3種
類 の ジャンプ試行 にお ける創作 ダ ンス学習経験 の特性
保健体育教室
佐 分 利
育 代The Features of Experience of Learning Cleative Dance,
on the Case of Tring 3 Jamps.
Ikuyo SABURI
1.目
的
「楽 しい体育」 によって,創
作ダンス も手段 を離れ,そ
の ものを楽 しむ ことで特性 を発揮で きる ようになった。 「楽 しいだけで よいのか」「何 を教 えてよいのかわか らない」「よい動 きを教 えな くてよいのか」 これ ら10年目の「楽 しい体育」への疑間 は40年以上 にわたるダンス教育,特
に創作ダンス指導の課 題であった。学校 におけるダ ンスが既成作品か ら創作 に移 った当時 は,「児童 中心,与
えるのではな く取 り出す ところにその意味がある」うとの教育理念 を掲 げなが らもなお,創
作 の場合 には動 きの根 本 となるべ きもの として「基本運動」 の訓練 の重視 をとなえ,「合理的な運動」「舞踊する身体」 を 練 る内容 を無視で きなかったり314j9が,「子 どもの内的欲求 に基づいた,創
る,踊
る,観
るのダンスの まるごと体験」「子 どもの体験 と照 らしなが らの課題設定 と指導法の具体化」など,個
に応 じた,個
性 を生かす指導が研究 され,客
観化 され,現
在で はかな り現場 にも浸透 して きたように思われる。 今回の指導要領改訂 は,創
作 ダンスにとって また一つの転換期 をもた らした。様々な種類 のダン スか らの内容 の選択 と,体
育 の一領域 としてのダ ンスその ものの選択性の導入である。新 たな,し
か し,創
作ダンスが40年間引 きずって きてさらに深刻 にな りそうな問題が クローズアップされた。 それ は,創
作ダンスが子 どもたちに体験 され るか どうか。ダ ンスが生徒ではな く指導者 に選択 され るか どうかの問題である。 学習内容,指
導の手がか り,指
導過程が明 らかにされて きた必修 の時代 にさえ,「何 をどう教 えた らよいのか」問われ続 け,か
な り多 くの指導者 に選択 されなかった。指導者が学習の場 に持ち込 ま なければ,創
作 ダンスの経験 は子 どもに届かない。三浦0や新開谷のが指摘す るように,小
学校での ダンスの特性 に触れ る学習経験 な しで は中学校での生徒 自身 による選択 は不可能であ り,男
女の共 修 に限 らず生徒相互 の良 さを生か し合 う学習 も成立 しに くい。 学習内容 の具体化 に加 えて何が明 らかにされれば指導者がダンスを,そ
の中で も教 えに くい とさ れている創作 ダンスを選択す るのであろうか。 このことが創作ダンスにとっての新たな,そ
して古 い問題である。112
佐分利育代:3種
類のジャンプ試行 における創作ダンス学習経験の特性 学習経験者の意識調査 によるプラスヘの変化 もこれ まで多 く報告 されているが指導 を経験 してい ない教師に対する創作 ダ ンス選択への説得力 は今一つだつたように思 える。 これに対 し柴 は体育学 会41回大会で大学生 を対象 にダ ンス学習 における創造性 の陶冶 に関 して,S―A創
造性検査 による経 験者 と未経験者の資料 を提供 した。創作 ダンス学習の特性 を,他
の領域で は得 られない経験がある ことで示 そうとした もの として注 目で きる。 手段 としてで はな くその ものを楽 しむ中で,子
どもたちが体験で き,自
分の もの として獲得で き るものは何か。倉U作ダンス学習の特性 とされている「創造性」や「個性」「表現性」力`どんな形で子 どもの ものになるのか。 それ は子 どもの運動観 とどう関わ るのか。他 の領域で は得 られない特性が 本当にあるのか。 これ らに対す る客観的な資料 はまだ充分 に示 されていない。 これ らが具体的に示 されず一般的な観念 だけで は,経験 のない指導者 には教材研究 に向か うだけの意欲 につなが らない。 実際の調査で も,「表現 も運動 も他 の もので間に合 う」と考 えてい る指導者があ り,ダ
ンスの特性 を 具体的には理解 していない指導者 の存在 も明 らかであったり。選択制 とい う公 の指示 を得て,指導者 によって創作 ダンスが選択 されな くなる恐れは多いにある。創作 ダ ンスのみでな く,フ
ォークダン ス,そ
して準備運動 にされて しまいがちな リズ ミカルなダンスについて も,そ
