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愛知県内の保育者養成校における「保育者論」の開講時期と教授内容の検討

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愛知県内の保育者養成校における「保育者論」の開

講時期と教授内容の検討

著者

清 葉子

雑誌名

教育学部紀要

12

ページ

189-200

発行年

2019-03-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1454/00002627/

(2)

189 * 椙山女学園大学教育学部 本論文は,椙山女学園大学教育学部紀要の投稿・執筆規程2に基づき査読を受けた(2018年12月25

要  旨

 「保育職論」は,2011年の保育士養成課程の改正で新設された保育士養成課程必修 科目であり,保育の本質・目的に関する科目である。2019年の保育士養成課程の改 正では,「キャリアパスを見据え,より組織的な運営の下で継続して保育者としての 専門性の向上を図ること等の重要性を理解させる」よう教授内容の充実が求められる こととなった。そこで本研究では, 愛知県内の保育者養成大学の Web site で公開され ている2018年度のシラバス等を用いて「保育者論」の開講時期・教授内容等につい て調査・分析を行った。  その結果,「保育者論」の開講時期は,大学1年から2年前期までの初年次教育と して行われる場合と,2年生後期から始まる保育実習や教育実習と並行して学ぶ場合 とに大別された。授業担当者は,約半数が現場経験を有する教員が担当しており,教 授内容については,保育士養成課程や教職課程コアカリキュラムに示されている内容 を扱うだけではなく,開講学年が2年生以上になるとアクティブ・ラーニングを用い た模擬授業やグループ・ディスカッション,発表といった独自の多様な内容が展開さ れている養成校が多くなった。授業目標として保育者の仕事への理解や役割・資質・ 専門性を学ぶことを通して,社会から求められている保育者像や学生一人ひとりが理 想とする保育者像を形成することを掲げていることからも,授業担当者は他の保育者 養成カリキュラムとの関連も意識し,学生が「保育者論」を通してどのようなことを 学んでいるのかを調査・分析し,定期的に教授内容を見直すことも必要である。 キーワード:保育者論,保育者養成課程カリキュラム,教職課程コアカリキュラム, 保育者の専門性,教授内容,アクティブ・ラーニング

Key words:Professionalism of Kindergarten and Nursery Teacher, kindergarten and nursery

teacher curriculum, Core Curriculum of Teacher Training Program, Childcare professionalism, Contents of the teaching curriculum, Active learning  

原著(Article)

愛知県内の保育者養成校における「保育者論」の

開講時期と教授内容の検討

The curriculum location and contents of “Professionalism of

Kindergarten and Nursery Teacher” on nursery teacher

program in Universities, Aichi Prefecture

清 葉子

*

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はじめに

 近年の社会情勢の変化に伴い,保護者の就労状況等や子ども・家庭環境といった保 育を取り巻く様々な状況は変化し複雑化している。同様に保育者に求められる社会的 役割や専門性も多様化してきた。2008年の保育所保育指針の改定・告示に伴い, 2010年1月から改定内容をふまえた保育士養成課程の見直しが行われ,2010年3月 24日「保育士養成課程等の改正について(中間まとめ)」1)が示され,2011年4月より 適用された。その後,2015年4月「子ども・子育て支援新制度」の施行,2017年3 月31日に保育所保育指針が改定され,保育・子育て支援に対し量的拡充と質的充実 が図られてきた。現行の保育士養成課程は,2011年度の施行から7年目を迎え, 2017年5月から保育士養成課程等検討会において,保育士養成課程等の見直しにつ いて検討が行われ,2017年12月に報告書「保育士養成課程等の見直しについて(検 討の整理)」2,3)がとりまとめられ,2019年度より適用されることとなっている。また, 今回初めて2017年3月31日に「幼稚園教育要領」4)「保育所保育指針」5)「幼保連携型認 定こども園教育・保育要領」6)の3法令が同時に改訂(定)告示され,2018年4月1 日より施行されている。この改訂(定)により幼稚園・保育所・こども園が幼児教育 施設として位置づけられ,教育及び保育において「育みたい資質・能力」 4,5,6)や「幼 児期の終わりまでに育ってほしい姿」4,5,6)が示され,「主体的・対話的で深い学び」4,5,6) や保育の質の向上を図る「カリキュラム・マネジメント」4,5,6)なども組み込まれた。 このように保育をめぐる状況においては,さまざまな変革が同時に進行しており, 2019年改正の保育士養成課程はこうした状況をふまえて検討が行われた。  2011年の保育者養成課程の改正以降,各保育者養成校において伊藤(2018)・渡辺 (2016)による「保育内容総論」の教授内容や指導法に関する研究7,8)や青山(2018) による保育内容指導法に関する研究9),鈴木・潮谷(2017)による「子ども家庭福祉」 の授業展開に関する研究10)があり,保育士養成課程科目に関する教授内容の分析・検 討や授業実践報告がされている。  そこで本研究では,2011年の保育士養成課程の改正1)により新設された保育士養成 課程必修科目である「保育者論」について,愛知県内の保育者養成大学の Web site で 公開されている2018年度のシラバス等を用いて「保育者論」の開講時期,教授内容 等について調査・分析を行い,「保育者論」の現状と課題について検討した。

