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曖昧さへの否定的態度が大学生のひきこもり親和性に与える影響

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Academic year: 2021

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(1)Title. 曖昧さへの否定的態度が大学生のひきこもり親和性に与える影響. Author(s). 安田, 英広. Citation. 学校臨床心理学研究 : 北海道教育大学大学院教育学研究科学校臨床心理 学専攻研究紀要, 16: 89-101. Issue Date. 2019-03-26. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10492. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 曖昧さへの否定的態度が大学生のひきこもり親和性に与える影響 安 田 英 広*. The Effect of Negative Attitudes towards Ambiguity on Affinity for Social Withdrawal in University Students. 要 約 本研究では,先行研究に基づいて,ひきこもり親和性,社交不安傾向,強迫傾向,曖昧さへの否定的 態度の関連について検討を行った。都内の大学生205名を対象として,ひきこもり親和性を測定する尺度, Liebowitz Social Anxiety Scaleの日本語版,Maudsley Obsessional Compulsive Inventory邦訳版,曖昧 さへの態度尺度を用いた質問紙調査を実施した。共分散構造分析の結果から,社交不安傾向と強迫傾向 が,ひきこもり親和性に対して直接的な正の影響を与えていることが示された。また,曖昧さへの否定 的態度(曖昧さの“不安” , “統制” )は,社交不安傾向と強迫傾向を介して,ひきこもり親和性に対し て間接的な正の影響を与えていることが示された。以上の結果から,ひきこもり親和性の高い人々に対 するアプローチとして,援助者自身の態度を介して,曖昧さへの否定的態度を低下させるような働きか けが有効である可能性が示唆された。. 問題と目的. ることが少なくなく,40代以上も対象としている, 全国ひきこもり家族会連合会(2017)の調査では,. ひきこもりは, 「さまざまな要因の結果として. 25.2%が10年以上ひきこもっているとの結果が示. 社会的参加(義務教育を含む就学,非常勤職を含. されている。さらに岐阜県ひきこもり地域支援セ. む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的. ンター(2017)の調査では,ひきこもり相談につ. には6カ月以上にわたっておおむね家庭にとどま. いて,全体の27.7%が40~50代のひきこもりであ. り続けている状態(他者と交わらない形での外出. ることが報告されていることからも,ひきこもり. をしていてもよい)を指す現象概念」と定義され. 状態にある者の実際の数は,推定されている数よ. ている(齋藤・中島・伊藤・皆川・弘中・近藤・. りも大きなものであると考えられる。このような. 水 田・ 奥 村・ 清 田・ 渡 部・ 原 田・ 斎 藤・ 堀 口,. ひきこもりは,抑うつや希死念慮・自殺企図,家. 2010) 。. 庭内暴力の問題が指摘されている(斎藤, 1998). ひきこもりは内閣府の調査によって,国内で. だけでなく,長期にわたり就労や就学などの社会. 54.1万人いることが推定されている(内閣府政策. との関わりが失われることから,個人や家庭を越. 統括官, 2016) 。また,この調査は対象を15-39歳. えた,社会経済に対する影響までもが懸念されて. としているため,40歳以上のひきこもりについて. いる(渡部・松井・高塚, 2010)。. は明らかになっていない。ひきこもりは長期化す. この,ひきこもりに関連する概念として,ひき. *. Hidehiro YASUDA:北海道教育大学大学院学校臨床心理専攻 大学院生. キーワード:ひきこもり親和性,曖昧さへの態度,社交不安傾向,強迫傾向,オープンダイアローグ. 89.

(3) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). こもり親和群に関する研究がなされている。ひき. 示的なアプローチに対しては,回避しようとする. こもり親和群とは「ひきこもりを共感・理解し,. 可能性がある。一方で,相対主義的な態度を示し. ともすると閉じこもりたいと思うことがある人た. つつ,ただ現状を肯定するようなかかわりでは,. ち」のことであり(内閣府政策統括官, 2016) ,ひ. 抱えている不安や問題が解決しない可能性がある。. きこもり親和性とはこの傾向を表す用語のことで. なお,援助者には,ひきこもりのメカニズムを把. ある。ひきこもり親和群は,ひきこもりの前段階. 握・同定することの難しさ,わからなさを自覚し,. にあり,今後ひきこもりになっていく可能性があ. それに耐えることが求められるとの指摘もある. る存在であることが指摘されている(東京都青少. (近藤, 2017)。したがって,ひきこもりへのアプ. 年・治安対策本部, 2008) 。同研究によると,対人. ローチは,援助者のあり方を含めたかたちで,問. 恐怖傾向を測る4項目に2個~4個あてはまると. い直される必要があるといえるだろう。. 選択した者は,ひきこもり群では66%,ひきこも. 対人恐怖と関連する心理的問題としては,社交. り親和群では47%,一般群では12%であった。ま. 不安障害(Social Anxiety Disorder: SAD)がある。. た,強迫傾向を測る4項目に2~4個あてはまる. 社交不安障害とは,他者によって注視されるかも. と選択した者は,ひきこもり群では16%,ひきこ. しれない社交状況に関する著名または強烈な恐怖,. もり親和群では27%,一般群では7%であった。. 不安によって特徴づけられる疾患である. これらの結果は,ひきこもりは対人恐怖,強迫症. (American Psychiatric Association, 2013)。 社. 状などの精神的症状をともなうことが多いという. 交不安障害は,以前は希な病態であると認識され. ことの指摘(鍋田,2003; 斎藤, 1998)と一致して. ていたが,大規模な疫学調査で3~13%という高. いる。さらに,「精神的な病気」での通院・入院. い生涯有病率が確認され,これまで認識されず,. 経験率は,ひきこもり群では47%,ひきこもり親. 治療されなかった重大な障害であるという考えが. 和群では21%,一般群では5%であった(東京都. 普及した(朝倉・井上・佐々木・佐々木・北川・. 青少年・治安対策本部, 2008) 。以上のことから,. 井上・傳田・伊藤・松原・小山, 2002)。社交不安. ひきこもり群及びひきこもり親和群は,一般群よ. 障害は,うつ病やアルコール依存などに先行して. りも精神的な問題を抱えやすいことが推察される。 発症することが多いとされており,これらの合併 そのため,ひきこもり群に対するケアに加えて,. 精神障害が1/3程度に認められ,他の精神障害と. ひきこもり親和群に対するケアも充実化し,ひき. 合併すると自殺企図の危険性が高まるとの指摘が. こもりに至る前段階での介入方法を探索すること. ある(Schneier, Johnson, Horigg, Liebowitz, &. が求められている(渡部他, 2010) 。. Weissman, 1992)。また,社交不安症状について,. 加えて,ひきこもり親和群は,自己の決定に関. 恐怖感/不安感から,ひきこもり親和性への正の. して他者からの干渉を避ける傾向があると指摘さ. 影響が見られている(新井・弘中・近藤, 2015)。. れている(渡部他, 2010) 。また,不登校・ひきこ. 一方で,同研究によると,社交不安症状の回避に. もりの問題において,周囲が訪問援助を望んでい. ついては,ひきこもり親和性への有意な影響が見. るにもかかわらず,被援助者がそれに同意しない. ら れ な か っ た。 こ れ は, ひ き こ も り 親 和 群 の. という事例が多いことが示唆されている(齋藤,. 73.9%が仕事や学校のために3~4日以上,定期. 2012)。さらに,ひきこもりには「ありきたりな. 的な外出行動をとっているという先行研究(東京. 教育的な激励や叱咤」を忌避する傾向があるとの. 都青少年・治安対策本部, 2008)と類似する結果. 指摘も存在する(斎藤, 2003) 。しかし一方では,. である。. ひきこもりは縛りに乗りたくてしょうがないにも. 強迫症状に関連する疾患としては,強迫性障害. かかわらず,その縛りに乗れない自分を責め続け. (Obsessive-Compulsive Disorder: OCD)がある。. ているという指摘(高塚, 2017)もある。以上の. 強迫性障害とは,強迫観念と強迫行為の存在に特. ことは,ひきこもりやひきこもり親和群へのアプ. 徴づけられる疾患である(American Psychiatric. ローチが,困難さを抱えていることを示している。 Association, 2013)。強迫観念とは,強い苦痛や 不安を引き起こす,望まない,反復的で持続的な. すなわち,ひきこもりやひきこもり親和群は,指 90.

