特 殊教育 学研 究
,38
(2
),43−51,2000.
事 象 関 連 電 位 を指 標
とし た
自
閉症
の情 報 処 理
視 覚 刺 激
の同時 呈
示 と継 時 呈 示
によ
る比較 一
高 橋
圭三
事 象 関連 電 位によ り
、
自閉症者 と健 常者の情 報 処 理の様子 を 比 較 し た。 課 題 は2
つ の ひ ら が な を同時 と継時 の2
方 法に よ る呈示で、
その異 同 弁 別 を 行っ た。
自 閉 症者の情 報処 理 につ い て の問 題 と して、
従 来 指 摘 さ れてい た 視 覚 と聴 覚 とい うモ ダ リ ティー
で の差 とい うこ と以 外に 同時呈 示 と継 時呈 示の間に差が 生 じ た。 継 時呈 示 さ れ る情 報処 理 は同 時呈 示 に比べ、
そ のN
八 電 位の潜 時 を 比 較 す ると健 常者よ り もその 処 理が遅れ るこ と が わ か っ た。
し か し、
行 動 指 標での 正答 率や 反応 時 間に は有 意な差が な か っ た。 自 閉症者は継 時処 理が で き ない の で は な く、
継 時呈 示 さ れ た情 報の処理 にっ い て健 常 者よ り多くの時 間を 必 要 とする とい え る。 キー ・
ワー
ド 視覚 自閉症NA
電位 同 時呈 示条件 継 時呈 示条件1 .
は じめ に 自閉 症 者の情 報 処理につ いて の先 行 研 究で は、
モ ダ リテ ィー
の差に着 目し、 視 覚と聴 覚を 比較し た研 究が 散 見 さ れ る。
本 研究で は そ れ ぞ れのモ ダリテ ィー
が固 有に もつ刺 激 特 性に着目し、
聴 覚の継時 的特性が 自 閉 症者の聴 覚 情 報処 理 での不適 応 行動 を招い てい る と考 えた。
一
般的に視 覚 刺 激の特 性は同 時性が 強 く、
かつ 注 意 を焦点化 する能 動 的 性 格を もっ てい る とい わ れ て い る。 そ れに対して聴 覚で は 継時性 が 強 く、
受 動 的性 格 がある といわ れ て い る。 本 研 究の興 味の対 象は、
自閉 症者の障 害 特 性の ひ とつ といわれる 言 語 記 号の 獲 得 と その操 作の障 害に ある。
こ の うち の音 声 言 語で は そ の 特 性か ら、
継 時 的特 性を示す。 継 時呈 示 さ れた複 数の 音 節で構 成さ れる言 語刺 激 は、
呈 示 さ れ る音 節単位の 刺 激 ひ とつ ひ とつ を順次 弁 別す る必要を生 じ さ せ る。 そ し て、
短期 記 憶 (バ ッ フ ァー
メモ リー
) を 利 用 し、
呈 示 された刺 激の順 序に沿っ て、
1つ の まとまっ た単 語 あ るい は概 念と して処理 される。 こ の よう な刺 激 特 性が、
モ ダリ テ ィー
間 (視 覚と聴 覚 )に み られ る 自 閉 症者の情 報処 理のアンバ ラン ス を も た ら すので は ない か と考 え た。
近 年、
内的 処 理 過 程 を 探 る 測 度 として、
事 象 関 連 電位 (event
−
relatedbrain
potentia1;ERP
) が 注目を 浴 香 川 県立香 川 中部 養 護 学 校びてい る。 この
ERP
を指 標と し、
自閉症者 群と健 常者 群
、
そ れ ぞ れの視 覚 と聴 覚の情 報処 理の様 子 を 比 較 した研究にCourchesne
,Kilman
,
Galambos
, andLincoln
(1984
),Courchesne ,
Lincoln,
Kilman
,
andGalambos
(1985
>やNovick ,
Vaughan
,
Kurtzberg ,
and
Simson
(1980
)の研 究がある。 し か し、
聴 覚に関 し て は、Courchesne
ら (1984, 1985
) とNovick
ら (1980)の研 究 は 健 常 者 群 との違い を 報 告し てい る もの の、
視 覚 に関 し て は相 反 する報告 を して い る。Cour ・
chesne ら (1984,1985
)は、
視 覚 脣報 処理 に健 常 者 群 と違い が ない とし、
Novick
ら (1980
)は 健 常 者 群 との 違い を報 告し てい る。ERP
指 標に は、
刺 激処 理 過程で重 畳 す る複 数の要因 か ら特定の 要因につ い て の関連 電 位 を 浮き彫 りに する こ と の で きる電 位にRitter,
Simson ,
andVaughan
(
1983
)の報 告し た NA 電 位 が ある。
こ の電位は、
弁 別 反 応 課 題 (discriminative
response task;DRT
>の非標 的の反応 電 位か ら
、
単 純反応 課 題 (simple responsetask;
SRT
)の反 応 電 位を差し引 くこ とで求め られ る。 つ ま り、
こ のNA
電 位は両 反応に共 通 す る刺 激 探 知ま で の電 位を相 殺し、
以後の刺 激評価 過 程を反 映す る電 位で ある と さ れ て い る。
さ ら に、
この電位には2 つ の 成 分が知ら れ て お り、
その ひ とつ 前 半 部 成 分は刺 激の 符 号 化 を 反 映 す ると されてい る。
そ しても うひ とつ後 半部成 分は、
その ピー
ク潜時が記 憶サ イ ズに影 響を受 け、
記 憶 情 報の連 合・
変 換・
範 疇 化 や 記 憶 探 索 などを一
43一
丁able
1
自 閉症 者 群の プ ロ フ ィー
ル高 橋 圭 三
CA
VIQ
PIQ
FIQ
CARS
A26
歳 6 か 月 4966
B
32歳 10か 月 40以下 48C
32歳 6 か 月 51 44D
30歳 7 か 月 10079
E30
歳 1 か 月53
80 F 26歳 2 か月56
66 323Q廿
27匚
」 448 擔 UrD 41.
