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(1)

ハーブ類の病害

デジタル図鑑

第 1 集

監修

堀江 博道

執筆代表

竹内

法政大学 植物医科学専修

(財)山崎香辛料振興財団

(2)

はじめに

近年、ハーブ類の栽培・生産が拡大するとともに、各種の生産阻害が発生し、

問題となっている。その中でも病害による被害は増大している。ハーブ類の病害

に関しては、単発的には報告されているが、網羅的に論議した論文や病害図鑑の

類は見当たらず、栽培管理者をはじめ生産の現場では苦慮しているところである。

監修者や執筆者らは長年にわたり、ハーブ類に発生する多種の新病害の診断・同

定を行い、病名を登録するなどの研究を精力的に進めてきた。今般、財団法人

山崎香辛料振興財団の研究助成を得て、これらの研究蓄積および新たに記録した

病害を基幹とし、「ハーブ類の病害デジタル図鑑」を創設した。この図鑑は公開

することを前提に編集し、研究成果の進展とともに新たに追録・加除する予定で

ある。この種の図鑑は例がなく、関係各位の事業や業務に貢献・寄与できるもの

と考えている。

なお、ハーブ類は極めて多様な植物が含まれ、多種の病害が発生する。その中

で、今回は主に家庭園芸で栽培される狭義のハーブ類ならびにハーブとして利用

される観賞植物に発生する病害の一部を掲載した。今後、さらに広範囲の植物種

とその病害を追加掲載し、「図鑑」を完成させたい。

最後に、本図鑑を創設する機会を与えていただいた財団法人山崎香辛料振興財

団ならびに写真の提供や各種の援助をしていただいた方々に厚く御礼申し上げる。

2010年3月

監 修

堀江 博道

執筆代表

竹内

注:「図鑑」に掲載した画像を許可なく使用することを禁じます。

(3)

ハーブ類の病害デジタル図鑑

第1集

ページ

1. ルッコラ(アブラナ科)・・・・・・・・・・・・・・・ 立枯病

(1)

2. カモミール(キク科)・・・・・・・・・・・・・・・・・ うどんこ病

(3)

3. ステビア(キク科)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 灰色かび病

(5)

4. オレガノ(シソ科)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 葉腐病

(7)

5. スペアミント(シソ科)・・・・・・・・・・・・・・・ うどんこ病

(9)

6. スペアミント(シソ科)・・・・・・・・・・・・・・・ さび病

(11)

7. セージ(シソ科)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ うどんこ病

(13)

8. セージ(シソ科)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 疫病

(15)

9. バジル(シソ科)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 萎凋病

(17)

10. ラベンダー(シソ科)・・・・・・・・・・・・・・・・・ 灰色かび病

(19)

11. レモンバーム(シソ科)・・・・・・・・・・・・・・・ うどんこ病

(21)

12. ローズマリー(シソ科)・・・・・・・・・・・・・・・ うどんこ病

(23)

13. イタリアンパセリ(セリ科)・・・・・・・・・・・ うどんこ病

(25)

14. セルリー(セリ科)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 炭疽病

(27)

15. ディル(セリ科)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ うどんこ病

(29)

16. フェンネル(セリ科)・・・・・・・・・・・・・・・・・ うどんこ病

(31)

17. ツルナ(ツルナ科)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 疫病

(33)

18. ツルナ(ツルナ科)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 黒枯病

(35)

19. バラ〔セイヨウバラ〕(バラ科)・・・・・・・ 黒星病

(37)

20. ハマナス(バラ科)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ さび病

(39)

(4)

(アブラナ科)

ルッコラ 立枯病

病原菌

Rhizoctonia solani AG4-ⅢB

①②被害症状:発芽後すぐに萎凋し、黄化枯死する。 ③接種試験:右列は接種区(発病)、左列は無接種区。 ④-⑥病原菌:④罹病組織上の菌糸。⑤培養菌叢(PDA培養菌叢表面;菌株:RsEr050624N1) ⑥培養菌糸。 〔①-⑥竹内 純〕

No. 1

(1)

(5)

(アブラナ科)

ルッコラ 立枯病

(Stem and root rot)

〈宿主植物〉

ルッコラ(キバナスズシロ)〔アブラナ科キバナスズシロ属〕 英名:Arugula, Garden rocket, rocket-salada

学名:Eruca vesicaria 〈症 状〉 はじめ地際の茎や根が褐変してくびれ、やがて暗褐色に腐敗し、株全体が萎凋して、立枯れを 起こす。発生が多いと、その部分一帯が腐敗枯死し、いわゆる「坪枯れ」を起こし、被害が拡大 して多くの株が枯死する。 〈病原菌〉

Rhizoctonia solani Kühn AG4-ⅢA

菌糸は淡褐色で、主軸菌糸の幅は4.5~9.5μm、菌糸先端細胞の隔壁の下で、ほぼ直角に分岐し、 分岐点でややくびれ、ドリポア隔壁を生じる。かすがい連結、分生子および完全世代は認められ ない。1細胞あたりの核数は3~10個と多核である。菌叢は褐色霜降り状。菌糸の伸長は10~37℃ で認められ,適温は25~30℃である。 〈メ モ〉 ☆本病は2005年6月に東京都のパイプハウスで発生した。 ☆病原菌を接種すると3~5日後に症状が認められることから蔓延が急速であることが示される。 ☆過繁茂状態で発病・蔓延しやすい。 〈文 献〉 堀江博道(2006)植物病原アトラス(米山勝美ら編)p183, ソフトサイエンス社 竹内 純・堀江博道(2006)Rhizoctonia solani による新病害,ルッコラ立枯病およびオレガノ葉腐 病の発生.関東東山病害虫研究会報53:65-67.

