と捉 えられ よう。「子 どもとセラ. ,. 家事 を娘 に切 り盛 りさせ る母 親 ,「 疲 れ た」 と一 日中. ピス トとの関係性」 に焦点 をお き,双 方 の関係性 を時. 言 つてい る母親 をお まま ご との 中で 2年 間 にわた つて. 間軸 を考慮 して育ててい くことによつて育 む ことであ. 演 じ続 け た。 この プ レイは子 どもに とつて どんな意味. ろう。 このことをプレイセラピーの「枠組 み」づ くり. が あ るのだろ うか 。実際 に過去 に体験 した こ とで はあ. にセラ ピス トと子 どもの双方が関わるとい うこととし. るが ,そ の 時 とは違 い ,子 ども 自身が そ の体験 を能動. て捉 えたのが本論文 の構想 である。. 的 にプ レイの なかで表現 して い るのだ。その時の 自分 を どこか か らか客観 的 になが め て い る と も捉 え られ. 本論文 では,虐 待 を受けた子 どもに虐待 の トラウマ 治療 を可能 にするセラ ピーの基盤 として 「子 どもとセ. る。. ラ ピス トとの関係性」 をお く。 さらに「子 どもとセラ の 4つ の プ レイセ. ピス トとの関係性」その ものが時間軸 の 中で変化 して. ラ ピーの 佃1面 の 中 で ,特 に虐 待 を受 け た子 ど もに特 徴. い くもので あ るとい う視点 に着 目し,「 虐待 を受 けた. 的 であ り,大 切 な側面 で あ るのが 「ポス トトラウマ テ. 子 どもの プ レイセ ラ ピー」 にお い て,特 殊 な「枠組. ィック 0プ レイ」 であ る と指摘 して い る。 この プ レイ. み」 を構築する。. 前 述 の よ うにギ ル (1997)は. ,こ. は ,表 現 された トラウマ に何 とか対処 しようとして い る子 どもの心理 の表 れである。 トラウマ を再現す る こ とが子 どもの 回復 につ なが る場 合 もある し,あ るい は 無力感 や恐 怖感 を強め , トラウマ を固定化 して しまう 場合 もあ る。ギ ル (1991)は. ,無 力感 や恐怖感 をセ ラ. 3「 虐 待 を受 け た 子 ど もの プ レ イ セ ラ ピー」 の「枠組 み」 の再構築 ―一虐待 を受けた子 どもの「枠組み」 づ くりへ の関与 ,事 例 を通 して一一. ピー を通 して修正で きる と指摘 して い る。 一 方 , くり な る無 力 感 や 恐 怖 感 を固定 化 す る危 険 性 も chethik. 本節 では施設 入所 をしてい る「虐待 を受けた子 ども のプレイセラピー」 について,そ の「枠組 み」 の特殊. (1989)に よって指摘 されて い る。. 性 について考察する。 これ までの精神医学や臨床心理. か え しの 「ポス トトラウマ テ イック・ プ レイ」 が さら. L.Terは , トラウマ 治療 の プ ロセ ス を,再 体験 (Rc― expe五 encc),解. とい う「三 つ の 初の. 放 (Rdcasc),再 統 合 (Reintegradon) R」. で 表 して い る。 この プ ロセスの最. Rに あ た るのが ,虐 待 を受 け た子 ど もの 場 合. ,. 学 の「枠組 み」 を「虐待 を受けた子 どものプレイセラ ピー」 においてその まま当てはめることは,問 題点が ある ことを指摘する。そ して子 ども自身が,セ ラ ピー の「枠組み」づ くりへ の関与す ることの意味 の考察 を.

