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エビデンスに基づく

助産ガイドライン

―分娩期 2012

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エビデンスに基づく助産ガイドライン—分娩期2012

本ガイドラインの基盤となる考え... 1 ガイドラインの作成方法... 4 CQ 1 予定日超過における分娩誘発方針は?... 8 CQ 2 卵膜剥離は,分娩誘発の効果があるか?... 10 CQ 3 乳房/乳頭刺激は,分娩誘発の効果があるか?... 12 CQ 4 指圧・鍼は,分娩誘発の効果があるか?... 13 CQ 5 分娩のため入院した際の胎児心拍の確認方法は何がよいか?... 15 CQ 6 分娩期の間歇的聴取法と持続的モニタリングでは,母子の予後に違いがあるか?... 17 CQ 7 硬膜外麻酔の効果と副作用は?... 20 CQ 8 分娩第1期にお湯につかることは,産痛緩和効果があるか? ... 21 CQ 9 指圧・鍼は,産痛緩和効果があるか?... 22 CQ10 分娩進行中に飲食制限をする必要はあるか?... 26 CQ11 分娩第1期の歩行は,陣痛促進に効果があるか? ... 27 CQ12 正常に経過している産婦に対して,分娩第1期に人工破膜をした場合の遷延分娩を 予防できるか?... 28 CQ13 分娩第1期の浣腸は,陣痛促進効果があるか? ... 29 CQ14 指圧・鍼は,陣痛促進効果があるか?... 30 CQ15 児娩出前の外陰部消毒は必要か?... 33 CQ16 分娩第2期の体位は,どれが有効なのか? ... 34 CQ17 分娩第2期のクリステレル児圧出法は,児の娩出に有効か? ... 36 CQ18 分娩第2期の会陰マッサージは,会陰損傷を予防できるか? ... 37 CQ19 分娩第2期の会陰部の温罨法は,会陰損傷を予防できるか? ... 39 CQ20 分娩第2期の会陰保護は,会陰損傷を予防できるか? ... 41 CQ21 ルチーンの会陰切開は,産婦の会陰損傷を予防し,新生児のアウトカムを改善するか?... 43 CQ22 分娩進行中に回旋異常となった場合,四つん這いは回旋異常の改善に有効か?... 45 CQ23 新生児の口腔・鼻腔の吸引は必要か?... 47 CQ24 臍帯結紮の時期は,臍帯早期結紮と臍帯遅延結紮で,児の予後に違いはあるか?... 49 CQ25 出生直後に行う早期母子接触(skin-to-skin contact)は母子の予後に有効か? ... 51 CQ26 第1度,第2度会陰裂傷は,縫合が必要か?... 55 CQ27 分娩第3期の積極的管理と待機的管理に違いはあるか?... 56 CQ28 予防的な子宮収縮薬は,何を,いつ,どのように投与したらよいのか?... 57 CQ29 児娩出後からの子宮のマッサージは,出血を予防することができるか?... 59

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—分娩期2012」の刊行にあたって

堀 内 成 子 (日本助産学会 前理事長)  「エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期2012」を上梓する運びとなりました。助産師が独立 して妊娠の診断から正常分娩の介助を行うためには,実施する助産ケアに対する最新のエビデンスを集 積し,それに基づくケアの指針が必要です。日本助産学会は,2008年に「助産実践のためのガイド ライン」作成を事業計画に盛り込み,ガイドライン作成委員会の立ち上げを学術振興担当理事の江藤宏 美教授にお願いしました。すでに発行されている日本助産師会の「助産所業務ガイドライン」,日本産 科婦人科学会/日本産婦人科医会の「産婦人科診療ガイドライン」,ほか諸外国のガイドラインを参照 しながら,取り上げられていない臨床の疑問(Clinical Question:以後CQと略す)の回答となるひとつ の提案を行う助産実践ガイドラインを作成するよう依頼しました。  作成の過程は,EBM(Evidence-based Medicine)の手法に則って,①臨床上の疑問(CQ)の抽出,② 文献検索,③文献の吟味,④提案や推奨文の作成の順に行われました。その間,日本助産学会の学術集 会や学会ホームページにおいて,日本助産学会会員の皆様や臨床・教育現場の皆様からの意見を伺い, 最終的には29項目のCQについてエビデンスのまとめと解説が「エビデンスに基づく助産ガイドライン̶ 分娩期2012」として完成しました。刻々と変化する世界中の最新研究を探索し吟味するという地道な作 業に取り組んだガイドライン委員の皆様に心から感謝の意を表します。  ガイドラインの活用は,助産師が対象の欲しい情報をエビデンスに基づいて提供することを促進し, それはケアの選択肢を広げ,ケアの質を改善し,結果として妊産婦と新生児の健康状態を向上させます。 ガイドラインに基づく助産実践により,正常経過をたどる妊産褥婦が安心してケアが受けられるように, また助産ケアへの理解と信頼が増すことを願います。  さらに,ガイドラインの活用は助産師自身へのメリットも大きく,助産ケアを刷新していく際の基盤 になり,産科医をはじめとした多職種との協働を行う際の検討資料のひとつになります。また,複雑な 問題やインシデントを懸念する状況に際しても,その原因分析を行う際の参考資料のひとつになると考 えます。エビデンスに基づいたケアを実施し,その成果をモニタリングしていくことは,助産師として の能力を開発し,専門性や独自性を見つける好機となります。助産師は,つねに最新の研究成果に触れ ながら実践現場の疑問を解決する一方,十分にエビデンスが集積されていない研究課題を見出して研究 者に届くようにすることが大切です。今後,ガイドラインは,常に更新していくことが求められます。 このガイドラインを活用する皆様からの忌憚のないご意見を是非いただきたくお願いいたします。  このガイドラインが,活用され成長していくことを心から願います。

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推 薦 の 言 葉

「産婦人科診療ガイドライン̶産科編2011」作成委員会 委員長 水 上 尚 典  この度,日本助産学会から,助産師の目線に立ったガイドラインが出版された。喜ばしいかぎりであ る。是非,手に取って本ガイドラインの効用を実感して欲しい。  助産師は独立して(責任を持って)正常妊娠・分娩を管理することができる。正常と思われた分娩時 にも母児生命を危うくするような事は起こる。したがって責任重大な職務である。信頼をよせて下さ る妊婦さん方を裏切らないようにしなければならない。経験に基づいて「よかれと思っている処置・対 応」でも,エビデンスは,その効用をしばしば否定する。例えば,分娩促進を目的に日常的に人工破膜 を実施する助産師もいると思う。しかし,その効果については(実際に分娩時間短縮に寄与しているか), 科学的には証明されていない。一方,人工破膜に関しては臍帯脱出や感染の危険も指摘されている。こ れらのことを理解するのに本ガイドラインは役立つ。  助産師は医師よりもより身近な存在として妊婦の傍らにいる。誤った信念は許されない。日常的に行 っている業務の正当性について(本当に妊婦さんの福祉向上に寄与しているか)常に懐疑的であること が求められている。そのような謙虚さは,助産師としての能力を高めるのに役立つし,また本ガイドラ インを手に取る動機となるはずである。いつも本ガイドラインと日本産科婦人科学会・日本産婦人科医 会共同監修の産科ガイドラインを身近に置くような助産師になって欲しい。妊婦とわれわれ医師はその ような聡明な助産師を求めている。

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「エビデンスに基づく助産ガイドライン—分娩期 2012」の発行

