理 学 療 法 学 第 20巻第 1号 1
〜8
頁 (1993年 )原 著
末 梢
性
前
庭
機能不
全 患
者
に
対
す
る
理
学療法
*内
d
−
i
立
青
1)徳
∫二曽
厚
二2) 要旨 末 梢性前庭機能不全に起 因 する めまい・
平衡 障 害に対 して,
二 段 階か らなる理 学 療 法プロ グラムを考 案・
実 践 し, 以 下の結 果 を得 た。
1)めまい・
平 衡 障 害 を 前 庭 動 眼・
脊 髄 系の機 能 不 全と捉え,
症 候・
障 害 学 的 特 性 を明ら か にすること に よっ て具体 的治療法が立 案された。2
)運 動 療 法は誘発 性の比 較 的 強いめまい の時期か ら適 応 となり,
薬 物 療 法 を 併 坩 することで早 期の機 能回復が促さ れ た。
3
) 治療効 果は,
眼振や めまい の消 失 と と もに体 平 衡 能の改 善で客 観 化され,
ADL や職 業復帰に対し て も観 察さ れ た。 4) 上 記の結 果か ら,
末 梢性前 庭 疾 患は理 学 療 法の積極的な適 応の一
分 野と考え ら れ,
理学 療 法 士の関 与が治 療 成 果と して も現 わ れた。 キー
ワー
ド 末梢性前庭 機能不全,
め まい・
平 衡障害,
理学療 法1
緒 言 末 梢 性 前 庭 疾 患は, 前 庭機能の不均衡に よっ て惹起さ れるめ まいや眼 振・
吐 気・
嘔吐 な どの 諸症状と と も に,
平 衡 障 害を合 併 する場合が し ば しばで あ る。 「め まい・
平 衡 障 害 」の原 因 疾 患であるメニ エー
ル病 や 良 性 発 作 性頭 位めま い症 (Benign paroxysmal positional
Verti−
go :BPPV )は生 命 予 後が良 好な
一
方で,
慢 性 的なめ ま い・
平衡 障害の継続に よっ て最 終 全 般 改 善度が一
定 以 上 に到 達 しない症 例 も少なくない1)。 従来, めまい の治療は安静と薬 物 療 法が 主体であっ た が,
1945年にCawthorne2 )が運 動 訓 練の必 要 性 を述べ て以来, 前庭め まい に対する運 動 療 法の可能性が注 目さ れて いる。 現 在まで に耳 鼻 科 領 域で提 唱されて いる訓練 法は,
め まい誘発 頭位での繰 り返 し運 動による順 応 を* Physical Therapy in Peripheral Vestibular Disease
1)
北 里 研 究 所メ デ ィカル セ ンタ
ー
病 院Yasushi Uchiyama
,
RPT :Department of Rehabilita・
tion
,
Kitasato工nstituto Medical Center Hosp重tal2)北 里 大 学 医 学 部
・
耳 鼻 咽 喉科Koji Tokumasu
,
MD :Department of Otorhinolaryngo・
logy
,
Kitasato University SchQol of Medicine(受 付日 1992年6月30 目 〆受 理日 1992年10月16 日) 狙い と し た方 法と
,
慢 性 期にお け る歩 行・
バ ラン ス保 持 を中心 と し た自主訓 練に大 別される。
これ らは いずれも 症 状 が 落 ち着いた後に専 ら患 者 自 らが 行 う方 法で,
その 適 応 と効 果は限 定されて いた。 そ こで筆 者ら s’
4}は,
リ ハ ビ リ テ
ー
シ ョ ン (リハ ) 医 学 的な立 場 か らめまいに対 する運 動 療 法につ いて検討 し, その 目的や治療法 ととも に期待 さ れ る効果 にっ い て の概 要を報 告し た。 本研 究で は, さ らに末梢性前庭め まいに対する 理学療 法の意 義と基本的な治 療 概 念を明 確にす ること を 目 的 と し た。 とく に急性発 症 した患者の変 化に対応 し た連動療 法の 吟味を考慮し, 従来の治療効果と比較 するこ と から その有 用性 を一
