• 検索結果がありません。

日本における婦人労働者 : その生活構造と労働者福祉について(第3報)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "日本における婦人労働者 : その生活構造と労働者福祉について(第3報)"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Title. 日本における婦人労働者 : その生活構造と労働者福祉について(第3報 ). Author(s). 関谷, 嵐子. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. B, 社会科学編, 26(1): 57-68. Issue Date. 1975-09. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/4397. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 関谷嵐子:日本における婦人労働者. 日 本 に お け る 婦 人 労 働 者 -その生活構造と労働者福祉につ いて- (第3報). 関. 谷. 嵐. 子. 第二章 婦人労働者の生活構造類型の諸問題 ( 1 ) 生活構造の概 念について 本章は, 婦人労働者の類型を, 生活パターンの諸条件に立ちいっ てとらえようとするもの である . これは, 前稿 (第2報) における婦人労働者類型 (仮設の設定) を, 論理的に定着させるための, 作業の一つである。 生活バターンという場合, 婦人労働者の属する家族 (本稿では, 家族の消費生活の単位と しての 「世帯」 という 語を用いる)の 社会階層というよこ糸と 生活周期というたて糸との分析によって そ , , , , の 基 本 的 特 徴 を あ き ら か に す る こ と が で き る. この, よ こ ・ た て の 網 目の 接点にとらえられるの が. 現実に消費生活をいとなむ世帯であり, よこ・たてのパターンの 同 質的 な集 団 を同 じ生 活構造 の ) グル ー プま た は 階層 と よ ぶ こ と が で き る{. 生活構造の 分析は, 今の べたように, 世帯を考察の単位としておこなうものである 人々の生活 , のタイ プや パターンは, 単に個々の 人間の年令移行や職業的特質のみによ って, その要因が抽出さ れる わ け で は な い. 個 人の 行 動 も, 世 帯 と いう 構 造 の 中 でフ ィ ー ド バ ッ ク して 把 握 す る こ と が 必 要. である. なぜなら, 労働力の再生産は, 世帯という消費経済の単位において長期にわたり展開され る もの だ か ら で あ る。. ・. しか し, 生 活 構 造 と いう 語の も つ 学 問 的 概 念 は, 今 日の と こ ろ, 一 様 で な い ばか り で なく 流 動 ,. 2 ) 的でさえある. 本稿は, 世帯の, 衣食住から育児教育.教養妙 臭楽をもふくめた全消費生活過程のもつ経 済的枠組みを,「生活構造一 の中心的内容と考えている, すなわち, 生活構造とは, 資本主義的家族 におい て 労働 力 再 生 産の お こ なわ れる 構 造の こ と である ,. 第二章の( )は, 労働者生活研究における一般的方法としての, 生活構造の把握にあてられる, そ 1 れは婦人労働者の生活構造分析の前提をなす. なぜなら婦人労働者は, その社会的存在形態からい っ て多くの場合, 世帯の生活周期やとくに社会階層形成 における決定因子として存在しているので はないからである. 世帯の性格を規定する主たる要因は, 世帯の収入ないし職業のなかにもとめられるが,. 世帯における稼得役割の主な担手は通常, 成人男子 であり, その社会的地位や稼得能力から, 副次 的に婦人労働者の生活周期や社会階層が決定されてくるの である (後述) . したがって, 生活構造把 ) 握のための一般的方法の確立が, 婦人労働者類型の分析に先行することとなるさ. (i) 消費生活の構造としての生活構造 家庭生活は世帯の消費生活の展開される場である. そして家庭の消費生活は, 家族の労働力の再生 産を結果として果す機能を以て, おこなわ れる. 本稿第2報で若干ふれたように, 資本主義社会に 57.

(3) . . 関谷嵐子:日本における婦人労働者. おける家庭生活の 主要な機能は, 消費物資の購入のための稼得機能と, 消費生活をととのえる家庭 管理機能とである。 この二つは, 成 人男女の, 一応性別にちかい, 役割分業のかたちをとって存在. している。 したがっ て, 成人の行動類型を通 して, 消費生活の経済学的把握が具体化されることに. な る.. イ) 社会階層. 世帯の消費生活の水準を決定する ものは, そこで用いられる消費財の量と質であり, 資本主義社 会ではそれは貨幣収入によってもたらさIれる. したがっ て消費生活の分析手段 と してまず, 収入に. かんする諸特質 を, グループ分けして指摘することが必要 である.. 収 入の特質の分類は, 収 入源による分類と収 友鯵麹こよる分類とである. 収 入水準の高低は, 消費. 生 活に お け る 量 の 大 小 を み ち びく も の で あ り, こ こ に は 質 的 高 低 を お の ず か ら と も な っ て い る, 一. 方, 収 入源の区分は, 収入の安定性や, 収入をもたらす諸行為 (所属する教育水準・職種など) ,収 内容を示すものである すなわち 入の将来の見通し, などを媒介としたその世帯の社会的生活の , . 収入水準の高低は, 収入源別に問題点を考察するこ とが必要なのである。 わ が国における収 入源の種類は, 世帯の主稼得者の, 収入を得るにいたる社会的関係にもとずい 4) て, 通 常, 次 の 四 つ に 分 類 さ れ て い る‐. ①資本家ないし経営者的収入 (資本利潤からの分配). ② (資本主義的な) 自営業者的収入 (家族労働力の家業従事を中心とする経営からの利潤の 分配) ③ 賃労働者的収 入 (労働市場における労働力の販売=雇用) ④社会保障的・ または雑業的収 入 (不安定就労・社会保険受給・生活保護受給・およ びこれら の い く つ か の 合 体 し た 収 入.一貧 困. の 形 を と る こ と が 多 い). いう ま で も な く, 上 記 の ② と ③ が, 近 年 で は とく. 策1 図. に③の賃労働者的収入源世帯の増大が, 本稿第1報で. 指 摘 した よう に, 顕 著 に み い ださ れ る. こ の③ の 階. 級が資本主義社会における基本的 規定部分 である・. ① 上. と こ ろ で, こ の ① か ら④ ま での 収 入 源の そ れ ぞ れ の. 内 部 に お い て, 各収 入 水 準 層 が 存 在 して い る. す な. わ ち, 一 つ の 収 入 源 が一 様 の 性 格 を そ な え て い る わ. 社 会 階 層 の 考 え 方. l - 大企業 森 籍 経営者 世 帯. 収 入. ② 安定的 自営業 者世帯. 帯の 職 業別 - - 正 確 に は雇 用 種 類別 と いえ る - -の. 家 計 収 入 レ ベ ル を 第10表 で み る と, 格差 の 存 在 と 構. 造の差異があきらかである. このぅち, 臨時日雇労. う な, 上 下 の 幅 をも つ 職 業 階層 シ ェ ー マ と して え が. 定. 理竃 も ・ の収入“ ルヴは 諏 .のよ 嬰 かれるであろう, すなわち, 広義の同一収入源 (第. 度. 部 は, 複 層 的 であ る.. 下. 藁弁. 雑 業的. 労働者 ・非労. し △. 58. ′ 、. い. 社. ④. 常用職. . な. 務 者 世 帯 は 実 態 的 に, 上 記 の ④ と 不 可 分 的 で あ る と. 勤労者世帯といっても大企業常用職員と中小企業臨. 大企業 員・労. . . 営規模など) と対応的である。 ③にあたる勤労者世. ③. {-『. 働力世. 中小企 中ト企 業経営. 者世帯 者 世 帯. 雑業的. 、 ′. 更義 人廃疾. 自営業 整 嘗 髪 鞭 璽 辱婆 者世帯. 者世帯 的労 働.