公益社団法人 日本助産師会 会長 岡 本 喜代子  この度,日本助産学会で,「エビデンスに基づく助産ガイドライン̶分娩期2012」を発行されました。  正常産に対して,母子の安全安心のためにという目的は同じですが,助産師と産科医とは具体的な産 婦ケアや管理の仕方・考えかたは,異なることが多くあります。  お産は病気ではなく,それ故,助産師の行う分娩期のケアは生活を基盤にした産婦ケアが中心です。 産科医の多くが考えている,「産婦は限りなく潜在的リスクを抱える危険な存在」と捉える医師の認識と お産は病気ではなく生理的現象であると考える助産師のそれとはおのずと異なります。  だからこそ,助産師は,温罨法や指圧,鍼灸,マッサージ,アロマ療法等々の補完代替療法や様々な 日常的な生活面の食事や運動,分娩時の体位等が重要であると考えています。また,産婦に日常的に行 われる人工破膜,クリステル,浣腸等々の処置や医療の根拠についても振り返る必要があります。  本ガイドラインは,日常的に実施している産婦のケアのエビデンスについて文献から明らかにし,助 産師が,自信をもって助産業務に携わることを可能にするものです。  ぜひ,全ての助産師が必携し,日々の業務に臨んでいただきたいと願っています。その画期的な本著 の発刊を皆様と共に喜び,その活用を推奨いたします。

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エビデンスに基づく助産ガイドライン—分娩期2012

ガイドライン委員会 委員長   江藤 宏美   長崎大学 委 員(五十音順)   浅井 宏美   聖路加看護大学大学院   飯田 眞理子  聖路加看護大学   片岡 弥恵子  聖路加看護大学   櫻井 綾香   市立大町総合病院   田所 由利子  元慶応義塾大学   堀内 成子   聖路加看護大学/聖路加産科クリニック   増澤 祐子   葛飾赤十字産院   八重 ゆかり  聖路加看護大学看護実践開発研究センター

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本ガイドラインの基盤となる考え

本ガイドラインは、臨床の場での疑問を解決すべく、系統的に文献を収集、吟味し、ケアのエビデ ンスを示している。女性が自らに対するケアの意思決定を行うには、医療者からのエビデンスに基づ いた情報提供が不可欠である。そして助産ケアの基盤になるのが、女性を中心にしたケア: Women Centered Care と家族中心のケア: Family Centered Care である。以下に、これらの考え方について述べ る。

女性を中心にしたケア:

Women Centered Care: WCC

女性を中心にしたケアは、1. 尊重、2. 安全、3. ホリスティック、4. パートナーシップの 4 つの特 徴を持っている。女性を中心にしたケアの第1 の特徴は、女性の「尊重」である。これは女性の文化 的多様性や、女性の体験や価値、希望やニーズを尊重することを意味している。これには女性が受け るケアを自ら選択できるように情報提供を行い、女性の意思決定を促し、その決定を尊重するという ことも含まれている。さらに、女性の本来持っている力や能力に目を向けることも女性を尊重するこ との意味の根底にある。第2 の特徴は、女性の「安全」を守ることである。女性の安全を守る手段と して、プライバシーの保持と不必要な医療介入は行わないということがある。産婦人科領域では、女 性のプライバシーの侵害につながる検査や治療が多い。女性の羞恥心に配慮し、女性が安心してケア を受けられるよう、個の空間を保持する必要がある。また、必要最低限の医療介入で、心身への負担 が少ない治療やケアを受けられるようにすることも女性の安心感を保障するだろう。母子の安全を守 るために根拠がない過剰医療を行うことがあってはならない。第3 の特徴は、女性を「ホリスティッ ク(holistic)」にみることである。女性の身体面の一部やある部分のみをみるのではなく、全体論的な 存在として捉えることを意味している。女性のホリスティックな健康を達成するためには、女性の多 様性を認識し尊重した上で、女性一人ひとりをユニークな存在として捉え、個別性を重視したケア提 供が求められる。最後に第4 の特徴は、女性と医療者の「パートナーシップ」である。パートナーシ ップには、対等、信頼、配慮の特徴がある。女性と医療者は平等な関係性にあり、両者の協働によっ て女性の多様なニーズに応えることができる。 女性を中心にしたケアは、女性の身体的・精神的・社会的な健康状態を高めることにつながる。さ らに、女性のケアに対する高い満足感、自己コントロール感、自信の獲得、エンパワーメントがみら れ、女性が自ら健康増進行動の方法を学ぶことにもつながる。また、女性を中心にしたケアは、ケア 提供者側の自律にも寄与し、より専門性の高いケアの提供を実現することも視野に入れている。 上記の特徴を持つ女性を中心にしたケアを提供するには、継続ケアを提供することが重要である。 継続ケアとは、女性が信頼する医療者から、妊娠・分娩・産褥期を通してケアが受けられるシステム のことである。日々のケアを行う際に、より質の高い助産ケアを提供するために、女性を中心にした ケアの概念は欠かせない。 【参考文献】

Horiuchi, S., Kataoka, Y., Eto, H., Oguro, M. & Mori, T. (2006). The applicability of women-centered care: Two case studies of capacity-building for maternal health through international collaboration. Japan Journal of

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Iida, M., Horiuchi, S. & Porter, S. (2011). The relationship between women-centred care and women’s birth experiences: A comparison between birth centres, clinics, and hospitals in Japan. Midwifery, doi:10.1016/j.midw. 2011.07.002

Iida, M. (2011). A comparison of midwife-led care versus obstetrician-led care in low-risk pregnancy: Maternal and infant outcomes. St. Luke’s College of Nursing, Graduate School, Doctoral dissertation.

ICM 基本文書「助産師の国際倫理綱領 2008 年」(2009).日本看護協会 日本助産師会 日本助産学会訳. http://www.nurse.or.jp/nursing/international/icm/definition/data/icm_ethics.pdf#search='ICM%20 助産師%20

倫理綱領%202008' [2012.9.30]

片岡弥恵子(2012).Women-centered care: 女性を中心にしたケア.山本あい子編.助産師基礎教育テキ スト 2012 年版 第 1 巻 助産概論(pp. 55-61).東京:日本看護協会出版会.

National Institute for Clinical Excellence (NICE) (2008). Antenatal care: Routine care for the healthy pregnant woman. http://www.nice.org.uk/nicemedia/live/11947/40145/40145.pdf [2012.9.30]

家族中心のケア:

Family Centered Care: FCC

1950~1970 年代、米国では夫立会い分娩の増加、ケアの受け手側の運動が高まり、看護学理論家の Wiedenbach,E は著書『家族中心の母性看護:Family-centered maternity nursing』において FCC の重要性 を述べている。また、小児看護領域においても「両親は子どものケア提供・養育・保護の権利と責任 を持つこと」、つまり、子どもと家族両者をケアの対象とすることが重要視されるようになった。1970 年代後半~1980 年代には、Klaus と Kennel による母と子の絆の形成に関する初期の研究がなされ、周 産期医療においては親と子の絆や愛着形成を促進するケア、小児医療においては入院中の子どものケ アへ両親が積極的に参画することなどが取り組まれるようになった。現在、「Family-Centered Care」と いう言葉は様々なヘルスケア場面で使われており、その概念は、理念、原則、要素というかたちで定 義づけられている。

米国では1992 年、非営利組織 Institute for Patient- and Family Centered Care (以下、IPFCC)が設立さ れ、様々なヘルスケア領域で個人と家族の受けるケアが、より患者・家族中心のケアへと変革するよ う、その理解と実践を促す様々な活動を行っている。IPFCC は患者・家族中心のケアの中核概念とし て、以下の4つの概念を挙げている。

第 1 に、尊厳と尊重(Dignity and Respect)である。 これは、ヘルスケア専門職が患者・家族の見解や 選択を傾聴し、尊重すること、患者・家族の持っている知識、価値観、信念、文化的背景をケア計画 に組み入れることである。第2 に、情報の共有(Information Sharing)が重視される。これは、ヘルスケ ア専門職はすべての偏りのない情報を確実で役立つ方法で患者・家族に伝え、共有すること。患者・ 家族はケアや意思決定に効果的に参加するために、タイムリーにすべての的確な情報を受けることで ある。次に、参加(Participation)であり、患者・家族が望むレベルでケアや意思決定に参加することを 奨励、支持されること。最後に、協働(Collaboration)は、患者・家族とヘルスケア専門職はケアを実 施する際、また、施設の方針、ヘルスケア施設の設計やヘルスケア専門職の教育に関しても、プログ ラムの開発・実施・評価について協働することである。FCC の中核概念は、これまで受動的にケアを 受けていた家族の立場から、家族が主体的に役割を遂行できるよう家族と医療者が共に考え、実践で きるようなヘルスケアシステムへ変革する重要性を示している。

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出産はその女性にとってはもちろん、パートナーや生まれてくる子のきょうだい、祖父母などの家 族メンバーにとって重要なライフイベントである。本人とその家族の価値観、信念、文化的背景をケ ア計画や意思決定に反映させ、家族が分娩に立ち会うことや入院中の新生児のケアに参加することは、 家族メンバー同士の絆を強め、親やきょうだいそれぞれの役割意識を高める意味で非常に重要である。 本ガイドラインでは、分娩期の助産ケアとして、出生直後の母子の早期接触(skin-to-skin コンタクト) の有効性を示している。このケアは母子の愛着形成や家族の絆を強めるケアのひとつであり、助産師 はそれらを促進する役割を担っている。 【参考文献】

Asai, H.(2011).Predictors of nurses' family-centered care practices in the neonatal intensive care unit. Japan

Journal of Nursing Science, 8(1),57-65.

