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田角先生_乳幼児の摂食行動と障害

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乳幼児の摂食行動と障害

田角 勝(たつの まさる) 昭和大学医学部 小児科学講座 〒142-8666 東京都品川区旗の台 1-5-8 03-3784-8565 要旨 食事は生活や育児の基盤であり、障害の有無にかかわらず、生きるための栄養摂取とと もに、食べることの楽しさを感じることが大切である。乳幼児期の摂食障害は、あまり注 目されていないが、それは食行動や育児などの社会背景と関係しており、病的状態だけで はなく、乳幼児の摂食行動を理解することにも役立つ。また乳幼児期の食行動の発達を理 解することは、摂食嚥下障害を持つ子どもも含め、すべての子育てに重要である。 特に乳児期の食行動において手づかみ食べが大切である。手づかみで食べることは、自 分で食べる意欲を育て、上手に食べさせてもらうことにつながる。そのため安全に配慮し た上で乳児期から固形物を与えることが重要と考える。それは食べる機能だけではなく、 上肢の協調運動などの運動機能、食事を通してコミュニケーションや社会性の獲得など子 どもの社会生活全体の向上につながる。 乳幼児の摂食障害はあまり注目されていない 1)2)3)が、近年当院に来院する子どもが増え てきた。その対応を行う中で、背景に離乳食の考え方や摂食障害への対応に問題があるの ではないかと考えられた。その一つが、子育てにおいて手づかみで食べる経験が少なくな ってきていることであり、その手づかみ食べが乳児期の自分で食べる機能を促すために重 要であると考えられた。本稿は乳幼児の摂食障害からみえた子どもの摂食機能と行動の発 達について考察してみる。 乳幼児の摂食障害とは DSM-Ⅳでは幼児期の栄養補給・摂食に関する精神疾患として「幼児期のまたは小児期早 期の保育・摂食障害」と成人期の「摂食障害」に分かれていた。DSM-5では一つのカテゴ リーにまとめられ、大きな枠組みで「保育と摂食の障害」となった。そして「幼児期また は小児期早期の哺育障害」が、「回避/制限性食物摂取障害」に変更された。その乳幼児 の摂食障害は思春期や成人期の摂食障害とは大きく異なり、精神・心理的側面中心で考え ることはできない。その背景にある育児や基礎疾患・全身状態などが密接に関与し、精神・ 心理的面と身体的な側面を常に同時に考えなければならない。そのために乳幼児の摂食障 害は小児科医が対応の中心でなければないが、小児科医があまり対応していないことが現