層 明らかにす る こと を試み た。 且 めまい に対する理学 療 法の理論と実 際1
)前庭障 害の病態と運 動 療法との関わり 急性 発症 し た前庭機能不 全 患者は,
回転 性の 激しい め まい と と もに眼 振・
体 平 衡障害・
自律神経 症状を伴うこ と が多い。
さ らに疾 患によ っ て は,
耳 鳴り や難 聴な どの 蝸 牛 症 状 を 皐 する例 もある。 治 療は,
安 静に よ る め まい の軽 減と,
メニ エー
ル病で は経口浸 透 圧 利 尿剤 (イ ソ ソ ル ビド)の投 与な ど,
病 態に応 じて抗め まい作 用のある2 理学療 法学 第 20巻第 1号 表
1
前
庭
め まい に対する評価項目と検査方法の 概要 項 目 検 査 方 法 内 容 及び留 意 点 臨床症状 め まい重 症度 安 静 度 神 経 学 的検 査 眼 運 動 眼 振 体 平 衡 ADL 職 業 特 性QOL
動 揺 視 視運 動 定 性的議
診 診 定 A 問 問 重 症 度 尺度 (詳細は表 2 ) ADL の範 囲と制 限一
般 的な神 経 学 的 検 査 (特に体性感覚・
軽度な筋力 低 下や麻痺に注 意 ) 注視眼 振, 頭 位・
頭 位 変 換 眼 振,
温度眼 振 (出 現 頻 度・
持 続 時 間 )Jumbling
現 象の程 度QKP
の解 発 程 度 開脚立位・
ロ ンベ ル グ・
マ ン・
片脚 (開眼・
閉眼) 足 踏み検 査 重 心 動 揺 (軅 幹 坐 位・
開脚・
閉 脚 ) 実 践 性,
活 動 性の質 的レベ ル め まい誘 発 肢 位,
注意事 項の 確 認 生 活ス タ イル・
満足度 (心 理 的影響の考 慮を含む) 注 )理学 療 法十 自らが行える検 査を中心に列 挙し,
してある。 画 像・
眼 振 図・
耳 所 見な どは割 愛 表2
めまい重 症 度 (徳 増6),
1988年 )VVVVVV
8’
自発 性の激しい めまい,
動くこ と がで き ない 6.
誘発性の比較 的強い めまい 4:日常 生 活 (立 位・
歩 行・
首の運 動 )で のめ まい2
仕 事 や 作 業 時でのめまい 1:な ん と なくめ まい感が あ る0
め ま い な し N2’
吐 き気 が 強 く,
嘔 吐 するNl
吐き気は あ る が,
嘔 吐な し 頭重 感・
項部痛・
肩凝り が強い NO :上 記の症 状が ない V :Vertigo
N :Nausea
を示す 誘 発 性の 強いめ まい で吐 き気 を伴う場合は,
V6
+Nl
=
・
7 と計 算 する。
得点が高い ほど重度である こ と を示 す順 序 尺度。 循環改 善 剤や抗 嘔 吐 斉llなど も処 方される5)。 その 間,
画 像 診 断 な ど から中枢 病 変 を否定 した患 者は症状の軽減に 対 応して 日常 生 活 動 作 (Activity of Daily Living :ADL ) を 徐々 に拡 大 して い く。 従っ て こ の時 期 から既 に運 動 療 法の適 応が考え られ
,
系 統 的な治 療が展 開され なけれ ば な ら ない。2
)め まいの評 価 全 般 的な臨 床症状・
眼 運 動・
体平 衡能に大 別し た項目 を評 価 する必 要がある。
生 理 学 的に表 現 す れ ば,
前庭障 害に伴 う動 眼 系と脊 髄 系の機 能 不 全 を検索すること に な る。
代 表 的な評 価 項 目と その概要を 表 1に示 し た。表 2に は筆 者の うちの徳増6)が
1988
年に提唱し た重 症度尺度を示した。 本 法はめ ま い と『 律 神 経 症 状の程 度 を得 点で表 現 するもので,
とくに誘発性め まい の誘発 頭 位・
頻 度・
注視に よ る軽 減度な ど をADL との関 連か ら判定 する ところに特徴が あ る。 前庭機能不 全で 出現 す る 眼振は,
非注視下 (Frenzel
鏡で検査)で の頭 位およ び頭 位変 換眼振で観 察さ れ や す く,
