Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
伝
統
的
工
芸
品
産 業
に お
け る
アザ
イ
ン
の
役 割
Design
in
the
Traditional
Crafts
lndustry
町 田 俊
一
岩手 県
工業技術
セン ター
MACHIDA
Toshikazu
lwate
lndustrial
Research
lnstitute
私 た ちの生 活はさ ま ざ ま なモ ノ に取 り巻 か れ
、
モ ノに よっ て生 活の大 半 が 成 り立っ て いる こ と は言 う まで もあ りま せん。 科学技 術の進 歩に よっ て 日々新しい モ ノが 生 み 出 され、
我々 の生活に登 場 してい ます が、一
方で は百 年以上 も素材や技術が変わ らずに、
あるい は ほとん ど変 わ る こ と なく我々 の生活を支えてい るモ ノ も た く さ ん あ ります。 今回本誌が テー
マ で取 り上げてい る伝 統 的工芸 品も長い 歴史の中で培われ、
脈々 と造 り続けら れ てきた ものです。伝 統 的工芸 品に は陶磁 器、
漆 器、
家 具な ど さ ま ざ ま な分 野の生活用 品があり ま すが、
そのい ずれもが自 然 素材を材 料に使用 し、
人の手で造られ てい るとい う特 徴を持っ て いま す。 また、
これ らの工芸 品はそれぞれ が 造 られ る地 域の文 化 や風 土 と密 接 なつ な が りを持っ てお り、
その地域に 固有の素材を使い、
その地域の生活文化 によっ て確立され た製 造 技 術や デザ インを持っ て い る こ とも大 き な特 徴であ ります。 伝統 的工芸 品の多 くは今 述 べ た ような特 徴に よっ て、
かつ て は日本 文 化を代 表 する 製 品で あ り、
陶磁 器、
漆 器、
織 物 等の工芸 品は外国で開催 され る万 国 博 覧会 等に 日本の代 表 製 品として 出 品 さ れ、
常に高い評 価を得てい まし た。 現在で は精密機器、
家電 製 品 等の工業 製 品に地位を明 け 渡 し ま したが、
今で も伝 統 的 工 芸 品は、
地 域 経 済 を 支える地 場 産 業 と してさ まざ まな 生 活 用 品の生産 を行っ てい ます。
これ か ら も本 誌で述べ ま すように、
伝 統 的工芸 品は多 くの価 値 を持っ てお り ます。 そ れ らはこれ か ら私た ち が 解 決 しな けれ ばな ら ない環 境 問 題 をはじめ、
日本 文 化の 継承や教 育に至るさ ま ざ ま な 問 題へ の解決の示 唆に富ん だ ものであ る と確 信 してお り ます。
しか し、
生活の 中に 安価で高機能 な、
そ して何 と言っ て も現 代 生 活にマ ッ チ したデザ インを持っ た工業製 品 が浸透 してくる と ともに、
伝 統的工芸品 は生活の片隅に追いや ら れ、 登場する機会 も激減してい る のが現状です。 この ような状況の中で伝 統 的工芸品 産業は、
その存続にも関わ る問題 に直面 して い ます。 近代化と工業 化を進め た と は言え、
伝 統的工芸 品産業にもた ら さ れ た変 化の大半は規模と市場の拡大で あ り、
技 術 革 新 や 時 代 に 適 合 させた 製 品の転 換 等は ほと ん ど なされ ま せ ん で した。 現在もほ と ん どの伝 統 的工芸 品は職人に よ る手作 業で 生産 を行い、
製 品も工芸 品とし て位 置づ け られてお り ます。 当 然これ らの製 品 はコス ト は高く、
趣 味 性、
嗜 好 性が強いた め に、
全国の使 用 者 に 広 く流通させ る ことも非 常に困難です。 職人の手仕事故に コ ス トを下げるこ と もできず、 その職人 も減少し て後継 者の確 保 も困 難になっ てい ます。
さ らに、
外 観だ け を伝 統的工芸品に似せ た大量 生 産に よ る低価格な製品も多く 出 現 してい ます。 これ らの製 品 は使 用者に伝 統 的な製品 の価値に対 する理 解 を混 乱 させ、
伝 統 的 工芸品に対 する 信 用の失 墜を招 く事 態を引 き起こ し、
問 題 を さ らに悪化 させ てお ります。 全国 的 に伝統 的 工 芸 品 産業は衰退 して い ると言わ れ、
国が指 定して いる 「伝 統 的 工 芸 品」につ い ては1979年 度の ピー
ク時に比べ て 1997年度は 生 産額、 企 業 数、
従事
者 数は半 分 近 くに減少 しま した。 この ような 減 少はもはや 景 気の悪 化 や、
消費の鈍化では説 明できず、
産業の存 在とその製品の必要性が問わ れ てい ると考える べ きで あ りま しょう。
これ は、
伝 統的工芸品産 業の発展 が 緩 漫であっ た た めに、
生 活 文 化 や様式の急激 な変化に 適 合で き なかっ たこ と が大きな原因といえる か も しれま せ ん。 しか し、
も う一
方で は、
私 た ちの文化が育ん で きた 産 業 や 製 品と、
それ らの製 品 が もた らす、
伝 統 的に受け 継 が れて きた 生活の価値、
暮ら しの智恵とい っ たもの を 理 解でき ない生 活 者や社 会環境を作 り上 げてし まっ たこ とも大きな 原 因で あ るとい えるでしょう。
現在では、 特別な付 加価 値を持っ た指 向性の強い製品 と して扱 わ れている伝 統的工芸 品ですが、
最初か ら、
い わ ゆる 「文 化 的 な製 品」を生 産 さ れてい たわ け であ りま せん。ほ とん どの伝 統 的工芸 品産業も その はじまりは、
地 域の生活に必要な もの、 生活を豊かにする た めの用 具を 作 る 生 活 用 品 産業と して成 立 してい る の です。 こ の ような意味で、 現 在の伝 統 的工芸品 産業にとっ て 最 も必要なこと は、 モ ノ に内在さ れてい る意 味や価値が よ り的 確に表現 され、
活用 されるためのデ ザ イン で あり ま しょう。 また、 長い 時 間をかけて育 まれて きた材 料 や 技 術に よ る、
ものづ くりの普遍性を追求 する と ともに、
常 に移 り変わっ てい る生活に密 着した製品の今日的 な意味 を 追 求 す るこ とも重 要であ りま しょう。 哲 学、
理念、
企 画、
デ ザ イン とい っ たソ フ トな事
項が伝 統 的工芸 品に取 り込 まれ、
伝 統的工芸 品に新しい 位 置づけ を もたらすこ とがこれ か らの大 き な課題であると考え ます。 伝 統 的工芸 品の もつ価 値や文 化や独特の資 源と相まっ て、
日本 文 化の もつ 普 遍 的 な価値を生活に取り戻すた め に デザ インとのコ ラボレー
シ ョンは緊急な 課題であ り、
その 意 味で本 誌 が 工 芸 品 生 産にか か わる方々、
デザ イン にかかわ る方々双 方に とっ て の資料にな れ ば幸い です。
デ ザ イン学 研究特集 号 SPECIAL ISSUEOF JSSD Vol