(5) 南部真理子 :子 どもの虐待 における人間の関係性. 通 して,「 虐待 を受けた子 どものプ レイセ ラ ピー」 の 「枠組 み」 を再構築す る。. 105. と考 えるか らだ。関係性 を探 りつつ,親 も子 どもも主 体があ り,お 互 い に相手 の情動 を感 じるのに少 し待 つ ことので きる親子関係 は,「 枠」 の探 りあい を許す最. 臨床心理学 は,精 神医学 の精神分析 に源 を持 ち,両 者 は密接 に関係 してい る。そ して,精 神分析 と同様. ,. 臨床心理学で も,フ ロイ ト以来,セ ラピーの「枠」 は 守 られてい る。各 セ ラ ピーの 時間制 限 は,50∼ 60分. 初 の場 であ り時間であ ると示唆 される。 「虐待 を受 け た子 どもの プ レイセ ラ ピー」 をその 「枠組 み」 を明確 にせ ず にお こ な う こ と (具 体 的 に は,時 間,空 間,連 携 のあ り方)は ,セ ラピス トは既. として機能 し,こ こで話 された内容 は,セ ラピス トと. 存 の心理臨床 の「枠組 み」 の中では守 られないこ とを 意味する。 セラピス トは,変 化 し得 る「枠」 の中でエ. クライエ ン トの 間のみの秘密 とされて きた。それゆ. ネルギー を費や し,あ る時 は,そ の関係 に巻 き込 まれ. え,ク ライエ ン トは,こ ころの深 い ところまで表現す ることがで き,表 現す ることへ の抵抗 を取 り除 くこと. るか もしれない。 しか し,そ の巻 き込 まれる こと. 次的外傷性 ス トレス反応)こ そに関係性 を築 くヒン ト. が出来 る とされて きた。 しか しなが ら,こ れ は「外. があ り,「 枠」づ くりを通 して関係性 を築 い てい くこ. 枠」 で ある。「外枠」 は,ク ライエ ン トのあ りよ うに. とになる。従来 のセラピーの「枠」 ではない,子 ども. よって,変 化 し得 るものだ と考 える。なぜ ならば,治. 自らが関与す るセラ ピーの「枠」 が必要になると考 え. 療構造 は,両 者 の関係性 のあ り方 で決 まって くるもの. る。. で ある。 セ ラ ピーの場 は,「 自由 で保護 された空 間」. (二. だか らだ。 しか も,こ の「外枠」 とは,従 来,精 神医 学 の領域 にあるものである。 これが医学 である限 り ,. 子 ど も達 が プ レ イ セ ラ ピー を通 して , どの よ う に. 生物学的医学 モデルの領域 にある。 しか し,臨 床心理. 「枠 」 づ く りに関 わ って い くの か を ,「 虐待 を受 け た子. 学 は医学 ではない。 ここに「枠」 を新 たに思索す る理. どものプレイセラピー」 の形態 を述べ た後 ,具 体的な. 由 と意味があると考 える。. 事例 で検討す る。. 治療構造 は,両 者 の関係性 のあ り方 で決 まって くる. 本事例 のプレイセラピーの形態 については,心 理臨. ものであるとすれば,こ こで取 り上げる事例 のクライ エ ン トは,虐 待 を受けて施設入所 をしてい る子 ども達. 床 の現場 か ら従来の「枠組 み」 を超えているとの指摘. である。 ここで,子 ども達 のセラピー を受ける時の置. がある。心理臨床 の本来 の「枠組 み」 では,子 どもと 過 ごす空間はプレイルーム に限定 されてい る し,時 間. かれてい る状況 について考 えてみる。. は守 られな くてはならないからだ。 しか し,本 ケース. 虐待 を受けて施設入所 をしてい る子 どもにとって. の「虐待 を受けた子 どものプレイセラ ピー」 では,こ. 施設 は「家」 ではある。 しか し,本 来 の「家」 ではな. の「枠組 み」 を超 えてい くことにこそ意味がある。子. い。