学校間交流の実施における児童理解に焦点をあてた障害理解授業の開発
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第67巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 67, No.1. 平 成 28 年 8 月 August, 2016. 学校間交流の実施における児童理解に焦点をあてた障害理解授業の開発 細谷 一博・俉樓あやの*・鈴木 洸平**・藤嶋さと子** 北海道教育大学函館校 障害児臨床研究室 *. 北海道教育大学附属特別支援学校. **. 北海道教育大学大学院教育学研究科. Development of Classes for Promoting Understanding Class that focused on Children’s Understanding in the Enforcement of the Interchange between Schools HOSOYA Kazuhiro, GOROU Ayano*, SUZUKI Kohei** and FUJISHIMA Satoko** Department of Special Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education *. School for Special Needs Education attached to Hokkaido University of Education. **. Graduate School of Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本研究における「障害理解教育」を学校間交流で同じグループの障害のある友達の事を考え る「障害理解学習」と活動を共にする「交流活動」と位置づけて,全4回の授業を実施した。 本研究の目的は小学校5年生を対象に,交流する友達の理解を促進するための授業の開発,及 び障害理解教育がもたらした効果について検討することである。 障害理解学習では,FaceTimeを活用して,学校間交流先である特別支援学校の教師から直 接子どもの情報を得たり,小学生が疑問に思っていることを質問できたりする機会を設定した。 その結果,小学生は特別支援学校の児童に関する具体的な子ども像について把握することや実 際の支援方法などについて情報を得ることができた。また,障害理解教育前後において,小学 生は障害のある子どもに対する対応に関する認識に肯定的な変化が見られた。. Ⅰ はじめに. あると述べている。また,前田・高野名・千賀 (2008)は,特別支援教育の導入により,学校や. 中央教育審議会初等中等教育分科会(2012)は,. 教師だけでなく児童生徒にも障害に関する理解の. 共生社会の形成に向けて障害者理解を推進するこ. 必要性が高まっているとし,そこで重要となるの. とにより,周囲の人々が障害のある人や子どもと. が「障害理解教育」であると指摘している。障害. 共に学び合い生きる中,公平性を確保しつつ社会. 理解教育について,真城(2003)は単に障害を「知. の構成員としての基礎を作っていくことが重要で. る」と言う意味での「理解」に留まるのではなく,. 117.
(3) 細谷 一博・俉樓あやの・鈴木 洸平・藤嶋さと子. 障害理解教育を通じて,障害について考える,福. ている。さらに,真城(2003)は障害をもつ子ど. 祉について考える,そして自ら生活する社会につ. もたちと実際に関わりを持ち,一人の個人として. いて考えを深めていくこと,その延長にこの実践. の関係を作り上げていく過程を通じて,その子ど. の究極の目標が置かれていると述べている。また,. もの障害だけでなく,性格や必要な支援などにつ. 冨永(2006)は,普通学校の多くに障害児学級が. いて理解を深めることが大切であり,障害理解教. 設置されている事からも,障害理解教育は単に知. 育の実践においては,これをより促進するような. 識の教育に留まらず,共に学校生活を送る仲間と. 働きかけを子どもたちに提供しなければならない. して育ちあうという独自の課題を持っていると述. と述べている。また,芝田(2013)によれば,障. べている。しかしながら,障害理解学習は,交流・. 害理解教育は,定型発達の健常児に障害児・者へ. 共同教育の実践が発展していく中で提起され,深. の理解をといていくものであるが,同時に健常児. められてきた課題である(藤森・青木・池田・越. への人間理解とといていくものであると指摘して. 