(4) . 関谷嵐子:日本における婦人労働者. 勤労者世帯の収 入構成 (1973). 第10表. 勤労者世帯 平. 集 計. 世. 帯 数(世帯). 世. 帯. 人. 有. 業. 人. 員 (人) 員 (人). 世 帯 主 の 年 令(才) 入. 収. 額 (円). 総 収. 実. 入 (円) (%). 勤 め 先 収 入 (円) (%). 世 帯 主 収 入(円) 妻 の. 収. (%) 入 (円) (%). 他の世帯員収入(円) (%). 事 業 内 職 収 入(円) (%) 事. 業 (円). 内. 職 (円). (%) (%) 他 の 実 収 入 (円) (%) 財. 産. 収. 入 (円) (%). 社会保 障給付(円) (%) 贈 (円) (%) 仕. 送 り. 金 (円) (%). そ. の. 他 (円) (%). 実収 入以外の収入(円). (計). 均. 5 358 , 3. 85 1, 5 3 40 9 .. 労. 務. 者. 世. 帯. 常用労務者 臨時・日雇 労 務 者. 計 2 21 ,2 3, 82 1 ,59. 2 89 ,1 3. 82 1, 5 9 40,2. 32 3 97 , 1. 84. 4 0.3 2 15 646 , 468 1 37 ,. 16 2 05 ,6. 4 7 ,1 155 82 6 , OQO ヱ. 1 67 55 ,8 93 .9. 128 81 ,9. ヱ〇〇 .〇. 鱒,9 94 9,3 5 ,7. 8 ヱ ,9 8 3 ,80 6 ,ヱ. 30 256 ,1 1 60 65 ,8 ヱ00 .○. 1 39,2 33. 4 0 7 ,2 4,4. 41 3 ,8 2 .3 1, 2 77. ヱOQO. 93 ,8 1 12, 75 6. 7, 92 7 5 .8 3, 717. 2 .7 8 3 3 一06 , 2 885 ,. 民 間職 員 官 公職員. 41 .4 89 2 0 ,86. 18 8,9 55. 129, 600. 9 2,1 09. 1 77,7 33. 8 2 .2 8 3 ,72 6 ,ヱ 40 7 ,8. り 貧 ,〇 8 8 ,72 8 .9 13 57 ,3. 93 ,8 388 113,. 5 .7 2 9 3,7 2 ,7 825. 2 ,ヱ 4 70 ,7. 7 99. 3 .5 4 27. 0 .5 8 1 3. 0 ,3 6 71. 0 .3 62 6. 0 .5 2, 0 37 ヱ .2 2 52. 0 ,5 1 8 ,32 ヱ .3 2 84. 0 ,5 1 8 ,31 ヱ .3. 0 ,2 2,2 51 ヱ ,4 37,7 35. 0 .2 1,5 5 7 ヱ .ヱ 27 076 ,. 0 .2 1,5 56 ヱ .ヱ 27 98 ,1. 6,1 52 3 .8. 計. 6 99, 65. 1 38 93 ,0. 0 .6 2 04 ,9 2 ,之 4,7 6 3. 0 .8 2 64 ,5 乙5. 員. 3 ,238 3, 87 48 1.. 3 ,5 4 32. 282. 9 2 4 , 69 81 ,8. ヱ品4. 2, 6 05 2 ,6 1 11 ,1 エヱ. 1 93 ,4 ヱ .5 4 42 ,9. ヱOQO. 9 4 .0 1 31 60 ,8 85 .O 23 1 0,2 5 ,4 78 6 ,6 3 ,5 3 3 ,94 2 .ヱ 1,6 38. 0 .9 05 2 ,3 ヱ .2 80 7, 2. 世. 帯:. 職. 49 2 ,1 3. 83 1. 4 6. 989 3. 96 1. 53. 41 ,1 28 6 3 , 38. 42 .3 2 96,0 65. 1 90 71 ,2. ヱ〇〇 .〇 1 93,9 89. 82 1 ,653 ヱ〇〇 .〇. 93 ,8 31 15 7 ,2. 86 .2 7,1 68 3 ,9. 2 04,8 85. 924 16 9,8 47. 鐙,ヱ 17 87 ,9. 6 91 ,8 3 .8 3 ,824. 8 ,8 6 55 ,1 3 .0 41 4,2. 2 ,272 乙2. 2, 38 9 上2. 2 ,ヱ 1,55 2 0 ,9. 2 ,ヱ 1 8 ,52 0 ,9. 3 .9 1,1 02. 7 3 9 ,5 4 .ヱ 1,078. 6 55 ,6 3 ,2 1 9 ,15. 1 ,752 ヱ ,8. 0 .5 2, 203 ヱ ,2. 0 .5 42 2 ,1 ヱ .2. 0 ,5 2 ,362 ヱ ,2. 0 ,4 46 1 ,5 ヱ ,6 18 49 ,0. 〇 .ヱ 2,8 20 ヱ ,5 46, 4 36. Qヱ. 5 .0 62. ○ .ヱ 48 1 ,1 ヱヱ. 434. 0 .6 930. 2 26. 0 .6 874. 257. 3,187 ヱ ,7 47 70 ,8. 0 ,6 1 68 ,0. 14 6. QZ ・1 19 ,9 0 ,9 42 31 ,8. (総理府 「家計調査年報」1 973年より抜すい作成). 時労働者とは, 収入水準も収入の安定性も, したがっ て消費生活水準も消費財の選択内容も, 世代 再生産の構相 も, すなわち生活のパターンが全般的にことなると考えてよい. これは, 労働力再生 産構造の多層 性を意味する. したがって労働者階級一般の生活状態や階級意識, という通念的問題. 把握に立脚して研究をすすめることは, 粗雑にすぎるものである. 「社会階層」 の語は 上記の①②③④の収入源 グルー プのそれぞれの内部に存在する諸層の 諸 , , 属性をあらわす 包括的な表現として用いられる. 包括的な, というのは次の意味からである. 一つ の層はまず経済的水準の上下によって, 各収 入源に共通に横にもとめられてよい. それは所得にもと づく消費の, したがって労働力再生産内容の物的高低を, 直接に規定するものだからである. しか. し, ことなっ た収入源においては, 同程度の経済水準の世帯でも, それぞれの職業に由来する社会 的特質には差異があり, 結果としてその生活行動すなわち消費生活への対応のし方は多様である. それは, 食生活におけるし好から住様式や教養 娯楽にいたる全ての面で, 多彩なパターンを構成す 59.