Coyne, I. (2011).What does family-centred care mean to nurses and how do they think it could be enhanced in practice. Journal of Advanced Nursing, 67(12), 2561-2573.

Gordin, P. (1999). Technology and family-centered perinatal care: Conflict or synergy? Journal of Obstetric,

Gynecologic & Neonatal Nursing (JOGNN), 28(4), 401-408.

Institute for Patient- and Family-Centered Care. (2007). What are the core concepts of patient-and family- centered care. http://www.ipfcc.org/faq.html [2012.8.30]

Petersen, M. (2004). Family-centered care: Do we practice what we preach? Journal of Obstetric, Gynecologic

& Neonatal Nursing (JOGNN), 33(4), 421-427.

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ガイドラインの作成方法

本ガイドラインは、正常経過をたどるローリスク妊産婦の分娩時ケアに携わる助産師を主たる対象 とし、その他、妊産婦のケアにかかわる医療者全体を対象として作成したものである。利用に際して は個々の分娩状況や妊産婦の価値観、臨床場の可能性などを考慮し、あくまでも助産師、および妊産 婦のケアにかかわる医療者全体が使いこなすべきものである。本ガイドラインの利用に関しては、本 ガイドラインに示されたエビデンスを基に、各施設で医療者間が話し合い、適切な医療を提供するた めのものである。 作成の経緯は、2008 年、日本助産学会が「助産実践のためのガイドライン」作成を決定し、日本 助産学会ガイドライン委員会を発足した。目的は、ローリスクを対象とする助産師の視点からみたガ イドラインを作成することである。妊娠期、分娩期、産褥期/新生児期のうち、まず「分娩期」から開 始することとした。

1)クリニカル・クエスチョンの決定

本ガイドラインは、29 項目のクリニカル・クエスチョン(Clinical Question、以下 CQ)から成る。 CQ の選択に当たっては、以下のプロセスで行った。 2009 年 3 月、日本助産学会で自由集会を開催し、参加者に「EBM に基づいたガイドラインの作成」 とはどのようなものをさすかについて講演し、どのようなCQ を作成したらいいか意見を募った。現 在の助産実践からケア(予防的・治療的介入)について多くのCQ が提案された。 上記のプロセスを経て、最終的に実践家からの報告を重視したこと、教科書にはケアについて書か れているがエビデンスが示されていないもの、また、助産師が実践場面で行うものについて着目し、 CQ を選択した。上記、内容を検討し、優先順位をつけて、今回の項目とした。今後、CQ は必要に応 じて見直し、増減する予定である。

2)文献検索

(1)情報源

既存の研究成果を調べるために、The Cochrane Library、PubMed、医中誌 web を用いて検索を行っ た。対象検索年は、それぞれのデータベースの収載開始年から2008 年 10 月登録分までとした。検索 対象言語は、英語もしくは日本語である。

本冊子を作成するために、The Cochrane Library に掲載されたシステマティック・レビュのみ、2012 年8 月まで最新の文献を更新した。

(2)検索の過程

キーワードの選定には、NICE: The National Institute for Health and Clinical Excellence の提供している Guidance「Intrapartum Care」の本文で使われている言葉、検索キーワード等を参考に、それぞれの CQ にあったキーワードを2008 年 8 月に仮決定した。キーワードはフリーワードとそれぞれデータベース のシソーラス用語を組み合わせた。その後、ここで決めたキーワードを使った仮検索を数回行い、検

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索結果を研究メンバーと見ながらキーワードを適宜変更した(*CQ ごとのキーワードは、日本助産 学会ホームページに掲載)。検索はCQ ごとに行った。検索対象とした論文の種類は、メタアナリシス、 診療ガイドライン、ランダム化比較試験及び、システマティック・レビュであった。しかし、日本語 の文献についてはこの論文種類で絞ると数が少なくなるため、このほかに準ランダム化比較試験と比 較研究を含めて検索を行った。上記のような論文の種類への限定方法は、それぞれデータベースの絞 り込み項目を利用して絞ると検索結果から脱落してしまう論文があるため、PubMed については、タ イトルもしくはアブストラクト中に、「systematic review*」、「meta analysis」、「guideline*」、「controlled trial」、「controlled clinical」、「random*」が含まれるものも追加した。医中誌では、タイトル中に「ガイ ドライン」、「メタ」、「比較」、「ランダム」、「ランダマイズ」が含まれるものについても検索を行った。 The Cochrane Library の検索では、全文検索を行うと、ノイズが増えることから、フリーワードについ てはタイトル、抄録、キーワード中に含まれるものに限定した。(*検索式および検索結果は、日本助 産学会ホームページに掲載)

また、エビデンスを集積したガイドラインについて、研究の質の高さや活用性から必ず参照するも のとして、英国National Institute for Health and Clinical Excellence(以下、NICE ガイドラインと示す)、 「産婦人科診療ガイドライン産科編2008(現在、2011 に改訂され、最新バージョンを参照)」、「快適 な妊娠出産のためのガイドライン」をとりあげた。

(3)文献情報の管理

データベースの検索結果は、RefWorks を使って管理した。CQ ごと、さらにデータベースごとにフ ォルダを作成し、そのなかに検索結果を保存した。保存の際にはカスタマイズ項目にCQ ごとに項目 を作成し、各文献にCQ 番号を付与した。さらに、RefWorks から Excel へデータを出力し、CQ ごと、 論文の種類ごとにデータが見られるようにした。

3)文献の批判的吟味

1 名の評価者が文献検索で得られた文献のタイトルとアブストラクトを読み、CQ に合致した内容 の予防的・治療的介入を行っているものを採択し、「本ガイドラインの範囲外の文献」「質的研究」を 除外した。質的研究を除外した理由は,質的研究の評価基準について,現在のところコンセンサスが 得られていないと判断したためである。 評価した1 名評価者が判断に困難を生じた場合は、もう一人の評価者に相談し、話合い後に採否を 決めた。 文献は研究の質およびエビデンスレベルから、本ガイドラインへの採否を決定した。その結果、採 択された文献数は、52 件(重複文献は除く)であった。批判的吟味を行い、ガイドラインへの採用が 決定した文献は CQ ごとに、エビデンス・テーブルを作成した(*CQ ごとのエビデンス・テーブル は、日本助産学会ホームページに掲載)。

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4)ガイドライン本文の作成

採用した文献の結果を基盤に、本文を作成した。本文は、ガイドライン、文献から得られた結果よ り「エビデンスと解説」「根拠」を作成した。「エビデンスと解説」は、研究で得られたエビデンスを もとに、ケアの内容を推奨する内容をまとめたもので、「根拠」は集積した質の高い各研究のエビデン スを提示したものである。推奨文を作成しなかったのは、対象となる集団に提供される対処法はそれ ぞれの実践の場により違いがあり、本ガイドラインによる「エビデンスと解説」をもとに策定しても らうことが望ましいと考えたためである。

