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第10回錯視・錯聴コンテスト授賞式の報告と本コンテストの展望

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Academic year: 2021

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DOI: http://doi.org/10.14947/psychono.38.19

132 基礎心理学研究 第38巻 第1号

第10回錯視・錯聴コンテスト授賞式の報告と本コンテストの展望

北 岡 明 佳

立命館大学総合心理学部

A report of the award ceremony of the 10th Visual and

Auditory Illusion Contest and its prospect

Akiyoshi Kitaoka

College of Comprehensive Psychology, Ritsumeikan University

The award ceremony of the 10th Visual and Auditory Illusion Contest was held in the 37th annual meeting of the Japanese Psychonomic Society, Senshu University Ikuta Campus, Kawasaki, Kanagawa, Japan. The first prize was awarded to “Helix Rotation: A New Twist on Pulfrich and Hess” produced by Arthur Shapiro, American University, Washington, D.C., USA. This illusion work was to demonstrate the Pulfrich effect beautifully. The other prize-win-ning illusion works were also wonderful. This article discusses the current state and prospect of this contest.

Keywords: illusion, contest, visual illusion, auditory illusion, Pulfrich effect

は じ め に 第 10回錯視・錯聴コンテストの授賞式は,2018年12 月2日(日)に,専修大学生田キャンパスで開催された 日本基礎心理学会第37回大会のシンポジウム2として行 われた。出席者は150名弱であった。例年通り,入賞は 10作品とし,上位から順番に,表彰,作品紹介,出席 者全員でのディスカッションを繰り返した。「錯視・錯 聴コンテスト」は,2009年の日本基礎心理学会第28回 大会(日本女子大学)において初めて開催された「錯視 コンテスト」以来,日本基礎心理学会の年次大会内にお いて,その授賞式が行われてきた。多くは懇親会の中の 余興として実施されてきたが,今回は大会のシンポジウ ムの一つとして開催された。本稿においては,当コンテ ストが10周年を迎えたことを記念して,今回の受賞作 品をいくつか紹介するとともに,当コンテストの意義と 今後の展望について考察したい。 第10回錯視・錯聴コンテスト受賞作品

優勝(グランプリ)は,Arthur Shapiro 氏(American

University)の“Helix Rotation: A New Twist on Pulfrich and Hess”であった(Figure 1)。プルフリッヒ効果の美しい デモであった。今後は,授業等でプルフリッヒ効果を紹 介する時には,このデモを用いると効果的であろう。 本作品は,当コンテスト初の日本語話者でない研究者 からの応募作品で,かつ初優勝となったことが特筆され る。錯視・錯聴コンテストのウェブサイトと案内は,基 本的には日本語で行われており,一部に英語の簡素な案 内も用意されているものの,日本語話者でない人からの 作品応募の障壁となっている。もちろん,サイエンスに は国境はないが,これまで本コンテストの性格は日本国 内ローカルと割り切り,日本基礎心理学会の「学問的余 興」として受容されてきたと認識しており,この際一気 に国際化を図ろうという選択肢も考えられるところである が,後述のように,筆者は現段階では慎重に考えている。 ちなみに,プルフリッヒ効果を観察するには,片方の 目に入る光量を下げるフィルターを用意する必要があ る。本授賞式では,日本基礎心理学会からの研究活動助 成金を活用してフィルターをロールの状態で購入し,裁 断して出席者全員に配布した。 2位は,中村浩氏(北星学園大学)の「影の運動によ る色の捕捉現象―その3」であった。いわば残像の仮現 運動のデモであるが,存在しない色が仮現運動で動き 回って見える現象である。筆者の主観によれば,この作

The Japanese Journal of Psychonomic Science

2019, Vol. 38, No. 1, 132–135

講演論文

Copyright 2019. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved. Corresponding address: College of Comprehensive

Psychol-ogy, Ritsumeikan University, Iwakuracho 2–150 Ibaraki, Osaka 567–8570, Japan. E-mail: [email protected]