(5) . 関谷嵐子:日本における婦人労働者 る. す な わ ち, 生 活 パ タ ー ンの 多 様 性 は, 同 一 収 入 源 に お い て も, 収 入 源r鮒に お い て も み い ださ れ る の である.. 逆に, これら生活行動の パター ンや消費生活内容が類似的である層 を, 労働力再生産の構造の類 似的である層という意味で , 同質的な生活構造の集団と規定できる. ただしそれは実際のところ, 各. 収入源間に共通的に存在するの ではなくて, 職業別に--さらに厳密には職種毎の集団において-- 成立するもの である, と考えられていろり. 以上の, 社会階層的 グループ化は, 歴史の同一時点における各世帯の, 横断的類型化をいみする ものである. が, 世帯の変動は, もちろん時系列的に連続的 である. ただ, その変動の連続性のタ. イ プには, 世帯の社会階層によって差が存在することが前提とされ なければならない. ロ) ライフ・サイク ル (生活周期). 一方, 家庭の消費生活の日常的な流れは, 今の べたよう に, 歴史的経過をともなって推移 し, 各 世帯のライ フ ヒストリーを構成する. これは, 家族の消長と, 世帯の消費生活の消長の歴史である. B ・ S ・ ロ ウ ン トリ ー に 発 す る こ の 生 活 史 分 析 の 示 唆 す る と こ ろ は, 生 活 周 期 類 型 (ライ フ . サイ. } クル・モデル) の摘出である. 今日, 分厚い研究層 をきずいている生活周期論(ないし家族周期論f は, 自営業世帯と賃労働者世帯との, あるいは系譜家族と核家族との, 相対的にことなる家族の生 活周期類型を明示しつつ, 各周期段階の特 徴と, 周期段階移行における世帯の機能と役割の特徴と ) を指摘していろて いま, 当面の目的にか ぎって, 賃労働者的 核家族という近代的典型家族の生活周期の各段階を図 示 す る と, 第 2 図 の よう に 考 え ら れ る. そ れ は 次 の 5段階をふくみ, それぞれにおける消費生活内. 容の 特 徴 は つ ぎの よう で あ ろう.. 第2図. 家族 (世帯) の生活周期の考え方 (↑印は, 一人の男子の一生). ↑. 被. 出塾 生. 立 婚. ①. “. ②. 世 帯形 成期. 期. ; . 馨 月. ③ 期 期. 子の の学. 校 卒業 . . 独 独 独 立 ふ 立. 姦. ら. ⑤. 忍 . 老. の. 令. 死. 亡. 期. 世帯の形成期. 婚姻による家族の創設 (出生家族から創設家族 への移行) .夫婦2人の 比較的単純な消 費生活形態であり, 妻の稼得労働化が容易である. そのいみ で家計にゆとりが. 第1段階 あ る.. 第2段階. 育児期. 長子の出生により, 世帯の消費規模はふくらみ, 家庭管理機能の内容が複雑 化する, 妻の稼得労働 への対 応が困難となる, すなわち, 家計が膨脹方向をとる一 方で, 世帯 の収入構造における妻の稼得分が減少し, 家計の困難性が生じてくる.. 第3段階 60. 教育期. 次子以下も家族に加わるの で, 世帯の消費は-そうふくらみ, 家計が拡張す.

(6) . 関 谷嵐子 : 日 本 にお ける 婦 人労 働 者. る. 末子が義務教育期に入るあたりから, 家計は最大に拡張し, また, 住宅をはじめ各種の消 費生活手段へのニー ドが極大化する. しかし一方で, 妻すなわち家庭管理者の余暇時間が増大 してくる. すなわち, 既婚婦人の追加所得志向の実現の客観的 主体的条件が成立する? 第4段階 子供の独立期. 年長の子供の就労ないし世帯分離によって第4段階がはじまる. 家計上も, 世帯の繁栄期であることが多い。 だが近年の傾向として, 高学歴化にともなう第3段階の長期 化 が一般 的 であ り, 第 4 段 階 がな か な か や っ て こ な い,. 老令期. 停年退職が一つの区切りとなる. そして, ①再就職とそこからの退職, ②無 職化と子供による扶養と各種社会保障制度への依 存, というサイクルで老令期がすすんでゆく. すなわち. 所得の縮少と, 家計規模の縮少が生ずる,. 第5段 階. 資本 主義社会における, この生活周期移行の型は, おそらく, どの収入源においてもまたどの職 ) (た だ し当 然の こと である が 長期的独身世帯・ 業においても, 基本的にあ てはまるであろうぞ , 無子夫婦世帯・欠損世帯など生活周現段階の省略や変型はいくつも存在する。 )だが, この生活周期移行 を, 形式的に類型化 してとらえるだけでは不充分である. 生活周期移行の具体的パターンは, イ) 社会階層, で指摘してき たところからあきらかなように, 一定の社 会に存在する具体的な階層形態 の な か でと ら え る こ と が 必 要 で あ る. ホ ワイ トカ ラ ー 層 と, タ ク シー 運 転 手 と, 臨 時 日 雇 層 と は,. たとえば近年, 子供の進学にたいする志向がかなり類似的であると してもその背景はことなっ てい る. 農家・商家などの自営業世帯 では, さらに大きくちがう であろう. 収入の消長や消費生活の内 容は社会階層のおのおのにおいてことなり, 生活周期移行における具体的展望も それへの対処も , 一 様 では な いの で あ る .. ただし, 日本資本主義社会の分析において ロウ ントリーを原型とするこの図式 (第2図) を論理 ,. 枠 と して 利用 す る 際 に は, いく つ か の 基 本 的 な 留 保 が 必 要 で あ る ロ ウ ン トリ ー の 図 式 の 原 型 は い ,. うまでもなく, 1 9世紀後半のイ ギリス社会の不熟練労働者世帯にお ける 生活周期型を念頭におく ,. もの で あ る. こ の 場 合, 賃 金 率 は 年 令 に あ ま り か か わ り なく ほ ぼ フ ラ ト で あ り か つ 生 活 保 障 ッ , ,. に類する社会的措置は救貧法にたよる以外には存在していなかっ た 社会保険制 度は20世紀初頭ま . で未成立であり, 熟練労働組合 (クラフ ト・ユニオ ン) における相互扶助制度とも これら不熟練 ,. 労 働 者 は 縁 がな い い わ ば レ ッ セ ・ フ ェ ー ル 的 に こ の よ う な 生 活周 期 的 波動 が え が け . , る, と い , っ ン ェ ー マ であ る, 一 方, 日 本 社 会 に お ける 生 活周 期 把 握 に つ い て は 次 の 条 件 が 前 提 とさ れ る , . 第一 に, 戦 前 お よ び 戦 後1955~60年 あ た り ま での 日 本の 労 働 市 場 は 農 村の 過 剰 人 口 を た え ざる ,. 給源とし, そこから不熟練の状態 で かつ低い供 給価格によっ て 労働力 がたえず追加的に流 , れこ , むことによっ て成立していた 大企業の労働者の一部については 企業内技能養成によ て熟練形 . っ , 成がおこなわ れ, 年功序列賃金がこれに対応的に成立した , 婦 人労 働 者 につ い て い え ば 典 形 的 に は 紡績出稼ぎ (本稿第1,2報参照 ) である. 日本の賃 , , 労働者の多くは, その幼少期と 女子については結婚期以 降の 生活周期の諸段階に おいて , , , 自営 業的あるいは非 資本主義的収入源とのかかわりあいをもっている このために近化的生活周期の社 . 会的な未確立性が指摘されるのである . 第二に, 厳密な意味における年功序列型賃金は 熟練の度合いや作業における責任の度合いと 対 , 応するものであり, これは, 大企 業の一部の養成工出身者について しか存在しない が 一般に日 本 , 社会では年令別上昇の賃金体系 的なものは広く存在してきた 近年の産業構造の変化の過程で 労働 , , 力不足状 況にともなって, 企業間賃金格差の縮少や若年者賃金の上昇傾向が進行 してきた が 以上 の , 賃 金格差 の 諸 問題 は今 日も依 然として 日本の賃金問題の本 質的な一部を構成している , . いわゆ る年令賃金カーブの存在である. 第11表にみられるような学歴別・企業去耕莫別・年令別格差の存在である , 61.