本来生 まれ育 った「家」 ではないが,生 活 の場所. ども達 は,「 セラピス トとの関係性」 のなかで,従 来. で あ り「家」 で あ る。子 ど もの 中 で 「家」 と い う. の「枠組 み」 を超 え,「 枠組 み」 自体 に関与 してい く. ,. 「枠」が,一 般家庭 の子 ども達 の それ とは異 なる。そ. のである。. れ故 ,本 ケースでは,セ ラ ピス トは,子 どもが育つ と ころの部分. (生 活臨床 )と. , トラウマケアー. (心 理臨. ① 「虐待を受けた子どものプレイセラピー」の形態と構造. 床 )の 双方 を考慮 しな くてはならない。 ヽ では,生 活臨床 と′ 亡 理臨床 の双方 を考慮す るとい う. 相談所 により施設入所 の緊急介入が必要 とされた子 ど. ことは,何 を意 味す るのか。子 どもを理解す る うえ. も達である。一週 間に一度 ,60分 のプ レイセ ラ ピー. ヽ で,生 活面 と′ 亡 理面 の双方 に関 わる とい う ことで あ. の中で子 どもと時間 と空 間を共有す る。通常 のプレイ. る。それ は,従 来 のセ ラ ピーの「枠」 は充分 で はな. セラピーのケースは,子 どもがプレイルームに保護者. い, とい うことも同時に意味 してい る。. と現 れ,終 了後 ,待 っている保護者 と家 に帰 る。 とこ. 本論文 のプレイセラピーの対象 は,虐 待 を受け児童. 虐待 を受けた子 ども達 は,人 間の関係性 の「枠」づ. ろが,虐 待 を受 け施設 に入所 して い る子 ども達 の場. くりに自らが関与で きる ことに気づ かずにいると考 え る。それ故 ,子 どもが 自分 自身で「枠」 を探 り,「 枠」. 合,保 護者 の代替者 は施設職員 であ り,帰 るべ き「イ エ」 は施設 である。入所施設を「家」 とい う捉 え方 を. がある ことを感 じ,「 枠」 を創造 してい くことが, 人. して い る子 ど も達 は,ど の くらい い るだ ろ うか ?. 間の関係性 を築 いてい くスター トである と考 える。 こ. 「家」 のイメー ジは,乳 児院か ら引 き続 き施設入所 の. の探 りあいの関係 こそが,最 初 の人間の関係性 である. 子 どもと途中で施設 の子 どもとなった児童 とでは異な.

(6) 人間科学研究編 (2004年 3月. 106. ). に,自 分 が 表現 した もの を思 い 出す可能性 もあ る。誰. る面 もあ ろ う。 本事例 で は,施 設 の職員が プ レイル ーム まで子 ども. か に知 られ るので は,と い う子 ど も自身 の 恐 れ もあ. を連 れて きて ,セ ラ ピス トが 施設 まで送 り届 ける とい. る。反面 ,施 設 内 の プ レイ ルーム環境 は,心 身両面 で. う形 を とって い る。通常 の プ レイセ ラ ピーは,プ レイ. 子 どもの 身近 に存在 し,求 め た い 時 にはそ こにあ る と. ルームの 中 だけ にセ ラ ピス トと子 どもの関係性 は 限 ら. い う側面が あ る。子 どもが プ レイの 中で出 して くる も. れて い るc児 童相談所 におけるプ レイセ ラ ピーの場 合. のは,別 空 間 の プ レイルームで表現 して くる もの とは. は,子 どもを施設職員 が連 れて きて ,一 緒 に帰 る とい. 異 な って くる。施設 内 の プ レイセ ラ ピーで は ,よ り現. う形態 を とって い る。送 り迎 えの 時 間 も含めて施設職. 実 の生 活臨床 的 な ものが表現 され ,ま た具体 的 な もの. 員 の 時 間 は大変割 かれ るが ,多 くの場 合 ,職 員 を独 り. が言語 で語 られ る傾 向 にあ る。 この こ とか ら,子 ども. 占めで きる こ ともあ って子 ども達 には好評であ る。. が育 つ ところの部分 (生 活 臨床 )は ,施 設 内 の プ レイ. 