経営環境
◦経済情勢 中国をはじめとする新興国経済の減速を背景に輸出や生産が鈍化しましたが,基調としては緩やかな回復が続き ました。企業業績は好調に推移し,設備投資は増加基調を維持しましたが,個人消費は消費増税の影響が長引き, 停滞感が強まりました。 県内の経済情勢は,個人消費,設備投資の回復により,概ね持ち直し基調で推移しましたが,年度後半の新興国 経済減速や円高の進行等から,一部の経済指標には鈍化の動きが見られます。一方で東京圏への経済・人口の一極 集中の動きから,県内においても地域間の格差が拡大するなど,構造的な課題を抱える状況にあります。 ◦農業情勢 TPPの大筋合意や改正農協法の施行等,JAグループや日本の農業を取り巻く環境が大きく変わりつつあります が,JAバンク自己改革を着実に実践し,農業と地域社会に貢献する取組みを強化しました。 ◦金融情勢 日銀のマイナス金利政策導入の影響により利鞘が縮小し,金融機関の収益環境は厳しい状況にあります。また, ゆうちょ銀行の預入限度額引き上げ実施や,地銀再編に伴う従来の営業エリアを越えた新規参入等,競争環境は激 化の一途をたどっています。 また,個人金融市場については,少子・高齢化の進展により,拡大は期待できず,各金融機関にはこれまで以上 に利便性や顧客満足度の向上による差別化が求められています。業務概況
◦最近の 5 事業年度の主要な経営指標 ◦金融推進業務 JA貯金は年金振込口座の獲得を中心に個人貯金増強に注力した結果,1,678億円増加(+3.1%)し, 5 兆5,956 億円となりました。 JA貸出金は,住宅ローンを中心に統一ローンでは101億円増加したものの,全体では283億円減少(△2.5%)し, 1 兆1,260億円,貯貸率は20.1%となりました。 (単位:百万円,口) 項 目 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 経 常 収 益 51,270 51,326 56,523 57,304 61,738 経 常 利 益 10,572 11,001 17,330 15,545 13,680 当 期 剰 余 金 8,496 8,707 14,235 13,428 11,563 出 資 金 ( 出 資 口 数 ) (21,983,557)109,917 (23,091,401)115,457 (23,904,887)119,524 (25,726,928)128,634 (27,559,392)137,796 純 資 産 額 287,740 314,109 321,700 364,233 358,394 総 資 産 額 4,493,944 4,986,730 5,311,486 5,550,940 5,642,313 貯 金 等 残 高 4,074,249 4,368,523 4,633,906 4,926,635 5,150,855 貸 出 金 残 高 883,402 924,808 979,155 1,011,184 958,552 有 価 証 券 残 高剰 1,441,478 1,774,372 1,888,443 1,933,529 1,655,107 余 金 配 当 金 額 普 通 出 資 配 当 額 790 790 790 790 790 後 配 出 資 配 当 額 1,247 1,330 1,397 1,465 1,602 事 業 分 量 配 当 額 4,440 4,666 5,959 6,212 5,308 職 員 数 286 人 277 人 279 人 283 人 295 人 単 体 自 己 資 本 比 率 22.20 % 21.07 % 20.22 % 18.33 % 17.60 % (注)「単体自己資本比率」は,「農業協同組合等がその経営の健全性を判断するための基準」(平成18年金融庁・農林水産省告示第 2 号)に基づ き算出しています。なお,平成24年度以前は旧告示(バーゼルⅡ)に基づく単体自己資本比率を記載しています。 50,000 60,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 (単位:億円)JA貯金・貸出金の推移
