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オオイタデジタルブック「明日を守る~防災立県めざして」

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Academic year: 2021

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   ( 二〇〇六年三月二日 )

 

耐震性確保へ

      

チェック体制強化を

  東京を壊滅させた関東大震災(1923年)以降、地震が 発生するたびに、建築物の安全性が問われてきた。建築基準 法をはじめとする法律の制定や改正が行われ、建築物の耐震 基準が見直されてきた。建物の安心・安全の確保は多くの犠 牲の上に成り立っているともいえる。   一方で、一級建築士ら建築業界のプロによる耐震強度偽装 問題が建築物の耐震性や安全性をあらためて考えさせてもい る。建築物を取り巻く耐震基準やチェックのシステムなどに ついて、大分大学スタッフや関係者に聞いた。   日本の建物に耐震基準が設定されてから約八十年。 「さ まざまな地震による被害と教訓を重ねながら、耐震基準 は 見 直 さ れ て き た 」。 菊 池 健 児・ 大 分 大 学 工 学 部 教 授 は こう話す。   日本初の建築法規は市街地建築物法(一九二〇年)だ が、地震への備えはなかった。二三年、十四万人以上も

 

「関東大震災」以降、何度も規定見直し

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の死者を出した関東大震 災が発生。翌二十四年に 同法が改正され、建築に 地震の力を考慮するよう に な っ た。 「 当 時 は、 水 平方向に、建物の重さの 〇 ・ 一 倍 に 相 当 す る 力 が 掛かるとした、比較的単 純なものだった」 という。   五〇年に制定された建 築基準法では「許容応力 度設計」と呼ぶ設計法の 見直しが行われた。コン クリートが耐える力には 限界がある。地震の力が加わっても、限界値の三分の二以内 に収まるように設計しよう―という現在の考え方になった。   多数の鉄筋コンクリート造が被害を受けた十勝沖地震 (六八 年 ) は「 せ ん 断 設 計 」 の 規 定 強 化 に つ な が っ た。 柱 に 配 置 す る 横 の 鉄 筋( 帯 筋 ) の 間 隔 を 密 に す る こ と で、 引 っ 張 り 力 に 弱いコンクリートの破壊(せん断破壊)を防ごうとした。   大分県中部地震(七五年)や宮城県沖地震(七八年)は新 耐震基準(八一年)をつくるきっかけになった。震度6強程 度 の 大 地 震 に 備 え て、 許 容 応 力 度 設 計( 一 次 設 計 ) に 加 え、 建物のかたさ(剛性)のアンバランスやねじれやすさ、変形 の度合い、建物が保有する耐力の確認などを規定した二次設 計が定められた。 工法など、さらに進化必要   構造計算は複雑だ。まず建物重量や地震をはじめ、建物に 作用するすべての力を計算。次にその力によって主要な構造 を 形 づ く る 要 素 に 生 じ る 力 を 求 め、 柱 や 梁( は り )、 壁、 基 礎などの断面を設計する。現代の構造計算はコンピューター なしには成り立たない。菊池教授は「長周期の地震動が超高 層ビルに及ぼす影響、 近くに活断層がある場合の対応、 制震 ・ 免震技術といった新しい工法の発展など、建築物はまだまだ 進化していく必要がある」と考える。

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  年間六千六十二件。二〇〇四年度の一年間、大 分 県 内 で 建 築 確 認 が 申 請 さ れ た ビ ル や 住 宅 に 対 し、自治体の建築主事や民間検査機関が建築確認 を出した件数だ。姉歯秀次・元一級建築士(千葉 県) が構造計算書を偽造した 「耐震強度偽装問題」 が起きてから、安全・安心の住宅をめぐって、建 築確認申請の在り方が問われている。   建築基準法改正に伴い、それまで自治体の業務

 

民間委託で競争が激化

 

営利優先の危うさも

だった建築確認が、民間に開放されたの は 一 九 九 九 年。 次 第 に 民 間 委 託 が 進 み、 県内では〇四年度に、指定確認検査機関 の県建築住宅センターが取り扱った件数 が全体の 41・3%。申請から確認までの 時間短縮が図られている。   二 〇 〇 〇 年 か ら は、 「 着 工 」 か ら「 完 了検査」までの間に、構造部分の建て方 や 建 築 部 材 の 組 み 方 な ど を 現 場 で 調 べ、 設計通りかどうかを確かめる 「中間検査」 が導入された。県建築住宅課は「阪神大 震災の際、 設計がしっかりしているのに、 施工が不十分なために被災したケースが 少 な か ら ず あ っ た こ と か ら 導 入 さ れ た 」 と説明する。   「 構 造 計 算 書 」 は 一 定 基 準 を 満 た す 鉄 建物の構造計算書に目を通す県職員。書庫 には膨大な量の書類が5年間は保管されて

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  木 造 住 宅 の 持 ち 主 が 自 分 で 耐 震 性 を チ ェ ッ ク で き る、 簡 単 な 診 断 の や り 方 を 示 し た。 日 本 建 築 防 災 協 会 が 作 っ た「 誰 で も で き る わ が 家 の 耐 震 診 断 」( http://www .kenchiku-bosai.or .jp/ ) を もとに、井上大分大学教授が項目を絞った。   「 三 項 目 以 上 該 当 す れ ば 耐 震 性 が 低 い 可 能 性 が 高 く、 早 め に、専門家に詳しく診断してもらう必要がある。仮に該当項

 