No. 1

(2)

(6)

(キク科)

カモミール うどんこ病

病原菌

Oidium sp. (Reticuloidium 亜属菌)

No. 2

被害症状:①②茎葉に白粉を生じ、のち黄変枯死する。 病原菌:③分生子の発芽。 〔①-③竹内 純〕

(3)

(7)

(キク科)

カモミール うどんこ病

(Powdery mildew)

〈宿主植物〉

カモミール(カミツレ)〔キク科シカギク属〕 英名:German chamomile

学名:Matricaria recutita (Matricaria chamomile)

〈症 状〉 茎葉部の表面に白色粉状の菌叢が発生し、多発生下では株全体が菌叢に白く覆われ、新梢、新 葉の捻れなどの奇形、茎葉の枯死を起こす。 〈病原菌〉 Oidium sp. (Reticuloidium 亜属菌) 分生子柄は大きさ(100-)112.5~267.5(-280)×12.5~20μm、Foot-cellの大きさ(45-)65~112.5(- 135) ×(7.5-)10~12.5(-20)μm、分生子柄細胞は (3-)4~5個。分生子は無色、フィブロシン体を欠き、大 きさ(30-)32.5~37.5(-40)×(15-)17.5~20μm、鎖生する。分生子の発芽管はCichoracearum型である。 菌糸上の付着器は乳頭突起状。 〈メ モ〉 ☆本病の発生が多いと収穫ができなくなる。

☆カモミールに発生するうどんこ病菌は他にSphaerotheca fusca (Fries) Blumer (丹田誠之助:東農

大農学集報43(3):159, 1998)が記録されている。 〈文 献〉 竹内 純・堀江博道・菅原裕一・佐藤幸生(2005)数種ハーブ類に新発生したうどんこ病.日植病 報71(1):33.

No. 2

(4)

(8)

(キク科)

ステビア 灰色かび病

病原菌

Botrytis cinerea

被害症状:①②葉茎が濃褐色に腐敗する。 〔①②竹内 純〕

No. 3

(5)

(9)

(キク科)

ステビア 灰色かび病

(Gray mold)

〈宿主植物〉 ステビア(アマハステビア)〔キク科ステビア属〕 英名:Sweetleaf 学名:Stevia rebaudiana 〈症 状〉 葉および茎に暗褐色、水浸状で不整形の病斑を生じ、拡大して葉枯れや茎枯れを生じる。多湿 時には腐敗しやすい。病斑部に灰褐色、粉状の菌体が豊富に形成される。 〈病原菌〉

病原菌 Botrytis cinerea Persoon:Fries

PDA培地上では黒色、盤状、不整形の菌核を多数生じ、同培地上および病斑上に分生子柄と分 生子塊を豊富に形成する。分生子柄は淡褐色~褐色で高さは2mm以上あり、柄の上方で分岐し、 先端部に多数の分生子をブドウの房状に着生する。分生子は全出芽型に生じ、無色~淡黄褐色、 単胞、楕円形、大きさは9~15×5.5~10μmの範囲内で、L/B比(分生子の長径と短径の比)の平均 値は1.42~1.43である。PDA培地上の小型分生子は両菌株とも無色、亜球形、直径2~3μm。菌糸 生育は5~30℃で認められ、適温は20~25℃である。 〈メ モ〉 ☆本病は2005年9月、東京都の施設栽培で発生した。 ☆病原菌の分生子を健全株に噴霧接種すると、2日後には発病し、急激に腐敗することから、高 湿度条件下では、急速に蔓延することが示される。 ☆病原菌は極めて多犯性である。 〈文 献〉 堀江博道(2006)植物病原アトラス(米山勝美ら編).p139, ソフトサイエンス社 竹内 純・堀江博道(2006)ラベンダーおよびステビアに発生した灰色かび病(新称).関東東山 病害虫研究会報53:87-89.

No. 3

(6)

(10)

(シソ科)

オレガノ 葉腐病

病原菌

Rhizoctonia solani AG1-IB

被害症状:①②茎葉が褐変し、腐敗枯死する。 〔①②竹内 純〕

No. 4

(7)

(11)

(シソ科)

オレガノ 葉腐病

(Leaf blight)

〈宿主植物〉 オレガノ(ハナハッカ)〔シソ科ハナハッカ属〕 英名:Oregano 学名:Oreganum vulgare 〈症 状〉 はじめ葉や茎に褐色の不整斑を生じ,急速に拡大し,のち全体が褐変,枯死する。罹病した葉 や茎が「くもの巣状」の菌糸で綴られる。柔らかい葉や茎は腐敗消失する。発生が多いと、その 部分一帯が腐敗枯死し、いわゆる「坪枯れ」を起こす。 〈病原菌〉

Rhizoctonia solani Kühn AG1-IB

菌糸は淡褐色で、主軸菌糸の幅は6~13μm、菌糸先端細胞の隔壁の下で、ほぼ直角に分岐し、 分岐点でややくびれ、ドリポア隔壁を生じる。かすがい連結、分生子および完全世代は認められ ない。1細胞あたりの核数は3~10個と多核である。菌叢は褐色、菌核は直径1~4mmで、表面は 短毛状菌糸に覆われる。菌糸の伸長は5~30℃で認められ、適温は25℃である。 〈メ モ〉 ☆本病は2005年10月に東京都のパイプハウスで発生した。 ☆病原菌を接種すると3~5日後に症状が認められることから蔓延が急速であることが示唆される。 ☆過繁茂状態で発病・蔓延しやすい。 〈文 献〉 堀江博道(2006)植物病原アトラス(米山勝美ら編).p183, ソフトサイエンス社 竹内 純・堀江博道(2006)Rhizoctonia solani による新病害、ルッコラ立枯病およびオレガノ葉腐 病の発生.関東東山病害虫研究会報53:65-67.

