椙山女学園大学
第二外国語としての中国語の学習者をとりまく言語
環境 : コミュニケーション能力の育成と「複言語
主義」の観点から
著者
寺西 光輝
雑誌名
教育学部紀要
号
5
ページ
47-57
発行年
2012
URL
http://id.nii.ac.jp/1454/00001780/
椙 山 女 学 園 大 学 教 育 学 部 紀 要(Journal of the School of Education, Sugiyama Jogakuen University)5:47∼57(2012)
論 文 脇『
第二 外国語とし ての中国語の学習 者を
とり まく 言語環境
コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能力 の 育 成 と 「 複 言 語 主 義 」 の 観 点 か ら
Linguistic Environment around the Chinese Learners
as the Second Foreign Language
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寺 西 光 輝 Mitsuteru Teranishi* わが 国の大 学 におけ る 第二外 国語科 目は、週1 、2 回程 度の 授業が1 年ない し2 年 で 終わるこ とが多 く、 またクラス規模 も比較 的大 きい場 合が多い ことから、 目標言語 を習 得する ための 十分な 環境が整っ ている とは言い難い 。で は、 この よう に高レベ ル の外 国語 を習 得す るこ とを 目標とし た科 目では なく、「教 養科 目」 など として 短期 間 で学 ばれる 中国語 の教育 にお いて は、 いか なる目標 を設定し、 またどの よう な授業運 営 をするこ とが望 ましい のだろう か。 こ れまでの多 くの入門 テキスト では、 一般に文 法や構 造を 中心 とし たシ ラバスが採用 さ れ(郭2007, 胡2009 )、 その授業内容 は文法 項 目の伝達 や√ 発音 の訓練、 あるい は構 文・ 単語を暗 記させるこ となどが中 心となっ て きた。そ れに対し て、近 年の外 国語教育の場 では、 文型を重視 する教師主 導型の教 授 法では、 コミュニ ケ ーション能力 を育成し たり、 自己 学習 の動 機を高め たりする た めには不十 分であ るこ とが 指摘さ れ、 コミュニ ケ ーション重視、 学習者中心 の新 た な 教 授法 が 開発 され て きた。 また、2001 年 に欧 州評 議会 が策 定し たCEFR (ヨ ーロ ッ パ言 語共通参 照枠) は、現在 外国語教 育におけ る一つ のグロ ーバルス タンダード とも なっ ている。 こ れらを どのように中 国語教育 に反映 させるか も、 一つの大 きな課題 と なるだろう。 また、 第二外 国語 とし て中国語 を選択する わが国 の学生に とっ ても、近年 の中国人 滞在 者・旅行 者の増 加か らすれば、 日常生活 や仕事 とい った社 会生活におい て、 なん らかの「課 題」 を遂 行す るための コミュニケ ーショ ン能力 が求 められる状況 となっ て い るとさ え言 える。 とす れば、こ の ような 学生 をと りまく学 外の言 語環境 を理解 し、 そ れをコミ ュニカ ティブ な教 室活動 に取り入 れ、さ らにそ れを社 会的実践 にむす びつ け るとい う、教 室内 外 の循環 を生 み出し てこそ、 よ り効果 的な言語 学習環 境 を整え、 また持続的 な自己学 習につ なげ るこ とも可 能に なる だろう。こ うした目論見 の下、 本 稿 では、従 来の教授 法や学 習観を見 直す とともに、 第二外国語 としての中 国語の 選択 者 が、授業 開始後 に教室外 におい て、 ネイ ティブスピ ーカ ーとどの よう な接 触を起 こ し ており、 そこで どの よう な経験 をし てい るのか、 また日常生 活におい て学習者 がど 47寺西 光輝/ 第二外 国語としての中国語 の学習者をとり まく言 語環境 う い っ た こ と へ 注 意 を 向 け る よ う に な る の か と い う 点 に つ い て の 、 基 礎 的 な 分 析 を 試 み た ○ ・ ・I 。 ・ 1 − コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 育 成 の た め の 外 国 語 教 授 法 短 期 間 の 学 習 で 学 生 達 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 を 育 成 す る た め に 、 い か な る 項 目 や 活 動 を 授 業 に 取 り 入 れ 、 ま た そ れ を ど う 教 室 外 の 社 会 と 関 連 づ け る べ き な の だ ろ う か 。 こ こ で は ま ず 外 国 語 教 授 法 に つ い て の い く つ か の ア プ ロ ー チ を 概 観 し な が ら 、 そ れ と 学 習 者 の 日 常 生 活 や 自 己 学 習 と の 関 わ り に つ い て 論 じ て お く 。1 ) ト よ く 知 ら れ て い る よ う に 、20 世 紀 半 ば ま で 外 国 語 教 育 で 主 に 用 い ら れ て い た の が 、 古 典 と し て の ラ テ ン 語 の 学 習 法 を 参 考 に し た 文 法 訳 読 法 (Grammar-Translation Method : GTM ) で あ っ た 。 こ れ は 、 語 彙 の 暗 記 や 文 法 事 項 の 理 解 、 さ ら に は 母 国 語 へ の 翻 訳 を 通 し て 外 国 語 を 習 得 し よ う と す る も の で あ る 。 た だ し 、 読 解 力 の 養 成 に は つ な が る も の の 、 会 話 力 が つ か な か っ た り 、 ま た 学 習 者 が 興 味 を 失 っ て し ま っ た り す る な ど と い う 問 題 点 を か か え て い た 。 こ の た め 、 こ う し た 問 題 へ の 批 判 か ら 、 ナ チ ュ
ラ ル ・ メ ソ ッ ド (Natural Method ) や 、 ダ イ レ ク ト ・ メ ソ ッ ド (Direct Method ) な