野,2002) 。文部科学省(2008)は,障害のある. いる。しかしながら,宮脇・阿部(2009)は,交. 幼児児童生徒との交流及び共同学習は,児童が障. 流級の児童に特別支援学級の児童の障害特性をど. 害のある幼児児童生徒とその教育に対する正しい. のように伝え,児童らの障害理解とのかかわりを. 理解と認識を深めるための絶好の機会であり,同. どのように育てていくかについては,各担任が手. じ社会に生きる人間として,お互いを正しく理解. 探りの段階にあることを明らかにしている。また,. し,共に助け合い,支え合って生きていくことの. 岩崎・相本・藤原・井上(2012)は,知的障害や. 大切さを学ぶ場でもあると考えられると述べてい. 発達障害のある児童は,その特徴に個人差がある. る。さらに,細谷・木原(2013)は,知的障害特. 事から,それぞれの児童に合わせた関わり方を,. 別支援学校と学校間交流を行った小学校6年生を. 交流児童自身に考えさせていくことが求められる. 対象に交流活動後の感想文を質的に検討した結. と述べている。. 果,障害理解に関する学びは,事前情報や事前学. このような課題のもと,特別支援学校と通常学. 習に起因する部分が多いことを明らかにした。こ. 校間で実施される学校間交流の場合,学校間にお. の よ う に 事 前 情 報 の 重 要 性 に つ い て は,. ける物理的な距離の問題や日常的に同一校内に在. Turnbull, A. & Bronicki, G.J.(1986),Gottlieb. 籍しているわけではなく,限られた交流回数の中. (1980) ,大谷(2001)など,様々な年齢や方法. で,共に活動をする障害のある児童の理解方法に. が行われ,その成果が報告されているように,障. ついては検討が必要である。さらに,今枝・楠・. 害のある子どもに対する態度変容にも効果的であ. 金森(2013)は,小・中学校の障害理解学習では,. る。. 知的障害や発達障害が多いことを報告し,特別支. これらのことから,障害理解教育においては,. 援教育が実施されて以降,教育現場で知的障害や. 障害理解学習と交流活動を組み合わせて実施する. 発達障害の認識が広がっていることが影響してい. ことが必要である。. ると述べている。したがって今後,インクルーシ. 大南(2007)は,交流及び共同学習を通じてね. ブ教育や特別支援教育の更なる推進,交流及び共. らうものは, 「障害」そのものの理解よりも,ま. 同学習の充実に伴い,知的障害や発達障害の理解. ず「人」として理解することである。子どもたち. の必要性が推測できる。. は,学校生活において活動を共にするさまざまな. これまで,筆者の一人は学校間交流における相. 場面でのふれあいを通して,お互いの個性が分か. 互理解の促進に向けた情報共有シートの開発(細. り,接し方を理解していく。「障害」の理解も,. 谷・白府,2013)や障害理解促進を目指した事前. このような人間としての理解のうえに立って,初. 学習授業(村田・鈴木・藤嶋・細谷,2016)など. めて正しい理解に到達しうるものと考えると述べ. を報告してきた。しかしながら,学校間交流を実. 118.
(4) 学校間交流の実施における児童理解に焦点をあてた障害理解授業の開発. 施する通常学級児童に対して,一方向的な情報提. アンケートを実施し,201×年10月下旬から11月. 供に留まってしまい,実際に小学生が必要として. 上旬に障害理解授業を3回実施した。その後,11. いる情報と一致しなかった,または不十分であっ. 月中旬に交流活動を各クラス1回ずつ実施し,交. たことを報告している。. 流活動後には,事前アンケートと同様のアンケー. そこで,本研究では小学校5年生を対象に,交 友達と一緒に活動する経験はない。 流する友達の理解を促進するための授業の開発, 2.実践の流れ 及び障害理解教育がもたらした効果について検討 本研究の流れを Fig.1 に示す。障害理解授業の前 することを目的とする。 に対応方法に関する認識を把握するための事前ア ンケートを実施し,201×年 10 月下旬から 11 月上 旬に障害理解授業を 3 回実施した。その後,11 月中 Ⅱ 方 法 旬に交流活動を各クラス 1 回ずつ実施し,交流活動 後には,事前アンケートと同様のアンケートを実施 1.対 象 し,対応方法に関する認識の変化を把握した。認識 の変化を問うアンケートは,小学生の具体的対応の A大学附属B小学校5年生の児童69名(2クラ 理解度を知るために 4 つの行動を設定し,それぞれ ス)である。