1.保育士養成課程「保育者論」の変遷

⑴ 保育士養成課程等の改正から  2009年11月から2010年3月まで6回にわたり,保育士養成課程の改正及びそれに 伴う保育士試験の見直し等について検討がされてきた1)。「保育者論」(講義2単位) は,それまで「保育原理」に含まれていた保育士の役割と責務,専門性や制度的位置

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づけ等について学ぶ科目として新設された。2017年には保育所保育指針改定に伴う 保育士養成課程等の見直しが行われ2),見直しの観点として 保育者としての資質・ 専門性の向上があげられ,「保育や職員の質の向上について,より組織的な運営の下 で継続して自己研鑚を図ること等の重要性に鑑み,関連する教科目の教授内容等を充 実することが必要である」11)とし,教授内容の充実の方向性が示された。 《教授内容等の充実》 ・ 現行の教科目「保育者論(講義2単位)」の目標及び教授内容について,以下の内容を 含め,充実することが必要である。  (a)  組織的な施設運営の下での,保育の専門職としてのキャリアアップの重要性,他の 保育士等や専門職(医師,看護師,栄養士等)との協働,組織的な保育力の向上に 求められるリーダーシップなどに関して理解を深めることなど,保育や職員の質の 向上に関する組織的な体制や取組に関する内容  (b)  保育の専門職として実践を振り返ること,学び続けること,子どもの内面的な学び の力を読み取ること等の重要性 《留意すべき事項》 ・ 各指定保育士養成施設においては,現行の教科目「保育者論(講義2単位)」に上記の 教授内容等の充実を適切に反映させ,実効性をもって教育が展開されるような工夫が必 要である。  このように「保育者論」の教授内容については,学生がどのような保育者を目指す のかという保育者像の形成にとどまらず,保育者として就職してからも見通しをもっ てキャリアアップをしながら保育職を継続できるよう,就職後も保育者としてどのよ うに成長していくのかを見通す内容が求められるようになった。保育者養成の柱の一 つとも考えられる。 ⑵ 「保育職論」の教授内容について  2011年,2019年の改正で保育士養成課程等検討会から「保育者論」の「教科目の 教授内容」が示されている1,11)。また,保育教諭養成課程研究会・日本保育者養成教 育学会12)からシラバス作成の参考資料として示されている教職課程コアカリキュラム と対応した教授内容対応表をもとに「保育者論」の教授内容の変遷・比較表を作成し た(表1,表2)。  2011年改正の際には,平成22年度第3回現代保育研究所研修会(現 保育士養成研 究所研修会)で保育士養成の改正をうけて「保育者論」の教授法の基本と具体的展開 という研修会が開催されている13)。そこでは,保育者養成校で行われている「保育者 論」の模擬講義の後,教授内容や具体的な展開についてシンポジウムが行われた。 2011年に新設されて以降,「保育者論」のシラバスや授業実践についての研究がされ てきている。青山(2011)14),佐藤(2012)15),徳永(2015)16),丸田(2017)17)は,「保 育者論」のシラバスに着目して教授内容とシラバスの分析と検討を行っている。また, 香曽我部(2011)18)は,先行研究の分析・分類から保育者の専門性がどのようにパラダ