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状である。 今回我々が対象とした乳幼児の摂食障害は、口腔・咽頭などの構造的あるいは機能的に 摂食嚥下機能に影響する大きな問題がないにもかかわらず、経口摂取だけでは健康を維持 できない状況とした。さらに対象を明確にするために、長期間(6か月以上)の経管栄養・ 胃瘻を必要としたものとした。2010 年 1 月~2014 年 4 月に昭和大学病院小児科を受診し、 十分に経過を追えた22名を対象とした。離乳食が進まない、固形物を食べられない、食 べる量が少ないなどの主訴で来院したが、経管栄養を必要としない症例は除外した。さら に嚥下障害や基礎疾患・全身状態・合併症などにより経口摂取ができず経管栄養が必要で ある症例も除外した。 結果としては22例全例が経口摂取に移行でき、経管栄養・胃瘻からの注入を中止しカ テーテルを抜去できた。初診時年齢は1歳0か月~5歳9か月(中央値2歳11か月)で あった(表1)。1例を除き摂食障害に影響する基礎疾患を有していた。疾患は多岐にわた り、極低出生体重児・早産児や心疾患が多くみられた(表2)。また基礎疾患とも関連して 多くは軽度・中等度の知的障害を認めたが、4例は DQ・IQ が 85 以上であった。運動発達 は遅れを認めたが、初診時に摂食機能に影響するような運動機能障害を認める症例はなく、 ほとんどが自分で座位の維持が可能であった。 受診時の年齢差はあるが、初診時の摂食に関する過去の状況を表3にまとめた。そこに みえることは、全ての症例において親が少しでも多く食べさせようと頑張っているが、子 どもは哺乳や離乳食を拒否し、嫌がって食べない状況である。指しゃぶりや玩具舐めをす るが固形物の手づかみ食べの経験やストローやスパウトの使用経験がほとんどなかった。 その他の特徴としては、新生児期から飲めていいない場合もあるが、離乳期から経管栄養 になった場合もある。そして摂食嚥下障害ということで主治医から摂食指導を行う療育機 関を紹介され、歯科医や言語聴覚士などの指導をもとに、スプーンで食べさせてもらう練 習やコップから飲む練習をしていたことが多かった。摂食指導で口腔の過敏を認めるとい うことで歯肉マッサージなどの摂食訓練を受けていることが多かった。このような対応を したにもかかわらず改善がみられず当院小児科を受診した。 我々の指導は、表4に示すような方法でどの段階にあるかを評価し、カテーテルの抜去 までの計画を立てている3)4)。実際にこのような対応するようになってから、早期に抜去で きるようになった。摂食拒否がみられる場合は、今までの摂食訓練をやめて子どもの食べ る意欲を引き出すことを行っている。多少でも食べる意欲がある場合は、“少しでも多く食 べることや訓練を止めること”と“安全を考慮した上で、固形食の手づかみ食べをすすめ ること”を中心に個別に計画を立てて対応した。食べる意欲が引き出されていると、食べ ている量が少なくても、栄養や水分の管理のもとでカテーテルからの注入量を減らし、空 腹を感じさせることにより抜去に向けて順調に進めることができた。そのような対応の結 果、抜去時年齢は中央値3歳9か月(1歳4か月~8歳7か月)であった。初診時から抜 去までの期間は中央値5か月(0.5か月~2年10か月)であり、年齢は低い方が早く抜

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ける傾向がみられた。来院まで 1 年以上経管栄養をしていたが、2か月以内で抜去できた 場合も多く、それまでの対応の悪さを示している。それぞれの状況があるので個人差があ るが、食事に関する嫌な経験をさせず楽しく食べることを目標とすることは、すべてに共 通することである。 乳幼児摂食障害の症例からみえること 症例の特徴をまとめると、①食べる量を増やそうとする努力が強要につながる、②食事 を楽しむことが親子ともできず、コミュニケーションがとれていない、③ペースト状の食 物形態が中心で固形物の経験がほとんどない、④固形物を食べさせようとしないことが手 づかみ食べをしないことにつながる、⑤摂食嚥下機能が注目され、本質である食べる意欲 を引き出していない、⑥基礎疾患、合併症、子育て、精神心理的対応などを総合的に考え た対応がとられないことがみられる。 このようなことをもとに、乳幼児摂食障害からみえる現代の離乳食や摂食行動の発達や 育児を考察してみる。 摂食行動の発達 胎児が羊水を飲み込むことや指しゃぶり様の動きをすることはよく知られ,胎児期から 哺乳の練習をしているともいえる。しかしながら、早産で出生した場合には、哺乳のリズ ムは不規則で哺乳力も弱く、十分な栄養を経口的に摂取することはできず、経管栄養を必 要とする。早産児の経口哺乳の開始は,子どもの状態により差はあるが、その目安は体重 が 2,000g,修正週数で 32 週頃である。そして経口摂取をできない早産児に non-nutritive sucking を行うことは、経口摂取までの期間や退院までの期間を短縮すると報告されている 5)。成熟児は、出生直後から母乳を飲む力をそなえ、乳首を口唇と舌でとらえ,陰圧をつく り,効率よく哺乳する。乳児期においては、哺乳が摂食嚥下機能の中心であり、乳児は母 乳を飲みやすい口腔内構造をもつ。そして哺乳という欲求が満たされることを通して子ど もはコミュニケーションを学び、母子の基本的な信頼関係が築かれる。その愛着形成には、 常に信頼できる人の存在が必要である。このように食事は栄養面ばかりでなく、情緒形成 に重要で子どもの気質と親の反応による。 乳汁以外の食物を自分で摂取できるには時間がかかり、さまざまな食物を摂取する機能 は、出生後の経験により獲得する。出生後4か月頃になると、子どもは物をつかみ、観察 し、叩き、投げるようなことをする。そして何でも口に入れるようになる。それは自分で 食べるための準備をしているともいえる。発達のスクリーニング検査として用いられる DDSTⅡ、津守・稲毛式乳幼児発達質問紙、遠城寺式乳幼児分析的発達検査表のいずれにお いても、4~8か月頃に“自分で食べる”という項目がある(表6)。この年齢では安全な