貯金 貸出金 12,055 12,055 11,83511,835 48,720 48,720 50,54250,542 11,747 11,747 52,224 52,224 11,543 11,543 54,277 54,277 11,260 11,260 55,95655,956平成27年度事業の概況
平成 27年度事業の概況◦貯金業務 JAからの受入れを中心に2,242億円増加し,残高は 5 兆1,508億円となりました。 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 貯金(譲渡性貯金含む)残高の推移 40,000 50,000 60,000 30,000 20,000 40,742 40,742 43,68543,685 46,339 46,339 49,26649,266 51,508 51,508 (単位:億円) 平成23年度 貸出金残高の推移 8,834 8,834 9,2489,248 平成25年度 平成24年度 9,791 9,791 平成26年度 10,111 10,111 平成27年度 9,585 9,585 10,000 12,000 8,000 6,000 (単位:億円) ◦貸出業務 新たに117社と取引を開始しましたが,関連産業,金 融機関向けの融資が減少したことなどにより,貸出金残 高は526億円減少し,9,585億円となりました。 受託貸付金については,日本政策金融公庫資金,住宅 金融支援機構資金等の取扱いに取り組みましたが,残高 は 5 億円減少し,95億円となりました。 ◦事務集中センター業務 各種集中化業務の安定稼動に努めました。ま た,口座振替処理のセキュリティ強化・効率化 に向けて法人JAネットバンクやデータ伝送へ の切替えを推進しました。 ◦ローンセンター業務 審査のスピード化を目指し,自動審査システ ムの再構築に取り組むとともに,JA融資担当 者に対し,実例を題材とした研修会を開催し, 審査レベルの向上に努めました。 ◦信用事業オンライン業務 多様化する利用者ニーズに対応するとともに, 複数取引セールスや新軒先訪問中心の推進を強 化するため,JA渉外担当者によるタブレット 端末を活用したターゲット推進の定着に取り組 みました。 ◦余裕金運用業務 国内金利が日銀による債券の買い支えやマイナス金利政策の導入により低位で推移,株式が世界経済の減速懸念 により株安で推移,為替が米国の利上げ期待の後退等により年度の後半に円高が進行する中での運用となりました。 このような環境において,ALMによる金利見通しやリスク管理のもと,運用資産の分散を行うことにより,安 定した運用益の確保に努めました。この結果,運用残高は有価証券が 1 兆6,551億円,預け金が 2 兆7,101億円とな り,余裕金全体では3.2%の増加となりました。 (単位:億円) 平成23年度 平成24年度 預け金残高の推移 20,000 25,000 30,000 15,000 10,000 19,182 19,182 20,37020,370 平成25年度 21,812 21,812 平成26年度 23,324 23,324 平成27年度 27,101 27,101 (単位:億円) 平成23年度 平成24年度 有価証券残高の推移 15,000 20,000 10,000 5,000 14,414 14,414 17,743 17,743 平成25年度 18,884 18,884 平成26年度 19,335 19,335 平成27年度 16,551 16,551 内国為替取扱実績 (単位:件,百万円) 種 類 仕 向平成26年度被仕向 仕 向平成27年度被仕向 送金・振込 件 数金 額 3,565,843 2,801,681 3,924,331 3,007,126711,127 46,241 730,282 47,319 代 金 取 立 件 数 94 224 81 243 金 額 133,549 4,759 98,453 611 合 計 件 数金 額 3,699,393 2,806,441 4,022,785 3,007,738711,221 46,465 730,363 47,562 ローンセンター受付状況 (単位:件,百万円) 種 類 平成26年度 平成27年度 住 宅 件 数金 額 51,7692,242 52,5092,219 マイカー 件 数金 額 2,1332,948 1,9122,894 教 育 件 数金 額 524696 445585 全ローン 件 数金 額 55,5465,026 56,1124,728 平成 27年度事業の概況