ど と い っ た 各 種 の 教 授 法 が 開 発 さ れ た 。
と り わ け 、 現 在 で も 多 く の 授 業 に 取 り 入 れ ら れ て い る の が 、1960 年 代 に ミ シ ガ
ン 大 学 の フ リ ー ズ 等 に よ っ て 開 発 さ れ た オ ー デ4 オ ・ リ ン ガ ル ・ メ ソ ッ ド(Audio
Lingual Method : ALM ) で あ る 。こ れ は 構 造 主 義 言 語 学 や 行 動 主 義 心 理 学 を 基 盤 と し 、
言 語 習 得 を 「 刺 激 」 と 「 反 応 」 に よ る 「 習 慣 形 成 」 と 捉 え る 立 場 に あ る 。 教 室 内 で は 教 師 主 導 の 下 、 模 倣 ( ミ ム ・ メ ム 練 習 ) や 、 応 答 、 代 人 、 拡 大 と い っ た パ タ ー ン ノ・。プ ラ ク テ ィ ス ( 文 型 練 習 ) を 繰 り 返 す こ と に よ り 、 学 習 者 は 教 師 のcue ( 刺 激 ) に 対 し て 、 正 確 に か つ す ば や く 反 応 で き る よ う に な る こ と が 求 め ら れ る 。 た だ し 、 教 室 内 で は 、 い か に 素 早 く 正 し い 言 語 形 式 で 反 応 す る か が 重 要 視 さ れ 、 言 語 能 力 が こ う し た 教 室 内 で の 応 答 能 力 や 文 法 能 力 な ど に 限 定 さ れ て い る た め 、 真 の 伝 達 能 力 に 結 び つ か な い こ と が 批 判 さ れ て き た 。 ヶ こ う し たALM の 文 型 重 視 の 指 導 法 に 対 し て 、 伝 達 能 力 を 重 視 し た 教 授 法 へ の 転 換 を 図 ろ う と し て 、1970 年 代 以 降 に 開 発 さ れ 、 発 展 し て き た の が コ ミ ゴ ニ カ テ ィ ブ ・ ア プ ロ ー チ (Communicative Approach : CA ) で あ る 。 ま ずWilkins (1976 卜 は 、 文 法 能 力 と 伝 達 能 力 は 同 一 の も の で は な く 、 文 法 体 系 を 習 得 し た か ら と い っ て 伝 達 能 力 を 習 得 で き る わ け で は な い こ と か ら 、 伝 達 能 力 の 育 成 の た め に 、従 来 の 文 法 な ど 言 語 の 構 造 を 中 心 と す る シ ラ バ ス で は な く 、「 時 間 」寸 継 続 」 「 頻 度 」「 順 序 」「 量 」「 位 置 」 な ど と い っ た 言 語 の 概 念 (notion ) や 、「 承 認 」「 情 報 の 要 求 」「 挨 拶 」 な ど と い っ た 言 語 の 機 能 ㈲nction ) を 中 心 と し て 配 列 し た シ ラ バ ス ( ノ ー シ ョ ナ ル ・ フ ァ ン ク シ ョ ナ ル ・ シ ラ バ ス ) を 用 い る こ と を 提 案 し た 。 さ ら にMorrow (1981 ) は 、「 あ る 概 念 シ ラ バ ス ( さ ら に 厳 密 に 言 え ば 機 能 シ ラ バ ス )
椙 山 女 学 園 大 学 教 育 学 部 紀 要犬∧.VOし5 2012 年 を 採 用 し た だ け で は い 学 習 者 に 伝 達 能 力 を つ け る 保 障 に は な ら な い の で あ るレ ( 中 略 ) コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 単 ユな る 言 語 形 式 に つ い て の 知 識 以 上 の も の を 包 含 し て い る 。 つ ま り 、そ の 形 式 を 適 切 な 方 法 で 使 い こ な し て い く 能 力 が な け れ ば な ら な い 」( 小 笠 原 訳 、 p.58 ) と し 、 と り わ け コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 育 成 の た め の 活 動 で は 、 伝 達 過 程 に お い て 、2 人 の う ち の1 人 は も う 一 方 の 知 ら な い 事 柄 を 知 っ て い る と い う 「 イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ ギ ャ ッ プ 上 自 分 か 何 を ど の よ う に 言 う の か に つ い て の 「 選 択 権 上 自 分 の 発 言 に 対 す る 「 フ ィ ヤ ド ノやツ ク 」 の 三 つ を 考 慮 に 入 れ る べ き で あ る こ と を 示 し た 。 こ れ は 、 コ ミ ュ ニ カ テ ィ ブ ・ アプ ロ ー チ の 最 も 重 要 な 原 則 と な っ て お り 、 以 降 、 こ う し だ 原m を 織 り 込 ん だ タ ス ク 活 動 や ロ ー ル ・ プ レ イ な ど が 多 用 さ れ る に 到 う て い る 。2) さ ら に こ こ で 重 要 な の は 、 外 国 語 教 育 が 、 教 師 中 心 の 立 場 か ら で は な く 、 学 生 中 心 の 立 場 へ と 転 換 が 図 ら れ た こ と に あ る 。 そ れ は 学 習 者 を 中 心 と し て 行 わ れ る 教 室 内 活 動 を 意 味 す る の み な ら ず ニ、寸 ニ ー ズ 調 査 」 等 に よ っ て 学 習 者 の 関 心 や 必 要 性 の あ る 分 野 を 分 析 し 学 習 内 容 を 決 め たノり 、 あ る い は 実 際 に 教 室 外 の 社 会 的 環 境 や 母 語 話 者 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 関 す る 内 容 を 積 極 的 に 活 動 内 容 に 取 り入 れ た り す る こ と も 含 ま れ る 。 ト ノ ノ 。・・。 ・・ 岡 崎 (1990 ) は 、 教 室 外 で の ネ イ テ ィ ブ ス ピ ー カ ー ど の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 組 み 込 ん だ タ ス ク 活 動 に つ 。