の特性 を子 どもたち が本当に楽 しめるためには同 じ問題 を明 らかにしてい く必要がある。 今回は,創
作 ダンス学習で学習者が体験 し獲得す るものは何か,体
育の他 の領域で は得 られない ものはあるのかについて,学
習経験者 と未経験者の運動試行 の比較 よ り,検
討 したい。2.方
法 《方法》1単
元 の創作 ダンス (表現運動)学
習 を経験 した小学校3年
生 と,未
経験 の小学校3年
生 を対象 に,「3種
類 のジャンプ」を課 し,下
記 のような験者 による同一 の導入で練習 させた後,一
人ずつ試 技 させ,ビ
デオテープに収録,何
を変化 させて3種
類 のジャンプを行 っているか,形
態,空
間,時
間,力
の要因に関 して分析 し,そ
の特性 を比較検討する。 ダンス学習 を経験 していない子 どもにもダンス的な意味 を持 たせずに課す ことがで き,調
整力, 筋力等運動実施能力 の凝縮 された もの との観点 よリジャンプを とりあげ,創
作 ダンス経験 の特性 と されている「創造性」や「個性」「表現性」の具体例 として,い
ろいろなジャンプがで きるという視 点 よ り,「3種
類 のジャンプ」 を運動試行 の課題 として選択 した。 ・ 導入 (実験)過
程1.実
験 内容 の説明2.準
備運動(一
斉 に行 う) 走・・ ウォームア ップ 速 さや方向を変 えて スキ ップ・・ 高 さ,大
きさを変 えて のびる,ち
ぢむ 。・ 全身で動 く 力 を入れて たおれ る 。・ 全身で動 く 力 を抜いて (一斉 に行 う) 験者 の合図で一つづつ くぎって練習 連続で3種
類 のジャンプをしてみる3. 3種
類 のジャンプの練習4.ビ
デオカメラの前で一人ずつ3種
類 のジャンプを行 う鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 34巻 第
1号
(1992)
■3 《対象》 ・ 創作ダ ンス学習経験者68名
鳥取市内H小
学校3年
2組
男子19名,女
子10名(ク
ラスA(C.A))
軽 くて柔 らかい感 じの学習 を中心 に,た
んぽぽ,し
ゃばん玉,風
船 な ど の表現や,作
品づ くりを経験。それ らしい動 きの探求や,具
体的な動 きの イメージを持 っての作品構成 と表現 を行 った。6時
間 指導.森
本愛彦教諭 鳥取市内S小
学校3年
1. 2組
男子20名,女
子19名 (クラスB(C.B))
軽 くて柔 らかい感 じ,激
し くて強い感 じの学習 を中心 に,新
聞紙,忍
者, 河,海 ,花
火 な どの表現 を経験。河,海,花
火 は,作
品「忍者 だぞ―」 と して まとめ,学
習発表会で発表。 「新聞紙」2時
間 「忍者 だぞ―」約5時
間 指導.仲
野知子教諭 ・ 創作ダンス学習未経験者30名
鳥取市内H小
学校3年 1組
男子21名,女
子11名(ク
ラスC(CoC)) 表現運動以外 は3年 2組
とほぼ同じ領域 を学習。 《期 日》S小
学校 (C.B)1989年12月 19日H小
学校 (C.A)1989年11月25日 (CoC)1990年2月 3日3.結
果3種
類 のジャンプ とい う課題 に対 して同 じジャンプを3回繰 り返 した子 どもはC.Bで 1人 ,C.Cで
2人
で,残
りの子 どもは何等かの方法で3種
類 と思 えるジャンプをしていた。 ジャンプをどのように変化 させて3種
類 としているかを,運
動の形態,空
間,時
間,力
の表現要 因で分析 した。それぞれの子 どもの3回
のジャンプ間の相違 について再生 した ビデォ よ り使われた 要因 をとりあげると表1のようであった。 (1)形態の変化 イ.変
化 させた身体部位 形態 を変化 させ るのに,身
体 の どの部位 を使 っているかを見 ると,図
1のようであった。 ダンス学習経験群 では,脚
と腕 の両方 を変化 させて3種
類のジャンプ としているのに比べ,未
経 験群で は脚 だけの変化が多 く,腕
も変化 させている者 は約40%で
しかなかった。同 じように胴や胸 などの体幹 を変化 させている者が未経験群では少なかった。経験群では体幹 も使 い,指
先 まで伸 び た全身でのジャンプが多 く,未
経験 のクラスには腕 の振 りや全身のバネをを使 っていないジャンプ114
佐分利育代:3種
類 のジャンプ試行における創作ダンス学習経験の特性 表1
変化の要因 100孝 90 8C 70 60 50 40 30 20 10 0 クラス 身体部位 体幹顔・頭
