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第14回山梨医科大学CPC記録:双胎の一方に心筋肥厚を認めた超低出生体重児 利用統計を見る

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xviii 症例提示 深田幸仁助手(産婦人科学) 溝部直樹大学院生(小児科学) 症例:D. H. 生 後 6 日 , 男 児 ( 第 1 子 ) ID183-039-9 M. H. 生 後 24 日 , 男 児 ( 第 2 子 ) ID183-038-0 主訴:双胎,呼吸障害 現病歴:平成9年1月 25 日(在胎 22 週),近 医で母体に羊水過多,腹部緊満を認め,切迫 早産の疑いで当院産科に紹介された。胎児エ コーで双胎間に体重差を認め,入院経過観察 となった。経過観察中に第1子は羊水過少, 第2子は羊水過多を持続的に認めていたが, 第2子の右心不全徴候,胎児水腫が著明とな ったため,平成9年2月 24 日(在胎 27 週0 日),18 時 40 分に緊急帝王切開で出生した。 第1子は Apgar score 4点,出生体重 774 g。 第2子は Apgar score 4点,出生体重 998 g。 両児とも出生直後より呼吸障害を認め,直ち に気管内挿管を施行され小児科へ入院した。 尚,妊娠経過中に母体に感染徴候等は認めな かった。 母体の既往歴:平成7年妊娠 12 週で自然流産。 平成8年 12 月(在胎 16 週)に頚管無力症の ため shirodker 手術施行。 母体の妊娠経過: 最終月経 1996 年8月上旬からにて自然妊 娠 成 立 し た 。 基 礎 体 温 よ り 分 娩 予 定 日 を 1997 年5月 26 日と算定し,K 病院にて妊婦 健診し経過観察していた。妊娠初期の超音波 検査では胎嚢(GS)は1つで GS 内に薄い隔 壁で囲まれた胎児を2児認めたため,1絨毛 膜2羊膜性双胎と診断した。1996 年 12 月 10 日(妊娠 16 週1日)に予防的 Shirodkar 子宮 頸管縫縮術を施行した。1997 年1月 25 日 (妊娠 22 週5日)に切迫早産,1児羊水過多, 1児羊水過少のため K 病院に入院し,塩酸 リトドリン持続的点滴静注を行い子宮収縮を 抑制,1997 年1月 29 日(妊娠 23 週2日)当 院に精査および管理目的にて紹介,同日入院 となった。 入院時の超音波検査所見は,第1子,2子 それぞれ大横径 5.8 cm,5.6 cm,躯幹断面積 22.6 cm2,30.2 cm2,大腿骨長 3.2 cm,3.5 cm, 上腕骨長 3.0 cm,3.3 cm,推定児体重 456 g, 550 g(差 17.1 %),臍帯動脈 Redistance 第 14 回山梨医科大学 CPC 記録 日時:平成 10 年2月 18 日(水)午後5時 15 分 場所:臨床講堂大講義室 司会:雨宮 伸講師(小児科学),川生 明教授(病理学2)

双胎の一方に心筋肥厚を認めた超低出生体重児

要 旨:在胎 22 週に羊水過多で入院,経過観察中,第1子は羊水過少,第2子は羊水過多で右 心不全,胎児水腫が著明となったため,在胎 27 週の2月 24 日,緊急帝王切開で出生した。第1 子は 774 g,第2子は 998 g,Apgar score はともに4点で呼吸障害を認めた。第2子は心エコー上, 中隔壁と左室後壁の肥厚,左室内腔の狭小化があり感染徴候のため交換輸血を行ったが,3月1 日に死亡。第1子は2月 28 日肺出血,3月 14 日出血傾向と感染徴候が出現し,3月 17 日死亡し た。剖検より第2子は求心性心肥大,心筋梗塞,肺硝子膜症,全身臓器の出血傾向を認め,死因 は呼吸不全,第1子は気管支肺炎,脳,肺,腎に出血傾向があり,死因は出血による脳死と診断 された。死因の背景にある双胎間輸血症候群について解説された。