BPPV で み ら れる 疲 労現象の程度も運動療法を行う際の 目安と なり得る。 ま た前 庭 動眼 反射利 得の 破 綻によっ
て観 察さ れる動 揺 視 (Jumbling
現象)とADL
動作との関 連 も運 動 療 法 選 択 の上で重 要な項 目で あ る。一
方体平 衡能は,
め まい に起 因した ふ らっ きの要 素と ともにt
要な感 覚 人 力で ある前 庭 機 能の不 全 状 態を定 量 化す る指標と して意義深い。 臨床 的に は粗 大 筋 力や体 性 感 覚を検 査し た後に, 開脚・
ロ ン ベ ル グ・
マ ン肢位によ る定性 的な直 立 検 査を行う。
さ らに定量 的 な検査法と し て直立 立 位での重 心 動 揺 (足 圧中心点の移動軌跡)が施 行されて いる。
筆 者らは前 庭一
頸・
賜 幹の立 ち 直りの影 響を明 確にする目 的か ら,
驅 幹 坐 位7) (足 指 を 浮 かせ た 椅 坐 位 )で の身 体 動 揺を 15・cm 開 脚 立 位とロ ン ベ ル グ 位で の計測と比較・
検 討して い る。末 梢性前庭機 能不 全患者に対 す る理 学 療 法
3
3
)運動療法の実際半 視管
・
耳 石 器へ の刺 激と ともに頭 位・
視 覚人 力の再 統 合を図 り,
め まい の軽 減 と日常 生 活お よ び就労時の平 衡 障 害を改 善せ し める事を目的とする。 と く にめ まい の 病態に対応さ せて,
急 性 期は前 庭 刺 激 としての 治療的負 荷による順 応を促 し,
同時に亜 急性期か ら顕在化 する体 平衡 能の機 能 改 善 を考 慮 する異なる観点を統 合する こと が 重 要である。筆 者ら は
,
現在まで の訓練 法を参 考に しっ つ 上記目的 を含ん だ運 動 療 法の骨 子 を1990年に提 唱し た (表3 ・
4 )。 本法は 三段 階か ら なる治 療プ ロ グラムで,
め まい を前庭神経機 能 不 全によ る感 覚 異 常 と提え,
広義の感 覚 再教育の概念に則っ て いる。 従っ てその基本概 念は,
体 性 感 覚 (と くに手)に対する感 覚 再 教 育 を 目的 と した治 療 法に共 通 するとこ ろも少な く ない8)。 各 段 階の 目的 と概 妛は表3
に示す と おりで ある。
第1 期で は,
前 庭 機 能不全に対する運 動 療 法の必要性と と も に,
治 療の過程で積極 的にめ まい を誘 発 させ るこ とが早 期 回 復の一
過程で あ る事を,
あ らかじめ説明すること が 重要で あ る。 運 勤療法は,
輻 幹部 を 固 定 した静的状態の ドで視 刺 激 を段 階 的に行う。 注視刺 鐓へ の適応性は高い 場合が多 く,
徐々 に頸 運動を含め た前 庭 動 眼 系を再 教育 す る。 急 性 期の刺 激 量は厳密に管理 さ れ なけれ ば ならず,
吐気の程 度に よっ て薬 物療法との相厘調 整が不 可欠であ 表 3 運 動療法プロ グラムの骨 子 ステー
ジ 段 階 目 的 某 本 妛素 1 静 的刺 激 期 視 刺 激 前庭 刺激 前庭 動 眼系の再教育 オ リエ ンテー
シ ョ ン 躯幹部の固定・
安 定 類部運動と の相互作用 H 動 的鱒麟 糠
階 灘
閉眼で の姿 勢 保 持 身 体 支 持 某 底 面 内で の動 的 運 動 視一
頸一
軅 幹 運 動の相 互 作 用 姿 勢 変 換 皿 応用 順応期ADL
ヒで の改善 生 活環境・
職 業へ の適 応 身 体支持基 底 面 外で の応用 動 作 特 定 条 件 卜’
での反 復 刺 激 自己管理能力の向L
表4 各ステー
ジ にお け る代表的訓 練 方 法 ステー
ジ 方 法 留 意 点1
D
臥位・
坐 位に て,
頭 部 を 動かさずに眼前の指 標を交hl
(左右)に注 視2
) 坐 位にて,
眼前の指 標に対して頸 部を左 右に 回 旋 しな が ら注視・
ス ピー
ド・
回数に ト分な注 意 を 要 する・
終」!