541.
541.
536.
530.
030
.
5
反映する と さ れ てい る。 本研 究はボ タン押 しの反 応 時 間 と、
こ のNA
電 位の 前・
後 半 部の振 幅お よび、
ピー
ク潜 時を指 標 と し、
自 閉症者 群と健 常 者 群の同時 呈 示条件 と継時 呈 示条 件で の ボタン押しの 反応 時間 やN
, 電 位の 振る舞い 方をみ る こ と で、
両 群の処理方 略に違い が ある の か どうか を 明 ら かにす るこ と を 目 的 とす る。
II
,
方 法1.
被 験 者 被験者は健 常 者 群 と自閉症者群の2
グルー
プ各6
名 で構 成し た。 健 常 者 群は大 学 院生、 平均 年 齢31 .
0
(SD
5 .
9
) 歳であっ た。 自閉 症 者 群は、
精 神 科 医か ら自 閉 症 と診 断さ れ、
練習 試 行で本 課題の理解可能 な 者のうち
、
さ ら にThe
ChildhoodAutism
Rating Scale (CARS
)で 自閉症者と認め られ た者 と し た (平 均得 点36 .
9
(SD =5.
52
))。
なお、
自閉 症 者 群 の平 均 年 齢 は29 .
4
(SD
;2 .
7
)歳、
WISC ・
R
FIQ
の平 均は57.
6
(SD
=17.
2
)、PIQ
の平均は63 .
8
(SD
=15.1
)で あっ た。 そ し て、
両 群ともに全員 男性で あっ た (Table
1
)。
なお、
い
Fig.2
刺 激 文 字え
Fig.3
マ ス ク 図 版 自閉症 者 群のVIQ
は1
名VIQ
40
以下の もの が い た の で算 出 し てい ない。
2.
刺 激 刺 激は ひ らが な母 音5
文 字のなか で、 形 態的 類 似 性 の高い 「あ 」と 「お」を除く3
文 字の うち 「い 」と 「え 」 の2
文 字を用い た。同 時 呈 示 条 件の呈 示 時 間は400ms
と し、
継 時呈 示条 件は第1
刺 激 (S1
)を200
ms で、
続 い て第2
刺 激 (S2
)を200
ms 呈 示 し、
延べ400
ms と し た。刺 激間隔は、
刺 激 呈 示時間 を含め2200ms 、
2400
ms、2600
ms、2800
ms の4
種を設 定し た (Fig.1
>。
3
,
呈 示 方 法刺 激と して は
、
標的に 「い い 」、
「え え 」 (p=.
50
)、
非 標 的に 「い え」 (Fig.2
)、
「えい」 (p=.
50
)の計4
種 類の 文 字 刺 激 を 設 定 し た。
刺 激 文 字 が 呈 示 さ れ てい る 同 時呈 示条 件 右 1文 字 呈示 左 1文 字呈 示 マ ス ク ← 400ms→
← 1800〜
2400ms → 継 時 呈 示 条件 マ ス ク 右 1文 字呈 示 左 1文 字呈 示 マ ス ク マ ス ク ←200ms
→ ← 200ms一
ゆ
← 180〜
2400ms →Fig.1
時 間 配 列 同時呈 示条 件と継 時呈 示 条 件 の 刺 激 文 字 とマ ス ク 図 版の配 列.
事 象 関 連 電 位を指 標とし た自閉 症の情 報 処理 以外の時 間はマ ス ク図 版 (
Fig.
3
)を 呈 示 し、
残 像の影 響 を 抑 制した。
同 時 呈 示 課 題、
継 時 呈 示 課 題 ともに、
SRT
とDRT
を行っ た。SRT
は呈 示されたすべ て の 刺 激に ボタ ン押し を行い、DRT
は呈 示さ れ た 2つ の 刺 激が同じならば ボタ ン を押す課 題で ある。 な お、
継 時呈 示のSRT
はS2
呈 示 後 に ボタン押 し を行 っ た。
刺 激は1 .
5m
前の17
インチ コ ン ピュー
ター
ス クリー
ン (NANAO
製 )上に白 黒 画 面で、1
文字の大 き さ を4 .
7
cm ×4 .