◦損益 低金利の継続により利鞘は縮小したものの,有価証券や貸出金の効率的な運用により利益の確保に努めました。 また,余裕金運用については,ALMによるリスク管理のもと利益の確保に努めました。結果,経常利益は136億80 百万円,当期剰余金は115億63百万円となりました。 ◦自己資本比率 平成28年 3 月末の自己資本比率は,国債残高が減少し,預け金残高が増加したことにより,リスクアセットが増 加し,単体ベースで17.60%(前期末比△0.73ポイント)となりました。 この数値は,国内基準の 4 %,国際基準の 8 %を上回っており,高い安全性・健全性を示しています。 (単位:百万円) 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 経常利益 当期剰余金 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度
利益の推移
10,572 10,572 8,496 8,496 11,001 11,001 8,707 8,707 17,330 17,330 14,235 14,235 15,54515,545 13,428 13,428 13,68013,680 11,563 11,563 (単位:億円) (単位:%) 平成23年度 平成24年度 自己資本額 自己資本比率 23.00 22.00 21.00 20.00 19.00 18.00 17.00 16.00 15.00 3,500 3,400 3,300 3,200 3,100 3,000 2,900 2,800 2,700自己資本比率の推移
3,248 3,248 3,260 3,260 22.20 22.20 21.07 21.07 平成25年度 3,363 3,363 平成26年度 3,426 3,426 20.22 20.22 18.33 18.33 平成27年度 3,456 3,456 17.60 17.60 (注)「単体自己資本比率」は,「農業協同組合等がその経営の健全性を判断するための基準」(平成18年金融庁・農林水産省告示第 2 号)に基づ き算出しています。なお,平成24年度以前は旧告示(バーゼルⅡ)に基づく単体自己資本比率を記載しています。 平成 27年度事業の概況JAグループは,農家組合員をはじめとする組合員組織を基盤に,市町村段階のJA,都道府県段階・全国段階の 連合会組織で構成し,それぞれが機能分担のもと,信用事業のほか,指導事業,経済事業,共済事業,厚生事業等 を展開しています。この市町村段階から全国段階までの仕組みを系統組織(JAグループ)と呼んでいます。 また,信用事業においては,JA,信連,農林中金をもって「JAバンク」とし,JAグループ一体となり,より高 度で質の高い総合金融サービスの提供を目指しています。 私どもJA兵庫信連は,信用事業を行う都道府県段階の連合会組織として,県内JAの事業運営をサポートする県 域機能を発揮するとともに,「JAバンク兵庫」としてJAと一体となって,組合員や地域利用者,企業などの皆様の お役に立てる金融サービスのご提供に努めています。
〈JAバンク兵庫〉
JAみのり JA兵庫みらい JA丹波ひかみ JA丹波ささやま
JA兵庫西 JAあいおい JAハリマ JAたじま
JA淡路日の出 JAあわじ島 JA兵庫六甲 JAあかし
JA兵庫南 JA加古川南 JA兵庫信連
JAグループの仕組み
組合員及び地域の皆様
共済事業 生命共済 建物更生共済 自動車・ 火災共済 他 厚生事業 健康管理 高齢者対策 他 経済事業 農業用生産資材・ 生活用品の購買 農畜産物の 販売 他 指導事業 営農指導 生活指導 教育指導 他 J A 兵 庫 厚 生 連 J A 兵 庫 中 央 会 J A 共 済 連 J A 全 厚 連 J A 全 農 J A 全 中 信用事業 貯 金 貸 出 為 替 他J A