後 しばらくしてか ら気分不 快を訴え る場 合 もある H 3)輻幹坐 位で の,
頸一
体 幹の側 屈及 び振り 子様 運動 (開・
閉 眼 ) 4) 仰 臥 位,
寝 返 り な どの姿 勢 変 換 嫗 幹を中心と し た ね じ りのあ る 運動 5) 膝立 ちバ ラン ス・
膝歩き 6) 立ち上が り・
足踏み・
片足 立 ち 7)PNF の応 用 ・ 姿勢 変 換 時の視 覚 情 報 (閉 眼・
固視・
注視・
非 注 視 )を段 階 的に変 化さ せ る・
ステー
ジ 1と異な り, こ こで は めまい誘 発 動 作 を繰 り返 すことで減 衰・
順応を計るこ とも重 要・
併行して頸・
ヒ肢の ス トレ ッ チ ング体操を行う こ ともよ い 皿 8)継ぎ足歩行・
階段昇 降 9) 坐 位・
膝立 ち・
立位での キャッ チ ボー
ル 10) 不 安 定 板でのバ ラン ス保持 lD 種々の応用 動 作・
職 業特性に応じ た肢位の反復や耐 久 性の要 素が 重 要 視される・
自己管理能 力の向 上のた め,
患 者 自身が プロ グ ラム の回数な どを設 定す ること も よい4 理学療 法学 第
20
巻第1
号 表5
対 象 皿 臨 床 成 績 患 者数 末 梢 前 庭 障 害 患 者 疾 患 内 訳Meniere
病 良性発 作性頭位め まい症 遅発性内リン パ水 腫 その ほか (疑いを含む) 性 別 男 :女 年 齢 平均年齢 (27〜67
歳)20
名 入院群 外来群 4 2 2 13 6 7 1 上0
20
2
9
11
4
5
5
:6
49.5
53.
1 46.
5 b 入 院・
外 来の別は,
主 と して理学療法を行っ た時期で 半II定 し た。 る。 続い て第H
期で は, 頭部や賜幹の運動を 含め た動 的 順応へ と発 展 する 。 同時に姿勢保 持の基本 要素で ある視 覚一
頸一
軅 幹の相互機 能の向上を図る。 こ こ で は回旋運 動を積 極的に取 り入れ閉 眼で の身 体 保 持も促 すが,
身 体 支持 基 底 面 内での統 合に主 眼 を お くことが肝 要で ある。
さ ら に第皿期で は, 支持基底面 外の不安定な状態で の バ ラ ンス能 力の向上と,ADL
お よ び職業上の特 殊姿勢 をも配 慮し た め まい・
平 衡 障 害に対 偲 する。 最 終 的に は 痕獣 に対 する自己管理能 力の確 立が重 要で,
疲 労・
全身 状 態・
ス トレ ス と めまい の出現 程 度との理 解 も促 され な ければならない。 当然の事な が ら基 礎 疾 患の予 後 や 症 例ご との障 害 特 姓 は多彩で あ る ため, 詳細は個別に独 自のプロ グラムが作 成さ れ る。 尚,
各ステー
ジの代表 的な 運動療法内容は表4
に掲 げた とお りで ある。 1) 対 象と方 法 中枢 病 変を否 定し た急 性 発 症の末 梢 性 前 庭 機 能 不 全 患 者 20名を対象と し た。 疾 患 内 訳は メニ エー
ル病 4例・
BPPVI3
例・
遅 発 性 内リン パ水 腫 1例・
その ほか (疑 い例を含む)2
例で,
男 女比・
平均 年齢は表5
に示 すと おりで あっ た。 H・2
)で示 した評 価 法によっ て症 例ごとの障 害 特 性 を把 握し,
運 勁 療 法 を一
定 期 間 施 行 した際の経 時 変 化を 検 討 し た。
と くに本 稿で は,
めまい重 症 度 と重 心 動 揺 か ら その効 果 を 判 定 した。
重 心 動 揺の測 定は,
嫗幹坐 位 (足指を浮か せ た椅坐位 :椅子の高さ を60
cm に統一
し,
患者に は無理 に下 肢を持ち }:げな い目然な状態で姿 勢を 保 持す る よ うに 指 示 し た)お よ び15cm
開脚立 位で 行っ た。
計測中の安 定し た30
秒 間をサ ンプ リング周期 50 ミ リ秒で解 析 し,
二次 元に得 られ た移 動 軌 跡 か ら動 揺 面積を算 出し た。
2
) 結 果 発 症時・
理学療 法 開始 時お よ び終 了 時 (一
定 頻 度以 上 で行わ れ る運動療 法の終了を意 味 し,
フォ U一
ア ッ プを 含め た理 学 療 法の終 わ りで はない)で のめまい重 症 度 を 図 1に示した。
理学 療 法 開 始 時の重 症 度は,
入 院 群で7〜3
点 (平均5.