い て 言 及jし て い る 。 ・ ■ ・ ■ ■ ・ ・ 自 己 学 習 能 力 と い う 場 合 、 そ れ は 将 来 に 渡 っ て 学 習 者 自 身 が 養 成 し 発 展 さ せ 続 け て い く も の で あ 谷 て は じ め て 意 味 を 持 つ 。 そ の 意 味 で 、 教 室 外 の ネ イ テ ィ ブ ス ピ ー カ ー の 与 え る イ ンプ ッ ト に ど う 対 応 し ど う 処 理 す る かレを 含 め た コ ミ ユ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 養 成 を 組 み 込 ん だ 学 習 能 力 の 確 保 は 重 要 で あ る と い え る 。 従 っ て 教 室 汐1ヽの コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 意 識 的 に 取 り 込 ん だ タ ス ク は ネ イ テ ィ ブ ス ピ ー カ ー と の 間 の ゴ ミ ユ ニ ケ ゞ シ ョ=ン 能 力 の 養 成 に 留 ま ち ず 自 己 学 習 体 勢 を 作 っ て い く こ と を も 可 能 に す る 。。(pj61 ) 丿 し も っ と も 日 本 に お け る 中 国 語 教 育 に お い て 、 ネ イ テ ィ ブ ス ピ ー カ ー と の 接 触 を 課 題 と し て 全 員 に 要 求 す る の は 現 実 的 で は な い も の の 、 短 い 期 間 内 に い か に コ ミ ユ ニ カ テ ィ ブ な 教 室 活 動 を 取 り 入 れ/る か 、 ま た い か に そ れ を 社 会 的 実 践 や 自 己 学 習 に 結 び つ け て い く か は 、 非 常 に 大 き な ポ イ ン ト に な る だ ろ う 。 そ の た め に は 、 現 在 や 将 来 に お い て 、 学 生 が 中 国 語 の ネ イ テ ィ ブ ス ピ ゞ カ ー と 接 触 す る 機 会 に 注 目 し 、 そ う し た 社 会 と 関 連 づ け さ れ た 学 習 項 目 を 教 室 活 動 に 取 り 込 む 必 要 が あ る 。 そ れ を 教 室 外 で の 交 流 に 結 び つ け 、 授 業 終 了 後 に 自 律 的 に 学 ん で い く と い う 動 機 お よ び 能 力 を 創 造 す る こ と が で き れ ば 、 第 二 外 国 語 の 科 目 は 、した と え 短 期 の 学 習 で あ っ て も 大 き な 役 割 を 果 た す こ と に な る だ ろ う 。 ミ ‥‥ ‥ ‥
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さ て 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能力 の 育 成 に つ い て 考 え る に あ た っ て 、 近 年 の外 国 語 教寺 西 光 輝 / 第 二 外 国 語 と し て の 中 国 語 の 学 習 者 を と り ま く言 語 環 境
育 の 動 向 と し て 注 目 す べ き は、 欧 州 評 議 会 (Council of Europe ) が 策 定 し たCEFR
(Common European Framework of Reference for Languages : Learning, teaching, assessment ) で あ る 。 こ こ で は 、 言 語 の 使 用 や 学 習 を、 あ る 「 課 題 」(tasks) を 遂 行 す る た め の も の と す る 「 行 動 中 心 の 考 え 方 」 が 採 用 さ れ て お り、 そ の 具 体 的 な熟 達 度 が 「 ∼ で き る 」(can-do statement )と」ハう 形 で示 さ れ て い る 。 ま た 、 特 に 従 来 の 外 国 語 教 育 の 教 育 観 と 異 な っ て い る 点 は 、 必 ず し も 四 技 能 を 均 等 に 伸 ば し て い く こ と に よ る 母 語 話 者 並 の 言 語 習 得 に こ だ わ る の で は な く 、 む し ろ 「 部 分 的 能 力 」(partial competence ) を も 認 め て い る こ と に あ る。 つ ま り 、 あ る 限 ら れ た 領 域 や 状 況 で 発 揮 さ れ る 部 分 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能力 を も肯 定 す る とい う 立 場 に あ る 。 ま た そ れ は 、そ の 「 複 言 語 主 義 」(plurilingualism) の 考 え 方 と も 深 く 関 わ っ て い る。 従 来 か ら 使 わ れ てい た 「 多 言 語 主 義 」 が 、 社 会 ・ 国 家 の 中 で 複 数 の 言 語 が 共 存 し て い る 状 況 に つ い て 用 い ら れる の に 対 し て 、CEFR の 言 う 「 複 言 語 主 義 」 は 、 個 々 人 が 複 数 の 言 語 を 用 い て コ ミ 耳ニ ケ ー シ ョ ン す る 能 力 や 価 値 観 を 持 つ こ と を 意 味 す る。 例 え ば 「 複 言 語 能 力 」 と 「 複 文 化 能力 」 に つ い て 次 の よ う 仁 説 明 し て い る 。