(4) 曖昧さへの否定的態度が大学生のひきこもり親和性に与える影響. 思考・イメージ・衝動であり,強迫行為とは,繰. これまでに,社交不安傾向が高い者は低い者に. り返される行動,または心の中の行為である。ま. 比べて,他者の曖昧な行動(ほおづえをつく,せ. た,強迫行為の目的は強迫観念から生じた苦痛を. きばらいをするなど)を否定的に,脅威的に,か. 減弱すること,または恐ろしい出来事を防止する. つ自分に影響するものとして解釈する傾向がある. ことにある。この,強迫性障害に関連する概念と. ことが指摘されている(金井・笹川・陳・嶋田・. して,強迫傾向の研究がなされている(李・下山,. 坂野, 2007)。また,曖昧さへの否定的態度である,. 2008: 清水・清水, 2017) 。強迫傾向とは,OCD患. 曖昧さへの不安と曖昧さの統制は,強迫傾向と正. 者の強迫症状と質的には同じもので,頻度や強度, の相関が見られ,曖昧さへの肯定的態度である, 苦痛度において,それほど重篤でないものとされ. 曖昧さの受容は強迫傾向と負の相関が見られてい. る(丹野, 2001) 。小林・吉田・野口・土屋・伊藤. る(西村, 2007)。加えて,曖昧な状況を受容でき. (2003)によれば,強迫行為のあるひきこもりは, ずに嫌悪対象と認知することが,強迫傾向の脆弱 性要因になることが指摘されている(清水・清水,. 「外出できない」者が50%に上ることが指摘され. ている。同研究では,強迫行為が見られない場合, 2017)。 ひ き こ も り 状 態 に あ る 者 で も「 外 出 自 由. さらに,不登校の生徒の特徴として,白か黒か. (29.7%) 」,「条件付きで外出可(59.7%)」とい. 式のものごとの一面だけを捉えるという,曖昧性. うように約90%が外出できることを示しているこ. 耐性の低さが挙げられている(西村, 2006)。同研. とから,強迫行為の伴うひきこもりは,より重篤. 究では,不登校の生徒には,「はっきりさせたい. であるといえるだろう。. と訴えられる前面の不安」と「 (内面を見ないで. さらに,社交不安症状や強迫症状に関連するも. すむように)目を向けないで置いてある背後の不. のとして,曖昧さへの態度を挙げることができる。 安」の二つが見られ,曖昧さを置いておける中間 Budner(1962)は曖昧さへの非寛容を,曖昧な. 領域がないことが指摘されている。加えて,その. 事態を恐れの源泉として知覚(解釈)する傾向と. 母親にも曖昧性耐性の低さが見られ,曖昧性耐性. 定義した。彼の定義によれば,曖昧さには,手が. の低さの相互作用によって接近した母子関係の形. かりが全くない新奇な状況である新奇性. 式が,学校環境の他の対人関係のなかでも繰り返. (novelty) ,考慮すべき手がかりが多すぎる状況. された結果,不登校に至ったのではないかと推測. である複雑性(complexity) ,個々の手がかりが. されている。. 異なる事態を指している矛盾した状況である不可. 以上のように,これまでの研究からも,社交不. 解性(insolubility)の3つがある。また, 曖昧さは, 安傾向や強迫傾向とひきこもりの関連や,社交不 曖昧性耐性の高低という一次元では捉えきれず,. 安傾向や強迫傾向と曖昧さへの否定的態度の関連. 多面的に取り扱う必要性が示唆されており(吉川,. は明らかされてきている。しかし,その総合的な. 1986),西村(2007)は,曖昧さへの態度尺度を. 検討はなされてこなかった。そのため本研究では,. 作成し,曖昧さが肯定的態度と否定的態度を含む. ひきこもり親和性,社交不安傾向,強迫傾向,曖. 複数の側面(曖昧さの“享受” “受容” , “不安” , “統 ,. 昧さへの否定的態度という4つを総合的に取り扱. 制” , “排除”)からなることを指摘した。曖昧さ. い,その関係を明らかにしたい。これにより,曖. の“享受”は曖昧さを魅力的なものと評価し,関. 昧さへの態度という視点から,援助者のあり方を. 与していくことに楽しみを見出す傾向, “受容”. 含めた,ひきこもりへのアプローチの可能性を示. は曖昧さへの親和性や寛容さを持ち,曖昧さをそ. すことが本研究の目的である。. のまま認めて受け入れられる傾向, “不安”は曖. 本研究における仮説は次の3つである。まず,. 昧さに対し不安などの情緒的混乱と,それに伴う. 社交不安傾向はひきこもり親和性に対して正の影. 対処の難しさを感じる傾向, “統制”は曖昧な状. 響を与えていると予測される(仮説1)。次に強. 況を否定的に評価し,知的に把握・対処(統制). 迫傾向はひきこもり親和性に対して正の影響を与. しようとする傾向, “排除”は曖昧さを認めず,. えていると予測される(仮説2)。そして曖昧さ. 排除して白黒つけたい傾向をそれぞれ表している。 への否定的態度は社交不安傾向と強迫傾向を介し 91.

