実践的な技術者育成のための創成型キャリア教育プロジェクト
藤澤 正一郎
1,山中 英生
2,森本 恵美
2A Carrere Education Project for the Creation of Pai-type Practical Engineers
By
Shoichiro FUJISAWA, Hideo YAMANAKA, and Emi MORIMOTO
The purposes of the this project using long-term internship programs is that students of master or doctoral course learn skills to communicate to the engineers of a client on equal terms as well as their expertise, in order to create pai-type practical engineers. By this program, we expect students to acquire skills for time management, communication and enterprising ability. From 2011 to 2012, 62 graduate students (58 master’s students and 4 doctoral students) joined this program. The students joined internship program at companies or governments for a period of 180~270 hours with their training goals for the collaborative research, as well as lectures on MOT. We tried joint internship with under-graduate students for MC or DC students, and introduction of intellectual property education during this project. We summarized the outcome of this project on this paper and future issues to be considered in order to develop the program.
Keywords; Long-term internship, Management of Technology, Intellectual Property Rights
1. 教育プログラム経緯 長期インターンシップは,平成 18 年度に,文部科学省 の派遣型高度人材育成協同事業として採択された産学官 連携型の教育プログラムである。具体的には,技術経営 の理解と専門知識を備え,技術提案や課題解決の討議が 経営者とできる人材を育成することを目指し,経営系科 目と,大学院博士前期課程学生には 270 時間以上,博士 後期課程学生には 180 時間以上の長期インターンシップ を実施する,「経営センスを有するπ型技術者の協働育成」 を実施してきた。5 年間の文部科学省からの補助事業期 間が終了し,徳島大学大学院先端技術科学教育部で継続 して実施する改変を行うため,これまで実施してきた実 践的教育 GP を統合して企業や地域と連携した創成型キ ャリア教育に取り組むことを目指した。具体的な内容は, 下記の 4 点である。 ① インターンシップの拡充(長期型・短期型) ② 院生と学部生の共同インターンシップ試行 ③ 知的財産教育 ④ 技術系科目の運営 1. 徳島大学工学部創成学習開発センター
The Center for Innovation and Creativity Development, Faculty of Engineering, The University of Tokushima
2. 徳島大学大学院先端技術科学教育部長期インター
ンシップ支援室
The Long Term Internship Office, Graduate School of Advanced Technology and Science, The University of Tokushima
*〒770-8506 徳島市南常三島町 2-1
徳島大学工学部創成学習開発センター 徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部研究報告
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-2. インターンシップの拡充 文部科学省補助支援期間は,大学院博士前期課程学生 には 270 時間以上,博士後期課程学生には 180 時間以上 の長期インターンシップを正規科目として提供する体 制を整えた。科目名は長期インターンシップ(M)及び 長期インターンシップ(D)である。2011 年度から,こ れに加え,既存科目を活用しながら,インターンシップ 時間数の選択自由度を上げ,90 時間ごとに取得単位を 選択できるようにした。これは,以前から,「ちょっと やってみようと思うには,270 時間は長すぎる」といっ た企業,指導教員の指摘に対応するもので,90 時間で 2 単位取得を基本として,既存科目の企業行政演習(M/ D)と課題探究法(M/D)を活用した。これにより, 履修パターンの多様化を図り,合わせて,これら既存科 目の質の向上を行った。大学院生の履修パターンは以下 のとおり。 2 単位パターン:企業行政演習(M)2 単位 内容:企業等(企業,行政,独立行政法人を含む)にお けるインターンシップを行う。 必要時間数:90 時間の企業等でのインターンシップ。 企業指導者または指導教員確認の下,学内での研修テー マに関する準備や作業等 15 時間までを上記 90 時間に含 むことが出来る。 4 単位パターン:博士前期課程-企業行政演習(M)+課 題探求法(M)4 単位(2 単位+2 単位),博士後期課程 -長期インターンシップ(D) 内容:企業等(企業,行政,独立行政法人を含む)と共 同研究等を通したインターンシップを行う。 