複 言 語 能力 (plurilingual competence) や 複 文 化 能力 (pluricultural competence) と は、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の た め に 複 数 の 言 語 を 用 い て 異 文 化 間 の 交 流 に 参 加 で き る 能力 の こ と を い い 、 一 人 一 人 が 社 会 的 存 在 と し て 複 数 の言 語 に 、 全 て 同 じ よ 引 こと は 言 わ な い まで も、 習 熟 し 、 複 数 の 文 化 で の 経 験 を 有 す る 状 態 の こ と を い う 。 こ の 能 力 は 、別 々 の 能力 を 重 ね合 わ せ た り、横 に 並 べ た り し た も の で は な く、 複 雑 で 複 合 的 で さ え あ る と 考 え ら れ る 。( 吉 島 他2004 、p.182) こ の よ う に [ 複 言 語 能力 ] は 個 人 内 に お い て 単 に 複 数 の 言 語 の 知 識 が バ ラバ ラ に 存 在 す る こ と を 意 味 す る もの で は な く、 そ れ ら を 包 含 し た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能力 が 築 か れ て い る こ と を 意 味 す る 。 よ っ て 、「 複 言 語 主 義 」 に も と づ く 言 語 教 育 の 目 的 は 、 も は や 従 前 の よ う に 、 単 に 一 つ か 二 つ の 言 語 (三 つ で も も ち ろ ん か ま わ な い が ) を 学 習 し 、 そ れ を 相 互 に 無 関 係 の ま ま に し て 、 究 極 目 標 と し て は 「 理 想 的 母 語話 者 」 を 考 え る とい っ た よ う な こ と は な く な る。 新 し い 目 的 は 、 全 て の 言 語 能力 が そ の 中 で 何 ら か の 役 割 を果 た す こ と が で きる よ う な 言 語 空 間 を作 り 出 す とい う こ と で あ る 。( 吉 島 他2004 、PP.4-5) とい う よ う に 大 き く転 換 さ れ る こ と に な る 。 また そ こ で は、 言 語 学 習 が 教 室 内 の一 時 期 に 限 定 さ れ た も の で は な く、 そ れ が 一 生 の も の で あ る こ と が 指 摘 さ れ 、 学 外 で の 体 験 の 重 要 性 が 次 の よ う に 強 調 さ れて い る 。 言 語 学 習 が 一 生 の も の で あ る こ と が 認 識 さ れ た 以 上 、 若 い 人 た ち が 新 し い 言 語 体 験 に 学 外 で 向 き合 う た と き の 動 機 、 技 能 の 成 長 、 自 信 の 強 化 が 核 心 的 な 意 味 を 持 つ よ う に な る 。 教 育 を 司 る 人 々 や 、 検 定 試 験 委 員 、 そ し て 教 師 の 責 任 は 、 単 に 一 定 の 言 語 に つ い て 一 定 の 期 間 に 一 定 の 熟 達 度 に 到 達 さ せ る こ と の み に 限定 さ れ る も の で は ない の で あ る ( そ れ 自 体 が 重 要 な の は 間 違 い な い が)。(吉 島 他2004 、 p.5)
椙山女学 園大学教育学部紀要 Vol. 5 2012 年 こ の点 につ いては 、日本 にお いて特 に中国語話 者は、社 会構成員 として 決し て少な くない比重 を占 めるよう になって きてお り、さ らに後 にや や詳し く述べる ように、多 くの学生 は、 日本 で日常生 活を送 りながら も、 すでに多少 なり とも多 言語・多 文化 的 な環境の なかにい るのであ る。 学外 での中国語 母語話者 との交流 を想 定した取 り組み や、 そ れを生 涯 にわたって の学習へ 結びつ けるこ とは、 第二外国語 とし ての中 国語教 育 において も、極 めて大 きな意味 を持つ であろ う。 もっ と も、こうし たCEFR の「 複言語主義」という概 念はヨ ーロ ッパ とい う地理的・ 社会 的あるい は政 治的状況 から導 き出 された ものであり、 その ままの形 で日本 に持ち 込 める もの ではない。 ただし、 一つ の外 国語に母 語話者並 みに習熟 すること を目的と し たもので はなく、 また時 間の限ら れた日本の 第二外国語教 育、 とりわけこ れからの 中 国語 教育 は、 まさ にCEFR の「 行動中 心の 考 え方」 や「 複言語 主義」 の 理念 に学 ぶべ き点が多い とい えよう。 /
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こお け る 中 国語 母 語話 者
で は、 日本 国内にお いて、学 生は現在あ るい は将来におい て、 どのような 領域 や状 況で中 国語 を用 いる可 能性があ るのだろう か。ここ では中 国語母語話者 の状況 を、 訪 日客や 外国人登 録者等 の統計 を基に見てお くこ とにする。 ‥日 本 政 府 観 光 局づJNTO )3)に よ る と、2010 年 の 訪 日 外 客 数( 総 数 ) は、861 万 1175 人と なってお り、 うち中 国から の訪問 者が141 万2875 人、 台湾126 万8278 人、 香港50 万8691 人 となってい る。 ま た、 法務 省入 国管理 局4)に よると、平成22 年(2010 年) 末現在 におけ る外 国人 登録 者 数は、213 万4151 人 と なって おり、 そ のう ち中 国(台 湾、香 港 を含 む)国 籍 者は68 万7156 人で全 体の32.2パ ーセントを占 めてい る。 なかで も学 生が 日常 的 に接触 する 機会の多 い と思 わ れる留 学生 は、1983 年に「留 学生受 け入 れ10 万 人計 画」が発 表 されて以 来、そ の数 は飛躍 的に伸 びてお り、そ の 目標 はすで に2003 年 に達成 されてい る。 日本学生 支援機 構5)に よると、平 成22 年5 月1 日現在の わが国 にお ける留学 生数は14 万1774 人であ り、 とり わけ 中国語 圏の留 学生数 は、中 国出身者8 万6173 人、 台湾出身者5297 人 と圧 倒的に多 い。 当然留学 生 を多 く受 け入 れてい る大学におい ては、日本 人学生 が中国語 の母語話者 と接触す るこ と はすで に日常 的 な ものと なってい る6)。 さ らに2008 年 には、2020 年 まで に留学 生 を30 万人 に増 やす とい う「留学 生30 万人 計画」 が発 表さ れてい るご とから すれば、 こうし た状況 は、今後 ます ます 増えてい くだろう。 二 次に 、厚 生 労 働省 の 「外 国 人雇 用 状況 」7)に よる と、2010 年10 月末 の 外国人 労 簸者数 は64 万9982 人 であり、前年 同期比で は8 万7164 人、15.5%増と急増し ている。 