(5) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). 社交不安傾向. +. + +. 曖昧さへの 否定的態度. +. ひきこもり 親和性. +. 強迫傾向. 注.+は正の影響を示している。. Figure 1 曖昧さへの否定的態度とひきこもり親和性を接合する理論仮説モデル. てひきこもり親和性に対して正の影響を与えてい. 問項目(東京都青少年・治安対策本部, 2008)を. ると予測される(仮説3) 。これを基に,以下の. 使用した。ひきこもり親和性に関する4項目(「家. ようなモデル(Figure 1)を想定し, 検討を進める。 や自室に閉じこもっていて外に出たくない人たち の気持ちがわかる」,「自分も,家や自室に閉じこ. 方 法. もりたいと思うことがある」,「嫌な出来事がある と,外に出たくなくなる」,「理由があれば家や自. 1.調査協力者・時期. 室に閉じこもるのも仕方がないと思う」 )を「1:. 都内の私立大学に在学中の1~4年生213人を. はい~4: いいえ」の4件法で尋ねた。その後,合. 対象に調査を行った。 そのうち, 回答に不備があっ. 計点が高いほど,ひきこもり親和性が高いことを. たものを除いた205人(男性82名; 女性119名; その. 示すように反転させた。可能な得点範囲は4~16. 他4名)を分析対象とした。. 点である。この尺度は,渡部他(2010)によって. 調査は2017年10月6日から10月25日にかけて実. 信頼性,妥当性の確認が行われている。. 施された。大学の講義の際に質問紙配布を行った。 ③ 社交不安傾向 配布の際,調査協力の依頼と,研究の趣旨につい. 社交不安傾向を評価する尺度として,SADの. て書面と口頭で説明を行った。また倫理的配慮と. 臨床症状評価尺度であるLiebowitz Social. して,調査への参加は自由であること,回答は匿. Anxiety Scaleの日本語版(LSAS-J)を使用した。. 名で行うこと,プライバシーは保護されることを. 朝倉他(2002)が作成したLSAS-Jは,社交不安. フェイスシートに明記した上で,口頭でも説明し. 症状を呈することの多い,行為状況の13項目と社. た。. 交状況の11項目を含む,合計24項目から構成され る。通常,この24項目について,恐怖感/不安感. 2.測定内容. と回避の程度をそれぞれ測定するため,合計48項. ① デモグラフィック変数. 目となるが,新井他(2015)の研究を踏まえ,恐. 調査用紙に学年・性別・年齢について回答を求. 怖感/不安感のみを測定した。そのため,下位評. めた。. 価は行為状況恐怖感/不安感,社交状況恐怖感/不. ② ひきこもり親和性. 安感となる。「0: 全く感じない~3: 非常に強く感. ひきこもり親和性を評価する尺度として,ひき. じる」の4件法で尋ねた。可能な得点範囲は,0. こもりへの志向性や理解を示す傾向を測定する質. ~72点である。この尺度は,朝倉他(2002)によ 92.

