小学校「英会話学習」の指導法 : TPRとジャズ・チャンツの考察
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(2) . 平成 1 3年 9 月. 北海道教育大学紀要 (教育科学編) 第52巻 第1号. SePtem ber ー , 2001. l i iぢofEduca t l直mdoUDiver Jou on (Bduca恒on) uo s ln鑓 ofHo .1 .52 , No. 小学校 「英会話学習」 の指導法-TPRとジャズ・チャンツの考察. 横山. 吉樹・額田さや か・紅露. 由佳. 北海道教育大学岩見沢校英語教育研究室. 1. は じめ に. 幼児.児童を対象とした英語教育は, 以前から私立学校や英語塾な どで行われてきたが, 公立の小学校へ 2年に文部省が各都道府県に研究開発指定校を設けたことから始まった. 全国各地の研究開発 の導入は, 199 指定校では, 英会話学習を始めた時に生じる問題を検討するための実験的試行が行われ, その成果が報告さ れた. 平成9年11月の教育課程審議会の中間報告を経て, 2000年6月30日 「英語指導方法等改善に関する懇 談会の審議会経過報告」(以下経過報告) で小学校の 「英会話学習」 が具体的に提言され, 学習指導要領の 3年1月25日に, 文部科学省 は21世紀教育 改訂を目前に控えた昨今, 多くの注目を集めている. また, 平成1 新生プランが発表され, IT教育とともに小学校の英語教育の推進が調われている. 「共同通信」 平成1 2年6月30日, 「西日本新聞」 朝刊 マスコミや新聞は, それに対して賛否両論 を挙げ( 同年7月1日) ている‐ また, 小学校への英語教育の導入は, 幼児や児童の英語学習の隆盛にも及 び, 各地 「読売新聞」 平成1 2年7月24日) の幼児.児童コースが次々と新設されたり( , 幼児を対象にした私立のイン 「共同通信」 平成1 2年5月22日) している‐ さらに, 首都圏の私立 ターナショナルスクールに志願者が殺到( 「朝日新聞」 夕刊 平成1 3年1月30 中学校では英語を選択ではあるが受験科目に取り入れる動きが目立つ( 日)-. しかしながら, 「英会話学習」 導入への最大の課題は, 小学生に適した指導法の研究と確立 である. 言語 教育を他の教科と同様な方法で指導して良いのか, 小学生に教える指導法と して適したものは何かな どの課 題がまず挙げられる. また, 小学校の教師は, 英語の指導法を体系的に学んだこ とも 教 えた経験もない た め, 「英会話学習」 の指導者をいかにして育成していく かという 課題も抱えている. このような指導法と指 導者の養成について経過報告を抜粋する と, 小 学 校段 階にふ さ わ しい 活動 と しては, 歌, ゲーム, 簡単 なあ い さつ やス キ ッ ト, ごっ こ遊 びな ど音. 声を使っ た体験的な活動などが考えられ, 「英語はおもしろいという動機付けを促す」 ことが肝要であ る‐ また, 学習が進んでいくに従い, 歌や遊 びだけでは不十分で, 学習の段階に応じた指導を考えるこ とが重要であるとの指摘もなされている. 現在, 文部省では 「小学校英語活動実践の手引」 を作成して いるが, 今後とも, 文部省や都道府県教育委員会においては, 英会話学習の内容や指導方法, 教材の作 成 な どにつ い ての 情 報提 供 を的確 に行 っ てい く こ と が求め ら れる.. 指導者の研修をはじめとした支援策について, 今後積極的に検討する必要がある‐ 小学校において英 会話学習を実施する場合には, 通常, 小学校教員が担当することとなるが, これらの教員の研修が重要 になる. 前述の文部省の 「小学校英語活動実践の手引」 に基づく研修の実施を検討する必要がある. ま 77.