7cm 、
視 野角は左 右4°
で呈 示 し た。
輝度は8
cd /m2 と2cd
/m2、
コ ン ト ラ ス ト は60
%であっ た。 なお、 自閉 症 者 群選出の た め の練 習 課 題で は、 実験 で 使 用 す るのと は 異 な る 刺激 系 列を 用い、
同時呈 示 と 継 時呈 示のDRT
各1
ブロ ッ ク (20
試行)に よ り、
こ の課題 が 理解で き る者6
名を選 んだ。 そ し て、
自閉症 者 群 (6
名)に対して はSRT
とDRT
実験前
に、
コ ン ピュー
ター
画 面の刺 激と同じ2
文 字をA4
紙 面 上で、
同 時 呈示 し て課 題理解の確 認 を 行っ た。
そ し て、
各 課 題 (4
条 件)前に 実際の コ ン ピ ュー
ター
画 面 で、
そ れ ぞ れ、1
ブロ ッ ク (20
試行 )の練習課 題 を行い、
課 題 習 熟の徹 底を 図っ た。
各 条 件は1
ブロ ッ クを20
試行 と して、
SRT
は最低3
ブロ ッ ク 以 上、DRT
は 最 低6
ブロ ッ ク 以 上 を各 被 験者に行っ た。 そ して、4
試行 をひ とつ の セ ッ ト と し て、4
種の 刺 激 画 面 と4種 の刺 激 間 隔 を ラ ン ダムに配 列す る こ と で、
同じ刺 激 画 面 と刺激間 隔が3
回 以 上 連 続し ない よ うにし た。
各 ブロ ッ ク間に は、
30〜
60 秒の 休 憩 を設 定 し た。 また、
全18
ブ ロ ッ ク (同 時 呈示SRT
:3
ブロ ッ ク、
同 時呈 示DRT
:6
ブロ ッ ク、
継時 呈 示SRT
:3
ブロ ッ ク、
継時 呈 示DRT
:6
ブロ ック) の う ち9
ブロ ッ ク が終わっ た時 点で 、 全被
験者に2〜
3
分 間の小 休止 を設 定し た。 そ れ以 外に、
被 験 者の状 態に よっ て、
数ブロ ッ クごと に2〜3
分 間の小 休 止 を 取っ た。SRT ・DRT
と同 時呈示・
継 時呈示 の各 条 件 課題の 呈 示 順 序 は、
順 序 効 果 を 相 殺 す る た めに 4系 列 を 設 定 し た (Fig.
4)。
4,
測 定測定場 所 は
、
A
施 設の園 内 診 療室、
お よ びH
大学 精 神生 理検査室を使っ た。
な お、
両 測 定 場 所と もに外 部 か らの騒 音 は無 視で き、
室 内 照 明 を落と し 画 面に集中 で き る状況で 測 定 を 行 っ た。 被 験 者は接 地アー
ス し た シー
ル ドマ ッ ト の上で、 机を間に置い て コ ン ピュー
ター
前面L5
rn の位置の椅子 に腰 掛け 測定し た。
被 験 者 は机上 に置い た ボ タン に人 差 し指を置き待機
し た。 脳 電位 (EEG
)は両 耳 朶結 合を基準 電極と し、
国 際 系 列1 系 列2 系 列3 系列4巨魎
→[
弁 別 同 時]一
[亟
→[至凾 藍]
[
弁 別 同 時]
→[
i
唖
一
[
璽
]一
匿璽
匣壅
]
一
[
弁別継時]
一
[
亟
]
→
[
画
匯
]
一
[
単 純 継 時]
一
[
壅 囲
一
[
亟
Fig.
4
系 列 式10−20
法に基づい て、
正中 線上前頭 部 (Fz
)、
中 心 部 (Cz
)、
頭 頂部 (Pz
) を 活性電極として 単 極 導 出した。 同時に瞬きを含む垂直 方 向の眼球 運 動 (EOG
)と、
行 動 指 標と し て ボタン押し反応 時 間も記録 し た。 生体 信号 は、
生 体 アン プ (AB −
621B
,
日 本 光 電製)を 用い、AID
変 換器 (MP −100
,BioPac
製 )で変 換 後、
コ ン ピュ
ー
ター
(Power
Book
1400c
/133,
Macintosh
製 )で 生 体信 号 記 録 ソ フ ト (
AcqKnowledge
lll
,BioPac
製 )に よ り記 録し た。 なお、
サ ン プ リン グクロ ッ クは、
500Hz (2ms )と し た。 ま た、
刺 激呈 示用コ ン ピュー
ター
(Macintosh
7600
/120
)か らの標 的 刺 激 と 非 標 的 刺 激、
そ れ ぞ れの ト リガー
信 号とボタン押し反応を別々 の チ ャ ンネル に 記 録 し た。
5.