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Index(RI)0.74,0.66,Preload Index(PLI) 0.37,0.52,Vmax of Aorta 131.8 cm/s, 148.7 cm/s であった。この結果から第2子に は右心不全徴候は存在したが,心拡大および 左心不全徴候は存在しなかった。第1子の羊 水量はほぼ“0”であり,第2子の Amniot-ic fluid index は 50.9 cm であった。胎盤は子 宮後壁に付着し,その臍帯は第1子側は胎盤 の辺縁に,第2子側はほぼ中央に付着してい た。 入院後の経過は,前医に引き続き塩酸リト ドリン持続点滴静注を行い,子宮収縮を抑制 すると同時に,第2子の羊水過多症に対して 計6回の治療的羊水穿刺を施行,8,350 cc の 羊水を抜去した。(23W5D; 1,600 cc,24W3D; 600 cc,25W0D; 900 cc,25W4D; 1,700 cc, 26W1D; 1,850 cc,26W6D; 1,700 cc)胎児の 循環状態は第1子には経過中,心不全徴候は 存在しなかったが,第2子は6回の羊水穿刺 術でも右心不全徴候は改善せず,妊娠 26 週 過 ぎ に は 左 心 不 全 徴 候 ( Vmax of Aorta; 63.6 cm/s)および心室中隔肥厚が出現,妊 娠 27 週0日には軽度心拡大,皮下浮腫も出 現したため双胎第2子胎児水腫の適応にて, 同日急速遂娩術施行となった。 家族歴:特記すべきことなし。 入院時現症: 第1子: 体重 774 g,身長 31 cm,体温 35.8 度,心拍 数 160/分,外表奇形なし。呼吸音は減弱, 濁。心音はⅠ音正常,Ⅱ音亢進。心雑音はな し。腹部は平坦,軟。肝臓は 0.5 cm 触知。 四肢に浮腫あり。大泉門は平坦。 第2子: 体重 998 g,身長 32 cm,体温 36.0 度,心拍 数 164/分,外表奇形なし。呼吸音は減弱, 濁。心音はⅠ音正常,Ⅱ音亢進。心雑音はな し。腹部は平坦,軟。肝臓は 3.0 cm 触知。 全身に浮腫あり。大泉門は平坦。 入院時検査: <血液> 第1子: WBC 5,700/µl,Hb16.0 g/dl,Plt 14.8 × 1 04/µl , N a 1 3 5 m E q / l , K 3 . 2 m E q / l , Cl110 mEq/l,Ca8.3 mg/dl,BUN6.0 mg/dl, Cr0.5 mg/dl,GOT 71 IU/l,GPT 3 IU/l, CK 397 IU/l,T-Bil.2.8 mg/dl,Glu.44 mg/dl, CRP < 0.3 mg/dl,IgM < 5 mg/dl

動脈血液ガス分析(呼吸器条件:酸素濃度 100 %,圧 27/3 mmHg,換気回数 35/分) PH 7.38,pCO237.1 mmHg,pO2126.2 mmHg, HCO321.5 mmol/l,BE-2.6 mmol/l

第2子:

WBC 6,000/µl,Hb15.4 g/dl,Plt14.2 × 104/µl, Na134 mEq/l, Km 3.1 mEq/l, Cl111 mEq/l,Ca 9.8 mg/dl,BUN 4.0 mg/dl, Cr 0.4 mg/dl,GOT 157 IU/l,GPT 9 IU/l, CK 580 IU/l,T-Bil.2.8 mg/dl,Glu.1.58 mg/dl, CRP < 0.3 mg/dl,IgM < 5 mg/dl

動脈血液ガス分析(呼吸器条件:酸素濃度 100 %,圧 35/3 mmHg,換気回数 30/分) PH7.41,pCO227.0mmHg,pO262.0mmHg, HCO316.7mmol/l,BE-6.0 mmol/l

入院後経過: 第1子: 2月 24 日 胸部レントゲン上 RDS 所見あり, サーファクタント使用。心エコー上,異常所 見なし。2月 28 日,突然,肺出血。血液検 査上は出血傾向なし。心エコー上動脈管開存 を認め,インドメタシン投与を施行し,動脈 管が閉鎖。肺出血がおさまる。3月2日,出 血傾向出現(皮下,口腔内出血,血尿,血便, Plt4.9 万)。全身性強直性けいれん出現。頭 部エコーで頭蓋内出血あり。3月 14 日,出 血傾向持続。感染徴候出現(CRP 2.8mg/dl)。 3月 17 日,CRP17.1mg/dl と上昇。心拍数 低下,11 時 50 分死亡。(血液培養は陰性) 第2子: 2月 24 日,胸部レントゲン上 RDS 所見あり, サーファクタント使用。心エコー上,中隔壁 と左室後壁の肥厚,左室内腔の狭小化あり。 2月 25 日,突然,SpO290 %台から 75 %へ