(6) 曖昧さへの否定的態度が大学生のひきこもり親和性に与える影響. が行われている。. り,高い信頼性と妥当性が確認されている。 ④ 強迫傾向 強迫傾向を評価する尺度として,強迫症状の臨. 3.統計解析. 床評価尺度であるMaudsley Obsessional. 統計解析には,SPSS23.0とAmos25.0を使用し. Compulsive Inventory邦訳版 (以下MOCI邦訳版). た。第一に,本研究で用いた各尺度の平均値,標. を 使 用 し た。 吉 田・ 切 池・ 永 田・ 松 永・ 山 下. 準偏差を算出すると共に,性差について調べるた. (1995) により作成されたMOCI邦訳版は,30項目, めの t 検定を行い,効果量(Cohenのd)を求めた。 4つの下位尺度(確認,清潔,優柔不断,疑惑). 第二に,各尺度間の関連を調べるPearsonの積率. からなる。この30項目について, 「1: はい・0: い. 相関係数を算出した。最後に,本研究の仮説モデ. いえ」の2件法で尋ねた。反転項目については,. ルに基づいた共分散構造分析を行い,モデルを評. 合計点が高いほど,強迫傾向が高いことを示すよ. 価・修正した。. うに反転させた。可能な得点範囲は,0~30点で. 結 果. ある。この尺度は,吉田他(1995)により,高い 信頼性と妥当性が確認されている。 ⑤ 曖昧さへの態度. 1.各尺度の平均値,標準偏差と性差. 曖昧さへの態度を評価する尺度として,曖昧さ. 男女における平均値,標準偏差を算出した上で,. への態度尺度(西村, 2007)を使用した。この尺. 男女間において,各尺度の得点を対応のない t 検. 度は26項目, 5つの下位尺度 (曖昧さの “享受” “受 ,. 定によって比較すると共に,その効果量(Cohen. 容”,“不安”,“統制” , “排除” )からなる。この. のd)を算出した(Table 1) 。男女間における各. 26項目について, 「1: まったくあてはまらない~6:. 尺度の得点を対応のない t 検定の結果は次の通り. 非常にあてはまる」の6件法で尋ねた。本研究で. であった。LSAS-J恐怖感/不安感(t=2.06, p. は西村(2007)の分類に基づいて, “享受” “受容” ,. <.05) ,またその下位尺度である社交状況恐怖感. を曖昧さへの肯定的態度, “不安” “統制” , “排除” ,. /不安感(t=2.21, p<.05)では,女性の得点の方が,. を曖昧さへの否定的態度として各分析を行った。. 有意に高かった。曖昧さへの肯定的態度(t=2.47,. この尺度は,西村(2007)によって信頼性の確認. p<.05)と,その下位尺度である曖昧さの享受(t. Table 1 各尺度の平均値,標準偏差と性差. ひきこもり親和性 LSAS-J恐怖感/不安感 行為状況恐怖感/不安感 社交状況恐怖感/不安感 MOCI邦訳版 確認 清潔 優柔不断 疑惑 曖昧さへの肯定的態度 曖昧さの享受 曖昧さの受容 曖昧さへの否定的態度 曖昧さへの不安 曖昧さの統制 曖昧さの排除 *p<.05, **p<.01. 全体 男性 女性 平均値 SD 平均値 SD 平均値 SD 12.82 2.86 12.49 3.04 13.15 2.65 30.21 13.34 28.06 13.11 31.94 13.14 13.25 6.82 12.32 6.95 13.96 6.62 16.96 7.22 15.73 6.80 17.98 7.28 9.81 4.50 9.97 4.90 9.62 4.20 7.17 2.10 7.40 2.07 7.02 2.14 2.51 1.73 2.48 1.89 2.52 1.61 2.75 1.52 2.53 1.57 2.89 1.47 3.16 1.71 3.23 1.78 3.06 1.65 48.80 7.37 50.22 6.94 47.67 7.31 28.78 4.75 29.89 4.14 27.82 4.86 20.01 3.98 20.33 4.04 19.85 3.72 57.26 8.20 56.96 9.07 57.27 7.34 25.19 4.84 24.81 5.42 25.45 4.41 21.40 3.42 21.61 3.61 21.15 3.16 10.67 2.96 10.54 3.15 10.66 2.79. 93. t -1.64 -2.06 -1.69 -2.21 0.55 1.27 -0.16 -1.70 0.72 2.47 3.14 0.87 -0.27 -0.89 0.95 -0.30. * *. * **. d .24 .30 .24 .32 .08 .18 .02 .24 .10 .36 .45 .12 .04 .13 .14 .04. df 199 199 199 199 199 199 199 199 199 199 199 199 199 150.4 199 199.

(7) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). =3.14, p<.01)では,男性の得点の方が,有意に. その下位尺度である曖昧さの享受(d=.45)には. 高かった。その他の尺度の得点においては,男女. 中程度の効果量が認められた。. 間で有意な差は見られなかった。また,効果量 (Cohenのd)を算出した結果は次の通りであった。 2.各尺度間の相関係数 ひきこもり親和性(d=.24) ,LSAS-J恐怖感/不. 各尺度間におけるPearsonの積率相関係数を. 安感(d=.30)と,その二つの下位尺度である行. Table 2に示した。ひきこもり親和性は,LSAS-J. 為状況恐怖感/不安感(d=.24) ,社交状況恐怖感. 恐怖感/不安感(r=.38, p<.001)とMOCI邦訳版(r. /不安感(d=.32) ,MOCI邦訳版の下位尺度であ. =.21, p<.01)の間で,有意な弱い正の相関を示. る優柔不断(d=.24)について,女性の得点が高. した。また,曖昧さへの否定的態度は,LSAS-J. いという形で,小程度の効果量が認められた。さ. 恐怖感/不安感との間で有意な弱い正の相関(r. らに,男性の得点が高いものとしては,曖昧さへ. =.36, p<.001)を示し,MOCI邦訳版との間で中. の肯定的態度(d=.36)には小程度の効果量が,. 程度の正の相関(r=.46, p<.001)を示した。ひ. Table 2 各尺度間の相関係数 1 ひきこもり親和性 2 LSAS-J恐怖感/不安感 3 行為状況恐怖感/不安感 4 社交状況恐怖感/不安感 5 MOCI邦訳版 6 確認 7 清潔 8 優柔不断 9 疑惑 10 曖昧さへの肯定的態度 11 曖昧さの享受 12 曖昧さの受容 13 曖昧さへの否定的態度 14 曖昧さへの不安 15 曖昧さの統制 16 曖昧さの排除. 1 ひきこもり親和性 2 LSAS-J恐怖感/不安感 3 行為状況恐怖感/不安感 4 社交状況恐怖感/不安感 5 MOCI邦訳版 6 確認 7 清潔 8 優柔不断 9 疑惑 10 曖昧さへの肯定的態度 11 曖昧さの享受 12 曖昧さの受容 13 曖昧さへの否定的態度 14 曖昧さへの不安 15 曖昧さの統制 16 曖昧さの排除 *p<.05, **p<.01, ***p<.001. 1 ― .38 *** .34 *** .39 *** .21 ** .23 ** .08 .32 *** .17 * .08 -.03 .18 * .11 .30 *** -.03 -.14 *. 2. 3. ― .95 *** .95 *** .42 *** .27 *** .15 * .39 *** .41 *** -.14 * -.18 ** -.04 .36 *** .53 *** .16 * -.06. ― .81 *** .44 *** .28 *** .18 * .40 *** .42 *** -.16 * -.20 ** -.06 .32 *** .49 *** .12 -.05. 9. 10. 11. 4. 6. 7. 8. ― .35 *** ― .23 ** .68 *** ― .11 .67 *** .17 * ― .35 *** .71 *** .43 *** .40 *** ― .35 *** .77 *** .52 *** .27 *** .42 *** -.10 -.02 .25 *** .01 -.05 -.15 * .07 .20 ** .09 .00 -.01 -.12 .22 ** -.08 -.10 .37 *** .46 *** .29 *** .22 ** .30 *** .53 *** .39 *** .31 *** .13 .36 *** .18 ** .36 *** .27 *** .17 * .19 ** -.06 .22 ** -.01 .21 ** .02 12. ― .02 ― .09 .87 *** ― -.06 .81 *** .42 *** ― .46 *** .01 .16 * -.18 * .38 *** -.04 -.07 .01 .36 *** .18 * .35 *** -.08 .22 ** -.13 .14 * -.41 ***. 94. 5. 13. ― .78 *** .80 *** .58 ***. 14. ― .39 *** .07. 15. ― .41 ***. 16. ―.