各 プ レ イセ ラ ピー毎 に 「子 どもとセ ラ ピス トの 関係 性」 をエ ピソー ド記述 し, スー パー ヴ イジ ヨンを受 け. セ ラ ピーで , トラウマ ケア ー (心 理 臨床 )の 部分 は. 別空 間 にあ る本 プ レイセ ラ ピーで な されて い る と捉 え. るcセ ラ ピス トは,ス ーパー ヴ イジ ヨンによつて子 ど. て い る。. ,. もへ の理解 を深 め るだけではな く,セ ラ ピス ト自身が. 施設 入所 の 虐待 を受 けた子 どもの 場 合 ,「 ポ ス トト. 不安 や二次 的 トラウマ か ら守 られ ,自 己理解や 自己洞. ラウマ テ イック・ プ レ イ」 の必 要性 は明 らかであ る。. 察 が深 ま り,セ ラ ピス ト自身 の 成長が促 され る。そ の 上 で ,三 ヶ月 に一度 ,ス ーパ ーバ イザ ー ,施 設職員. そ の意味 で も トラウマ ケア ーの観点 か ら,非 日常 的 な 時 間 と空 間 の確保 は重 要 であ り,虐 待 を受 けた子 ども. 各 セ ラ ピス トで事例研 究会 を持 つ c事 例研究会 でセ ラ. の場 合 は,セ ラ ピー空 間が 子 どもの 日常 と離 れて い る. ピス トは,そ れぞれ の子 どもの プ レイセ ラ ピーでの様. こ とが ,大 きな意味 を もってい る。. ,. あ る施設 入所 児 は,「 畳 一 畳 で い い か ら,自 分 の 場. 子 を報告 し,施 設職員 か ら,家 族 ,学 校 ,生 活 の様子 な どの報告 を受 けるc当 面 の課題 につい て話 し合 い. 所 が ほ しい」 と言 った。 自分 自身 の 空 間 を得 る こ とが. 点か らケ ース を分析 し,よ り望 ま しい 種 々の 角度 や視′. 難 しいの だ。 あ る子 どもは ,プ レイの 中 で ,畳 一畳程. 取 り組 み を検討 す る。本 ケ ースで は,プ レイセ ラ ピー. の スペ ース を ゴザ と椅子 で 囲 んで作 った。 そ の後 は じ. ,. も事例研 究会 も,施 設 とは異 な った場所 でお こなわれ. めて ,彼 女 はその 囲 いの 中 の 家族 ごっこ遊 びで ,実 母. るc. へ の 反抗 的 な態度 を演 じる こ とがで きた。彼女 は,一. プ レイセ ラ ピー を受 けて い る子 ども達 は,ス ー パー. 年 以上 にわたる人形遊 びの 中 で ,母 親 に逆 らった こと. バ イザ ー と施設 の 処遇会議 に よって ,プ レイセ ラ ピー. はない 。そ の彼女 が ,プ レイの 中 で 「 そんな ん言 うん. の 必 要性 を認 め られ た子 ど も達 で あ るcセ ラ ピス ト. だった ら,自 分 で ご飯作 って よ」 と激 しい 口調 で ご飯. は,ケ ース カ ンフ ァで ,子 どもの プ レイの意味 をよ り. を作 らない母親 に迫 った。現実 には,彼 女 は母 の病 を. 深 く理 解 す る こ と も多 い 。虐 待 を受 け た子 ど もの 場. 知 っていて ,決 して母 を責 め るこ とは しない 。 それ ど. 合 ,家 族 歴 や生育 歴 を知 らな い で 見立 て をす る こ と. ころか ,母 を気遣 い助 けて い る。 そ の彼女 が ,プ レイ. は ,非 常 に 困難 で あ る。 そ れ ぞ れ の 子 ど もの 家族 歴. ルーム とい う守 られた「枠」 の 中 で , さらに 自分 を守. は ,少 しず つ プ レイの 中で 明 らか になって い くもの も. る 「枠」 を創 ってか ら,こ ころが 言 い た い こ とを演 じ. あ るcし か し,プ レイの背景 には地域性 や何世代 に も. た。 この彼女 の 行 為 は,「 枠」 を子 ど も自身が試行錯. 