B小学校には特別支援学級は設置さ の行動に対して, 「その行動の理由」 「あなたならど れておらず,教育活動において,障害のある同年 のように対応する」の 2 つの質問を設定した。 代の友達と一緒に活動する経験はない。 なお,本研究では障害理解教育を学校間交流で同 じグループの障害のある友達を理解し,活動の準備 をする「障害理解学習」と実際に一緒に活動をする 2.実践の流れ 「交流活動(学校間交流活動)」を一つと捉えて授業 本研究の流れをFig.1に示す。障害理解授業の を構成した。 前に対応方法に関する認識を把握するための事前. トを実施し,対応方法に関する認識の変化を把握 3.授業内容 本研究では冨永(2011)と村田ら(印刷中)を参考 した。認識の変化を問うアンケートは,小学生の に,全 3 回の授業を実施し,毎回の授業で特別支援 具体的対応の理解度を知るために4つの行動を設 学校の子どもを理解するための活動を取り入れる 定し,それぞれの行動に対して, 「その行動の理由」 こととした。 「あなたならどのように対応する」の2つの質問 1)障害理解授業(1 を設定した。回目) 1 回目の授業のめあては「交流をする友だちのこ なお,本研究では障害理解教育を学校間交流で とを知る」である。展開①では障害とは何かをクラ 同じグループの障害のある友達を理解し,活動の ス全体で考え, 障害には見てわかるものと見てもわ からないものがあることを確認する。展開②では, 準備をする「障害理解学習」と実際に一緒に活動 障害からくる困難を体験するための疑似体験を実 をする「交流活動(学校間交流活動)」を一つと捉 施した。疑似体験では 2 人 1 組になり,1 人が軍手 えて授業を構成した。 を付けて,折り紙を折る活動を行った。この疑似体 験では,折り紙を折る感覚の低下や指先の不器用さ について体験するとともに, 他の 1 人はどの様に支 3.授業内容 援すると良いのかについて考えることとした。展開 本研究では冨永(2011)と村田ら(2016)を参 ③では,情報共有シートをもとに,担当する特別支 考に,全3回の授業を実施し,毎回の授業で特別 援学校の友だちの名前や顔, 好きなことや苦手なこ とを確認し,障害の有無に関係なく,好きなことや 支援学校の子どもを理解するための活動を取り入 苦手なことがあるのは自分たちと一緒であること れることとした。 を理解した。1 回目の障害理解授業の詳細を Table1 に示す。 1)障害理解授業(1回目). 事前アンケート. 回目) 2)障害理解授業(2 1回目の授業のめあては「交流をする友だちの 2 回目の授業のめあては「交流する友だちとのか ことを知る」である。展開①では障害とは何かを かわり方を考えよう」である。展開①では特別支援 クラス全体で考え,障害には見てわかるものと見 学校と小学校を iPad の FaceTime でつなぎ,特別支 援学校の教員が情報交流シートをもとに, 子ども達 てもわからないものがあることを確認する。展開 の紹介を行った。その後,小学生が情報交流シート ②では,障害からくる困難を体験するための疑似 から疑問に思ったことや担当する特別支援学校児 体験を実施した。疑似体験では2人1組になり, 童との接し方など,直接,特別支援学校の教師に質 1人が軍手を付けて, 折り紙を折る活動を行った。 問できる時間を設けた。 FaceTime を用いた子ども理 解システムを Fig.2 に示す。 特別支援学校の教師は, この疑似体験では,折り紙を折る感覚の低下や指 小学生からの質問に対して実際の子どもを映像に 先の不器用さについて体験するとともに,他の1 映しながら質問に回答した。展開③ではクイズを通 人はどの様に支援すると良いのかについて考える して,交流する友だちにできる工夫点を考え,グル ープ内で共通理解を図った。2 回目の障害理解授業 こととした。展開③では,情報共有シートをもと の詳細を Table2 に示す。 に,担当する特別支援学校の友だちの名前や顔,. 障害理解授業(1回目). 障害理解授業(2回目). 障害理解授業(3回目). 交流活動 (各クラス1回). 好きなことや苦手なことを確認し,障害の有無に 関係なく,好きなことや苦手なことがあるのは自 特別支援学校. 小学校. 分たちと一緒であることを理解した。1回目の障. 事後アンケート. T. iPad Face 害理解授業の詳細をTable. Time. Fig.1Fig.1 本研究の流れ 本研究の流れ. TV. 1に示す。. T. iPad. Fig.2 FaceTimeを用いた子ども理解システム. 3. 119.