そ の う ち中 国 人が28 万7105 人 と最多 であ り、 全 体の442% を占 めてい る6 今後 学 生が 職業 に付い た ときに、中国 語圏の労働 者と関 わる機会 はます ます増 えてい くこ と寺 西 光 輝 / 第二 外 国 語 と し て の 中 国 語 の 学 習 者 を と り ま く 言 語 環 境 に なるだろう。 また 日本語能力 が低い とい う点で、 職場 や日常生 活におい て研修生 や 技 能実習生 とコミュニ ケー ションを とる能力 も一つ の課題 となるだろう。 なお 、 本稿 が調 査 対象 とし た 教育 学 部 で は、 目 標 とし て教 育 現 場 にお け る 外 国 籍 児 童生徒 へ の対 処 が挙 げ ら れる。 文 部科 学省 の「 日本語 指導が 必要な外 国児童生 徒 の受 け 入 れ状 況等 に 関す る調 査(平 成22 年 度)」8)に よる と、平 成22 年 度(2010 年 度)におい て 日本語 指導が 必要 な外 国児童 生徒数 は2 万8511 人 で、 その う ぢの 母 語 で もっ と も多 い の が ポ ル ト ガ ル 語 (9477 人 ) で あ り、 以 下 中 国 語 (6154 人 )、 フ ィリピ ノ 語 (4350 人)、 スペ イ ン語 (3547 人) の順 と なっ てい る9)。こ うし た児 童 生徒 達 の多 く は 日本 人児 童 生 徒 に混 じ っ て教 育 を受 け る とい う サ ブマ ージ ョ ン 的 な 環境 に 置 か れて お り、 教 師 に は、 学 校や 地 域 での多 文化 共 生 の 実現 や 、 教育 現 場 にお け る 意思 疎 通 を 円滑 にす る た めに も、 当 該国 に 関 す る社 会 文化 的 な 知 識 と と もに、基 礎 的 なコ ミュ ニケ ー ショ ン能力 が求 め られる だろ う。 し
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語母語謡者印 接触
第 二 外 国 語 とし て 中 国 語 を 選 択 し た 学 生 達 が 、 学 習 期 間 中 に 日 常 生 活 にお い て 中 国 語 の ネ イ テ ィ ブ ス ピ ー カ ー と接 す る 機 会 は 、 ど れ く ら い あ る の だ ろ う か 。 2011 年1 月 に、 椙 山女 学 園 大 学 教 育 学 部 にお け る 寸 中 国 語 入 門 」 受 講 者65 名 に対 し て ア ン ケ ー ト 調 査犬を 実 施 し た 。 \ 犬 万ま ず 、 調 査 対 象65 名 中 、 中 国 語 の 学 習 開 始 後 、 日 常 生 活 に お い て 中 国 語 ネ イ テ ィ ブ ス ピ ー カ ー と 接 す る 機 会 の あ っ た 者 は25 名 で あ っ た に の 他 に 中 国 語 圏 の 国 へ 旅 行 に 行 う た 者 は2 名 )。つ ま り 、全 体 の約38% の 学 生 が 、約10 ヶ 月 と い う 短 い 期 間 中 に 、 多 か れ少 な か れ、 日 本 で 日 常 生 活 を 送 り な が ら 、 学 外 に お い て 中 国 語 の母 語 話 者 と接 触 す る 機 会 が あ っ た こ と に な る 。 そ の 場 面 や 相 手 に つ い て は 、アリレバ イ ト 先 の 同 僚 (9 人 )、 ア ルバ イ ト 先 に 来 た 客 (11 人)、 イ ン タ ー ネ ット 上 (2 人 )、 ボ ラ ン テ ィ ア先 (2 人 )、 そ の 他 (5 人 ) で あ っ た 。( 複 数 回 答 を含 む ) な お そ の う ち 、 実 際 に ネ イ テ ィ ブ と 中 国 語 に よ る 会 話 を 経 験 し た 学 生 の 総 数 は16 名 ( 調 査 対 象 全 体 の24.6 %) で あ り、 自 分 か ら 中 国 語 で 話 し か け た ご とが あ る と の 回 答 は12 名 、 相 手 か ら 中 国 語 で 話 し か け ら れた こ と が あ る と の 回 答 は12 名 で あ っ た 。 そ の 具 体 的 状 況 や 感 想 に つ い て 自 由 記 述 を 求 め た とこ ろ 、 ほ ん の 挨 拶 程 度 の 会 話 で あ う て も、 中 国 語 の 母 語 話 者 と の 関 係 が 進 展 し た り 、 ま た 学 習 者 の 興 味 喚 起 に つ な が っ た り す る こ と が 示 さ れ た 。 以 下 に 状 況 ・ 場 面 ご と に 自 由 記 述 の 回 答 が あ っ た も の を ま と め て お く 。 ・ ア ル バ イ ト 先 の 同 僚 \ ま ず 、 学 生 が 学 外 で ネイ テ ィブ と接 す る 機 会 が 圧 倒 的 に多 い の が 、 ア ル バ イト 先 であ り な か で も そ こ で知 り合 っ た 同 僚 と 中 国語 で 会 話 し て み る と い う ヶ − ス が 目 立っ た。椙山女学園 大学教育学部紀要 Vol. 5 2012 年 ・自分の名前を中国語で言ってみたり、「あなたは中国人ですか ?」と知っている言葉を 使って会話していました。相手は笑っていたり、新しい言葉を教えてくれたりしました。 ・バイト先で冗談で「祢好」と話しかけたけど、発音が分からない とい われ、逆にレッ スンされた。 ・白分か中国語をしゃべって相手が理解してくれた時、とてもうれしかったです。その人 は日本語もペラペラで、バイト中に中国語を教えてくれました。授業だけで話す機会がま ったくないと勉強していても楽しぐないけど、実際にバイト先などでおしゃべりができる 仲間がいるともっと中国語について勉強したいなと思います。 ・バイト中に一緒に自己紹介や数字の練習をした。中国語の練習をすると仲良くなれたの で、うれしかった。 ・日本語で話していても中国人の人は、焦ったりすると中国語になってしまうこ とがある ので、中国語を知っていて良かったと思った。 ・バイト先に中国人の子がいて、その子と中国語で少し話したことで、中国語はおもしろ いと感じ、もっと色々話せるようになりたいと思った。 