デー
タ処理 デー
タ 処 理 は オフ ライン で行い、
526
の サン プ リン グポ イ ン ト (1052ms
)に っ い て、
刺 激 前50
ms か ら刺 激 後600ms
を各 被験者・
条 件ごと に25
回 加算し た。 加算す るに あ た り、
各チャ ンネル で 測定の前 後に記 録 し た50
μV
の キャ リ ブレー
ショ ン信 号の平 均 振 幅 値 を求め た。 そ し て、
各チ ャ ン ネル 間の キ ャ リ プレー
シ ョ ン電 圧値が同じ振 幅になるよ うに各 チ ャ ンネル の係 数を求め、
その 係 数に よ り毎 試 行、
各チ ャ ンネル の 電 圧校正を行っ た。 校正 した デー
タ は、32Hz
以 上 と、1
Hz
以 下 を 除 くフ ィ ル ター
をか け、
刺激 前 50 ms か ら 刺 激呈 示 ま で の平 均 値を基 線と し た。 そ し て、EOG
とFz 、
Cz 、
Pz
の4
チャ ンネル に っ い て、
基線か ら85
μV
以上の電 位 差が ある場 合は、
瞬きな どによ り刺 激が ト リ ガー
ポ イン トで入力され て ない 可 能 性があり、
コ ン ピュー
ター
で 自 動 的に除 外 し た。
な お、
誤 反 応 試 行は、
加 算 前に 削 除 した。6.
分 析 行 動 指 標の 反 応 時 間 や 加 算 し た デー
タの 分 析 は、
被 験 者 数が少な く個 人 差がある こ と な ど の理 由に よ り、
U
検 定に よっ て群 間 比 較を行った
。 群 間比 較は、NA
電 位の潜 時と振 幅につ い て行っ た。N
。 電位 潜 時は各 条一
45一
高 橋 圭 三
Table
2
健 常 者 群と自閉 症 者 群の同 時呈 示 お よび 継 時呈 示の平均 正 答率 (% ) 同 時 呈 示 継 時 呈 示 健 常 者 群 自閉症者群 98.
6 [1.
3]95.
5
[0.
6
] 99.
7
[0,
7
]94,
3
[6,
2] [ ] 内は標 準 偏 差.
Table3
健 常 者 群 と自閉症者 群の同 時呈 示 およ び 継 時呈 示の平 均 反応時間 (ms )轟
翻
瀦
… ・。 ・。 ・。 ・。 。 囗 健常 書癰剛A ■ 自閉症 宕 群HA 卩Fz
Cz
Pz 同 時 黒 示条件 同 時 呈示 継 時 呈示 反応 時間 反応 時間 Fz Cz Pz 継時星 示条件 箒1刺激 Fz Cz Pz 継 時旦 示条件 箪2刺 激Fig.
5
NA
電位 前 半 部一
後 半 部ピー
ク間潜時 健 常 者群 438.
3[82,
0]{407,
0} 620.
5 [86.
3 】{588.
0} 自 閉 症 者 群620.
5
[86.
3
]{488.
9
}705.
4 [132.
0
]{665.
0
} [ ] 内は標 準 偏 差,
{ } 内は中 央 値.
件 別、
被 験 者 別に そ れ ぞ れ の前 半 部と後 半 部の ピー
ク 潜 時を求め た。NA
電 位 は、
視覚刺 激 の符号 化か らパ ター
ン認 知 ま での 刺 激 評 価過程を 反映 し (松 岡,1993
;松 岡,
斎 藤,
上 杢,
佐 藤,1993
)、N100
か らN200
帯 域に出 現する陰 性 電位で ある (潜 時 150〜
400ms に認 め ら れ る 陰性 電 位 :宮 尾1992
)。 さ らに、Cz
で は二 峰 性の電 位 と し て2
つ の成 分が認 め ら れ、
正中線上後頭 部 (Oz
) や 側 頭 部 (T
)に はFz 、
Cz 、
Pz
か ら導 出し た共 通のこ 峰 性 成 分 よ り若 干 早 く別 の成分 を 認 め、NA
電 位 は3
成 分 で構 成さ れ て い る と し て い る (松岡,1993
;松岡 ら,1993
)。 本 研 究で は、
NA
電 位 前 半部をFz
、
Cz
、
Pz
上 でN100 〜N200
帯 域に み ら れ る最初の 陰性 方向の ピー
ク と し、
次に これに続 く最 大の陰 性 方 向の ピー
クをNA
電位 後 半部 とし た。
そ して、
このFz 、
Cz
、
Pz に共 通の 二峰 性 成 分であ るNA
電 位 前 半部 とNA
電位後 半 部の ピー
ク潜 時につ い て分 析を行っ た。IIL
結 果1,
同 時・
継 時 呈 示の正 答 率 と 反 応 時 間 健 常 者 群 と自閉 症 者 群のDRT
での 平 均正答 率 を Table 2 に示 した。 両 群と もに 90% 以 上の 高い 正答 率 で あっ たが、
健 常 者 群に比べ 自閉 症 者 群の 正答 率は わ ずか に低かっ た。 し か し、
両 群 問に有 意な差は認めら れ なか っ た。ボタン押 し反応に つ い て
、
同 時 呈 示 と継時 呈 示の群 平 均反応 時 間は、
い ずれ も自 閉症 者 群が健 常 者 群よ り 遅か っ た (Table
3) 。 しか し、 同 時呈 示、 継 時呈 示 と ms45040035030025020015010050 0 口 健常著 群N轟前 半 部 口 自鬧 症者 群閥A前 半 部 圀 髏常君 醐轟
後 半 部 ■ 目 閉 症 者 麟 臨 後 半 部iI
b
}鴇
P
『
馬
5亡
肖
賽」
ラ
b
げ
ε
島
卜
、
Fz Cz Pz 同 時 呈 示 条 件 Fz Cz Pz 継時呈 示条件 箪1刺 激 Fz Cz Pz 継 時呈 示条 件 第2刺 激Fig.6
同 時呈 示 条 件 と継 時 呈 示 条 件で のN
。 電 位 潜 時 もに、
反 応 時 間に つ い て も、 群 間に有意な差がみ られ なか っ た。2.
