ニッセイ基礎研究所 2010-05-14
個人消費の回復を後押しする政策以外
の要因
~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落
経済調査部門 主任研究員 斎藤 太郎
(03)3512-1836
[email protected]
▲15%
▲10%
▲5%
0%
5%
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20%
25%
0601 0604 0607 0610 0701 0704 0707 0710 0801 0804 0807 0810 0901 0904 0907 0910 1001
鉄道、バス、タクシーの利用回数
(前年比)
(注)利用回数は購入頻度(100世帯当たり)、3ヵ月移動平均
(資料)総務省統計局「家計調査」
(年・月)
バス 鉄道
タクシー
▲25%
▲20%
▲15%
▲10%
▲5%
0%
5%
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15%
20%
25%
0601 0607 0701 0707 0801 0807 0901 0907 1001
▲15
▲10
▲5
0
5
10
15
タクシー利用回数(前年比)-バス・鉄道利用回数(前年比)
節
約
志
向
低
(注)バス・鉄道利用回数(前年比)は両者の平均値
高
(前年比) 消費者の節約志向は一段落か (前年差、ポイント)
(年・月)
消費者態度指数(右目盛)
(資料)総務省統計局「家計調査」、内閣府「消費動向調査」
1. 個人消費はエコカー減税・補助金、エコポイント制度などの政策効果を主因として、2009
年春頃から回復を続けている。
2. ここにきて政策効果は一巡しつつあるが、雇用・所得環境の持ち直し、消費者心理の改
善といった政策以外の要因が個人消費の押し上げ要因となっている。
3. 消費者の節約志向が一段落したことも明るい材料のひとつである。2008 年秋のリーマ
ン・ショック以降、支出を切り詰めるためにタクシーの利用を控え、バス、鉄道の利用
に切り替える動きが見られたが、ここにきてバス、鉄道の利用回数が減る一方、タクシ
ーの利用回数が増えている。また、外食の平均単価は下がり続けているが、外食の回数
が増えているため、家計の外食費は増え始めている。
4. 雇用・所得環境の持ち直しが続くことが見込まれるなか、6 月からは子ども手当の支給
も始まるため、2010 年度前半の個人消費は引き続き堅調に推移する可能性が高い。
5. 個人消費が正念場を迎えるのは、エコカー補助金、エコポイント制度の終了に伴う反動
減が懸念される 2010 年度後半と考えられる。その頃までに雇用・所得環境の改善が明確
なものとなることが個人消費の回復が持続するための条件と言えるだろう。
●政策効果が弱まる中、堅調を維持する個人消費
個人消費は 2009 年春頃から回復を続けている。GDP統計の家計消費支出は 2008 年 4-6 月期以
降、前期比で減少を続けていたが、2009 年 4-6 月期に 5 四半期ぶりに増加に転じた後は比較的高い
伸びを続けている。2010 年 1-3 月期の実績値は 5/20 に内閣府から公表されるが、当研究所では前
期比 0.9%と 10-12 月期の同 0.7%からさらに伸びを高めると予想している。
個人消費の減少に歯止めをかけたのは、言うまでもなく定額給付金、エコカー減税・補助金、エ
コポイント制度といった政策効果である。まず、約 2 兆円規模の定額給付金の支給が 2009 年 4 月
から本格的に始まり、個人消費の底打ちに大きく寄与した。2009 年 4-6 月期の家計消費支出は前期
比 1.2%の増加となったが、当研究所ではこのうち定額給付金による押し上げが 0.6%と試算して
いる。定額給付金の効果は 4-6 月期のうちにほぼ出尽くしたとみられるが、2009 年夏頃からは、エ
コカー減税・補助金、エコポイント制度の効果が顕在化し、自動車、エコ家電(テレビ、冷蔵庫、
エアコン)の回復基調が鮮明となった。
新車販売台数は 2009 年 8 月に前年比でプラスに転じた後、11 月以降は前年比 20%台の高い伸び
を続けており、エコポイント対象品目の中では地上デジタル放送対応への需要もあってテレビが特
に高い伸びを示している。テレビについては、エコポイント対象品目が 4 月から変更されたことも
あり、年度末にかけて駆け込み需要が発生し、2010 年 3 月には前年比で 300%近い急増を記録した
(実質、家計消費状況調査ベース)。
▲30%
▲20%
▲10%
0%
10%
20%
30%
0804 0807 0810 0901 0904 0907 0910 1001 1004
ハイブリッド車
その他普通乗用車
軽乗用車
新車販売台数(含む軽乗用車)の推移
(前年比)
(注)ハイブリッド車はプリウスとインサイトの合計
(資料)日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会
新車販売台数
(年・月)
▲50%
0%