(8) 曖昧さへの否定的態度が大学生のひきこもり親和性に与える影響. きこもり親和性と曖昧さへの否定的態度の間には,. CFI=.928, RMSEA=.085となった。. 相関が見られなかったが,曖昧さへの否定的態度. 決定係数については,ひきこもり親和性がR2. の下位尺度である曖昧さへの不安と,ひきこもり. =.22,社交不安傾向がR2=.47,強迫傾向がR2=.50,. 親和性の間には有意な弱い正の相関(r=.30, p. であった。次に,潜在変数間におけるパス係数を. <.001)が見られた。以上より,ひきこもり親和. 示した。社交不安傾向からひきこもり親和性への. 性とLSAS-J恐怖感/不安感,MOCI邦訳版,曖昧. パス係数(β=.34, p<.001),強迫傾向からひきこ. さへの否定的態度の間には関連がある可能性が示. もり親和性へのパス係数(β=.20, p<.05)ともに,. 唆された。. 有意な正の値を示していた。すなわち,社交不安 傾向はひきこもり親和性に対して正の影響を与え. 3.共分散構造分析によるモデルの検討. ているとする仮説1,強迫傾向はひきこもり親和. 仮説モデル(Figure 1)に基づき,共分散構造. 性に対して正の影響を与えているとする仮説2と. 分析を行った。仮説モデルに対応する形で,潜在. もに,支持されたといえる。また,曖昧さへの否. 変数として,ひきこもり親和性,社交不安傾向,. 定的態度から社交不安傾向(β=.69, p<.001)と. 強迫傾向,曖昧さへの否定的態度の4つを用いた。 強迫傾向(β=.71, p<.001)へのパス係数は,そ 各潜在変数を規定する観測変数には,質問項目も. れぞれ有意な正の値を示していた。しかし,曖昧. しくは各尺度の下位尺度を用いた。. さへの否定的態度からひきこもり親和性へのパス. モデルの評価・修正の際には,潜在変数からの. は示されなかった。その一方で,曖昧さへの否定. 効果があまり見られない観測変数を削除しながら, 的態度から社交不安傾向と強迫傾向を介した,ひ 適合度を比較し,分析を行った。そこで,曖昧さ. きこもり親和性への間接効果に関しては,Sobel. への否定的態度の中から,曖昧さの排除が,また. testにより,有意な正の値が示された(β=.37, p. 強迫傾向の中から,清潔が削除された。最終的に. <.001) 。これより,曖昧さへの否定的態度は,. は,以下のようなモデルが採択された(Figure 2) 。 社交不安症状と強迫傾向を介し,ひきこもり親和 そ の 結 果, 最 終 的 な モ デ ル の 適 合 度 指 標 は,. 性に対して,正の影響を与えているとした仮説3. χ (40)=99.132(p<.001), GFI=.923, AGFI=.874,. についても支持されたといえる。. 2. 行為状況 恐怖感/不安感. 社交状況 恐怖感/不安感. .93. .87 社交不安傾向. R 2 =.47. .34***. .69*** 曖昧さへの不安. .80 曖昧さへの 否定的態度. 曖昧さの統制. .78. R 2 =.22 ひきこもり 親和性. .89 .53. .45 .71***. 強迫傾向. 確認. ひきこもり 親和性2 ひきこもり 親和性3. .20*. R 2 =.50. .67. ひきこもり 親和性1. .63 優柔不断. *p<.05, **p<.01, ***p<.001. .54. ひきこもり 親和性4. .73 疑惑. χ2(40)=99.132(p<.001), GFI=.923, AGFI=.874, CFI=.928, RMSEA=.085. Figure 2 曖昧さへの否定的態度とひきこもり親和性を接合する最終的なモデル. 95.