(5) に示す。 2)障害理解授業(2 回目) 細谷 一博・俉樓あやの・鈴木 洸平・藤嶋さと子 2 回目の授業のめあては「交流する友だちとのか かわり方を考えよう」である。展開①では特別支援 2)障害理解授業(2回目) 別支援学校の教師は,小学生からの質問に対して 学校と小学校を iPad の FaceTime でつなぎ,特別支 2回目の授業のめあては「交流する友だちとの 実際の子どもを映像に映しながら質問に回答し 援学校の教員が情報交流シートをもとに,子ども達 の紹介を行った。その後,小学生が情報交流シート かかわり方を考えよう」である。展開①では特別 た。展開③ではクイズを通して,交流する友だち から疑問に思ったことや担当する特別支援学校児 支援学校と小学校をiPadのFaceTimeでつなぎ, にできる工夫点を考え,グループ内で共通理解を 童との接し方など,直接,特別支援学校の教師に質 特別支援学校の教員が情報交流シートをもとに, 図った。2回目の障害理解授業の詳細をTable 2 問できる時間を設けた。FaceTime を用いた子ども理 解システムを Fig.2 に示す。 特別支援学校の教師は, 子ども達の紹介を行った。その後,小学生が情報 に示す。 小学生からの質問に対して実際の子どもを映像に 交流シートから疑問に思ったことや担当する特別 映しながら質問に回答した。展開③ではクイズを通 支援学校児童との接し方など,直接,特別支援学 3)障害理解授業(3回目) して,交流する友だちにできる工夫点を考え,グル ープ内で共通理解を図った。2 回目の障害理解授業 校の教師に質問できる時間を設けた。FaceTime 3回目の授業のめあては,「楽しい交流活動に の詳細を Table2 に示す。. を用いた子ども理解システムをFig.2に示す。特. するための準備をしよう」である。展開①では, 情報交流シートや特別支援学校の教師に聞いた児. 特別支援学校. iPad. 童の様子を振り返りながら,実際の交流で実施す. 小学校. T. Face Time. T. TV. る活動について話し合い,グループ毎にワーク シートにまとめた。展開②では,当日の交流活動. iPad. Fig.2 FaceTimeを用いた子ども理解システム. に必要なものの準備を開始した。3回目の障害理 解授業の詳細をTable 3に示す。. Fig.2 FaceTimeを用いた子ども理解システム. 3. Table 1 障害理解授業(1回目) 時間 導入. 学習活動 主なねらい(〇)と内容(・) めあて:「交流をする友だちのことを知る」 〇 今日の学習の見通しをもつ. 展開①. 〇 交流をするお友だちについて考える ・ 「障害」とはどんなことなのかを考える →眼が不自由 →車椅子に乗っている. 展開②. 〇 疑似体験を行う ・障害からくる困難を体験する →二人一組で体験し,時間が来たら交代する →1回目は「手を出さない」 ,2回目は「手を出さない」+「工夫」を実践 ・疑似体験をしてみて感じたことを発表する. 展開③. 〇 交流する友だちと自分の共通点を見つける ・情報共有シート1)を用いて特別支援学校の友だちの名前や性格を確認し,友だちの好きなことや苦 手なことをワークシートに記入し,グループ内で共有する →障害に関係なく好きなことや苦手なことってあるよね →自分と好きな活動が同じである ・自分の好きな活動や得意なこと,苦手なことをワークシートに記入し,グループ内で交換する ・友達の好きな活動や得意なこと,苦手なことに気付いた時はどうするかを考える 〇 ワークシートを用いて,交流する友だちの好きな活動や得意なこと,苦手な活動を振り返る. まとめ. 〇 本時を振り返り,次時の学習を知る まとめ: 「障害に関係なく,好きなことや苦手なことがあるのはみんな一緒」. 1)情報交流シート 特別支援学校児童の名前や興味,関心,好きなことが書かれている資料(細谷・白府,2013). 120.