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表1. 「保育者論」の教授内容の変遷 保育士養成課程 改正前 保育士養成課程  201 1 改正 【保育の本質・目的の理解に関する科目】 〈科目名〉保育原理(講義・ 4 単位) 〈目標〉 1 .保育の意義について明確な認識をもたせ、その依拠する原因を理解させる。 2 .保育の場について、その歴史と類型について理解させる。 3 .保育所における保育の原理と特性、環境、方法について理解させる。 4 .発達過程に応じた保育について理解させる。 5 .保育所における保育の健康・安全について理解させる。 6 .保育所における多様な保育ニーズについて理解させる。 7 .保育所と家庭、地域との連携について理解させる。 8 .保育所における相談援助の基本原理と実践について理解させる。 9 .保育所における自己評価について理解させる。 【保育の本質・目的に関する科目】 〈科目名〉保育原理(講義・ 2 単位) 〈目標〉 1 .保育の意義について理解する。 2 . 保育所保育指針における保育の基本について 理解する。 3 .保育の内容と方法の基本について理解する。 4 .保育の思想と歴史的変遷について理解する。 5 .保育の現状と課題について考察する。 〈内容〉 1 .保育の意義 ⑴ 保育の理念と概念 ⑵ 児童の最善の利益を考慮した保育 ⑶ 保護者との協働 ⑷ 保育の社会的意義 ⑸ 保育所保育と家庭的保育 ⑹ 保育所保育指針の制度的位置づけ 2 .保育所保育指針における保育の基本 ⑴ 養護と教育の一体性 ⑵ 環境を通して行う保育 ⑶ 発達過程に応じた保育 ⑷ 保護者との緊密な連携 ⑸ 倫理観に裏付けられた保育士の専門性 3 .保育の目標と方法 ⑴ 現在を最もよく生き、望ましい未来をつくり 出す力の基礎を培う ⑵ 生活と遊びを通して総合的に行う保育 ⑶ 保育における個と集団への配慮 ⑷ 計画・実践・記録・評価・改善の過程の循環 4 .保育の思想と歴史的変遷 ⑴ 諸外国の保育の思想と歴史 ⑵ 日本の保育の思想と歴史 5 .保育の現状と課題 ⑴ 諸外国の保育の現状と課題 ⑵ 日本の保育の現状と課題 【保育の本質・目的に関する科目】 新設: 〈科目名〉保育者論(講義・ 2 単位) 〈目標〉 1 .保育者の役割と倫理について理解する。 2 .保育士の制度的な位置づけを理解する。 3 .保育士の専門性について考察し、理解する。 4 .保育者の協働について理解する。 5 .保育者の専門職的成長について理解する。 〈内容〉 1 .保育者の役割と倫理 ⑴ 役割 ⑵ 倫理 2 .保育士の制度的位置づけ ⑴ 資格 ⑵ 要件 ⑶ 責務 3 .保育士の専門性 ⑴ 養護と教育 ⑵ 保育士の資質・能力 ⑶ 知識・技術及び判断 ⑷ 保育の省察 ⑸ 保育課程による保育の展開と自己評価 4 .保育者の協働 ⑴ 保育と保護者支援にかかわる協働 ⑵ 専門職間及び専門機関との連携 ⑶ 保護者及び地域社会との協働 ⑷ 家庭的保育者等との連携 5 .保育者の専門職的成長 ⑴ 専門性の発達 ⑵ 生涯発達とキャリア形成 〈内容〉 1 .保育の本質 ⑴ 保育の意義とその思想 ⑵ 保育の目標 ⑶ 子どもの発達特性 ⑷ 保育の原理 2 .保育の場 ⑴ 家庭 ⑵ 保育施設 ⑶ 家庭的保育 3.保育の歴史と現状 4.保育所保育の原理 ⑴ 保育の特性 ⑵ 保育の目標 ⑶ 保育の方法 ⑷ 保育の環境 5 .保育所保育の内容 ⑴ 保育の内容構成の基本方針 ⑵ 養護に関わるねらい及び内容 ⑶ 教育に関わるねらい及び内容 6.保育所保育の計画 ⑴ 保育の計画作成上の基本的視点 ⑵ 保育課程と指導計画 ⑶ 保育の計画作成上の留意事項 7 .発達過程に応じた保育と指導計画 ⑴ 3 歳未満児の保育と指導計画 ⑵ 3 歳以上児の保育と指導計画 8 .保育所の健康・安全上の留意事項 ⑴ 健康上の留意事項 ⑵ 安全上の留意事項 9 .多様な保育ニーズへの対応上の留意事項 ⑴ 入所児童の多様な保育ニーズへの対応 ⑵ 地域における子育て支援 10.子育てに関する相談援助活動 ⑴ 子育て支援ニーズと相談援助活動 ⑵ 相談援助の基本原則 ⑶ 保育所における相談援助活動 ⑷ 地域における相談援助ネットワーク 11.保育所における自己評価 ⑴ 保育士の自己評価 ⑵ 保育所の自己評価 ⑶ 職員の研修と資質の向上 12 .家庭、地域との連携 ⑴ 保育における連携の意味 ⑵ 家庭との連携 ⑶ 幼稚園・小学校との連携 13.保育士の資質と任務 *下線は, 201 1年と 2019 年で変更となった箇所 * 201 1年改正によりこれまでの「保育原理」から保育士の役割と責務に関する内容を「保育者論」として独立させた

