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サービスエクセレンス:4.サービスエクセレンスに向けた産業界の取り組み -総合建設業

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Academic year: 2021

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(1)[サービスエクセレンス]. ④サービスエクセレンスに向けた. 基 応 専 般. 産業界の取り組み─総合建設業 小原好一. (一社)日本品質管理学会. 総合建設業とは. 建設事業のプロセスと品質保証. 建設業の使命と構造.  総合建設業のコア事業は,設計・工事の“請負”.  建設業が携わる工事は,公共インフラ整備,公共. である.しかし,品質保証の側面では,設計・工事. 施策に伴う建造物構築などの官庁工事と,民間企業. 段階のみならず,維持・管理段階に至るまで長期に. の事業推進に伴う事業用施設構築などの民間工事に. 及ぶ.加えて,建設構造物の安全性,利便性などの. 大別される.加えて,広域事業であるエネルギー関. 評価は,経年による変化,使用状況によってさまざ. 連施設,流通施設の建設など,社会の安全と発展へ. まで一定しないという特徴を有する..  建設事業のプロセスを図 -2 に示す.. の貢献を使命とする産業である. 産業として分類されている.その中でも,総合建. 総合建設業のサービスマネジメントと標準化 の動向. 設業の通称である“ゼネコン”は, “General Con-.  “建設請負”におけるサービスマネジメントは,. tractor”の略称であり,“Constructor”を意味して. 個々の企業が独自でノウハウを蓄積しているため,. はいない.すなわち,総合建設業は,インフラや建. 産業界全体での標準化の動きは見受けられないが,. 築などの“ものづくり”にフォーカスされがちであ. 新たなビジネスモデルとして進展しつつある“イ. るが,図 -1 の構造に基づき,地域社会への対応を. ンフラマネジメント”が国際社会に普及するに伴. はじめ,発注者,設計監理者,専門工事業者との調. い,標準化を視野に入れる必要があると想定してい. 整など,建設にかかわるリスクを請け負うことが本. る(表 -1).そこで,インフラマネジメントに求め. 質であり, “サービス”によって付加価値を創出し. られるサービスマネジメント,さらには標準化を進. ていることを冒頭に触れておきたい.. める上で活用すべきスキームなどについて,次章以.  日本標準産業分類では,建設業は製造業と異なる. 降で詳述したい. 発注者. ユーザ・地域社会. 設計監理者. 総合建設業者 (ゼネコン). 資材業者. 【施工会社】. 専門 工事業者. 専門 工事業者. 鉄筋・型枠・金物・内装等 専門工事に特化. 機械リース業者 設備 工事業者 電気・空調・ 給排水衛生等. 技能労働者・労務作業員. ■図 -1 建設業の構造. 敷地確保. 資金 調達. 許認 可. 基本 計画. 工事. 調査. 設計. 維持・管理. 事業 収支. 撤去 売却. 請負の範囲. ■図 -2 建設事業プロセス 4. サービスエクセレンスに向けた産業界の取り組み─総合建設業 情報処理 Vol.59 No.5 May 2018. 425.