(6) 学校間交流の実施における児童理解に焦点をあてた障害理解授業の開発. Table 2 障害理解授業(2回目) 時間. 学習活動 主なねらい(〇)と内容(・). 導入. めあて: 「交流する友だちとのかかわり方を考えよう」 〇 前時の学習を振り返り,今日の学習の見通しをもつ. 展開①. 〇 iPadのFaceTimeを通して特別支援学校の先生や児童と交流する ・特別支援学校の児童が普段どの様なことをしているのかを知る ・特別支援学校の先生が児童を一人ひとり紹介する ・特別支援学校の先生が子どもと関わっている様子を見る ・自分たちの知りたいことを特別支援学校の先生に聞く ・かかわり方や情報交流シートの内容に関する質問をする ・グループ内で知り得た情報について振り返る. 展開②. 〇 クイズを通して対応方法を理解する ・その人のためになるのはどっち? →友だちが落ち込んでいた。どうすればよいでしょうか? →自分の大切なものを持っていってしまった。どうすればよいでしょうか?. 展開③. 〇 クイズを通して児童個々に学んだことをワークシートにまとめる ・自分の意見や他の人の意見で参考になったものをワークシートに書くように促す ・自分たちが交流する友だちにできる工夫は何かを考える. まとめ. 〇 本時を振り返り,次時の学習を知る まとめ: 「友達のことを考えた行動を心がけてみんなが楽しい交流活動を目指そう」 Table 3 障害理解授業(3回目). 時間. 学習活動 主なねらい(〇)と内容(・). 導入. めあて: 「楽しい交流活動にするための準備をしよう」 〇 前時の学習を振り返り,今日の学習の見通しをもつ. 展開①. 〇 情報共有シートや前時の話し合いをもとに個人で交流する友だちのできる活動を考える 〇 グループで考えた内容を交流しあい,交流活動の内容を決定する ・グループで話し合い,自由に活動を選択する ・交流する友だちの得意なことや好きなことから活動を選択する ・ワークシートに活動内容を記入する 〇 班で話し合った内容を班毎に記入する ・どうしてその活動にしたのかを発表する. 展開②. 〇 活動の準備をする ・交流活動に必要な物(当日のスケジュール等)を作成する ・必要な道具があれば,先生に借りたり,別の教室から持ってくる. まとめ. 〇 本時を振り返り,次時の学習を知る まとめ:「楽しい交流活動にしよう」. Ⅲ 結 果. んな内容の音楽が好きか」など,情報交流シート に記載されている内容について,より具体的な内. 1.FaceTimeを用いた子ども理解. 容に関する質問が多くを占めていることがわか. 小学生から特別支援学校の教師に向けた質問の. る。また,「共通して楽しめる事は何か」「どの様. 全てをTable 4に示す。小学生から出された質問. に対応すればよいか」など,実際に触れ合う時の. の内容を見ると,「どの様な的当てが好きか」「ど. 対応の仕方に関する質問も寄せられた。. の様な工作が好きか」 「どんなDVDが好きか」 「ど. 121.
(7) 細谷 一博・俉樓あやの・鈴木 洸平・藤嶋さと子. Table 4 小学生から特別支援学校教師への質問 (全て). 対応方法に関する認識の変化は,4つの行動を. 質問項目 ・どの様な的当てが好きなのか ・どの様な外遊びが好きなのか ・どの様な身体を動かすことが好きですか ・どんなジャンルの音楽が好きですか ・どの様な工作が好きですか ・どんなジャンルの音楽が好きですか ・どんなDVDが好きですか ・泣いている人がいると叩いてしまうとありますが,その場合どのようにすれば良いですか ・どんな内容の音楽が好きですか ・特別支援学校の人はどの様な障害ですか ・A君とB君(同じグループ)の共通して楽しめる事は何ですか ・どの様な時に「イヤーマフ」をするのですか ・C君とD君(同じグループ)の行動が違うので,どの様に対応すればよいですか. 事前 n( % ). 事後 n( % ). 質問NO.. 質問内容・選択肢. 行動1. 小学校3年生の男の子がいます。ある活動に参加するためにあなたと一緒に列に 並んでいたにも関わらず,順番を待てずに割り込みをしてしまいました。. 質問1-2. 行動2 質問2-1. 質問2-2. 行動3 質問3-1. 質問3-2. 行動4 質問4-1. 質問4-2. 122. n=67 ■ どうして男の子は割り込みをしてしまったと思いますか? n=69 1.自己中心的な性格だから。 27(39.1) 20(29.9) 2.早く遊びたかったから。 21(30.4) 23(34.3) 3.並ぶのにあきてしまったから。 14(20.3) 13(19.4) 4.何をしたらいいのか分からなかったから。 4( 5.8) 9(13.4) 5.その他の意見。 3( 4.3) 2( 3.0) ■ あなたはその男の子に気がついたらどうしますか? 1. 「ダメだよ!」と言う。 2.男の子の言うとおりに動く。 3. 「あと○人待とうね」と言う。 4. 「ちゃんと順番を守って!」と怒る。 5.知らないふりをする。 6.その他の意見。. n=69. 設定し,その行動に対してどの様に考えるかにつ いて把握した。なお,未記入の項目については集 計から除外した。実施前後における対応に関する 認識の全ての項目の結果をTable 5に示す。 行動1の設定は「小学校3年生の男の子がいま す。ある活動に参加するためにあなたと一緒に列 に並んでいたにも関わらず,順番を待てずに割り. Table 5 対応に関する認識の変化. 質問1-1. 2.実施前後における対応に関する認識の変化. n=67. 