(3) . 横山 吉樹・額田さやか・紅露. 由佳. た, 教員の海外派遣や, 日本人学校等の在外教育施設への派遣なども研修機会として生かすとともに , そうした海外経験を有する教員の活用を積極的に図ることも必要である. 経過報告には, 「歌, ゲーム, 簡単なあいさつやスキッ ト, ごっ こ遊びなど音声を使っ た体験的な活動」 などの言語活動の概要が列挙されるだけで, 具体的な指導法についての言及がない. 「学習の段階に応じた 指導を考えること」 としているが, どの段階の児童にはどのような指導法が良いのか明示されるわけでもな い. また, 「小学校英語活動実践の手引」 についてはまだ発行されておらず, そこから具体的な指導法に関 して示唆を受けることができないし, 小学校教師に対しても体系的な研修がなされているわけではない. こ のように実施を数年後に控えて, 新しい試みが始まるという のに, 具体的な指針や示唆に乏しく, 明確な見 通しが与えられていないのが現状である. 本論では, 特に小学校 「英会話学習」 の指導法について, 英語教授法の観点から考察していき, その指導 にあ たる教師に有益な示唆を与えるものとする. 「英会話学習」 の指導法については, 「体験目標主義」 や 「遊び主義」 が提唱され, ジェスチャーゲームなどの英語遊びやマザーグースのようなリ ズム感あふれる英 語の童謡などがその具体例として挙げられている (長瀬 20 3 ) 00 野上 198 . しかしながら, 英語教授法に は ,. 文法訳読式教授法からタスクを重視した教授法 (Ta bas ) ま で様々 あ り (田 ‐ chlog sk ed Lそmgt 1age Tea. ) 崎1 995 , その歴史と学問的背景を無視して論ずることはできない. 英語教授法には, ジェスチャ ゲームな どの言語を身体表現する教授法としてはTPR (To t副 PhysicaI Response) があ り, 英 語の 歌やリ ズ ム を重 視した指導法と してはジャズ・チャ ンツがある. 本論では, 英語教授法として広く行われている TPR と ジャズ.チャ ンツを取り上げ, それらが早期英語教育 (特に小学校低学年) の発達段階に応じた指導法とし て有効であるのかを考察する. また, TPR とジャズ.チャ ンツを実践する際の学習の段階に応じた指導法 と して, 発話を強制するべきなのか, リ ズムを意識させるべきなのかという点を 実践で得たデータに基づ , いて 考 察 して いく.. 2. 児童の発達段階に応じた教授法 ここでは, まず英語教授法として幅広く実践されているTPR とジャズ・チ ャンツ を簡単に紹介し, それ ら二つの教授法が小学校低学年の児童の発達段階に適していることを考察する. 2. 1. TPR. TPR (To I Phys i ta c副. Response ) は, 山きher に よ っ て 考 案 さ れ, 幼 児 の 第1 言 語 習 得 方 法 をモ デル と. し, 命令を聞いて全身で反応する身体的な活動 (mo ) を通して言語を学ぶ教授法である (Ri t ・d o r ch そ 繋d s aI Rodgers l ). 音声言語を動作を用いて表現することで学習事項の定着が良く, 話すことを強制しないの 9 86 でそれに伴う不安や抑制を減らす効果があるとされる. 身体的な活動と言語活動を結びつけそれを反復することは, 心理学のt heoけ に基 づき, 記憶を呼 ra c e t び戻 すの に効 果 がある とさ れる (Ri dRodger ). ま た, TPR は, theSi l ch細dsを 紅・ s l986 entWa% CLL,そし て Sugges i toped a と 同様 に, ヒ ュ ー マ ニス ティ ッ ク ア プロ ー チ と いう 指 導 法 に 区 分 さ れる. こ れ は, 言 語. 学習には情緒的な要素が大きく関わり, 学習を阻害する心的ストレスを減少させたり解消したりすることを 重視する指導理念を持つものである. TPRで行われるゲーム性の高い身体的動作と, 次に示される聴解を 口頭練習に優先させるという指導理念が, 心的なストレスを減少させるのに役立つとされる‐ ① 理解 (能力) は, 言語学習においては, 発話能力に先立つ. ② 78. ス ピ ー キ ン グは, 理解す るス キ ル が 確 立 する ま で遅 延す る‐.