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低下。用手換気で回復。胸部レントゲン上気 胸所見なし。心エコー上肺高血圧所見ありプ ロスタグランディン,ニトログリセリン投与 開始。2月 27 日,全身性強直性けいれん出 現。頭部エコーで頭蓋内出血あり。感染徴候 (CRP3.6mg/dl)認め,交換輸血施行。2月 28 日,CRP 4.7 mg/dl と上昇。再度交換輸血 施行。3月1日,CRP 13.7 mg/dl と上昇。 心拍数低下,17 時 37 分死亡。(血液培養は 陰性) 検査値分析 矢富 裕助教授(臨床検査医学) 現病歴に関して: 抗リン脂質抗体症候群に関する検索は行った か?(答え)施行せず。 入院時血液データに関して: 新生児(特に未熟児)においては,末梢血球 数のとりうる幅が非常に広く,本症例において も特徴的所見は認めない。 生化学データにおいて,GOT ・ CK 高値, G P T 低 値 ( 特 に 第 2 子 ) が 認 め ら れ る 。 GOT ・ CK は fetal distress で上昇することが知 られている。また,一般に,GOT ・ CK は新 生児期には成人より高値,逆に GPT は出生直 後には成人より低値である。これらのことが反 映された結果と考える。 IgM の生下時の増加は母体内感染を示唆す る。本症例では,これは否定的である。 画像診断 中島寛人助手(放射線医学) 2月 15 日の石和共立病院での単純 CT(図 1a,b)では左頸部に径 7.8 × 6.5 cm 程の境界 不明瞭な soft tissue density mass が認められた。 造影後(図 2a,b)はこの mass は全体的に不 均一に染まった。ここでは示していないが,左 腋窩にも同様な mass が認められた。これらは いずれも一塊となったリンパ節腫大と考えられ た。同日の CT で脾内に径 2 cm 程の low densi-ty mass が認められ,lymphoma の浸潤または 脾膿瘍が疑われた。同日の頚部,胸部,腹部の CT では上記以外にリンパ節腫大と思われる像 や肝内の SOL 病変は認められなかった。 化学療法(CHOP-E)を1クール施行し,当 科へ転院時の3月 26 日の造影 CT では左頚部 の皮下組織の肥厚は認められるが,明らかな造 影効果を呈す mass は消失しており,治療後の 変化(ほぼ CR)と考えられた。脾内には low density mass が認められるが(図3),2月 15 日の時と大きさに変化がなく,ガリウムシンチ でも集積がなかったため脾膿瘍と考えられた。 また,頚部,胸部,腹部,骨盤部には明らかな リンパ節腫大像は認められなかった。肝はやや 腫大していたが,肝内に明らかな SOL 病変は 認められなかった(図4)。 <コメント> 肝への lymphoma の浸潤は腫瘤形成や瀰漫 浸潤の形態をとり,後者では画像上はっきりし ないことが多く,画像にて問題がなくても生検 にて浸潤が確認されることがしばしばある。こ の症例でも CT 上問題はないが,肝への浸潤を 完全には否定できないと思われた。

脾の low density mass については上記の臨床 経過からは膿瘍の可能性が高いと思われたが, 病理解剖の結果では lymphoma の浸潤があり, リンパ腫症例の脾病変については生検を行うな ど,確定診断を行うことが治療方法を決定する 上で重要と考えられた。 病態分析 杉山 央医員(小児科学) 双胎間輸血症候群の心筋肥厚について: 当科で最近経験した TTTS の受血児3例の検 討をした。まず,受血児のプロフィールだが (表1),今回の症例は症例3である。体重減少 率は出生時から最低の体重までで計算し,浮腫 の程度を示すと考えられる。症例3はやや体重 減少率が少ないように見えるが,最低体重にな る前に死亡したためと考えられる。心筋変化は い ず れ も 1 日 中 で 中 隔 ( I V S ), 左 室 後 壁 (LVPW)が増加し,左室拡張末期径(LVDd) が減少する(表2)。しかし,左室心筋重量 (LVmass)で見ると変化はない。各症例につい ての経時的な変化をグラフで示す(図5,6, xx

