個人所得税のイロージョンの計測
著者
鈴木 健司
雑誌名
経済学論究
巻
73
号
1
ページ
29-49
発行年
2019-06-20
URL
http://hdl.handle.net/10236/00028163
個人所得税のイロージョンの計測
Measurement of Erosion
in the Individual Income Tax
鈴 木 健 司
This paper measures the erosion of income tax. The income tax erosion is a phenomenon in which tax revenue to be collected is not actually collected. It affects the ability to raise income tax revenue. This paper also analyzes the change in erosion caused by the change in income tax system. The analysis results show that the erosion has become smaller in the high-income class as the tax rate has been revised.
Kenji Suzuki
JEL:H20, H24
キーワード:所得税制、税収のイロージョン、所得控除、税額控除
Keywords:income tax system, tax erosion, tax deduction, tax credit
I はじめに
近年、所得税制の改正がこれまでになくなされるようになった。特に、給 与所得控除や、各種所得控除、そして税率の改正である。これらの改正は税負 担の公平を図ることや、社会・経済政策的な目標の達成をすることが目的であ る。しかしながら、近年の所得税制の改正は、所得税収入の増加に結びつくも のが多い。また、所得税制の改正は、近年注目されている租税支出の議論とも 大きく関連する。租税支出は政府の直接支出と同様の効果をもつことから、租 税支出の計測は政策効果の評価から関心がもたれている。 本稿では、租税支出の政策効果を検討するのではなく、租税支出そのものを 計測することを目的とする。すなわち、租税支出とされている所得税収入のイincome tax、以下CITとする)のもとで、どれだけの所得税収入のイロージョ ンが存在しているのかを、所得階級別に計測する。所得税収入のイロージョン はまた、所得税の税収調達能力の議論とも関連する。近年、経済環境や労働力 人口の減少から所得税収入の減少が指摘されているが、所得税制の変更によっ ても所得税収入は増減する。本稿では、現行の所得税制のもとでのイロージョ ンの他に、所得税制の変更によりイロージョンの変化についても分析を行う。 わが国の所得税収入のイロージョンや類似の計測は数多くあるが、代表的 な研究は石[1979]によるものである。本稿でも石の研究に依拠して2017年 度の所得税収入のイロージョンを計測する。まず、Ⅱで、2つの所得税収入の イロージョンを説明し、さらに所得税収入のイロージョンと租税支出の関連に ついて説明する。次に、Ⅲで課税ベースからのイロージョンを計測し、Ⅳで課 税ベースから税額を算定するときに生じるイロージョンを計測する。Ⅴでは近 年の所得税制の改正による所得税収入のイロージョンの変化を分析する。そし て、Ⅵでは、本稿での計測や分析から得られた結果をまとめる。
II 所得税収入の 2 つのイロージョン
所得税収入のイロージョンとは、所得税制度で認められた課税方法におい て、徴税されるべき税収が実際には徴収されないことをいう。したがって、イ ロージョンは脱税(tax evasion)とは異なった概念である。 石[1979]は、所得税収入のイロージョンを2つのタイプにわけて分析し ている。すなわち、課税ベースからのイロージョンと課税ベースから税額を算 定するときに生じるイロージョンである。 わが国の所得税は、収入から必要経費などを控除した所得に各種所得控除 を差し引くことで課税ベース(課税所得)を算出し、それに税率を乗じた後に 税額控除を差し引いて税額を算出する。ここで、課税ベースが所得控除の範囲 や水準によって浸食され、本来徴税されるべき税収が実際には徴収されない 現象を指摘することができる。これが課税ベースからのイロージョンである。 もっとも、課税ベースを決定づける所得控除は、税負担の公平を図ることや、 社会・経済政策的な目標を達成するために設けられている制度であるので、所得控除による課税ベースが浸食されて生じる所得税収入のイロージョンが直ち に問題になるとは言えない。しかしながら、全ての所得控除が税負担の公平を 満たすようなものでは無いかもしれないし、社会・経済政策的な目標を上手く 達成せしめないことも考えることができる。もし、そうであるなら、課税ベー スからのイロージョンは問題を引き起こすことになる。 また、所得税収入のイロージョンには、課税ベースから税額を算定すると きに生じるイロージョンも考えることができる。このタイプのイロージョンに は、特定の所得にかかる税の優遇策などがあげられる。特定の所得にかかる税 を優遇することの本来的な趣旨が社会・経済政策的な目標を達成せしめるため にあるのなら、イロージョンは問題にならないかもしれない。しかし、このタ イプのイロージョンもまた、税負担の公平や社会・経済政策的な目標に合致し ないのであれば問題になる。 つまり、所得税収入のイロージョンが問題となるのは、イロージョンの要因 が税負担の公平に資するものであるか、あるいは社会・経済政策的な目標を達 成せしめるものであるかということになる。このことは、政府が行う政策の租 税減免を通じた支出、すなわち租税支出と同じように捉えることができる1)。 租税支出は租税制度に組み込まれた各種の免除や控除、特別措置などであり、 それは政府が政策を達成するための補助金や奨励金などの直接支出と同様の効 果をもつと捉えられている。 租税支出を補助金や奨励金などの直接支出と同じように捉えるならば、当 然、その数量的な大きさや、政策効果が問われることになる。しかし、租税支 出を計測するためには、その範囲の決定において価値判断に委ねられるものが ある。そのため、実際に租税支出を計測するためには、ある種の価値判断を前 提におくことが必要になる。そこで、近年の租税支出の計測では、各種の免除 や控除、そして特別措置についてとらえることが多い2)。 確かに、租税支出の計測においては、ある種の価値判断を前提とすることが 1) 租税支出は surrey[1973]によって提唱された概念である。石[1979]、上村[2008]、横山 [2017]に詳しい。 2) 上村[2008]