(4) . 小学校 「英会話学習」 の指導法-TPR とジャズ・チャンツの考察. ③. リ ス ニ ン グで獲得 さ れたス キ ル は他 のス キ ル に転 移す る.. ④. ) よりも意味を重視して教える. 形 (免I ln (Ri ) 86:87 ch-江ds…江ld Rodgers l9. TPR で発話を遅らせる と いう 指 導 理念 は, Krashen のイ ン プ ッ ト理 論 (Krashen l985) でも 情 意 フィ ル l ldTerre タ ー を 下 げる 役割 を 果 たす と して 強調 さ れ, そ の 理 論 を用 い た ナ チ ュ ラ ルア プロー チ (Krashen a1. ) に も TPR が多く用 い ら れて いる. l983 ) は, TPR の指 導手 順 (庄きher l977 ①. ) に対 して 素 早く 反応 する‐ 復 習 と して, 個々 の 学習 者 が命 令 ( comma 1 ・d. ②. 新しい動詞が導入され, 既知の名詞 (句) と組み合わされ命令文とされる. 教師は, 命令 を発し, 自らその動作をする‐ 学習者全員 が理解するまで数回繰り返す (この段階で. ③. は, 学習者が動作することを求められない) - ④ 教師が命令や疑問文を発し, 学習者がその動作をするよう求められる‐ ⑤. 教師と学習者の役割 が交替し, 学習者は自発的に命令を発話 し, その動作 を教師や他の学習者がす る‐. 2. 2. ジ ャ ズ ・チ ャ ン ツ. 英語の歌を取り入れる という指導方法は英語教育では多く用いられ, 学習者の不安や抑制を減らすのに効 果 的 であ る と 言 わ れる. ジ ャ ズ で は, テ ンポと ビー トの 組 み合 わせ が感 情 を表 現 する 手段 と して使 わ れてい. るよう に, 言語においてもイントネーション・強勢・リ ズムが感情や意図を表現するのに重要な役割を果た す‐ ジ ャ ズ ・ チ ャ ン ツ は, そ の よう な利 点 を生 か し, 英 語 のイ ン トネ ー シ ョ ン・ 強勢 ・リ ズ ム に 絞 っ て英 語 l a山 皿 で, 現代 の アメ リ カ ロ 語表 の音 声 指 導 が で きる よう に考 案 さ れたも の である‐ 提唱 者 は Car o yn Gr. 現をユーモアあふれる場面設定や状況の中で自然なイントネーショ ンやリ ズムで表現するように練習するも ). の である (田 崎 1995 ) は, 多く の面 で現 在 のコミ ュ ニケ ー シ ョ ン重 視 の風潮 オ ー ディ オリ ン ガル 方 式 (Aud i l i thod o ngU L司 Me in a1 に は 合わな い が (Cmta 99 4 ) ・d pesola l , 言語学習の過程から, 反復練習 を全く取り除いてしまうこと. はできない‐ ジャズ.チャンツは, 機械的で退屈な反復練習をリ ズムに合わせて情感に訴える方法へと転化 99 ) させ, 母国語話者の自然な音声言語の習得に効果的である (田崎 1 5 . また, 単に意味を介さない反復練 習に終わらせないため, 場面を設定しその中で日常生活で使われる対話表現を練習するよう に工夫されてい る.. ジ ャ ズ . チ ャ ン ツの 指 導 手順 は,. ①. 教師はチャ ンツが行われる対話場面を, 母語または易しい英語で描写する. また, チャ ンツの中の難 しい語藁・表現や文化的な背景に説明を加える.. ②. 通常の速度とイントネーショ ンで一行ずつ発話し, それを学習者が一行ごとに数回反復する‐ この段 階では, 教師は, 学習者の発音やイントネーションが不適切であると判断した場合は, 練習を止めその. 都度訂正をする‐ ③ 手拍子や拍子棒などを用いて英語の拍子を意識させながら, 前段階と同様の反復練習をする‐ ④. ク ラス を ほ ぼ同 じ人 数の2 つ の グルー プに分 ける. 教 師 が第 1行 を通 常 の 速度 とイ ン トネー シ ョ ンで. 発話し, 一つのグループがそれを繰り返す. 第2行は, 教師の後に続いてもう一方のグループが繰り返 す.. ⑤. 教 師が第 1 行 を発 話 し, ク ラス が第2 行 を発 話 して応 答 する‐ こ れ によ っ て, 教 師の モ デルな しに, 79.