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食物を選択できるわけでなく、何でも物を口に運ぶことが自分で食べることを意味してい る。 8~12か月頃になると、離乳食も進み親が用意する食物をしっかり受け入れるように なる。そのためには子どもが食事を楽しく感じていることが重要である。子どもが食事を 楽しく感じるには、子どもの空腹を親が感じて食事を与え、満腹になったらやめることで ある。これは乳児期のもっとも大切な親子のコミュニケーションといえる。栄養摂取を意 識しすぎて個人差やタイミングに注意がはらわれず、常に平均的な量を食べさせようとす るために親子関係が崩れることがある。また手指を使って自分で食べることは、より高度 な微細運動機能の獲得につながる。この時期の子どもは、周囲の影響を受けやすく親や友 達の食事を模倣するので、それはよいモデルにも悪いモデルにもなる。さらに食行動は世 代を超えて引き継がれ地域の食文化になる。 年齢とともに好きな食物が明確になり、新しい食物には用心深くなる。いつの時期にお いても嫌がる食物を無理に食べさせずに、コミュニケーションをとりながら、さまざまな 食物へと広げる。過剰に褒めたり、脅したり、急がせずに、それぞれの個性を認めながら 対応することになる。 このように乳児期の摂食行動は確立されていくが、その過程がスムーズに行かないと乳 幼児期の摂食障害になる。基礎疾患の無い場合は経管栄養になることは極めてまれである が、日常的にみられる離乳がうまく進まないことなどとも共通の問題点がある。また重症 児で摂食嚥下障害があり経口摂取が困難な場合でも、食行動を考えたうえでの対応が重要 であることに変わりはない4) 摂食行動の発達と離乳食 離乳開始時期は食の確立のための大きなステップであり、子どもが食べることに興味を 示す頃である。出生後5・6か月頃に離乳食を始める事が多いが、子どもはそれ以前から 指しゃぶりや玩具舐めなどを行い、食物に興味を示し食べる準備をしている 4)。摂食機能 に関与する基礎疾患や障害の有無に関わらず、離乳食は乳児の食の確立に密接に関与する。 機能から考えると反射による哺乳から、子どもが自分の意思で乳汁以外を食べることへ変 化していく過程である。 平成 19 年 3 月に厚生労働省が策定した「授乳・離乳の支援ガイド」には,授乳・離乳の 支援は,授乳や離乳を通して,母子の健康支援の維持とともに,親子のかかわりが健やか に形成されることが重視される支援,乳汁や離乳食といった“もの”にのみ目が向けられ