No. 4

(8)

(12)

(シソ科)

スペアミント うどんこ病

病原菌

Oidium sp. (Reticuloidium 亜属菌)

No. 5

被害症状:①②葉や茎に白粉がふいたような菌叢が円状に発生し、やがて全体を覆う。 病原菌:③分生子柄と分生子。④分生子。 〔①-④竹内 純〕

(9)

(13)

(セリ科)

スペアミント うどんこ病

(Powdery mildew)

〈宿主植物〉 スペアミント(ミドリハッカ、オランダハッカ)〔シソ科ハッカ属〕 英名:Spermint 学名:Mentha spicata 〈症 状〉 茎葉部の表面に白色粉状の菌叢が発生し、多発生下では株全体が菌叢に覆われ、罹病葉は黄変 死、枯死する。新梢、新葉の捻れなどの奇形、茎葉の枯死を起こす。 〈病原菌〉 Oidium sp. (Reticuloidium 亜属菌) 分生子柄は大きさ(100-)112.5~267.5(-280)×12.5~20 μm 、Foot-cellの大きさ(45-)65~112.5(-135)×(7.5-)10~12.5(-20) μm、分生子柄細胞は(3-)4~5個。 分生子は無色、フィブロシン体を欠き、 大きさ(30-)32.5~37.5(-40)×(15-)17.5~20 μm、鎖生する。分生子の発芽管はCichoracearum型であ る。フィブロシン体は含まず、菌糸上の付着器は乳頭突起状である。 〈メ モ〉 ☆栽培地で常発し、被害が大きい。 ☆有賀ら(2000)はアップルミントに Erysiphe cichoracearum 型うどんこ病菌を記録した。 〈文 献〉 有賀麻貴・今村絵里・渡辺京子・佐藤幸生・吉野嶺一(2000 )チョコレートコスモス、アップ ルミント、レモンバームのうどんこ病(新発生).日植病報66(3):272. 竹内 純・堀江博道・菅原裕一・佐藤幸生(2005)数種ハーブ類に新発生したうどんこ病.日植 病報71(1):33. 丹田誠之助(1998):東農大農学集報 43(3):159.

No. 5

(10)

(14)

(シソ科)

スペアミント さび病

病原菌

Puccinia menthae

No. 6

①-③被害症状: ①病斑部は黄変のち黒変する。 ②葉裏の夏胞子堆(黄橙色)。 ③葉裏の夏胞子堆と冬胞子堆(黒色) ④-⑥病原菌: ④夏胞子。 ⑤夏胞子の発芽。 ⑥冬胞子。 〔①-④⑥堀江博道、⑤竹内 純〕

(11)

(15)

(シソ科)

スペアミント さび病

(Rust)

〈宿主植物〉 スペアミント(ミドリハッカ,オランダハッカ)〔シソ科ハッカ属〕 英名:Spermint 学名:Mentha spicata 〈症 状〉 露地では新葉の表面に径1~3mmの退緑斑~黄色斑を生じ、その裏面に径0.3~1mm程度のやや 盛り上がった淡橙色粉状の菌体(夏胞子堆)が形成される。梅雨期に症状が目立つようになり、 葉裏全体に夏胞子堆が発生することもまれではない。やがて病葉は黄化し、古い病斑部は褐変す る。また、葉柄や若い茎にも長円形~紡錘形の夏胞子堆が形成される。夏期の高温時には病勢は 衰えるが、9 月に降雨が続くと再び新しい病斑上に夏胞子堆を形成する。9月下旬頃から、夏胞子 堆に隣接または混在し、暗褐色~黒色で、形状は夏胞子堆よりやや大きい菌体(冬胞子堆)が発 生し始める。やがて、夏胞子堆は減少し、冬胞子堆が優占するようになり、10月下旬以降にはほ とんどが冬胞子堆となる。冬胞子堆は葉身では古い夏胞子堆の周辺や葉の表面に単独または環状 に連なって形成され、また葉柄や茎に発生すると長円形~紡錘形となり、しばしば筋状に連鎖す る。 施設栽培では、5月ころから梅雨期にかけて蔓延が激しく、梅雨明けとともに病勢が衰え、盛夏 時には新しい病斑はほとんど認められなくなる。秋期には10月ころまで新たに夏胞子堆が豊富に 発生する。その後は冬胞子堆の形成が進み、12~2月には病勢は停滞するが、3~4月から新病斑の 裏面に夏胞子堆が新生する。 〈病原菌〉

Puccinia spicata Persoon

夏胞子世代:夏胞子堆は表皮下に形成され、成熟すると裂開して夏胞子が表面に現れ、淡橙色、 粉状にみえる。その形態は葉では円形で直径3~1mmで、葉柄や茎では長円形~紡錘形、長径 1.5mmとなる。夏胞子は長円形、卵形ないし球形、黄色で、表面に多数の細かい突起を生じ、発 芽孔は赤道部に3個存在する。大きさは19~28×16.5~28(平均23.2×20.8)μm、被膜の厚さ0.6~ 1.3(平均1.0) μmである。 冬胞子世代:冬胞子堆は表皮下に形成され、成熟すると裂開して冬胞子が表面に現れ、暗褐色 ~黒色、粉状にみえる。その形態は葉身では円形、直径0.5~1mmで、葉柄や茎では長円形~紡錘 形、長径3mmに及ぶ。 〈メ モ〉 ☆病原菌の接種試験の結果、本病はニホンハッッカ、チリメンハッカ、スペアミント、オランダ ハッカにも発生する。 〈文 献〉 堀江博道・竹内 純・佐藤豊三・鈴木秀治・渡辺建二(1994)東京都におけるミント類さび病菌 の宿主範囲.関東東山病害虫研究会報41:153. 柿嶌 眞・堀江博道(2006)植物病原アトラス(米山勝美ら編).P173-175, ソフトサイエンス社

No. 6

(12)

(16)

(シソ科)

セージ うどんこ病

病原菌

Oidium sp. (Reticuloidium 亜属菌)

No. 7

被害症状:①②葉に白粉状の円形菌叢が発生し、のち葉面を覆う。 病原菌:③分生子柄と分生子。④分生子。⑤分生子の発芽 〔①②竹内 純;③-⑤佐藤幸生氏提供〕

(13)

(17)

(シソ科)

セージ うどんこ病

(Powdery mildew)