渡 る歴 史 ともい うべ きものが あ り,子 どもだけ の 関 わ. 誤 して つ くる こ との意 味 をセ ラ ピス トに提 示 し,「 子. りで は,そ の全体像 は到底分 か らない。 どれだけ連携. ど もとセ ラ ピス トとの関係性」 の 中 で ,「 枠」 を考慮. して情報 を集 め られ るか とい う こ とも,子 どもを理 解. し,「 枠」 を再構築す る糸 口 となった。. す るの に大切 な要素 になって くる。 本事例 の プ レイル ーム は,施 設 か ら徒歩圏内 にある. 2プ レイセラ ピー時間 の 「枠 」. が ,施 設 とは別空 間 にあ るc子 ども達 の入所施設 に も. 通常 の プ レイセ ラ ピーの 時 間 の 「枠」 は 50分 か ら. 臨床心理 の プ レイルームが あ るc施 設 内 にお ける プ レ. 60分 で あ る。 これ には,セ ラ ピス トが集 中 で きる時. イセ ラ ピーは,入 所児す べ てが対 象 で あ り,プ レイル. 間が 50分 か ら 60分 で ある こ とが 背景 にある。. ーム も同 じ敷地 内 にあ る。そ の プ レイルームは ,日 常. A(心 理 的 虐 待 で ,施 設 入 所 の女 児 ,3年 間継続 )は ,最 初 の 半年 ,数 分 も違 わ ない ように守 り通 した。そ の後 ,試 行錯誤 を しつつ彼. 生 活 の 中で通 る部屋 で あ り,誰 もが予約が あれ ば出入 りす る こ との 出来 る部屋 で あ る。 部屋 の前 を通 るたび. 時 間 の 「枠」 に つ い て.

(7) 南部真理子 :子 どもの虐待 における人間の関係性. 107. ,入 所. だ。Aは ,「 それ は,部 屋 の 中 だけで しようが」,と. 当時,施 設 での居場所 を確保す るのに懸命 であった。. 「何 を言 ってるのよ,二 人だけの世界 のことなのに」. 女 な りの 時 間 の 「枠」 を創 ってい った。Aは. セ ラピーの開始時 は,自 分 か ら「あ っ, もう時間」 と. ,. と言 わんばか りに口を とが らせた。. 時間を気 にし,い い子 に撤 し,こ ちら側の 「枠」 を探. そ の後 ,Aは プ レイル ームの 中でセ ラ ピス トにお. り時間を守ろうとした。 しか し,関 係性 がで きて くる. んぶ をせがみ続けた。次第に「おんぶは,部 屋 の 中だ. にしたが い,そ の時間の「枠」 を「遅れて きたか ら時. け」,と 言 い切 っていた Aが ,プ レイルームのある建. 間延 ば して もいい よね」, とセラ ピス トの 目を覗 き込. 物 の入 り口までおんぶ されることをのば し出 した。毎. み時間 を延ばそ うとした。. 回 Aは ,「 ここでおんぶは終 わ り」 とばか りに玄関で セラピス トの背中か らポ ンと飛 び降 りた。手 をつ ない. この行動 を自分の存在感 を確 かめるために無意識 に 行 った手段 だ と解釈 してみ る。す る と,Aは ,そ の. で施設 まで歩 き,次 週 の確認 をす る と「またね」,と. 背景 にある感情 を理解 して欲 しかったのだろ う。 セラ. 現在 の家 に吸 い込 まれてい く。そ して,2年 半 が経過. ピス トは沈黙 して,時 間を厳守す ることよ り Aの 感. したある日,彼 女 はおんぶを卒業 した。. 情 に寄 り添 う よ うにこころが け た。そ の結果,Aは. これは,A自 身が 試行錯誤す る 中で,セ ラ ピス ト. これ を数回繰 り返す うちに,自 分 で時間の 「枠」 を決. と自身 との 関係性 で さ ぐり作 った空 間 の「枠」 であ. めていった。 セラピス ト側が押 し付 けた「枠」 ではな. る。A自 身が 関係性 にお い て探 った「枠」 で こそ. く,自 分 自身が決 めた「枠」 をある時 は Aが 自分 で. ,. 