(5) . 横山 吉樹・額田さやか・紅露. 由佳. 学習者は教師に応答する形で対話することになる. (Gra中am. l9 8 ) 3. ま た, ジ ャ ズ ・チ ャ ン ツ で英 語のリ ズ ム を意 識 す る こ と は, 音 節 拍 リ ズ ム ( t synabl e-s res sed rh :“超鴎). を母語とする日本人学習者が, 英語などの強勢拍リ ズム (s償ess一錠med rh :“超P) を 習 得 する の に効 果 的 であると言えるし, リ ズム能力の発達は聴解力に大きく貢献するとも言える (新井 19 87 ) .. 3.. 小学校低学年児童の発達段階. 次に小学校低学年の児童の発達段階を考察し, それに相応しい 「英会話学習」 の指導法を考察していくこ とにする. 小学校低学年は, 認知と情緒の発達段階の前操作思考期から具体的操作期へと移行する段階であ る (Piage 9 63 tl ) . つまり, 論理的思考能力を発達させていく初期にあたり, 新しい概念を理解するために は具体的な経験が必要である. このことが, 小学校で 「英会話学習」 をする 際に, 「体験学習」 の要素が必 要である と言われる所以である. 表1. コミュニケーション活動における場面依存度と認知力の必要度. 認知力必要度 小. .. A TP R による 指 導. 電話での会話. 実物や絵による提示 美術・音楽・体育. 冷蔵庫に貼ったメモ 文字による指示 (図や実例はない). B. 簡 単 な ゲーム. 場面依存度 大. 場面依存度 小. C. 教科書の内容の説明 算数の文章題 (絵はない). 算数の計算 理科の実験. 社会科の研究課題 (地図作製など) 大 認知力 必 要度. (Cal節orPia State Depa可ヒmentofEducat b ion,Bi ingu ion o伍ce l 9 84 ) Lm Educat. それでは, そのような発達段階に適した活動にはどのようなものがあるのかを考察することにする.Cmn - 81 ) は, 言語能力は場面依存度の程度と認知的な処理能力によっ て測られる と した. 表1は, そ 皿i ps ( 19 の理論に基づいて, 場面依存度と学習者の認知能力の観点からカリキュラムにおける分野を分類したもので ある. 初期の段階では, 言語活動が場面に多く依存し, ことばそのものを理解できなくても意味を把握しや すく, 具体的で単純なものが良いと言える. そういう観点からすると, TPRや音楽を用いた活動 は表1の Aの象限に所属し, 小学校低学年の導入期には適していると言える. カナダの教育学者Eg 2 199 ) は, 4, 5歳から9, 1 0歳の子供を神話的な段階とし, その特性を感情 z 1 n( 的, 道徳的とした. その時期の子供の特徴は, 感情的な特性が優先され, 学習している事柄が何であれ, そ. の感覚的な捉え方を知りたがる. また, 道徳的な特性 (善悪) や感情的な特性 (喜怒哀楽) が体験を理解す るために使われるとした. そのため, 小学校低学年は, 大きな声で発表したり, 体を動かして表現すること に抵抗が少ないと言われる. 7, 8歳位までは右脳の働きが活発で, 全体的に物事を捉える能力が高く, 初 80.