こ こ で は 、 た と え 中 国 語 の レ ベ ルが 低 く、 また 相 手 が 日 本 語 を 話 せ る と し て も、 複 数 の 言 語 を 切 り 替 え な が ら コ ミこ ニ ケ ー シ 台ンを 取 る こ と が、ヶネ イ テ ィ ブ ス ピ ー カ ー と の 関 係 の 進 展 につ な がっ た り、 学 習 者 の 喜 び や学 習 動 機 に な っ た り す る こ と が 窺 え る。 ・ア ルバイト先 に来た客 ニ なお 、 ア ル バ イト 先 で は、 中 国語 母語 話者 の客 ど の接 触 もあ り、 また 同 僚 の場 合 とは違 っ て、 中国 語を 話 す必 要 に迫 られる 場合 もあ る。 ・お店で来てくれた中国人の方々(5 ∼6 人)はあまり日本語が通じなくて、英語で話し ていたけ れど、勇気を出してみて、中国語を話してみると、とても仲良くなれた。 ・聞き取 れた単語をつ なぎあわせて予想しながら聞い て、 ジェ スチ ャーをくわえなが ら答えた。少し でも話が通じ コミュニケーションをとれるのは嬉しかった。 ・授業で習った単文だけならききとれた。 またこちらも知っている単文でかえした。 ・アルバイトで中国人がよく来るのですが、中国語の勉強を始めて前より何を言っている のか分かるようになりました。 こ の よ う に 面 識 の な い 中 国 語 母 語 話 者 、 と りlわ け 日 本 語 の 不 自 由 な 短 期 滞 在 者 な ど と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を と ら な け れ ば な ら ない 事 態 は 、 率 こ そ 低 い もの の、 日 本 で 普 通 に 生 活 を す る 学 生 に も十 分 に 起 こ り え る こ と な の で あ るよこ の よう な場 面 や 状 況 で 、 学 生 達 は 中 国 語 に は 堪 能 で な く と も、 英 語 や 習っ た ば か り の 中 国 語 と い っ た 複 数 の言 語 を 切 り替 え た り、 あ る い は ジ ェ ス チ ャ ー を加 え た り す るダと いっ た 各 種 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ ス ト ラ テ ジ ー を 用 い な が ら 、 コ:ミ ュ 耳 ケ ー シ ョ ンを とっ て い く。 よ っ て 、 こ の よ う な 店 員 と客 と い う 状 況 で の 会 話 を タ ス ク 活 動 等 に 取 り入 れ る こ と は 、 教 室 内 活 動 を 社 会 と 関 連 づ け た り、 あ る い は 実 際 に 社 会 に お い て 母 語 話 者 と 交 渉 す る とい う 「 課 題 」 を 達 成 し た りす る の に即 役 立 つ だ ろ う 。 \ ・イ ン ターネ ット の チ ャット ◇ ヶ =.‥‥‥ ‥ ‥‥ ‥ ‥ また 、 日本 で 日常 生 活 を 送 り な が ら も、イ ン タ ー ネッ ト を通 し て 海外 にい る ネ
寺 西 光 輝 / 第 二 外 国 語 とし て の 中 国 語 の 学 習 者 を と り ま ぐ 言 語 環 境 イ テ ィ ブ ス ピ ー カ ー と 会 話 す る 機 会 の あ る 学 生 もい た 。 ・留 学先 で 知り合 っ た人 で、普段 は英 語だ けで 話し てい るが、中 国語 であい さつ を した ら、 と て もよろ こ んでい た。 従 来 め コ ンピ ュ ー タ ーを 使っ た外 国 語学 習 は、 基 本 的 に教 室 内 に限 ら れ た学 習 に なる が、 こ の よ う にイ ン タ ー ネット を介 す るこ とで、 日本 にい なが ら気 軽 に 目 標 言 語 話 者 とリ ア ル タ イ ムでコ ミ ュ ニ ケ ーシ ョ ン をと る こ とが 可 能 にな る。 そ の 点 で は、 も はや 日本 にい る か どう か とい う 概念 が意 味 を持 た ない 領 域 であ る と も 言 え る。 以上 の よう に、近年 で は外国 人滞在 者の増 加や、 イン タ六 ネット 等 の発 達 により、 日本国 内に居 なが らにし て、 目 標言語 話者 との接 触は、次 第に容易 に なりつつあ る。 たとえ学生 が国外に出 ない とし て も、複言語 的な能力 は決し て無駄 ではない のであ る。 特 に、こ うい った状況 を授業内 容と関 連づ け、さ らにそ れを生 涯学習 に結びつけるこ とが出来 れば、将来 にわたっ てその能力 を用いる機 会は大い にあ る と言 えよう。
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常生活の今かで中臨 訓
こ触 れ た 体 験 以 上に挙げ た よう な母語話 者との接 触以外 に、 学生 たちは日常生 活の どのような状 況 ・場 面 で中国語に触 れる機会 があり、 またどの ようなこ とへ 注意を むけ るように な る のか。こ の点につい て「自由 記述」で 回答を求 めた。 ・メ ディ アを通して 中 国語 を習い だし た 学 生 は、 テレ ビ を 通し て、 そ を 傾け る よう になる 。 ・。 こ に 流 れ る 中 国 語 に 対 し て 耳 ・中国語の授業を受けてから、ニュースやドラマなどで知っている単語がたまに出てきて 嬉しく思い ました。そこからまた、中国語への興味が湧きました。 ・ニュースで中国人の人が話をしているのがうつる時に、聞き取れるかどうかためしてみ るようになりました。そこで、少しずつ中国語に興味が湧くようになりました。 ・ニュースなどで、「日本人」という言葉が聞き取れたので、中国語を授業でとって良 か ったなと思った。 CM で「 俣鐙」という言葉が聞き取れて面白かった。 ・テレビ のニュースで自分の分かる中国語を聞き取ることが出来て嬉しかった。中国語を 話せるようになって実際に中国の人と話してみたいと思うようになった。 ・ニュースをみていて、中国人にインタビュ ーしているとき、字幕を見るのではなくて、 本人が発している音できこうと思えた。 ・テレビ のニュースなどが流 れていると、自分の知っている単語が出てこないかなと耳を 傾けるようになった。 ・テレビ のド ラマなどで時々中国語で話すシーンなどで、少しでも聞きとることができた 時、うれしく感じました。 ・テレビで中国のニュースが映ったり、CM で中国語の勉強をしている人が流れたりする と、授業で聞いたことがあるなといつも思います。