(7) . 関谷嵐子:日本における婦人労働者 第11表. 00) 規模別・学歴別・年令別賃金指数 (旧中・新高卒全規模男子18~20才を1 74年4月末日) (きまって支給する給与, 19. 旧大・新大 卒 全規模 男. 子. 同 女. 子. 旧中・新高 卒 全規模 男. 子. 旧大・新大. 同 女. 卒 500人以. 子 上, 男 子. 同 ‐ 同 旧中・新高 500八未満 卒 5 00人以 5 00人未満 子 上, 男 子 男 男 子. 才以上 才未満 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 4 6 48 50 52 54 56 58 0 6 65 70 平. ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~. 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 65 7 0 均 才. * * * * * * * *. 1 27 1 39 1 55 1 74 1 96 2 15 221 2 29 2 39 2 48 2 33 2 79 2 61 2 70 283 2 76 2 27 1 77 1 98 1 88 2 37 135. * * * * * * * * * * * * * * *. 167 28 .4. 1 08 116 135 1 39 1 59 1 68 1 41 1 69 1 71 1 98 2 21 1 78 1 13 2 78 1 91 2 00 1 80 1 60 - 1 79 1 10 * 1 23 26 .2. 1 00 1 09 1 22 35 1 1 53 1 69 1 82 1 94 199 2 07 2 13 2 22 2 21 2 17 2 28 2 29 2 36 2 32 2 20 1 92 182 * 1 72 * 139 * 215 1 58 28 .8. 90 95 1 01 1 08 1 1 6 1 24 1 27 1 35 1 3 3 14 3 1 48 1 54 1 60 1 63 1 78 1 62 1 73 1 78 1 66 1 82 1 71 1 95 78 1 05 24 .3. * * * * * * * * *. 12 9 14 3 1 60 1 80 2 02 2 8 1 2 31 2 32 43 2 2 66 2 49 3 05 2 73 2 85 286 2 87 2 21 325 2 77 1 82 2 78. * * * * * * * * * * * * *. 1 74 28 .5. 1 23 2 13 14 3 1 60 1 79 1 98 1 97 228 2 19 22 0 2 16 2 16 252 2 46 1 96 255 1 71 1 71 128 1 93 * 145 * 1 35 4 15 282. 1 02 1 12 125 140 158 1 74 1 87 2 03 2 05 21 6 2 23 2 3 3 2 33 2 29 2 38 2 37 2 45 2 45 2 35 2 20 1 98 1 63 40 * 1 * 1 66 29 .2. 95 1 06 117 127 44 1 1 58 167 1 74 1 85 1 92 1 85 1 90 1 84 1 87 2 02 1 96 2 01 1 96 1 77 1 63 1 69 1 74 39 1 2 16 14 2 2 8 ,0. *印は実数20人以下. したがって偶然性が多く 混入している.. (労務行政研究所 「地区別・職種別・規模別・年齢別給与実態」 昭和4 8年版より作成). 第三に, したがっ て, 第11表における男子事務系労働 者 (旧中・新高卒) を 100とする賃金指数 のカーブをとっ て考えて みても, 日本社会では, 生活周期移行にともなう収 入水準は,第5段階(老 令期) のはじめあたりまで, 上向傾向をもっ もの である. 家族員数の増大や消費生活ニー ドの拡大. で生活の緊張がふくらむに しても, フラッ トな賃率が継続する場合と比較して, 第2図におけるよ う なはげしい上下波動は, 実際にはある程度減殺されていると考えてよ い. ただし第四に, 日本社会において存在する一般的低賃金, という 従来からの理解を前提とすれば, 年令別賃金上昇は, 独身段階 である雇用の出発点の, 極端な低賃金と現物給与による生活補完をそ の ま ま 生 活周 期 的 に パ ラ レ ル に 移 行さ せ た も の に す ぎな い, と いう こ と も でき る す なわ ち 日 本の .. 賃労働者は, 生涯にわたり (貧困な農村給源の出身者 であっ たことをもふくめ) ,ずっと貧困である, ともいえる. 近年の所得水準の上昇の事実内容を検討しつつ, これらの点は, 別の機会に考察しな け れば い け な い 点 で は あ る.. 第五に, 社会保障制度の成立と普及は, いずれの資本主義社会においても, 生活周期の波動の底 辺部分の緩和剤としての役割をもっている. 戦後の日本の社会保障制度も経済的効果としては貧困 にたいする若干の緩和役割を果 してきた. 公衆衛生行政や保育所などの諸サー ビスの供給も, 有形 62.