(6) . 小学校 「英会話学習」 の指導法-TPR とジャ ズ・チャンツの考察. 期 の 段 階 で は 決ま り文句 (加 虹1 i i l bmore l )‐ また, 感覚 97 9 a ce ress on) を 固 ま り と して習 得 す る (Fi ul 1 q ). 運動野が活発で, リ ズム感覚や運動を通して物事を捉え記憶するし, 楽しいとかおもしろいといっ た感情的 な深 さ ( l depth) を持った経験は永久記憶されることが多い ( i t St i emo ona v ck l982). TPR や ジ ャ ズ ・ e チャンツ は, リ ズム感覚や運動動作 という右脳の働きを活発にして, ことばを固まりとして認知し記憶して いく方法として, 小学校低学年の児童には適していると考えられる. 4.. 小学校低学年児童への TPRとジャズ・チャンツの実践. それでは, TPRやジャズ.チャ ンツ という指導法が小学校低学年の児童に どのような効果を上げるのか を 考 察 して いく こ と にす る. そ の 際 に TPR で は 発 話 を 遅 ら せる と いう 要 素 ジ ャ ズ ・ チ ャ ンツ で は 手 拍 , ,. 子な どで英語のリ ズムを意識させるという要素がどのように有効に働くのかを検証していく‐ 4. 1. TPR の実 践. 英語を学習したことがない小学校低学年(1年生から3年生)9名を2つのグループに分け, 約30分のTPR の授業を児童会館で3週にわたって計5回行っ た. A グループ (4名) は発話を強制せず, B グループ (5 名) は発話を強制する指導方法 (教師の命令を口頭で繰り返し行動するように指示) を用いた. TPRのLe s - sonl で用 い ら れた 命令文 を例 と して挙 げる と, 1. VV i a lktothep鑓 k‐ 2. Readabookin Lthel ibragy . 3. Po i ヱ l ttothe gy 1n. 4. S桜etchyourbodyatthegy IP. 5. Turn 割roundin Ltheb印r bershoP.. 授業は, 模造紙などを用いて公園や図書館 とわかるようなセッ トを設けてある部屋を用いて行われた 命 . 令文に用いられる名詞 (句) を簡易な英語で実物を用いて説明し, 動詞は教師自らその動作をすることで理 解 さ せ る よう に した. そ の 後 で, Waukt othep i 紅kという命令文として. , 教師が発話しその テ動をすること でその意味を理解させた. それぞれの文を学習者全員が理解するまで数回繰り返した (この段階では 被験 , 者が動作することを求められない) 次に 教師が命令を発し ( 教師は行動しない ) . , , 被験者だけがその動作 をするよう求めた (この段 階で, B グループのみ発話するように指示) . 最後に, 命令文の提示の順序を変 え, ほぼ全ての被験者が英語の命令と行動が一致するように数回繰り返した ‐ 授 業 の 後 に, 両 グルー プに対 して 同 一 の聴 解力 テス トとス ピー キ ン グテス トを行 っ た 聴 解力 テス トは . ,. 教師が命令文を英語で発話し, 被験者がその動作をする‐ ス ピーキングテストは 教師が動作をし 被験者 , , がそれに対応する英語を発話する. 聴解力テストとス ピーキングテストは各回とも同じ命令文を用いるが , 出題順序は異なるよう にした. 両テス ト10問の命令文から構成され そのうち5問は授業で使用したもの , , 残りの5問は授業で用いた命令文と全く同じではないが組み合わせを変えたもの (例. 授業で用いた2つの. 命令文の動詞部分を交換して作成したもの) を用いた‐ 4. 2.. TPR の 実 践 結 果. 表2は, 聴解力テストとス ピーキングテスト全5回の平均正答率を表したものである‐ 両グループとも , ス ピーキングテストより聴解力テストの方がかなり高く, 小学校低学年では, 聴解力は発話能力に先立つと いう結果 と な っ た. こ れは, 前 に述 べ た Asher の 指 導 理 念や Krashen の 理 論 が予 測 する と お り, 第 1言 語 81.