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7)。いずれも日齢1で心筋が肥厚し,その後 再び正常化していくのがわかる。このような心 筋変化の原因については現在以下のような推論 がされている。まず,受血児心臓に容量負荷が 加わり,そのため心筋は細胞を肥大させて代償 している。このとき ANP 等の利尿ペプチドが 上昇する。生直後から ANP の効果もあり利尿 がつき左室拡張期径は縮小し,それにより心筋 は伸展された状態から一転して収縮した状態に なるため心筋が肥厚して見えるようになり,2 から3ヶ月で正常化する。心筋壁の肥厚は間質 の浮腫なども関係しているかもしれない。 いずれにせよ TTTS の心筋肥厚は可逆性と考 えられ,予後不良の因子とはならないが,この ような受血児の全身状態は一般的に悪く,敗血 症,頭蓋内出血の頻度が高くなり,注意深い全 身管理が必要になる。 図 1a 図 1b 図 2a 図 2b 図3 図4 表1.受血児プロフィール 症例 出生体重 体重減少率 内科的治療 転帰 1 1430g 16 % DOA + DOB 生存: + furosemide 合併症なし 2 1186g 20 % DOA + DOB 生存: + furosemide PVL の合併 3 998g 8 % DOA + DOB 敗血症で + furosemide 死亡 表2.受血児の心筋変化

症例 在胎週数 日齢 IVS LVPW LVDd LVmass IVS 比 (mm)(mm)(mm) (g) 1 30w3d 0 3.3 3.1 18.6 8.2 1.2 5.4 4.9 10.5 7.2 2 28w0d 0 1.9 1.7 11.9 2.0 1.2 2.5 2.2 10.0 2.0 3 27w0d 0 3.5 3.7 7.6 3.0 1.8 3.7 4.3 6.4 3.0 *測定値は出生直後と心筋肥厚が最大となった日齢 のものを提示

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病理所見と診断 山根 徹助手(病理学2) 第2子: 〔病理所見〕(剖検番号 1164) A.肉眼所見 1.外表:点状出血(背部,前胸部,下腿) 眼瞼結膜:貧血性 2.体腔液:腹水,胸水(両側)に少量。 3.肺(左 12 g,右 29 g)気管内に血性痰。両 側肺に出血。 4.心(5 g):求心性肥大あり(壁厚,左室側 xxii 図5 症例1の経時的心エコー変化 図6 症例2の経時的心エコー変化

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壁:0.4 cm,心室中隔:0.3 cm,右室側壁 0.3 cm)。右室乳頭筋に小梗塞。左室壁に小 出血。 動脈管:開存 5.脳(60 g):浮腫状で軟らかい。脳室周囲に 小出血多発。 6.肝(33 g):鬱血。 7.腎(左 5 g,右 4.3 g) 8.副腎(左 1 g,右 0.7 g) 9.脾(1.3 g) 10.甲状腺(0.4 g) 11.胃,食道:粘膜内出血。 12.膀胱:粘膜内出血。 13.精巣:腹腔内。 14.身長 32 cm,体重 620 g B.組織学的所見 1.肺:肺胞内出血が両側にみられる。気管支 内には,分泌物が貯留している。hyaline membrane の形成が目立つ。 肺高血圧症:肺動脈の中膜の求心性肥厚が軽 度あり,外膜は線維性に肥厚している。内膜 肥厚は見られない。 2.心:心室壁には fibrosis がある。右心室の 心筋細胞には核の大小不同がみられ,乳頭筋 に梗塞巣がある。 3.脳:両側側脳室周囲白質に梗塞と出血が見 られる。血管周囲腔の浮腫が目立つ。 4.肝:グリソン鞘の fibrosis がある。中心静 脈壁の fibrosis とその周囲の肝細胞に軽度の 萎縮,脂肪変性がある。 5.腎:小出血巣あり。 6.脾臓:鬱血。 〔病理診断〕 1.出血傾向:肺,脳,腎,消化管,膀胱 2.肺:硝子膜症+肺高血圧症 3.心:心筋梗塞+求心性心肥大 4.鬱血性心不全 直接死因:呼吸不全 第1子: 〔病理所見〕(剖検番号 1165) A.肉眼所見 1.外表:出血班(側腹部,下腿) 図7 症例3の経時的心エコー変化