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表2.「保育者論」の教授内容の比較 保育士養成課程 2019 改正 教職課程コアカリキュラム(2017) 【保育の本質・目的に関する科目】 〈教科目名〉保育者論(講義・2単位) 〈目標〉 1.保育者の役割と倫理について理解する。 2.保育士の制度的な位置づけを理解する。 3.保育士の専門性について考察し、理解する。 4.保育者の連携・協働について理解する。 5.保育者の資質向上とキャリア形成について理解する。 〈内容〉 1.保育者の役割と倫理 ⑴ 役割・職務内容 ⑵ 倫理 2.保育士の制度的位置付け ⑴ 児童福祉法における保育士の定義 ⑵ 資格・要件 ⑶ 欠格事由、信用失墜行為及び秘密保持義務等 3.保育士の専門性 ⑴ 保育士の資質・能力 ⑵ 養護及び教育の一体的展開 ⑶ 家庭との連携と保護者に対する支援 ⑷ 計画に基づく保育の実践と省察・評価 ⑸ 保育の質の向上 4.保育者の連携・協働 ⑴ 保育における職員間の連携・協働 ⑵ 専門職間及び専門機関との連携・協働 ⑶ 地域における自治体や関係機関等との連携・協働 5.保育者の資質向上とキャリア形成 ⑴ 資質向上に関する組織的取組 ⑵ 保育者の専門性の向上とキャリア形成の意義 ⑶ 組織とリーダーシップ 【各教各科目に含めることが必要な事項】 教職の意義及び教員の役割・職務内容(チーム学校への対応を含む。) 〈一般目標〉 1. 我が国における今日の学校教育や教職の社会的意義を理解する。 2. 教育の動向を踏まえ、今日の教員に求められる役割や資質能力を 理解する。 3. 教員の職務内容の全体像や教員に課せられる服務上・身分上の義 務を理解する。 4. 学校の担う役割が拡大・多様化する中で、学校が内外の専門家等 と連携・分担して対応する必要性について理解する。 〈到達目標〉 ⑴ 教職の意義  1) 公教育の目的とその担い手である教員の存在意義を理解している。  2) 進路選択に向け、他の職業との比較を通して、教職の職業的特 徴を理解している。 ⑵ 教員の役割  1) 教職観の変遷を踏まえ、今日の教員に求められる役割を理解し ている。  2)今日の教員に求められる基礎的な資質能力を理解している。 ⑶ 教員の職務内容  1) 幼児、児童及び生徒への指導及び指導以外の校務を含めた教員 の職務の全体像を理解している。  2) 教員研修の意義及び制度上の位置付け並びに専門職として適切 に職務を遂行するため生涯にわたって学び続けることの必要性 を理解している。  3) 教員に課せられる服務上・身分上の義務及び身分保障を理解し ている。 ⑷ チーム学校運営への対応  1) 校内の教職員や多様な専門性を持つ人材と効果的に連携・分担 し、教員とチームとして組織的に諸課題に対応することの重要 性を理解している。 *下線は,2011年と2019年で変更となった箇所  *教科目の教授内容および教職課程コアカリキュラムより筆者が構成 イムシフトしてきたかを示した。その他にも,新井・金井(2006)19),和田(2016)20), 梨本(2016)21)は,各養成校における「保育者論」の授業実践報告をしている。

2.方法

研究対象  保育者養成校で開講されている「保育職論」について分析するため,2018年4月 1日時点で厚生労働省の 指定保育士養成施設一覧22)に記載されている愛知県内指定保 育士養成施設から,4年制大学19大学22学科のうち,保育士資格・幼稚園免許状を 取得できる 19大学21学科を研究対象として抽出した。 分析方法  対象として抽出した19大学21学科の大学の Web site で公開されている2018年度 「保育職論」のシラバス,教員情報,カリキュラム等の情報から,「保育職論」の①開 講時期②担当者③教授内容について分析した。