(8) . 関 谷嵐 子 : 日 本に お け る婦 人労働 者. 無形の底あげの実効をもっていないわけではない。 しかし年金や公的扶助の給付金額のきわめて限. 定的なことと,健保な ど社会保険における閉 鎖的な階層性の存在とを考慮すると, 貧困世帯の救済内. 容はきわめて限定的であり, またどの社会階層にたいしても均等に社会保障効果が及んでいるとい うわけにはいかない. このような社会保障制度の状況をどのように評価 して, わが国の現在の, 生 活周期波動の図式をえがき直すかは, 私にとってはまだ不明確である. 第六に, 教育期の延長 (すなわち扶養期の延長) は, 収入レベルの伸長よりも消費ニードの伸長 と して, 生 活周 期 の 図 式 に 作 用 す る と 思 わ れる。 ロ ウ ン トリ ー に お け る 原 型 よ り もさ ら に 今 日 の 方. が, 生活周期の第3段階の 谷間は深く, かつ期間は長いの ではないか, という 疑問が当然成立して くるであろう。 子供の数の減少によって谷間の生活苦は限定的なものかもしれない, 逆に, 消費生 活ニー ドの生活周期的増大にともなう消費欲望の増大や追加所得欲望の増大は, 主観的にも客観的. にもより深刻にその世帯の生活行動に影響を及ぼすもの であるかも しれない, これらの研究はす で に集積されている (注9 )参照) とはいえ, 今後に解明の残されている点もすくなくない領域 である, ハ) 社会階層と生活周期 -- 世帯の や生活構造ぃ 的把握 以上からすれば, 一 つの世帯の消費生活と消費志向のタイ プを求めるとき, 社会階層というよこ糸 と, 生 活周期 という たて 糸との, く み 合 せ の 接 点 に お い て, あ る い はく み 合 せ の 同 質 的 ・ 類 似 的 な 時. 間や空間 (=集団) の範囲において, その世帯像は具体的な姿をとることになる。 このことは, 同 一企業のホワイ トカラー世帯でも, 各周期段階によっ て消費生活がことなる一方, 他の職業の世帯 と 比 較 す ればは る か に 類 似 的 で あ る, と いう パ タ ー ンの 形 成 をみ ち びく. ま た 逆 に, 同 種 の 企 業 間. で従業員家族の生活タイ プがことなっているとすれば, それは, 技能養成や賃金体系や福利施設な. どの 企 業別 労 務 管 理 の あ り 方 に, そ の 理 由 の 一 端 が も と め ら れる で あ ろう, 生 活 パ タ ー ンに お け る. こう した類似性と差異性とは, 資本主義社会では, 職業別・収入水準別のほか, 地域や環境などか なり多くの要因の複合の結果として成立しているものであることはいうまでもない. 要因の追求は. 社会学領域の業績 にみられるように, 外延的に広般に拡大しうるであろう. 以上の諸要因の合成を背景にもつ消費生活タイ プを, 私は 生活構造 と して と ら え たく 思う. ただここの場合, 当然のことながら, 世帯の経済行動と直接的に関連をもつ諸要因や生活内容が,. 基 本 的 に 念頭 に お か れ る の であ っ て, 要 因 の す べ て が同 じ レベル で論 理 に 組み こ ま れる わ け で は な. い. 外延的要因はある程度捨象されざるをえないし, また, 世帯や労働者個 人の思考原理やイ デオ ロギー構造などの上部的要因も, さ しあたり, 第二義的にとらえられる. イ デオロギーは経済構造 1 ) の 上 部 に 成立 す る も の で あ り, いう ま でも な く そ の 逆 で は な い か ら で あ る!. ( i ) 婦人労働者における生活構造の枠組み i ′ ここ で, 婦人労働者に対象を限定し , その生活構造の1瀞新教についての 分析視点をあきらかにしておき ・ たい, 婦人労働者の生活構造とは, すなわち, 一つの世帯の生活構造において 婦人労働者がどのように , それに関与してきたか, ということ である. その際, 婦人, と労働者, という二つの属性の解明を お こ な う こ と が 念 頭 に お か れ る.. イ) 社会階層と生活周期. 人間は, 家族という 共同体的集団において消費生活をいとなみ, 労働力の再生産をおこなう 前 .. 述の よう に, こ の 単 位 が世 帯 と よ ばれる .. 資本主義社会において, 家族 -- 世帯員 -- は, その世帯を維持するための主要な機能を, 役割 分業的に遂行する. その中心をなすものは, 前述のように, 主として成人男子による稼得のための. 労働と, 主として成人女子による消費生活維持 (=家庭管理) のための労働でである 他の老若の . 63.

(9) . 関谷嵐子:日本における婦人労働者 世 帯 員 は, 広 い 意 味 でそ の い ず れ か の 役割 を 副 次 的 に 分 担 し た り, あ る い は, 現 在 は そ れ に あ ま り 参 与 し て い な い 被 扶 養 者 で あ る. し た が っ て ひ と は, あ ら ゆ る 場 合 に, 個 人 と し て に と どま. らず, 家族あるいは世帯という枠における労働力 再生産構造の中に位置する ものとして, 把握され ・ ることが必要 である. 女性は , 稼得という, 社会的関係の中で遂行される 機能を主要役割として果 す形では, 通常, 存在していることがすくない. 家族労働力の 主要一員として成人女子が経営に参. 加する自営業世帯 では, 家長の管理下に女子 も稼得機能の一部をになうの が通常であるが, 賃労働 者家族の場合, 成人女子の稼得役割への参加は成 人男子と別途の パイ プで, すなわち別個の労働市. 場行動において, かつ 男子の稼得行動にたい し副次的におこなわれる. ところ で, 資本主義的社会において, 個人や世帯の労働力再生産の 構造を基本的に決定するものは, 稼 得の水準や安定性や, それを得るにいたる能力の形成の内容である. これらの集成したものが 社会階層. と いう 形 で と ら え ら れ る も の で あ っ た, し た が っ て, 女 性 は, そ の 社 会 的 存 在 形 態 に よ っ て み ず か. らの社会階層を表現するのではなく, その属する世帯の, 世帯主の社会階層に包摂された・その規 定をう けた存在と して, とらえられるの である.(本稿注 3 )参照) . 婦人層とは, 成人女子一般と同義 であり, 具体的には, 各社会階層に属する婦人グループの集成. で あ る. 婦 人の 社 会 階層 と は, こ の 世 帯 と いう 枠 で フ ィ ー ド バ ッ ク して 理 解 さ れ る こ と と なるぞ}. 成人女子の労働のかたちは, 家庭管 理の労働 (=家事と育児の労働) を中心とする. この家事労働の 変動に対応して, 稼得労働化が成立する. あるいは余暇行動化が成立する. また逆に, 稼得労働化 の要請が, 家事労働の量や時間などの 諸形態を左右する.1鞠所得世帯や零細自営業世帯では, 成人女子. におけるこの家事労働と稼得労働の二者は, あい 合してきわめて長い労働時間をもた らしてきた甲 ところ でこれを, 世帯の生活周期的視点から考察してみると, 生活周期の, 段 階移行にともなっ て , 1 ) 消費生活では 前述の 生活 1 家庭管理機能の内容はいちじる しく経過的に変 ってゆく 周期の第3段 , ,. 階に最大のニー ドが形成され家計的緊張が成立するが, 家庭管理の労働そのものは第2段階の場合 に, 成人女子に集約的な形 で極大化し, 第3段階に入ると徐々に軽くなる, と考えられる なぜな . ら, 第3段階への移行につれて, 家事労働のうち, 育 児管理の手が急速に抜けてくるからである . 以上の点を, 戦後の日本における家 事労働自体の変化に焦点をあてて一般的に概括すると,( )家事 a. 労働設備の導入と消費財の商品経済的供給部分の拡大,( b )世帯規模の縮少化と家族 構成の単純化(子 供数の減少と核家族化) ,の相乗作用のなかで, 労働量も時間量も軽減傾向が顕著である, といって よい. これらは, 婦人層とくに 既婚婦人層一般における余暇の成立と拡大 (とくに生活周期の第3. 段階以降の) を意味する. かかる余暇の転用状況は, 後述のように, 社会階層的に決定さ れること と な る.. いま上述の( )のロ) における生活周期段 階と対応させて, 婦人層の生活行動の特 質を指摘すれば i 二 それは何よりも, 世帯における家庭 管理役割の消長としてとらえられる. 既婚女子の家庭管理役割 と, そ の 家 族 内 に 成 長 してく る 次 代 の 女 子 の そ れ と を, 婦 人層 に お け る 一 つ の 連 続 と して か さね て 考察 す れ ば, 次の よ う に 考 え ら れ る.. 第1段階 第2段階. 世帯の形成期. 家庭管理役割 (家事) の主要分担の成立. 育 児期. 家事と育 児の主要な・かつ集中的な分担. 労働量と労働時間量は最大となる.. 第3段階 教育期. 家事と育 児の主要分担. 子供の成長につれて育児負担が経過的に軽くなる. またこの段階に, 子供 --とくに女児 -- の家庭管理役割補助 が成立しはじめる. 一方, 主婦 における 余暇の成立と, 消費生活ニー ドの極大化にともなう追加所得欲望の成立がみられる.. 第4段階. 子供の独立期. 育 児労働 が消滅し, 家事分担のみとなり, 子供による分担補助も増大 する. 第1段階にくらべ, 消費生活内容とニードははるかに拡大的であり, 消費生活水準に対. 64.