必要時間数:180 時間の企業等でのインターンシップ。 企業指導者または指導教員確認の下,学内での研修テー マに関する準備や作業等 60 時間までを上記 180 時間に 含むことが出来る。 6 単位パターン:長期インターンシップ(M)6 単位 内容:企業等(企業,行政,独立行政法人を含む)と共 同研究等を通したインターンシップを行う。 必要時間数:270 時間分の日報(研修先の担当者の押印 が必要)の提出と最終段階における企業内プレゼンテー ションを義務づける。企業指導者または指導教員の認定 があれば学内での研修テーマに関する作業等 90 時間分 を上記 270 時間に含むことが出来る。 この改定により,履修希望者及び履修者は大幅に増加 した。2011 年度には,派遣を希望しながら,インター ンシップ研修を受けられなかった学生が多数出たため, 2012 年度は四国内の企業には,支援室から依頼し,イ ンターンシップ受け入れに至った博士前期学生が 2 名 あった。 また,文部科学省など,外部資金の補助事業継続の最 大の課題となる経費については,一人あたりの旅費等大 学負担を軽減することを目指した。その具体的な方策と して,派遣先の所在地に応じ,一人あたりの限度額を決 定するとともに,受け入れ協定時に,できるだけ学生の 研修に支援をいただけるよう,文書で依頼した。
Figguire1. Number of application students
Figuire2. Number of practice students
7 12 1 7 8 14 2 0 1 3 14 40 0 10 20 30 40 50 60 70 80 2011 2012 N um be r of s tude nt s year applicants( hours) undecide 450~ 320~ 270~ 180~ 90~ 6 14 1 7 9 19 0 2 1 3 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 2011 2012 N um be r of s tude nt s year
practice students( hours)
450~ 320~ 270~ 180~ 90~ 徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部研究報告
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-また,指導教員とも連絡を密にする役割を,インター ンシップ支援室が果たすことで,教員側からの資金的な 支援も受けることができた。旅費が必要でどこからも支 援が受けられなかったのは 2012 年度においては 11 名 /45 名(24.4%)にとどまった。研修当初に,旅費は出 せない,と言われていたケースでは,学生の素養や貢献 に合わせ,インターンシップ期間を延長する際に旅費の 支援を受けられたケースもあった。旅費等の大学と受け 入れ先の負担度合調整が最大の課題であったが,学生派 遣前の調整時に,書面で学生の情報(緊急連絡先,保護 者住所)などに加え,旅費限度額を明記し,これを徹底 した。従来は,派遣学生の半数程度の学生旅費及び宿泊 費等が必要であったが,大学負担の低減を実行できた。 また,企業からの旅費等の支援内容が手厚くなってきて いるため,派遣人数倍増及び期間の長期化を実現できる 枠組みができた。 なお,本インターンシップは,建築士資格対応科目と しても,認定されている(あらかじめ規定の条件を満た す必要がある)。医療福祉系以外で,国家資格取得と関 連するインターンシップを正規科目として提供してい る工学系大学院は全国的にもそれほど多くはない。また, この場合の所定の基準を満たすために,建設創造システ ム工学コースの担当教員が履修相談に応じたあと,こち らのプログラムに参加する仕組みとなっている。受け入 れは,徳島建築士会の全面的協力を得て進められ,学生 のキャリアに対するニーズに柔軟に対応している。 3. 院生と学部生の共同インターンシップ試行 大学院生のインターンシップに,学部生や下級生が参 加する「共同型」インターンシップを試行した。具体的 には,前述の 4 単位以上の研修時間でインターンシップ を行う大学院生(M/D)に,学部生がそのテーマの一部 に参画するというものである。2011 年度は 2 名(博士 前期課程学生と学部生の組み合わせ),2012 年度は 2 名 (博士前期課程学生と学部生,博士後期課程学生と学部 生それぞれ 1 組ずつ)のインターンシップを試行した。 特に,テーマを継続したい共同研究先の企業からは好評 で,学部生,博士前期,博士後期の組み合わせによるイ ンターンシップ及び経年的な企業との連携が続いてい る。なお,同一企業との連携のうち最長はプロジェクト 開始当時から,7 年間にわたるものであり,すでに指導 教員と企業が複数特許を申請,商品化されている。 もう一つの取り組みとして,創成学習開発センターで 活動する学生を主に地元の企業等と結ぶ試みを行って いる。現在,1 グループ(チームは 9 名)を担当してい る。5 つの活動を分担しながら進めており,地域貢献と して,北島町少年少女発明クラブの指導を行っている。 2012 年度は,指導した小学生のグループが,全国大会 に出場し,保護者からも学生の指導について一定の評価 を得ている。2013 年度は,この活動のテーマである「地 域を紹介するからくり仕掛け」で使用する LED につい て,地元企業から提供を受けることが決まっている。ま た,「パワー LED とデジタルカメラを用いた安価な PIV(particle image velocimetry)の開発」をテーマとし, 大学院生の指導の下,2013 年度のサイエンスインカレ 出場を目指して,実験を行っている。この創成学習開発 センターの活動は,まだ,インターンシップには至って いないが,地域や地元企業との連携については計画どお り進んでおり,今後の教育プログラム推進のモデルとす るべく,地元企業のニーズ収集を産学連携本部の協力を 得ながら活動を進めているところである。 4. 