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眼瞼結膜:貧血性 2.体腔液:腹水,胸水(両側)に少量。 3.脳(100 g):右脳内出血と脳室内に出血穿 破,脳底部に血腫形成。 4.肺(左 7.5 g,右 8.5 g):両側肺に出血。 5.腎(左 2.9 g,右 3 g):小出血。 6.肝(33 g):赤褐色。 7.心(3 g) 動脈管:開存しているが,血栓形成あり。 8.副腎(左 0.8 g,右 0.7 g) 9.脾(1.3 g):鬱血。 10.甲状腺(0.2 g) 11.胃:潰瘍。 13.精巣:鼠径管内。 14.身長 30 cm,体重 540 g B.組織学的所見 1.脳:右脳室内穿破を伴う脳内出血があり, その周囲に梗塞巣と hemosiderosis がある。 大脳皮質には,髄膜炎もみられる。脳幹部に 浮腫。 2.肺:肺出血と軽度の気管支性肺炎がある。 3.肝:細胆管および毛細胆管に胆汁栓形成が 見られる。グリソン鞘には fibrosis と炎症細 胞浸潤があり,小葉内にも炎症が波及してい る。 4.脾:鬱血。 5.腎:小出血 〔病理診断〕 1.出血傾向:脳,肺,腎 2.肺:気管支性肺炎 直接死因:脳死 (画像省略) 解説1 手塚 徹医員(小児科学) 資料に多胎及び最近の双胎間輸血症候群の一 般的な考え方を示した。 多胎は増加傾向にあり,多胎になると低出生 体重児の確率がかなり高くなっているのがわか る。多胎妊娠と死亡率をみると双胎間輸血症候 群を起こす可能性のある1絨毛膜性妊娠は,死 産率,周産期死亡率,新生児死亡率が著しく高 い傾向が認められ,多胎妊娠,双胎間輸血症候 群の管理の重要性がうかがわれる。 双胎間輸血症候群の概念は未だ混沌としてい る。以前は体重差,血色素の差などが重要視さ れていたが,現在は急性型と慢性型で病態が異 なり,別々に考える方が一方的になりつつある。 臨床的には慢性型の双胎間輸血症候群が問題に なる。 双胎間輸血症候群には未だ解明されていない 幾つかの問題がある。 1.発生のメカニズムがはっきりしていないこ と。ダイナミックな血液の動きだけでは説明で きないため幾つかの仮説が出されている。仮説 の一つを示した。 2.Recipient の心機能障害。心機能障害の原因, 病態の究明によって双胎間輸血症候群の病態が 明らかにされる可能性があるとともに,出生後 の管理方法が確立される可能性がある。 3.臨床的には,子宮内の胎児1児死亡,出生 後の PVL(periventricular leukomalasia)の発 生が問題になっている。 4.双胎間輸血症候群の予防,管理については 確立されたものはない。出生前の早期発見,経 過観察が重要と考えられる。 1.多胎 1)多胎妊娠の増加 一 般 に 多 胎 妊 娠 の 発 生 頻 度 は 1 9 8 5 年 に Hellin によって報告された 1/80n-1(n :胎児 数)が知られている。しかし,近年の生殖補助 療法の進歩によって多胎が増加する傾向があ る。わが国でも,1984 年と 1993 年を比較する と,多胎発生率は 1.2 倍,品胎は 2.7 倍,4胎 は 6.7 倍,5胎は 4.2 倍になっている。 2)低出生体重児の出生割合が高い。 出生時の平均在胎週数と体重は 双胎: 35W,2,050 g 品胎: 32W,1,350 g xxiv

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四胎: 28W,1,020 g 3)多胎と卵性診断 (1)卵性双胎では,下図のように3種類に なる。 (2)卵性双胎では常に2絨毛膜2羊膜 4)多胎妊娠と死亡率(1981 年 10 月から 1991 年 12 月,大阪府立母子保健総合医療センタ ー) (1)死産率 単 胎 3 . 2 % ( N = 1 4 7 4 0 ), 双 胎 7 . 9 % (N = 389 組)。 双胎1児死亡は1絨毛膜性; 12 %,2絨 毛膜性; 5.4 %に認め,この時の生存児の 予後は,2絨毛膜例は 100 %良好だが,1 絨毛膜性は 72 %が不良 (2)周産期死亡(出生 1,000 対) 単胎は 24.0,双胎は 80.1(p < 0.01)。さ らに双胎を1絨毛膜例と2絨毛膜例に分け ると,1絨毛膜例は 131.1 で2絨毛膜例は 27.9 であった。 (3)新生児死亡率(出生 1,000 対) 単胎は 16.5,双胎は 56.6。さらに双胎を1 絨毛膜例と2絨毛膜例に分けると,1絨毛 膜例は 82.0 で2絨毛膜例は 30.7 であった。 2.双胎間輸血症候群(Twin to twin transfusion