(10) . 関 谷嵐 子: 日本 にお け る 婦 人労働 者. 応した余暇の転用が具体化される. 第5段階 老令期, 家事労働量の 縮少化。 系譜家族世帯においては家庭管理役割の中心は, 次の 世代 (嫁 または既婚の娘) へ と移行する.. ここに, 婦人層一般における家庭管理負担の軽さの序列を示せば, 第一, 未婚 (または未成年) 女子, 第二, 生活周期第5段階の 主婦, 第三, 生活周期第4または第1段階の 主婦, 第四, 生活周 期第3段階の主婦, 第五, 生活周期第2段階の 主婦, という形であろう, 婦人労働市場の成立の要. 因は, あきらかにこの序列との関連で把握される. 本稿第2報で設定したA型労働力群 (若年・未 婚.短期就労型) は, この軽さの トッ プに位置する グループの, 労働市場接触の型である. 戦前の 日本におけるよう に, 労働時間が長く, 一方で家事労働時間も極端に長い場合には, 婦人労働市場に お い て は こ の A 型群 の 成立 の み が可 能 で あ り, こ れ に 対 応 した 労 務 管 理 の み が存 在 した の で あ る。. ロ) 労働市場接触への諸条件 成人女子において増大された余暇が全て, 労働市場接触の行動に転化されるわけではない, 接触 志向はあきらかに, その女性のおかれた世帯の生活構造のなかで , 雇用機会の諸条件を検討 しつつ, 選択 的に決定される. この場合, 当然のことながら, 労働市場への対応には, 職業別・職種別に階層性 が存在する. この階層性は, その女性の属する世帯の社会階層性であるとともに, 労働力 販売の当. 事者のもつ職業的能力における社会階層性でもある. 看護婦や教員のよう な有資格職種には, 有資 格者のみがア プライ するであろう し, 不熟練職種の場合や, 労働力不足のため募集資格を緩和する 場 合に は, そ れ ら へ の流 入 は, よ り 開 放 的 に お こ な わ れ る で あ ろう.. さて, 第12表にもとずいて, 義務教育卒業後の, 未成年および成人女子の状態を年令群的に分類. して み る と, 以 下 の よう に な る. 本稿第2報の 第4・5 ・ 8表を念 頭 に お い て 考 察す る も の で あ る こ. とはいうまでもない. 第一, 15~19才層には通学という形の非労働力状態が多い. 第二, 労働力率 (=就業率とほとんど同意語である, 失業率は 1,0%である) は15~19才, 65才以上層 が低く, 25 第12表. 年令階級別の状態 (女子) (1973年) (紛. A 労 働 力 率 B, 非労働力率 C, 雇 平 15 ~ 2 0 ~ 25~~ 3 0 ~ 35 ~ 40 ~ 40 ~ 5 0 ~ 55 ~ 6 0 ~ 65 ~ 70 ~ 80 ~. 均 19才 24 2 9 34 39 49 54 9 5 64 6 9. .. 79. 用. 率. 48 ,3 2 7 .9 67 ,I 44 .5 46 .8 5 6 ,3. 51 .7 72, 9 32 9 . 55 ,5 2 5 3. 43,7. 28,O 26,O 57,9 29. I 24,I 28.8. 61 .3. 38 ,7. 30,5. 44 .5. 55 ,5. 16,4. 1 6 ,9. 8 3.I. 3,7. 5才以上女子人 女子労働力人口 女子非労働力人 1 を1 00,0%とし. た場合の,. ロを 100 ,0%と した場合の,. 失 業 率1 8 3 ,0 家事従事率6 , 自 営 業 率15 9 ,2 通 学 率14 , 家族従事者2 5 6 そ の 他16,8 , 雇 用 者 率5 8 ,O. 口における割合. D, 未 婚. 率 E. 有 配 偶 率 F, 死・離別率. 97. 9 71 ,7 18 ,1 7 ,2 5 .8 4 ,7. 1 .8 27 ,7 4 80 , 4 90, 8 9. 6 84, 9. 0,2 0,6 1.6 2 ,9 4 .6 10,4. 2,4. 71 2 .. 2 6,5. 1 .5. 52.8. 45 ,8. 1 .I 1 ,O. 26, 9 7, 6. 72 ,O 91.4. 配偶関係別雇用 率(C, の内訳) 未 婚50, 8 有 配 偶21 4 , 死 ・,離 別20, 4. (総理府 「労働力調査」 より抜すい) 65.