(9) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). 考 察. 曖昧さへの否定的態度,社交不安傾向,強迫傾 向の3変数の関連については,曖昧さへの否定的. 本研究の目的は,ひきこもり親和性,社交不安. 態度が,社交不安傾向と強迫傾向に対して,それ. 傾向,強迫傾向,そして曖昧さへの否定的態度の. ぞれ正の影響を与えていることが示された。すな. 間に,どのような関連があるのかを検討すること. わち,曖昧さへの否定的態度が高い人ほど,社交. であった。. 不安傾向と強迫傾向が高くなる可能性がある。こ の結果は,先行研究における,社交不安傾向が高 い者は低い者に比べて曖昧な行動を否定的に解釈. 1.曖昧さへの否定的態度がひきこもり親和性. する傾向があるとの指摘(金井他, 2007)や曖昧. に与える影響 本研究では,共分散構造分析により,社交不安. な状況を受容できずに嫌悪対象と認知することが,. 傾向は,ひきこもり親和性に対して正の影響を与. 強迫傾向の脆弱性要因になるとの指摘(清水・清. えていることが示され,仮説1が支持される結果. 水, 2017),また,曖昧さへの不安と曖昧さの統制. となった。すなわち,社交不安傾向が強い人ほど, は,強迫傾向と正の相関が見られるという指摘(西 ひきこもりへの親和性が高くなる可能性がある。. 村, 2007)に合致している。また,本研究におけ. この結果は,ひきこもり親和性と対人恐怖の関連. る最終的なモデルでは,曖昧さへの否定的態度か. (渡部他, 2010)や,社交不安症状の恐怖感/不安. らの効果があまり見られなかった曖昧さの排除を. 感から,ひきこもり親和性への正の影響が見られ. 削除している。このことについては,先行研究(西. る(新井他, 2015)という先行研究の結果と合致. 村, 2007)の,曖昧さへの態度が多次元的である. したものであると考えられる。. ということが関連していると考えられる。これま. 次に,ひきこもり親和性と強迫傾向の関連につ. では曖昧さへの寛容-非寛容という一次元的な観. いて検討した。本研究では,共分散構造分析の結. 点からの研究が多かったが,同研究は,曖昧さへ. 果から,強迫傾向は,ひきこもり親和性に対して. の態度を多次元的(曖昧さの“享受”, “受容”, “不. 正の影響を与えていることが示され,仮説2が支. 安”, “統制”, “排除”)に捉えている。それを再度,. 持される結果となった。すなわち,強迫傾向が強. 一次元的にまとめたものが曖昧さへの肯定的態度. い人ほど,ひきこもりへの親和性が高くなる可能. -否定的態度である。しかしながら,曖昧さへの. 性がある。この結果は,先行研究における,ひき. 否定的態度の“不安”は感情・情動であるのに対. こもりに強迫症状をともなうことが多いこと(鍋. し,“統制”や“排除”はそれに対する対処方略. 田, 2003; 斎藤, 1998)や,不登校の生徒の特徴と. であると考えられる。すなわち,一つの感情・情. して白か黒か式のものごとの一面だけを捉える傾. 動と,それに対する二つの対処方略をまとめたた. 向にあるとの指摘(西村, 2006)と合致したもの. めに,曖昧さの排除に対して,潜在変数からの効. であると考えられる。また,本研究における最終. 果があまり見られなかったのだと考えられる。. 的なモデルでは,潜在変数の強迫傾向から効果が. 曖昧さへの否定的態度とひきこもり親和性の関. あまり見られなかった観測変数である,清潔を削. 連については,曖昧さへの否定的態度が,社交不. 除している。これは,清潔得点が11点満点である. 安傾向と強迫傾向を介し,ひきこもり親和性に対. のに対し, 平均点が2.51(SD=1.73)となっており, して,有意な正の影響を与えていることが示され 低い方向への得点の偏りが見られたためである。. た。すなわち,曖昧さへの否定的態度が高まるこ. 強迫傾向を測る尺度として使用したMOCI邦訳版. とで,ひきこもり親和性も高まる可能性が示され. は,強迫症状の臨床評価尺度である。そのため,. た。よって,曖昧さへの否定的態度は社交不安傾. 清潔については, 「多量に消毒剤を使うことはあ. 向と強迫傾向を介してひきこもり親和性に対して. りません(反転項目) 」など,多くの調査協力者. 正の影響を与えているとした仮説3は支持された. にとって得点が低くなりやすい項目が多かった。. といえる。先行研究では,これら4つの変数に関. このことが,低い方向への得点の偏りを示すこと. する総合的な検討はなされておらず,本研究によ. につながったと考えられる。. り,新たに明らかにされた知見だといえる。 96.

(10) 曖昧さへの否定的態度が大学生のひきこもり親和性に与える影響. 2.本研究と臨床場面との接続. が繰り返されるという。この状態は「多声性(ポ. 近藤(2017)は,援助者には,ひきこもりのメ. リフォニー)」と呼ばれる。相談者の「疾患」の. カニズムを把握・同定することの難しさ,わから. 回復や治癒は目的ではなく,このポリフォニーの. なさを自覚し,それに耐えることが求められると. 副産物として得られるとされる。また,Seikkula. 指摘している。加えて,渡部他(2010)は,ひき. & Arnkil(2006)は,ODにおける治療ガイドラ. こもり親和群に対するケアを充実化し,ひきこも. インの主要原則の一つとして, 「不確かさに耐え. りに至る前段階での介入方法を探索することが求. ること」を挙げている。これは,ミーティングの. められると指摘している。本研究では,曖昧さへ. 場面で,早急な決断や決定をしないということで. の否定的態度が社交不安傾向,強迫傾向を介して, ある。危機的な状況を少しでも安全なものにし, ひきこもり親和性に正の影響を与えていることが. クライエントやその周囲の人々が自分で行動でき. 示された。また,曖昧さへの肯定的態度と否定的. るようにすることで,非常に大変な体験をストー. 態度の間には相関が見られなかった。そのため,. リーにまとめていくことが可能になるという。ま. 曖昧さへの肯定的態度を向上させる介入よりも,. た,不確かさへの耐性を高めるための条件は3つ. 曖昧さへの否定的態度を低下させる介入が,社交. あるとされる。まず一つ目は,参加者が平等に扱. 不安傾向や強迫傾向を低下させ,それを介し,ひ. われていると感じること,二つ目は,テーマに自. きこもり親和性を低下させると予測される。. 由に深入りができること,三つめは,具体的に行. 先行研究では,曖昧さへの否定的態度を低下さ. 動に移せる確かなプランが話し合われることだと. せた実践が存在する。例えば,西村(2006)は,. いう。. 曖昧性耐性の低い不登校の生徒に対し,セラピス. これらの実践から,曖昧さへの態度という視点. トが多義的な介入をすることで,生徒が曖昧さに. からの,援助者のあり方を含めた,ひきこもりへ. 寛容になり,それに対応して登校再開へ向かうこ. のアプローチは次のようなものとして考えること. とを指摘している。同研究では,不登校の生徒に. ができる。多義的な介入やセラピスト自身の曖昧. は, 「はっきりさせたいと訴えられる前面の不安」. 性耐性,あるいは不確かさに耐えることという視. と「(内面を見ないですむように)目を向けない. 点からの,ひきこもりへのアプローチは,指示的. で置いてある背後の不安」の二つが見られ,曖昧. かかわりによって早急な決断を下すのでも,相対. さを置いておける中間領域がないことが指摘され. 主義的な態度を示しつつ,ただ現状を肯定するの. ている。多義的な介入とは, クライエントの 「はっ. でもない。そうではなく,クライエントと共に,. きりさせたいと訴えられる前面の不安」の表出に. 不確かであるしかない判断に向き合うということ. 付き合いつつも, 「目を向けないで置いてある背. である。千葉(2018)は,物事を様々な角度から. 後の不安」に何らかの形で触れようとするかかわ. 多義的に捉えることは,行為を躊躇することにつ. りのことである。加えて,西村(2006)は,セラ. ながると論じているが,多義的な介入や,不確か. ピスト自身にも曖昧性耐性が求められることを指. さに耐えることは,判断や決断をただ避けること. 摘している。それはクライエントの曖昧さのない. を指すのではない。多義的な介入においては,目. 世界に巻き込まれても,そこから生き残り存在し. を向けないで置いてある背後の不安を言語化する. 続けられるという曖昧性耐性であるという。. という形で触れるのであり(西村, 2006) ,ODに. この,多義的な介入や,セラピストに求められ. おいては,不確かさに耐えるためには,具体的に. る曖昧性耐性に関連するものとして,オープンダ. 行動に移せる確かなプランが話し合われる必要が. イアローグ(Open Dialogues: OD)を考えるこ. ある(Seikkula & Arnkil, 2006)。すなわち,多. とができる。ODは1984年に,フィンランドのケ. 義性,多声性の受け入れられる安全な場において,. ロプダス精神科病院で始まった,精神科医療のア. 一つの行為の方向性を共に模索していくのである。. プローチである(孫・塚原, 2018) 。同研究によれ. このようなかかわりが,クライエントの曖昧さへ. ば,ODにおいては,相談者の「声」に対して,. の否定的態度を低下させ,それに伴って社交不安. その場で感じたことを「声」で返すという「応答」. 傾向や強迫傾向が低下することで,ひきこもり及 97.