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るのではなく,一人ひとりの子どもの成長・発達が尊重される支援などを目的としている 6)。しかしながら実際の育児では“もの”に目が向けられ、どのような物をどの程度食べる かが親にとって重要なこととなる。 また離乳食の開始時は、なめらかにすりつぶした状態の食物を 1 さじずつから始めると されている6)が、このことは食べさせてあげる場合を想定したことである。すでに述べたよ うに子どもが自分で食べる準備は、乳児期から始まり経験を積むことにより発達する(図 1)。それは咀嚼などが十分にできてから始まるのではない。離乳をスムーズに進めるため にも、摂食機能の発達には、受動的に食べさせてもらう部分と能動的に自分で食べるとい う両面からの発達過程があることを理解することが大切である。乳児期に離乳食を“食べ させる”ことばかりが意識され、本来子どもが持っている自分で食べる機能の発達を促す ことを忘れがちになることに注意がいる4) 摂食行動と機能発達の促進 子どもの要求を感じる:乳幼児の摂食障害への対応は、乳幼児期の摂食行動と機能の発 達を促す方法にもつながる。そのポイントの一つは、離乳期の子どもの要求を感じること である。それは哺乳している時から意識されるべきことであるが、食行動が大きく変わる 離乳期に特に重要になる。離乳食がスムーズに進まない原因の一つは、子どもの要求を感 じることができず、子どもの要求にうまく答えられていないことがある。基礎疾患を持つ 場合には、さらに子どもの空腹や満腹の表現が少なく親が読み取ることが難しくなる。ま た基礎疾患を持つことにより、必要栄養量を入れることがより強く意識される。このよう なことから、子どもの食べたいという気持ちより、これだけ食べさせねばならないという ことになり、食事を強いることにつながる。 食べる意欲を意識した対応は、栄養摂取と共に子どもの社会性やコミュニケーション能 力を引き出す。そして自分で食べたいという意欲は,手指の運動機能や口との協調運動を 向上させる。そのためには、子どもの生活や食事全体に目を向け、子どもが食べることに 楽しさを感じるような環境を整備することである。 自分で食べる:離乳期に自分で食べることあるいは食べようとする意欲を育てることは、 たいへん重要である。その離乳初期において自分で食べることは、手づかみで食べること であるが、離乳期に手づかみ食べの経験していない子どもが多くなっている。「授乳・離 乳の支援ガイド」にも手づかみ食べの重要性について記載されているが、離乳食がほぼ完 了するころから進めるような説明である6)。実際には図 1 のように乳児期から手で物を口に 運ぶことから自分で食べることへの準備が始まっている7)

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誤嚥や誤飲は、乳幼児にとって注意しなければならないことである。そのため親は誤嚥 や清潔のことを過剰に考え、物を口に入れることを子どもにすべてやめるように注意して いることがみられる。これは子どもに自分で物を口に持っていってはいけないと教えてい ることにもなる。その結果、子どもは自分では食べてはいけないと感じ、親から食べさせ てもらうことが食事の中心になる。そして子どもは食べることに消極的になり、離乳食が 進まないことにつながる。このため乳幼児の摂食障害の子どもにおいて、離乳食でつまづ くこともしばしばみられる。 適切な食物形態:なめらかにすりつぶした状態の均質な性状の食物は,処理しやすく飲 み込みやすい。このため離乳食はなめらかにすりつぶした状態の食物になっている。手づ かみが重要であると述べてきたが、離乳食の中心となるこのようなペースト状の食物形態 は手づかみすることができない。そしてペースト状の食物を子どもが手づかみで食べよう とした時は、親にとって周囲を汚されることに気を遣わなければならない食物形態でもあ る。すなわち一般的な離乳食は、食べさせてあげるための形態になっているといえる。乳 児は食物とそれ以外の区別を十分にできないが、離乳期は自分で食物の選択を学び始める 時期でもある。安全を確保しながら、自分の手で食物を口へ持ってくことを経験させ、親 は子どもの判断を手助けすることが重要となる。 またなめらかにすりつぶした食べやすい食物形態は、口腔への刺激の少ない物である。 発達の障害などがあり食べやすい食事が長期に継続されることは、発達期の小児において は必要な刺激が入らない可能性がある。マウスの動物実験では離乳期に固形食を与えない ことが、脳の発達に影響することが報告されている8)。さまざまな経験のなかで摂食嚥下機 能の向上が必要な乳児期に、ペースト状などの一定の食物に偏ることは不適切と考えられ る。そしてあまりに一定の食物や食物形態に慣れると、新しい食物や形態を警戒し嫌うこ とや拒否することまでおこる。また乳幼児の摂食障害の症例で長期に同じような物を食べ させてもらう状況が続いた子どもでは、経管栄養から脱却した後も受け入れる味や形態に 偏りがみられる。 食べるための道具の使用と食の確立:自分で食べるための最も簡単な方法は、道具使わな い手づかみである。それは親がスプーンで口元に持ってきてくれた食物を口唇で受け取る より、手づかみで食物を口に持っていくことがその取り込みにおいて簡単である。しかし ながら手づかみでつかめる大きさの固形物は、乳児は口腔内で処理することのできないこ とも多く、基本的に軟らかい物をスプーンなどで食べさせてもらうことが必要になる。手 づかみで食べるためには、「赤ちゃんせんべい」などを活用し、自分の手で物を口に持って