込みをしてしまいました」である。この行動に対 して,質問1-1の「割り込みをしてしまう理由」 について,「自己中心的な性格だから」が,事前 では27名(39.1%)であったのに対して,事後で は20名(29.9%)と減少がみられた。また,質問 1-2の「その時にあなたはどうしますか」について,. 25(36.2) 24(35.8) 1( 1.4) 0( 0.0) 20(29.0) 28(41.8) 15(21.7) 7(10.4) 5( 7.2) 0( 0.0) 3( 4.3) 8(11.9). 「あと〇人待とうね」が事前では20名(29.0%). 小学校5年生の女の子がいます。みんなが一斉に集合場所に移動を始めているの に,まだ女の子が一人だけが教室に残っています。. が事前では,15名(21.7%)に対して,事後では. ■ どうして女の子は一人で教室にいると思いますか? 1.一人になりたかったから。 2.何をしていいのか分からなかったから。 3.集合場所に行きたくなかったから。 4.何か不安なことがあったから。 5.その他の意見。 ■ あなたはその女の子に気づいたらどうしますか? 1. 「どうしたの?」と声をかける。 2.見て見ぬふりをする。 3.これからやることを説明する。 4. 「いっしょに行こう」と言う。 5. 「こっちだよ」と班の仲間がいる所へ連れて行く。 6.その他の意見。. n=69. n=67. 6( 8.7) 9(13.4) 33(47.8) 36(53.7) 11(15.9) 2( 3.0) 16(23.2) 16(23.9) 3( 4.3) 4( 6.0). n=69. n=67. に対して,事後では28名(41.8%)と増加がみら れた。また,「ちゃんと順番を守って!と怒る」 7名(10.4%)と減少がみられた。 行動2の設定は「小学校5年生の女の子がいま す。みんなが一斉に集合場所に移動を始めている. 27(40.3) 4( 6.0) 11(16.4) 12(17.9) 10(14.9) 3( 4.5). のに,まだ女の子が一人だけが教室に残っていま. 小学校3年生の女の子がいます。クラスみんなで運動会の練習をしているのにも かかわらず,自分の番になると動かなくなってしまいます。. たから」が事前では11名(15.9%)に対して,事. ■ どうして女の子は動かなくなってしまうと思いますか? 1.自己中心的だから。 2.運動会の練習をやりたくないから。 3.疲れてしまったから。 4.怖い種目があるから。 5.その他の意見。 ■ あなたはその女の子に気づいたらどうしますか? 1. 「大丈夫?」と声をかける。 2. 「いっしょにやろう」と言う。 3. 「早くスタートしてよ」と言う。 4.何も声をかけないで見ている。 5. 「やりたくないならやらなくてもいいよ」と言う。 6.その他の意見。. 32(46.4) 9(13.0) 5( 7.2) 11(15.9) 10(14.5) 2( 2.9). n=68. n=66. 7(10.3) 18(26.5) 4( 5.9) 19(27.9) 20(29.4). 3( 4.5) 18(27.3) 12(18.2) 19(28.8) 14(21.2). n=68. n=67. 26(38.2) 27(40.3) 15(22.1) 21(31.3) 9(13.2) 0( 0.0) 1( 1.5) 5( 7.5) 11(16.2) 10(14.9) 6( 8.8) 4( 6.0). 小学校5年生の男の子がいます。男の子にやりたいことを聞いても知らん顔して います。どうしたらいいか考えているうちに手をはなしてふらふらとどこかに 行ってしまいました。 ■ どうして男の子はどこかへ行ってしまったと思いますか? 1.自己中心的だから。 2.何をしたらいいのか分からなかったから。 3.他に気になることがあったから。 4.緊張してしまったから。 5.その他の意見。 ■ あなたはその男の子に気づいたらどうしますか? 1. 「ダメだよ!」と言う。 2.追いかける。 3.これからやることを伝える。 4.活動をいくつか伝えて,選んでもらう。 5.その場で見ている。 6.その他の意見。. n=68. n=67. 14(20.6) 15(22.4) 18(26.5) 11(16.4) 18(26.5) 29(43.3) 11(16.2) 9(13.4) 7(10.3) 3( 4.5). n=68. n=67. 6( 8.8) 7(10.4) 14(20.6) 15(22.4) 13(19.1) 11(16.4) 21(30.9) 20(29.9) 5( 7.4) 6( 9.0) 9(13.2) 8(11.9). す」である。この行動に対して質問2-1の「教室 にいる理由」では,「集合場所に行きたくなかっ 後では2名(3.0%)と減少した。また,質問2-2 の「その時にあなたはどうしますか」について, 「これからやることを説明する」が事前で5名 (7.2%)に対して事後では11名(16.4%)と増加 し,「 見 て 見 ぬ ふ り を す る 」 が 事 前 で は 9 名 (13.0%)に対して,事後では4名(6.0%)と減 少がみられた。 行動3の設定は「小学校3年生の女の子がいま す。クラスみんなで運動会の練習をしているのに もかかわらず,自分の番になると動かなくなって しまいます」である。この行動に対して質問3-1 の「動かなくなった理由」では,「疲れてしまっ たから」が事前では4名(5.9%)に対して事後 では12名(18.2%)と増加がみられた。さらに, 「自.