syndrome: TTTS) 1)定義 (1)古典的には, 1.1絨毛膜例双胎であること 2.2児間の体重差が 25 %以上あること 3.出生時の2児間の血色素差が 5.0g/dl 以上ある。 4.著明な羊水過多と羊水過小を伴う。 5.2児が肉眼的に多血と貧血である 6.胎盤の占有部に著明な多血と貧血が認 められる。 以上の症状から1+2∼6のうち1つ以上を 認めるもの。 (2)最近の考え方として, 1.1絨毛膜例双胎であること 2.双児間に血流の交通があること 3.体重差,羊水量の差があること 4.急性,慢性にわけて考える。 急性型(出生の直前) →著しい Hb の差を認めるが,体重差は激 しくない。 慢性型(妊娠中期) recipient :高血圧,心機能不全,胎児水 腫,羊水過多等 donnor :貧血,低血圧,循環障害,羊水 過少等 2)TTTS の頻度:全妊娠の3∼ 10 % 全双胎の 30 ∼ 40 %に両児間の血液移行が 生じ,そのうち 10 %に TTTS を発症。 3)TTTS の問題点 (1)発生のメカニズムが解明されていな

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い。 (2)recipient の心機能障害 (3)PVL(periventricular leukomalasia) の高い発生頻度。 (4)子宮内1児死亡と生存児の障害 (5)TTTS からの離脱の方法 3)−(1)メカニズム(仮説) a.2児間の血液分配の不均等 recipient の hypervolemia(非常に小さい) →Hypervolemia によるヒト心房性 Na 利尿ホルモン(h-ANP)の上昇 →多尿の持続。→羊水過多 b.羊水過多が起こると 1)羊水腔圧の上昇 子宮胎盤系の静脈の鬱血により絨毛間 腔の圧が上昇し,子宮自体の血液灌流 が減少→胎児胎盤循環に悪影響 胎児胎盤循環での血液分配による血液 の偏り→胎児高血圧 →酸素利用障害 2)悪循環の発生 多尿→羊水過多→羊水腔圧高圧化→多 尿 3)−(2)TTTS に伴う心筋症 慢性型の TTTS の recipient に心筋肥厚, 心機能障害を認める。 心筋症の病態,原因の究明が TTTS の病態 の解明に役立つと考えられる。 病理像は2つの意見があり,はっきりして いない 1)心筋の肥厚は間質の浮腫である 2)心筋の肥厚は心筋細胞の肥大である 3)−(3)PVL(periventricular leukomalasia) の発生 極低出生体重児の PVL 発生頻度は単胎で は 3.6 %だが双胎では 10.2 %。 また,双胎 PVL の 85 %が1絨毛膜性双胎 だった。 胎内での循環動態が著しく悪い可能性が強 く,PVL の発生が精神発達予後に関与する。 3)−(4)胎児1児死亡 TTTS の場合,胎児1児死亡を起こす頻度 が2絨毛膜双胎よりも高い。 急性期; 死亡児の血圧が急激に低下し,生存児か ら死亡時に急激に血液の流入が起こる。 その結果,生存児に hypovolemic shock や ichemic な変化が起こる。 慢性期; 1)子宮内血管内凝固症候群 死胎児から組織トロンボプラスチンが 血管吻合を介して生存児に移行して DIC を起こす。(すべてで起こるとは 考えにくい) 2)死胎児,胎盤からの塞栓物の遊離に よる大血管の閉塞 1児死亡から生存児娩出の時期は早い 程良い。 3)−(5)TTTS の予防と管理 確実なものは現在のところなし (初期)絨毛膜数の早期判定 (中期)羊水過多,体重差の早期発見と頻 回の経過観察 (治療)YAG レーザー凝固法,羊水穿刺 解説2 深田幸仁助手(産婦人科学) TTTS(双胎間輸血症候群)の発症原因とし ては従来から知られている胎盤上の血管吻合が 主因とされているが,本症例のように血管吻合 のない症例での TTTS も最近では多く報告され ており,その原因は本症例のような臍帯の付着 部異常,臍帯の過捻転などが主である。いずれ の原因にしても,妊娠初期からの超音波検査に よる厳重な胎児管理にて診断は可能で,1絨毛 膜例双胎は,特に TTTS の早期発見,早期治療 が児の予後を左右することになることから,妊 娠初期から専門とする医師のいる病院で管理す ることが望ましい。しかも臨床の場では発生妊 娠週数や分娩時期も児の予後を左右する因子と して考えなければいけないため,その管理はよ り複雑となり,産科医および未熟児を専門とす る小児科医との密なる連携が重要となる。 xxvi

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