4
点;順序尺度のため参考値一
以下同)・
外 来群で は7〜
1点 (・
平均 4.
2 点)で あっ た。
従っ て,
20
例 中11
例は め まい・
平衡障害の た め車椅子ない し介 助 歩 行の 状 態から理 学 療 法 を 開 始 し た。 その 後の運 動 療 法で めまい は急 速に軽 減・
消 失し た が,
回 復 過 程は初 期 の重 症 度 とは一
義 的 な相 関 を 示 さず, 急 激 な 回 復 を遂 げ 爛 酬 三 悩 £ 入院群 (9
) 1〔点} 10 ●●●●●● ●● 8 0 ●●●● 6 ●● 4 ●● ● 20 oOO 瓢 ・ °・ 外 来 群 (11) ・ Q器
8
・ cmo 飆_
L__
___
L___
__
亠_
_
_
L_
_
___
一 発 症 時 開 始 時 終 了時 発症 時 開 始 時 終r
時(理学 療法)
(理学療 法) 図 1 めまい重 症 度の経 時変化
末梢 性 前 庭 機 能 不 金 患 者に対 する理 学 療 法 5 27y
.
o.
female BPPV む嘱
窪 省 臼 き O V 十N = 6十 〇= 6 Pre treatment 0.
1垂
1率
10ing OlO V 十N =0
十〇=
O Post treatment Sittimg (E.
0.
) Sitting (E.
C.
) 0.
1 1 Frequency (Hz)並
塾
図2
運 動 療 法前後のめまい重 症度と重心動揺変 化 運 動療法後に は,
驅幹坐 位・
立 位の動 揺面積の減少,
0.
5Hz の周波数成分に おける振 幅低 ド,
が観 察 さ れた。
立位時の 0.
3一
ロ ン ベ ル グ値の減 少 (坐位) 10 入院 群 (9) ユ ら.
吐 亟 隅 塑 亟 ぢ 2 4 立 位 (動 揺 面積 ) 6 8m @ 外 来群 (11) 15
.
α 躯 旧 齦 亟 蓴 2 4 6 8立 位(動揺面積)
(cm2 > 図
3
坐位に おける立位 時の重心動 揺 変 化 入院・
外来群の坐位・
立位値と もに有意な改善が示さ れ た (p< 0.
Ol)。
た 症 例と比 較 的緩や か な改善を認め た例 が 混 在 した。 入 院 群の時 聞 的 推 移を検 討 する と,
発 症・
入 院か ら 理 学 療 法 開 始まで は6.
1日 (2 〜10
口) と短 く,
開 始 か ら退院まで の運動療 法期間は平均9,
6
日 で あっ た。 従っ て, め まい発作か ら め まいが消失・
自立 生 活が可 能と なっ て退院す る まで に要し た 日数は,
平 均 15.