手・肘 劇同`胸・背中) 変化 させた身体の部位 学 習 経 験 者 学習未経験者 要
因 C.A 44人 人 (%)
CB 39人
人 (%)嵌
∽
,C 人 C 形態 のみ2(4.5)
3(7.7)
5(16.7) 空間のみ2(4.5)
形態 と空間29(659)
13(33.3) 19(63.3) 形態 と時間1(3,3)
形態 と力1(26)
2(67)
形態 と空間と力 10(22,7) 20(51.3) 形態 と空間と時間1(3.3)
形態 と空間と時間と力1(2.3)
1(2.6)
変化させていない1(2.6)
2(67)
図 1鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第34巻 第
1号
(1992) ,115
が多かった。 さらに経験群で は手先や指 までジャンプごとに変化 しているもの もあった。 口.変
化 させた身体部位 の数 図2は
身体 のい くつの部位 を変化 させているか を見 たものである。 ダンス学習未経験群で は身体 の うち lヶ 所変化 させている者 と2ヶ 所変化 させている者が40%ず
つであったのに対 し,経
験群で は 3ヶ 所以上 の身体部位 の形 を変化 させてい る者がC.Aで
61.4%,C.Bで
71.8%も あった。 CA Z CB CC 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100ワ ` 図2
変化 させた身体部位の数 ハ.ジ
ャ ンプの頂点 での身体 の形 ジ ャンプの際,そ
の頂点で身体 が作 った形 が対称 か非対称 か をみ る と表2のよ うで あった。 経験群 に非対称 が多 い ことがわか る。 空 中で,非
対称 の形が作 れ る とい う,「 い ろい ろな」とこ対 す る発想力 と,様
々 な身体部位 を意識 し なが らジ ャンプ とい う運動 を行 う調整力 に関す る経験 の機会 が,ダ ンス学習場面 で はあ る とい える。 表2 3種
類のジャンプの形にみ られる対称,)'対称 C.A C.B C.C 左右対称 が全部 0人 5人 14人 非対称 が 1つ 11 非対称 が2つ 5 非対称 が全部 二.着
地時の身体 の形 経験群 のC,Aで
22人,C.Bで
21人に手やお しりや背中,腹
や胸で着地するジャンプが1種
類以上 み られた。ダンス学習未経験群で は2人
にそのような着地がみ られただけで,残
りの者 は足で着地 していた。経験群 の足で着地 しないジャンプはそれで も決 して不安定 さや未熟 さを感 じさせ るもの ではな く,充
分 コン トロール された極限の運動 によってなされた ものであった。 着地 はジャンプの結果で はあるが,こ
こにも「い ろいろな」 に対する要素が含 まれていた。明 ら かに着地での形 を予想 した と思 えるジャンプ (落ちるジャンプ)や
,滑
り込む着地,着
地 の方に面 白さをア ピールす るかのようなジャンプな ども経験群 にみ られた。 アンバ ランスを楽 しみ,重
心の移動のままに身 を投 げ出す ことがで きるのが経験群 の特性 と言 え る。 変化 させていない116
佐分利育代:3種類のジャンプ試行 における創作ダンス学習経験の特性 (2)空間の変化 身体 の形だけでな く,身体 の向 きや運動 の方向な どの空間要因の変化 は経験群 の大部分 (C.A42人(95.5%),C.B34人 (87.1%)),未
経験群 に も多 く(C,C20人(66.7%))み られたが,変
化 させ るため の運動の内容 に大 きな違いがあった。(表3) 未経験群 (C.C)のほとん ど(90%)が
その場で 自転 しなが らジャンプする,回
転 によるもので踏 み切 り位置 と着地位置が変化 していなか った。それ も腕 や身体 の捻 り,反
りとい うものを使わない, 膝 の屈仲 さえも少 ない足だけでのまっす ぐな ものがほ とん どだった。 これに対 し創作 ダ ンス学習経 験群で回転のみを変化の要因にしているのは,C.Aで
16人(38.1%),C.Bで
10人 (29。4%)だ
けで あ り,残
りの者 は身体全体 を捻 って回った り,様
々な方向に飛び出す等の変化があった。経験群で は前や斜 め前 に飛 び出す者が多かった。 うしろや斜 めうしろに反 ったままで跳ぶ者や,身
体 の横方 向に跳び出す者,下
に落ちるジャンプをす る者 もいた。 これ ら空間に跳び出すジャンプは,ダ