5)初版完成

2011 年 3 月日本助産学会の交流集会で、ガイドライン案を提示し、コメント聴取した。参加者 60 名を4グループに分かれてもらい、個々のガイドラインの解説を行い、それぞれのCQ についてコメ ントを聴取した。その後、コメントへの返答と修正したガイドライン案を日本助産学会のホームペー ジに掲載し、パブリックコメントを聴取した。2012 年 12 月初版完成となった。

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分娩誘発法

妊娠満37週から満42週未満(満259~293日)の間の分娩を正期産と定義され、妊娠満42週(満294日) 以後の分娩を過期産という(日本産科婦人科学会, 2008)。過期産は、周産期死亡率が高く、羊水過少症 や胎便吸引症候群、呼吸障害など短期の新生児合併症を生じるリスクも高い(ACOG Committee on Practice Bulletins-Obstetrics, 2004)。このような胎児への重大なリスクを減少させるため分娩誘発が行わ れる。分娩誘発の方法として、子宮収縮薬 (オキシトシン、プロスタグランジンF2α、プロスタグラン ジンE2錠等)を使用する方法、器械的な方法(吸湿性頸管拡張剤、メトロイリンテル等)、その他薬剤 および器械を用いない方法として、卵膜剥離、乳頭/乳房刺激や指圧・鍼等があげられる。 全国の総合周産期センター44 施設、地域周産期センター53 施設を含む 139 施設において、2010 年 度に出産した妊娠22 週以降の 83,383 例を対象とした周産期統計 (日本産科婦人科学会周産期委員会, 2012)によると、正期産のうち約 31.1%が 40 週~42 週未満と予定日超過での分娩となっている。 東京、神奈川、千葉、埼玉にある病院118 施設、診療所 66 施設、助産所 71 施設を含む医療施設 255 施設を対象とし、2010 年に実施されたローリスク妊産婦への分娩期ケア調査(清水, 2011)によると、 過期産予防の器械・薬剤による分娩誘発は、病院の 95.8%、診療所 97.9%が実施しており、実施時期 は妊娠41 週が最も多かった。分娩誘発のための卵膜剥離をほぼ全例に実施している施設は非常に少な く、ケースにより実施されているのは病院66.1%、診療所 61.5%、助産所 50.7%であり施設の種類に よる差はなかった。分娩誘発目的の乳頭刺激は、実施していない施設が多かった。

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CQ1 予定日超過における分娩誘発方針は?

【エビデンスと解説】 合併症を伴わない妊婦においては、予定日超過における分娩誘発の陣痛誘発群と待機的分娩群を比 較した場合、41 週以降の場合の周産期死亡率は低下するが、帝王切開率等の分娩アウトカムに関する 有意差はなかった。 NICE ガイドラインは、主としてコクランレビュの結果から「41 週以降での陣痛誘発方針」により 周産期死亡率の低下がもたらされることが示されている。一方、合併症を伴わない妊婦においては、 陣痛誘発群と待機的分娩群を比較した場合、分娩のアウトカムに対して有意な差はなかったとのRCT の結果から、合併症を伴わない妊婦に対しては自然分娩の機会が提供されることを推奨している。 合併症を伴わない妊婦には、薬剤や器械を用いない分娩の機会が提供されることが望ましいが、41 週 0 日~6 日の間は頸管熟化度を考慮して薬剤や器械を用いた陣痛誘発を検討し、42 週以降は陣痛誘発 方針をとることが求められる。薬剤や器械を用いた陣痛誘発を行う前に、卵膜剥離(CQ2)、乳房/乳 頭刺激(CQ3)の実施を検討できる。 NICE 陣痛誘発ガイドライン 主としてコクランレビュの結果をエビデンスとして採用し、「41 週以降での陣痛誘発方針」によ り周産期死亡率の低下がもたらされるとしている。また、スウェーデンでのRCT 結果では、陣痛誘 発群と待機的分娩群を比較した場合、帝王切開率、器械分娩率、重度の会陰裂傷、500 ml 以上の出 血、羊水混濁、5 分後アプガースコアが 7 未満、NICU 入院、子宮内胎児死亡、新生児死亡について、 有意な差はなかったとしている。これらの結果をもとに、合併症を伴わない妊婦には、あらゆる自 然分娩の機会が提供されることが望ましいと結論づけている。 産婦人科診療ガイドライン 「社会的適応による正期産分娩誘発」のCQ 項目において「特にリスクのない妊婦においても真 摯な誘発の要請があれば、子宮頸管熟化を十分考慮した、インフォームドコンセント後の分娩誘発 は認められるとするのが妥当である」と記載されている。しかし「37~40 週妊婦に対しての誘発が 待機に優るとのエビデンスは存在しないので、37~40 週の分娩誘発には医学的に証明された正当性 はない。したがって、これらの誘発は利害得失に関してのインフォームドコンセント後に施行すべ きであるということになる」とされている。 また「妊娠41 週以降妊婦の取り扱い」の CQ 項目では、「妊娠 41 週台では頸管熟化度を考慮した 分娩誘発を行うか、陣痛発来待機する。妊娠42 週 0 日以降では分娩誘発を考慮する」と推奨されて いる。そして解説においては「メタアナリシスの結果から41 週以降妊娠では頸管熟化不良例でも良 好例でも、誘発は待機に比べて児死亡率、児罹患率および帝王切開率の減少傾向が示されているが、 一貫した有意差までは出ていない」として、「妊娠41 週台では頸管熟化度を考慮した分娩誘発を行 うか、陣痛発来待機する」との推奨になったとされている。42 週以降については、「頸管熟化良不 良にかかわらず41 週以降の誘発は待機に比較して母児罹病率が低い可能性が高いこと、42 週(過 期妊娠)は異常妊娠と位置付けられていること、本邦では初期超音波実施率が高く、浅い週数の妊 婦を42 週以降だと誤認する可能性がかなり低いこと、の 3 点」を考慮し、「妊娠42 週 0 日以降では 分娩誘発を考慮する。」との推奨になったとされている。

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科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン 記載なし。 上記以外のエビデンス 19 試験(n=7,984)をレビュしたコクラン SR を採用した。 「41 週以降での陣痛誘発方針」と「待機的分娩」を比較した場合、周産期死亡のリスクは、「41 週以降での陣痛誘発方針」のほうが低かった(先天異常による死亡も含めた場合の相対リスク RR0.30 [95%CI: 0.09, 0.99]、先天異常による死亡も含めなかった場合は陣痛誘発群での死亡例 0、待 機的分娩群での死亡例7)。また、胎便吸引症候群の割合についても「41 週以降での陣痛誘発方針」 のほうが低く、RR0.29 [95%CI: 0.12, 0.68]であった。しかし、帝王切開割合については、「41 週以 降での陣痛誘発方針」と「待機的分娩」との間で有意な違いは認められなかった(RR0.92 [95%CI: 0.76, 1.12])。 「42 週以降での陣痛誘発方針」と「待機的分娩」の比較においては、胎便吸引症候群の割合、帝 王切開割合ともに「42 週以降での陣痛誘発方針」のほうが低い傾向にあったが、統計学的に有意な 差ではなかった(それぞれRR 0.66 [95%CI: 0.24, 1.81]、RR 0.97 [95%CI: 0.72, 1.31])。

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CQ2 卵膜剥離は、分娩誘発の効果があるか?