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133 北岡: 第10回錯視・錯聴コンテスト授賞式の報告と本コンテストの展望 品は,例年のグランプリ受賞作品のレベルだったと思 う。3位は,石川将也氏(ユーフラテス)の「グリッド で円がガタガタ錯視」で,興味深い幾何学的錯視であっ た(Figure 2)。そのほかの7作品も,それぞれ高い水準 の錯視・錯聴作品であった。 本稿において筆者が全作品を詳細に紹介するという挙 に出ても(大変なページ数になっても),ひょっとする と日本基礎心理学会は許してくれるのではないかと想像 している。しかし,今回の入賞作品も動画の作品が多 く,紙面では十分説明しきれないので,作品の掲載され たウェブサイト(http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/ sakkon/sakkon2018.html)をご覧あるいはご聴(?)頂け れば幸いである。

Figure 1. The first prize winner “Helix Rotation: A New Twist on Pulfrich and Hess” produced by Arthur Shapiro, demon-strating the Pulfrich effect beautifully. Courtesy of Arthur Shapiro. See: http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/sakkon/ sakkon2018.html

Figure 2. Grid-induced Distorting Circles illusion produced by Masaya Ishikawa, EUPHRATES ltd., Chuo-ku, Tokyo. Circles appear to be distorted by the background grid patterns. Courtesy of Masaya Ishikawa.

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134 基礎心理学研究 第38巻 第1号 錯視・錯聴コンテストの国際化について 錯視・錯聴コンテストを国際化するというアイデアは, 審査委員会の委員からも,すでに出されている。このア イデアに筆者が消極的な理由は,以下の2つである。 1つ目の理由は,国際的な錯視コンテストは,すでに アメリカで行われているということである。それは, “Best Illusion of the Year Contest”(http://illusionoftheyear.

com/)である。しかし,錯視・錯聴コンテストと Best Illusion of the Year Contestはいくらか性格が異なることに 加えて,同種の催し物が複数あることは学問の発展に有 益であるから,錯視・錯聴コンテストを国際化するのは よいアイデアのように見える。今回優勝した作品の作者 であるShapiro氏が錯視・錯聴コンテストに応募した理 由は,当コンテストの方が「水が合った」からかもしれ ない。しかしながら,これは審査委員長である筆者の, 個人的で後ろ向きの理由なのであるが,Best Illusion of the Year Contestの主催者の商売の邪魔をしたくない,と いうことがある。こちらは純粋な学問的な遊びのつもり でも,あちらは商売っ気があるようなので。 2つ目の理由であるが,国際的なコンテストにするた めには,公用語を英語にする必要があるということがあ る。その何が問題なのか,とお叱りを受けそうである が,審査委員が英語ができないといった理由ではないこ とは言うまでもない。第10回錯視・錯聴コンテストの 審査委員は,筆者(北岡),蘆田宏氏,原島博氏,一川 誠氏,中島祥好氏,杉原厚吉氏,高島翠氏であり,英語 化に問題があるわけではない。現実的には,今のところ 審査委員自身が事務担当者でもあるので,この人数では コンテストの国際化に十分対応できないと考えられる が,必要なら審査委員を増員したり,(資金の問題はあ るが)専属の事務担当者を置けばすむことである。 率直に言えば,日本語であるならば高い水準の作品を 応募してくる可能性がある層が日本には一定数存在する と推定され,それは無視できないほどの層の厚さであ り,それはいわば日本の錯視研究の底力であり,その底 力を反映できるよう日本語モードを維持しておきたいと いうことが,筆者の考えである。この国際化時代に何と いう時代錯誤の考え方であろうか,というご批判もあろ う。しかし,筆者としては,このまま現状を維持して, 後世の評価を待ちたい。 もっとも,Shapiro氏の受賞を皮切りに,日本語話者 でない人からの応募が増えて,なし崩しに国際化してし まうという近未来も考えられる。それはそれで結構なこ とである。第 11回錯視・錯聴コンテスト(2019年度) の案 内(http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/sakkon/sakkon 2019.html)においては,最小限ではあるが,英語の応 募案内も表示されている。 視覚以外の感覚の錯覚の作品について 「錯視コンテスト」を「錯視・錯聴コンテスト」に改 めたのは第8回(2016年)からであるが,錯聴作品は応 募数が多いとは言えない。また,今のところ錯聴作品は 第9回(2017年)の5位入賞が最高である。上位入賞が 少ない理由は,応募される作品のレベルの問題ではない (と審査委員会では認識している)。それならなぜ上位入 賞が少ないのか,という問いに対する答えは,「作品が 難しいから」である。錯視作品の場合は,応募者が十分 に説明していないものでも審査委員は容易に理解でき, 応募者が気づいていない価値を審査委員が発見すること すらあるほどであり,錯視作品は概して「やさしい」の である。これとは対照的に,錯聴作品については,聴覚 の専門家である審査委員の補足説明によく耳を傾けて やっと理解できる,という状況である。錯視コンテスト として発足したものだから,錯聴を理解できる審査委員 の数が少ないため,錯聴を難しく感じているという可能 性はある。一方,応募される錯聴作品は学問レベルは高 いが,錯視作品のような「庶民性」(前提となる知識が 少なくてもわかる)が低いという可能性も考えられる。 今後の検討が必要である。 そのほか,錯触,錯冷,錯温,錯嗅,錯味などの作品 もお待ちしている。今のところ応募はない。その理由と しては,そういうカテゴリーの作品が存在しないか少な いからと考えられる。それらについては,応募があった 場合には,錯視作品・錯聴作品のように電子データで送 れるようなものではないので,作品に応じて最善の応募 方法を考えなければなるまい。 受賞作品のアーカイブについて 受賞作品は,錯視・錯聴コンテストのウェブページに 掲載している。それとともに,第1回から第9回までの 全作品について,理化学研究所が運営していたVisiome Platform (https://visiome.neuroinf.jp/?ml_lang=ja)にアー カイブしてきた。ところが,突如2019年3月末をもって 新規登録が終了となったため,第10回の作品について はアーカイブを行わなかった。当時,Visiomeは新規登 録の終了だけでなく,閉鎖される可能性もあったからで ある。我々はVisiomeをいわば国家が運営する電子アー カイブプロジェクトと片想いし,日本国が続く限り存続 すると期待して,せっせと入賞作品の登録をしていたわ