(2) 小特集. Special Feature. ビジネスモデルの変化. るゼネコンが,新たな成長を目指すべく注力したビ. 建設市場の変遷. 内閣府はコンセッションを「利用料金の徴収を行う.  総合建設業は,建設リスクおよび品質保証などの. 公共施設について,施設の所有権を公共主体が有し. 側面で,発注者の期待に応えることにより対価を得. たまま施設の運営権を民間事業者に設定する方式」. ているが,収益力の安定性を課題としている.その. と示しており,空港・道路・上下水道などの公共イ. 要因の 1 つとして,景気の変動が挙げられる.建設. ンフラ運営を民間企業が担い,収益を得るビジネス. 事業は大規模な投資を伴うことから,市場の規模は. モデルを指している.我が国においても,2016 年の. 景気変動の影響を受けやすい . そして,市場縮小に. 仙台空港を皮切りに,関西国際空港・大阪国際空港,. 端を発したダンピング競争が熾烈を極め,収益を悪. 愛知県有料道路などの民間企業による運営がスター. 化させた歴史を有する.. トし,新たな市場としての成長が期待されている..  現在の建設市場は,東日本大震災からの復興,ア.  コンセッションに加えて,太陽光・風力などの再. ベノミクスの推進などを背景として活況を呈してい. 生エネルギー事業に“事業者”として参画する総合. るが,将来的には人口減少,社会の成熟化に伴い,. 建設会社が近年増加している.この潮流は,総合建. 再び縮小に転じると想定されている(図 -3 参照).. 設業の事業領域が,従来の設計・工事からライフサ. 維持・更新を含めた一定の需要は見込まれるものの,. イクル全般へ,さらには建造物の利用価値向上の観. 再び訪れる景気変動の影響を受けず,安定的な収益. 点から公共サービスや地域活性化などに拡大し,イ. を確保可能なビジネスモデルを確立することが喫緊. ンフラマネジメントの市場が萌芽しつつあることを. の課題となっている.. 意味している.そして,変化の先にあるビジネスス. ジネスモデルの 1 つが“コンセッション”である.. テージにおいて,より一層必要となるキーサクセス. 新たなビジネスモデルの進展. ファクタは,インフラユーザおよび社会の期待に応.  社会資本整備の歴史が古い欧州では,日本に先ん. え,さらには期待を超える“建設サービスの企画力”. じて建設投資が伸び悩んだ.その欧州に拠点を構え. にあることは論を俟たない.. ■表 -1 総合建設業のサービスマネジメントの動向 分類 建設請負. インフラ マネジメ ント. 426. 事業 領域 設計・ 工事. ライフ サイク ル全般. サービスマネ ジメント(例) ・地域社会への 対応 ・発注者,設計 監理者,専門 工事業者など との調整 ・公共サービス ・地域活性化. 標準化の動向 個々の企業が独自でノウ ハウを蓄積. B2S への進化  ここで重視すべきは“顧客”の定義である.従来 は“発注者”を顧客と位置付けることが多かった が,建造物のライフサイクル,さらには建造物の利 用を通した公共サービス,地域活性化を見据えると, (兆円). 国際社会への普及に伴い, 今後標準化が進展する可 能性 ・構造化:サービス標準 化スキーム導入 ・エクセレンス化:TQM の活用 ・サービスプロセス提供 (モニタリングなど): ISO 55001 の活用. 情報処理 Vol.59 No.5 May 2018 小特集 サービスエクセレンス. 82兆円(1992年). 2016年度まで:建設投資見通し(2016年国交省) 2017年度以降:独自の予測. 41兆円 (2010年). バブル,バブル崩壊 50. 55兆円 (2017年:見込). 公共工事削減. 維持・更新を含めた一定の需要 1980. 1990. 2000. ■図 -3 日本の建設市場の推移. 2010. 2020. (年度).

(3) “ユーザ” “社会”も顧客であることは必然である.. IT システムの構築. 企業間取引の視点で捉えると,従来の“B2B”のビ.  建設事業のライフサイクル全体を視野に入れる場. ジネスモデルが,発注者・ビジネスパートナーとの. 合に構築すべき IT システムは,設計,工事,維持. 共創によりユーザや社会に価値を提供する“B2B2P. 管理といった単独のプロセスにとどまることなく,. (People) ” , “B2B2S(Society) ” ,さらには社会的. ライフサイクル全体を包括するとともに,“ものの. 課題の解決を志向する“B2S”へと進化していく可. 流れ”と“情報の流れ”を一致させて,集積・分析. 能性を秘めている.. したデータを次工程へのインプット情報として活か.  上述のビジネスモデルの進化を実現するには,. すことが求められる.. ユーザの利用状況をモニタリングし傾向を分析の上,.  これにより,ライフサイクルのトータルコスト低. 新たなサービスの開発に結実させるマネジメントシ. 減,建造物の長寿命化,顧客の利用状況に応じた改. ステムの構築が前提となる.. 善などのインプット情報を“みえる化”することが 可能になる.. マネジメントシステムの構築 アセットマネジメントシステム. サービス標準化への課題.  ユーザの利用状況などをモニタリングするシス. 標準化のインプット. テ ム を 構 築 す る 指 針 と し て, ア セ ッ ト マ ネ ジ メ.  総合建設業のサービスマネジメントシステムの現. ントシステムを活用することが有効と考えている.. 状は,“建設請負”“インフラマネジメント”のいず. アセット(asset)は“資産”を意味し,資産の. れにおいても,個々の企業が独自でノウハウを蓄積. 対象として道路・橋・上下水道などの社会インフ. している段階にあるが,特に“インフラマネジメン. ラが含まれている.そして,資産の適切な運用・. ト”のエクセレンスモデルの構築に向けて,サービ. 維持管理を目的として, 2014 年 1 月 10 日に国際. スプロセス提供の側面では ISO 55001 などがベン. 規格 ISO 55000 シリーズが発行された.このうち. チマークの対象になる.また,ライフサイクルマネ. ISO 55001 は,アセットマネジメントシステムの. ジメントを実践している企業などの“現状のサービ. 要求事項を規格化している.その要諦は,組織目. ス”を,「サービス標準化スキーム」(図 -5)に基. 標を具体的なアセットマネジメント計画にブレー クダウンし,パフォーマンスを評価の上,継続的 に改善する“PDCA サイクル”にある(図 -4 参照).  ISO 55001 の要求事項に基づき,アウトカム指 標をモニタリングする測定方法を定め,パフォー マンスを評価する.たとえば“道路”では,「渋 滞発生による利用者の損失時間」「路面の健全度」 「死傷事故件数」などである.これらのデータを 正確に,タイムリーに,手間をかけずに把握する. 1.適用範囲 2.引用規格 3.用語および定義 Plan 4. 組織の状況 5. リーダシップ 6. 計画 7. 支援 Act 10. 改善. Do 8. 運用. Check 9. パフォーマンス評価. ことが肝要であり,そのためには,IT を駆使し てビッグデータを集積の上,解析するシステムが 必要不可欠になる.. ■図 -4 ISO 55001 要求事項の構造. 4. サービスエクセレンスに向けた産業界の取り組み─総合建設業 情報処理 Vol.59 No.5 May 2018. 427.