ンス 未経験 の子 どもにはとて も少な く,経
験者で はかな りの子 どもにみ られた特性である。 すなわち,経
験群 は自分 自身の身体 の形 だけでな く,自
分 を取 り巻 く空間 をも自分 の運動 の結果 変化 させ られ るもの として とらえている と思われた。また,表
現,観
て もらう運動 としての学習が, 空間 (特に方向)を
使 うという知識 を与 えた とも考 えられ る。 その考 えが学習未経験者 には無い と いえる。 表3
空間の変化の内容 とそれを使 った人数C.A 42人
C.B 34ノK(CC 20ノ
A、 回 る33人
方向 前7
斜 め前2
後 ろ6
斜 め後 ろ2
横1
下 (落ち る)4
回 る21人
方向 前10
斜 め前6
後 ろ1
斜 め後 ろ1
横 3 下 (落ち る)12
回 る18人
方向 前1
斜 め前1
下 (落ち る)1
(3)力の変化 力の要因に関 して は,C.Bで
半数の者 にその変化が認 め られた。(表1) 一つ目のジャンプに比べ,フ
ワリととか,フ
エ ャッ,あ
るいは突 き上 げる,た
た き落 とすな どイ メージを感 じさせ るジャンプは明 らかに力の要因 を変化 させていると思われた。脱力 と緊張 の違い, 力の込 め具合 いを自覚 して変化 させている。中には時間の要因 と一緒 になって リズムが変化 してい る3つのジャンプをしている者 も2人
で はあるがあった。 (4)経験群間 にみ られた違い 経験者群 のC.Aと C.Bの
間にも以下のような相違点があった。 イ.C.Aに
は形態 と空間 を変化 させているものが多 く(表1),C.Bで
は力の要素 も加 わった変化 が多い。 口.体
幹 を使 っての変化がC.Bの
方に多い。(図2) ハ.C.Aに
は左右が非対称 の形 をしたジャンプを2つ以上 した者がC.Bに
比べ大変多 い。(表 2) 二.方
向の変化 の中でC.Aに
は後 ろへのジャンプ,C.Bに
は下 に落 ちるジャンプが多い。(表3)鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 34巻 第
1号
(1992) これ らの相違 は,ク
ラスの運動 の印象 としてビデオテープを観賞 した第3者
によって もあげられ た。すなわち,創
作 ダンス学習経験者の3種
類 のジャンプの共通 の印象「ダイナ ミックな」 に加 えC.Aは
「 しなやかな」「舞 のような」,CBは
「伸 ぴ伸 び した」「死闘編」 とい う評価 を得た。 第3者
による観賞 とは1単
位 のダンス学習 を経験 した大学生3人
にビデオ を見せ,非
験者一人ず つの3種
類のジャンプについて印象 を書かせた後,各
クラス毎 の印象 を聞いた ものである。 このクラスによる運動の違い は,学
習内容 の違 いによると思われ る。C.Aで
は,
リズム言葉 な ど によって感 じの出る動 き,イ メージによって深 めた動 きの探求 をかな り熱心に行 っていたし,C.Bは
, 新聞紙 に変身,忍
者 に変身 して花火 にさらに変身す るな ど身体 ごとな りきる学習が中心であつた。 学習内容 と,学
習者 の運動 の特性 についてはさらに改 めて検討 したい。C.Cの
ジャンプに対 する3人
の観賞者 の印象 は,「かたい」 というのが共通 していた。5.ま
と め 創作ダンス学習経験群 は,未
経験群に比ベジャンプの種類 を変える要因に関する情報を沢山持っ てお り,そ
れ らを複合 させて3種
類のジャンプを行 っていた。学習経験群 と未経験群の3種
類のジ ャンプの実施 における違いは,具
体的には次のような内容 として現れていた。 [経験群] ・ 脚 と腕,体
幹 を使 って ジ ャ ンプ し,そ
れ 一 ぞれ の形 を変化 させ てい る 。多 くが3ヶ所 以 上 の身体 部位 を使 って ジ ー ャンプ を変化 させ てい る 。ジャンプの頂点で左右非対称 の形 を作れ 一 る ・ 身体 の形 だ けで な く空間や力 を変化 させ 一 てい る [未経験群] ・ 脚 だけの変化が中心で,腕
や体幹 を変化 させている者 は半数以下 ・1∼
2ヶ 所 の身体部位 の変化が多い 。ジャンプの頂点の形 は左右対称が多い ・ 空間の変化 は自転 による向 きの変化でジ ャンプの方向 は真上が ほ とん ど 。身を投げ出 し,身
体 の様々な箇所で着地 ― ・ 足での着地がほ とん ど している すなわち,運
動 を創 るとい う点で は,「全身で,特