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表3.「保育者論」の開講時期と実習の関係 「保育者論」の開講時期と実習 授業科目 専・非 担当者の現場経験 テキストラーニングアクティブ1年前期 1年後期 2年前期 2年後期 3年前期 3年後期 4年前期 4年後期 1 保育者論 専 ○ 〇  ○ 2 保育者論 専  ○ 3 保育職論 専 〇  ○ 4 保育者論 専 ○ 〇 〇  ○ 5 保育者論 専 ○ 〇  ○ 6 保育者論 専 〇  ○ 7 教職論 専  ○ 8 保育者論 非 ○  ○ 9 教職論 専 〇  ○ 10 教職論 専 〇  ○ 11 保育者論 専 ○ 〇  ○ 12 教職論 専  ○ 13 保育者論 専 ○ 〇  ○ 14 教職論 専  ○ 15 教職論 専 〇 〇  ○ 16 保育職論 専 ○ 〇  ○ 17 保育職論 非 ○ 〇  ○ 18 保育職論 非 ○ 〇  ○ 19 保育職論 専 ○ 〇 〇  ○ 20 保育職論 専 〇  ○ 21 教職論 専 〇 〇  ○ ○は,該当する項目 は実習 愛知県内の指定保育士養成4年制大学19大学22学科のうち,保育士資格・幼稚園免許状を取得できる19大学21学科を研究対象と して抽出し,分析した。

3.結果と考察

⑴ 開講時期について  調査対象として抽出した19大学21学科の Web site で入手できた情報を,授業の状 況及び「保育者論」の開講時期と実習について分類した(表3)。  「保育者論」を教職課程の「教職論」と読み替えて行っている養成校が33%あった。 開講時期と実習との関係については,図1のようになった。  「保育者論」の開講時期については,実習が始まる2年前期までに開講している養 成校が57%であった。保育を学ぶ導入として初年度教育の役割も担っていると推測 される。次に多いのは,実習を経験する2年後期から3年前期に開講している養成校 であった。学生が経験した内容とリンクさせながら実体験をもとに保育者への理解を 深める効果が期待されるであろう。  椙山女学園大学教育学部では「保育職論」という名称で2009年より開講されてい る。当初開講時期は,3年次開講科目であったが,2016年度より2年次後期開講科目 となった。それは,教育や保育に関する基礎を学習しながら,実習やボランティアな どを通して保育現場の実情を理解したうえで受講し,3年生になり実習経験を積む中 で「保育職論」での学びを深められるように開講時期を変更したからである。実施年 限が異なれば, 学生の経験や学びに応じた目標や教授内容を設定することが必要であ る。

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0 㧞 㧠 6 8 㧝年前期 㧝年後期 㧞年前期 㧞年後期 㧟年前期 㧟年後期 㧠年前期 㧠年後期 養成校の校数 図1.「保育者論」の開講時期と実習の関係 ⑵ 担当者について  Web site で確認できた「保育者論」の担当者は,専任が 86%であった。複数の教員 でオムニバス開講している養成校が2校あった。また非常勤が担当している養成校も あったが,非常勤授業担当者はすべて保育経験を有する教員または現職の私立幼稚園 長であった。授業担当者の保育現場での保育経験を有する教員の割合は,43%であっ た。現場経験者の内訳は,幼稚園・保育園の園長経験者及び保育士・幼稚園教諭経験 者であった。「保育士養成課程等の改正について(中間まとめ)」の養成施設の質の確 保と向上には,「養成施設において,保育士がその専門性や経験を生かし養成に携わ ることも重要であることから,保育士資格のある者,保育現場での保育経験がある者 を教員として配置するなど,保育の専門性を有する教員の確保とその育成を視野に入 れることが必要である。」1)と明記されていることからも,保育者養成校において保育 現場での保育経験を有する教員の経験を生かした授業展開も効果的であろう。非常勤 の保育経験を有する教員を配置しているのは, 「保育の専門性を有する教員」による 授業展開を養成校が求めているからではないだろうか。また,授業担当者が現場経験 を有する教員だけではなく,シラバスには現職保育者の講演会を開催したり,他の機 関との連携がうかがえる記載もあった。「保育の専門性を有する教員」について中間 まとめには,授業担当者には保育経験を有するだけではなく教員の質を担保する必要 もあることから,教員の確保が課題となっていると指摘されている。授業担当者へは 経験だけではなく,現場に即した専門性を踏まえた授業を行うことが求められている。 ⑶ 教授内容について  シラバスに掲載されている教授内容と「幼稚園教諭養成課程と保育士養成課程を併 設する際の担当者及びシラバス作成について」12)を比較したところ,おおむね「保育

