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スリランカの象 (フォトエッセイ)

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Academic year: 2021

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スリランカの象 (フォトエッセイ)

著者

荒井 悦代

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

252

ページ

32-35

発行年

2016-09

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00002873

(2)

  スリランカというと、思い浮かべるのは紅茶 でしょうか。それともカレーでしょうか。これ らの他にスリランカ旅行を彩ってくれるのが象 です。数日の短い旅でも象に遭遇することは可 能です。   実質的な首都であるコロンボと古都キャンデ ィを結ぶ幹線道路から少し離れたところにある のが、ピンナワラです。ここを訪問するベスト の 時 間 は 午 前 一 〇 時 と 午 後 二 時 で す。 な ぜ か。 象の沐浴タイムだからです。象の沐浴?象遣い が象に水かけてごしごし洗うの?いいえ違いま す。数え切れないくらいの大小の象が川で思い 思いに、 自由に過ごしているのです(写真1、 2、 3) 。   子象が親に甘えていたり、子象どうしがつつ き合っていたり、川に寝転んでいたり、一頭で の ん び り 鼻 や し っ ぽ を ぶ ら ぶ ら さ せ て い た り、 気ままな象をみながら川沿いでお茶を飲むだけ なのですが、飽きません。動物園の猿山の前で 長時間過ごしたことのある人なら理解してもら えるかもしれません。   川にやってくる光景もみものです。象の大群 が、手で触れられるくらいの目の前を通り過ぎ ます。象は意外なことにドシンドシンと歩くわ けではないのですが、やはりその大きさや重量 感に圧倒されます。   川での沐浴が終わると、元来た道を戻って普 段象たちが暮らしている地区に移動します。ほ んの数百メートルしか離れていないのに、こち ら は 広 々 と し た 空 き 地 と 山 が 広 が っ て い ま す。 象たちに目を奪われていると、 象遣いたちが 「象 Etsuyo Arai

写真・文 荒井悦代

  

■フォトエッセイ■ 1 ピンナワラでの水浴び 2 象の孤児院 4 居住区の様子

スリランカの象

スリランカの象

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に 触 れ ﹂「 写 真 を 撮 っ て や る ﹂ な ど 声 を か け て きます。こわごわ近づき、象にぴったりくっつ くようなツーショットの写真が撮れます(数百 円程度のチップを要求されます) (写真4) 。   別の東屋には子象がつながれています。子象 といっても大きな犬くらいの大きさです。ここ ではミルクをあげることができます。象の口に 五〇〇ミリぐらいの瓶をあてがうのですが、象 は一気に飲み干してしまうので、シャッターの 準備が必要です(写真5、 6) 。   ピンナワラは象の孤児院となっており、ジャ ングルで親とはぐれてしまった象などがここに 引き取られます。内戦中に地雷で足を怪我した 痛 々 し い 子 も い ま す ( 写 真 7 ) 。 た だ、 大 人 に な っ て も、 ジ ャ ン グ ル に 戻 さ れ る こ と は な く、 ここで暮らすようです。ウダワラヴェにも象の 孤児院がありますが、こちらは子象のみが保護 されています。   川と居住地区の間にお土産屋さんが並んでい ま す。 こ こ で み る べ き は「 ぞ う さ ん ペ ー パ ー﹂ でしょう。象は大食漢ですが、繊維質をあまり 消化しないようです。象の歩いた後は「落とし 物﹂が残されています。この落とし物を良く洗 い加工して紙にしたのが、ぞうさんペーパーで す。ちょっと分厚くてざらざらしていますが臭 いはまったくありません。   シギリヤロックを訪れる機会があるなら、付 近に一泊して象サファリもおすすめです。宿で ジープとドライバーをレンタルして、夕方に出 発します。広大な国立公園内を走り始めても動 物の姿はなかなか発見できないのですが、運が 2 象の孤児院 3 水浴び中の象たち 4 居住区の様子 5 ピンナワラの子象