JAバンク兵庫
JAバンク
J A 兵 庫 信 連 農 林 中 金J
A
都道府県組織全国組織
JAグループの仕組み貯金保険
制度
○ 貯金者を保護するための国の 公的な制度で,万一JAが経営 破綻し,貯金の払い戻しがで きなくなった場合などに貯金 を一定の範囲内で保護します。破綻未然防止
システム
○ JAバンクグループ全体で経営健全性の 向上に取り組む仕組みです。行政の基 準よりもさらに厳しいJAバンク独自の ルール基準を設定し,JAバンク全体で 早期発見と早期改善に取り組みます。JAバンク・セーフティネットの仕組み
県内自主ルール
経営状況の
チェック
①自己資本比率10%以上(全国基準は 8 %以上) ②適正な経営管理体制の整備 ③資産内容・収益性等の精査もしも…
●自己資本比率10%を下回った場合 ⇒JAバンク中央本部・県本部が資本注入しながら経営改善を指導し,自己資本を維持 ●自己資本比率 6 %を下回った場合 ⇒信連・農林中金への事業譲渡,又は近隣JAとの合併 「JAバンクシステム」とは,JAバンク兵庫をはじめ全国のJA・信連・農林中金が実質的に一つの金融機関(JA バンク)として機能し,組合員及び地域の皆様に,より一層の「便利」と「安心」をお届けするためのシステムで す。 より安全な金融機関としての信頼を得るために,JAバンクは「JAバンク・セーフティネット」を構築しています。 まず,公的制度である「貯金保険制度」。そして,「JAバンクシステム」のもとJAバンク全体で経営健全性を確保 する取組みである「破綻未然防止システム」。この仕組みによって,組合員及び地域の皆様により一層の「安心」 をお届けします。自主ルールの設定
~ 全国基準を上回る安全基準(自主ルール)を設定 ~ 当会は,組合員及び地域の皆様へのより透明性の高い情報開示の一環として格付機関である株式会社 格付投資 情報センター(R&I)から「A+」の発行体格付けを取得しています。発行体格付けは企業の総合的な信用度を測 る指標として利用されており,「A+」の高い格付けにより当会の信用力は評価されています。 また,短期格付けにおいても,財務の安全性等が高く評価され,最上位であるa- 1 の格付けを取得しています。 今後も更に経営の健全性,収益性を高め,なお一層お客様に信頼され,安心してご利用いただける金融機関を目 指します。格付け ~発行体格付け“A+”,短期格付け“a- 1 ”~
短期格付け
A+ 当会の格付け A A− a−1 当会の格付け a−2 a−3 b c 発行体格付けとは,発行体が 負う金融債務についての総合 的な債務履行能力に対する R&Iの意見です。 短期格付けとは,短期の金融 債務が約定通り支払われる確 実性についてのR&Iの意見で す。発行体格付け
AAA AA A BBB BB B CCC CC CJAバンク安全性の仕組み
(JAバンクシステム,JAバンク・セーフティネット)
JAバンク安全性の仕組みJAバンク兵庫が地域,顧客から選ばれ,信用事業を通じて,農と食と兵庫県民にとって必要不可欠な「県内 № 1 金融機関」として勝ち残っていくために,平成33年度のJAバンク兵庫の目指す姿,及びそれに向けた平成28 年度~平成30年度までのJAバンク兵庫信連中期経営戦略を次のとおり定めています。
経営方針
経営方針~ JAバンク兵庫信連中期経営戦略(平成28年度~平成30年度)~
コンプライアンス(法令等遵守)
◦基本方針 信用・信頼を第一とする金融機関として,自己責任原則に基づく経営の確立や透明性の高い業務運営の実現を図 るため,法令等遵守(コンプライアンス)態勢の確立を経営の最重要課題の一つとして位置付け,役職員一人ひと りが社会的責任と公共的使命を一層自覚し,各種法令を遵守することはもとより,各種規程,要領等を遵守し,業 務に取り組んでいます。 更に,コンプライアンス経営がより具体的に業務運営に反映されるよう,倫理憲章(基本方針),行動規範,業 務活動における事例解説等を盛り込んだコンプライアンス・マニュアルを策定し,役職員に配付するとともに,各 部署におけるコンプライアンス会議の実施により周知徹底を図っています。倫 理 憲 章