(4) 小特集. Special Feature. づき分解・抽象化・統合化することが,標準化への.  しかし,IoT の普及により,顧客の利用状況など. 第一歩になる.. が,インターネットをプラットフォームとして把握 できるようになり,さらにビッグデータから顧客の. サービスエクセレンスに必要な概念─ TQM. 傾向を論理的かつ効率的に解析・分析する手法も日.  続いて,サービスエクセレンスを具現化するため. 進月歩の進化を遂げている.. に,TQM(Total Quality Management)の活用を.  故に,サービスエクセレンスを創出する経営手法. 視野に入れたい.. として TQM を効果的に活用可能な時代が,新たな.  TQM は,PDCA,ファクトコントロール,再発. 産業革命とともに訪れている.. 防止,未然防止に代表される“QC(Quality Control)的なものの見方,考え方”で, “QC 手法”を. 国際社会の発展への貢献. 活用することを特徴としている.そして TQM は,.  欧州に端を発したコンセッションは,今まさに日. “ものづくりの品質”のみならず, “経営の質向上”. 本で導入が進み,将来的にはアジアにおいても普及. を目的としているため“サービス品質”も範疇に含. していくと考えられている.この潮流を見据えると,. まれるが,当該分野への普及は道半ばである.その. 建設事業を起点とした公共サービス,地域活性化な. 主な要因として,サービスに関する情報(言語情報・. どを実現する“サービスマネジメントシステム”の. 視覚情報など)は抽象的であるとともに,情報が人. 社会実装化は,我が国のみならず,国際社会の発展. に蓄積され,組織としての集約が困難であった点が. に貢献すると確信している.. 挙げられる..  故に,(一社)日本品質管理学会を調査・研究の 場として,他産業の動向に学びながら,その実現に 努める所存である. 教育化・ 人財育成化. C. 科学化. A. ②概念モデル ・サービス産業アーキテクチャ類型 ・サービス要素 国際標準 ・サービス提供プロセス 地域標準 ・用語の定義 国家標準 ・顧客のベネフィット. 現状の サービス. 分解 抽象化 統合化. ①サービス類型. ③評価方法論の 開発 ・サービス提供者観点 国際標準 ・サービス利用者観点 地域標準 国家標準 ・社会的観点(制度・倫理). ■図 -5 サービス標準化スキーム(抜粋). 428. 情報処理 Vol.59 No.5 May 2018 小特集 サービスエクセレンス. 参考文献 1) ISO 55001 要求事項の解説編集委員会編,ISO 55001:2014  アセットマネジメントシステム 要求事項の解説,日本規格 協会 (2015). 2) 水流聡子:「サービス標準化スキーム」の提案,第 1 回サービ ス標準化フォーラム要旨集 (2016). (2018 年 1 月 31 日受付). 小原好一 1972 年埼玉大学理工学部卒業,同年前田建設工業(株)入社, 2009 年代表取締役社長,2016 年代表取締役会長,現在に至る. (一社) 日本品質管理学会会長..

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