必要になる。所得税の場合だと、CITの概念がその一つになるだろう。CIT が望ましい所得税であるかどうかについては議論の余地は十分にある。しか し、本稿では、所得税の税収調達能力について検討するという考えから、CIT の概念を用いて租税支出、すなわち所得税収入のイロージョンを計測する。所 得税収入のイロージョンを計測することは、一方で租税支出の議論にある財政 の透明性とも結びつき、税負担の公平を検討する上でも欠かせない。 本稿では、石[1979]の研究に依拠して、課税ベースからのイロージョンと 課税ベースから税額を算定するときに生じるイロージョンを所得階級別に計測 する。計測の手順に関しては、図1のように行う。 図 1 イロージョンの概念図 CITの課税ベース 所得控除前の所得 現実の課税ベース 所得控除 課税上の優遇措置 税収 ×税率 税額控除 出所)石[1979]の p.30 の第 1.1 図を筆者が加工 CITの課税ベースは統計データを使用して所得控除前の所得に除外項目と 呼ばれる所得税制上の優遇措置や特定控除を加えることで計測する。所得控除 前の所得や除外項目は統計データからそのまま数値を得るものがあるが、一部 については数値をある種の仮定のもとで按分計算しなければならないものもあ る。また、石[1979]が計測した時から、制度変更がなされたものや、使用す るデータが変わったものがあるので、その点についても現在の制度やデータに 置き換えて計測を行う。
III 課税ベースからのイロージョン
本節では、2017年度度の所得税制において、所得控除前の所得や所得控除 によって生じる課税ベースからのイロージョンを所得階級別に計測する。主に使用する統計データは国税庁『申告所得税標本調査』(以下、『申告所得』 とする)、『民間給与実態統計調査』(以下、『民間給与実態』とする)、そして 『国税庁統計年報』(以下、『国税統計』とする)である。これらの統計データ のうち、もっとも使用するのは『申告所得』である。ただし、申告納税を行わ なかった者については『申告所得』の対象外であるので、『民間給与実態』や 『国税統計』などを適時使用する。 なお、『申告所得』と『民間給与実態』とでは所得階級が異なる。そこで、両 統計データに共通している100万円以下から2,000万円超までの12階級に所 得階級を統一している。特に断りを入れないかぎり使用した統計データは2017 年度のものであるが、他の年のものを使用する場合にはその都度記述する。 1 所得控除前の所得の計測 わが国の所得税制度では所得の性格によって所得を10種類に区分している。 また、全ての所得を合算して税額を算出する総合課税制度を原則としつつも、 他の所得と合算しないで税額を算出する分離課税制度も認めている。さらに、 徴税方法によって納税者が自ら所得を申告して納税する申告納税制度や、所得 の支払者によって納税が完結する源泉徴収制度がある。 課税ベースによるイロージョンの計測にあたって、10種類の所得を申告納 税(総合課税で申告納税するもの)、分離課税(申告分離、源泉分離)、そして 源泉徴収の3つのカテゴリーにわける。申告納税に該当するカテゴリーには、 事業所得、不動産所得、一時所得、山林所得、譲渡所得のうち総合譲渡所得、 雑所得がある。分離課税に該当するカテゴリーには、退職所得、利子所得、配 当所得、譲渡所得のうち土地建物の譲渡所得、株式等の譲渡所得がある。そし て、源泉徴収に該当するカテゴリーに該当するのは給与所得である。 申告納税のカテゴリーに含まれる所得は、『申告所得』からそのまま数値を 得ることができる。また、分離課税のカテゴリーに含まれる分離短期・長期譲 渡所得も『申告所得』からそのまま数値を得ることができる。しかし、退職所 得、利子所得、配当所得、株式等の譲渡所得は『申告所得』にある数値をその まま使うことができない。これらの所得については次のように計測した。
①退職所得 『国税統計』から退職所得として支払った額を所得階級別に按分した。 ②利子所得 利子所得の総額は『国税統計』から得られるが、個人分と法人分の受取り の合計であるので、個人分だけを抽出する3)。 ③配当所得 前述した利子所得と同じように個人分と法人分の受取りから個人分だけ を抽出する。国税庁『会社標本調査結果(国税統計から見た法人企業の実 態)』から法人企業数と会社形態別の数値がわかる4)。また日本取引所グ ループのwebサイトより2017年度末の一部、二部、マザーズ、JASDAQ に上場している会社数がわかる。これらの会社数で『法人企業の実態』に ある総資本金額を按分し、その按分した数値を使い『国税統計』にある配 当所得をさらに按分する。最後に日本銀行『資金循環統計』から得た上場、 非上場株式の個人(家計)所有比率で配当所得の個人受取り分を抽出した。 ④株式等の譲渡所得 株式等の譲渡所得は『申告所得』の数値と『国税統計』の源泉徴収選択口 座内調整所得金額等の数値を足し合わせた。 源泉徴収のカテゴリーに給与所得については、『民間給与実態』から民間給 与についての数値を得ることができる。ただし、官公庁の給与所得については 『国税統計』に総額しか記載されていない。そのため、官公庁給与については 民間給与と所得階層別の分布が等しいと仮定し、民間給与所得の階級値を使用 して所得階層別に按分した。 以上のようにして求めた2017年度の所得控除前の所得は、286兆8,555億 3) 抽出にあたっては日本銀行『資金循環統計』から得た個人(家計)所有比率を用いた。公債、社 債、銀行預金、銀行以外の金融機関の預貯金の利子はそれぞれの所有比率を用いた。割引債の償 還差益、特定公社債等の利子等(源泉徴収義務特例分)については、公債、社債、預金の平均所 有比率を用いた。それ以外のものについては全て個人(家計)のものとした。 4) 本稿を執筆時において 2017(平成 29)年度のデータが公表されていなかったので、ここでは 2016(平成 28)年度のデータを使用した。
円であり、表1にまとめている。給与所得は所得控除前の所得のうち83.4%を しめていることがわかる。 表 1 2017 年度の所得控除前の所得 ༢䚷㻝㻜൨ ㏥⫋ᡤᚓ Ꮚᡤᚓ 㓄ᙜᡤᚓ ศ㞳▷ᮇ䞉㛗ᮇㆡΏᡤᚓ ᰴᘧ➼䛾ㆡΏᡤᚓ ィ Ẹ㛫 ᐁබᗇ ィ 㻭 㻮 㻯 㻰 㻱 㻲 㻳 㻴 㻵 㻶 㻷 㻝㻜㻜௨ୗ 㻞㻤㻡㻚㻜 㻜㻚㻟 㻤㻚㻢 㻞㻡㻚㻝 㻠㻚㻞 㻢㻚㻠 㻠㻠㻚㻡 㻟㻘㻟㻤㻠㻚㻞 㻠㻞㻣㻚㻠 㻟㻘㻤㻝㻝㻚㻢 㻠㻘㻝㻠㻝㻚㻝 㻞㻜㻜௨ୗ 㻝㻘㻡㻠㻢㻚㻡 㻟㻚㻣 㻞㻥㻚㻠 㻞㻟㻚㻟 㻞㻜㻚㻤 㻞㻜㻚㻞 㻥㻣㻚㻡 㻥㻘㻣㻠㻤㻚㻤 㻝㻘㻞㻟㻝㻚㻞 㻝㻜㻘㻥㻤㻜㻚㻜 㻝㻞㻘㻢㻞㻟㻚㻥 㻟㻜㻜௨ୗ 㻝㻘㻥㻤㻤㻚㻡 㻝㻠㻚㻞 㻠㻜㻚㻡 㻠㻞㻚㻣 㻟㻣㻚㻠 㻟㻝㻚㻠 㻝㻢㻢㻚㻞 㻝㻥㻘㻣㻝㻥㻚㻡 㻞㻘㻠㻥㻜㻚㻠 㻞㻞㻘㻞㻜㻥㻚㻥 㻞㻠㻘㻟㻢㻠㻚㻢 㻠㻜㻜௨ୗ 㻝㻘㻢㻤㻠㻚㻞 㻟㻤㻚㻣 㻠㻞㻚㻣 㻡㻠㻚㻜 㻠㻥㻚㻞 㻟㻣㻚㻞 㻞㻞㻝㻚㻥 㻟㻜㻘㻠㻜㻝㻚㻥 㻟㻘㻤㻟㻥㻚㻡 㻟㻠㻘㻞㻠㻝㻚㻠 㻟㻢㻘㻝㻠㻣㻚㻡 㻡㻜㻜௨ୗ 㻝㻘㻟㻡㻡㻚㻠 㻡㻣㻚㻟 㻠㻞㻚㻟 㻢㻠㻚㻢 㻡㻥㻚㻥 㻠㻞㻚㻝 㻞㻢㻢㻚㻞 㻟㻞㻘㻣㻜㻢㻚㻜 㻠㻘㻝㻟㻜㻚㻡 㻟㻢㻘㻤㻟㻢㻚㻡 㻟㻤㻘㻠㻡㻤㻚㻝 㻢㻜㻜௨ୗ 㻝㻘㻜㻢㻠㻚㻤 㻥㻡㻚㻣 㻟㻤㻚㻥 㻣㻠㻚㻤 㻢㻡㻚㻠 㻠㻠㻚㻥 㻟㻝㻥㻚㻢 㻞㻣㻘㻞㻢㻠㻚㻟 㻟㻘㻠㻠㻟㻚㻟 㻟㻜㻘㻣㻜㻣㻚㻡 㻟㻞㻘㻜㻥㻝㻚㻥 㻣㻜㻜௨ୗ 㻤㻡㻣㻚㻥 㻥㻤㻚㻣 㻠㻞㻚㻥 㻤㻞㻚㻞 㻢㻥㻚㻣 㻠㻤㻚㻢 㻟㻠㻞㻚㻝 㻞㻜㻘㻞㻝㻤㻚㻝 㻞㻘㻡㻡㻟㻚㻠 㻞㻞㻘㻣㻣㻝㻚㻡 㻞㻟㻘㻥㻣㻝㻚㻡 㻤㻜㻜௨ୗ 㻢㻤㻢㻚㻜 㻝㻝㻜㻚㻟 㻠㻞㻚㻟 㻣㻥㻚㻠 㻣㻝㻚㻣 㻠㻣㻚㻡 㻟㻡㻝㻚㻞 㻝㻡㻘㻥㻟㻢㻚㻤 㻞㻘㻜㻝㻞㻚㻣 㻝㻣㻘㻥㻠㻥㻚㻡 㻝㻤㻘㻥㻤㻢㻚㻣 㻝㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻝㻘㻜㻞㻜㻚㻤 㻞㻠㻞㻚㻤 㻢㻜㻚㻟 㻝㻠㻥㻚㻥 㻝㻠㻣㻚㻝 㻥㻞㻚㻞 㻢㻥㻞㻚㻟 㻞㻜㻘㻤㻡㻝㻚㻝 㻞㻘㻢㻟㻟㻚㻟 㻞㻟㻘㻠㻤㻠㻚㻠 㻞㻡㻘㻝㻥㻣㻚㻡 㻝㻘㻡㻜㻜௨ୗ 㻝㻘㻡㻞㻣㻚㻢 㻡㻞㻡㻚㻝 㻝㻡㻤㻚㻣 㻟㻡㻟㻚㻡 㻟㻡㻣㻚㻜 㻞㻜㻜㻚㻞 㻝㻘㻡㻥㻠㻚㻡 㻝㻥㻘㻞㻠㻟㻚㻡 㻞㻘㻠㻟㻜㻚㻟 㻞㻝㻘㻢㻣㻟㻚㻤 㻞㻠㻘㻣㻥㻡㻚㻥 㻞㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻥㻞㻡㻚㻟 㻡㻞㻜㻚㻟 㻝㻟㻜㻚㻥 㻟㻥㻜㻚㻤 㻟㻝㻣㻚㻥 㻝㻢㻡㻚㻤 㻝㻘㻡㻞㻡㻚㻣 㻡㻘㻤㻟㻢㻚㻣 㻣㻟㻣㻚㻝 㻢㻘㻡㻣㻟㻚㻤 㻥㻘㻜㻞㻠㻚㻥 㻞㻘㻜㻜㻜䚷㉸ 㻟㻘㻝㻤㻜㻚㻡 㻢㻘㻤㻡㻝㻚㻤 㻝㻘㻝㻤㻢㻚㻥 㻢㻘㻤㻣㻠㻚㻡 㻟㻘㻡㻝㻠㻚㻡 㻡㻘㻥㻣㻢㻚㻟 㻞㻠㻘㻠㻜㻠㻚㻜 㻤㻘㻠㻜㻡㻚㻥 㻝㻘㻜㻢㻝㻚㻢 㻥㻘㻠㻢㻣㻚㻡 㻟㻣㻘㻜㻡㻞㻚㻜 ྜィ 㻝㻢㻘㻝㻞㻞㻚㻠 㻤㻘㻡㻡㻥㻚㻜 㻝㻘㻤㻞㻠㻚㻟 㻤㻘㻞㻝㻠㻚㻥 㻠㻘㻣㻝㻠㻚㻣 㻢㻘㻣㻝㻞㻚㻤 㻟㻜㻘㻜㻞㻡㻚㻢 㻞㻝㻟㻘㻣㻝㻢㻚㻣 㻞㻢㻘㻥㻥㻜㻚㻤 㻞㻠㻜㻘㻣㻜㻣㻚㻡 㻞㻤㻢㻘㻤㻡㻡㻚㻡 ༊ศ ⏦࿌⣡⛯䛾 㻢✀㢮 ศ㞳ㄢ⛯䛾㻡✀㢮䛾ᡤᚓ ⤥ᡤᚓ ྜィ 2 所得控除の計測 まず所得控除から計測する。