(7) . 横山 吉樹・額田さやか・紅露. 由佳. 習得での言語発達とほぼ同じであることを意味する. しかしながら, B グループで行われた発話を強制する 指導方法に関しては, 聴解力テストとス ピーキングテストともに負の役割を果たしていない結果となった. こ れ に よ り, TPR の 理 念 の 一 つ であ る 「ス ピ ー キ ン グは, 理 解 す るス キ ル が確 立 す る ま で 遅 延 す る」 と い. う指導法は, 今回の被験者である小学校低学年児童には必ずしもあてはまらないことになる. また, 発話す ることが心的なストレスを高め言語習得の障害となることも, 小学校低学年児童にはあてはまらない可能性 を示 唆 している.. 表2 聴解力テストとス ピーキングテストの平均正答率:全体 テ ス 聴. ト の 種 類. 解 力. テ ス. グ ル ー プの 種 類. 正 答 率. A. 84%. B. 91%. A. 32%. B. 40%. ト. ス ピー キ ン グテス ト. それではTPR指導する際に どのようなところに留意すべきであるのかを考えてみたい. 表3は, テス ト in) と3 文型 (例 Pi tonthetra で用いられた命令文を1文型 (例 Ge ckupthe 皿 並) に 分類 し, そ の平. 均正答率を表したものである. 両グループとも, 1文型の方 が3文型よりも正答率がよく, 聴解力テストで もス ピ ー キ ン グテス トでも そ の結 果 は変 わ らない. この こ と か ら, 小 学 校低 学年 児童 にお い て は, 聴解力,. 発話能力 ともに統語上の複雑さの低い文が習得し易いと言える. 表3 テ ス. 聴解力テストとス ピーキングテス トの平均正答率:文型別 ト の. 聴 解 力. 種 類. テ ス. ト. ス ピー キ ン グテス ト. 4. 3.. グ ル ー プの 種 類. 1 文 型. 3 文 型. A. 86%. 82%. B. 92%. 89%. A. 42%. 12%. B. 57%. 23%. ジ ャ ズ ・ チ ャ ンツの 実践. 2名, B グループ11名) に分 英語を学習したことがない小学校1年生23名を2つのグループ (A グループ1 け, 約20分の授業を週2回計4回行った. 授業は毎回, 両グループとも, その授業で用いられる新出語を ピ クチャーカー ドを用いて示し, 次に6つの文を口頭で提示 し, それぞれの文の意味を表す絵を用いて平易な 英語で説明する‐ 6つ の文 は, 質 問 とそ の答 え と いう よう に対 話 形式 にな っ てお り, レ ッ ス ン毎 に一つ の 場 面 が設定 さ れている. ま た, テ ー プは, ネイ ティ ブス ピ ーカ ー によ っ て 吹 き込ま れ, ス ピー ド, イ ン トネー. ショ ン, 英語のリ ズムが自然であるように留意して作成さ れた‐ レッスン1では次のような対話文が用いら れた. i A: Whatt t? ・ n lei si > フ B:lt s noon.ltstねぬet。ha▽elunch・. A: Whatttロロeisi t? B:1ぎs nine‐1 『stimet ogotobed.. (ボ ー ル ド箇 所 は文 強 勢 を示 す). 文のそれぞれの意味を理解した後で, テープを被験者に聞かせる‐ A グループでは, 教師が文強勢と英語 82.