(この会の基本的使命と社会的責任の認識) 1 .この会の基本的使命と金融機関としての社会的責任の重みを常に認識し健全かつ適切な事業運営の徹 底を図る。 (会員等のニーズに適した質の高い金融サービスの提供) 2 .「JAバンクシステム」の一員として,創意と工夫を活かしてニーズに適した質の高い金融及び非金融サ ービスの提供及び「JAバンク基本方針」に基づく指導等を通じて,県内JA信用事業を支援することに よりその役割を十全に発揮し,会員,利用者及び地域社会の発展に寄与する。 (法令や規則等の厳格な遵守) 3 .すべての法令や規則等を厳格に遵守し,社会的規範にもとることのない,公正な事業運営を遂行する。 (反社会的勢力の排除) 4 .社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力に対しては,毅然とした態度で臨み,関係遮断を徹底 する。 (透明性の高い組織風土の構築とコミュニケーションの充実) 5 .経営情報の積極的かつ公正な開示をはじめとして,系統内外とのコミュニケーションの充実を図りつつ, 真に透明な経営の重要性を認識した組織風土を構築する。 (職員の人権の尊重等) 6 .職員の人権,個性を尊重するとともに,安全で働きやすい環境を確保する。 (環境問題への取組み) 7 .資源の効率的な利用や廃棄物の削減を実践するとともに,環境保全に寄与する金融サービスを提供す るなど,環境問題に取り組む。 (社会貢献活動への取組み) 8 .この会が社会の中においてこそ存続・発展し得る存在であることを自覚し,社会と共に歩む「企業市民」 として,社会貢献活動に取り組む。 ◦運営体制 コンプライアンスを確実に実践するため,コンプライアンス規程を制定するとともに,コンプライアンス委員会 を設置し,コンプライアンス態勢全般に係る企画,推進,管理等について協議し,適宜理事会に報告するとともに, 基本方針は経営管理委員会に付議しています。 当会におけるコンプライアンス統括部署であるリスク管理部は,コンプライアンス委員会の事務局をつとめるほ か,各部署のコンプライアンス責任者及びコンプライアンス担当者との連携により,コンプライアンス・プログラ ムの実践に取り組んでいます。 また,収益部門とリスク管理部門を分離し,相互牽制を図る体制をとっているほか,人事管理面においても,年 2 回人事異動を実施し,適正な人事ロ-テ-ションに努めるとともに,年 1 回 1 週間以上連続して職員が職場を離 脱する方策を講じています。リスク管理の状況
リスク管理の状況リスクマネジメント
◦リスクの種類 市場リスク 市場変動により保有するポジションの価値が変動する リスクを意味し,主なものに金利リスク,価格変動リス ク等があります。 信用リスク 与信先,債券発行体等の財務状況の悪化等の理由により, 破綻,延滞又は金利減免等の状況が生じ,保有するポジシ ョンから期待する経済効果が得られないリスクであり,貸出 を行うことにより生じるリスク(与信信用リスク)と有価証 券保有に伴い発生するリスク(市場信用リスク)があります。 流動性リスク 市場環境の急激な変化等によりポジションを迅速かつ 適正な価格で造成,解消することができないリスクであ る市場流動性リスクと,手元資金が減少し取引の決済に 支障をきたすリスクである資金繰りリスクをいいます。 オペレーショナルリスク 様々な人為的又は技術的エラーに係る諸リスクである オペレーションリスク(事務リスク,システムリスク), 市場取引に係る法務リスク,情報漏えい等のリスクの総 称です。 ◦リスクマネジメントの考え方 近年の金融機関を巡る環境は大きな変化を見せており,金融機関業務の多様化,複雑化が進展しています。 こうしたなか,金融機関にはその社会的役割を発揮しつつ,経営の健全性を維持,向上させるため,適切なリス ク管理態勢の構築,運営が求められています。 