〈宿主植物〉 セージ(ヤクヨウサルビア、セイヨウサルビア)〔シソ科アキギリ属〕 英名:Common sage 学名:Salvia officinalis 〈症 状〉 茎葉の表面に白色粉状の菌叢が発生し、多発生下では株全体が菌叢に覆われ白くみえる。病葉 は黄変枯死する。茎葉の進展時に発病すると、新梢、新葉の捻れなどの奇形、茎葉の枯死を起こ す。 〈病原菌〉 Oidium sp. (Reticuloidium 亜属菌) 分生子柄は大きさ(102.5-)127.5~177.5(-187.5)×(12.5-)15~20(-22.5)μm、Foot-cellの大きさ(37.5) 52.5~87.5(-95)×(7.5-)10~12.5(-15)μm、分生子柄細胞は2~3個。分生子は無色、フィブロシン体を 欠き、大きさ(30-)32.5~37.5(-45)×(17.5-)20~22.5 μm、鎖生する。分生子の発芽管はCichoracearum 型、菌糸上の付着器は乳頭突起状である。 〈メ モ〉 ☆栽培地で常発し、被害が大きい。 ☆密植をしない、発病した残さは放置しないなどの防除対策を講じる。 〈文 献〉 竹内 純・堀江博道・菅原裕一・佐藤幸生(2005)数種ハーブ類に新発生したうどんこ病.日植病 報71(1):33.

No. 7

(14)

(18)

(シソ科)

セージ 疫病

病原菌

Phytophthora cryptogea

被害症状:①株全体が萎凋し、枯死する。 ②茎や葉柄に暗紫色で水浸状の病斑が広がる。 病原菌:③菌糸のスエリング(球状化)。 ④造卵器、造精器、卵胞子。 ⑤遊走子嚢。 〔①-⑤竹内 純〕

No. 8

(15)

(19)

(シソ科)

セージ 疫病

(Phytophthora rot)

〈宿主植物〉 セージ(ヤクヨウサルビア)〔シソ科アキギリ属〕 英名:Common sage 学名:Salvia officinalis 〈症 状〉 地際茎部から根部にかけて暗褐色~黒色の病斑が急速に進展、拡大し、株が萎凋し、のち枯死 する。 〈病原菌〉

Phytophthora cryptogea Pethybridge & Lafferty

菌糸は透明、無隔壁、直径4.9~6.1 (平均5.4) μm、膨潤菌糸(hyhal swellings)の直径7.1~17.0(平均 11.8)μm。遊走子嚢は楕円形~長楕円形で乳頭状突起は極めて薄く、大きさ36.3~61.3×22.5~37.5 (平均49.80×30.1) μm、遊走子のうL/B(長径と短径の比)は1.4~2.2 (平均1.8)、単独培養では有 性器官は認めず、Phytophthora cryptogeaのSG-1菌株(交配型A)との対峙培養で形成される。造 精器は底着性で、大きさ10.5~16.3×11.9~20.0 (平均14.3×14.0)μm、造卵器は亜球形で、大きさ 72.5~36.3×28.8~37.5(32.7×34.5)μm、卵胞子は球形、直径23.8~31.3(28.0)μmである。交配型 はA2.。菌糸生育は5~33℃で認められ、適温は20~25℃付近。 〈メ モ〉 ☆本病は2005年7月に施設栽培で発生した。 ☆病原菌の菌叢磨砕液の土壌灌注接種により容易に発病することから、発生地では土壌伝染する と考えられる。 〈文 献〉 堀江博道(2006)植物病原アトラス(米山勝美ら編).P89-91, ソフトサイエンス社

No. 8

(16)

(20)

(シソ科)

バジル 萎凋病

病原菌

Fusarium oxysporum f.sp. basilici

被害症状: ①②萎凋、枯死する。 ③根部は褐変腐敗し、茎は褐変が進展している。 病原菌: ④小型分生子とその集塊。 ⑤大型分生子。 〔①-⑤嶋田竜太郎氏提供〕

No. 9

(17)

(21)

(シソ科)

バジル 萎凋病

(Fusarium wilt)

〈宿主植物〉 バジル(バジリコ,メボウキ)〔シソ科メボウキ属〕 英名:Basil 学名:Ocimum basilicum 〈症 状〉 株全体が萎凋した後、立枯れを起こす。茎の地際部に褐色および黒色の壊疽症状が認められる。 茎部を切断すると維管束部は褐変している。根は褐色に腐敗し、細根は消失し、根量が極めて少 ない。 〈病原菌〉

Fusarium oxysporum Sclechtendle:Fries f.sp. basilici

PDA培地上、25℃で白色綿毛状の菌叢を生育し、培地は赤紫色~紫色に着色する。CLA培地上、 25℃で分生子形成細胞から三日月形の大型分生子、楕円形~長楕円形で無隔壁の小型分生子、円 形の厚膜胞子(厚壁胞子)を形成する。分生子等の形態的特徴は以下の通りである。 大型分生子:無色、三日月形でやや湾曲、隔壁数は1~5(主に3)個、大きさは1隔壁分生子で は11.3~17.5×2.5~3.8μm、3隔壁分生子では25.0~46.3×3.1~5μm。 小型分生子:無色、単胞、楕円形~長楕円形、無隔壁の短いフィアライドに擬頭状に形成され る。大きさ6.3~12.5×1.9~3.1μm。 厚膜胞子:無色~淡褐色、円形~楕円形、頂生または間生、単生まれに連鎖、大きさ5.6~ 12.5μm。 (以上の記載は東京都病害虫防除所(2004)による) 〈メ モ〉 ☆病原菌はバジルのみに病原性がある。 ☆本病は国内では1997年に群馬県で初めて発見され、1999年に沖縄県、2004年に東京都での発生 報告がある。海外ではロシア、イタリア、フランス、アメリカ、イスラエル等で発生が確認さ れている。 〈文 献〉 九州沖縄農業研究成果情報 第17号.下巻:443-444. 松尾卓見・駒田 亘・松田 明(編)(1980)作物のフザリウム病、全国農村教育協会.p.31. 田場 聡・大城 篤・高江洲和子・澤岻哲也(2000)日本植物病理学会報 66:255-256. 田場 聡・大城 篤・高江洲和子・澤岻哲也(2002)土と微生物 56:31-36. 東京都病害虫防除所(2004)平成 16 年度 病害虫発生予察情報 特殊報 第2号 漆原寿彦・酒井 宏・千明孝一・白石俊昌(2000)日本植物病理学会報 66:95-96. 漆原寿彦・酒井 宏・白石俊昌・千木良孝一(2001)群馬県園芸試験場研究報告 6:65-71.