「枠」その ものに意味が生 まれると考える。. 越 え,ま た ある時 は,与 え られ決 め られ た「枠」 を. Aが 外す ことで探 った「枠」 で あ る。 これ は,セ. ラ. ピス トと Aと の 関係性 の 中で創 り上 げ られた「枠」. ④ 「枠」 に気 づ くこと1「 枠」 に関与す ること. である。そのセラピス トと Aと が探 り合 った時間の. 虐待 を受けた子 どもは,関 係性 によつて創造する こ とので きる「枠」 があることに気づ くことで,関 係性. 「枠」 づ くりこそが,最 初 の 基本 的 な関係 性 で あ っ. づ くりのス ター トライ ンに立 つ と考 える。子 ども達. た。最近 の Aは ,う そ をつい てまで時間 をのばそ う. は,「 枠」づ くりに参加す ることでセ ラ ピス トとの 関. とい うことはな く,「 あ ―,ま った く一 時間 って,す. 係性 をは ぐくんでい くことがで きる予感 を自分 の もの. ぐなんだか ら」,と あ きらめた ような顔 で 同意 を求 め つつ笑 っている。そ して時 には,「 帰 りた くない」 と. にする。虐待 を受けた子 どもは,こ れまでの虐待 の断. つぶやけるようにもなった。彼女 は,セ ラ ピス トにい. えない環境 の なかで,は じめか ら与 えられた「枠」 に 疲弊 し,自 分が他者 との関係性 によって 「枠」 を創造. ろい ろな行動 を出 しなが ら,SOSを 出す。 セ ラ ピス. す る機会 を持 てず にいたと示唆 される。. トは,そ の行動 を二人の関係性 で捉 え続ける。そ して. Aは ,施 設入所直後 ,ほ. とん ど 自己主張 が 出来ず. その度 に,彼 女 は人間の関係性 の新 たな傾J面 に気づい. に,動 く こ との な い 硬 い「枠」 を も っ て い た。A. てい くと感 じられる。. は,2年 を経 て,「 私 は, もの じゃない」,と は じめて 施設 で 自分 の気持 ちを言語化 した。 このことを,職 員. ③ プレイセラピー空間の 「枠」 通常 ,セ ラ ピーは,プ レイルームの 中だけでお こな. は,「 Aち やん,よ く自分 の気持 ちが言 えたね」 と肯 定 した。Aは ,「 枠」づ くりに自らが 関与 したのだ。. われる。 プレイルーム を一歩出れば,空 間 も「枠」 の. 虐待 を受けた子 どもは,こ の 自らが関係 で きる「枠. 外 である。プ レイの空間 (場 所)は ,そ れ自体が仮想 された空間であ り,ま た同時に,別 の世界へ の入 り口. 組 み」 の 中で,子 ども自身が 「枠」 を越 え,「 枠」 を 外 し,「 枠」 を創造 で きる ことで,セ ラ ピス トとの基. として も楔肺旨してい る。. 本的な関係性 を築 い てい くので ある。「子 どもとセ ラ. 一年 を経過 した ころ,Aは ,プ レイル ームの 中 で は,セ ラ ピス トに赤ちゃんのように抱 っこやおんぶを. ピス トとの対人関係」 でつ くった「枠」 である。 上記の理由か ら,本 ケースでは虐待 を受け施設入所. せがんだ。J・ ルーシュは,「 ことば による符号 は,知. を余儀 な くされてい る子 ども達 の基本的な関係性づ く. 的な訴えをもち,こ とばによらない符号 は情緒的な訴. りに,従 来 のプレイセラピーの「枠組 み」 と違 う「枠. えをもつ」 と表現 してい る。 この情緒的な訴えが出て しばらくして,セ ラピス ト. 組 み」 をもってあたってい る。そ して,子 どもとセラ ピス トの双方が主体 を持 っていることを感 じあい,そ. は 〈おんぶ して帰 ろ うか ?〉 と Aを 誘 った。プ レイ. の探 り合 う関係性 こそが ,人 間 の 関係性 を育 てる基 本. ルーム とい う空 間 の「枠」 を故意 にはず してみたの. であ る と考 える。.