(11) . 関谷嵐子:日本における婦人労働者 ~39才, 55~64才 層 が45% 前 後, そ の 他 は60% 前 後 に 上 る. 労 働 力 率 の 平 均 は48,3% で, 婦 人層 の. 約半数 が労働力化している. 第三, 25~34才層では非労働力率 がたかく, これはあきらかに有配偶化 ・家事従事化を物語っている. 第四, 労働市場への流入者 (;雇用率) は2 0~24才層 で最大であり, それに対し25才層以上は大きくおちこんでいる. 前稿第2報におけるA型労働者群の 多数的存在と,. 既婚者比率の たかい B・C型労働者群の, 少数ながら無視できない比重が指摘されるわけである. 第五. 25~39才層の雇用率の減少は労働力率の減少をさらに下まわっている. この時期の労働力化状態は, 自営業化と家族従事者化なかんずく後者の形をとると考えてよい. ここには内職もふくまれる. す なわち, 居宅的な労働力化である. 第六, 従来にくらべ40~54才層の雇用率 が拡大しており C型労. 働者群の拡大があきらかである. 成人女子は代表的には, 既婚状態にある ( 1970年国調によれば有配偶率は60 .3%である) 。労働市 場の滞留者に未婚者と, 夫との死・離別者が多く 偏っ ている こ と を 念頭 に お い て も, 現 在 で は, 婦 人 労. 働者のかなり多くが 贈りを担いつつ, 賃労働者化 してぃることがあきらか , 既婚状態において家庭管理役 である. したがっ てこの場合, 家庭管理に関する労働の軽減化とそれにともなう余暇の成立とその 転用 形態を問題とする中で, 賃労働者化傾向を指摘することが必要 である. 既婚婦人層の余暇の転用に関する行動として次の分類が可能であろう. a. 収入労働化 (家業従事化・内職化・臨時的雇用化・恒常的雇用化) b. 家事労働化 (家事労働の延長や質の向上・趣味的家事の追加) C. 育 児・教育の密度化 (過保護・教育 ママ化). d. 自己の再教育化 (社会教育への参加・再訓練など) e. 社会活動化 (PTAや市民運動 への参加, 社会諸施設へのサービスなど). f. 教養 ・ 娯 楽 ・ レク リ ェ ー シ ョ ン化 (婦 人教 室 ・ サ ー ク ル ・ レ ジ ャ ー 施 設 利用・テレ ビな ど). g. 交際化 (井戸端会議から社交的外出ま で) h. 休養化 (労働の長さと強度によっ て休養 が余暇時間にくいこむ. ごろね・ひろねなど,) i , 無為化 (ぶらぶら・退屈). 以 上 の 諸行 動 は, 実 際 に は 分 ち がた く 関 連 し あ っ て い る が, い ず れ が 中 心 と な る か は 基 本 的 に ,. は, 家庭経済要因 (収 入の大きさと支出の大きさ・およ び余暇行動に 充当 しうる支出金額の幅) に よって決定される. そ して, 生活時間要因と, 家庭管理役割の補助者や代替 者の存在や家事労働 の 社会化の可能性と, 育児サー ビスの供給の存在如何とによっ て行動のタイ プが具体化される . ・ 余暇の収入労働化は , 広義における追加所得志向によっ て具体化する. 広義の, とは, 収入労働 化のなかには, 自営業世帯の婦人層の家業従事量の拡大要請をふく むからであり, 全てが雇用化を. いみするわけではない. ただし, 若干人数の雇用 が可能である自営業上層部 (=零細経営層と同意 語にちかい) では, 妻の家業従事は, 労働力不足状態の場合のほかは, 減少的であると考えてよい.. 婦人層の賃労働者化・雇用化 は, あき らかに賃労働者世帯型の所得志向をいみするもの である. 多 くの場合, それは主稼得役割と してではなく追加所得獲得の役割をもって実行に移される. 第10表 によれば妻の収入割合は実収入のうちの 5 .7%であっ た. 生活時間要因とは, すなわち, 時間量と時間帯における余暇の成立状況のことである. 家庭管理 役割の代替者の存在の有無という要因は, 今日のように家事の設備化が一般的となり消費物資の商. 品経済的供給も微に入り細にう がっ ておこなわれている場合には, さ して決定的ではない. むしろ, 決定的であるのは, 育児サー ビス要因 である. 育児サービスの供給は, 近親者の労働の提供か, 保 育所な ど社会的育 児サー ビスの機会の提供, の形でおこなわれる. とくに保育所サー ビスが欠けて いる場合, 既婚婦人層の労働市場への対応はきわめて困難 である. 核家族的賃労働者世帯では, 内 66.

(12) . 関 谷嵐 子: 日本 にお ける婦 人労 働 者. 職化か, 追加所得を渇望 しつつも消費生活ニー ドを抑圧 して貧困のうちにその日々 をすごすか, の 形態をとらざるをえない.. 家庭管理者が賃労働化する場合, 空間的に家庭管理の場所をはなれた生活時間構造をもつことに なるので, 当然のことながら, 世帯の消費生活の形態はことなってくる. それは, 消費支出の増大 と, 消費生活の質の低下の可能性, という形で現象する. 消費支出の増大は, 家事労働の省略のた. めの商品経済的代替費用と, 育児サービスのコスト (保育費用) と, みずからの賃労働者化にとも なういわゆる職業的費用 (通勤着購入・職業能力開発費用など) である. したがって, 経済学的に. は, 既婚婦人層が賃労働者化する際の供給条件は, これらの支出を上まわっ た需要価格 (賃金) が 存在するとき, 具体化されるはずである.. ところで, 余暇の転用は, さまざまの転用内容や転用意識の 複合された形態で成立しており, 収入 労働化の場合もまたその例外ではない. そこ で, 就労化状況をあきらかとするために, 婦人労働者 調 査 で は しば し ば, 就 労 動 機 の 分 類 をお こ な っ て い る. 第13表 で は, プラ ス ア ル フ ァ 的 な 追 加 所 得. 志向が明白に物語られている. 高学歴婦人層の場合には, いわゆる意識的高度性の自讃を示すよう ) いずれも 男性の就労動機といちじるしく 異質的であるといえよう な表現が目立つこともあるチ , . しか しこれらの就労動機を並列的に指摘するのでは, 分析視角としては不 充分であっ て, いうまで もなく, 経済的要因がその基底におかれているとみることが必要である. (注11) 参照) この点へ の反省は婦人労働者研究においてつねに留意する必要のある 点 であ る. 第13表. 就労動機事例 (延%). 計 生活を支えている 生活費のた しにする 買いたいもの がある. 住宅の修理・購入. 有. 29,7. 19.6. 12.O. 11.O 13.8. 54.2 9,5. 子 どもの学資にす る 老後のための 貯金 旅行・レジャ ー等の ため 自分のこずかいにする 仕事 がおも しろい 知 識や 技能がいかせる. 21,7 13.O. うちにこもっ ていたく ない 他 そ の. 19.I. 一度やめると再就職困難. 夫. 5.4 7.9 7,6 7,5 4.8. 3,2. 離. 62,5. 23,6 13,2 6.O 8.8 8.5 8.3 5.2. 21,7 3,4. 別. 死. 78.O 14.9 6,6 1.7 19.6 13,4 4.1. 別 80,1 13.7 1.2 4.1. 8,I 11,5. 4,3 4.6. 1,7 3.I 3,I. 6.2 1.3. 5.7 2.6. 3,O 3,5. 2.4 2.4. (労働 省婦少局 「既婚女子労働 者に関する調査」 1966年, P,54). 以上の叙述は要するに, 婦人層の賃労働者化は, その属する社会階層と生活周期との線上におい て, 具体的な形をとるものと理解してよい. 就労に際しての, 職務内容や, 賃金率や, 労働時間制. 度や, その他の労働条件における選択も, 売る べき労働力の質 (学歴・能力・資格・経験・モラー ル な ど) も, そ の 属 す る 世帯 の 生 活 構 造 を 念 頭 に お い て 解 明 でき る こ と が ら であ る ,. 婦人労働者類型の 把握は, 以上のような, 生活構造枠組みにもとずいて具体的に展開されること. と な る. いく つ か の 労 働 者群 を 追 っ て ゆく の が, 以 下 の 課 題 であ る .. 〈註〉 「 1) 篭山京 「生活経営学」(光生館,196 8 )pp 1-7 4 9 75)pp .14 . 拙書 (共著) 家族関係論」(ミネルヴァ書房, 1 ,3 -16 .. 67.