(11) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). びひきこもり親和群に対する効果的な支援につな. と も 関 連 が 指 摘 さ れ て お り( 近 藤, 2017; 高 塚,. がるものと考えられる。. 2017) ,その要因は多様である。同様にして,ひ きこもり親和性についても背景に多様な要因があ. 3.本研究の課題と限界. ることが想定されるため,これを踏まえたさらな. 今後の課題は,ひきこもり親和性で確認された. る検討が求められるだろう。. 本研究のモデルが,実際にひきこもり状態にある. 付 記. 人に応用できるのかということにあるだろう。本 研究では,ひきこもり親和性の得点について,女 性の方が高いという小程度の効果が見られたが,. 本論文は,2018年1月に明治大学心理社会学科. 実際のひきこもりの割合は男性が84.0%,女性が. に提出した卒業論文をもとに,新たな知見や考察. 12.6%と男性のほうが多いことが示されている. を加えて執筆したものである。. (全国ひきこもり家族会連合会, 2017) 。これは先. 謝 辞. 行研究における,男子は実際にひきこもり,女子 は「他者からの評価への過敏さ」の傾向が高いた めに,ひきこもりが顕在化せず内在化する(松本,. 本論文の執筆にあたり,丁寧かつ熱心なご指導. 2003)という主張と共通している。また,ひきこ. いただいた明治大学の岡安孝弘教授,北海道教育. もり群から親和群を判別する主な要因としては,. 大学の庄井良信教授,戸田弘二教授,宮原順寛准. うつ・罪悪感や強迫の症状,心理的独立や自己決. 教授に深く感謝とお礼を申し上げます。また,議. 定への干渉拒否の傾向があるものの,対人恐怖や. 論を通じて多くの示唆を頂いた岡安ゼミの皆様,. 暴力の症状がないことが挙げられている(渡部他,. 大学院の同期の皆様,授業内で質問紙を配布する. 2010)。以上のように,ひきこもり群と親和群に. ために,貴重なお時間を割いていただいた教員の. は異なる側面もあるため,ひきこもり状態にある. 皆様,質問紙に回答してくださった調査協力者の. 人に,本研究のモデルをあてはめられるのか検討. 皆様に感謝いたします。. が求められる。さらに本研究の調査結果は,曖昧. 引用文献. さへの否定的態度,社交不安傾向,強迫傾向,ひ きこもり親和性の関係について,大学生を対象に して検討したものである。ひきこもり相談につい. American Psychiatric Association. (2013).. て,全体の27.7%が40~50代のひきこもりである. Diagnostic and statistical manual of mental. ことが報告されていることも踏まえ(岐阜県ひき. disorders (5th ed.). Washington, DC: American. こもり地域支援センター , 2017) ,今後は他の世. Psychiatric Association.(米国精神医学会 髙. 代の人々においても同様の結果が得られるのかど. 橋 三郎・大野 裕(監訳)(2014).DSM-5 精. うか,検討していくことが求められる。. 神疾患の診断・統計マニュアル 医学書院). 本研究では,共分散構造分析の結果から,ひき. 新井 博達・弘中 由麻・近藤 清美(2015).社交. こもり親和性において,有意な決定係数が得られ. 不安症状と対人的自己効力感が大学生のひきこ. た。しかしながら,R の値は.22であり,その効. もり親和性に与える影響 パーソナリティ研究,. 果は中程度にとどまっている。そのため,ひきこ. 24(1),1-14. 2. もり親和性に関わる,その他の要因についても考. 朝倉 聡・井上 誠士郎・佐々木 史・佐々木 幸. 慮していく必要があるだろう。ひきこもり親和群. 哉・北川 信樹・井上 猛・傳田 健三・伊藤 ま. は,一般群に比べて,うつ・罪悪感,自己決定へ. すみ・松原 良次・小山 司(2002).Liebowitz. の干渉拒否傾向が強いことや,家族との情緒的絆. Social Anxiety Scale (LSAS)日本語版の信頼. や心理的独立の傾向が弱いことなどが指摘されて. 性および妥当性の検討 精神医学,44,1077-. いる(渡部他, 2010) 。加えて,ひきこもりは,抑. 1084 Budner, S. (1962). Intolerance of ambiguity as a. うつ,パーソナリティ障害,発達障害や貧困など 98.