7日 (10〜 21
日)であっ た。 図 2に は重心動 揺の 代表 的 変化を 示 し た。 本 症例の理 学療法開始時に は, 誘 発 性の強い めまい (めまい重 症 度 6点 ) とADL
に支 障を き たす 顕 著な休 平衡 障 害を呈 し て いた。 週3〜
4LIの 外来理学療 法と計画 的な自宅 訓 練 を行い,
め まい の軽減 と重 心 動 揺に お け る正常 範 囲まで の改 善が観 察さ れ た。 同 時に主 婦 業か ら段 階的な職 場 復 帰を経て完全復 帰を遂げ た。 さ らに前 回ま で は1
年問に 数度のめ まい発 作を繰 り返して いたが,
理 学療法 受 診後 1年以E
を経過 し た現 在まで発 作は観 察さ れて いない。6
理学療 法学 第20
巻第 1 号 尚,
重 心 動 揺で定 量 的な改 善 とし て捉え られた点は,
動 揺面 積お よび軌 跡 長・0.
3 − O.
5
Hz の振 幅値・
ロ ン ベ ル グ値の減少で あっ た。 治療前後の動揺面積の変化を図3に一
覧し た。
入院群 で は躯 幹 坐 位 動 揺 面 積 はO.
29 cm2 か ら0.
22 cm2,
、?:位 動 揺 面 積が 3.
44 cm2 からL83 cm2 と変 化 し,
外 来 群 もOA3
crn2 か ら0.
14 cm2 (坐 位 ),
4.
40 cm2 か ら1.
26 cm2 (立位)と そ れ ぞ れ有意 な改善が 認 め ら れ た。 (pく0.
Ol
)。 症例ご とに観察する と,
図 中の傾き が大きい群 (坐位・
立 位値と もに改 善を認め た例 :混 合型)と小さ い群 (主と して立位値の みが改善 : ド肢型)に大 別され,
異な る障 害 特 性と回 復 過 程が示 された。
とくに入 院 群で は全例とも短期 間に正常 範囲まで の改善が観察された。IV
考 察 リハ 医学におい て,
め まい・
平衡 障害は他の合併 症 状 や 阻害 因 子と して位 置づけ られる事が多 く,
積 極 的な運 勳療法は症例報告に散見され る程 度で あっ た。一
方, 耳 鼻科領域で は前庭 機能不 全に対する運 動 訓 練の 検 討が,
Cawthorne2 )の 報 告を皮切りに, McCabe9 )・
Dixゆ・
Hallpikell
)・Cooksey
]2)ら によ っ て提唱・
実践さ れて い る。 近 年で はHerdman13
)がBPPV
患 者に刻 す る理 学 療 法の経 過を報 告 し,
Morris上4 ) は多発 性 硬化症を基 礎 疾 患 と しためまい に対 する順応 訓練の重要性 を作業療 法の立場か ら示唆し た。 Lessing−
Turner 且5)は,
自主訓 練と 理学療 法施行群の 回復過程か ら,
理学療 法十によ る 効果を前庭 勤眼系の指標か ら定量的に報告し た。 我が国 で は高 橋16)が,
前庭・
迷 路 系 障 害に対 する積 極 的な運 動 療 法の必 要 悌 を 文 献 的 考 察 か ら総 説 的に示 して い る。 平 木ら17)は,
交 通 外 傷に伴う前庭障害 と項 部痛を有する症 例に対して頸部へ の徒 手療法を行い,
筋トー
ヌ ス と めま いの軽減と の関 連か ら その効果を示し た。 上 記に示す よ う な前 庭 性め まい に対す る 運動 療 法が 重要 視さ れ る背 景 に は, BPPV
にお け る変性し た耳 石の物理的な除 去や,
疲 労 現 象を利 用し た繰 り返しによる順 応 促 進,
中 枢 神 経 を含め た代 償 能の獲 得が挙げ られ る。
め まい疾 患は発 生 機 序が不 明な点 も多 く必 ずしも病理・
生 理 学 的知 見との一
義的な論証は容易では ないが,
多くの臨床 報 告か らそ の効果は支 持さ れ る。 現 在で は Noorel8 ) の vestibularhabituation
trainingを始め と した,
左右 前庭 系・
深部 感覚系の相互作 用や中枢神経 系の学 習 効 果が広 く受 け入 れ ら れて い る。 さ らに吟味すべ き は,
末梢 性 前 庭 疾 患におい ては臼然 回復 を 考 慮 して も尚理学療 法の効 果が 認め ら れ る か を検 討する点にある。 筆者の うちの徳増 6)は,
耳 鼻科 医の立 場か ら自主訓練のみ な らず 早期か らの運 動 療 法 (とくに リハ 室で の治療)の重 要 性を示 唆して い る。
事 実,
対 照 群 との比 較 か ら眼 振の消 失 率 と動 揺 視の消 失 期 間が短 縮 する成 果 を 報 告し た。