技術系科目の運営 インターンシップの経験を企業経営とつなげ,体系化 することを目的に「技術経営特論」を大学院総合科目と して開講している。インターンシップ履修者以外も履修 可能で,毎年 40 名前後の社会人や留学生なども含む学 生が履修している。自動車産業の企業経営全般における マネジメントについて,「研究開発」,「生産管理」,「調 達」,「品質管理」,「マーケティング」,「異文化経営」等 の広域的かつ重要なテーマに関して体系的に講義を行 う。事例をふんだんに取り入れた実践的講義を通し,「マ ネジメント」における「技術」の位置づけと,その重要 性を理解することを目的とする。また,ケーススタディ では,受講生が,自身の専門分野を産業社会の中に位置 づけながら他分野の人材と討議できる力を養うことを 目的とする。2011 年度に,非常勤講師らとシラバス改 定の打ち合わせを行い,2012 年度に,これまでどちら かというと,「企業経験者の体験を聞く」講義であった 内容を,化学,情報,建設,機械などの関連する技術と それらに関連する法や政策,消費者行動を理論を踏襲し ながらも,実例を引用することで実感を持った理解につ なげるものに改定した。 産業のグローバル化に対応し,海外で働くということ について論述したり,技術の価値を創造することを模擬 的に経験する「新車開発計画」立案し,異なる分野(コ ース)の学生をグループにして,その新車開発計画につ いて討議する,留学生が参加しているグループは英語で 討議するなど,座学とは一味違う講義を展開した。経営 学の知識がない学生がほとんどであるため,和歌山大学 徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部研究報告
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-観光学部の出口竜也教授に講義いただいた。この講義は, たとえば「ディズニーランドの入場料はどう決まるか」, 「マクドナルドや吉野家の低価格戦略は有効か」といっ た身近なテーマを扱いながら,経営学の基礎の理解を向 上させ,学生からも評価が非常に高かった。 5. 知的財産教育の推進 産学連携教育を進めるうえで,非常に重要となるのが, 知的財産教育である。共同研究では,通常学生は守秘義 務契約の当事者ではないケースが多いこと,当該学生が, 必ずしも研修先企業に就職するものではないことなど から守秘義務を含め,知的財産とその周辺の倫理教育は 大学と企業のリスクマネジメントの観点からも重要で ある。また,技術者としても,知的財産に関する基本的 な知識は必須である。そこで教務委員会が中心となり大 学院先端技術科学教育部では,大学院総合科目として 「知的財産論」を,工学部では「知的財産の基礎と活用」 を提供している。本インターンシッププログラムが,文 部科学省の補助事業として採択されて以降,学務係の支 援を受けながらその科目運営及び改善に取り組んでい る。本科目は博士前期課程修了までに,学生の約 8 割が 受講する科目である。一方で,集中講義として夏季に開 講されることから,インターンシップ,学会等で受講を 取り消す学生も多く,これら意欲の高い学生に機会を十 分に提供できていない,受講者が毎年 350 人前後となる 講義の管理(出席,レポート,欠席者の取り扱い)が多 大となるなどの課題を有している。 それらの学生,運営支援をいただいている工学部事務 スタッフらの意見を受けて①大学院共通科目として開 講している「長期インターンシップ(M)」と「長期イ ンターンシップ(D)」を履修している学生に対して行 ってきた,本資格受験に関する情報提供(参考書貸与, 学習方法指導)を受験希望者全員に実施,②本資格(国 家資格)取得により「知的財産論」の単位認定が可能と なるよう,シラバスを改訂した。これにより学会やイン ターンシップにより,集中講義を受講できない学生にも 学習の機会とインセンティブを提供することが可能と なった。なお,従来は,特許等について実際に調べる内 容のレポートは,徳島ということもあり,青色発光ダイ オードに関するものが多く見られたが,2013 年度以降 は,iPS 細胞に関する興味が高まると予想される。生物, 化学,医学等,学際的な分野であり,この分野を講義の テーマとして取り扱うことは,学生のニーズに答えるだ けでなく,学科を超えた価値創造も可能になると考えら れる。知的財産の分野は,毎年のように法改正が行われ ており,対象とする分野も広いことから,毎年のように シラバスの内容を見直す必要がある。課題となっていた 非常勤講師の手配については,2012 年度に,工学部と 弁理士会四国支部の間で講師派遣に関する申し合わせ を締結した。それにより,大学は,希望するテーマにつ いて弁理士会四国支部に講師派遣を打診することが可 能となった。また,多大となっている事務やレポート採 点,出席管理などについても,システムの構築を進め 2013 年度運用を目指している。 6. 今後の展望 本教育プログラムは,先端技術科学教育部と工学部と いう幅広い学生と教員の学びに付加価値を提供すること を目指して進めてきた。そのため,教務委員会,先端技 術科学教育部所属の教員のさまざまなプロジェクト,産 学連携本部などの協力が非常に重要であることは言うま でもない。長期インターンシップは,学生の多様なニー ズに応える大学内の個々の取り組みを有機的につなぎ, つながることで新たな価値を創造しながら進化している。 実践的な経験を通し,学生の研究遂行能力が向上し,企 業等との連携がより活発になれば,大学としての価値も 向上する。近年の厳しい経済情勢などを鑑みても,産学 連携教育を通した実践的技術者育成への産業界及び学生 の期待は今後も高いと思われる。企業から,旅費などの 支援を得られる学生も徐々に増えつつある。学生の質や 教員の研究の付加価値を高めるためにも,これら関係者 と企業が win-win の関係を構築できる枠組みの提供を今 後も進めていきたい。 徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部研究報告
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