(8) . 小学校 「英会話学習」 の指導法-TPR とジャズ・チャンツの考察. のリ ズムを明示するため手拍子を用いて数回テープを聞かせ, その後被験者も手拍子をしながら数回繰り返 す 練習 をする‐ しか しな がら, B グループでは, テープを再生する際に, 教師は手拍子はせず 被験者が繰 ,. り返すときも手拍子をするように指示はしない. i ion Te 被 験 者 に は, 再 生 テス ト (Sentence Repet t ) を, ジ ャ ズ ・ チ ャ ンツ 実 践前 (Pre t ) と全 ての tes t s ) に行 っ た. 両 テス トは文 の順 番 が違う が 同 じも の で, レ ッ ス ン1 か ら レ ッ ス 授業が終了した後 (Post t t es. ン4で使用されたものから, 拍子に偏りがないように10文が選ばれた‐ 被験者は, それをテープの後に続い て 繰り 返 し, テ ー プ レコー ダー に 録音 した. 録音 さ れ た発 話 は そ れ ぞれ, 文の 再 生 文 強 勢 音 の 連結(巨a i - , , son) を 基準 に して 評価 さ れ た.. 4. 4 ジ ャ ズ ・ チ ャ ンツ の実 践 結果. 結果は, 表4と表6に示されるように, 文再生と音の連結において, 両グループともある程度の正答率の 上昇が見られる. 小学校低学年児童は, リ ズムのある英語を習得し, なおかつそこに含まれる音の連結を学 習するこ とが困難ではないことがわかる. しかしながら, 文強勢を正確に再生できるかという点 に関して は, 英 語 の拍 子 を意 識 させ た A グルー プで は 授 業 を 終え た 後 のテス ト (Pos ) の 方 が正 答 率 は 下 が っ t t t es ,. てしまっている (表5) ‐ また, A グループは, B グループよりも文の再生や音の連結に関しても大きな効 果 を上 げてい な い‐ こ れは, ジ ャ ズ . チ ャ ン ツ を用 い て指 導する と き に, 小 学 校低 学 年児 童 にお い ては リ ,. ズムを意識させることが必ずしも効果的に作用 しないことを表している . 表4. 文再生の平均正答率. グルー プの 種類. Pretest Posttest. Aグループ. 47%. 53%. B グルー プ. 34%. 58%. 表5. 文強勢の平均正答率. グ ル ー プの 種 類. Pretest Posttest. Aグループ. 63%. 59%. Bク ループ. 46%. 55%. 表6. 音の連結の平均正答率. グ ル ー プの 種 類. Pretest Posttest. Aグループ. 31%. 46%. Bクループ. 27%. 39%. 4. 5 実践結果の考察 小学校低学年に対しは, TPR もジャズ・チャ ンツも一定の成 果を上げた. 「小学校低学年の児童に対して 英語を教えても効果があるのか」 や 「音声のみで外国語である英語を教えられるのか」 といっ た疑問に対し ては, どちらの教授法も肯定的な評価が得られるものである. アンケー ト調査でも 被験者のほぼ全員 が , 「英 語 はお も しろ い」 「英 語 が好 き にな っ た」 と 回答 して いる こ の こ と は TPR や ジ ャ ズ . チ ャ ン ツ は . , ,. 経過報告で述べられている 「英語はおもしろいという動機付 けを促す」 という 趣旨にもかなっ ていると言え る. 83.