に腕 や体幹,身
体 の左右や細部 までその形 を変 化 させ られ るもの ととらえてい るかいないか」「自分 自身の身体 の形 だけでな く空間をも自分 の運動 の結果変化 させ得 るもの として とらえているかいないか」 の違い として, また,運
動 を行 うとい う 点では,発想通 りに全身 を使 って運動で きるか どうか に力日えて,「身 を投 げ出せ るか投げ出せないか」 の違い としてみることがで きた。 創作 ダンス学習 を経験 した子 ども達のジャンプか らは,自
分の身体 をコン トロール しなが らも一 方で身 を放 り出す とい う運動 その ものの面 白さに身 を委ねている様子が うかが えた。 あたか も身体 その ものが運動であ り,心
と身体が一つになってエネルギーの変化 を楽 しんでいるかのようであっ た。その結果が脚 だけでな く腕や体幹,手
や指先 まで に神経の行 き届いた,左
右非対称 の,空
間 を 動 き回 る,そ
の子 どもだけの個性的な運動である。松本 はダ ンスでの運動 とイメージの相互関係 を佐分利育代
:3種
類のジャンプ試行 における創作ダンス学習経験の特性 通 しての学習者 の体験 を「 リズムにのって,全
身 をなげだす楽 しみ」 と「湧いて くる動 きか ら身体 が語 る」 と表 しているりが,そ
の具体的な例 をこの結果 にみることがで きた。 創作 ダンス未経験 の子 どもに とって, 3種
類 のジャンプ とい う運動課題 と子 ども自身 は全 く別々 に存在す るものであった。そして,子
ども自身 は,あ
くまで もジャンプ とい う運動 を行 っていた。 これに対 して創作 ダンス学習経験群 は,「3種
類 のジャンプをいかに行 うか」とい うだけでな く,「身 体がジャンプす る」あるいは「 自分 自身がジャンプす る」とい う感覚がみ られた。「 ジャンプの中に 自分 をいかに表現す るか」「 ジャンプのイメージをその空間に どの様 に描 き出すか」とい う運動試行 であった と思われ る。 この運動観 は他 の運動領域 にはない創作 ダンスな らではの もの として, 1単
元の学習で子 どもたちが得た運動 の価値観 ともいえる。 中学校,高
等学校での選択制 と男女共修の導入 は,男
女の違いをも個性 の範中 とした生涯スポー ツヘの対応 とされてい る。片岡暁夫 は,「舞台にどのような世界 を作 り出すか」をダンス的な課題 と し,ス
ポーツ,ダ
ンス,体
操 の本質的な特徴 を融合 した生涯 スポーツのための基礎教育 を論 じてい る10が,ダ
ンスの特性 に触れ る学習の機会 を小学校段階でぜひ確保 したい。 今回 は,ダ
ンス的な意味 をもたせずに行わせたにも関わ らず,比
較 の観点 を運動の表現要因に置 いて行 った。授業時間内 とい う制約があ り,特
別 な設定 をしての実験 には限界があった結果で はあ るが,今
後 さらに筋電図や呼吸 との関わ りにおいて も運動試行 の様子 を比較検討す る必要がある。 「′いと一体 となった」動 きは見 えだけでな く,呼
吸 と一体 となった動 きとして現れるはずである。 また,ジ
ャンプ以外 の運動や,表
現的な運動,ま
た他のダ ンスについて も,未
経験 の非験者が得 ら れな くなることを願 いつつ検討 を進めたい。引用・ 参考文献
1)神
野寛 これか らの学校舞踊 太平社 19492)伊
澤ヱイ 学校ダンス 金子書房 19503)松
本千代栄 舞踊教育―ケ年をぶ りかえって(1948)舞踊教育 松本千代栄教授退官記念集 19854)江
口隆哉 学校 における舞踊 明星社 19475)邦
正美 舞踊概説 京都学校舞踊研究所 19486)三
浦弓杖 表現運動・ ダンス (創作型)の考え方・扱い方 学校体育 1990/3 p10137)新
開谷央 新要領 における「表現運動・ ダンス」をめぐる問題 学校体育 1990/3 p29318)佐
分利育代 井上茂子 聾学校におけるダンス学習指導 鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第33巻 第 1号 p.6579 松本千代栄 表現の世界 大修館書店 1985 片岡暁夫 生涯スポーツのための基礎教育 とは何か 学校体育 1990/1l p 17-19 (1992年4月20日受理) 9 10鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 34巻 第