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135 北岡: 第10回錯視・錯聴コンテスト授賞式の報告と本コンテストの展望 けであるが,所 は一研究所の好意(?)による運営で あって,その心変わりを予想できなかった我々が甘かっ たというわけだ。 一方,錯視・錯聴コンテストのウェブページは存続し ているから今後も安泰かというと,そうではない。サイ トのアドレスをご覧になればわかるが,このサイトは立 命館大学総合心理学部が運営しているサーバーの筆者の 割り当て領域に置かれている。要するに,個人アドレス であるから,筆者が勤めを終えると,このサイトは消滅 すると考えてよい。このため,いずれ筆者は,しかるべ き学会等のサイトに引き取ってもらえないか,交渉を始 めることになるだろう。 錯視・錯聴コンテストの今後について 上述のように,第 10回錯視・錯聴コンテストの授賞 式を,日本基礎心理学会第 37回大会(2018年12月2日 (日)・専修大学生田キャンパス)において行った後,第 1回から第10回までの優勝(グランプリ)作品を対象に, 「10周年記念総合グランプリ決定コンテスト」を,第13 回錯覚ワークショップ(2019年2月25日(月)・明治大 学中野キャンパス)において開催した。参加者による投 票の結果,錯視・錯聴コンテスト10周年記念総合グラ ンプリ決定コンテストの総合グランプリは,第 9 回 (2017年)のグランプリ作品「なよやか錯視」(木村真理 乃 氏 の 作 品) に 決 定 し た(http://www.psy.ritsumei.ac. jp/~akitaoka/sakkon/sakkon2009–2018sogo.html)。 引き続き,2019年度は,第11回錯視・錯聴コンテス トを行う予定である。審査委員会の高齢化が進行しつつ あるが,当面は問題ないと考えている。審査委員会の高 齢化対策としては,委員の交代による若返りが有力であ るが,たとえばしかるべき学会の直営にして,委員を固 定しないという選択肢も考えられる。ちなみに,応募作 品の数が入賞予定数(10作品)を下回ったら(いわば 定員割れしたら),潔く錯視・錯聴コンテストは解散し たいと考えている(今のところその心配はない)。

Figure 2. Grid-induced Distorting Circles illusion produced by Masaya Ishikawa, EUPHRATES ltd., Chuo-ku, Tokyo

参照

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