(8) 学校間交流の実施における児童理解に焦点をあてた障害理解授業の開発. 己中心的だから」では事前で7名(10.3%)に対. とに,実際の交流活動の内容について考え,準備. して,事後では3名(4.5%)と減少が見られた。. を行った。. また,質問3-2の「気づいたらどうしますか」に. 以上のように,全ての学習活動において,交流. ついてでは, 「いっしょにやろうと言う」が事前. する障害のある友達のことを考える機会を設定し. では15名 (22.1%)に対して,事後では21名(31.3%). たことで,2回目の授業で見られたように,小学. と増加がみられ, 「早くスタートしてよと言う」. 生から寄せられた実際の質問を見ると,友達の事. が事前では9名(13.2%)に対して,事後では0. をより詳しく知るための質問であったり,実際の. 名(0%)であった。. 支援方法に関する質問であったりと,より楽しく. 行動4の設定は「小学校5年生の男の子がいま. 活動をするために小学生が考えている様子が見受. す。男の子にやりたいことを聞いても知らん顔し. けられる。本研究で実施した情報交流シートで特. ています。どうしたらいいか考えているうちに手. 別支援学校の子どもに関する情報を提供し,その. をはなしてふらふらとどこかに行ってしまいまし. 情報から小学生が自分たちで知りたい内容を考え. た」である。この行動に対して質問4-1の「どこ. て実際に質問をする事は,障害理解に関して,教. かに行ってしまった理由」では, 「何をしたらいい. 師からの押し付けではなく,子どもたちが考える. のか分からなかったから」が事前で18名(26.5%). 過程を得ることが,本当の理解につながる(真城,. に対して,事後では11名(16.4%)と減少が見ら. 2003)と指摘されている事からも,児童理解を促. れた。また, 「他に気になることがあったから」. 進するためには必要な手続きであったと考える。. が事前で18名(26.5%)に対して,事後では29名. 本研究で実施した学校間交流においては,日常的. (43.3%)と増加がみられた。. に同一校内に在籍しているわけではない事から, 今後は,障害理解学習を実施する場合,小学生に. Ⅳ おわりに 本研究は小学校5年生を対象に,交流する友達. 活動を共にする障害のある友だちのことを考える 機会を確保するだけでなく,提供する情報の内容 やその時期について検討を重ねていく必要がある。. の理解を促進するための授業の開発,及び障害理 解教育がもたらした効果について検討することを. 2.障害理解教育の実施による効果. 目的とした。. 本研究における授業実践では,3回の障害理解 学習と1回の交流活動の合計4回で構成され,全. 1.友達理解を促進するための授業開発. ての学習において,交流をする友だちの事を考え. 本研究では,学校間交流で共に活動をする友だ. る活動を設定した。. ちの理解を促進するための授業を開発し実施し. その結果,通常学級の児童はTable 5に示すよ. た。1回目の授業では,情報共有シートを活用し. うに,子どもの行動の理由について, 「自己中心的」. て,交流をする友だちの名前や好きなこと,苦手. や「行きたくなかったから」など,自分勝手な行. なことなどを把握しグループ内で共通理解を図っ. 動ではなく,その子どもの障害からくる特性の一. た。その後,2回目の授業では,小学生に対して. つとして理解していることが示唆された。このよ. 一方向的な情報提供だけでなく,FaceTimeを用. うな認識の変化は,障害理解学習において特別支. いて,特別支援学校の教師から子どもの様子を紹. 援学校の教員と子どもに関する情報を得たこと. 介してもらうとともに,小学生から疑問点や接し. で,一緒に遊ぶ友達のことを詳しく知ることがで. 方など,自分たちが知りたい情報を特別支援学校. きたあらわれと考えることができる。また,実際. の教員へ質問ができるようにした。3回目の授業. の対応についても,「待とうねと声をかける」「や. では,1回目と2回目の授業で知り得た情報をも. ることを説明する」「一緒にやろう」など,肯定. 123.