同 時・
継 時 呈 示のNA
電 位 両群につ い て ト リガー
ポイ ン トか ら測 定 部 位 ごと の 潜 時をFig.5
に 示 し た。 継 時S2
に 関し て はS2
呈示時 点か らの潜 時 を 示 して い る。 統計学 的に、
同 時 呈 示条 件のFz 、
Cz 、
Pz
の各導 出 部でN
。 電 位後 半部の 潜 時 が 健 常 者 群に比 べ 、 自 閉症者 群で有意 に早 か っ た (Fz
:U
=3.
5,
P
<,
05
;Cz
:U =3.
5 ,P
く.
05
;Pz
:U =4,
P
く.
05
)。 反 対に、
継 時呈示 条 件のS2
につ い て は、
NA
電 位 前 半 部のCz 、
Pz
(Cz
;U
=2
,P
≦.
Ol
;Pz
:U
=
2, P≦.
01
) と、N
“ 電 位 後 半部のFz 、
Cz 、
Pz の導 出部 で有意に遅 かっ た (Fz
:U
=1.
5,
P
≦.
Ol
;Pz
:U
=2
,
P
≦.
01
;Cz
:U
=3
,P
≦,
02
)。
しか し、
そ れ 以 外の条 件、
お よび部 位で は潜 時と振 幅に つ い て、
両 群に有 意な差 が み ら れ なか っ た。 同時お よび継時のS1
・
S2
に お け るN
八 電位 前・
後半 部の ピー
ク間 潜 時をFig.5
に示 し た。 自閉 症 者 群の同事 象 関 連 電 位を指 標と し た自 閉 症の情 報 処理 丁able
4
同 時呈 示 と継 時呈 示第1
・
2
刺 激のN
,前 半 部 と後 半 部の潜 時 平 均 値Fz
Cz
Pz
同時呈 示 N^ 前 半部 潜 時 (ms ) 健 常 者 群 182,
7 [19.
1] {187.
0} 自閉 症 者 群 172.
0 [19.
3]{170.
0} 同 時 呈 示NA
後 半 部 潜 時 (ms ) 健 常 者 群 279.
7 [27.
3] {279.
0} 自閉 症 者 群 240.
3 [21.
9]{241.
0}’ 継 時 呈 示 第 1刺 激NA
前 半 部 潜 時 (ms ) 健 常 者 群 229.
3 [37.
8] {232,
0} 自閉 症 者 群 193.
0 [26.
8] {186.
0} 継 時 呈 示 第 1刺 激NA 後 半 部 潜 時 (ms ) 健 常 者 群 320.
7 [23.
7] {325.
} 自 閉 症 者 群 261.
3 [39.
2] {250.
0}* 継 時呈 示第 2刺 激NA
前 半 部 潜 時 (ms ) 健常 者群398.
7
[25.
3
]{402.
0
} 自 閉 症 者 群425.
7
[23.
1
]{426.
} 継 時呈 示第 2刺 激 N^後 半 部 潜 時 (ms ) 健 常 者 群 514.
0 [34,
1] {518.
0} 自 閉 症 者 群599.
0
[45.
0
] {594.
0
}’ 183,
0
[17.
4] {187.
0
} 171.
0 [17.
3] {172.
0} 283.
0 [25.
4] {288.
0} 236.
7 [11.
8] {242.
0}零 226.
3 [31.
4] {233.
0} 194.
0 [25.
4] {190,
0} 315.
3 [25.
5] {316.
O} 267.
3 [30.
3] {257.
0}*383.
7
[27.
3
] {385.
0
} 432.
6
[27.
9
] {429.
}* 503.
7 [3L3 ] {503.
O} 596.
3 [60.
2] {607.
0}寧179,
0
[13.
9
] {184,
0
} 1683 [18.
5
] {168、
0
} 276,
3 [21.
3] {280,
0} 235,
7 [11.
8] {240.
0}1 223.
7 [30.
9] {222.
0} 197.
3 [19.
5] {198.
0} 321.
7 [26.
4] {326.
0} 266.
3 [28.
6] {259.
}*384.
0
[28.
3
] {384.
0
}433.
3
[20.
2
] {436.
}* 499,
0 [36.
1] {496.
0} 602.
[57.
2] {620,
0}奪呻
P
く.
05
, [ ]内は標 準 偏 差, { } 内は中央 値.
継 時 呈 示 第 2刺 激の潜 時は第 1刺 激か らの潜 時を示してい る.
Fig
.