【エビデンスと解説】 40 週以降の妊婦に対し、薬剤や器械による陣痛誘発を行う前に、内診による卵膜剥離の実施は陣痛 誘発の方法として効果がある。 NICE ガイドラインより、子宮頚管未成熟の妊婦に対する卵膜剥離は、回数にかかわらず、41 週お よび42 週以降の妊娠を減らし、薬剤による陣痛誘発を減少させるというエビデンスがあった。卵膜剥 離を実施しても、帝王切開および母体と胎児への感染リスクについて差は認められなかった。卵膜剥 離した女性の方が、内診時の不快感が高く、出血や不規則な陣痛といったリスクがあった。1 回の卵 膜剥離でも十分であるというエビデンスがあるが、複数回の卵膜剥離の効果を示すエビデンスもあっ た。1 回の卵膜剥離で陣痛が発来しない場合は、次回の健診時など 2 回以上行うことも考慮する。そ の際、卵膜剥離の目的、方法、効果、リスク(痛みおよび出血)等について妊婦に十分説明し、同意 を得なくてはならない。NICE ガイドラインの結論として、卵膜剥離は過期妊娠を防ぐために重要で あり、これについて妊婦健診で妊婦と話し合う機会を持つこと、妊婦はこれらの情報をベースに、卵 膜剥離を受けるか受けないかを選択をすることができるとされていた。 【根拠】 NICE 陣痛誘発ガイドライン 1 件の SR(22 件の RCT で 2797 名の女性が含まれる。ビショップスコアは未開大から 6cm 以下、 初産婦および経産婦)は、卵膜剥離実施と何もしない場合の比較(20 件の RCT)、卵膜剥離とプロ スタグランティンの比較(3 件の RCT)またはオキシトシンとの比較(1 件の RCT)であった。2 件は、比較群が複数であった。 このレビュに含まれるすべての試験は、回数にかかわらず、卵膜剥離をすることで、41 週以降RR0.59 [95%CI:0.46,0.74])、42 週以降(RR0.28, [95%CI:0.15,0.50])の妊娠を減らす効果が認め られた。薬剤による陣痛誘発を1 人減らすために、8 人の妊婦に卵膜剥離が必要となる(NNT=8)。 卵膜剥離した場合としない場合を比べ、帝王切開および母体と胎児への感染リスクについて統計的 有意差は認められなかった。卵膜剥離した女性は、内診時の不快感が高く、出血や不規則な陣痛と いったリスクが認められた [EL=1++]。 妊娠38 週から 42 週で子宮頚管未成熟の妊婦に対し、卵膜剥離を行うと薬剤による陣痛誘発が統 計的に有意に減少する(RR0.51 [95%CI:0.37,0.71]; 3 件の RCT; 226 名の妊婦)。卵膜剥離の実施と 実施しない場合を比べ、帝王切開(RR0.98 [95%CI: 0.49, 1.95]; 3 件の RCT; 200 名の妊婦)、硬膜外 麻酔(RR0.70 [95%CI: 0.42, 1.18]; 1 件の RCT; 65 名の妊婦)、器械分娩(RR0.87 [95%CI:0.33, 2.24]; 2 件のRCT; 135 名の妊婦)、5 分後のアプガースコア 7 点未満(RR0.97 [95%CI: 0.06, 4.85]; 1 件の RCT; 65 名の妊婦)、NICU への転送(RR0.97 [95%CI: 0.15, 6.47]; 1 件の RCT; 65 名の妊婦)について差は なかった。母体、周産期死亡はなかった。 以上のエビデンスを基盤にNICE の推奨は、以下のように記述されている。 薬剤による分娩誘発に先立って、女性は、卵膜剥離のための内診を提供されるべきである。 妊娠40 週と 41 週の妊婦健診にて、初産婦は、卵膜剥離を提供されるべきである。 妊娠41 週の妊婦健診にて、経産婦は、卵膜剥離を提供されるべきである。

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子宮頚管のアセスメントするために内診するときは、卵膜剥離の機会を女性に提供すべきである。 自然に陣痛が発来しない場合は、複数回の卵膜剥離がよいかもしれない。 産婦人科診療ガイドライン 妊娠41 週以降妊婦の取り扱いについて、以下のように推奨されている。しかし、分娩誘発法とし て卵膜剥離については言及していない。 1.妊娠初期の胎児計測値などから妊娠週数が正しいことを再確認する。(A) 2.胎児 well-being を定期的にモニターする。(B) 3.妊娠 41 週 0 日~41 週 6 日では頚管熟化度を考慮した分娩誘発を行うか、陣痛発来待機する。 (B) 4.妊娠 42 週 0 日以降では分娩誘発を考慮する。(B) 科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン 記載なし。 上記以外のエビデンス コクランSR にて卵膜剥離の有効性を検討した研究は、2 つにわけることができた。一つは、過期 妊娠を防ぐために妊娠38~40 週に卵膜剥離を実施する方針を評価した研究で、もう一つは、陣痛誘 発の方法として卵膜剥離を評価した研究であった。妊娠37 週から 40 週の妊婦を対象としたのは 13 試験、妊娠40 週を超えた妊婦は 6 試験であった。22 試験(2797 名の女性)が含まれ、20 試験は卵 膜剥離実施群と未実施群を比較しており、3 試験は卵膜剥離とプロスタグランジンの比較、1 試験は 卵膜剥離とオキシトシンを比較していた。帝王切開になるリスクは同程度(RR0.90 [95%CI: 0.70, 1.15])であり、卵膜剥離による産婦および新生児の感染症のリスクに関するエビデンスはなかった。 正期産の産婦に卵膜剥離を行うことで41 週以降の妊娠継続(RR0.59 [95%CI: 0.46, 0.74])や 42 週以 降の妊娠継続(RR0.28 [95%CI: 0.15, 0.50])を減少させる。1 人の薬剤による陣痛誘発を回避するた めには、8 人の妊婦に卵膜剥離をする必要がある(NNT= 8)。卵膜剥離を行う際には、内診時の不 快感(出血、前駆陣痛)が伴いやすいという報告があった。プロスタグランジン投与と卵膜剥離を 比較した試験では、サンプルサイズに限界があり、利益に関するエビデンスが示されていない。オ キシトシン投与と卵膜剥離を比較した試験では、サンプルサイズに限界があるが帝王切開になるリ スクは同程度だった。妊娠38 週から行うルチーンの卵膜剥離は、臨床上の効果はないようである。 陣痛誘発として卵膜剥離を行う際は、器械や薬剤による誘発を減らすことができるが、女性の不快 感やその他の悪影響も増えるため、両者を考慮し実施を考えなくてはならない。 Note:卵膜剥離の方法 卵膜剥離は、内診を行った時に子宮の下部から卵膜を指で剥離することである。子宮頸管が閉 じている場合は、子宮頸管を開くようにする、または指で伸ばす(マッサージする)。

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CQ3 乳房/乳頭刺激は、分娩誘発の効果があるか?

【エビデンスと解説】 乳房/乳頭の刺激は、ローリスクの妊婦に陣痛誘発の効果が認められた。 乳房/乳頭への刺激は、全てのローリスクの妊婦を対象として分析した結果、72 時間以内に出産に 至る女性の数を有意に増加させており、分娩後の多量出血をも減少させる効果が認められた。しかし、 ハイリスクの妊婦を対象とした1 件の RCT では、周産期死亡は乳房/乳頭刺激群に 3 例、オキシトシ ン使用群に1 例報告された。また、コクラン SR において、サブグループ解析の結果、ハイリスク妊 婦で頸管が熟化していない場合には、72 時間以内に出産に至る女性の数を増加させるという効果は認 められなかった。 よって、ローリスクの妊婦を対象に、乳房/乳頭への刺激は陣痛誘発として有効であることが期待で きる。しかし、ハイリスクの妊婦に対しては、陣痛誘発の効果もなく、周産期死亡例も報告されてい ることから、用いるべきではないと考える。今後、安全性をはじめ、妊婦の満足度や不快感を考慮し たさらなるデータの蓄積が必要である。 【根拠】 NICE 陣痛誘発ガイドライン 6 試験を検討したコクラン SR1 件が採用されていた。乳房/乳頭刺激は 72 時間以内に分娩に至る 妊婦を増やし、産後の多量出血の割合を減少させるという点で効果が検証された。帝王切開率は、 乳房/乳頭刺激群とオキシトシン静脈注射群の間で有意差はなかった。1 件の小規模の RCT では、 ハイリスクの産婦を対象として乳頭刺激群に3 例、オキシトシン使用群に 1 例の周産期死亡が報告 された。しかし研究の質にばらつきがあるため、陣痛誘発の方法として、乳頭刺激の効果、時期、 方法、頻度、安全性、産婦の満足感を評価するために、さらなる研究が必要であるとしている。 産婦人科診療ガイドライン 記載なし。 科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン 記載なし。 上記以外のエビデンス 6 試験(n=719)を検討したコクラン SR(Kavanagh et al., 2005)を採用した。乳房/乳頭への刺激 の有効性について、何もしない群と比較した研究(4 件)を統合した結果、72 時間以内に出産に至 った妊婦を有意に増やしていた(6.4% vs. 37.3%, RR 5.79 [95%CI: 3.41, 9.81])。産後における多量の 出血については、乳房/乳頭への刺激を行った方が有意に減らしていた(0.7% vs. 6%, RR 0.16 [95%CI: 0.03, 0.87])。ハイリスクの妊婦を対象とした研究では乳頭刺激群に 3 例、オキシトシン使 用群に1 例の周産期死亡が報告された。 Note: 乳房/乳頭への刺激介入とは、<3 日間にわたり 1 日 1 時間程度左右の乳頭 15 分毎に交互に乳房 への刺激>、<1 日 3 時間程度の刺激>、<Electric breast pump(電動式の搾乳器)の使用(左右 の乳頭に15 分間ずつ交互に 250 Hg の陰圧をかける)>などを行うことをさす。