『申告所得』から、雑損控除、医療費控除(セ ルフメディケーション税制による医療費控除含む)、社会保険料控除、小規模 企業共済等掛金控除、生命保険料控除(一般・個人年金・介護医療)、地震保 険料控除、寄附金控除、障害者等控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控 除、基礎控除、専従者控除の13種類の所得控除が得られるので、そのまま使 用する。民間給与所得者の各種所得控除については、『民間給与実態』より直 接得ることができる配偶者特別控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金 控除、生命保険料控除(一般・個人年金・介護医療)、地震保険料控除は、記 載された数値をそのまま使う。ただし、寄附金控除、雑損控除、医療費控除は 記載がなされておらず、他の統計データを用いて計測することが困難なことか ら、本稿では割愛することにした。一方、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、 障害者等控除(寡婦、特別寡婦、寡夫、勤労学生控除などを含む)については、 控除額が直接記載されていないであるが、対象人数と制度で規定された1人あ たりの控除額から、次のようにして計測した。 ①基礎控除 『民間給与の実態』より給与所得者の階級別人数に控除額を乗ずることで
求めた。 ②配偶者控除 『民間給与実態』より控除適用人数のデータが得られる。掲載されている データは、一般控除対象配偶者と老人控除対象配偶者に区分されており、 それぞれ一般、障害者、同居特別障害者、非同居特別障害者別に控除的人 数が掲載されている。これらの控除適用人数に控除額を乗ずることで求 めた。 ③扶養控除 扶養親族については、一般扶養親族、特定扶養親族、老人扶養親族(同居 老親等、その他)、障害者、同居特別障害者、非同居特別障害者のそれぞ れの控除適用人数を『民間給与実態』より得ることができる。これらの控 除適用人数に控除額を乗ずることで求めた。 ④障害者等控除 『民間給与実態』より、親族障害者(障害者及び同居・非同居の特別障害 者)と本人控除の障害者、特別障害者の控除適用人数を得ることができる。 また、掲載されているデータには本人控除として寡婦、特別寡婦、寡夫、 勤労学生控除の適用人数も把握できる。ここではこれらの所得控除をまと めて障害者等控除として計算を行った。具体的にはこれらの控除適用人数 に控除額を乗ずることで求めた。 ⑤専従者控除 『申告所得』より所得階級別人数に控除額を乗ずることで求めた。 次に、給与所得控除を計測する。給与所得控除は厳密に言えば給与所得の経 費の概算であるので所得控除には該当しない。しかし、本稿では給与所得控除 も各種所得控除と同様に課税前所得から差し引かれるものとして捉え、所得控 除同様に取り扱っている。 給与所得控除は統計データから直接得ることができない。そこで、民間給 与所得者の場合は『民間給与実態』より民間給与所得者の給与額の階層別人数 がわかるので、給与額をもとに制度にしたがって給与所得控除額を求めた。た
だし、給与額が100万円以下の階層は給与所得控除額の最低控除額65万円と し、給与額が1,000万円を越えると給与所得控除額の上限である220万円を 適用した。こうして求めた給与所得控除額に各給与額の階層別人数を乗ずるこ とで全体の給与所得控除額を計測した。一方、官公庁の給与所得者については 民間給与所得者のように各種所得控除額や給与額の階層別人数の統計データが ない。そこで、石[1979]と同様に民間給与所得者に適用される各種所得控除 が同じ分布であると仮定して計測した。 以上のようにして、所得階級別の所得控除額の計測を行った。結果は表2に まとめているが、2017年度の所得控除額は合計で149兆1,231億円である。 ここで、所得控除前の所得から所得控除によって、どれだけ課税ベースのイ 表 2 2017 年度度の所得控除 ༢䚷㻝㻜൨ ༊ศ 㞧ᦆ᥍ 㝖 ་⒪㈝ ᥍㝖 ♫ಖ 㝤ᩱ᥍ 㝖 ᑠつᶍ ᴗඹ ῭➼ 㔠᥍㝖 ⏕ಖ 㝤ᩱ ᥍㝖 ᆅ㟈ಖ 㝤ᩱ ᥍㝖 ᐤ㝃㔠 ᥍㝖 ᇶ♏᥍㝖 㓄അ⪅ ᥍㝖 㻭 㻮 㻯 㻰 㻱 㻲 㻳 㻴 㻵 㻝㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻟 㻡㻚㻟 㻤㻝㻚㻞 㻟㻚㻝 㻡㻜㻚㻞 㻞㻚㻠 㻜㻚㻟 㻝㻘㻣㻡㻡㻚㻢 㻢㻝㻚㻣 㻞㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻟 㻟㻤㻚㻜 㻝㻘㻝㻜㻣㻚㻟 㻞㻢㻚㻜 㻞㻟㻤㻚㻞 㻝㻠㻚㻥 㻝㻚㻜 㻟㻘㻝㻜㻠㻚㻢 㻟㻝㻣㻚㻟 㻟㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻠 㻡㻟㻚㻟 㻞㻘㻤㻠㻢㻚㻤 㻡㻣㻚㻢 㻟㻡㻣㻚㻜 㻞㻜㻚㻝 㻝㻚㻤 㻟㻘㻠㻟㻝㻚㻢 㻠㻣㻢㻚㻢 㻠㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻟 㻠㻤㻚㻠 㻠㻘㻟㻢㻣㻚㻢 㻢㻜㻚㻠 㻠㻞㻠㻚㻤 㻞㻝㻚㻡 㻞㻚㻟 㻟㻘㻡㻥㻜㻚㻢 㻡㻠㻞㻚㻟 㻡㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻞 㻟㻤㻚㻝 㻠㻘㻣㻝㻢㻚㻤 㻣㻜㻚㻜 㻠㻝㻡㻚㻝 㻞㻠㻚㻝 㻞㻚㻣 㻞㻘㻥㻣㻢㻚㻜 㻢㻟㻢㻚㻟 㻢㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻞 㻞㻥㻚㻜 㻟㻘㻥㻢㻡㻚㻡 㻢㻢㻚㻣 㻟㻞㻝㻚㻢 㻞㻞㻚㻝 㻟㻚㻞 㻞㻘㻜㻟㻜㻚㻣 㻡㻥㻢㻚㻟 㻣㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻞 㻞㻟㻚㻟 㻟㻘㻜㻝㻥㻚㻥 㻠㻤㻚㻣 㻞㻞㻟㻚㻢 㻝㻤㻚㻜 㻟㻚㻠 㻝㻘㻞㻥㻞㻚㻢 㻠㻡㻣㻚㻜 㻤㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻝 㻝㻤㻚㻢 㻞㻘㻟㻝㻥㻚㻣 㻠㻠㻚㻤 㻝㻡㻢㻚㻤 㻝㻟㻚㻣 㻟㻚㻠 㻤㻤㻤㻚㻡 㻟㻢㻜㻚㻥 㻝㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻞 㻞㻣㻚㻝 㻞㻘㻥㻝㻟㻚㻣 㻢㻣㻚㻤 㻝㻤㻜㻚㻡 㻝㻣㻚㻣 㻢㻚㻟 㻥㻥㻠㻚㻟 㻠㻢㻠㻚㻥 