簡単にできるわが家の診断

しなければならない。 筋ビルや木造アパートなどの建築確認申請の際、一緒に提出 大分構造 ・ 保全計画事務所 (大分市木上) を経営する甲斐武久さん( 67)=一級建築士=は「私もかつ て、構造計算書を作成する下請けの仕事が中心だった。競争 が激しく『仕事を多くこなさなければ生活できない』という 姉歯氏の言葉はある意味、よく理解できた」と、経済論理が 優先しがちな民間の確認・検査業務が、不正につながる可能 性を指摘した。   井上正文大分大学教授は「建物のデザインや間取りの意匠 設計に比べ、構造設計はほとんど注目されない地味な仕事だ が、安全・安心を確保するためには極めて重要。構造計算の 仕事が評価される環境や仕組みを整えることが大切」 と強調。 「 施 主 や 建 築 主 が 快 適 さ や 利 便 性 ば か り を 要 求 し す ぎ る 傾 向 もある。安全性はお金で買わないといけない、という意識を もっと持つべき」と訴える。 目がなくても、チェック表は 地盤の強さなどを考慮してい ないので、一度は専門家に見 てもらった方がいい」と同教 授。   専 門 家 が 行 う「 一 般 診 断 」 と「精密診断」もある。料金 は内容に応じて五万円程度か ら十五万円程度。図面がなく なっている場合は耐震診断そ のものが難しくなり、時間も コストもかかる。

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壁強化や瓦軽量化も有効

  

新耐震基準でも被害

  「阪神」機に法整備進む

  「大地震が起こる度に同じような被害が繰り返されている。 阪神大震災 (一九九五年) の被災状況を見たときは、 『またか』 と 歯 が み を す る 思 い だ っ た 」。 井 上 正 文・ 大 分 大 学 工 学 部 教 授は十一年前を思い出し、そう語った。   地震に耐えるにはどうしたらいいのか。木造住宅で 〝壁量〟 の規定が強化されたのは、一九八一年の建築基準法改正(新 耐 震 基 準 )。 こ の と き 既 に、 壁 の 配 置 バ ラ ン ス や 金 物 補 強 の やり方などについて、 改善すべき考え方が示されてはいたが、 それが基準として具体化されることはなかった。   「 や や も す れ ば、 大 工 さ ん に 任 せ て お け ば よ い、 と い う 風 潮があり、それほど真剣に取り組まれなかった面は否定でき ない」と言う。   しかし、六千四百三十四人もの人命が失われた大震災を機 に、法律もようやく動いた。   二〇〇〇年、建築基準法の改正により、バランス の良い壁の入れ方、金物による柱と筋かいの接合方 法が具体的に例示され、住宅の建築現場でも対策が 進み始めた。   「木造建築の技術的な法整備はかなり整ってきた。

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基準に照らして、きちんと設計され、建てられたかのチェッ クが大事」と井上教授。   阪 神 大 震 災 で は 一 階 部 分 が つ ぶ れ た 木 造 住 宅 が 目 立 っ た。 ①壁量の不足②壁のバランスの悪さ③不十分な補強―が招い た結果だ。   「 こ う し た 住 宅 の 中 に は 新 耐 震 基 準 を 満 た し て い た 物 も 少 な く な か っ た。 建 て 主 の 責 任 で は な く、 法 制 度 の 問 題 」 と、 重要課題を先送りしたツケの重さを指摘する。   木造住宅が必ずしも地震に弱いわけではない。 壁を強くし、 屋根瓦を軽くするなどの工夫で耐震性は増す。天然素材が持 つ癒やしの効果もある。日本では、欧米に比べて住宅の使用 年数が短い。住宅の耐震性を増すことは、住宅の寿命を延ば すことにもつながる。   井上教授の研究室は、県産の杉を用いた壁補強パネルの開 発に力を入れている。   「 伐 採 と 植 林 を 繰 り 返 す 健 全 な 人 工 林 の 循 環 は、 地 球 温 暖 化の原因となる二酸化炭素の吸収に貢献できる。地域の森林 を守り、住宅の耐震性も向上させる取り組みを進めたい」と 話した。      連載担当=社会部・小田圭之介、経済部・安東公綱           写真部・三橋孝夫

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■オオイタデジタルブックとは  オオイタデジタルブックは、大分合同新聞社と学校法人別府 大学が、大分の文化振興の一助となることを願って立ち上げた インターネット活用プロジェクト「NAN-NAN(なんなん)」の一 環です。  NAN-NAN では、大分の文化と歴史を伝承していくうえで重要 な、さまざまな文書や資料をデジタル化して公開します。そして、 読者からの指摘・追加情報を受けながら逐次、改訂して充実発 展を図っていきたいと願っています。情報があれば、ぜひ NAN-NAN 事務局にお寄せください。  NAN-NAN では、この「明日を守る~防災立県めざして」以外 にもデジタルブック等をホームページで公開しています。イン ターネットに接続のうえ下のボタンをクリックすると、ホーム ページが立ち上がります。まずは、クリック!!! 別 府 大 学 デジタル版「明日を守る~防災立県めざして」 第9回 編集     大分合同新聞社 初出掲載媒体 大分合同新聞(2006 年1月 1 日~ 2007 年 3 月 5 日) 《デジタル版》 2011 年9月 30 日初版発行 編集 大分合同新聞社 制作 別府大学メディア教育・研究センター 地域連携部/川村研究室 発行 NAN-NAN 事務局    (〒 870-8605 大分市府内町 3-9-15 大分合同新聞社 企画調査部内) ●デジタル版「明日を守る」について  「明日を守る」は、大分合同新聞社が創刊 120 周年記念事 業として大分大学と立ち上げた共同プロジェクトの一環で、 2006 年1月から翌3月まで、同紙朝刊に掲載した連載記事。 今回、デジタルブックとして再構成し、公開する。登場人物 の年齢をはじめ文中の記述内容は、新聞連載時のもの。 2011 年8月5日           NAN-NAN 事務局 大分合同新聞社

参照

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