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0 2 4 6 8 養成校の校数 アクティヴ・ラーニングあり アクティヴ・ラーニングなし 㧝年前期 㧝年後期 㧞年前期 㧞年後期 㧟年前期 㧟年後期 㧠年前期 㧠年後期 図2.「保育者論」でのアクティブ・ラーニングの導入 士養成課程を構成する各教科目の目標及び教授内容について」23)に示される目標・教 授内容が盛り込まれていた。また,43%の養成校がテキストを使用していた。テキス トを使用していない養成校については,毎回授業に関する資料を配布すると記載され ていた。授業内容については,保育士養成課程等検討会に示された教授内容以外にも 絵本,諸外国の保育,事例検討,実習に関連する内容など独自の内容を組み込んでい た養成校もあった。  教授内容について徳永(2015)は,「学生の認識度合いや各教科の教授内容をふま えて「保育者論」において教授すべき内容の検討を行う必要がある」16)と指摘し,佐 藤(2012)は,「保育者が実践する内容の理論的な裏付けをするものとして位置づけ ること」15)や自分の実習体験をふまえて「学生が主体的に考える場面を設定すること が必要なのではないだろうか」15)と提案している。2017年第6回保育士養成課程等検 討会では,「保育者論」において「学生に保育の現場の魅力や,やりがいを具体的な イメージをわかりやすく伝えていくことや,実際に現場に行く機会を増やす事等を通 じ,学生のモチベーションを上げていくことが重要。」24)との議論がされたとの記録が あり,「保育者論」は保育士養成課程に示された内容を扱うとともに,開講時期の項 目でも述べたように,開講時期と教授内容との関連も考慮し学生の経験や学びに応じ た目標や教授内容を設定することが効果的な授業となるだろう。また,各養成校の学 びの段階や目指す保育者像に応じた多様な授業内容を扱うことも可能であり,独自の 授業展開も期待できる。 ⑷  授業形態  シラバスの内容から,授業形態を分析したところ事例検討,ビデオカンファレン ス,指導案の作成,模擬授業,グループ・ワーク,プレゼンテーションといったアク ティブ・ラーニングを導入している養成校もあった。図2に示したように,開講学年

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が上がるにつれてアクティブ・ラーニングを取り入れているところが増えた。内容か ら,学生が実習やボランティアを通して得られた子ども理解や保育をみる力などを生 かした活動内容となっていた。  「アクティブ・ラーニング」は,2012年中央教育審議会により大学教育の質的転換 として,学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ ラーニング)への転換が必要と提案された。中央教育審議会の用語集によると,「ア クティブ・ラーニング」とは,「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり, 学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に 学修することによって,認知的,倫理的,社会的能力,教養,知識,経験を含めた汎 用的能力の育成を図る。発見学習,問題解決学習,体験学習,調査学習等が含まれる が,教室内でのグループ・ディスカッション,ディベート,グループ・ワーク等も有 効なアクティブ・ラーニングの方法である。」25)と定義している。上田ら(2017)の保 育者養成校におけるアクティブ・ラーニングに関する研究の分析から,アクティブ・ ラーニングは実習指導と保育内容及び演習科目で多く実践されており,年々増加傾向 であることが報告されており,アクティブ・ラーニングの活用実態から「アクティ ブ・ラーニングがどのような学修と結び付くのか,またその力が保育者養成としてど のように寄与するものであるか明らかにすることが求められる」26)と問題提起してい る。また,丸山・山下・大倉(2018)は保育者養成校の授業内で行われているアク ティブ・ラーニングの実態を調査し「学生に対して,どのように影響しているかを合 わせて検討することで,授業においてどのようにアクティブ・ラーニングを活用する ことが学生の主体性を高めることと繋がるのかを明らかにしたい」27)と課題を挙げて いる。  「保育者論」におけるアクティブ・ラーニングの導入においても,どのようなねら いをもって行うか内容を精査するとともに,アクティブ・ラーニングを通して学生に どのようなことが得られたか効果測定を行い,活動のフィードバックを行う必要があ るだろう。

4.まとめ 今後の課題

 2017年の保育士養成課程等検討会の設置の目的として「子どもや家庭を取り巻く 様々な環境の変化等に伴う子どもの育ちの課題や保護者支援の必要性など,保育所や 保育士に求められる役割や機能が深化・拡大しており,保育の質を担う保育士の役割 は重要となっている」2)と示されている。また,授業目標として保育者の仕事への理 解や役割・資質・専門性を学ぶことを通して,社会から求められている保育者像や学 生一人ひとりが理想とする保育者像を形成することを掲げていることからも,「保育 者論」が果たす役割は大きい。授業担当者は,他の保育者養成カリキュラムとの関連 や他の教科での学生の学びの段階や授業内容などカリキュラム・マップを意識するこ