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CQ4 指圧・鍼は、分娩誘発の効果があるか?

【エビデンスと解説】 指圧による分娩誘発効果を検証した研究はなかった。鍼療法による分娩誘発の有効性は認められな かった。 指圧や鍼療法による陣痛誘発効果・安全性に関して根拠は十分ではなく、陣痛誘発方法として指圧・ 鍼療法を積極的に勧めることはできない。陣痛誘発方法としての鍼療法の効果、安全性、妊産婦の満 足度を評価するための研究が必要である。 【根拠】 NICE 陣痛誘発ガイドライン SR1 件、RCT1 件が採用された。 SR(Smith et al., 2004)は、1 件の RCT(n=56)を含み、ビショップスコア 5 点未満の正期産の初 経産を対象としていた。鍼療法の効果を評価したが、陣痛誘発方法としては意味がある結果は得ら れなかった。それは方法論の限界および脱落率によるためであった。 RCT(Harper et al., 2006)は、正期産で合併症のない初産婦を通常のケアのみ群(n=26)と通常の ケアに 3 人の外来患者を加えて鍼療法を行った群(n=30)を比較した。対象者のビショップスコア の平均は 4 点であった。どちらの群も医療ケア(卵膜剥離、誘発の時期、子宮頸管熟化のためのハ ーブ療法)は行われている。両群で、自然分娩(70% vs. 50%、OR 2.33 [95%CI: 0.78, 6.98])、帝王切 開率(17% vs. 39%、OR 3.13 [95%CI: 0.99, 10.8])に有意差はなかった。 NICE では、効果がある、または害があることを証明する十分な根拠はないとし、陣痛誘発の方 法としての鍼療法は提供することを勧めないとしている(EL=1++)。 産婦人科診療ガイドライン 記載なし。 科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン 記載なし。 上記以外のエビデンス

NICE で検討された SR(Smith et al., 2004)と RCT(Harper et al., 2006)に加えて、2008 年の RCT (Smith et al., 2008)が該当した。 Smith ら(2008)は、対象者を予定日より 10 日以上経過している、単胎・頭位の 16 歳以上の妊 婦 346 人とし、三陰交を含む経穴に鍼を行う介入群(n=181)と、経穴・経絡以外に鍼を行う(偽 鍼)対照群 (n=183)の比較を行った。病院での通常の陣痛誘発を行う前に 2-3 日前に 2 日ほど介 入を行い、1 回の介入では鍼を打つ時間は 30-40 分程度であった。鍼療法のみで自然に陣痛発来し たのは、介入群で51 名(28.2%)、対照群で 57 名(31.1%)であり、有意な差はなかった(Ajusted P=0.83)。 Note:研究の介入方法 Smith et al.(2008 の RCT)…3 人の鍼灸師が研究中に鍼療法を行った。45 分のセッションを 2 日以上、陣痛誘発2~3 日前に行う。 介入:LI4(合谷)・SP6(三陰交)・UB31・UB32・ST36(足三里)・Liv3、KI7(復溜)・BL20 (脾兪)・BL21(胃兪)に鍼を打つ。 <参考>経穴の名称:http://jsam.jp/authorization/pastdata/who_point.html [2011.05.03]

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胎児のモニタリング方法

胎児の心拍数により胎児の状態を評価するために、胎児のモニタリングが行われる。胎児心音聴取 方法として、分娩監視装置による持続的モニタリングと、ドップラーやトラウベによる間歇的聴取方 法がある。周産期統計 (日本産婦人科学会周産期委員会, 2012)によると、有効回答数 80,137 件中 19,503 件(24.3%)で、分娩時の CTG 異常が認められた。異常の種類は、早発一過性徐脈が 2,769 件、軽度 変動一過性徐脈が8,243 件、高度変動一過性徐脈が 5,402 件、遅発一過性徐脈が 2,009 件、遷延性徐脈 が1,824 件であった。 ローリスク妊産婦への分娩期ケア調査(清水, 2011)によると、入院時の分娩監視装置のルチーンの 使用は、病院100%、診療所 95.5%、助産所 38.0%であった。分娩中の胎児心音聴取方法として、間 歇的聴取を行っている施設は84.9%であった。間歇的聴取の場合、ドップラー・トラウベによる方法 は、病院19.5%、診療所 15.6%、助産所 78.8%で実施されていた。間歇的聴取法から持続モニタリン グに切り替えるケースは、「児心音異常」が最も多く、続いて「分娩第2 期から」、「陣痛促進薬の開始」 「羊水混濁」の順であった。分娩監視装置の連続的使用は、病院 13.6%、診療所 31.3%であり、助産 所は0%であった。

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CQ5 分娩のため入院した際の胎児心拍の確認方法は何がよいか?

【エビデンスと解説】 入院時のCTG の装着は、間欠的な胎児心音聴取と比較して、分娩時の介入(器械分娩、帝王切開、 硬膜外麻酔、継続したCTG の装着、胎児採血の実施)が多いことが報告されている一方で、児のアウ トカムに差はないと報告している研究があり、CTG 装着の方が、間欠的な胎児心音聴取よりも優れて いるというエビデンスはない。 分娩のため入院した際の胎児心拍の確認方法には、CTG 装着の方が、間欠的な胎児心音聴取よりも 優れているというエビデンスはない。しかし、産婦人科診療ガイドライン、科学的根拠に基づく快適 な妊娠・出産のためのガイドラインでは、入院時の胎児の健康状態と分娩開始後のリスクを評価する ことが望ましいとしている。 最近は、助産所から病院へ搬送した際に、搬送先でCTG モニターの記録提出が求められている。助 産所入院時点の胎児の健康状態を示すためにも、入院時にはCTG の装着が奨められる。 【根拠】 NICE ガイドライン 3 件の RCT を分析した SR(Blix, 2005)が採用された。入院時に約 20 分間の CTG を装着した群 と間欠的な胎児心音の聴診のみを行った群とを比較した結果、前者は硬膜外麻酔(RR 1.2 [95%CI: 1.1, 1.4])、継続した CTG の装着(RR 1.3 [95%CI: 1.2, 1.5])、胎児採血の実施(RR 1.3 [95%CI: 1.1, 1.5]) が高かった。また、ボーダーラインの根拠としては、継続した EFM を受けた女性は、間欠的な胎 児心音の聴診と比較して、器械分娩(RR 1.1 [95%CI: 1.0, 1.3])、帝王切開(RR 1.2 [95%CI: 1.0, 1.4]) を受けるという傾向があった。一方で、分娩促進(RR 1.1 [95%CI: 0.9, 1.2])、周産期死亡率(RR 1.1 [95%CI: 0.2, 7.1])、その他の新生児の罹病率に差はなかった。これらから NICE のガイドラインでは、 どんな出産場所であれ、産科的にローリスクの女性に対する入院時CTG の使用は推奨されないとし ている。 産婦人科診療ガイドライン CQ410「分娩監視の方法は」において、分娩第 1 期(入院時を含め)には分娩監視装置を一定時 間(20 分以上)使用し、正常胎児心拍数パターン(心拍数基線と基線細変動が正常であり、一過性 頻脈があり、かつ一過性徐脈がない)であることを確認することとしている。 科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン RQ11「CTG(胎児の健康状態を診る)」において、RCT7 件、SR1 件、その他 1 件の研究が採用 された。検討の結果、入院時は胎児心音の間歇的聴診で良いと言えるだろうとしながらも、スクリ ーニングとして入院時にCTG の装着を行い、入院時の胎児の健康状態と分娩開始後のリスクを評価 することが望ましいとしている。 上記以外のエビデンス 3 件の RCT を吟味した SR(Gourounti, 2007)1 件を採用した(n=11,259)。それによると、産科的 にローリスクの女性が分娩入院時に CTG を装着すると、間歇的な胎児心音の聴取を受けた女性よ りも、器械分娩(RR 1.1 [95%CI: 1.02, 1.18])と帝王切開分娩(RR 1.2 [95%CI: 1.00, 1.41])が高い傾 向があった。一方、入院時のCTG が 5 分後のアプガースコア 7 未満に関しては、有意差はなかっ