(8) 108. プ レイセ ラ ピーは,虐 待環境 に生 活 して きた子 ども お わ り に. に,信 頼関係 は築 い て い ける もので ある, とい う こと を体験 させ て い く糸 口になる。 さらに将来 ,子 ども自. 白石 (1988)2は ,「 こ どもの 虐待 の ケ ー ス を考 える と,そ の環境 自体 に子 どもが 虐待 されて い るのであ る. 身が ,施 設 とい う生活 の場 にそ のセ ラ ピス トとの 関係 性 を もちか え り,般 化 して い くこ とが望 まれ る。. が故 に,ケ ー ス ワ ー クは は ず せ な い こ とは 明確 で あ り,問 題行動が あ るのは必 然 であるが 故 に,カ ウ ンセ リ ング もはずせ な い。 また,そ の状態が幼 い 時 に受 け た トラウマ で あれ ば あ るほ ど,無 意識 か らきて い る も. )王. 1)J′ ^ど もの関係発達論 鯨 岡 (1999)は ,lr^ど も を行 動 科 学 の 枠 組 み の 下 で. ,. 個 体 能 力 発達 に焦 点 化 す る限 り,「 こ ど もが発 達 す る」. ので あ り,心 理療法 も必 要 で あ る とい うこ とは,明 確. とい う とい う こ との 問 題性 を全 体 と して捉 え損 ね て し. 、 るいは′ 理療法 ひ とつ だけで 亡. ま う こ とを現 象学 の 視 点 か ら指摘 して い る。そ して 従 来 の 1川 体 能 力 の 発達 か ら関係 と して の 発 達 へ の 視 点. だ。大 人 の ケ ースは ,あ. 解決能力 が ある場 合 はパ ー ソナ リテ イーの 変容 や行動 変容 にい たるこ とが可 能 か も しれ ない , しか し,こ ど もの虐待 の ケ ース は この範疇 で はない」 と治療計画 に. ,. の 変換 を図 ろ うと して い る。鯨 岡 (1998,1999)は. ,関. 係 そ の も の が 時 間 軸 の 中 で 変 化 して い く もの で あ る し,関 係 は F^ど もの こ ころの 問題 で あ る と し,関 係 発. プ レイセ ラ ピーが必 要 で ある こ とを提起 して い る。本. 達 臨床 論 を提 唱 して い る。 こ ころ は,周 りの 人 に ど う. 論文 で は ,こ の 「虐待 を受 けた子 どもの プ レイセ ラ ピ. 思 わ れ るか で左 右 され る もの で あ る。 さ らに,子 ど も. ー」 の必 要性 とその意 義 を論 じた。 さらに,事 例 を通. の こ ころ は,そ の 子 ど もの もの で はあ るが ,周 りの 人. して時 間的経過 を考慮 しつつ ,「 子 どもセ ラ ピス トの 関係性」 の なか で ,子 ど も自 身 が プ レ イセ ラ ピー の 「枠組 み」 づ くりに関与す る こ との意 味 を考察 した。. の こ ころが 入 り込 んで そ の したが って ,周. F^の. こ ころ に な って い る。. りの 人が どん な思 い で そ の 子 に関 わ っ. て い るか とい う関係 に こ ころが 向 け られ るの で あ る。 ここに,関 係発達論 の原点が あ る。. 以上述 べ て きた こ とは,本 来 の心理 臨床 にお け るプ レイセ ラ ピーの 「枠 組 み」 (,台 療 構 造 )を 「子 ど も と セ ラ ピス トの 関係性」 に よって変 えて い くこ とに よつ て ,新 た な 「枠組 み」 (,台 療 構 造 )を 構 築 して い く と. 