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とはもちろん,どのような保育者を養成するかという点においては,大学における3 つのポリシーといわれる「アドミッション・ポリシー」「カリキュラム・ポリシー」 「ディプロマ・ポリシー」で掲げられている保育者像も示していく必要もあるだろう。  本研究の分析の結果,「保育者論」の開講時期は,大学1年から2年前期までの初 年次教育としての段階と,2年生後期から始まる保育実習や教育実習と並行して開講 し,学生が実際の保育現場での体験とリンクさせながら学ぶ段階に分かれた。各養成 校のカリキュラム・ツリーのあり方によって,学生にとって「保育者論」を学ぶ意味 も変わってくることを改めて確認することができた。  教授内容については,保育士養成課程や教職課程コアカリキュラムに示されている 内容を扱うだけではなく,開講学年が2年生以上になるとアクティブ・ラーニングを 用いた模擬授業やグループ・ディスカッション,プレゼンテーションといった独自の 多様な内容が展開されている養成校が多くなり,実習を意識した内容を扱う養成校も 見られた。担当者は,約半数が現場経験を有する教員が担当しており,現場経験を有 する教員が担当することで保育現場の実際に応じた内容を展開することも可能であ る。「保育者論」は,授業担当者の創意工夫により,学生の実習やボランティア経験 等もふまえた多様かつ効果的な教育が期待できる。  今回は,教授内容の深い分析までは行ってない。より充実した「保育者論」を展開 していくには,学生が「保育者論」を通してどのようなことを学んでいるのかを調 査・分析し,定期的に教授内容を見直すことも必要であろう。今後は「保育者論」を 通しての学生の学びの内容や講義を通しての学生の意識の変容という視点から教授内 容について検討を深めたい。

謝  辞

 研究をまとめるにあたり, 椙山女学園大学教育学部准教授野崎健太郎先生にご助言 をいただきました。加えてお二人の査読者からは親切な励ましとご助言を頂きまし た。ここに感謝申し上げます。 ■引用文献 1) 厚生労働省保育士養成課程等検討会(2010)保育士養成課程等の改正について(中間まとめ) 平成22年3月24日 2) 厚生労働省保育士養成課程等検討会(2017)保育士養成課程等の見直しについて(検討の整理) [報告書] 3) 厚生労働省保育士養成課程等検討会(2017)保育士養成課程等の見直しについて─より実践力 のある保育士の養成に向けて─(検討の整理)2017年12月4日 4) 文部科学省(2018)幼稚園教育要領 解説.平成30年3月フレーベル館. 5) 厚生労働省(2018)保育所保育指針解説.フレーベル館. 6) 内閣府・文部科学省・厚生労働省(2018)幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説.平成 30年3月 フレーベル館.

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7) 伊藤博美(2018)保育者養成課程における「保育内容総論」─テキスト本の分析から─.椙山 女学園大学教育学部紀要,11,127‒134. 8) 渡辺一弘(2016)「保育内容総論」の指導法についての検討─大分県の保育者養成校の事例を中 心に─.幼児教育研究,2,1‒13. 9) 青山佳代(2018)保育者養成における保育内容指導法に関する一考察─「環境」と「人間関係」 に注目して─.柳城こども学研究,1,31‒49. 10) 鈴木晴子・潮谷恵美(2017)子どもの暮らしに目を向けるための授業展開に関する一考察─科 目「子ども家庭福祉」に注目して─.十文字学園女子大学紀要,48(2),125‒131. 11) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知(2018)指定保育士養成施設の指定及び運営の基準に ついて(平成30年4月27日) 12) 保育教諭養成課程研究会・日本保育者養成教育学会(2018)幼稚園教諭養成課程と保育士養成 課程を併設する際の担当者及びシラバス作成について 13) 平成22年度第3回現代保育研究所研修会(平成23年2月19日開催)資料(2011)講義Ⅰ 保育 士養成の改正をうけて 第1分科会保育者論 資料 14) 青山佳代(2011)保育士養成課程において求められるカリキュラムに関する考察:新設科目「保 育者論」のシラバスに注目して.金城学院大学論集.人文科学編,8(1),97‒105. 15) 佐藤達全(2012)短期大学における保育者養成と「保育者論」について.育英短期大学研究紀 要,29,73‒86. 16) 徳永聖子(2015)「保育者論」の教授内容の検討─保育者の専門性に関する学生の認識をもとに ─.清和大学短期大学部紀要,44,41‒54. 17) 丸田愛子(2017)保育者の専門性を理解する主体的な学びの検討:短期大学における科目「保 育者論」に着目して.児島女子短期大学紀要,52,141‒144. 18) 香曽我部琢(2011)保育者の専門性を捉えるパラダイムシフトがもたらした問題.東北大学大 学院教育学研究科研究年報,59(2),53‒68. 19) 新井れ江子・金井ミヨ子(2006)保育実践に生かす「教師・保育者論」の開発.関東短期大学 紀要,50,71‒90. 20) 和田幸子(2016)授業「保育者論」において目指す保育者像を探る試み:『窓ぎわのトットちゃ ん』を題材としたグループ発表をとおして.京都光華女子大学短期大学部研究紀要,54,247‒256. 21) 梨本竜子(2016)絵本から学ぶ保育者論:授業実践報告.新潟青陵大学短期大学部研究報告, 46,121‒129.