7
同 時 呈 示 条 件 総 平 均
NA
電位Fig.
8
継 時呈 示条 件 総 平 均N
且 電 位 時呈 示で の ピー
ク間潜 時 はCz
で健 常 者 群 よ り も 早 く、
反 対に 継 時 呈 示さ れ たS2
は、
Fz
で遅く なっ てい た。 統 計 学 的に、
NA
電位 前 半 部 と後 半 部の ピー
ク間 潜 時は、 同 時呈 示 課 題のPz
で 自 閉 症 者 群 の潜 時が健 常 者 群よ り、
早い 傾 向を 示 し た が、
有 意で なか っ た (U
=7,
P
≦.
10
)、
Cz
で は 健常 者群 よ り有 意に遅か っ た (U
竺3,
P
<.
05
)。 ま た、
継 時呈 示 課 題のS2
では、
Fz
で 自閉症者群が健常 者 群よ り、
有 意に ピー
ク間 潜 時 が早かっ た (U
・ ・3,P
〈.
05
) 。 そ れ ぞ れ の群で、S1
とS2
に対す るNA
電 位 前半 部 の潜 時 比 較 を 行 っ た (Fig.
6
)。 自 閉 症 者 群のFz 、
Cz
で は、Sl
よ りもS2
の潜 時の ほ う が遅い傾 向が み ら れ た が有意で はなか っ た (Fz
:U
=6,
P
<.
10;
Cz
:U
=
6
,
P
〈.
10
)、Pz
で は有 意に遅かっ た (U ;3.
5,
P
<.
05
)。
し か し、
健常
者 群で は 反対に、
Cz
、
Pz
でS1
よ り もS2
の ほ うが早い傾 向が み ら れ た が有意 で は な かっ た一
47一
高 橋 圭 三 (
Cz
:U
=5,
P
く.
10;
Pz
:U
=5,
P
<.
10
)。 両 群のそ れ ぞ れ のNA
電 位 各 ピー
ク潜 時 に つ い て比 較す る と、
Table
4
の よ うにな る 。 同 時呈 示 課 題と継 時呈示課 題の総 平 均 潜 時はFig.7
とFig.8
の ようであ る。
なお、NA
電 位 振 幅に っ い て は 同 時呈 示条 件、
維 持 条 件ともに統 計 的に有 意な差が な か っ た。
IV
.
考 察 行 動 指 標の反応 時 間と正答 率から、
視 覚 情 報 処理 と い う面に限っ てい うな らば、 基本 的に 自閉症者 群の視 覚 情 報 処 理は、
健常者 群 と同 じであ ると考えて よい と す る先 行 研 究を支 持す る結果 で あ っ た (Ruchkin ,
Sutton
,
Kietzman ,
&Silver
,1980
)。
ERP
指 標で は健常
者 群 の継 時 呈 示S2
でのN
^電位 前 半 部 潜 時がS1
の そ れ よ り有 意で はない が、 早 期 化 する傾 向を 示 してい る。
つ ま り、
前 もっ て 標 的が示 さ れ てい る と き のS2
の符 号 化、
あるい は2
連 発 刺 激の2
発 目の符 号 化は、
その潜時が早 期化する傾 向が あ ると 考え ら れ る。 この こ と か ら、
同 時呈示課 題の 自閉 症 者 群N
,電 位 前 半部の潜 時 が 早 期 化 し たのは、
健 常 者 群 の継 時 呈示S2
と 同 じ方 略、
あ るい は よ く似た処理が 行わ れ た 可能 性が考え ら れ る。 反 応時 間や 正答 率に健 常 者 群 と差がない ことか ら、 処 理がで き ない の で はな い。
自閉 症 群の同時 呈示で のNA
電 位 前 半 部や継 時 呈 示第2
刺 激の処理 の遅れ か ら自閉 症 群は この よ うな弁 別 課 題で は別 の方 略で処 理 を 行 っ て い ると考 え ら れ る。
自 閉 症者群 は同 時、
継 時の両呈示 課題 に お い て2
文 字を ひ とつ の セ ッ トにし た 記 憶 照 合 方 略で課 題 を 処 理 してい た可 能性が ある。 つ ま り、
「い い 」「え え」「い え」 「えい 」とい う4
種の刺激 画 面で、
「2
つ の文字が 同 じ だ っ た らボタ ン を押す」とい う課 題か ら、
『「い い」「え え」 だっ たら ボタ ン を押す』とい うように、 健 常 者 群の継 時呈 示のS2
処理 同 様 に 前もっ て 照 合 すべ き標的 を 用 意し て課 題に対する方 略に置き換え てい た可能 性も考 え ら れ る。
健 常 者 群の
S2
のNA
電位 前 半部 ピー
ク はCz
、
Pz
でS1
のNA
電位ピー
ク よ りもその 潜 時が早い 傾 向が あ っ た。
自 閉 症者 群の 同時 呈 示 刺 激が 2連 発で ない にも か か わ らず、
早く行わ れ てい た。 こ の こ と と健 常 者 群 のS2
ピー
ク早期 化を考え合わせ る と、 このS2
の ピー
ク が早 期化す る傾 向に つ い て 自閉 症 者 群 は、
異 同 弁 別 を行わずに健 常 者 群のS2
の処理 と同 様の方略で課題 を 処 理 し た 可能 性が ある。 も し、
前 もっ て標的 を 用 意 し弁 別 課 題を行う 記 憶探 索課 題の実験 計 画に お い て、
健 常者 群 のN
,電位 前 半部の処理 タ イ ミン グが こ の 同 時呈 示 よ り早ま れ ば、
自閉症者 群の早い 処理タイ ミ ン グは、 照 合すべ き標 的を前もっ て用意して処理 してい たとい える。
継 時 呈示課 題で は、
自閉 症 者 群に み ら れ る継 時呈 示S2
のNA
電 位前 後 半 部潜 時の遅 れ か ら、
先行 す るS