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いくことを同時に練習することが、スプーンを口に受け入れ、上手に食べさせてもらうこ とにもつながる4) 月齢が進むと自分で食べるための道具を使おうとするが、すくってこぼさずに食物を口に 運ぶ必要のあるスプーンは、乳児にとって簡単な道具ではない。それにもかかわらず、ス プーンが食べるための道具としてよく用いられる。それは食物形態がスプーンですくう必 要であるものが中心のためである。子どもが手づかみをあまり行わず、技術的に難しいス プーンで食べる練習にストレスを感じ、さらに食べること自体に拡がることがある。乳児 期のスプーンはなめらかにすりつぶした食物形態を介助者が食べさせてあげるための道具 である。スプーンで食べさせてあげることと同時に手づかみ食べなどによる手指と口の協 調運動の経験を積むことが、道具を上手に使えることにつながることを理解することが大 切である。 摂食指導の問題点:乳児期の摂食障害においてほとんどの症例で摂食指導が行われている。 その内容としてはスプーンでなめらかにすりつぶした状態の物を食べさせることや口唇や 口腔の過敏の除去のための歯肉マッサージを施行していた。結果としてこのようなことは、 子どもの食べる意欲を促すことにつながらず、しばしば摂食機能の発達を阻害しているよ うにみえた。摂食機能障害を持つ場合において、食行動を意識した対応をする必要があり、 現在行われている摂食嚥下障害の訓練9)の問題も示している。 乳幼児の摂食障害はそれほど多い状態ではないが、一般の子どもの抱える離乳期の食行 動と無関係といえず、日常にみられる離乳期の問題を示してくれた。離乳食などを考える にあたり、我々がいつのまにか子どもの行動や気持ちを考えずに、与える側に立っている と考えられた。乳児が食べることにおいて安全を確保することは大変に重要なことである が、そのために食べる機能や発達を阻害してはならない。子どもの意欲を感じて適切な対 応が重要と考える4)

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文献

1. 田角 勝, 加古結子,飯倉洋治,金子芳洋,向井美惠,田崎いずみ. ”幼児経管栄養依存 症”について. 第 2 回日本摂食・嚥下リハビリテーション研究会抄録集 56 (1996) 2. Ishizaki A,Hironaka S, Tatsuno M,Mukai Y.Characteristics of weaning strategies

in tube-dependent children.Pedatrics International 55,208-213(2013). 3. 田角 勝.小児における経管栄養への依存の予防と対応.小児看護 36,1178-1184(2013) 4. 田角 勝.子どもの摂食嚥下リハビリテーション ―トータルケアで理解する 食べる

機能を支援する 40 のポイント―(診断と治療社,2013).

5. Schwarz R, Moody L, Yarandi H, Anderson GC. A meta-analysis of critical outcome variables in nonnutritive sucking in preterm infants. Nurs Res 36,292-295(1987).

6. 柳澤正義監修:授乳・離乳の支援ガイド策定に関する研究会:授乳・離乳の支援ガイド 実践の手引き:母子保健事業団(2008).

7. 田角 勝.食べる機能の発達とその障害の問題.小児科 52;1899-1906:(2011). 8. Kawakami S, Ohmoto M, Yuasa R, et al. Accumulation of SNAP25 in mouse

gustatory and somatosensory cortices in response to food and chemical stimulation. Neuroscience 218,326-334(2012).

9. 田角 勝、向井美惠:小児の摂食・嚥下障害リハビリテーション(医歯薬出版,2006).

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表1 症例のまとめ ―――――――――――――――――――――― 初診時年齢 1 歳0か月~5 歳9か月(中央値2歳11か月) 男:女 8:14 知的障害 正常範囲* 軽度 11 中等度 7 運動機能 座位の維持が可能 18 歩行可能 14 ―――――――――――――――――――――― * DQ または IQ が85以上 表2 摂食障害と関連する基礎疾患(重複あり) ―――――――――――――――――――――― 基礎疾患なし 1 原因不明の発達遅滞 5 超・極小未熟児 5 慢性肺疾患 2 咽頭・喉頭・気管軟化症 3 先天性心疾患(術後も含む)・心筋症 6 脳性麻痺 1 水頭症 1 脳梗塞 1 全前脳胞症 1 先天性サイトメガロウイルス感染症 1 Costello 症候群 1 歌舞伎症候群 1 その他の染色体異常症 2 口蓋裂 1 小顎症 1 食道閉鎖症 1 胃食道逆流症 3