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よほど悪くなければしばらく走ると象はみられ ます。それも、牧場に牛がいるように象が群れ になっています。象をみるなら望遠鏡は不要で す。象は十分大きいし、ドライバーがジープで 安全な距離まで接近してくれます。時々、機嫌 の悪い親象がいますが、そのときはドライバー が全速力で逃げてくれます。それ以外の象たち はタンクと呼ばれる貯水湖のあたりで夕日を浴 びながらのんびりしています(写真8、 9) 。   ス リ ラ ン カ の お 祭 り に は 象 は 欠 か せ ま せ ん。 特に大規模なのが八月に行われるペラヘラ祭り で、象の行進はめくるめく一大ページェントで す。象が有り難いご神体を運ぶのですが、全国 から集まった一〇〇頭以上の象が電飾を施した 布をまとい練り歩くのです。その前後には趣向 を 凝 ら し た 出 し 物 や ダ ン ス を 披 露 す る 人 々 が 延々と続きます(写真 10)。   国立公園に行く時間がない場合でも時々です が 移 動 中 に 象 に 出 く わ す こ と が あ り ま す ( 写 真 11 ) 。働く象や幹線道路を横切る象です。象の 多く生息する地域を夜間に運転する場合は要注 意です。それだけスリランカでは象は身近な存 在です。   ただ、いいことばかりではありません。野生 の象と人間の間に問題もあるようです。農民た ちは象に農作物が食い荒らされるため、夜は畑 に 小 屋 を 作 っ て 寝 泊 ま り し ま す ( 写 真 12) 。ロ バート ・ ノックスの『セイロン島誌』には、村 人どうしのトラブルの際、喧嘩相手の家の四隅 に塩の山を盛っておく、すると塩を舐めに来た 野生の象が喧嘩相手の家を壊してしまうなどと 6 ミルクを飲む子象 7 象の孤児院に住む地雷で足を失った象 ( 中央 ) 10 ペラヘラの象 9 象サファリの様子    8 象サファリ

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なりません。そのため象の飼育に関しては様々 な制約があったにもかかわらず、近年、子象を 飼育する個人が増加したのです。調べてみると 登録書は偽造されたものでした。そして象は密 猟されてきたものでした。   象を密猟者から買い、ペットのように飼うこ とがお金持ちの間でちょっとしたブームになっ て い た の で し た。 確 か に 子 象 は か わ い い で す。 しかし、象は五才くらいまで群れの中で母親に 守られながら生活する動物で、群れから迷って ピンナワラに保護されたとしても四〇%が死ん でしまうのです。お寺などはペラヘラで必要だ か ら 飼 育 す る の は 当 然、 と 主 張 し て い ま す が、 個人で飼育するのは、象にとって不幸でしかな いでしょう。   近 年 に な り よ う や く 、 密 猟 や 違 法 な 飼 育 へ の 取 り 締 ま り が 強 化 さ れ る よ う に な り ま し た 。 ス リ ラ ンカでは象と人間の共存が模索されています。 いう、象の特性を利用した嫌がらせ方法が紹介 されています。現在、野生動物保護局はトラブ ルを起こす象を別の土地に移動させることで問 題を解決しようとしていますが、象が元いた土 地に戻ってしまう例がしばしば報告されていま す。 象 と の ト ラ ブ ル で 年 間 平 均 ( 二 〇 〇 五 ~ 一 〇 年 ) 七 〇 人 が 亡 く な り ま し た。 野 生 動 物 保 護 局 は 二 〇 一 一 年 に 象 被 害 を 受 け た 人 々 に 二五〇〇万ルピーの補償金を支払いました。   象は身近な存在であり、ペラヘラでは欠かせ ない存在であり、保護すべき対象でありながら その身体の大きさや強さから、恐れるべき対象 でもあり、同時に管理すべき対象でもあったの ですが、近年は象に対する人間の悪行が報告さ れています。   スリランカでは野生の象の捕獲は禁止されて います。お寺などが宗教行事のために象が必要 な場合、ピンナワラ象の孤児院からある程度大 きくなった象をもらい受け、動物局へ登録する こ と と な っ て い ま し た。 象 を 所 有 す る こ と は、 名誉なことであるもののいくら子象でもえさ代 がかかりますし、大きな負担を覚悟しなければ 10 ペラヘラの象 11 トラックで運ばれる象 12 見張り小屋 あらい えつよ/アジア経済研究所 動向分析研究グループ 1990 年入所。1994 ~ 96 年キャンディ在住、2008 ~ 10 年 コロンボ在住。スリランカの政治・経済を担当。

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1 Library, Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization (3-2-2 Wakaba Mihama-ku Chiba-shi, Chiba 261-8545). 情報管理 56(1), 043-048,

Basic Input-Output Table of Thailand, 1975, (IDE Statistical Data Series, No. 30), Tokyo: Institute of Developing Economies. OSCAS-NEC (Office of Statistical Coordination

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