(9) 細谷 一博・俉樓あやの・鈴木 洸平・藤嶋さと子. 的な行動に増加がみられたことは,事前の学習の 中で対応方法について学んだことや特別支援学校 の教師から具体的な支援方法について教わったこ と等が影響していると考えることができる。. 促進を目指した事前学習授業の実践.北海道特別支援 教育研究,10⑴,1-9. 12)大南英明編(2007)交流及び共同学習への取り組み. 明治図書. 13)大谷博俊(2001)交流教育における知的障害児に対. 学校間交流における障害理解教育は,限られた. する健常児の態度形成-態度と事前指導における情報. 交流回数の中で,学校事情によって交流回数や授. 提供,交流経験,評価対象となる知的障害児の特定と. 業内容など,その実施体制が決まっていない。そ のため,今後は学校間交流の実施において,最大 限の効果を挙げるための障害理解教育の実施につ いて,検討を重ねていく必要がある。. 関連性の検討-.特殊教育学研究,39⑴,17-24. 14)真城知己(2003)障害理解教育の授業を考える.文 理閣. 15)芝田裕一(2013)人間理解を基礎とする障害理解教 育のあり方.兵庫教育大学研究紀要,43,25-36. 16)冨永光昭編著(2011)小学校・中学校・高等学校に おける新しい障がい理解教育の創造-交流及び共同学. 文 献 1)中央教育審議会初等中等教育分科会(2012)共生社 会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築の ための特別支援教育の推進(報告). 2)藤森義正・青木道忠・池田江美子・越野和之(2002). 習・福祉教育との関連と5原則による授業づくり.福 村出版. 17)Turnbull, A. & Bronicki, G.J.(1986)Changing Second grader’s Attitudes Toward People With Mental Retardation: Using Kid Power. Mental Retardation, 24, 44-45.. 交流・共同教育と障害理解学習-仲間を見つめ自分を 育てる-.全障研出版部. 3)Gottlieb, J.(1980)Improving Attitudes Toward Retarded Children by Using Group Discussion. Exceptional Children, 47, 106-111. 4)細谷一博・木原美桜(2013)交流及び共同学習にお ける「小学生の学び」に関する質的検討.北海道特別. 謝 辞 本研究の実施にあたり,A大学附属B小学校の 5年生の児童及び学級担任の先生方に多大なるご 協力を頂きました。記して感謝申し上げます。. 支援教育研究,7⑴,1-6. 5)細谷一博・白府士孝(2013)特別支援学校の学校間 交流における相互理解促進に向けた情報共有シートの. (細谷 一博 函館校 准教授) . 開発に関する試行的実践.北海道教育大学紀要(教育. (俉樓あやの 附属特別支援学校教諭). 科学編).63⑵,183-189.. (鈴木 洸平 函館校 大学院生) . 6)今枝史雄・楠敬太・金森裕治(2013)通常の小・中 学校における障害理解教育の実態に関する研究(第一 報)-実施状況及び教員の意識に関する調査を通して -.大阪教育大学紀要 第Ⅳ部門,61⑵,63-76. 7)岩橋由佳・相本広幸・藤原秀文・井上雅彦(2012) 知的障害のある児童に対する交流学級児童のかかわり 行動を促進させるための障害理解授業の効果.特殊教 育学研究,49⑸,517-526. 8)前田佳子・高野名明子・千賀愛(2008)障害理解教 育のカリキュラム開発に関する岩見沢市立栗沢小学校 の実践.北海道特別支援教育研究,2⑴,21-31. 9)宮脇恭子・阿部美穂子(2009)交流及び共同学習の 実践における教師の工夫-T市小学校教師へのアン ケート調査から.とやま特別支援学年報.3,31-39. 10)文部科学省(2008)小学校学習指導要領解説(総則編) 11)村田花子・鈴木洸平・藤嶋さと子・細谷一博(2016) 小学校と特別支援学校の学校間交流における障害理解. 124. (藤嶋さと子 函館校 大学院生) .
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