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振子式引かき試験機による鋼の引かき実験 利用統計を見る

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(1)

振子式引かき試験機による鋼の引かき実験

織岡貞次郎

村田誠

On the Scratch Test of Steels with the Scratch

Test Apparatus of Pendulum Type

TeijiroORIOKA MakotoMURATA

Synopsis

 Scratch tests of steels(principally 18−8 stainless stee1)were]made with the scratch test apParatus of pendulum type・The specific scratch resistancc becomes large according to th仁rise of the scratch speed. It depends upon the shape of the scratch chisel・eg・the rake angle of the scratch chiseL The specific scratch resistance in the scratching operation witll the conical chisel is smaller than that with the flat plane of the quadrangular pyramid chisel and the specific scratch resistance for the edge of the quadrangular pyramid chisel is smaller than that for the flat plane of the same chisel. The specific scratch resistance of 18−8 stainless steel is nearly 8∼08× 103 kg/mm2 for the mean scratch depth 2∼30μin thc range of the scratch speed 140∼1901n/min 1.緒 言  著者等はさきに振子式引かき試験機を用い常温並びに 高温に於て軟鋼(炭素量O・ 2%およびO. 4%)の引かき実 験を行い、比引かぎ抵抗の寸法効果並びに温度による比 引かき抵抗の変化を見出した。1)その際の実験に於ては チゼル尖端の形状をごく僅かしか変化させなかつたので チゼル尖端形状の影響を見出すことができなかつた。又 引かき速度の影響もその実験の範囲内即ち引かき速度が 130∼185m/minの範囲内では実験誤差以上に出なかつ た。  そこで今回は引かき試験機を改造して実験精度を向上 させ、先ず引かきチゼル尖端の形状を大巾に変化させて 前記の材料に対し引かき実験を試みた。更に18−8不銃 鋼の引かき実験を行いその比引かき抵抗を求めると共に 引かき抵抗に及ぼす引かき速度の影響、チゼル尖端形状 の影響並びに引かきチゼル材質の影響を調べた。 てか、 ・一

2.実験装置および方法

 実験装置および方法は前報1)と同じであるが(Fig.1) 今回は試料を取付ける微動台をがつちりしたものに作り 直して引かき抵抗による微動台の焼みを少くすると共に 爪とボルトとにより試料を上からしつかり押えつけた後 左右から締付けるようにして実験精度を上げた。又、実 Fig. l Scratch test apparatus of pendulum     type 1Test piece 2 Chise1

3Pendulum

4 Ball bearing 5 Recording needle 6Recording paper

7Rotary drum

8 Adjustable table ’9Electromagnet

(2)

験能率を向上させるために若干の考慮を払つた。  尚、引かき傷痕体積(V)の計算精度を向上させるた めに今回は次の方法を用いた。先ず前報と同様に、各々 の引かき傷痕に対してその長さ(1)を測定すると共に・ 傷痕中央断面のプロフィルを大越式表面粗さ検査機によ り求め引かき傷痕の深さ(h)と巾(2a)を測定し、 2a/hを計算した。次にすべての測定値を用いて各々の ミ ニ St 2s ;a° 菖店 琶lo

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   Me&n sect;。nal Atea of 5(ratch(m言) Fig.3 Effect of the chisel shape for     O.2% carbon steel 80 引かき傷痕深さ(h)に対して2a/hの平均値を求めた。 この値を利用して各々の引かき傷痕深さ(h)に対応す る平均引かき傷痕巾(2α)を求めた。この引かき傷痕深 さ一引かき傷痕巾グラフが引かき傷痕の断面形状を与 える。Fig・2(前報のFig・9と同じ)にその一例を示すよ うに、引かき傷痕の断面形状は引かきチゼルの顕微鏡写 真のプロフィルと比べると傷痕の深さが浅くなつている と共に、引かきチゼル尖端部の形状が顕微鏡では一応尖 つているように見えても断面形状ではある程度丸くなつ ている。この実験では引かきにより除去される量を問題 にしているのであるが、前報ではこの丸みを無視して引 かき傷痕体積(V)を、V=0・27 h(2a)1として近似 的に求めた。今回は各々の引かき傷痕に対し長手方向の 各位置における深さを計算し(各断面最深部の長手方向 のプロフィルは円弧と仮定した)その深さに対応する断 面積を断面形状のグラフから求め、これを積分して引か き傷痕体積(V)を算出した。