ユ の短 期 記 憶 を、
異 同 弁 別 に つ い て有効 に活 用 す るこ と が困難な ため、2
文字を1
セ ッ トと し、
前もっ て標的 を 用 意 し、 課題 遂 行 す る 方 略 を 用い た と考え るこ ともで き る。
つ ま り、
本 実 験に限っ てい うなら自閉 症 者 群は、
方略の違 い によ り、
符号 化 に始 まる継 時呈 示のS2
をS1
と照合する課 題で は、
情 報の連 合、
範 疇 化、
記 憶 探 索とい う 処 理に健 常 者 群 と比べ より多 くの時 間が 必 要 で あ る とい え る。
しか し、
健常者 群 と 同 じ 方 略 を 使っ てい た と し て も次の ような こ と が い え る。
Courchesne
,
Townsend
,
Akshoomoff
,
Saitoh
,
Yeung −Courchesne ,
Lincoln,
James
,
Haas ,
Schreib・
man
,
andLau
(1994
)やCiesielski
,
Knight ,
Prince,
Harris
, andHandmaker
(1995
)の報告で 自閉 症 者は、
単
一
モ ダリ テ ィー
で の標 的 検 出につ い て問 題が な い と してい る。
しか し、
視 覚 と聴 覚の 複 数の刺 激 試 行 群 を 交互に配 列し、
そ れぞれのモ ダリ ティー
内の標 的 刺 激 を検出 す る課題で、
次の よ う な結論 を 導 き出して い る。 視 覚 と聴覚の2
つ の モ ダ リ ティー
間で 、 注意 を 速 やか に移 行す る課 題の反 応 時 間と正答 率の低さ か ら、
自閉 症 者は素 早い 注 意シ フ ト に困 難 性がある と し て い る。 こ の 報 告でCourchesne
ら (1994
>は 健 常 者 群 と 同 様の標 的 発 見のP300
反応 を報 告し、
刺 激を見 失 っ て い るの では な く、
モ ダリ ティー
間の素 早 い注 意 シ フ ト が困 難である と報 告し てい る。継時 呈示 のS1
のNA
電 位 後半部潜 時 が 早い とい う事 実は、
個々 の刺 激の同 定 は、
健 常 者 群より速や かに行われ る こ とを意 味して い る。 し か し、S2
のNA
電位 潜 時は、 前 後 半 部も と も に 健常 者群 よ り も遅か っ た。
この処 理で は、
S1
とS2
の 同 定とい う処理 に加え て、2
つ の刺 激の異 同弁 別とい う 並 列 処 理 が 要 求 さ れる。 本研 究で得られ た継 時呈 示S2
のNA
電位潜時の遅 れ は、
単 純 な同 定処 理 は問題 が ない が、
同 定と弁 別とい う 並列 処理 に、
健 常 者 群より 多くの時間がか か る と い うこ と を 意味し てい る。 しか も、
本 研 究の弁 別は、
固 定さ れ た標 的の 検 出で は な く、 試 行ごと に標 的を更 新し なけ れ ばな ら ない 課 題で あ る。
これ はCourchesne
ら (1994
) やCiesielski
ら (1995
)の報 告の単焦点 課題 に は問題が ない が、
モ ダ リ テ ィー
問で素 早い 注 意 シ フ ト を伴う課 題の困 難 性を指 摘し てい る こ と と、
変化 する標 的に対す る注意シ フ ト事 象関 連電位を指 標と し た 自閉症の情 報処 理 とい う点 で 共 通 す る
。
し か し、
本 実 験の被 験 者で あ る 自閉症者 群は、
Table
1
で示 したよ うに知 的障 害が あ る。
そのた め、
本 研 究の短 期 記憶を使っ た 並列 処理に お い て、
健 常 者群 よ り多くの 時間 を費やす とい うこ と は、
知的能 力の 反 映の可 能 性 も考え ら れ る。
そこで、
ダウ ン症者群な どの デー
タ と比較 する必要が考えられ る。
これ らは、
今 後の 残 さ れ た 課 題 の ひ と つ に した い o 自閉 症 者 群 の 継 時処理S2
のNA
電位 前半 部 (Cz ,
Pz
) と後 半 部 (Fz
,
Cz ,
Pz
)の潜 時は、 健 常 者 群よ り 有意に遅れ て い た (Table
4)。
先 に示 した よ うに、
自 閉症 者群 は 並列 処理に 多く の時間を必要と し、
継 時 的 に示 さ れ る 複 数の刺激 を、 1
つ のま と ま りの あ る もの と して処 理 す ることが遅い とい う 可能 性が考 え ら れ る。 自閉 症 者の 予 期で き な い新 奇 刺 激に対す る反応に つ い てCourchesne
(1987
)は、 新 奇 刺 激を探 知はする が、
その後の新 奇な情 報を 処 理 す るこ と が障 害さ れ、
そ れ がP300
減 衰 に反 映 さ れてい る と してい る。
ドー
ソン (1994
)に よ れ ば自 閉症者の 新 奇 刺激 に対す るP300
の現れ方は、
新奇 刺 激 を 嫌 悪 刺 激 と して 反 応 し てい る と考え ら れ る と し てい る。 本 研 究の課題 で は、
刺 激 を試行 ごと に 変化 する非 固 定の 新 奇 刺 激 標 的と し て 示 し た。 継 時呈示の異 同 弁 別 課 題は自 閉症者に とっ て、2
つ の刺 激の 同定と短 期 記 憶 との 異 同 弁 別の 並列 処理 を余 儀な くさ れ、
