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スベスベマンジュウガニの部分的白化個体

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Academic year: 2021

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(1)

C A N C E R 9 (2000), p . 5 - 7 5

スベスベマンジュウガニの部分的由化個体

中坪俊之 ・安原健允

ス ベ ス ベ マ ン ジ ュ ウ ガ ニ A tergatis florid削 (Lin naeus) は , 房 総 半 島 か ら 沖 縄, 台湾 ・中国 ・インド太平洋の岩礁 ・サ ンゴ礁の浅所に広く分 布している. 甲 ・脚・ 筋 肉等 に 毒 素Sax itoxin を 持つ毒ガニとして 知 られ,注意を要するカニであ る (三宅,

1983)

2) . 房 総 半 島 で は 外 房側よりも 内房側に多いようで,エビの刺し網漁などに良く 混獲さる種である. 今回,体の一部が白化したス ベスベマンジユウガニ1個体を入手することが出 来たので報告する . 材料及び方法 材料のスベスベマンジユウガニは ,千葉県鋸南 町岩井袋の信貴丸 ・渡逢信貴氏より鴨川 シーワー ルドに寄贈されたもので,

1999

12

5

日に岩井 袋港湾口部付近の水深約5 mにて , タコのわな漁 で混獲された甲長

37.4mrn

,甲幅

53 .9mm

の雄個体で、 ある( 図1 - A ) . 材料は寄贈された時,すでに 弱 っていたため,体色を保つために,海水中に浸 潰して凍結保存し,解凍後写真織影,計測

l

並びに 観察を行った . 対照として同様の地点で採集され た甲長

32 .9mm

,甲 幅

47.2mm

の正常雄個体( 図

1

-B)

を渡遊氏より譲り受け,比 較 検 討 を 行 っ た 観察結果 材料の白 化 が認められた本個体は,左第4 歩脚 指 節 先 端 の 爪 状 部 が 外 的 績 傷 に よ り 欠 け て い た が,特に若干形は認められなかった . 甲殻は硬く, 複眼は色素があり黒かった. 白 化 が認められたの は外顎脚,紺脚 及び歩脚,並びに胸部腹甲であっ た. これらのうち, 外顎脚 については左右とも全 節が白 化 していた( 図

2 - A ) .

右 鉛胸

l

は正常で T oshiyuki N A K A T S U B O and T akenobu Y A S U H A R A

Partial albinism of ucanth id crab. Atergatis fl01・

仙 図 1 スベスベマン ジュウガ二

A :

部分的自化個体,

B

正常個体 あったが,左 鮒脚 の腕節 背面側先端付 近を除く部 分と,長節外面上部から背面 にかけてが白 化 して いた( 図

2 - B) .

歩j闘は左第2歩脚の指節から前節,および,腕 節先端付近は正常色であった( 図2- C ) が,指 節先端の爪状部並びに指節 ・前節の粗毛を除く部 分が白化していた( 図2 - D ). 胸 部 腹 甲 は 第5 節から第8節まで白 化 しており ,第I節から第4 節は模様が不鮮明であった( 図3 - A ) . 甲殻は 白化が認められなかったが,背面の雲紋模様に異 常が認められた. すなわち ,左眼域及び原胃域か ら後胃域,心域の左側 を除く部分,そして右前舵 域 か ら 中 蛇 域 に か け て 模 様 が付 い て い な か っ た (図4- A ) . また,腹部にも白 化 は認められなか ったが( 図3 - A ),第5節から7節にかけては

(2)

6

スベスベマンジ‘ユウガニの部分的自 化個 体

図 2 白化部位 A :外顎脚, B 左紺脚,

c

左第 2 歩脚, D 腹面

図3 胸部および腹部の鉱大図 A : 部分的自化個体, B 正常個体

(3)

中坪俊之 ・安原健允 7 模様が存在していな か った( 図

3 - A ) .

考 察 甲 殻 類 の 白 化 は, ベ ニ ズ ワイ ガニ C hio昨ocetes japonicus (村岡・ 本 間, 1993) 4) , ガザミ PO吋u. nus trituberculatus (有 山, 1997) 5)そ し て イ セ エ ピP mωlirus japonic叫s (岡本 ・御 宿, 1998) 6 )の報 告があり ,脚 だけが黄白色とな った体色異常につ いてモクズガニ Eriocheir japonica (篠川・ 酒井, 1998) 7 )の報告がある . 岡本 ・御 宿 (1998)6)は遺 伝的な要因を示唆しているが, その他は, その原 因については不明で、あ るとのべている . 本報告のスベスベマンジュウガニは,部分的な 体色異常と 言 う点で篠川・ 酒 井 (1998)7)のモク ズガニに近い症状と思われたが,甲殻,胸部腹甲 並びに腹部の模様に異常が認められた点で異なっ ていた. 本個体の体色お よび模様の異常の原因は不明で あるが,体色の一部 が他 の部分と異なる原因のー っとしてモザイ クが知られ, 天然、では同じ節足動 物である見虫につ いて多 く知 ら れ て い る (山田 ら 編, 1983) 3)ことから , モ ザ イクの 1 例 で あ る 可 能性が考えられる . また,採集者の渡溢氏による と, 過去に2個体の白いイセエピを採集地点近辺 で捕獲したことがあるとのことから ,何らかの地 域 的,環境的な要因も否定できないが,採 集地点 付近は周囲と比べ,海底の砂が白いとの話もあり , 一般的に自然界では生き残りにくいといわれる由 化個体が生存できる環境が整 っていた可能性もあ る. スベスベマンジュウガニ は, エビ漁 などで数多 く混獲されるが,

i

度違氏 によれば, この ような白 化 したカニを見たの は初 めてとのこ となので,モ クズカ、、ニやガザミの例 と同様 に,非常にまれな現 象と思われる. また , 体色異常と合わせ,模様の 異常が確認されたのは初めてのことと思われる . 謝 辞 標本および情報の提供をしていただいた,信貴 丸 ・渡遊信貴氏,本報告を まとめるにあたり,ご 協力頂 いた鴨川 シーワール ドのスタッフ 一 同に厚 くお干し を申 し上げる. 参考文献 1 ) 酒井恒, 1976. 日本産蟹類. 講談社,東京,461pp. , 251pls. 2 ) 三宅貞祥,1983. 原色日本大型甲殻類図鑑 (]] ) pl. 34, 101p. 保育社. 3 ) 山田常雄 ・前川文夫 ・江上不二夫 ・八杉竜一 ・小 関治男 ・古谷雅樹 ・日高敏隆編,1983. 岩波生物学 辞典 第3版岩波書応,東京,1404pp. 4 ) 村岡健作 ・本間 肇, 1993. 北海道 沖で得た白 化 のベニズワイガニ . Cancer, 3 : 23-25 5 ) 有 山瞥之,1997. 大阪湾でとれた白いガザミ. Cancer, 6: 9-10. 6 ) 岡本一手IJ ・御宿昭彦, 1998. 静岡県南伊豆で漁獲 された白いイセエピとその脱皮成長. Cancer, 7 17- 18. 7 ) 篠川賞司・酒井雅博, 1998. 黄白色の脚を持つモ クズ、ガニ. Cancer, 7 : 19-20. ( 中坪俊之 : 鴨川 シーワールド 安原健允 : 日本大学)

図 2 白化部位 A : 外顎脚, B 左紺脚, c 左第 2 歩脚, D 腹面

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