(13) . 関谷嵐子:日本における婦人労働者 1) にみられるように,「生活構造」 概念は社会学者においては, 社会的公 2) 松原治郎他 「生活構造」(有斐閣, 1 97 的基盤 (都市環境・公害・生活の公的サービスレベルなど) をひろくふくめ外延的包括的に把握されている. 一 方, 経済学における 「生活構造」 の語の使用は--かならずしも定着した内容をもっとはいえないが--, 消費 「 生活を中心とする労働力再生産構造の分析の, 論理的フレームとしての限定をもつ.op i t . ,篭山 生活経営学」 . 「 「篭山京教授還暦記念論文集・社会福祉と生活構造」(光生館, 1 藤本武先生還暦記念論文集・現代日本の 970) , 労働者」 4) における中鉢正美氏の諸論など. (日本評論社, 1 9 7 3) いわゆる婦 人層 概念について は, 以前に若 干の問題提起をおこな っ たことがある, 拙 書 (共著) 「余 9 70) 第V章参照. 本稿はその続論の一つとなる. 暇と労働時間」 (日本労働協会, 1 4) 大河内一男・篭山京 「家庭経済学」(光生館,19 70年増補) 第二章, 参照. 「 「賃 金」(ダイ ヤモ ン ド社 1966) pp 144-148 小 池和 男 5)o t . p i . , . ,篭 山 生 活 経営学」 . 973) など. 6) 森岡清美 「家族周期」(培風館, 1 2 96 9改訂版)pp 7) 篭山京編 「新家庭管理学」(光生館, 1 . 37一4 . 「 第一章参照 収入労働の社会的性格を軸にし て考えると, 家業継承の機能をふくむ自営業 8) op i 拙著 家族関係論 t 」 . . , 世帯の場合には系譜家族形態が, 家族ではなく個人の労働力販売が世帯維持の役割を果す賃労働者世帯では夫婦 と未婚の子供で形成される核家族形態が, それぞれ論理的対応関係をもつ. したがって近代社会的典型家族とは 賃労働者的核家族を論理的にも実態的にも意味する. 「 9 71) は, 近 9 70) 9) 中鉢正美編 「家族周期と児童養育費」(至誠堂,1 , 同氏編 家族周期と家計構造」(至誠堂,1 年のすぐれた実証的研究として得るところが多い. 968) 1 0) 国民生活研究所 「世帯変動と生活構造」(東洋経済新報社, 1 , 11) 何故このようなことをあらためて付記するかというと, 従来, 婦人労働者の就労意識調査が官民をとゎず数多 く おこ なわ れてきて い る が, そ こ に お け る 「意 識」 の と らえ方 が, 往々, 粗 雑 に す ぎる き らい があ る か ら であ る.. 「生活のために」 という回答は経済的な絶対的必要性にまで昇華してとらえることが意図されたり 「社会の役に , 立ちたい」 などの回答は就労意識の高級性として把握されるなどである. いずれも, 直接的な価値判断的性格が 内 在 して おり, 私の 採 り がた いと こ ろ であ る.. 「 12)op i t .c , 拙著 余暇と労働時間」 参照. 「 96 ) は, 私の 6 女子労働者生活の時間的構造 13) 氏原正治郎 」(同氏 「日本労働問題研究」 第四章, 東大出版会, 1 )参照) 知るかぎりこの領域における最もすぐれた論稿である. (第1報の注8 。 14) 第2報の注4 7) を補完する意味で指摘すれば, 家事労働はつぎの特質をもっている. ①経済学的意味における 無償労働--その生産物が市場の交換過程を経ないで最終的に消費されるから. ②家事労働の生産量は世帯員の 消費量に限定される--すなわち生産量が利潤追及のために外延的に拡大する性格をもたない. 世帯員数が多かっ たり家族構成が複雑で消費ニードの量と質が多く多様だと家事労働の総量は大きくなる. ③家事労働の能率は, 労働手段の水準 (電化製品の普及状態など) と消費物資の調達条件 (商品経済化の度合いなど) によって決定さ れる--すなわち必要生産量が同一の場合, 労働時間の短かい方が, 労働能率はたかい, また, 必要生産量の生 産に際して, 費消される経済的支出・物材・労働時間がそれぞれすくないほど, 家事労働は合理的であるといえ る. 戦後の傾向はとりわけ, 家事労働時間の短縮化に集約されていることが指摘される. 61) 15) 民主教育協会 「女子の高等教育と職業および家庭の問題」(同会, 19 後 記 本稿は, 昭和45・4 6・4 7年度文部省科学研究費による特定研究 「産業構造の変革とそれに伴なう諸問題」 中の研究 課題 「産業構造の変革に伴なう労働者生活の構造変化とその展望」(生活構造研究会による) の, 成果の一部である. (本 学教 授・ 札 幌分校). 68.

(14)

参照

関連したドキュメント

[r]

4 アパレル 中国 NGO及び 労働組合 労働時間の長さ、賃金、作業場の環境に関して指摘あり 是正措置に合意. 5 鉄鋼 カナダ 労働組合

問2-2 貸出⼯具の充実度 問3 作業場所の安全性について 問4 救急医療室(ER)の

[r]

の主として労働制的な分配の手段となった。それは資本における財産権を弱め,ほとん

⑥法律にもとづき労働規律違反者にたいし︑低賃金労働ヘ

先行事例として、ニューヨークとパリでは既に Loop

労働者の主体性を回復する, あるいは客体的地位から主体的地位へ労働者を