㻝㻘㻡㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻟 㻟㻥㻚㻟 㻞㻘㻠㻞㻜㻚㻝 㻤㻠㻚㻤 㻝㻟㻟㻚㻥 㻝㻡㻚㻟 㻝㻢㻚㻞 㻣㻡㻝㻚㻞 㻟㻢㻝㻚㻥 㻞㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻝 㻞㻞㻚㻝 㻢㻞㻥㻚㻣 㻟㻤㻚㻝 㻟㻝㻚㻝 㻠㻚㻠 㻝㻡㻚㻥 㻝㻥㻣㻚㻠 㻤㻟㻚㻡 㻞㻘㻜㻜㻜㻌㻌㉸ 㻜㻚㻡 㻡㻝㻚㻜 㻟㻢㻝㻚㻝 㻠㻝㻚㻢 㻝㻤㻚㻥 㻟㻚㻥 㻝㻜㻜㻚㻤 㻞㻝㻡㻚㻜 㻟㻡㻚㻣 ྜィ 㻟㻚㻝 㻟㻥㻟㻚㻡 㻞㻤㻘㻣㻠㻥㻚㻠 㻢㻜㻥㻚㻢 㻞㻘㻡㻡㻝㻚㻣 㻝㻣㻤㻚㻝 㻝㻡㻣㻚㻟 㻞㻝㻘㻞㻞㻤㻚㻝 㻠㻘㻟㻥㻠㻚㻠 ༢䚷㻝㻜൨ ༊ศ 㓄അ⪅ ≉ู ᥍㝖 ᢇ㣴᥍ 㝖 㞀ᐖ⪅ ᥍㝖 ᮏே᥍ 㝖➼ ⤥ᡤ ᚓ ᥍㝖 ᐁබᗇ⤥ ᡤᚓ⪅ 䛾ᡤᚓ᥍ 㝖ྜィ ᑓᚑ⪅ ᥍㝖 ྜィ 㻶 㻷 㻸 㻹 㻺 㻻 㻼 㻽 㻝㻜㻜௨ୗ 㻝㻟㻚㻠 㻠㻠㻚㻢 㻝㻞㻚㻜 㻟㻢㻚㻤 㻟㻘㻜㻟㻥㻚㻥 㻞㻞㻣㻚㻠 㻤㻚㻝 㻡㻘㻟㻠㻞㻚㻠 㻞㻜㻜௨ୗ 㻟㻡㻚㻢 㻞㻟㻣㻚㻟 㻣㻣㻚㻡 㻝㻞㻢㻚㻢 㻡㻘㻤㻤㻡㻚㻠 㻡㻜㻢㻚㻣 㻞㻠㻚㻜 㻝㻝㻘㻣㻠㻜㻚㻣 㻟㻜㻜௨ୗ 㻢㻤㻚㻟 㻡㻝㻟㻚㻣 㻝㻜㻞㻚㻣 㻝㻞㻞㻚㻞 㻥㻘㻡㻜㻞㻚㻜 㻤㻟㻡㻚㻣 㻝㻥㻚㻝 㻝㻤㻘㻠㻜㻥㻚㻜 㻠㻜㻜௨ୗ 㻣㻣㻚㻥 㻣㻟㻣㻚㻣 㻤㻟㻚㻟 㻥㻢㻚㻠 㻝㻟㻘㻜㻣㻥㻚㻟 㻝㻘㻝㻟㻠㻚㻠 㻝㻞㻚㻜 㻞㻠㻘㻞㻣㻥㻚㻟 㻡㻜㻜௨ୗ 㻣㻜㻚㻜 㻤㻣㻟㻚㻞 㻤㻠㻚㻡 㻢㻜㻚㻟 㻝㻞㻘㻢㻣㻡㻚㻟 㻝㻘㻝㻡㻤㻚㻞 㻣㻚㻞 㻞㻟㻘㻤㻜㻤㻚㻜 㻢㻜㻜௨ୗ 㻠㻤㻚㻢 㻣㻡㻝㻚㻤 㻢㻜㻚㻠 㻟㻠㻚㻠 㻥㻘㻣㻡㻡㻚㻜 㻥㻞㻡㻚㻡 㻠㻚㻟 㻝㻤㻘㻢㻝㻡㻚㻟 㻣㻜㻜௨ୗ 㻟㻠㻚㻢 㻡㻤㻢㻚㻠 㻠㻜㻚㻟 㻝㻢㻚㻜 㻢㻘㻢㻥㻝㻚㻥 㻢㻢㻢㻚㻣 㻞㻚㻢 㻝㻟㻘㻝㻞㻡㻚㻝 㻤㻜㻜௨ୗ 㻞㻞㻚㻟 㻠㻣㻣㻚㻥 㻟㻞㻚㻤 㻥㻚㻡 㻠㻘㻤㻝㻟㻚㻡 㻡㻜㻝㻚㻤 㻝㻚㻢 㻥㻘㻢㻢㻡㻚㻥 㻝㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻞㻢㻚㻤 㻢㻞㻠㻚㻟 㻠㻡㻚㻟 㻡㻚㻥 㻡㻘㻢㻢㻡㻚㻜 㻢㻝㻟㻚㻠 㻝㻚㻤 㻝㻝㻘㻢㻡㻡㻚㻜 㻝㻘㻡㻜㻜௨ୗ 㻝㻜㻚㻝 㻡㻜㻟㻚㻠 㻟㻝㻚㻝 㻟㻚㻠 㻠㻘㻜㻟㻞㻚㻤 㻠㻢㻜㻚㻞 㻝㻚㻡 㻤㻘㻤㻢㻡㻚㻡 㻞㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻝㻝㻟㻚㻢 㻥㻚㻡 㻝㻚㻡 㻤㻟㻢㻚㻞 㻥㻝㻚㻤 㻜㻚㻡 㻞㻘㻜㻣㻡㻚㻡 㻞㻘㻜㻜㻜㻌㻌㉸ 㻡㻢㻚㻥 㻥㻚㻟 㻢㻟㻟㻚㻟 㻝㻞㻚㻟 㻜㻚㻢 㻝㻘㻡㻠㻜㻚㻤 ྜィ 㻠㻜㻣㻚㻢 㻡㻘㻡㻞㻜㻚㻤 㻡㻤㻤㻚㻣 㻡㻝㻟㻚㻜 㻣㻢㻘㻢㻜㻥㻚㻤 㻣㻘㻝㻟㻠㻚㻞 㻤㻟㻚㻟 㻝㻠㻥㻘㻝㻞㻟㻚㻝
ロージョンが生じたのかについて確かめてみたのが表3である。全体では所得 控除前の所得のうち52.0%が課税ベースから所得控除によって浸食されている ことがわかる。また、所得階級が高くなるに伴い、所得控除前の所得に対する 所得控除の割合が減少していることがわかる。 表 3 2017 年度度の所得控除前の所得と所得控除 ༢䚷㻝㻜൨㻌㻘㻌䠂 㻭 㻮 㻯㻌㻔㻮㾂㻭㻕 㻝㻜㻜௨ୗ 㻠㻘㻝㻠㻝㻚㻝 㻡㻘㻟㻠㻞㻚㻠 㻝㻞㻥㻚㻜㻑 㻞㻜㻜௨ୗ 㻝㻞㻘㻢㻞㻟㻚㻥 㻝㻝㻘㻣㻠㻜㻚㻤 㻥㻟㻚㻜㻑 㻟㻜㻜௨ୗ 㻞㻠㻘㻟㻢㻠㻚㻢 㻝㻤㻘㻠㻜㻤㻚㻥 㻣㻡㻚㻢㻑 㻠㻜㻜௨ୗ 㻟㻢㻘㻝㻠㻣㻚㻡 㻞㻠㻘㻞㻣㻥㻚㻠 㻢㻣㻚㻞㻑 㻡㻜㻜௨ୗ 㻟㻤㻘㻠㻡㻤㻚㻝 㻞㻟㻘㻤㻜㻤㻚㻝 㻢㻝㻚㻥㻑 㻢㻜㻜௨ୗ 㻟㻞㻘㻜㻥㻝㻚㻥 㻝㻤㻘㻢㻝㻡㻚㻡 㻡㻤㻚㻜㻑 㻣㻜㻜௨ୗ 㻞㻟㻘㻥㻣㻝㻚㻡 㻝㻟㻘㻝㻞㻡㻚㻝 㻡㻠㻚㻤㻑 㻤㻜㻜௨ୗ 㻝㻤㻘㻥㻤㻢㻚㻣 㻥㻘㻢㻢㻡㻚㻥 㻡㻜㻚㻥㻑 㻝㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻞㻡㻘㻝㻥㻣㻚㻡 㻝㻝㻘㻢㻡㻡㻚㻜 㻠㻢㻚㻟㻑 㻝㻘㻡㻜㻜௨ୗ 㻞㻠㻘㻣㻥㻡㻚㻥 㻤㻘㻤㻢㻡㻚㻢 㻟㻡㻚㻤㻑 㻞㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻥㻘㻜㻞㻠㻚㻥 㻞㻘㻜㻣㻡㻚㻢 㻞㻟㻚㻜㻑 㻞㻘㻜㻜㻜䚷㉸ 㻟㻣㻘㻜㻡㻞㻚㻜 㻝㻘㻡㻠㻜㻚㻥 㻠㻚㻞㻑 ྜィ 㻞㻤㻢㻘㻤㻡㻡㻚㻡 㻝㻠㻥㻘㻝㻞㻟㻚㻝 㻡㻞㻚㻜㻑 ༊ศ ᡤᚓ᥍㝖๓䛾ᡤᚓ ᡤᚓ᥍㝖 ྜ
IV 課税ベースから税額を算定するときに生じるイロージョン
1 課税上の優遇措置の計測 前節では所得控除前の所得、所得控除の計測をおこなった。所得控除は課 税ベースを狭くするので、税率が一定であるなら税収は減少する。言い換えれ ば、所得控除によって税収が減少する。しかし、税収の減少は、所得控除だけ ではく、所得控除前の所得そのものを小さくする項目が考えられる。この項目 には課税上の優遇措置がある。本稿では石[1979]を参考にしつつ、課税上の 優遇措置として、利子所得、配当所得の非課税、山林所得、一時所得、総合譲 渡所得の特別控除、退職所得控除、公的年金等控除、青色申告特別控除の各種 控除、総合譲渡所得(長期)、一時所得、退職所得の優遇措置(総額の2分の 1課税)を取り扱う。これらの課税上の優遇措置を①非課税、②特別控除等、 そして③税負担軽減措置の3つに分けて計測する。①非課税 利子所得と配当所得の非課税分が該当する。利子所得の非課税額の総額は 『国税統計』から得ることできる。配当所得も『国税統計』にある「投資 信託及び特定受益証券発行信託の収益の分配等」の非課税額を使用した。 ②特別控除等 山林所得、一時所得、総合譲渡所得は条件を満たすと50万円の特別控除 の適用がある。これらは、『申告所得』からそれぞれの階層人数に50万円 を乗じて求めた。退職所得控除は中央労働委員会の『平成29年賃金事情 等総合調査』より勤続年数と退職金額のデータが得られる。大卒と高卒の 退職金額の加重平均を用いて、線形補間をしながら勤続年数ごとの退職金 額を推計した。推計した退職金額から、1,000万円超を勤続20年超とし、 それ以外は勤続20年以下として制度上の計算にしたがい退職所得控除額 を求めた。公的年金控除は、『申告所得』より公的年金等所得の階級別人 数の数値を得ることができるので、所得税制度の年金控除額を計算し、人 数に乗ずることで求めた。青色申告特別控除は『申告所得』より青色申告 納税者数を得ることができるので、事業所得、不動産所得の納税者につい ては65万円を人数に乗じて求め、それ以外の納税者には10万円を人数 に乗じて求めた5)。 ③税負担軽減措置 総合譲渡所得(長期)、一時所得、退職所得は、いわゆる2分の1課税と 呼ばれる課税上優遇措置がある。このうち総合譲渡所得と一時所得の優遇 措置については『申告所得』にある各所得の数値がすでに2分の1である ので、そのまま使用する。一方、退職所得の優遇措置は退職所得控除を求 めたときの推計した退職所得金額の2分の1とした。 以上のようにして計測した課税上の優遇措置を表4にまとめている。課税 5) 青色申告特別控除には 65 万円と 10 万円の控除がある。このうち 65 万円の控除が適用される のは、不動産所得か事業所得があり、複式簿記での記帳、申告時に貸借対照表や損益計算書の提 出などが要件である。要件を満たさない場合は 10 万円の控除が適用される。