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た(RR 1.35 [95%CI: 0.85, 2.13])。これらから Gourounti らは、産科的にローリスクの女性に対して、 新生児に関するアウトカムが明確になるまでは、入院時にルチーンで CTG を用いるべきではない としている。 4 本の RCT(n=13,296)をレビュした Devane ら(2012)のコクラン SR を採用した。それによると、 合併症のリスクが低い女性に対して、入院時に CTG を装着した場合は、間欠的な胎児心音の聴診 と比較して、分娩中の持続的なCTG の装着(RR 1.30[95%CI: 1.14, 1.48])と、胎児血サンプリングRR 1.28 [95%CI: 1.13, 1.45])の割合が有意に多くなる一方で、帝王切開、器械的な経腟分娩、胎 児および新生児死亡などに両群に有意差はなかった。これらから、Devane らは分娩時にリスクの低 い女性に対する入院時のCTG は用いられるべきではないとしている。さらに、入院時の CTG は利 益をもたらすというエビデンスがないにも関わらず、帝王切開の割合を増加させる可能性があると いうことを女性に情報提供すべきであるとしている。 Note: CTG において、心拍数基線(FHR baseline)と基線細変動(baseline variability)が正常であり、 一過性頻脈があり、かつ一過性徐脈がないとき、胎児は健康であると判断する。 詳細は、産婦人科診療ガイドラインCQ411「分娩監視装置モニターの読み方・対応は?」を参照。

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CQ6 分娩期の間歇的聴取法と持続的モニタリングでは、母子の予後に違いがあるか?

【エビデンスと解説】 ドップラーによる間歇的聴取に比べ持続的モニタリングは、新生児痙攣のリスクを低下させるが、 脳性麻痺発症を有意に低下させるわけではなく、帝王切開や器械分娩(不必要な介入の場合も含む) の発現割合を高くするというエビデンスがある。 過去のRCT およびそれらの SR、また観察研究結果からは、分娩第 1 期には、ドップラーによる間 歇的聴診(活動期までは30 分ごと、活動期以降は 5~15 分ごと、1 回あたり 1 分以上)でも可と考え られるが、分娩第2 期およびハイリスクに移行する可能性がある場合(羊水混濁、胎児心拍異常、母 体発熱、児娩出前の出血、分娩促進剤使用時)は持続的モニタリングが必要である。 【根拠】 NICE ガイドライン 持続的モニタリングにより、新生児痙攣のリスクは低下するが、脳性麻痺発症には影響しない、 また帝王切開率は上昇するという、高いレベルのエビデンスがあるとし、以下の方法を推奨してい る。 ・低リスク妊婦での陣痛発来後は、あらゆる産科施設において、胎児心拍の間歇的聴診が奨められ る。 ・入院後、最初に聴診した後、診察ごとに聴診を行い、分娩開始を確認する。 ・分娩開始確認後は、陣痛発作のたびに間歇的な聴診を行うことが望ましい。 ・間歇的聴診にはドップラーまたはトラウベを用いることができる。 ・間歇的聴診から持続的分娩監視装置装着に移行する場合の基準としては、以下を参考にすること が望ましい。 -顕著な(significant)羊水混濁がある場合、または軽度な(light)羊水混濁があるが分娩進行状 況等から持続的モニタリングが必要と判断される場合 -間歇的聴診で胎児心拍異常が認められた場合(110 bpm 未満; 160 bpm を超える; 子宮収縮後の 心拍数低下) -母体発熱(38℃、または 37.5℃が 2 時間以上持続) -分娩中の鮮血 -オキシトシン使用時 -母親が持続的モニタリングを希望する場合 産婦人科診療ガイドライン 「分娩監視の方法は?」のCQ において、「以下の場合は原則、連続的モニタリングを行う。」と し、1) 子宮収縮薬使用中、2) 分娩第 2 期、母体発熱中、メトロイリンテル挿入中、無痛分娩中、 3) CQ411「分娩監視装置モニターの読み方・対応は?」の表において“監視の強化”以上が必要と判 断された場合、4) ハイリスク妊娠、5) その他、ハイリスク妊娠と考えられる症例(コントロール 不良の母体合併症等)が挙げられている。

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科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン ローリスク産婦の分娩進行中は、持続的モニタリングまたはドップラーによる間歇的な聴診を、 分娩第1期は陣痛が強くなったときまたは活動期、および分娩第2期に実施することが奨められる。 分娩進行中に、厳密な意味で連続CTG(持続的モニタリング)をしている病院は少なく、ルチー ンで持続的モニタリングを行う群と、そうでない群(持続的モニタリングを行わない群、間歇的に 聴診を行う群、間歇的にCTG を行う群のいずれか)とを比較した論文は少ない。他のメタアナリシ スでは、持続的モニタリング群とそうでない群の比較では、持続的モニタリング群の方が新生児痙 攣の相対危険度が有意に少なく、持続的モニタリング群では帝王切開と器械分娩が有意に増加して いた。ローリスク産婦においては、分娩期に5~15 分毎の間歇的な胎児心音聴取と持続的モニタリ ングの結果と有意差が認められず、ローリスク例を含む全例の持続的モニタリングの必要性は認め られない、また、脳性麻痺のリスクを示すモニター所見で脳性麻痺があったのは持続的モニタリン グ群の僅か0.2%で、分娩連続モニタリングによって脳性麻痺の偽陽性率が高い(99.8%)。ローリス ク産婦を対象とした分娩進行中のRCT では、助産師または看護師が産婦を 1 対 1 で対応する条件の 下で、分娩期に5~15 分毎にドップラー胎児心音計による間歇的心音聴診した場合、周産期死亡率、 児の1 分後アプガースコア、臍帯血 pH、等に CTG モニターの結果と変わらない。 上記以外のエビデンス 12 試験(n>3,7000)をレビュしたコクラン SR では、「CTG を用いた持続的分娩監視」と「間歇 的聴取(分娩監視なし、トラウベまたはドップラーで間歇的に聴取、CTG で間歇的に聴取、のいず れか)」を比較したところ、持続的監視により、新生児痙攣は有意に低下(RR0.50[95%CI: 0.31, 0.80]) したが、周産期死亡は低下傾向(RR0.85[95%CI: 0.59, 1.23])を示したものの有意な低下ではなかっ た。持続的モニタリングにより発生リスクが有意に増加したのは、帝王切開(RR1.66[95%CI: 1.30, 2.13])、器械分娩(RR1.16[95%CI: 1.01, 1.32])、自然分娩ができない(RR.27[95%CI: 1.19, 1.36])、全 身麻酔を含む麻酔を要した割合(RR1.09 [95%CI: 1.01, 1.18])であった。 Graham らによる 2006 年の SR では、ヒストリカル・コントロールを用いた比較研究結果から、 115,096 分娩のデータを分析し、分娩時死亡割合は EFM(Electronic Fetal Monitoring)を用いた場合 1.5/1,000、間歇的聴取の場合 2.5/1,000、新生児死亡割合は EFM を用いた場合 8.1/1,000、間歇的聴取 の場合14.7/1,000 であったと報告している。ただしヒストリカル・コントロールを用いたこの研究 は1979 年に行われたものである。