当会では,収益力の向上を図り,積極的な業務展開を進めていくためには,信用リスクや市場リスク等の様々な リスクを把握し,適切な管理,運営を行うリスク管理態勢の構築が不可欠であると考え,理事会においてリスクマ ネジメントの基本方針を定め,四半期毎に開催する「リスク管理委員会」等のもとで統合的なリスク管理態勢の構 築に努めています。 ◦リスクマネジメントの基本方針 当会が取り得るリスクを認識して適正な収益を確保し,経営の安全性と健全な発展を目指すために不可欠なリス クマネジメントに関する基本方針を定めています。 市場リスクマネジメント 市場取引に係る基本経営戦略は,市場性資産を重要 な収益源として位置付け,適切なリスク管理体制下に おいて調達と運用のギャップを金利情勢等を見極めつ つ調整するなど,的確なマネジメントを行い,市場リ スクを収益化していきます。 信用リスクマネジメント 信用リスク取引に係る基本経営戦略は,クレジット ポリシーで規定された精神のもと,信用リスク取引を 財務安定化のための極めて重要な収益源として位置付 け,貸出や様々なセカンダリー商品等のすべての信用 リスク資産について,個々の取引の適正な収益を確保 するだけでなく,ポートフォリオの観点から信用リス クの統合的マネジメントを行い,トータルパフォーマ ンスの向上を目指しています。 流動性リスクマネジメント 市場流動性リスクに対しては,ポートフォリオ戦略 の検討の際に市場流動性を含めた検討を行います。 資金繰りリスクに対しては,余裕金運用部門におい て流動性リスクマネジメントを担当し,関係部署と連 携し,系統資金動向や大口資金決済の情報に基づき, 資金の効率的運用と資金の安定的流動性確保のバラン スのとれたマネジメントを行います。 オペレーショナルリスクマネジメント オペレーショナルリスクマネジメントは,オペレーショ ンリスク・市場取引に係る法務リスク等受動的に発生す るこれらのリスクを,日常の事務管理において発生を防 止することを目的とするとともに,計量については新自 己資本規制における基礎的手法により算出しています。 また,オペレーショナルリスクの発生予防については, 内部監査(年 1 回以上),自主検査(年 2 回以上)等を通 じて事故防止,事務能力向上を図ります。 当会のリスクマネジメントにおいて,経済資本マネジメントを,リスクを統合的に把握し管理を行う手法と して位置付け,経営の健全性確保に向けてリスク管理の高度化を図り,自己資本をベースとしたリスク許容量 検証プロセスの充実を図ります。 また,自己資本比率は,経営の健全性を判断する基準として,その水準は「早期是正措置」の発動基準とさ れ開示項目でもあることから,金融機関として重要な指標であることを踏まえ,自己資本比率の適正な算出並 びに管理に十全を期していきます。 リスク管理の状況◦リスクマネジメント体制 統合的なリスクマネジメントを適切に実行するために,その重要性を十分に認識したうえで,経営管理委員会, 理事会,リスク管理委員会,ALM委員会の決定・協議に従い,リスク管理を適切に行うとともに,規制資本マネ ジメントにより経営の健全性を確保していきます。 ◦審査体制 信用リスクの二次審査部署として,融資部門から独立した「審査部」を設置し,内部牽制機能を確保するととも に,クレジットポリシーに基づく厳正な与信判断が下せるシステムを採用しています。このような審査体制のもと, 継続的に審査基準の見直しや分析手法の精度向上,内部格付制度の充実に取り組んでいます。 経営全般にわたる管理及び各部署の業務の遂行状況を,独立した部署である「監査部」において,内部管理態勢の 適切性と有効性の観点から検証・評価し,改善事項の勧告などを通じて業務運営の適切性の維持・改善に努めています。 また,内部監査は当会の全部署を対象に,年度の内部監査計画に基づき年 1 回以上実施しています。監査結果は 理事長及び監事に報告した後,被監査部署に通知され,定期的に被監査部署の改善取組状況をフォローアップする とともに,監査結果の概要を定期的に理事会・経営管理委員会に報告しています。 更に,全部署において自己管理による業務執行の適切性の確保を期するため,自主検査を実施しています。