ee
野19)は,
年 齢・
性別・
重 症 度を 合 致さ せ た対照 群 を用いて リハ と薬物療法との相互関係 を検討した。 その結果,
BPPV におい ては回転性め まい と誘発性眼振で リハ 効果が薬物効果に比して有意に高い 改 善を示し た。 ま た BPPV 以 外の疾 患 郡で は,
発 症 後 4週 以 内で特に運 動 療 法 効 果のある こ と が観 察さ れた、
さらに治 療プ W グラムを 吟味し た本結果では治療期間の 短縮を 認め (特に運勁療法 開始後 2週以内の改 善 例が多 く),
理学 療法士が積極 的に関与する事で治 療 期 間の短 縮と効 果の向E
に寄 与 するもの と推 察された。 こ の こと は臼然 回 復の経 過を促 進 すると ともに,
代 償 作用 がよ り 好 ま しい方 向へ 導 くた め に末 梢 機 能へ の順応刺 激と して 積 極的な運動刺激が中枢代 償の促進を示してい る とも考 え られ よ う。 従っ て末梢感覚 受容器の方向 (三半 規 管 ) や刺 激 強 度・
頻 度は,
生 理 学 的 基 盤とあいまっ て厳 格に 管理 さ れ な け れ ば な らず,
同 時に運 動 療 法 後に一
時 的な めまい増 悪 感 を 訴 える患 者 も特に急 性期で は多い ことか ら, 薬物療法との相互調 節が不可欠であ る。 次に,
疾病特 性から み た 理学 療法の意義で は め まいが 他の疾患群に比して反 復 性の経 過 をとりや すい点が挙 げ ら れ る。 こ の こと は急 性 期 (ま たは反 復 時の増 悪 期 )に おける早 期のめまい・
平 衡 障 害の回 復 と と もに,
再 発の 予 防に運 勤 療 法がいか なる影 響 を 与え て い るか を捉え る こ とが 重 要で ある。
林20)は メ ニ エー
ル病の前 兆に対する 薬物療法を行い, 発作発現頻度の 減少を報 告してい る。 徳増21)は 発作初期の適切且っ 十分な治療は発作軽減と休 Ellas間を延 長す る と述べて おり,
運 動 療 法がこれ らの メ カニ ズムに も陽 性 的に働 くnJ能 姓は伺わ れるが,
図 2に 提 示し た ような症 例の蓄 積と ともに正 確な判 定 基 準の確 立を含め た今 後の検 討 課 題で あろ う。 これらの諸点を理 学 療 法全般か ら眺め た際に は,
後 療 法から治 療へ の発 展 と さ らに は保 健・
予 防 医 学へ の寄 与 を 果たすことへ の モ デル と も成り得る 可能 性を示 して い る。
平 衡 障 害にっ いて は,
小 脳 件お よ び感 覚 性の運 動 失 調 症に 対す る運 動 療 法の 知見が 応用 口∫能で あ る。
Haines22
)は 臥 床に よっ て容 易に平 衡 機 能は低 ドし,
且 っ 筋 力 増 強を含め た固 有 受 容 器の促 通は無 効なこと か ら 直 立 位における前 庭 機 能の重 要 性を示 唆して い る。 平 衡末 梢 性 前 庭 機 能 不企患 者に対 する理学療 法 7 障 害を主訴とする脊髄小脳変 性症で は
,
障害タ イ プに よっ て は運動療 法 効果が認め ら れ る こと2s)か ら,
ADL レベ ル で の対 応は慢 性 期まで有 効で あ る と考えられる。
と くに藤Stlg
)は 60歳 以E
の前 庭 機 能 不 全 患 者に お いて もリハ 効 果は低 くない結 果 を報 告 し,
山 本24)は高齢者の 平衡機 能が運 動の 中止に よ っ て容 易に低 ドす る事 実か ら,
リハ を 如何に継 続する か が重要な観点である と述べて い る。 筆 者らの方法は,
高齢 者や骨・
関 節 疾 患を あ る程 度 合 併し た症 例に も応 用 可能で ある点 も,
耳 鼻 科領域で提 唱 さ れた諸 法に比 して特 筆される。
さ ら に職 業特性や ADL 様式に応 じた場 面設 定と繰り返 しの前庭刺激は, 月:鼻科 医との協 力の ドで さ らに発展すべ き余地を含んで いる。1
司時に前 庭 性 平 衡 障 害で得ら れ た知 見は,
姿勢調 節に か かわ るメカニ ズム を検 討 するうえで も有 用 な情報を 提 供し得る。 Nashner25)は視 覚・
体性感覚・
前庭 感覚に 対する外舌L
応 答の 様式か ら,
各症例の 平衡 障害特性が一
層 明確に判 定し得る と述べて い る。 筆者 らの結 果で も,
前 庭 疾 患の障 害 特 性とそ の経 時 変 化は混 合・
ド肢 型に人 別 さ れ,