上の優遇措置は全体で9兆5,880億円であるが、ほぼ半分をしめているのが退 職所得の優遇措置(4兆2,358億円)である。特に、2,000万円超の所得階級 で退職得所得の優遇措置のしめる割合が多い。一方、200万円以下、300万円 以下、400万円以下の所得階級では、公的年金控除のしめる割合が多い。 表 4 2017 年度度の課税上の優遇措置 ༢䚷㻝㻜൨ Ꮚᡤᚓ 㠀ㄢ⛯ 㓄ᙜᡤᚓ 㠀ㄢ⛯ ⥲ྜㆡΏᡤᚓ ඃ㐝ᥐ⨨ ୍ᡤᚓඃ㐝ᥐ⨨ ᒣᯘᡤᚓ ≉ู᥍㝖 ୍ᡤᚓ ≉ู᥍㝖 ⥲ྜㆡΏ ᡤᚓ ≉ู᥍㝖 ㏥⫋ᡤᚓ ᥍㝖 ㏥⫋ᡤᚓ ඃ㐝ᥐ⨨ බⓗᖺ㔠 ➼ ᥍㝖 㟷Ⰽ⏦࿌ ≉ู᥍㝖 ྜィ 㻭 㻮 㻯 㻰 㻱 㻲 㻳 㻵 㻴 㻶 㻷 㻸 㻝㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻟 㻞㻚㻞 㻜㻚㻣 㻡㻚㻤 㻜㻚㻝 㻠㻚㻡 㻜㻚㻣 㻜㻚㻜 㻜㻚㻝 㻢㻢㻚㻞 㻣㻤㻚㻥 㻝㻡㻥㻚㻠 㻞㻜㻜௨ୗ 㻝㻚㻜 㻞㻚㻜 㻞㻚㻜 㻝㻣㻚㻤 㻜㻚㻞 㻝㻝㻚㻝 㻝㻚㻥 㻜㻚㻞 㻝㻚㻤 㻡㻠㻢㻚㻤 㻞㻟㻣㻚㻡 㻤㻞㻞㻚㻟 㻟㻜㻜௨ୗ 㻝㻚㻟 㻟㻚㻣 㻟㻚㻥 㻞㻝㻚㻜 㻜㻚㻞 㻝㻜㻚㻥 㻞㻚㻝 㻜㻚㻡 㻢㻚㻥 㻢㻜㻞㻚㻣 㻞㻞㻞㻚㻜 㻤㻣㻡㻚㻟 㻠㻜㻜௨ୗ 㻝㻚㻠 㻠㻚㻣 㻞㻚㻡 㻝㻤㻚㻤 㻜㻚㻞 㻤㻚㻢 㻝㻚㻤 㻝㻚㻝 㻝㻤㻚㻤 㻟㻥㻣㻚㻞 㻝㻢㻥㻚㻞 㻢㻞㻠㻚㻠 㻡㻜㻜௨ୗ 㻝㻚㻠 㻡㻚㻢 㻞㻚㻟 㻝㻣㻚㻝 㻜㻚㻝 㻣㻚㻜 㻝㻚㻡 㻝㻚㻣 㻞㻣㻚㻤 㻞㻢㻝㻚㻞 㻝㻞㻞㻚㻡 㻠㻠㻤㻚㻟 㻢㻜㻜௨ୗ 㻝㻚㻟 㻢㻚㻡 㻞㻚㻝 㻝㻡㻚㻟 㻜㻚㻝 㻡㻚㻟 㻝㻚㻞 㻞㻚㻠 㻠㻢㻚㻢 㻝㻣㻡㻚㻟 㻤㻢㻚㻜 㻟㻠㻞㻚㻞 㻣㻜㻜௨ୗ 㻝㻚㻠 㻣㻚㻞 㻝㻚㻤 㻞㻜㻚㻞 㻜㻚㻝 㻠㻚㻤 㻝㻚㻜 㻞㻚㻟 㻠㻤㻚㻞 㻝㻞㻝㻚㻝 㻢㻝㻚㻣 㻞㻢㻥㻚㻤 㻤㻜㻜௨ୗ 㻝㻚㻠 㻢㻚㻥 㻝㻚㻢 㻝㻢㻚㻝 㻜㻚㻝 㻟㻚㻡 㻜㻚㻤 㻞㻚㻟 㻡㻠㻚㻜 㻤㻟㻚㻤 㻠㻠㻚㻥 㻞㻝㻡㻚㻠 㻝㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻞㻚㻜 㻝㻟㻚㻝 㻟㻚㻜 㻝㻢㻚㻟 㻜㻚㻝 㻟㻚㻤 㻝㻚㻞 㻡㻚㻜 㻝㻝㻤㻚㻥 㻝㻝㻞㻚㻥 㻡㻥㻚㻝 㻟㻟㻡㻚㻟 㻝㻘㻡㻜㻜௨ୗ 㻡㻚㻝 㻟㻜㻚㻤 㻠㻚㻢 㻞㻜㻚㻡 㻜㻚㻝 㻠㻚㻟 㻝㻚㻣 㻝㻝㻚㻢 㻞㻡㻢㻚㻤 㻝㻠㻥㻚㻣 㻢㻥㻚㻠 㻡㻡㻠㻚㻢 㻞㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻠㻚㻞 㻟㻠㻚㻝 㻟㻚㻟 㻝㻞㻚㻣 㻜㻚㻜 㻞㻚㻝 㻝㻚㻜 㻝㻝㻚㻡 㻞㻡㻠㻚㻠 㻤㻜㻚㻞 㻟㻝㻚㻝 㻠㻟㻠㻚㻣 㻞㻘㻜㻜㻜㻌㻌㉸ 㻟㻤㻚㻠 㻡㻥㻥㻚㻥 㻞㻝㻚㻤 㻠㻢㻚㻝 㻜㻚㻝 㻡㻚㻝 㻞㻚㻟 㻠㻤㻚㻣 㻟㻘㻠㻜㻝㻚㻡 㻞㻥㻞㻚㻜 㻡㻜㻚㻞 㻠㻘㻡㻜㻢㻚㻟 ྜィ 㻡㻥㻚㻝 㻣㻝㻢㻚㻥 㻠㻥㻚㻣 㻞㻞㻣㻚㻤 㻝㻚㻠 㻣㻝㻚㻝 㻝㻣㻚㻞 㻤㻣㻚㻠 㻠㻘㻞㻟㻡㻚㻤 㻞㻘㻤㻤㻥㻚㻝 㻝㻘㻞㻟㻞㻚㻡 㻥㻘㻡㻤㻤㻚㻜 ༊ศ 2 CITの課税ベースとイロージョン 前節と本節で計測した所得控除前の所得、所得控除、そして課税上の優遇 措置から、CITの課税ベース(包括的所得税に基づく課税ベース)を求める。 CITの課税ベースは、所得控除前の所得に課税上の優遇措置を足し合わすこ とで求めることができる。また、所得控除前の所得から所得控除を差し引くこ とで、現実の課税ベースを求めることができる。これらをまとめたものが表5 である。 表 5 2017 年度の CIT 課税ベース ༢䚷㻝㻜൨ ⌧ᐇ䛾 ㄢ⛯䝧䞊䝇 ᡤᚓ᥍㝖 ᡤᚓ᥍㝖๓䛾ᡤᚓ ㄢ⛯ୖ䛾ඃ㐝ᥐ⨨ ㄢ⛯䝧䞊䝇㻯㻵㼀䛾 ィ 䛧䛯 ⛯ධ ᕪ㢠 ᖹᆒ⛯⋡ 㻭㻌㻔㻯㻙㻮㻕 㻮 㻯 㻰 㻱㻌㻔㻯㻗㻰㻕 㻲 㻳䠄㻱䡬㻭䠅 㻴䠄㻲㾂㻭䠅 㻝㻜㻜௨ୗ 䕦㻌㻝㻘㻞㻜㻝㻚㻟 㻡㻘㻟㻠㻞㻚㻠 㻠㻘㻝㻠㻝㻚㻝 㻝㻡㻥㻚㻠 㻠㻘㻟㻜㻜㻚㻡 㻞㻜㻚㻤 䇷 䇷 㻞㻜㻜௨ୗ 㻤㻤㻟㻚㻝 㻝㻝㻘㻣㻠㻜㻚㻤 㻝㻞㻘㻢㻞㻟㻚㻥 㻤㻞㻞㻚㻟 㻝㻟㻘㻠㻠㻢㻚㻞 㻝㻡㻤㻚㻝 㻝㻞㻘㻡㻢㻟㻚㻝 㻝㻣㻚㻥㻑 㻟㻜㻜௨ୗ 㻡㻘㻥㻡㻡㻚㻣 㻝㻤㻘㻠㻜㻤㻚㻥 㻞㻠㻘㻟㻢㻠㻚㻢 㻤㻣㻡㻚㻟 㻞㻡㻘㻞㻟㻥㻚㻥 㻠㻟㻤㻚㻥 㻝㻥㻘㻞㻤㻠㻚㻞 㻣㻚㻠㻑 㻠㻜㻜௨ୗ 㻝㻝㻘㻤㻢㻤㻚㻝 㻞㻠㻘㻞㻣㻥㻚㻠 㻟㻢㻘㻝㻠㻣㻚㻡 㻢㻞㻠㻚㻠 㻟㻢㻘㻣㻣㻝㻚㻥 㻣㻝㻡㻚㻣 㻞㻠㻘㻥㻜㻟㻚㻤 㻢㻚㻜㻑 㻡㻜㻜௨ୗ 㻝㻠㻘㻢㻡㻜㻚㻜 㻞㻟㻘㻤㻜㻤㻚㻝 㻟㻤㻘㻠㻡㻤㻚㻝 㻠㻠㻤㻚㻟 㻟㻤㻘㻥㻜㻢㻚㻠 㻤㻡㻜㻚㻞 㻞㻠㻘㻞㻡㻢㻚㻠 㻡㻚㻤㻑 㻢㻜㻜௨ୗ 㻝㻟㻘㻠㻣㻢㻚㻠 㻝㻤㻘㻢㻝㻡㻚㻡 㻟㻞㻘㻜㻥㻝㻚㻥 㻟㻠㻞㻚㻞 㻟㻞㻘㻠㻟㻠㻚㻝 㻤㻢㻟㻚㻜 㻝㻤㻘㻥㻡㻣㻚㻣 㻢㻚㻠㻑 㻣㻜㻜௨ୗ 㻝㻜㻘㻤㻠㻢㻚㻠 㻝㻟㻘㻝㻞㻡㻚㻝 㻞㻟㻘㻥㻣㻝㻚㻡 㻞㻢㻥㻚㻤 㻞㻠㻘㻞㻠㻝㻚㻟 㻣㻣㻜㻚㻤 㻝㻟㻘㻟㻥㻠㻚㻥 㻣㻚㻝㻑 㻤㻜㻜௨ୗ 㻥㻘㻟㻞㻜㻚㻤 㻥㻘㻢㻢㻡㻚㻥 㻝㻤㻘㻥㻤㻢㻚㻣 㻞㻝㻡㻚㻠 㻝㻥㻘㻞㻜㻞㻚㻝 㻤㻞㻟㻚㻟 㻥㻘㻤㻤㻝㻚㻟 㻤㻚㻤㻑 㻝㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻝㻟㻘㻡㻠㻞㻚㻡 㻝㻝㻘㻢㻡㻡㻚㻜 㻞㻡㻘㻝㻥㻣㻚㻡 㻟㻟㻡㻚㻟 㻞㻡㻘㻡㻟㻞㻚㻤 㻝㻘㻡㻝㻤㻚㻢 㻝㻝㻘㻥㻥㻜㻚㻟 㻝㻝㻚㻞㻑 㻝㻘㻡㻜㻜௨ୗ 㻝㻡㻘㻥㻟㻜㻚㻟 㻤㻘㻤㻢㻡㻚㻢 㻞㻠㻘㻣㻥㻡㻚㻥 㻡㻡㻠㻚㻢 㻞㻡㻘㻟㻡㻜㻚㻡 㻞㻘㻠㻢㻞㻚㻞 㻥㻘㻠㻞㻜㻚㻞 㻝㻡㻚㻡㻑 㻞㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻢㻘㻥㻠㻥㻚㻟 㻞㻘㻜㻣㻡㻚㻢 㻥㻘㻜㻞㻠㻚㻥 㻠㻟㻠㻚㻣 㻥㻘㻠㻡㻥㻚㻢 㻝㻘㻠㻡㻣㻚㻤 㻞㻘㻡㻝㻜㻚㻟 㻞㻝㻚㻜㻑 㻞㻘㻜㻜㻜㻌㻌㉸ 㻟㻡㻘㻡㻝㻝㻚㻝 㻝㻘㻡㻠㻜㻚㻥 㻟㻣㻘㻜㻡㻞㻚㻜 㻠㻘㻡㻜㻢㻚㻟 㻠㻝㻘㻡㻡㻤㻚㻟 㻣㻘㻜㻥㻞㻚㻟 㻢㻘㻜㻠㻣㻚㻞 㻞㻜㻚㻜㻑 ྜィ 㻝㻟㻣㻘㻣㻟㻞㻚㻠 㻝㻠㻥㻘㻝㻞㻟㻚㻝 㻞㻤㻢㻘㻤㻡㻡㻚㻡 㻥㻘㻡㻤㻤㻚㻜 㻞㻥㻢㻘㻠㻠㻟㻚㻡 㻝㻣㻘㻝㻣㻝㻚㻣 㻝㻡㻤㻘㻣㻝㻝㻚㻝 㻝㻞㻚㻡㻑 ༊ศ
表5では、F欄にCITの課税ベースからのイロージョンを計算している6)。 100万円以下の所得階級を除いて、高所得階級ほどイロージョンが減少する傾 向がみられるが、これは所得控除と課税上の優遇措置によるものである。しか し、2,000万円超の所得階級では、イロージョンが増加している。その要因と して、課税上の優遇措置があげられる。すなわち、課税上の優遇措置は極めて 高い所得階級には税負担を軽減する効果がみられるのである。 ここまでは、2つの税収のイロージョンのうち、課税ベースを狭くするイ ロージョンを分析してきた。次に、もう一つのイロージョンである課税ベース から税額を算定する段階で生じるイロージョンを計測する。 現行の制度では、分離課税の税率は総合課税の税率よりも低いので、分離課 税によって税が軽減される。すなわち、課税ベースから税額を算定する段階で 生じるイロージョンは分離課税の適用によるものである。このイロージョンの 計測の方法は次のようにして行った。まず、分離課税が適用されている実際の 制度にもとづく所得税収入を求める。次に、分離課税が適用されずに総合課税 の超過累進税率が適用された場合の仮想的な所得税収入を求める。そして、仮 想的な所得税収入から実際の制度にもとづく所得税収入を差し引くことで分離 課税によるイロージョンを計測するのである。なお、分離課税が適用される所 得は、退職所得、利子所得、配当所得、分離譲渡所得、株式等の譲渡所得の5 つの所得である。 実際の制度にもとづく所得税収入のうち、申告納税によるものは『申告所 得』よりそのままの数値を得ることができる。次に、退職所得、利子所得、配 当所得の税収入は、『国税統計』から得られる源泉徴収税額に基づいて所得階級 別に平均税率を求めて、所得控除前の所得に乗じた。分離譲渡所得、株式等の 譲渡所得の税収入は、所得控除前の所得に所得税法で規定されている国税分の 税率を乗ずることで求めた。なお、本稿では復興特別所得税を除外している。 したがって、譲渡所得のうち分離短期譲渡所得の税率は30%、分離長期譲渡所 6) 100 万円以下の所得階級で課税ベースがマイナス値になっている。これは、前述したように、所 得を上回る所得控除が適用されて所得税が課税されない者と、ごくわずかな額にしか課税されな い者が混ざり込んでいる可能性がある。なお、同様のことは石[1979]の結果でもみられる。