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産痛緩和法

産痛とは、分娩時の子宮収縮、軟産道開大、骨盤壁や骨盤底の圧迫、子宮下部や会陰の伸展などに よって生じる下腹部痛や腰痛などの疼痛の総称である(日本産科婦人科学会, 2008)。産痛の緩和は、 分娩期のケアとして非常に重要である。産痛緩和の方法として、硬膜外麻酔の他に、体位変換、マッ サージ、指圧・鍼、呼吸法、温罨法、入浴等、様々な方法が存在する。硬膜外麻酔とは、硬膜外腔に 薬液を注入し脊髄神経根をブロックすることで産痛を緩和する方法である。マッサージや指圧・鍼、 温罨法は、Melzack と Wall の唱えるゲートコントロール説を根拠に行われている産痛緩和法と考えら れる。体位変換や呼吸法、温罨法、お湯に浸かることは、副交感神経を刺激しリラックスし血行を促 進することで筋緊張がとれることで産痛緩和につながるというリード理論に基づいている。 ローリスク妊産婦への分娩期ケア調査(清水, 2011)によると、産痛緩和法として最も多くの施設で 採択されていたのは、体位変換(94.5%)であり、続いてマッサージ(87.7%)、温罨法(73.9%)、歩 行(60.9%)、指圧(58.1%)、アロマセラピー(50.2%)、入浴(45.1%)であった。 硬膜外麻酔については、ほぼ全例に行っていると回答した施設は1 か所の病院のみで、ケースによ り実施している施設は、病院では 31.6%、診療所 31.3%であった。入浴をケースにより実施している 施設は、病院47.5%、診療所 21.2%、助産所 91.3%であり、施設の種類によって差があった。産婦が自 由に動けるというケア方針をとっていたのは、病院83.8%、診療所 63.6%、助産所 98.6%であった。

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CQ7 硬膜外麻酔の効果と副作用は?

【エビデンスと解説】 硬膜外麻酔による産痛緩和効果はほぼ確実であり、分娩第1 期時間が短縮するという利益が期待さ れる反面、器械分娩が増加する可能性があるとのエビデンスが得られている。 硬膜外麻酔分娩を希望する妊婦に対しては、産痛緩和効果とともに、硬膜外麻酔による器械分娩の 増加等に関する情報提供を十分に行ったうえで、かつリスクに十分対応できる施設で行う必要がある。 【根拠】 NICE ガイドライン メキシコにおける1 件の RCT(n=129)の結果から、硬膜外麻酔あり群のほうがなし群よりも、 分娩第1期の時間が有意に短かったが、分娩第2期の時間では有意な差は認められないとしている。 なお、痛みの軽減に関しては、非常に痛かったと答えた妊婦の割合が、硬膜外麻酔あり群 9%、な し群100%であった。 産婦人科診療ガイドライン 記載なし。 科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン 産婦は分娩中の産痛が緩和されるようにケアを受けることができる。医療従事者は、出産施設に おいて産痛緩和法にどのようなものがあり、どれができるかについて、妊娠中から情報を提供され、 状況が許す限り、産婦が選択できるようにすべきである。医療従事者は、様々な産痛緩和法を熟知 して、それを実施する場合は安全面に配慮して観察を行う必要がある。さらに、必要に応じて家族 に産痛緩和法を教育し、家族も主体的分娩に臨めるように援助する。 硬膜外麻酔は実施された産婦の7 割以上の者が鎮痛効果を認め、満足度も高い。しかし、分娩第 2 期の胎位の異常、微弱陣痛、吸引、鉗子分娩が多くなる可能性がある。麻酔分娩にかかるコスト は通常の分娩と比べて高く、施設により幅がある。 上記以外のエビデンス 21 試験(n=6,664)をレビュしたコクラン SR を採用した。産痛緩和を希望する妊婦に対する「硬 膜外麻酔」と「局所麻酔以外の産痛緩和方法または産痛緩和なし」を比較したところ、器械分娩割 合が有意に増加する(RR1.38 [95%CI: 1.24, 1.53])、帝王切開割合は有意ではないがやや増加傾向RR1.07 [95%CI: 0.93, 1.23])、7 分時点での低アプガースコア児の割合は減少傾向(RR0.70 [95%CI: 0.44, 1.10])、という結果が得られた。

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CQ8 分娩第 1 期にお湯につかることは、産痛緩和効果があるか?

【エビデンスと解説】 分娩中にお湯につかることによって、分娩第1 期の所要時間が短くなっており、分娩第 1 期の産痛 緩和効果も認められた。 最新のコクランSR より、分娩第 1 期にお湯につかった場合、分娩第 1 期の所要時間が短くなって おり、硬膜外・脊椎麻酔の使用頻度が減少し、産痛緩和効果が認められた。また、お湯につかるのは、 分娩第1 期の早い時期よりも、子宮口の開大 5cm 以上が、より産痛緩和効果は大きかったといえる。 よって、上記のエビデンスに基づいて、臨床で適用するに当たり選択肢の一つとなりうると考える。 なお、本ガイドラインでは分娩第1 期にお湯につかることの効果について検討したが、今後お湯に つかること以外の足浴などの産痛緩和効果や、分娩時の水中出産の効果などとあわせて母子の安全性 に関する研究を重ねていく必要がある。 【根拠】 NICE ガイドライン SR1 件(8 件の試験を含む)、RCT1 件、横断研究 1 件がレビュの中に含まれた。分娩進行中の母 児の合併症や介入における差異の根拠はなかった。横断研究では、水中出産で生まれた児の新生児 室へ入院率が有意に高いという報告があった。分娩第2 期の水中出産利用については、新生児のア ウトカムは根拠が不十分であるとし、水中出産について、よいか悪いかを示す根拠は不十分である ことを、女性たちは知らされるべきであると推奨している。 産婦人科診療ガイドライン 記載なし。 科学的根拠に基づく快適な妊娠・出産のためのガイドライン SR1 件が採用された。分娩第 1 期の入浴(お湯につかること)の効果として、硬膜外麻酔などの 使用、痛み、次回の妊娠・分娩を望まない割合の減少が認められた。分娩第2 期の入浴の効果とし て、分娩の満足感が認められた。分娩所要時間、会陰切開、鉗子・吸引分娩、帝王切開、第 3・4 度会陰裂傷、アプガースコア5 分値、新生児集中治療室入院、新生児感染率に有意な差はなかった。 入浴の時期(前半群は後半群と比べて)の効果は、硬膜外麻酔、オキシトシンの使用は後半に入浴 した方に効果的であった。以上の結果から、入浴による産痛緩和の効果は、推奨の強さはB として いる。 上記以外のエビデンス 12 試験を検討したコクラン SR(Cluett et al., 2012)を採用した。分娩第 1 期にお湯につかること については、お湯につかった方が分娩第1 期の所要時間が短く、硬膜外・脊椎麻酔の使用も少なか った。また、疼痛も有意に少なかった。分娩様式、帝王切開、人工破膜、オキシトシンの使用、会 陰切開、第2 度会陰裂傷、第 3・4 度会陰裂傷、感染には有意な違いは認められなかった。 分娩1 期の早い時期(子宮口開大が 5cm 未満)と遅い時期(子宮口開大が 5cm 以上)にお湯につ かった場合の比較では、早い時期にお湯に使った群に硬膜外麻酔の使用率が有意に高く、分娩促進 剤の使用も有意に増加していた。

参照

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