平成 21 年度
民活インフラ案件形成等調査
「フィリピン・マニラ首都圏南北連結高速道路 PPP
活用事業調査」
(フィリピン)
報告書要約
平成 22 年 3 月
株式会社オリエンタルコンサルタンツ
中日本高速道路株式会社
西日本高速道路株式会社
株式会社建設技研インターナショナル
伊藤忠商事株式会社
(1) プロジェクトの背景・必要性 1.調査目的 当該調査における対象路線は、北ルソン高速道路(NLEX)と南ルソン高速道路 (SLEX/Skyway)とを結ぶ、約 13.4kmの高架構造高速道路を想定しており 、高 速道路整備の合理性確認、経済効果、および PPP 手法の可能性他を検証すること を目的として調査を実施するものである。 2.背景 アジア危機以降、順調に成長を続けてきた東南アジア諸国において、フィリピ ンはむしろ成長の中心からは外れ、本邦企業を含む海外直接投資に関して、その 潜在能力に比べ、伸び悩みが指摘されてきた。この原因は、比国政府のガバナビ リティの弱さ等が指摘される所であるが、必ずしも十分で無い経済インフラの弱 体も大きく指摘される所である。本邦企業をはじめ、内外進出企業の集積が進む マニラ首都圏は、人口の集中・過密化が進む割には都市インフラが不十分であり、 とりわけ進出企業にとっては、進出先の工業団地と原材料の輸入や製品の輸出に 結びつく港湾とのアクセスが最重要課題となってきている。 当 該 国 で は 、 北 部 タ ー ラ ッ ク ( Tarlac )、 ス ー ビ ッ ク ( Subic )、 ク ラ ー ク (Clark)からマニラ首都圏に北ルソン高速道路が建設され、加えてマニラ港に至 る C3-Road 付近までの延長事業が認可されている。一方、南部バタンガス (サン ト・トマス~カランパ未通)からは南ルソン高速道路とスカイウェイが、マニラの 中心部マカティー付近まで到達している。 しかるに、マニラ中心市街地でこの十数キロの区間が高速道路未連結となって おり、南部工業団地からマニラ港への物流等を著しく阻害している。またこの未 連結区間は、高密度に人口が集中し、マニラの中心的な下町地域に存する。一般 車の交通も多く、産業用物流と相まってマニラ中心部の大渋滞を引き起すととも に、大きな環境的・経済的損失を与えている。 用地買収の困難さ、交通渋滞が著しい一般道路上の高架道路建設の難しさ等か ら、以前より必要性が叫ばれていたが、実施困難性から放置されてきた経緯があ る。 今般、この未通区間でフィリピン国鉄(PNR)が以前から保有する複線の鉄軌道 (現在は単線分一日・八往復運転 )上の不法占拠者が排除され、 PNR と事業化を目 指す民間のメトロパシフィック高速道路会社(MPTC)との間で路線上の空間を高 速道路の整備用地として提供する旨の協定が締結された。この事より本事業の実 現性が一挙に高まり、事業化の動きとなった。
3.対象プロジェクトの概要 当該プロジェクトは、北ルソン高速道路フェーズⅡ区間(マニラ北部有料道路 会社(MNTC) にて調査中)と既存の SLEX/Skyway に挟まれた延長 13.4kmの 高速道路未通区間に係る連結道路整備計画を策定するための基礎調査を実施する ものである。 当該区間には、起終点を含め計5箇所程度のインターチェンジ(出入路)が想 定されている。 また本プロジェクトでは、PNR用地、オスメニア(Osmeña)幹 線道路用地の上空を活用する4車線の高架構造が想定されており、施工中・供用 後の安全かつ効率的な交通運用に対して充分に配慮する必要がある。加えて、当 該有料道路区間を対象とした PPP 手法の適用可能性について分析するとともに提 案を行なっていく。 4. 調査方法 当該業務に関しては、以下に示す工程により現地訪問調査、および国内作業を 実施し、各調査項目の個別調査、総括調査を行い報告書等を作成する。同時にこ れら報告書内容を SNC、関連機関へ報告することとする。 5. 