得の税率は15%、そして株式等の譲渡所得の税率は15%を用いた。 最後に給与所得の税収入は、民間給与所得に対する税収入については『民間 給与の実態』より得た数値をそのまま使用した。一方、官公庁給与所得に対す る税収入は所得控除と同様に所得階層別の源泉徴収税額が統計データから得ら れない。そこで、所得控除の計算と同様に、『国税統計』により源泉徴収税額 の総額を民間給与所得に対する税収入額の各所得階層の構成比を用いて按分し て求めた。 以上のようにして計測した2017年度の実際の制度にもとづく所得税収入 は、17兆1,717億円である(表6参照)。なお、ここで計測した所得税収収入 は、現実の2017年度の所得税税収18兆8,816億円(源泉所得税15兆6,271 億円、申告所得税3兆2,554億円)とは、1兆7,099億円の開きがある。しか し、計測した所得税収入と現実の税収入の差額は、利子所得および配当所得の 法人受取分が含まれていないことや、計測において様々な仮定を置いたことか ら生じたものである7)。 分離課税が適用されずに総合課税の超過累進税率が適用された場合の仮想 的な所得税収入については、各所得階級の所得に超過累進税率を適用されるこ とで平均税率を算出し、各所得に平均税率を乗ずることによって求めた。こう 表 6 2017 年度の計測した所得税収入 ༢䚷㻝㻜൨ ㏥⫋ᡤᚓ 䛻ᑐ䛩䜛 ⛯ Ꮚᡤᚓ 䛻ᑐ䛩䜛 ⛯ 㓄ᙜᡤᚓ 䛻ᑐ䛩䜛 ⛯ ㆡΏᡤᚓ 䛻ᑐ䛩䜛 ⛯ ᰴᘧ➼䛾 ㆡΏᡤᚓ䛻 ᑐ䛩䜛⛯ ィ Ẹ㛫 ᐁබᗇ ィ 㻭 㻮 㻯 㻰 㻱 㻲 㻳 㻴 㻵 㻶 㻷 㻝㻜㻜௨ୗ 㻟㻚㻢 㻜㻚㻜 㻝㻚㻣 㻠㻚㻠 㻜㻚㻢 㻜㻚㻠 㻣㻚㻝 㻥㻚㻝 㻝㻚㻜 㻝㻜㻚㻝 㻞㻜㻚㻤 㻞㻜㻜௨ୗ 㻟㻢㻚㻥 㻜㻚㻝 㻡㻚㻤 㻠㻚㻜 㻟㻚㻞 㻝㻚㻠 㻝㻠㻚㻡 㻥㻢㻚㻡 㻝㻜㻚㻞 㻝㻜㻢㻚㻣 㻝㻡㻤㻚㻝 㻟㻜㻜௨ୗ 㻢㻜㻚㻜 㻜㻚㻠 㻣㻚㻥 㻣㻚㻠 㻡㻚㻤 㻞㻚㻝 㻞㻟㻚㻢 㻟㻞㻝㻚㻠 㻟㻟㻚㻥 㻟㻡㻡㻚㻟 㻠㻟㻤㻚㻥 㻠㻜㻜௨ୗ 㻢㻣㻚㻡 㻝㻚㻝 㻤㻚㻠 㻥㻚㻠 㻣㻚㻢 㻞㻚㻡 㻞㻥㻚㻜 㻡㻢㻜㻚㻝 㻡㻥㻚㻝 㻢㻝㻥㻚㻞 㻣㻝㻡㻚㻣 㻡㻜㻜௨ୗ 㻣㻠㻚㻡 㻝㻚㻢 㻤㻚㻟 㻝㻝㻚㻞 㻥㻚㻞 㻞㻚㻥 㻟㻟㻚㻞 㻢㻣㻝㻚㻣 㻣㻜㻚㻤 㻣㻠㻞㻚㻡 㻤㻡㻜㻚㻞 㻢㻜㻜௨ୗ 㻤㻟㻚㻞 㻞㻚㻢 㻣㻚㻢 㻝㻟㻚㻜 㻝㻜㻚㻝 㻟㻚㻝 㻟㻢㻚㻠 㻢㻣㻞㻚㻡 㻣㻜㻚㻥 㻣㻠㻟㻚㻠 㻤㻢㻟㻚㻜 㻣㻜㻜௨ୗ 㻤㻣㻚㻢 㻞㻚㻣 㻤㻚㻠 㻝㻠㻚㻟 㻝㻜㻚㻣 㻟㻚㻟 㻟㻥㻚㻠 㻡㻤㻞㻚㻠 㻢㻝㻚㻠 㻢㻠㻟㻚㻤 㻣㻣㻜㻚㻤 㻤㻜㻜௨ୗ 㻤㻟㻚㻣 㻟㻚㻜 㻤㻚㻟 㻝㻟㻚㻤 㻝㻝 㻟㻚㻞 㻟㻥㻚㻟 㻢㻟㻟㻚㻡 㻢㻢㻚㻤 㻣㻜㻜㻚㻟 㻤㻞㻟㻚㻟 㻝㻜㻜㻜௨ୗ 㻝㻠㻤㻚㻣 㻢㻚㻣 㻝㻝㻚㻤 㻞㻢㻚㻜 㻞㻞㻚㻢 㻢㻚㻟 㻣㻟㻚㻠 㻝㻘㻝㻣㻞㻚㻤 㻝㻞㻟㻚㻣 㻝㻘㻞㻥㻢㻚㻡 㻝㻘㻡㻝㻤㻚㻢 㻝㻘㻡㻜㻜௨ୗ 㻟㻝㻡㻚㻜 㻝㻠㻚㻡 㻟㻝㻚㻝 㻢㻝㻚㻠 㻡㻠㻚㻢 㻝㻟㻚㻣 㻝㻣㻡㻚㻟 㻝㻘㻣㻤㻟㻚㻤 㻝㻤㻤㻚㻝 㻝㻘㻥㻣㻝㻚㻥 㻞㻘㻠㻢㻞㻚㻞 㻞㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻞㻡㻥㻚㻝 㻝㻠㻚㻠 㻞㻡㻚㻣 㻢㻣㻚㻥 㻠㻤㻚㻢 㻝㻝㻚㻟 㻝㻢㻣㻚㻥 㻥㻟㻞㻚㻡 㻥㻤㻚㻟 㻝㻘㻜㻟㻜㻚㻤 㻝㻘㻠㻡㻣㻚㻤 㻞㻘㻜㻜㻜㻌㻌㉸ 㻝㻘㻥㻤㻥㻚㻥 㻝㻤㻥㻚㻟 㻞㻟㻞㻚㻣 㻝㻘㻝㻥㻟㻚㻢 㻡㻟㻠㻚㻠 㻠㻜㻣㻚㻡 㻞㻘㻡㻡㻣㻚㻡 㻞㻘㻟㻜㻞㻚㻝 㻞㻠㻞㻚㻤 㻞㻘㻡㻠㻠㻚㻥 㻣㻘㻜㻥㻞㻚㻟 ྜィ 㻟㻘㻞㻜㻥㻚㻣 㻞㻟㻢㻚㻠 㻟㻡㻣㻚㻣 㻝㻘㻠㻞㻢㻚㻠 㻣㻝㻤㻚㻠 㻠㻡㻣㻚㻣 㻟㻘㻝㻥㻢㻚㻢 㻥㻘㻣㻟㻤㻚㻠 㻝㻘㻜㻞㻣㻚㻜 㻝㻜㻘㻣㻢㻡㻚㻠 㻝㻣㻘㻝㻣㻝㻚㻣 ༊ศ ⏦࿌⣡⛯㢠 ⛯ 䜛 䛩 ᑐ 䛻 ᚓ ᡤ ⤥ ⏝ 㐺 䛾 ⛯ ㄢ 㞳 ศ ྜィ 7) ここでの誤差は、約 9.1%(≒ 1 兆 7099 億円÷ 18 兆 8816 億円)である。ただし、石[1979] による 1972 年の計測結果も計測した差額は 3,640 億円であり、誤差は約 9.8%(≒ 3,640 億 円÷ 3 兆 7,260 億円)であった。
して、仮想的な所得税収入から実際の制度にもとづく所得税収入を差し引くこ とで分離課税によるイロージョンを計測した結果を表7にまとめた。 表 7 2017 年度度の課税ベースから税額を算定する段階のイロージョン ༢㻌㻝㻜൨ ㏥⫋ᡤᚓ Ꮚᡤᚓ 㓄ᙜᡤᚓ ศ㞳ㆡΏᡤᚓ ᰴᘧ➼䛾 ㆡΏᡤᚓ➼ ィ 㻭 㻮 㻯 㻰 㻱 㻲 㻝㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻜 䇷 䇷 䇷 䇷 㻜㻚㻜 㻞㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻝 䇷 䇷 䇷 䇷 㻜㻚㻝 㻟㻜㻜௨ୗ 㻜㻚㻡 䇷 䇷 䇷 䇷 㻜㻚㻡 㻠㻜㻜௨ୗ 㻝㻚㻥 䇷 䇷 䇷 䇷 㻝㻚㻥 㻡㻜㻜௨ୗ 㻠㻚㻠 䇷 䇷 䇷 䇷 㻠㻚㻠 㻢㻜㻜௨ୗ 㻥㻚㻝 䇷 䇷 䇷 䇷 㻥㻚㻝 㻣㻜㻜௨ୗ 㻝㻜㻚㻡 䇷 䇷 䇷 䇷 㻝㻜㻚㻡 㻤㻜㻜௨ୗ 㻝㻟㻚㻜 䇷 䇷 䇷 䇷 㻝㻟㻚㻜 㻝㻜㻜㻜௨ୗ 㻟㻞㻚㻜 䇷 䇷 㻜㻚㻤 䇷 㻟㻞㻚㻤 㻝㻘㻡㻜㻜௨ୗ 㻥㻟㻚㻟 㻣㻚㻝 㻝㻝㻚㻢 㻝㻤㻚㻤 㻜㻚㻡 㻝㻟㻝㻚㻟 㻞㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻝㻝㻝㻚㻣 㻝㻜㻚㻢 㻞㻢㻚㻤 㻞㻤㻚㻠 㻟㻚㻞 㻝㻤㻜㻚㻣 㻞㻘㻜㻜㻜㻌㻌㉸ 㻞㻘㻠㻢㻢㻚㻞 㻞㻢㻠㻚㻞 㻝㻘㻡㻟㻠 㻣㻥㻝㻚㻢 㻢㻜㻣㻚㻟 㻡㻘㻢㻢㻟㻚㻞 ྜィ 㻞㻘㻣㻠㻞㻚㻣 㻞㻤㻝㻚㻥 㻝㻘㻡㻣㻞 㻤㻟㻥㻚㻢 㻢㻝㻝㻚㻜 㻢㻘㻜㻠㻣㻚㻡 表7にある「─」は、現実の所得税収入の方が仮想的な所得税収入よりも多 いことをあらわす。この場合は、課税ベースから税額を算定する段階で生じる イロージョンとは言えない。計測したイロージョンの総額は6兆475億円で あり、分離課税による退職所得のイロージョンが最も多い。また、1,000万円 を越える所得階級にイロージョンが生じており、特に2,000万円を越える所得 階級にイロージョンが集中していることがわかる。
V 分析