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表3 初診時の摂食機能に関連事項 ―――――――――――――――――――――― 経口摂取のみの時期があった 11 指しゃぶり、玩具舐めをする 17 ペースト状の食物でスプーンでの介助が中心 22 手づかみ食べの経験がほとんどない 16 ストロー・スパウトの経験がほとんどない 14 摂食指導を受けていた 20 過敏の除去 16 口唇介助 5 筋訓練 2 ―――――――――――――――――――――― 表 4   経管栄養を必要とする乳幼児摂食障害に対するステップ治療   1stステップ   現状の問題点の把握と今後の計画作成   摂食機能障害のないことの確認(多くの場合は嚥下造影,嚥下内視鏡による評価は必 要)   基礎疾患の把握(摂食嚥下障害への影響の評価)   全身状態の把握   食事の時間における“すべての介助者”と子どもの信頼関係の構築   2ndステップ   自分で食べる意欲を育てる   従来の摂食指導や日常生活での問題点の改善(楽しく食べる、生活のリズム、食べ ることを強制しないなど)   自分で食べることを育てる(手づかみ食べの促進、手づかみで食べられる食品を用 意)   スプーンは嫌がらないときに用いる   3rdステップ   好きなものを探し、楽しく自由に食べさせる   好きな飲み物や食べる物を探す(量を増やす必要はなく、形態も安全な範囲で何で もよい)   自分で使いやすく、持ちやすい道具を探す(マグマグ®やストロー、ペットボトル、 スパウト付きパウチパックなど)   コップは自分で持って飲めれば使用するが、難しいことが多い   4thステップ   経管栄養の注入量の減量   体重減少も起こりうるので、全身状態を確認しながら進める  

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ビタミンなどの不足に注意、栄養補助食品などでの補給も必要なこともある   5thステップ   経管栄養のためのカテーテルの抜去   自分で食べることや飲むことに意欲がみられれば、食べる量は必要と思われる量の 1/5~1/4 程度でも試みる   カテーテルの交換時に、抜去したままで様子をみる   体力や体調の維持ができないときは再挿入する。状況をみながら再度試みる   体重減少はしばしばみられるが、体調がよければ経過をみる   6thステップ   経管栄養中止後のフォロー   食べられるようになっても、食事の偏りがすぐには解消できないことが多い   偏りが強い場合には、必要栄養素を考慮しビタミンなどの補給が必要   食事の偏りは長期に続くこともあるが、食事を楽しむことを維持して経過をみる  

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表5 経管栄養の終了(抜去)時および終了後の状況 ―――――――――――――――――――――― カテーテル抜去までの初診からの期間 年齢 1 歳4か月~ 8歳7か月(中央値3歳9か月) 期間 0.5 か月~2年10か月(中央値5か月) 2か月以内 8 6か月以内 6 12か月以内 4 12か月以上 4 抜去時の栄養摂取状況(重複あり)、【 】内は中心的な方法例 固形物を自分で食べる 15【 5】 食べさせてもらう(固形物も含め) 16【 5】 ストローなどで飲む 20【12】 抜去後の食事の偏り 14 再挿入 2* ―――――――――――――――――――――― * 2 例とも体調不良時に摂取量が減り、親の判断で一時的に挿入 表6 乳幼児発達スクリーニング検査における自分で食べる月齢 スクリーニング検査 月齢 内容 日本版 DDSTⅡ 4-8か月* 自分で食べる 津守・稲毛式乳幼児発達質問紙 6か月 ビスケットなどを自分で持って食べる 遠城寺式乳幼児分析的発達検 査表 5-6か月 ビスケットやクッキーなどを自分で食 べる * 通過率の 25%と 90%からおよその時期を示した。

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図 1 離乳期の摂食・口腔機能と自食機能の発達6)

図 1	
  離乳期の摂食・口腔機能と自食機能の発達 6)

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