椙山女学 園大学教育学部紀 要 Vol. 5 2012 年 テレビ から流 れる中国語 から、 わずか な単語であっ ても聞 き取 れるこ とが受 講者の 興味喚起 につ ながるご とが分かる。 なおこ の点に関し ては、授業内 でとりあ げた中国 語のDVD につい て、丿 △ ト し くDVD の 会話 の 中で )知 っ てい る言 葉 が 聞 き取 れた 時は、 今 ま では 何 も知 らな かっ た の に、少 し で も中 国語 が分 かる よう になっ た気 が して 嬉し くな り まし た。 た まに テレビ で 中 国人 が出 て くる と、つ いつ い耳 を傾 け てし まい、 以 前に比 べ て中 国語 が身 近に 感じ ら れ る よう にな り ま七 だ。 ・授 業 でのビ デ オ鑑 賞 の時 間で は、何 か が ききと れる たび に本当 に 驚 きまし た。 最近 で は 耳 から中 国 語が きこ える と何 か き きとれ るか もし れない と 思い、 きくこ とが増 え まし た。 などと の意見 もあ り、普段 の授業の中 で、学生 の耳に入 りやすい単 語や日常 会話の表 現 等を取 りあげ てお くと ともに、実 際の(語学 向け教材で はない卜 映像資料 を用いて そ うし た単語や語 句を聞 き取 る訓練 をし たこ とが、教室外 において メディ アから流 れ てくる生 の中国語 へ注意 を向 けるこ とに もつ ながったこ とが窺える。 ・ 公共の場 におい て 中国語 の学習 を開始した後、学生 達 は日常 の生活のなか にあるさ まざまな中 国語へ と意識を向 け始め る。 づ ・学校の行き帰りの電車の中のアナウンスで、中国語が流れると、前までは何とも思わな かったけど、中国語を学んでからは、何と言っているのか聞くようになった。 ・ 中 国 語 は 初 め は 全 然 分 か ら な か っ た け ど 電 車 の 中 で 中 国 語 で ア ナ ウ ン ス を し た り し て い る の を 聞 い た り し 、 普 段 こ ん な に 使 わ れ て い た こ と が 分 か り まし た 。 ・電車などでアナウンスをききとろうとしますが、什玄ぐらいしかわかりませんでした。 ・電車(地下 鉄) に乗っていて名古屋 につ くとき中国語が流 れるので、よくきいて何 を言っているのか友達と話したことがあった。 ・ デ パ ー ト な ど で の す ナ ウ ン ス で 、 数 字 な ど を 聞 き 取 る こ と が 出 来 た 。 ・ バ ス や 車 内 ア ナ ウ ン ス を よ く 聞 く よ う に な っ た 。 ま た 、 外 国 人 が 多 く 集 まる 所 に 置 い て あ る 中 国 語 の パ ン フ レ ッ ト を 持 ち 帰 っ て 読 ん で み た 。 こ の よう に学生達 は、普段 意識してい なか づた電車やバ ス、 デパ ート という た公共 の場 に、中 国語があ ふれてい るこ とに気づ く のである。こ の点からす れば、授業 で オ ーセンティ ック・マ テリア ル(生教材) を用い る場合、中 国など現地 で使 われている ものより も、 実際 に学生の周 りで使 われてお り、 日常生活 で遭遇しや すい ものを用い るこ とが、 学生の興 味喚起や、 現実社会 との 関連づけにつ ながるだろ う。 目標言語 話者以外 の人と のつ ながり また、教 室外で の他の日本人 学習者 など との関 わりについ ての記述 も見ら れた。 ・友人の方が私よりも中国語をよく知っているので、授業でわからないところを聞くなど コミュニケーションをとることがで き、以前よりも仲が深まった。 ・中国に留学していた友人と中国語を使って話したことがあり、いざとなったら日本語が 通じるので安心して話すことができた。 ・中国語 を学 ぶ中で、会話文や簡単なあい さつ を覚 えるこ とがで きたので、友達同士 で話してみたり、英語の先生に教えたりし ました。
寺 西 光 輝 / 第二 外 国 語 とし て の 中 国 語 の 学 習 者 を と り ま く 言 語 環 境 こ う し た 友 人 な ど と の つ な が り は 、 外 国 語 学 習 の 一 つ の 「 動 機 づ け 」 に も な る とい う 点 で 、 伝 達 能力 の育 成 と は別 に 、 学 習 ス ト ラ テ ジ ー の う ち の 一 つ に 数 え ら れる 「 社 会 的 スト ラ テ ジ ー 」(Oxford 1990 ) の 観 点 か ら 重 要 な 要 素 と な る だ ろ う。 こ こ で は 中 国 語 の 学 習 は、 単 に 個 人 内 にお け る知 識 の 集 積 過 程 と い う よ り は 、 むし ろ そ れ を 通 し て 友 人 達 と の 人 間 関 係 を 深 め る 過 程 や 手 段 と も な り 得 る の であ る 。 そ の 意 味 で は 、 例 え ば 教 室 内 で 協 働 学 習 を 取 り 入 れ る こ と は 、 学 生 同 士 の 関 係 を 深 め 、 さ ら に は 授 業 外 で の コ ミ ュ ニ テ ィ ー や 相 互 学 習 環 境 を 作 っ て い く こ と に もつ な が る だろ う 。
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中国 語の学 習を開始し た学生達 は、教室外 でさ まざまなこ とに目を向け、耳 を傾け、 またそ の一部 は実際 に母語話者 と接 触し て、 学 んだ単語や語句 を用い てコミュニ ケー ショ ンをとっ ていく。 こうし た点 を考え るなら、大 学におけ る第二外 国語として の中 国語教育 も、 それを単 に個人内 の教養的知 識に止 めたり、あ るい は教 室内で の学習 で 完結させ た りするので はなく、 むしろそ れを学外 の社会へ と拡げた り、あ るいは生 涯 に わた る学習 の動機や スト ラ テジーを形成 した りするため の場 にする とい う観点 から 見直さ れるべ きであ る。 さら にその教育 目標の一つ には、 複数の言語 を切 り替え なが らコミュ ニケ ーショ ンをとるこ とがで きるような「 複言語 能力 」を身 につ けるこ とが 挙げら れる。 \ 学生達 をと りまく 日常 の世界 は、 すで に多 少な りと も多言 語・多 文化 的な環境 にあ り、 よっ て学生 達が 部分的にで はあ って も中国語 のコミュニ ケーショ ン能力 を身 につ けるな らば、 たとえ 日本 国内か ら出ない にして も、 現在あ るい は将来 にわたってそ れ を発揮で きる 環境は十分 に有る のである。 謝辞 ト し 犬 本調査 にご協力 ください まし た学 生の皆 様に深 く感謝申し上 げます。 注 1 ) コ ミ ュ ニ カ テ イ ブ ・ ア プ ロ ー チ に 到 る ま で の 各 種 教 授 法 の 変 遷 につ い て は、 高 見 渾 (1989, 2004 )、 名 柄 他 (1989 )、 岡 崎 (1990 ) 等 を参 照 。 2 ) こ う し た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 重 視 の 新 た な 教 授 法 の 導 入 は、 中 国 語教 育 にお い て は 未だ そ れ ほ ど多 く は ない も の の、 例 え ば、2002 年 に 中 国 で発 行 さ れ た 『高 等 学 校 外 国留 学生 沢 悟 教 学 太 鋼 短 期 強化 』 で は、「 中 国 語 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能力 の 向 上 」 が 目 標 とし て 掲 げ ら れ、「 意念一 功 能 大 鋼 」(ノ ーシ ョ ナ ル ・ フ ァ ン クシ ョ ナ ル ・ シ ラ バ ス) や 、「 任 努教 学 法 」(タ ス ク 中心 の教 授 法 ) が採 用 さ れ て い る。 ま た そ こ で は、 比 較 的 短い 学 習 時 間 の な かで 大 量 の コミ ュ ニ ケ ーシ ョ ン訓 練 を 行 う こ と を 通 し て、 初 級 、 中 級 、 高 級 に 渉 る「 沢 悟 交 除 任 努項 目表 丁( 中 国 語 コミ ュ ニ ケ ー ショ ン・ タ ス ク 項 目 表) の各 項 目を マ ス タ ーし てい く とい う 教 育方 針 が 掲 げ ら れ てい る`。 ま た、 わが 国 の 大 学 教 育 に お い て コ ミ ュ ニ カ テ イブ ・ ア プ 白 − チ を 採用 し た も の とし て は、 胡椙 山 女 学 園 大 学 教 育 学 部 紀 要 Vol. 5 2012 年 (2009 ) の 研 究 があ る。 3 )http://www.into.go.jp/jpn/downloads/2010_totaLpdf 4 )http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukantourokusyatoukeil 10603.html 5 )http://www.jasso.go.jp/statistics/intしstudent/documents/datalO.pdf 6 ) た だ し 、 本稿 が 調 査 対 象 とし た 椙 山女 学 園 大 学 で は 、 中 国 人 留 学 生 はご く 僅 か し か お ら ず 、 学 内 に お い て の 留 学 生 と の 交 流 は ほ と ん ど見 込 め ない 状 況 と な っ て い る 。 7 )http ソ/w ww.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000117eu.html 8 )http://wWw.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/08/1309275.htm + 9 ) な お ポ ル ト ガ ル 語 を 母 語 と す る 児 童 生 徒 は 、 主 に 東 海 地 方 に 集 中 し て お り、 例 え ば 、 本 稿 が ア ン ケ ート 調 査 を行 っ た椙 山 女 学 園 大 学 の所 在 地 で あ る 愛 知県 で は、 ポ ルト ガ ル語3163 人 、 中 国 語561 人 と、 圧 倒 的 に ポ ルト ガ ル語 話 者 が多 い 状 況 と な っ て い る 。 ■ 参 考文 献 郭 春 貴2007 「 大 学 に お け る 第2 外 国 語 の 中 国 語 教 育 の 位 置 づ け 」『 広 島 修 大 論 集 人 文 編 』48(1 ) 国 家 対 外 沢 悟 教 学 領 尋 小 組 み 公 室 編2002 『 高 等 学 校 外 国 留 学 生 沢 鐙 教 学 大 鋼 短 期 強 化 』 北 京 悟 言 大 学 出 版 社 胡 玉 華2009 『中 国 語 教 育 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 育 成 』 東 方 書 店
Johnson, K. and Morrow, K. 1981 Communication in the Classroom. Longman Group Ltd 八 小 笠 原 八 重 訳1984 『 コ ミ ュ ニ カ テ ィブ ・ ア プ ロ ー チ と 英 語 教 育 』 桐 原 書 店 ) 輿 水 優2005 『中 国 語 の 教 え 方 ・ 学 び 方 一 中 国 語 科 教 育 法 概 説 』 日 本 大 学 文 理 学 部 名 柄 迪 ・ 茅 野 直 子 ・ 中 西 家 栄 子1989 『 外 国 語 教 育 理 論 の 史 的 発 展 と 日 本 語 教 育 』 ア ル ク 日 本 中 国 語 学 会 中 国 語 ソ フ ト ア カ デ ミ ズ ム 検 討 委 員 会 編2002 『 日 本 の 中 国 語 教 育 − そ の 現 状 と 課 題 ・20021 旧 本 中 国 語 学 会 ・ 好 文 出 版 岡 崎 敏 雄 ・ 岡 崎 眸1990 『 日 本 語 教 育 に お け る コ ミ ュ ニ カ テ イ ブ ・ ア プ ロ ー チ 』 凡 人 社 Oxford, R. L. 1990 Language Learning Strategies ; What Every Teacher Should Know. Newbury House.
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吉 島 茂 ・ 大 橋 理 枝 ( 他 ) 訳 ・ 編2004 『外 国 語 教 育H 一 外 国 語 の 学 習 , 教 授 , 評 価 の た め の ヨ ー ロ ッ パ 共 通 参 照 枠 』 朝 日 出 版 社 ニ