22) 厚生労働省 Web site 指定保育士養成施設一覧(平成30年4月1日時点)https://www.mhlw.go.jp/ content/000345025.pdf(2018.11.4閲覧) 23) 厚生労働省保育士養成課程等検討会(2017)保育士養成課程を構成する各教科目の目標及び教 授内容について 24) 厚生労働省保育士養成課程等検討会(2017)第6回保育士養成課程等検討会における検討内容 (例)等に対する主な意見 25) 中央教育審議会(2012)新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて─生涯学び続け, 主体的に考える力を育成する大学へ─(答申)平成24年8月28日,用語集 26) 上田敏丈・勝浦眞仁・加藤信子・加藤望・青木文美・上村晶・水落洋志・太田早津美(2017) 保育者養成校におけるアクティブ・ラーニング活用の実態と課題に関する研究─全国保育士養成 協議会研究発表論文集を対象として─.名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究, (28),37‒48. 27) 丸山笑里佳・山下晋・大倉健太郎(2018)保育者養成校におけるアクティブ・ラーニング活用 の実態と教員の工夫.岡崎女子大学・岡崎女子短期大学研究紀要,(51),79‒87.

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■ 分析対象とした保育者養成施設  厚生労働省の Web site,https://www.mhlw.go.jp/content/000345025.pdf(2018.11.4閲覧)の指定保育 士養成施設一覧(平成30年4月1日時点)に掲載されている愛知県内の指定保育士養成4年制大学 のうち,幼稚園教諭免状および保育士資格を取得できる大学19校21学科を対象とした。分析は,各 養成校の Web site に公開されている2018年度「保育職論」シラバス,教員情報,カリキュラム等の 情報を入手し,分析を行った。 分析対象とした保育者養成校は以下の通りである。 (厚生労働省 指定保育士養成施設一覧(平成30年4月1日時点)掲載順) ・桜花学園大学保育学部保育学科 ・桜花学園大学保育学部国際教養こども学科 ・日本福祉大学子ども発達学部子ども発達学科保育専修 ・名古屋学芸大学ヒューマンケア学部子どもケア学科幼児保育専攻 ・名古屋経済大学人間生活科学部教育保育学科 ・名古屋芸術大学人間発達学部子ども発達学科 ・愛知県立大学教育福祉学部教育発達学科 ・至学館大学健康科学部こども健康・教育学科 ・愛知教育大学教育学部初等教育教員養成課程幼児教育選修 ・中部大学現代教育学部幼児教育学科 ・愛知淑徳大学福祉貢献学部福祉貢献学科子ども福祉専攻 ・名古屋市立大学人文社会学部心理教育学科 ・同朋大学社会福祉学部社会福祉学科 ・名古屋女子大学文学部児童教育学科幼児保育学専攻 ・名古屋女子大学文学部児童教育学科児童教育学専攻幼児教育コース ・椙山女学園大学教育学部子ども発達学科乳幼児保育プログラム ・愛知東邦大学教育学部子ども発達学科 ・金城学院大学人間科学部現代子ども学科 ・東海学園大学教育学部教育学科保育専攻 ・岡崎女子大学子ども教育学部子ども教育学科 ・愛知学泉大学家政学部家政学科こどもの生活専攻

参照

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