坐 位での平 衡 機 能 を 測 定 する意 義は大 き く障 害 特 性に応 じた治 療プロ グラムの 重 要.
吐 を も示唆して いる。 ま た感 覚 性 平 衡 障 害で は下肢 型が殆 どで ある点や,
小脳 性運動 失調 症で観 察さ れ る嫗幹}“.
26)を 相互に検討す るこ とで,
平 衡障害にか か わ る他 疾患へ の応 用も可能であ る。.
ヒ記の機能不 全が混 在し た脳 卒中のめ まいや,
頭部外 傷 における姿 勢 調 節 不全,
脳 駐 麻 痺 児や学 習 障 害 児の前 庭 機 能 不 全の定 量 的 評 価との関 連 性に も興 味がもたれる点 で あ る。前 庭機能の獲 得と 運動との 関 係は発 達27>を含め た 生休 全体の解 析ともいえ
,
科 学 的な運i
助療 法の確 立には体 育’
1’
1
学な ど を含めた学 際 的ア プロー
チが不[」欠とい え る。 謝 辞 稿 を終え る に当た り, 症例の主治 医と し て ご助 言・
ご協力を 賜 り ま し た 北 里 研 究 所メデ ィカル セ ンター
病 院 耳 鼻 咽 喉科の, 原田宏.
.
・
医長 (元)・
稲木勝 英医員 (兀 )・
金子 功 医 長に厚 く御 礼申 し あ げ ま す,
, 文 献D
小 松 崎 篤・
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<Abstract>
Physical Therapy inPeripheral Vestibular Disease
Yasushi
UCHIYAMA,
RPT
Dopartment
ofRehabilitation,
Kitasato
fnstitute
dedical
Center
Hbspital KojiTOKUMASU, MDDepariment
of
Otorhinolarl,ngotegy,
Kitasato
Lbeiversitl,
Schoot
of
flfedicinePeripheral vestibular diseases especially result in vertigo and frequently nausea and
vomitting
in
additionto
disequilibrium.
The authors have alreadyfocused
ontherapeutic
ex-ercisefor
yertigo anddisequiEibrium,
whichled
tothe production of a scale of vertigo, andhave
described
physicaltherapy managernent ofvestibulardiseases.
The
purpose of thisstudy was te analyze the relationship between therecovery coursefrom
vertigo and effect of physi-cal therapy investibular diseases.Twenty patientsassociated with acute peripheralvestibular diseases with a mean age of
49,5
(27-67)
years were studied. The vertigo of each patient was classified according toTokumasu's
scale andbody
sway was measured when sitting(on
a chair without aback
withthe feet
dangling
without touching the floor)inorder toassess truncalequilibrium, andstand-ing
conditions(uprignt
standing withthe
feet
kept
15cm
aparO.Therapeutic
exercise was performedin
combination with visual, vestibular, and proprioceptivestimuliby
a physical therapist.Allpatientsshowed good and early recovery from vertigQ after repeated applications of thetherapeutic exercise, and body sway decreased
(p<
O.Ol),