No. 9

(18)

(22)

(シソ科)

ラベンダー 灰色かび病

病原菌

Botrytis cinerea

被害症状:①②茎葉の褐変腐敗が生じる。 病原菌:③分生子柄と分生子。 ④小型分生子。 〔①-④竹内 純〕

No. 10

(19)

(23)

(シソ科)

ラベンダー 灰色かび病

(Gray mold)

〈宿主植物〉 ラベンダー〔シソ科ラヴァンデュラ属〕 英名:Lavender 学名:Lavandula angustifoliaほか 〈症 状〉 葉および茎に暗褐色、水浸状で不整形の病斑を生じ、拡大して葉枯れや茎枯れを起こす。多湿 時には罹病部が腐敗し、病斑部に灰褐色、粉状の菌体が豊富に形成される。 〈病原菌〉

病原菌 Botrytis cinerea Persoon:Fries

PDA培地上では黒色、盤状、不整形の菌核を多数生じ、同培地上および病斑上に分生子柄と分 生子塊を豊富に形成する。分生子柄は淡褐色~褐色で高さは2mm以上あり、柄の上方で分岐し、 先端部に多数の分生子をブドウの房状に着生する。分生子は全出芽型に生じ、無色~淡黄褐色、 単胞、楕円形、大きさは9~15×5.5~10μmで、L/B比(長径と短径の比)の平均値は1.42~1.43で ある。PDA培地上の小型分生子は無色、亜球形、直径2~3μmである。菌糸生育は5~30℃で認め られ、適温は20~25℃である。 〈メ モ〉 ☆本病は2005年9月、東京都の施設栽培で発生した。 ☆病原菌の分生子を健全株に噴霧接種すると、2日後には発病し、急激に腐敗することから、高 湿度条件下では、急速に蔓延することが示される。 ☆病原菌は極めて多犯性である。 〈文 献〉 堀江博道(2006)植物病原アトラス(米山勝美ら編).p139, ソフトサイエンス社 竹内 純・堀江博道(2006)ラベンダーおよびステビアに発生した灰色かび病(新称).関東東山 病害虫研究会報53:87-89.

No. 10

(20)

(24)

(シソ科)

レモンバーム うどんこ病

病原菌

Oidium sp. (Reticuloidium 亜属菌)

No. 11

被害症状:①葉に白粉状の菌叢が発生する。 病原菌:②菌糸上の付着器。 ③④分生子。 ⑤分生子の発芽 〔①③④竹内 純; ②⑤佐藤幸生氏提供〕

(21)

(25)

(シソ科)

レモンバーム うどんこ病

(Powdery mildew)

〈宿主植物〉 レモンバーム(コウスイハッカ、メリッサ)〔シソ科コウスイハッカ属〕 英名:Lemon balm 学名:Melissa officinalis 〈症 状〉 茎葉の表面に白色粉状の菌叢が発生し、多発生下では株全体が菌叢に覆われ、罹病葉は黄変、 枯死する。新梢、新葉の捻れなどの奇形、茎葉の枯死を起こす。 〈病原菌〉 Oidium sp. (Reticuloidium 亜属菌) 分生子は無色、フィブロシン体を欠き、大きさ24~45×13~21μm、鎖生する。分生子の発芽 管はCichoracearum型、菌糸上の付着器は乳頭突起状である。 〈メ モ〉 ☆栽培地で常発し、被害が大きい。 〈文 献〉 有賀麻貴・今村絵里・渡辺京子・佐藤幸生・吉野嶺一(2000 )チョコレートコスモス、アップ ルミント、レモンバームのうどんこ病(新発生).日植病報66(3):272.

No. 11

(22)

(26)

(シソ科)

ローズマリー うどんこ病

病原菌

Oidium sp. (Reticuloidium 亜属菌)

No. 12

被害症状:①②茎葉が白色粉状の菌叢に覆われる。 病原菌:③分生子柄と分生子。 〔①②竹内 純; ③佐藤幸生氏提供〕

(23)

(27)

(シソ科)

ローズマリー うどんこ病

(Powdery mildew)

〈宿主植物〉 ローズマリー(マンネンロウ)〔シソ科マンネンロウ属〕 英名:Rosemary 学名:Rosmarinus officinalis 〈症 状〉 茎葉の表面に白色粉状の菌叢が発生し、多発生下では株全体が菌叢に覆われ、白く見える。伸 長展開時に発病すると、新梢、新葉の捻れなどの奇形や茎葉の枯死を起こす。 〈病原菌〉 Oidium sp. (Reticuloidium 亜属菌) 分生子柄は大きさ(95-)97.5~145(-157.5)×12.5~17.5μm 、Foot-cell の大きさ (37.5) 52.5~87.5 (-95)×(7.5-)10~12.5(-15) μm、分生子柄細胞は2~4個。 分生子は無色、フィブロシン体を欠き、 大きさ(30-)32.5~37.5(-40)×(15-)17.5~20 μm、鎖生する。分生子の発芽管はCichoracearum型で、 菌糸上の付着器は乳頭突起状である。 〈メ モ〉 ☆栽培地で常発し、被害が大きい。

Tanda,S. & Hirose,T.(2003)はローズマリーに発生するうどんこ病菌としてErysiphe galeopsidis de Candolle を記録した。

〈文 献〉

竹内 純・堀江博道・菅原裕一・佐藤幸生(2005)数種ハーブ類に新発生したうどんこ病.日植 病報71(1):33.

Tanda, S. & Hirose, T.(2003) Jour. Agri. Sci., Tokyo Univ. Agric. 47(4):274.