毎 試 行すべ てが新 奇的で、 彼 ら の最 も 苦 手とする課題で あっ たの か もしれない。
それ に もか かわ らず、
健 常 者 群 と同程 度の正答 率と反 応 時 間を 示 し た こ と は、
彼らが素 早い 注 意シ フ トを 必 要 と し ない 方 略 で課 題 を 処 理 してい た と考えざる を得な い。 つ ま り、2
つ の 文 字の比較を伴っ た 処 理で はな く、
前もっ て標 的を記憶の中に 用 意 し た 方 略で あ るとい え る。
こ の こ と は、
ERP
測定の前に行っ た練 習課題を行 う 中で彼 らが獲得した方 略、
つ ま り、2
文 字の異動 弁 別 で は な く、2
文 字を1
セ ッ ト と し た 方 略であると も 考 え られ る。 ゆえに、
継時 呈 示S2
刺 激で の処 理 方 略は先 行す るS1
と次のS2
を合 成す る処理 が加わ り、S2
に 対す る処理 タ イ ミン グが遅 れ た と考える こ とがで き る。 同時呈 示で は、
上述の ように健 常 者 群 と処理 方 略 を変 え るこ と に よ り、NA
電位 前 半部の 潜時が健 常 者 群 よ り早 く なっ た と考 え ら れ る。 し か し、 自閉 症 者 群 に み られ る継 時呈 示S2
のNA
電 位 後 半 部 潜 時の 遅れ は、
どの ような方 略であっ た にせ よ、
継時 呈示 さ れ た 複 数の刺激 をひとっ の まとま りとして処 理 す るこ とに 多 くの時 間 を 必 要 とす るとい え る。 つ まり、
自閉 症 者 群は、
継 時 呈 示のS2
に つ い てS1
で得た 短期 記 憶を異 同弁 別 処理に健 常 者 群と同様の処 理 法略 とし て利用 で きてい ない とい える。 謝 辞 稿 を終えるに あた り、
種々 の ご配慮 と ご指導を くだ さっ た兵 庫 教 育大 学の今塩 屋 隼 男 先 生と、
ご指導 ご助 雷 を 賜 り ま し た札幌 学院 大 学の沖田庸嵩 先 生、
並 び に、
吉備 国 際大学の小西 賢三 先生に感 謝 申し上 げま す。 ま た実 験で は、
快諾 して被験者に な るこ と を申し出て い た だい た、
兵庫 教 育大学の大学 院生 と本実 験 に協 力を い た だい た 三重県の あさけ学園の 園生 諸 兄に最 大の感 謝を申し上 げます。 文 献Ciesielski
,
K.
T.
,
Knjght,
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,
Prince,
R 、
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Brain
Potentials
as
anIndex:
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Between
Simultaneous
andSuccessive
Conditions
Keizo
TAKAHASHI
Kagawa
Chubu
SlpecialSchool
for
the
Mentally
Retardea
(7-kekamatsu-Shi,
761-805rp
KagawaPrefi?cture
The results of the presentresearch revealed 2differentviews of visual
information
processing.On
the onehand,
when the autistic and non-autistic greups were compared
in
terms of theirpercentages
of correct answers onbehavioral
indices-the
Discriminative
Response Task(DRT)
and response time, no significant differencewasfound
in
terms of theirvisualinformation
precessing.On
the otherhand,
a slightbut
significantditference
between
the 2groups was found
in
the Event-RelatedBrain
Potential(ERP)
Index,especiallyin
theNA
potential
index,This experimentdemonstrated
thatinformation processing via the SimultaneousCondition
and theSl
(first
stimulus)SuccessjveCondjtion was much
faster
for
the autistic group than the othergroup.
However,jn
contrast, under theS2
(second
stimulus)Successive
Condition.
there was much slower information processing.Nonetheless, the results of thepresent
research suggest that the visual dominancein
the autisticgroup
wasdue
tothediflerences
lnthetypesof stimuLi presented.