(12) 曖昧さへの否定的態度が大学生のひきこもり親和性に与える影響. 齋藤 万比古・中島 豊爾・伊藤 順一郎・皆川 邦. personality variable. Journal of Personality,. 直・弘中 正美・近藤 直司・水田 一郎・奥村. 30, 29-50 岐阜県ひきこもり地域支援センター(2017) .ひ. 雄介・清田 晃生・渡部 京太・原田 豊・斎藤. きこもりの現状と支援に関する調査結果 岐阜. 環・堀口 逸子(2010) .ひきこもりの評価・支. 県 Retrieved from https://www.pref.gifu.lg.jp/. 援に関するガイドライン 平成21年度厚生労働. kodomo/kenko/kokoro/22606/hiki-center.html. 科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業). (2017年2月9日公開). 「思春期ひきこもりをもたらす精神科疾患の実 態把握と精神医学的治療・援助システムの構築. 金井 嘉宏・笹川 智子・陳 峻雯・嶋田 洋徳・坂. に関する研究」. 野 雄二(2007).社会不安障害傾向者と対人恐. 斎藤 環(1998) .社会的ひきこもり――終わらな. 怖症傾向者における他者のあいまいな行動に対. い思春期―― PHP研究所. す る 解 釈 バ イ ア ス 行 動 療 法 研 究,33,97-. 斎藤 環(2003) .ひきこもりの治療と援助――本. 110. 人に対して―― 精神医学,45(3),263-269. 小林 清香・吉田 光爾・野口 博文・土屋 徹・伊. Schneier, F. R., Johnson, J., Horigg, C. D.,. 藤 順一郎(2003) . 「社会的ひきこもり」を抱 える家族に関する実態調査 精神医学,45(7),. Liebowitz, M. R., & Weissman, M. M. (1992).. 749-756. Social phobia: Comorbidity and morbidity in an epidemiologic sample. Archives of General. 近藤 直司(2017).ひきこもりの原因とメカニズ. Psychiatry, 49, 282-288. ム 日本臨床心理士会(監修) ひきこもりの. Seikkula, J., & Arnkil, T. E. (2006). Dialogical. 心理支援――心理職のための支援・介入ガイド. Meetings in Social Networks. London: Karnac. ライン――(pp.39-55) 金剛出版. Books., represented by Cathy Miller Foreign. 松本 剛(2003).大学生のひきこもりに関連する 心理的特性に関する研究 カウンセリング研究,. Rights Agency.(セイックラ, J.・アーンキル,. 36,38-46. T. E. 高木 俊介・岡田 愛(訳)(2016).オー プンダイアローグ 日本評論社). 鍋田 恭孝(2003). 「ひきこもり」と不全型神経. 清水 健司・清水 寿代(2017) .思考抑制と曖昧. 症――特に対人恐怖症・強迫神経症を中心に―. さ耐性が強迫傾向に及ぼす影響 信州大学人文. ― 精神医学,45,247-253. 科学論集,4,103-112. 内閣府政策統括官(2016) .若者の生活に関する 調 査 報 告 書 内 閣 府 Retrieved from http://. 孫 大輔・塚原 美穂子(2018) .不確実性に耐え. www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikikomori/. る――オープンダイアローグがプライマリ・ケ. h27/pdf-index.html(2018年11月6日閲覧). アにもたらす新たな可能性―― 日本プライマ リ・ケア連合学会誌,41,129-132. 西村 佐彩子(2006) .曖昧性耐性からみたクライ. .ひきこもりの現状と支援にお エントの理解とその関わり方 心理臨床学研究, 高塚 雄介(2017) ける課題 日本臨床心理士会(監修) ひきこ. 24(2),221-231. もりの心理支援――心理職のための支援・介入. 西村 佐彩子(2007) .曖昧さへの態度の多次元構 造の検討─―曖昧性耐性との比較を通して―― . ガイドライン――(pp.13-23) 金剛出版 丹野 義彦(2001) .エビデンス臨床心理学――認. パーソナリティ研究,15(2),183-194. 知行動理論の最前線―― 日本評論社. 李 暁茹・下山 晴彦(2008) .中国人大学生にお. 千葉 雅也(2018) .意味がない無意味 河出書房. ける強迫傾向と親の養育態度 パーソナリティ. 新社. 研究,16(3),335-349 齋藤 暢一郎(2012) .不登校・ひきこもりへの訪. 東京都青少年・治安対策本部(2008).実態調査. 問援助に関する一考察――三者関係構造による. からみるひきこもる若者のこころ――平成19年. つながりの再構築―― カウンセリング研究,. 度若年者自立支援調査研究報告書―― 東京都. 45,89-98. 青 少 年・ 治 安 対 策 本 部 総 合 対 策 部 若 年 者 課 99.

(13) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). Retrieved from http://www.seisyounen-chian. metro.tokyo.jp/seisyounen/jiritsu-shien/ jyakunensya/pdf/(2018年11月6日閲覧) 吉田 充孝・切池 信夫・永田 利彦・松永 寿人・ 山上 榮(1995) .強迫性障害に対するMaudsley Obsessional Compulsive Inventory (MOCI)邦 訳 版 の 有 用 性 に つ い て 精 神 医 学,37(3), 291-296 吉川 茂(1986) .曖昧さへのトレランス-イント レランスの基本的相違点に関する研究 関西学 院大学人文論究,35,94-121 渡部 麻美・松井 豊・高塚 雄介(2010) .ひきこ もりおよびひきこもり親和性を規定する要因の 検討 心理学研究,81,478-484 全国ひきこもり家族会連合会(2017) .ひきこも りの実態に関するアンケート調査報告書 特定 非営利活動法人KHJ全国ひきこもり家族会連合 会 Retrieved from https://www.khj-h.com/ investigation/1376/(2017年4月13日公開). 100.

(14) 曖昧さへの否定的態度が大学生のひきこもり親和性に与える影響. SUMMARY The Effect of Negative Attitudes towards Ambiguity on Affinity for Social Withdrawal in University Students Hidehiro YASUDA (Graduate Student, Hokkaido University of Education) This study examined the relationships among affinity for social withdrawal, social anxiety, obsessive-compulsive tendency, and negative attitudes towards ambiguity based on earlier studies. 205 students in universities in Tokyo completed a self-report questionnaire assessing affinity for social withdrawal, social anxiety, obsessive-compulsive tendency and attitudes towards ambiguity. Covariance structural analysis indicated that social anxiety and obsessive-compulsive tendency were positively associated with affinity for social withdrawal. In addition, the results indicated that negative attitudes towards ambiguity (“anxiety,” “control”) was positively associated with affinity for social withdrawal via social anxiety and obsessive-compulsive tendency. Furthermore, these results suggested that approach strategies targeting negative attitudes towards ambiguity via support-worker’s attitudes might be useful in decreasing affinity for social withdrawal.. Key words : affinity for social withdrawal, attitudes towards ambiguity, social anxiety, obsessive-compulsive tendency, open dialogues. 101.

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