No. 12

(28)

(セリ科)

イタリアンパセリ うどんこ病

病原菌

Oidium

sp. (

Pseudoidium

亜属菌

)

No. 13

被害症状:①茎葉が白く見える。 ②罹病葉:白粉が円状に発生し、のち全面を覆う。 病原菌:③分生子柄と分生子。 ④分生子。 ⑤分生子の発芽 ⑥菌糸上の付着器(こぶし状)。 〔①②竹内 純; ③-⑥佐藤幸生氏提供〕

(25)

(29)

セリ科

イタリアンパセリ うどんこ病(Powdery mildew)

〈宿主植物〉

イタリアンパセリ〔セリ科オランダゼリ属〕 英名:Italian parsley ; flat leaf parsley

学名:Petroselinum neapolitanum 〈症 状〉 茎葉部の表面に白色粉状の菌叢が発生し、多発生下では株全体が菌叢に覆われ、新梢、新葉の 捻れなどの奇形、茎葉の枯死を起こす。 〈病原菌〉 Oidium sp. (Pseudoidium 亜属菌) 分生子柄は大きさ(100-)112.5~267.5 280)×12.5~20 μm 、Foot-cellの大きさ(45-) 65~112.5 (-135)×(7.5-)10~12.5(-20) μm、分生子柄細胞は(3-) 4~5個。 分生子は無色、フィブロシン体を欠き、 大きさ(30-) 32.5~37.5 (-40)×(15-) 17.5~20 μm、鎖生する。分生子の発芽管はCichoracearum型であ る。フィブロシン体は含まず、菌糸上の付着器は乳頭突起状である。 〈メ モ〉 ☆栽培地で常発し、被害が大きい。 〈文 献〉 竹内 純・嶋田竜太郎・堀江博道・佐藤幸生・柿嶌 眞(2005)ハーブ類の栽培で発生する病害. 農林水産研究情報,農林水産省農林水案技術会議事務局筑波事務所.

No. 13

(26)

(30)

(セリ科)

セルリー 炭疽病

病原菌

Colletotrichum acutatum

被害症状:①②茎の地際部が褐変し、生育不良を起こす。 病原菌:③病斑上の分生子層;黒色の剛毛を生じる。 ④分生子。 ⑤培養菌叢:培地が紅化するのが特徴。 ⑥菌糸に生じる褐色の付着器。 〔①-⑥竹内 純〕

No. 14

(27)

(31)

(セリ科)

セルリー 炭疽病

(Anthracnose)

〈宿主植物〉

セルリー(セロリ、オランダミツバ)〔セリ科オランダミツバ属〕 英名:celery

学名:Apium graveolens var. dulce

〈症 状〉

苗の未展開葉に暗褐色、水浸状の不整斑を生じ、徐々に拡大腐敗し、芽枯れや茎枯れを起こす。 病斑上には褐色の剛毛を有する分生子層を散生するのでルーペで確認できる。

〈病原菌〉

Colletotrichum acutatum Simmonds ex Simmonds

分生子は無色、単胞、紡錘形~長楕円形、9~19.1×3~6.5µm。付着器は褐色、円形~楕円形、 7~12.4×3.5~8µm。PDA培養は紅色に着色する。菌糸生育は5~35℃で認め、適温は25~27℃で ある。 〈メ モ〉 ☆本病は1999年8月、東京都において育苗中のポット苗に発生した。苗生産において障害となる。 ☆近年、Colletotrichum acutatumを総合種と捉え、遺伝子解析等により、複数の種に再分化する研

究がある。Shivas and Tan(2009) の分類基準に従うと、本種はColletotrichum fioriniaeとなる。

〈文 献〉 堀江博道・竹内 純(2006)植物病原アトラス(米山勝美ら編)p202, ソフトサイエンス社 竹内 純・堀江博道・久保田まや(2000)新病害、セルリー炭疽病およびルスカスこうじかび病 の発生.日植病報66(2):92.

No. 14

(28)

(32)

(セリ科)

ディル うどんこ病

病原菌

Oidium sp. (Pseudoidium 亜属菌)

No. 15

被害症状:①茎葉に白粉が発生し、罹病葉は黄変する。 病原菌:②分生子柄と分生子。 ③分生子。 〔①-③竹内 純〕

(29)

(33)

(セリ科)

ディル うどんこ病

(Powdery mildew)

〈宿主植物〉 ディル(イノンド)〔セリ科イノンド属〕 英名:Dill 学名:Anethum graveolens 〈症 状〉 茎葉の表面に白色粉状の菌叢が発生し、多発生下では株全体が白色~淡灰色の菌叢に覆われ、 葉は黄変する。伸長伸展時に罹病すると新梢や新葉の捻れなどの奇形、茎葉の枯死を起こす。 〈病原菌〉 Oidium sp. (Pseudoidium 亜属菌) 分生子は無色、フィブロシン体を欠き、32.3~52.4×11.7~20.2μm、単生する。分生子の発芽 管はPolygoni型、菌糸上の付着器はこぶし状である。 〈メ モ〉 ☆栽培地で常発し、被害が大きく、時に収穫ができないほどである。 ☆本病菌によるうどんこ病はセリ科植物に発生する。接種によるとパセリ、フェンネルに病原性 があり、シソ科のレモンバームは発病しない。 〈文 献〉 小板橋基夫・西村範夫(2003 )ディルおよびチャービルに発生したうどんこ病(新称).日植 病報69(1):21.