3・四角錐チゼルの稜線による

 軟鋼の引かき実験

 前報に用いたタンガロイG2の四角錐チゼルの稜線 (試料平面の法線となす角一71°)により前報と同じ材質 の軟鋼(炭素量巳2%および0.4%)について前報と同様 な引かき実験を行つた結果をFig・3およびFig.4に 示す。縦軸の比引かき抵抗とは平均接線引かき抵抗と平      ’・’t  O4%Ca,60n 5tee t x,03  ’

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(3)

振子式引かき試験機による鋼の引かき実験

均引かき断面積との比である。したがつて引かきエネル ギーと引かき体積との比と同じ値である。  前報の実験即ち同じ四角錐チゼルの平らな面による引 かき実験の結果を破線で附記したが、比引かき抵抗は引 かきチゼルの尖端形状により変化し稜線による引かきの 場合の方が比引かき抵抗はかなり小さな値をとることが わかり、特に引かき傷痕の深さが浅いときにその差が著 しいように思われる。

  4.四角錐チゼルによる18− 8不誘

    鋼の引かき実験 4・1対面角100°の四角錐チゼルによる実験結果  タンガPtイG2で対面角100°の四角錐チゼルを作りそ の一一面を引かき方向に向けて18−8不鋳鋼の平らな面を 引かいた。その実験結果を前報と同様に引かき速度(14 0∼190m/min)の影響を無視して同じグラフにのせた のがFig・5である。引かき傷痕の深さが浅くなると比 引かき抵抗が大きくなることは図から明かである。図の 各点は1本1本の引かき傷痕に対して引かきエネルギー・ と引かき傷痕体積とから計算した比引かき抵抗であり、 実験装置および方法を改良したため実験精度がかなり向 上したことが確められた。尚、この実験では振子の往復 する間に試料を引かき方向に直角に動かして振子の往復 する度ごとに新しい試料面を引かくようにしたが、往き 即ち右から左(○印)と復り即ち左から右(×印)の比 引かき抵抗の間には有意差が認められないので、引かき チゼル尖端の形状は一・応対称と考えられる。

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Fig.7  Specific scratch resistance of l8−8     stainless steel with the chisel of     quadrangular pyramid (1000) 3 20  −3 x/0

(4)

 さて、前報に於て不問に付した引かき速度の影響を検        t’ 討してみる。この実験では振子の往復する度ごとに試料 を引かくので1回の実験で数本の引かき傷痕を得るが、 それぞれ引かき速度は異つている。そこで引かき速度の 略々等しい測定値を得るために、1本目のデータは1本 目・2本目は2本目としてまとめたのがFig.6 (往)お よびFig.7(復)である。1本目は引かき速度が早く、 2本目3本目と引かき速度がおそくなる。それぞれに対 する平均引かき速度を図に附記した。この場合、試料と 衝突する際に振子の持つエネルギーも一緒に変化するわ けだが、引かき速度が早くなると比引かき抵抗が大きく なることは間違いなかろう。  4・2対面角120°の四角錐チゼルによる実験結果  タンガロイG2で対面角120°の四角錐チゼルを作りそ の一面を引かき方向に向けて18−8不鋳鋼の平らな面を 引かいた。その実験結果を前節と同様にFig・ 8、Fig・9 およびFjg.10に示す。この実験に於ても引かき傷痕の深 さが浅くなると比引かき抵抗が大きくなる所謂寸法効果 が認められると共に、引かき速度が早くなると比引かき 抵抗が大きくなることがわかる。  Fig.5∼7とFig.8∼10とを比較してもその相違は 殆んど見出せない。したがつてこの実験の精度では100° と120°との対面角の差による比引かき抵抗の変化を云々 することは無理であつた。 ヨ

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Specific scratch resistance of 18−8 stainless steel with the chisel of quadrangular pyramid(120°)3

82

(5)