引用 文 献. (1)寺 見陽. r^「. こ ころ を育 て る人 間 関係」保 育 出版 社. 2001. (2)白 石 大 介 「対 人援 助 技 術 の 実 際」 創 元 社 1988. い うパ ラ ドキシカ ル な ものであ る。 参 考 文 献. 「虐 待 を受 け た 子 ど もの プ レ イセ ラ ピー」 の 目的 は ,信 頼感 ,安 心感 の もとで ,人 間 の 関係性 に自分 自 身 が関与 で きる こ とをまず気 づ かせ るこ とであ る。 そ の「枠」 に気 づ くまで ,子 どもは上 記 に述 べ たプ レイ セ ラ ピー (心 理臨床 )の 新 しい 「枠」 で守 られ るので あ る。 なぜ な ら,虐 待 を受 けた子 ども達 は ,生 活臨床 、 と′ 理臨床 の双方 を考慮 しつつ 育 て られる必 要が あ る 亡 か らであ る。 一 方 ,セ ラ ピス トは,こ れ まで の 心 理 臨床 の 「枠」 を超 えて ,既 にある親子 関係 や生活 の場 であ る施設 と の 関係 に も巻 き込 まれ る。そ の巻 き込 まれ る こ とこそ が 関 係 性 の 基 盤 で あ り,セ ラ ビス トと子 ど も とで 「枠」 を認識 しあ う こ とにな る。子 ど もは,セ ラ ピス トとの 「枠」 づ くりの過程 を通 して ,自 分 が他者 とも 関係性 を築 い て い ける とい う自らの力 を感 じ, 自分 の 力 を引 き出 して い くのだ。 まさに子 どもとセ ラ ピス ト は “ 育 つ ―育 て られ る"と い う関係 の生 命 サ イクル過 程 の 中 で ,共 に成長 して い くので ある。. ・Ann Cattanach, “ Play therapy with Abused Childrcn"Jessica Kingsley Publishers 1993. ・Ⅳl.Chcthik,. “ Techniques of Child Theraphy: Psychody―. namic Stratcgics"Guilbrd Prcss 1989(2nd cd.2000) ・D.M.ド ノ ヴ ァ ン 。D。 マ ッキ ン タ イア 「 トラ ウ マ をか か え た 千ど も達 」 pl‐ 澤 哲 訳 誠 信 書 房 2000 0E.Gil,“ Thc Hcaling Power of Play: Working with Abused Childrcn" Guilford Press 1991. ・エ レナ ・ ギ ル 「虐 待 を受 け た 子 ど もの プ レイセ ラ ピー 」 l■. l‐. 澤. 哲訳. 誠信書房. 1997. ヽ ・ ジ ュ デ イ ス .L.ハ ー マ ン (中 井 久 夫 訳 )「 ′ 亡 的外 傷 と 回復 」 み す ず 書 房. 1996. ・鯨岡 峻 「両義性 の発達心理学」 ミネルバ書房 1998 。鯨岡 峻 「関係発達論 の構築」 ミネルヴァ書房 1999 ・鯨岡 峻 「関係発達論 の展開」 ミネルバ書房 1999 。 澤 哲 「 F^ど もの虐待 ―子 どもと家族 へ の 治療 的 ア l■. l‐. プローチ」誠信書房 1994 ・ 澤 哲 「 トラウマの臨床心理学」金剛出版 1999 ・R.H.ス タム「1_1次 的外傷性 ス トレス」誠信書房 2003 ltl‐. 0斎 藤. 学 「封印 された叫び」講談社 1999.

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