No. 15

(30)

(34)

(セリ科)

フェンネル うどんこ病

病原菌

Oidium sp. (Pseudoidium 亜属菌)

No. 16

①②被害症状:茎葉に白色粉状の菌叢が広がり、罹病部が黄化褐変し、枯死する。 ③分生子柄と分生子。 ④分生子。 ⑤分生子の発芽 ⑥菌糸上の付着器(こぶし状)。 〔①-④竹内 純; ⑤⑥佐藤幸生氏提供〕

(31)

(35)

(セリ科)

フェンネル うどんこ病

(Powdery mildew)

〈宿主植物〉 フェンネル(ウイキョウ)〔セリ科ウイキョウ属〕 英名:Fennel 学名:Foeniculum vulgare 〈症 状〉 茎葉の表面に白色粉状の菌叢が発生し、多発生下では株全体が白色~淡灰色の菌叢に覆われ、罹 病部は黄変、枯死する。伸長伸展時に罹病すると、新梢や新葉の捻れなどの奇形、茎葉の枯死を起 こす。 〈病原菌〉 Oidium sp. (Pseudoidium 亜属菌) 分生子柄は、大きさ(115-)127.5~170(-195)×(10-)12.5~15 μm、Foot-cell の大きさ (37.5-) 42.5~ 52.5(-60)×(5-)7.5μm、分生子柄細胞は3~4(-5)個。 分生子は無色、フィブロシン体を欠き、大きさ (32.5-)35~42.5(-45)×12.5~17.5(-20)μm、単生する。分生子の発芽管はPolygoni型である。菌糸上の 付着器はこぶし状である。 〈メ モ〉 ☆栽培地で常発し、被害が大きい。 〈文 献〉 竹内 純・堀江博道・菅原裕一・佐藤幸生(2005)数種ハーブ類に新発生したうどんこ病.日植病 報71(1):33.

No. 16

(32)

(36)

(ツルナ科)

ツルナ 疫病

病原菌

Phytophthora nicotianae

被害症状:①萎凋し、黄化枯死する。 ②罹病株の根部は褐変腐敗し、根量が極めて少ない。 ③茎は水浸状に褐変、腐敗する。 接種試験:④左2鉢は病原菌接種により発病、右1鉢は無接種。 病原菌:⑤完全世代器官:卵胞子、造卵器、造精器。 ⑥遊走子嚢。 ⑦遊走子の分化と溢出。 ⑧菌糸。 〔①-⑧竹内 純〕

No. 17

(33)

(37)

(ツルナ科)

ツルナ 疫病

(Phytophthora rot)

〈宿主植物〉

ツルナ〔ツルナ科ツルナ属〕 英名:New Zealand spinach 学名:Tetragonia tetragonoides 〈症 状〉 初発時には、多数の株が青枯れ状に萎凋する。土壌と接する茎葉部は水浸状に軟化腐敗する。 萎凋した株を掘り上げると、根が飴色に変色し、症状が激しい株では、根~地際茎部に褐色~暗 褐色、水浸状の病斑が拡大して大半の根が腐敗、消失している。 〈病原菌〉

Phytophthora nicotianae van Breda de Haan

遊走子嚢は洋梨型で乳頭状突起は顕著、非脱落性、34~62×23~42μm。硬膜胞子(厚壁胞子) は球形~亜球形、間生または頂生、直径は22~40μm。同株性と異株性の菌株があり、異株性菌株 はPhytophthora nicotianae van Breda de Haanの交配型A菌株との対峙培養により有性器官を形成す る。造精器は底着性、9~16×10~17μm、造卵器は亜球形で、大きさ24~33×25~33μm、卵胞子 は球形、直径19~26.5μm。菌糸生育は10~35℃で認めら、適温は30℃である。 〈メ モ〉 ☆ツルナには他に、黄化えそ病、灰色かび病、黒枯病などが発生し、被害を及ぼす。 ☆本病は2003年の夏、東京都の施設栽培で発生した新しい病気である。 ☆発生が認められた時期は降雨が連続し、生産圃場は全体がぬかるんでいた。特に、発生が著し かった部位は周囲よりも地面が低く、排水不良の状態であった。 ☆接種試験で、Phytophthora nicotianae による疫病が記録されているアシタバ、ニチニチソウ、ビ オラ、パッションフルーツの4科4植物に病原性が認められている。 〈文 献〉 堀江博道(2006)植物病原アトラス(米山勝美ら編).P89-91, ソフトサイエンス社 竹内 純・堀江博道・栄森弘己(2004 )ツルナ疫病(新称).関東東山病害虫研究会報 51:55-57.

No. 17

(34

(38)

(ツルナ科)

ツルナ 黒枯病

病原菌

Ulocladium sp.

被害症状:①葉に斑点を生じ、黄化する。 ②先端葉で被害が大きい。 接種による再現症状:④病斑上の菌糸と分生子。 病原菌:⑤分生子柄と分生子。 ⑥分生子には隔壁がある。 ⑦分生子の表面にとげがある。 〔①-⑦竹内 純〕

No. 18

(35)

(39)

(ツルナ科)

ツルナ 黒枯病

(Ulocladium blight)

〈宿主植物〉

ツルナ〔ツルナ科ツルナ属〕 英名:New Zealand Spinach 学名:Tetragonia tetragonoides 〈症 状〉 茎葉に褐色~暗褐色の不整形病斑が拡大する。やがて、病斑周辺から黄化し、葉枯れや茎枯れ を起こし、株の枯死にいたる。 〈病原菌〉 Ulocladium sp. 分生子柄は褐色で膝関節状に屈曲し、シンポジオ状、ポロ型に分生子を形成する。分生子は褐 色~暗褐色、表面は粗雑で、楕円形~紡錘形、縦横に隔壁を有し、15-30×5-14μm。菌叢は5-30℃ で生育し、生育適温は25℃である。 〈メ モ〉 ☆ツルナには他に、疫病、黄化えそ病、灰色かび病などが発生し、被害を及ぼす。 ☆病原菌を6科6種植物に接種し、ツルナのみが発病したことから、宿主範囲が狭いことが示唆さ れる。 ☆本病は2007年の夏、東京都の施設栽培で発生した新しい病気である。 〈文 献〉 竹内 純・鍵和田 聡・難波成任・堀江博道(2008 )ツルナ黒枯病(新称)およびトマトさび斑 病 (新称)の発生.日植病報74(3):179.