調査スケジュール 本業務の実施期間は、平成 21 年 11 月 26 日(木)から 平成 22 年2月 15 日(月) までとし、担当者 8 名の第1回、第2回の現地調査での調査日程の実績、先方側 の面会者等は、下表の通りである。 1 2 3 橋梁構造検討 4 施工計画検討 5 6 7 8 PPP手法検討 凡例: 現地調査 国内準備作業および国内作業 ◎ 報 告 等 調査員調整会議(国内) ◎ ◎ ◎ ◎ 報告書提出 ◎ ドラフト報告書提出(12/25) ◎ 最終報告会 相澤 円香 経済・財務分析 上野 隆一 石上 亮太 業 務 内 訳 全体計画・環境社会配慮 /団長 五嶋 正明 道路計画/副団長 土田 貴之 宮内 秀敏 前田 良刀 軌道計画 河合 伸由 交通需要予測 年 月 2009年 2010年 11月 12月 1月 2月 担当業務 担当 氏 名 第1次現地調査 (11/29~12/12) 第2次現地調査 (2/3~2/6) (11/26) (02/15) (12/25) (02/15)
調査工程表
(2)プロジェクトの内容決定に関する基本方針
1.プロジェクト実施の基本方針
フィリピン国における道路整備戦略は、国全体としての道路整備戦略が具体的 に描き出されたうえで、技術面・経済/財政面・社会/経済面・環境面から検討 したうえで基本方針が確立される。 フィリピン国公共事業道路省(Department of Public Works and Highways:DPWH)に おい て推奨 さ れる道 路 整備 の 基本 方針 は 下 表のとおりである。
プロジェクト実施の基本方針
分 類 細 目 技 術 面 ・ フ ィ リ ピ ン 国 全 体 と し て の 道 路 整 備 方 針 に 基 づ く 高 規 格 道 路 の 確 立 ・ 既 存 道 路 の 効 率 的 ・ 効 果 的 利 用 と 機 能 効 果 に 資 す る ・ 厳 格 な 事 業 評 価 に よ る 計 画 ・ 実 施 経 済 ・ 財 政 面 ・ 経 済 ・ 財 政 面 か ら 妥 当 ・ 実 施 可 能 な 計 画 ( フ ィ ジ ビ リ テ ィ ー ) ・ 道 路 ( 特 定 ) 財 源 の 確 保 ( 国 と 民 間 の 事 業 分 類 ) ・ 民 間 活 力 導 入 の 推 進 ( PPP, PFI, BOT な ど に よ る 有 料 道 路 ) 社 会 ・ 経 済 面 ・ 社 会 ・ 経 済 の 要 求 変 化 を 予 測 し た 高 規 格 道 路 化 ( 地 域 計 画 等 ) ・ 国 家 活 力 の 増 大 ( 事 業 の 規 模 ・ 重 要 性 ・ 緊 急 性 等 ) ・ 国 際 競 争 力 の 強 化 ( 産 業 育 成 、 観 光 、 外 国 資 本 誘 致 等 ) 環 境 面 ・ 地 域 ア メ ニ テ ィ の 向 上 ・ 道 路 環 境 ・ 防 災 対 策 ・ 地 球 温 暖 化 対 策 2.PPP 手法活用に係る基本方針 フィリピン国政府は、BOT 法の規定により海外請負業者に直接的な助成金 /資 本補助等でないインセンティブを提供することによって、公共インフラへの投資 を誘致し国内の地域発展を促進することを推奨している。 また、国家経済開発庁 (National Economic Development Authority: NEDA)により、2008 年 5 月 2 日に政 府/民間側で設立される Joint Venture に関して JV ガイドラインが発給されて おり、PPP 案件遂行に向けての枠組みが設定されている。本調査は初期的な検討であるため、案件の経済性を確保すべく主として以下の 2 つ の 手 法 で 検 討 を 試 み る 。 一 つ は JBIC の ア ジ ア ・ 環 境 フ ァ シ リ テ ィ ー (通 称 FACE=Facility of Asia Cooperation and Environment)を通じた保証および出資 (出資部分活用は今後の必要性に応ず )、海外投資金融。更に、現在創設が日本政 府にて検討中の、JICA の海外投融資制度(投資部分活用は今後の必要性に応ず )や、 円借款を部分的に活用した上下分離方式を検討する。