振子式引かき試験機による鋼の引かき実験

5・18−8不誘鋼の引かきに於ける

  引かきチゼル掬い角の影響  引かきチゼル掬い角の比引かき抵抗並びに引かき傷痕 両側の盛り上りに及ぼす影響を見出すために、正面から 見た対面角を140°に一定し、掬い角をそれぞれ0°・−35° および一70°に仕上げた四角錐チゼル(逃げ角はすべて 20°)を入念に仕上げ、一定引かき速度(185m/min)で 18− 8不鋳鋼の平らな面を1本つつ引かいた。その実験 結果をFig・ 11に示す。 Fig,11のデータはそのばらつき が大きいけれども、引かきチゼルの掬い角により比引か き抵抗がかなり大巾に変化することは間違いない。尚、 Fig.11とFig・5およびFig.8とを比較すると比引かき 抵抗は略々矛盾しない値を示している。但し、引かき傷 痕の深さが浅いときの比引かき抵抗はFig・11の方が小 さな値を示すが、これはチゼル尖端の仕上げに特に注意 したためチゼル尖端がより尖つていたためと考えられ る。逆に言えば、前節の実験に於て引かき傷痕深さが浅 いときに比引かき抵抗が大きくなつた原因の中には寸法 効果のほかに引かきチゼル尖端の丸みの影響も入つて居 たことが考えられる。  さて、この実験における引かき傷痕のプロフィルを大 越式表面粗さ検査機により測定した一例をFig・12に示     /8−85ta;.les、 Steel     Chr・el・f Q・・d・・ns・1・・砂・・漁       (FrOnτVi・w/40°) X’0

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(b)R・k・A・s1・−35°

(c)R・k・A・st・ 0° Fig.12 Effect of the rake angle of the     scratch chisel on the shape of     the scratch sccticn す。Fig・ 12から定性的に次のことが言えよう。  掬い角がo°の引かきチゼルによる引かき傷痕に於て は傷痕両側の盛り上りが全然ないか、あつてもごく僅か であるが、掬い角が一35°になると盛り上りが少し現わ れ、−70°になるとかなり著しい。但し、それでも従来 の実験結果に比べれば少な目である。これは引かきチゼ ル尖端の鋭さの程度が盛り上りに大きな影響を与えたた めだと考えられる。又、正面から見た引かきチゼルの角 度が盛り上りにかなりの影響を及ぼすであろうことが推 定される。しかし、盛り上りの定量的な検討はまだ出来 て居ない。  この盛り上りの現象が、引かきチゼルの掬い角が負で その絶対値がだんだん大きくなるとき比引かき抵抗が大 になるというFig.11に示した結果の一つの原因である と考えられる。

6.18−8不鋳鋼の引かきに於ける

  引かきチゼル材質の影響  これまでの実験では引かきチゼルの尖端形状を色々と 変化させる工作を容易にするために引かきチゼルの材料 としてはすべてタソガPイG2を用いたが、引かき作用 の中i’こは摩擦に類似した現象が含まれると推定され、引 かきチゼルと試料との親和力が問題になると考えられる .ので、引かきチゼルとしてダイヤモンド円錐チゼル(尖 端角80°並びに67°)およびタンガロイG2円錐チゼル (尖端角80°)を用い、18− 8不銃鋼の平らな面を引か いた。その実験結果をFig. 13に示す。測定値のばらつ

(6)

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7.結

論 振子式引かき試験機を用い主として18−8不鋳鋼につ いて常温で引かき実験した結果を総括すると、 1)引かき速度が早くなると比引かき抵抗の値は大きく  なる。 2)引かきチゼルの尖端形状により比引かき抵抗は変化  する。引かきチゼルの掬い角が負角でその絶対値が大  きくなると比引かき抵抗は大きくなる。円錐チゼルに  より引かく場合の方が四角錐チゼルの平らな面で引か  く場合より比引かき抵抗は小さい。同じ四角錐チゼル  による引かきに於ても稜線で引かく場合の方が平らな  面で引かく場合より比引かき抵抗は小さい。 3)引かきチゼルの材質の影響は、ダイヤモンドチゼル  およびタンガロイG2チゼルの比引かき抵抗値の比較  だけについて言えば、それほど大きな差は認められな  い0 4)18−8不銃鋼の常温における比引かき抵抗は引かき 傷痕深さが浅いほど大きな値をとり所謂寸法効果を示 す。比引かき抵抗は又引かきチゼルの尖端形状により大 巾に異るが、その大体の値は引かき速度140∼190m/min

平均引かき傷痕深さ2∼30μに於て8∼08×103

kg/mm2程度である。

8.謝

辞  御指導御援助を賜わりました東京大学大越教授、山梨 大学谷口教授並びに砥粒加工研究会および表面工学研究 会の皆様に厚く御礼申上げます。又、この実験を実施さ れた小野亮、矢島寿美雄、塩川清二、横手昭八朗、柳葉 邦則、大久保譲の諸君に心から感謝します。 文 献 1)織岡、村田、高温における軟鋼の高速引掻に就て、 山梨大学工学部研究報告第7号、昭31・7、185∼192 84

参照

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