No. 18

(36)

(40)

(バラ科)

バラ (セイヨウバラ) 黒星病

病原菌

Diplocarpon rosae

被害症状:①病葉は黄変し、すぐに落葉する。 ②③④葉の症状:黒色の斑点が特徴。 病原菌:⑤分生子層の断面。 ⑥分生子。 〔①-⑥堀江博道〕

No. 19

(37)

(41)

(バラ科)

バラ(セイヨウバラ)黒星病

(Black spot)

〈宿主植物〉 バラ(セイヨウバラ)〔バラ科バラ属〕 英名:Rose 学名:Rosa spp. 〈症 状〉 葉に淡褐色~黒紫色で周囲が不整な染み状斑点を生じる。拡大して中央が灰黒色、周辺は黄化 し、すぐに落葉する。病斑上にはかさぶた上の小黒点(分生子層)が多数発生する。枝では黒紫 色~黒褐色、染み状となり、病斑から上部は枯死する。 〈病原菌〉

Diplocarpon rosae Wolf 〔アナモルフ Marssonina rosae (Trail) Sawada〕

分生子層は皿形で直径100~220μm。分生子は分生子層に並列し、無色、ほぼ中央の横隔壁で2 室となり、上室は幅広、下室は小型で下方が細まり、隔壁部でくびれ、ひょうたん形~こけし形、 大きさは上室9.5~12.5×5.5~7μm、下室8.5~13×4.5~6.5μm、全体18.5~24.5×5.5~7μm。培養菌 叢の生育は遅いが、分生子を豊富に形成する。発芽適温と発病適温はともに20~25℃。日本では テレオモルフの記録はない。バラ属の植物に病原性がある。 〈メ モ〉 ☆病原菌は分生子や菌糸の形で落葉上で越冬する。また、半落葉性のバラ類では着生病葉上で越 冬し、翌春に新葉に伝染する。生育期には分生子が雨滴の飛沫などにより伝染する。 ☆本病は露地栽培で多雨年に発病が多い。発生時期が4~5月と早く、落葉が激しいため、被害が 大きい。 ☆セイヨウバラでは黒星病発病に品種間差異が大きく、本病の耐病性付与は育種項目になる。 ☆セイヨウバラには他に、うどんこ病、疫病、根頭がんしゅ病、さび病、灰色かび病などが発生 し、被害を起こす。 ☆病原菌種小名は宿主バラの属名に由来。 〈文 献〉 原 攝祐(1925)実用作物病理学 p591. 堀江博道(2006)植物病原アトラス(米山勝美ら)p146, ソフトサイエンス社

No. 19

(38)

(42)

(バラ科)

ハマナス さび病

病原菌

Phragmidium montivagum

被害症状:①葉裏に黄色~橙色の夏胞子堆が粉状にみえる。 ②橙色の夏胞子堆と黒色、すす状の冬胞子堆 が混在している。 ③葉裏全面に黒色の冬胞子堆がすすのようにみえる。 病原菌:④夏胞子。 ⑤冬胞子。 〔①③堀江博道、②④⑤柿嶌 眞氏 提供〕

No. 20

(39)

(43)

(バラ科)

ハマナス さび病

(Rust)

〈宿主植物〉 ハマナス〔バラ科バラ属〕 英名:Sweetbrier 学名:Rosa rugosa 〈症 状〉 夏季に葉裏、葉柄、緑枝に黄橙色、粉状の菌体(夏胞子堆)を多数生じる。葉表は黄色~黄橙 色の小斑点となる。秋季にすす状で黒色~黒褐色の菌体(冬胞子堆)が形成される。 〈病原菌〉

Phragmidium montivagum Arthur

同種寄生種。銹胞子堆は円盤状、黄色~淡黄褐色、直径80~112μm、高さ30~35μm。銹胞子は 類球形~広楕円形、単胞、被膜は無色、細かい疣をもち、内容は橙黄色、18~27×16~24μm。夏 胞子堆はやや盛上がり、黄橙色~橙色、粉状。夏胞子は類球形、20~25×16~21μm、糸状体は棍 棒形、無色、35~60×8~15μm。冬胞子は棍棒形、暗褐色、4~10(主に6~8)隔壁、頂端は尖り、 小丘状の突起があり、51~111×24~33μm。 〈メ モ〉

☆病原菌には他にPhragmidium rosae-rugosae Kasai が記録されている。

☆伝染環は不詳。生育期には夏胞子が風や雨滴とともに伝播する

☆ヤマハマナス(Rosa davurica)、カラフトイバラ (R. marretii) にも発生する。

〈文 献〉

Hiratsuka, N (1935)::Bot. Mag. Tokyo 49(579):148. Hiratsuka, N. et al.( 1992 ):Rust Flora of Japan:418.

柿嶌 眞・堀江博道(2006)植物病原アトラス(米山勝美ら編)p172, ソフトサイエンス社 Kasai, M.(1910)Trans. Sapporo Nat. Hist. Soc. 3(1):30.

No. 20

(44)

【監修】

堀江

博道

(法政大学生命科学部植物医科学専修 教授)

【執筆】

竹内

(公益財団法人 東京都農林水産振興財団 東京都農林総合研究センター 主任研究員; 現 東京都島しょ総合センター 八丈事業所)

秀男

(公益財団法人 東京都農林水産振興財団 東京都農林総合研究センター 主任研究員)

堀江

博道

(前出)

【編集】

佐野

利夫

(法政大学生命科学部植物医科学専修 准教授)

佐野 真知子

(法政大学生命科学部植物医科学専修 特任教育技術員)

堀江 博道

(前出)

【写真】

柿嶌

(筑波大学大学院生命環境科学研究科 教授)

佐藤 幸生

(富山県立大学工学部 教授)

嶋田 竜太郎

(東京都病害虫防除所 主任; 現 東京都島しょ総合センター 大島事業所)

竹内

(前出)

堀江 博道

(前出)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2010年3月31日

発行:法政大学生命科学部植物医科学専修

財団法人

山崎香辛料振興財団

(注記:本図鑑は「財団法人 山崎香辛料振興財団」の研究助成により刊行された)

監修、執筆、編集、写真提供

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