(9) . 横山. 吉樹・額田さやか・紅露. 由佳. しかしながら, 指導法の細部に関して は予想を大きく裏切るものであっ た. TPR で発話を強制すること は, 心的なストレス高め, 情意フィ ルターを上げる という言語学習にとっ て否定的な要素と考えられる. し かしながら, 今回の実践での発話の強制 は, 決して否定的な要素とはならず, 学習を促進する結果 となっ た‐ また, ジャズ.チャ ンツで英語のリ ズムを意識させるという指導が, 言語の音声的な側面の習得に必ず しも肯定的な結果を生み出してはいない‐ 教授法や応用言語学の理論などが予測するように小学校低学年の児童が学習するとは限らない. また, 単 にピア ジェやBg zm が示す児童の発達段階の特徴を大きく捉えて, そこから演輝的に指導法を導き出すやり 方も必ずしも正しい とは言えない. 学習者にはそれぞれ個人差 があるだろう し, 教師にもそれぞれ個性 2 ) l ) があ る (Wr i 987:5 ( ty t e eachlog s ghtl ‐ そういう相違を無視して教授法や理論にのみに頼る , 117 ことは大きな間違いであろう‐ 認知的な発達や学習段階に応じて指導法を考えていくことは困難な課題であ る‐ 教師は, 一つの教授法や指導原則に縛られず, 指導法の細部にわたっ て見直しを迫られるからである ters l 995:1-7) ]匝1錠ps…狐d wal (Gowe篤 P . 今回実践した発話を強制することやリ ズムを意識させるこ. とは, 学習の段階によってそれを用いる妥当性が変化していく可能性が高い. 今後も様々な学習段階におけ る教育実践の中で検討されるべき課題である‐ 5.. お わり に. 経過 報告 が, コミ ュ ニ ケー シ ョ ンの 能力 を 身 につ ける こ と を 目 標 と して, 日 本 の よう な EFL 環境 で の 早. 期英語教育の必要性を唱えるのであれば, その指導法について有益な示唆を与えていかなければならない‐ その一つとして, 歴史と学問的背景 がある様々な英語教授法をもっ と活用す べき である. 本論では, TPR とジャズ‐チャンツを取り上げ, それらが早期英語教育 (特に小学校低学年) に有効であることを示した. 発達段階に応じた指導法として, 低学年の場合, 発話の強制は心的ストレスなどの言語学習 を妨げるものと はならない可能性がある. さらに, リ ズムを意識させることは, 学習の初期の段階ではあまり有効に働かな い可能性をあることを指摘した‐ しかしながら, 本論の実践は, 被験者の数が少なく, 短期間の実践であっ たため, その結果の普遍性については疑問が残るものであっ た. 最後に, 本論では触れられていない指導方法においても論議がさらに活発になり, しかも, それが言語教 育学の成果に基づいて実践 を通して検証されることを切に望むものである‐. 引用文献 l i f t I守 oaks 1 れec ≠“eαcんe着き鶏 頭ebo輪.LosGa os t脳rZ omPZ e 山SheちJ o“gんαc坊oれs‘7 α離郷饗舵 仇r .:S ,Ca .1977 ‐Lm m≧曙賜刀o Pセoduc i t ons ‐ Z Z i 云わ7 i ec z b鴎gual霧ducat oれ; AcoZ ion,Bi ァ れmen 夕 oれed“cαt 7 zi ce‐ 1984 eso on o任i Ca l強oれ 〕 daSta t eDepalt江lentofEducat . Sご“di iPat i i i les; Ca l強orPda State U国i ロge on,al ld AssessmentCen- on,Di sse口l vers t夕 霧valuat or s‐LOSAゴ 発r び掴む ed s幻≠郡 司”cαt te l l. i砂 締め Zs”C imのつ α雄鶏αgedeひe止めヵ肥れ”れPr s発“似増“αgemまれor T脳 r Z c e s o フ %o克継ぎedαc僻めれα Cm回m i o eofpr ns ‐ 1981 .2 ,J i iぢ Evalua錠on,Di l iあrPda State U国i on,al ld Assessment sse出inat 霞窄む vers es; Cal z Uo湾.LOSAPge s二 A 抗eoだ#c鯛 丹αme Centeヱ. 「 ヨ d厄た またg 仇emαたれ‐N la C‐A‐B・ 1994. Lα7 I Cu j鴎,E o rk:Long p [ ta eれ′A ewY 7 1dc毎Zdr zg“αgeα 戸 口an . .andPeso , i ddZ Zyeαr 1 先eml cago s tyofChi cago:TheU血ver s.Chi Eg eαcんま eαmi“g‘2 es c九oo 7 z 凱云 αg卿 臨まo れ壌賜れdZ zm,K. 1992. Z崩し ″ ″ l i l l C J K F D i i l 雲 i t more ldi鎖erencesin secondlanguage acq s on in l bPore iddua Fi , ‐ , empeち .and Wamg , ‐ 1979 . lnd ,LMマ. 84.
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