1 イロージョンによる所得税収入の減少 ここでは、前節までのイロージョンの計測をふまえて、所得税収入がイロー ジョンによってどれだけ減少したのかを計測する。これまで、所得控除、課税 上の優遇措置、分離課税によるイロージョンを計測したが、さらに税額控除も 加えて、計測した8)。全ての計測結果は表8にまとめている。 8) 税額控除は、『申告所得』より配当控除、住宅借入金等特別控除、その他の控除を使用した。ま た、『民間給与実態』から住宅借入金等特別控除の記載があるので、これらの数値もそのまま使 用した。表 8 2017 年度度の所得税収入のイロージョン 䠂 䠈 ൨ 㻜 㻝 䚷 ༢ ൨ 㻜 㻝 䚷 ༢ 㻯㻵㼀 ⌧ᐇ ⌧ᐇ ศ㞳ㄢ⛯ ⛯㢠᥍㝖 ᡤᚓ᥍㝖 ㄢ⛯ୖ䛾 ඃ㐝ᥐ⨨ ィ 㻭 㻮 㻯 㻰 㻱 㻲 㻳 㻴 㻵㻌㻔㻮㻙㻭㻕 ྜ 㻶㻌㻔㻰䡚㻳䛾ྜィ㻕 ྜ 㻝㻜㻜௨ୗ 㻠㻘㻟㻜㻤㻚㻡 䕦㻌㻝㻘㻝㻥㻥㻚㻡 㻞㻜㻚㻤 㻜㻚㻜 㻜㻚㻢 㻞㻢㻣㻚㻝 㻤㻚㻜 㻞㻥㻢㻚㻡 䇷 䇷 䇷 䇷 㻞㻜㻜௨ୗ 㻝㻟㻘㻠㻣㻤㻚㻣 㻤㻤㻥㻚㻡 㻝㻡㻤㻚㻝 㻜㻚㻝 㻞㻚㻡 㻡㻤㻣㻚㻜 㻠㻝㻚㻝 㻣㻤㻤㻚㻤 㻝㻞㻘㻡㻤㻥㻚㻞 㻤㻚㻜㻑 㻢㻟㻜㻚㻣 㻞㻚㻡㻑 㻟㻜㻜௨ୗ 㻞㻡㻘㻞㻤㻣㻚㻟 㻡㻘㻥㻢㻠㻚㻡 㻠㻟㻤㻚㻥 㻜㻚㻡 㻝㻜㻚㻡 㻝㻘㻝㻤㻤㻚㻞 㻡㻢㻚㻡 㻝㻘㻢㻥㻠㻚㻢 㻝㻥㻘㻟㻞㻞㻚㻤 㻝㻞㻚㻞㻑 㻝㻘㻞㻡㻡㻚㻣 㻠㻚㻥㻑 㻠㻜㻜௨ୗ 㻟㻢㻘㻤㻞㻞㻚㻜 㻝㻝㻘㻤㻣㻣㻚㻠 㻣㻝㻡㻚㻣 㻝㻚㻥 㻟㻥㻚㻡 㻝㻘㻤㻥㻜㻚㻟 㻠㻤㻚㻢 㻞㻘㻢㻥㻢㻚㻜 㻞㻠㻘㻥㻠㻠㻚㻢 㻝㻡㻚㻤㻑 㻝㻘㻥㻤㻜㻚㻟 㻣㻚㻤㻑 㻡㻜㻜௨ୗ 㻟㻤㻘㻥㻡㻤㻚㻠 㻝㻠㻘㻢㻡㻥㻚㻞 㻤㻡㻜㻚㻞 㻠㻚㻠 㻤㻥㻚㻟 㻞㻘㻠㻥㻥㻚㻤 㻠㻣㻚㻝 㻟㻘㻠㻥㻜㻚㻤 㻞㻠㻘㻞㻥㻥㻚㻞 㻝㻡㻚㻠㻑 㻞㻘㻢㻠㻜㻚㻢 㻝㻜㻚㻠㻑 㻢㻜㻜௨ୗ 㻟㻞㻘㻠㻣㻞㻚㻡 㻝㻟㻘㻠㻤㻠㻚㻥 㻤㻢㻟㻚㻜 㻥㻚㻝 㻝㻝㻣㻚㻣 㻞㻘㻞㻣㻢㻚㻞 㻠㻝㻚㻤 㻟㻘㻟㻜㻣㻚㻤 㻝㻤㻘㻥㻤㻣㻚㻢 㻝㻞㻚㻜㻑 㻞㻘㻠㻠㻠㻚㻤 㻥㻚㻢㻑 㻣㻜㻜௨ୗ 㻞㻠㻘㻞㻤㻞㻚㻝 㻝㻜㻘㻤㻡㻡㻚㻣 㻣㻣㻜㻚㻤 㻝㻜㻚㻡 㻥㻞㻚㻡 㻝㻘㻣㻢㻝㻚㻤 㻟㻢㻚㻞 㻞㻘㻢㻣㻝㻚㻤 㻝㻟㻘㻠㻞㻢㻚㻠 㻤㻚㻡㻑 㻝㻘㻥㻜㻝㻚㻜 㻣㻚㻡㻑 㻤㻜㻜௨ୗ 㻝㻥㻘㻞㻟㻣㻚㻥 㻥㻘㻟㻟㻜㻚㻝 㻤㻞㻟㻚㻟 㻝㻟㻚㻜 㻣㻜㻚㻝 㻝㻘㻠㻜㻟㻚㻡 㻟㻝㻚㻟 㻞㻘㻟㻠㻝㻚㻞 㻥㻘㻥㻜㻣㻚㻤 㻢㻚㻟㻑 㻝㻘㻡㻝㻣㻚㻥 㻢㻚㻜㻑 㻝㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻞㻢㻘㻝㻝㻣㻚㻠 㻝㻟㻘㻡㻡㻡㻚㻣 㻝㻘㻡㻝㻤㻚㻢 㻟㻞㻚㻤 㻤㻢㻚㻣 㻝㻘㻤㻡㻣㻚㻜 㻡㻟㻚㻠 㻟㻘㻡㻠㻤㻚㻡 㻝㻞㻘㻡㻢㻝㻚㻣 㻤㻚㻜㻑 㻞㻘㻜㻞㻥㻚㻥 㻤㻚㻜㻑 㻝㻘㻡㻜㻜௨ୗ 㻞㻢㻘㻠㻠㻜㻚㻠 㻝㻡㻘㻥㻢㻠㻚㻥 㻞㻘㻠㻢㻞㻚㻞 㻝㻟㻝㻚㻟 㻣㻝㻚㻝 㻝㻘㻥㻝㻢㻚㻥 㻝㻝㻥㻚㻥 㻠㻘㻣㻜㻝㻚㻠 㻝㻜㻘㻠㻣㻡㻚㻡 㻢㻚㻢㻑 㻞㻘㻞㻟㻥㻚㻞 㻤㻚㻤㻑 㻞㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻝㻜㻘㻞㻠㻣㻚㻢 㻢㻘㻥㻣㻣㻚㻤 㻝㻘㻠㻡㻣㻚㻤 㻝㻤㻜㻚㻣 㻝㻤㻚㻣 㻡㻜㻞㻚㻤 㻝㻜㻡㻚㻟 㻞㻘㻞㻢㻡㻚㻟 㻟㻘㻞㻢㻥㻚㻤 㻞㻚㻝㻑 㻤㻜㻣㻚㻡 㻟㻚㻞㻑 㻞㻘㻜㻜㻜㉸ 㻠㻟㻘㻥㻠㻣㻚㻠 㻟㻡㻘㻣㻣㻜㻚㻜 㻣㻘㻜㻥㻞㻚㻟 㻡㻘㻢㻢㻟㻚㻞 㻠㻥㻚㻠 㻡㻥㻠㻚㻥 㻝㻘㻣㻟㻥㻚㻣 㻝㻡㻘㻝㻟㻥㻚㻡 㻤㻘㻝㻣㻣㻚㻠 㻡㻚㻞㻑 㻤㻘㻜㻠㻣㻚㻞 㻟㻝㻚㻢㻑 ྜィ 㻟㻜㻝㻘㻢㻜㻜㻚㻜 㻝㻟㻤㻘㻝㻟㻜㻚㻠 㻝㻣㻘㻝㻣㻝㻚㻣 㻢㻘㻜㻠㻣㻚㻡 㻢㻠㻤㻚㻢 㻝㻢㻘㻣㻠㻡㻚㻡 㻞㻘㻟㻞㻤㻚㻥 㻠㻞㻘㻥㻠㻞㻚㻞 㻝㻡㻣㻘㻥㻢㻞㻚㻜 㻝㻜㻜㻚㻜㻑 㻞㻡㻘㻠㻥㻠㻚㻤 㻝㻜㻜㻚㻜㻑 ༊ศ ㄢ⛯䝧䞊䝇 ᡤᚓ⛯ධ ศᯒ ㄢ⛯䝧䞊䝇ᕪ㢠 ⛯䛾ῶᑡ 所得税収入のイロージョンは総額で22兆7,705億円(表8のD欄からG 欄までの合計)にもおよぶことがわかる。これは現実の所得税収入の1.33倍に 相当する。また、言い換えれば、イロージョンを無くすことで最大49兆9,422 億円の所得税収入を徴税できることになる。ただし、本稿での計測は歳入損失 法によるものであり、所得税収入の最大値はあくまでも税制変更に伴い納税者 の経済行動は変化しないという仮定のもとであることに注意を払う必要がある。 表8のI欄はイロージョンが無かった場合のCITによる課税ベースと現実 の課税ベースの差額である。差額の割合をみると300万円以下から600万円 以下の所得階級が多いことがわかる。これは表2で示したように所得控除、特 に社会保険料控除、基礎控除、給与所得控除の適用者が多いことが理由である。 この所得階級の税収入の減少額は税収減少額全体の35.1%であることから、所 得税収入を増やすためには、基礎控除、給与所得控除、社会保険料控除の見直 しが検討されるだろう。ただし、イロージョンによって最も所得税収入の減少 が多いのは、2,000万円超の所得階級であるので、所得税収入の減少を防ぐた めには、分離課税制度の見直しが不可欠と言える。 2 所得税制の改正が所得税収入に与えた影響 最後に、所得税制の改正が所得税収入の減少にどのような変化を及ぼしたの かについて分析する。データを利用できる直近の主な所得税制の改正は、表9 に示している2015年度の税率の改正と2016年度の給与所得控除の改正であ
る9)。 前述したように給与所得控除は税収入のイロージョンに大きな影響を与え るものである。また、税率は高い所得階級の税収入のイロージョンに大きな影 響を与える。分析にあたっては、2017年度度と同様の手法で改正前の2014年 度のものを計測し、比較する。 表10では、2014年度と2017年度度の所得控除前の所得にしめる給与所得 控除の割合を比較している。給与所得控除の改正は1,000万円超の所得階級は 所得控除前の所得にしめる給与所得控除の割合が増えると思われたが、結果か らはそれほど影響はなかったことがわかる。 次に、所得税制の改正による課税ベースから税額を算定する段階で生じるイ ロージョンを分析する。この分析は、表8に示したA欄のCITの課税ベース に対するD欄の分離課税による税収の減少の割合で比較した。ただし、2015年 度の税率改正では、4,000万円超の税率のみ改正されているので、比較は2,000 万円超の所得階級だけを対象とした。前述したように、表8のD欄は、総合 表 9 2015 年度、2016 年度の所得税制の改正 㻝㻥㻡௨ୗ 㻡㻑 㻝㻥㻡௨ୗ 㻡㻑 㻝㻥㻡㉸䡚㻟㻟㻜௨ୗ 㻝㻜㻑 㻝㻥㻡㉸䡚㻟㻟㻜௨ୗ 㻝㻜㻑 㻟㻟㻜㉸䡚㻢㻥㻡௨ୗ 㻞㻜㻑 㻟㻟㻜㉸䡚㻢㻥㻡௨ୗ 㻞㻜㻑 㻢㻥㻡㉸䡚㻥㻜㻜௨ୗ 㻞㻟㻑 㻢㻥㻡㉸䡚㻥㻜㻜௨ୗ 㻞㻟㻑 㻥㻜㻜㉸䡚㻝㻘㻤㻜㻜௨ୗ 㻟㻟㻑 㻥㻜㻜㉸䡚㻝㻘㻤㻜㻜௨ୗ 㻟㻟㻑 㻝㻘㻤㻜㻜㉸䚷㻌 㻠㻜㻑㻝㻘㻤㻜㻜㉸䡚㻠㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻠㻜㻑 㻠㻘㻜㻜㻜㉸䚷㻌 㻠㻡㻑 ᭱పಖ㞀㢠 ᭱పಖ㞀㢠 㻝㻤㻜௨ୗ 㻝㻤㻜௨ୗ 㻝㻤㻜㉸䡚㻟㻟㻜௨ୗ 㻝㻤㻜㉸䡚㻟㻟㻜௨ୗ 㻟㻟㻜㉸䡚㻢㻢㻜௨ୗ 㻟㻟㻜㉸䡚㻢㻢㻜௨ୗ 㻢㻢㻜㉸䡚㻝㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻢㻢㻜㉸䡚㻝㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻝㻘㻜㻜㻜㉸䡚㻝㻘㻡㻜㻜௨ୗ 㻝㻘㻜㻜㻜㉸ୗ ୍ᐃ 㻝㻘㻡㻜㻜㉸ୗ ୍ᐃ ⏝ 㐺 ᗘ ᖺ 㻣 㻝 㻜 㻞 ⏝ 㐺 ᗘ ᖺ 㻠 㻝 㻜 㻞 㻞㻜㻝㻡ᖺᗘ ⛯⋡䛾ᨵṇ 䠄ㄢ⛯ᡤᚓ䠅 㻞㻜㻝㻢ᖺᗘ ⤥ᡤᚓ᥍㝖 䛾ᨵṇ 䠄⤥ධ䠅 9) この間には他の改正がなされている。例えば、給与所得者の特定支出控除の適用判定の基準の変 更、配偶者控除における同居特別障害者に対する障害者控除の創設、住宅借入金に関わる税額控 除などの改正がある。ただし、これらの改正はデータの制約上、割愛した。
課税の超過累進税率が適用されずに分離課税による税率が適用されたことによ る税収入のイロージョンである。したがって、適用される税率が高くなるとD ÷Aの割合は低くなる。結果は表11に示しているが、予想通り、課税ベース から税額を算定する段階で生じるイロージョンが小さくなっている。 表 10 給与所得控除の改正による影響 ༢䚷㻝㻜൨㻌㻘㻌䠂 㻞㻜㻝㻠ᖺᗘ 㻞㻜㻝㻣ᖺᗘ ⤥ᡤᚓ᥍㝖 ᡤᚓ᥍㝖๓䛾 ᡤᚓ ⤥ᡤᚓ᥍㝖 ᡤᚓ᥍㝖๓䛾 ᡤᚓ ྜ ྜ 㻭 㻮 㻭㻓 㻮㻓 㻭㾂㻮 㻭㻓㾂㻮㻓 㻝㻜㻜௨ୗ 㻟㻘㻜㻣㻥㻚㻟 㻠㻘㻝㻢㻠㻚㻟 㻟㻘㻜㻟㻥㻚㻥 㻠㻘㻝㻠㻝㻚㻝 㻣㻟㻚㻥㻑 㻣㻟㻚㻠㻑 㻞㻜㻜௨ୗ 㻢㻘㻟㻤㻝㻚㻞 㻝㻟㻘㻢㻝㻜㻚㻥 㻡㻘㻤㻤㻡㻚㻠 㻝㻞㻘㻢㻞㻟㻚㻥 㻠㻢㻚㻥㻑 㻠㻢㻚㻢㻑 㻟㻜㻜௨ୗ 㻥㻘㻤㻟㻟㻚㻜 㻞㻡㻘㻜㻤㻤㻚㻟 㻥㻘㻡㻜㻞㻚㻜 㻞㻠㻘㻟㻢㻠㻚㻢 㻟㻥㻚㻞㻑 㻟㻥㻚㻜㻑 㻠㻜㻜௨ୗ 㻝㻞㻘㻡㻞㻞㻚㻠 㻟㻠㻘㻢㻝㻠㻚㻜 㻝㻟㻘㻜㻣㻥㻚㻟 㻟㻢㻘㻝㻠㻣㻚㻡 㻟㻢㻚㻞㻑 㻟㻢㻚㻞㻑 㻡㻜㻜௨ୗ 㻝㻝㻘㻡㻤㻟㻚㻞 㻟㻡㻘㻞㻢㻡㻚㻥 㻝㻞㻘㻢㻣㻡㻚㻟 㻟㻤㻘㻠㻡㻤㻚㻝 㻟㻞㻚㻤㻑 㻟㻟㻚㻜㻑 㻢㻜㻜௨ୗ 㻤㻘㻤㻤㻞㻚㻥 㻞㻥㻘㻟㻟㻝㻚㻟 㻥㻘㻣㻡㻡㻚㻜 㻟㻞㻘㻜㻥㻝㻚㻥 㻟㻜㻚㻟㻑 㻟㻜㻚㻠㻑 㻣㻜㻜௨ୗ 㻢㻘㻜㻠㻞㻚㻟 㻞㻝㻘㻣㻠㻞㻚㻠 㻢㻘㻢㻥㻝㻚㻥 㻞㻟㻘㻥㻣㻝㻚㻡 㻞㻣㻚㻤㻑 㻞㻣㻚㻥㻑 㻤㻜㻜௨ୗ 㻠㻘㻟㻜㻜㻚㻜 㻝㻣㻘㻜㻢㻥㻚㻥 㻠㻘㻤㻝㻟㻚㻡 㻝㻤㻘㻥㻤㻢㻚㻣 㻞㻡㻚㻞㻑 㻞㻡㻚㻠㻑 㻝㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻡㻘㻜㻞㻡㻚㻢 㻞㻞㻘㻠㻢㻜㻚㻟 㻡㻘㻢㻢㻡㻚㻜 㻞㻡㻘㻝㻥㻣㻚㻡 㻞㻞㻚㻠㻑 㻞㻞㻚㻡㻑 㻝㻘㻡㻜㻜௨ୗ 㻠㻘㻝㻞㻝㻚㻠 㻞㻞㻘㻥㻞㻥㻚㻤 㻠㻘㻜㻟㻞㻚㻤 㻞㻠㻘㻣㻥㻡㻚㻥 㻝㻤㻚㻜㻑 㻝㻢㻚㻟㻑 㻞㻘㻜㻜㻜௨ୗ 㻤㻡㻜㻚㻝 㻤㻘㻞㻡㻞㻚㻜 㻤㻟㻢㻚㻞 㻥㻘㻜㻞㻠㻚㻥 㻝㻜㻚㻟㻑 㻥㻚㻟㻑 㻞㻘㻜㻜㻜㻌㻌㉸ 㻡㻣㻜㻚㻤 㻟㻜㻘㻤㻡㻢㻚㻣 㻢㻟㻟㻚㻟 㻟㻣㻘㻜㻡㻞㻚㻜 㻝㻚㻤㻑 㻝㻚㻣㻑 ྜィ 㻣㻟㻘㻝㻥㻞㻚㻟 㻞㻢㻡㻘㻟㻤㻡㻚㻤 㻣㻢㻘㻢㻜㻥㻚㻤 㻞㻤㻢㻘㻤㻡㻡㻚㻡 㻞㻣㻚㻢㻑 㻞㻢㻚㻣㻑 ༊ศ 㻞㻜㻝㻠ᖺᗘ 㻞㻜㻝㻣ᖺᗘ 表 11 税率の改正による影響 ༢䚷㻝㻜൨㻌㻘㻌䠂 㻞㻜㻝㻠ᖺᗘ 㻞㻜㻝㻣ᖺᗘ ศ㞳ㄢ⛯䛻䜘 䜛 㻯㻵㼀䛾 ㄢ⛯䝧䞊䝇 ศ㞳ㄢ⛯䛻䜘 䜛 㻯㻵㼀䛾 ㄢ⛯䝧䞊䝇 ྜ ྜ 㻭 㻮 㻭㻓 㻮㻓 㻭㾂㻮 㻭㻓㾂㻮㻓 㻞㻘㻜㻜㻜㻌㻌㉸ 㻡㻘㻞㻠㻜㻚㻤 㻟㻡㻘㻟㻠㻢㻚㻞 㻡㻘㻢㻢㻟㻚㻞 㻠㻝㻘㻡㻡㻤㻚㻟 㻝㻠㻚㻤㻑 㻝㻟㻚㻢㻑 㻞㻜㻝㻠ᖺᗘ 㻞㻜㻝㻣ᖺᗘ ༊ศ
VI むすびにかえて
本稿では、所得税の税収調達能力から、税収入のイロージョンについて計測 を行った。税収のイロージョンは、課税ベースを狭めることによるイロージョ ン、課税ベースからのイロージョンと、課税ベースから税額を算定するときに 生じるイロージョンの2つがあり、どちらのイロージョンも所得税の税収調達 能力に大きく影響を与える。また、本稿では所得税制の改正によって、税収入 のイロージョンがどのような影響を受けるのかについても分析を行った。計測と分析結果から、以下のことが明らかになった。 ・課税ベースからのイロージョンとして最も大きな割合をしめるものは給与 所得控除である。所得控除を含めた課税ベースからのイロージョン全体に うち、給与所得控除は51.4%をしめる。 ・給与所得控除の次に課税ベースからのイロージョンとして大きなものは、 社会保険料控除と基礎控除である。 ・課税ベースからのイロージョンが所得控除前の所得に占める割合は、低所 得から高所得階級になるに従い減少している。 ・課税ベースから税額を算定するときに生じるイロージョンのうち、課税上 の優遇措置で最も大きいものは、退職所得の優遇措置であり、次に公的年 金控除が続く。 ・2017年度度の課税ベースからのイロージョンと課税ベースから税額を算 定するときに生じるイロージョンによる所得税収入の減少額は総額22兆 7,705億円と計測されるが、2,000万円超の所得階級の減少額が最も大き く、その多くは分離課税や課税上の優遇措置によるものである。 ・2015年度の最高税率の改正による課税ベースから税額を算定するときに 生じるイロージョンは、税制の改正によって小さくなった。一方、2016 年度の給与所得控除の改正による課税ベースからのイロージョンは、税制 の改正の影響はほとんどなかった。 所得税収入のイロージョンは、本来課税されるべき所得に課税がなされな いという点で課税の公平に反するものである。加えて、所得税の税収調達能力 という観点からも決して望ましいものではない。これらのことを踏まえつつ、 本稿で得た結果から、今後の所得税制の改正は、2,000万円超の所得階級のイ ロージョンを小さくするようなことが検討される必要がある。具体的には、分 離課税や課税上の優遇措置などの見直しである。 ただし、本稿で測定した所得税収入のイロージョンの中には、社会・経済政 策的な目標を達成するためのものがある。そのため、単純にイロージョンを小 さくすれば良いという訳では無く、それらの政策目標の効果の検証に基づいて 検討がなされるべきである。また、計測したイロージョンが、所得税制の変更
にともなう経済行動の変化によって異なることは無いという仮定に基づいたも のであることには注意を要する。 所得税はわが国の基幹税であり、今後もあるべき所得税のあり方が問われ、 検討がなされる。そこで重要なことは、イロージョンによって所得税の税収調 達能力をなるべく損ねることなく、かつ水平的公平、垂直公平の課税の公平を 考慮し、証拠に基づいた所得税制をデザインすることである。 参考文献
Stanley S.Surrey[1973]Pathways to Tax Reform : The Concept of Tax Expenditures, Harvard University Press.
石 弘光[1976]「所得税の tax erosion : 所得階層別にみた一つの計測」『一橋論 叢』第 75 号 1 巻 pp.71-91 石 弘光[1979]『租税政策の効果』東洋経済新報社 石 弘光[1981]「課税所得捕捉率の業種間格差─クロヨンの一つの推計─」『季刊 現代経済』第 42 号 pp.72-83 上村 敏之[2008]「所得税における租税支出の推計─財政の透明性の観点から─」 『会計検査研究』第 38 号 pp.11-24 貝塚 啓明[1973]「所得税制のタックス・ベース」 林 健久 貝塚啓明編『日本の 財政』東京大学出版会 鈴木 健司[2012]「所得税の所得階層別にみたイロージョンの計測」『日本福祉大 学経済論集』第 45 号 pp.45-61 林 宏昭[1987]「第 5 章 所得税−勤労所得と資産所得−」,橋本 徹 山本 栄一 編[1987]『日本型税制改革』有斐閣 林 宜嗣[1987]『現代財政の再分配構造』有斐閣 藤田 晴[1994]『所得税の基礎理論』中央経済社
Musgrave,R. A.[1959]“The Theory of Public Finance” McGraw-Hill[和訳 木下 和夫監修[1961]『マスグレイヴ財政理論Ⅰ』有斐閣]
横山 彰[2017]「租税支出の政治的要素と政策的含意」『会計検査研究』第 55 号 pp.5-12
資料
国税庁『国税統計から見た民間給与の実態』 国税庁『国税統計からみた申告所得税の実態』 内閣府『国民経済計算年報』
日本銀行『資金循環統計』