50%
100%
150%
200%
250%
300%
0801 0804 0807 0810 0901 0904 0907 0910 1001
エコポイント対象品目の実質支出の伸び
(実質・前年比)
(資料)総務省統計局「家計消費状況調査」
テレビ
エアコン
冷蔵庫
(注)品目毎のCPIで実質化 (年・月)
ただし、自動車販売台数の伸びは 2009 年末
頃から頭打ちとなっており、季節調整値(当
研究所による試算値)で見ると、2010 年 1-3
月期には前期比▲2.6%と 4 四半期ぶりに減
少に転じた。
▲2.0%
▲1.5%
▲1.0%
▲0.5%
0.0%
0.5%
1.0%
1.5%
0801 0802 0803 0804 0901 0902 0903 0904 1001
自動車
エコポイント関連
その他
全体
(前期比) 実質家計消費支出の内訳
(注)エコポイント関連はテレビ、エアコン、冷蔵庫。家計消費支出の内訳は当研究所による試算値。 (年・四半期)
(資料)内閣府「四半期別GDP速報」、日本自動車販売協会連合会「新車販売台数」、総務省「家計消費状況調査」
政策関連 4 品目(自動車、テレビ、エアコ
ン、冷蔵庫)による家計消費支出の押し上げ
幅(前期比ベース)を試算すると、2009 年
7-9 月期には 0.5%まで拡大したが、10-12
月期が 0.3%、2010 年 1-3 月期が 0.2%と、追加的な押し上げ幅は徐々に縮小している。一方、政
策効果の恩恵を受けていない品目の伸びはこのところ高まっており、個人消費の回復は裾野の拡が
りを見せ始めている。
●雇用・所得環境は持ち直しの動き
政策効果が一巡しつつあるにもかかわらず個人消費が堅調を維持しているのは、政策効果以外の
要因が個人消費の押し上げ要因となりつつあるためである。
実質家計消費支出の変動を所得要因
(雇用者報酬、その他所得)、消費性向
要因、デフレーター要因に分けて見る
と、雇用者報酬は 2009 年を通して大幅
な減少が続き消費の下押し要因となっ
てきた。雇用者数が大幅に減少したこ
とに加え、2008 年度の企業収益の急速
な悪化を受けたボーナスの大幅減を主
因として一人当たり賃金も大幅な下落
が続いたためである。
▲8%
▲6%
▲4%
▲2%
0%
2%
4%
6%
0601 0602 0603 0604 0701 0702 0703 0704 0801 0802 0803 0804 0901 0902 0903 0904 1001
雇用者報酬要因
その他所得要因
デフレーター要因
消費性向要因
実質家計消費支出の変動要因
(前年比)
(資料)内閣府「国民経済計算年報」、「四半期別GDP速報」
(年・四半期)
(注)その他所得は財産所得、所得税、社会給付等
0902以降のその他所得、消費性向要因は予測値。1001は全て予測値。
しかし、雇用・所得環境の悪化はここ
にきて歯止めがかかってきた。2009 年 7 月に 5.6%と過去最悪を記録した失業率は 2010 年 3 月に
は 5.0%まで低下した。雇用者数は前年比で 1%台の減少が続いていたが、2010 年 1-3 月期には前
年比▲0.3%まで減少幅が縮小した(3 月単月では前年比 0.3%と 1 年 1 ヵ月ぶりの増加)。また、
大幅な下落が続いていた賃金も、残業時間の増加に伴う所定外給与の増加を主因として下落幅は大
きく縮小している。2009 年 10-12 月期の雇用者報酬は前年比▲4.5%の大幅減少となったが、2010
年 1-3 月期には前年比で横ばい程度まで改善するだろう。
5300
5350
5400
5450
5500
5550
0201 0301 0401 0501 0601 0701 0801 0901 1001
▲2.0%
▲1.5%
▲1.0%
▲0.5%
0.0%
0.5%
1.0%
1.5%
2.0%
2.5%
雇用者数の推移
(資料)総務省統計局「労働力調査」
(前年比)
(万人)
(年・四半期)
雇用者数
前年比(右目盛)
▲5.0%
▲4.0%
▲3.0%
▲2.0%
▲1.0%
0.0%
1.0%
2.0%
0401 0403 0501 0503 0601 0603 0701 0703 0801 0803 0901 0903 1001
特別給与
所定外給与
所定内給与
(前年比) 賃金の下落幅は急速に縮小
(年・四半期)
現金給与総額
(一人当たり)
(資料)厚生労働省「毎月勤労統計」
●消費者の節約志向が一段落
消費者心理の改善も個人消費の回復を後押しし始めた。2008 年度下期に個人消費の減少ペースが
加速したのは、消費者心理の急速な冷え込みが消費性向の大幅な低下をもたらしたことも大きかっ
た。しかし、消費者心理は景気底打ち、株価の持ち直し、雇用不安の緩和などから 2009 年春頃を
底に改善を続けており、消費性向も 2009 年度下期には上昇に転じたと見込まれる。
ここにきて、消費者の節約志向が一段落してきたことを示す動きも散見されるようになっており、
このことも消費性向上昇の一因になっている可能性がある。
たとえば、総務省の「家計調査」を用いて毎月のタクシー、バス、鉄道の利用回数を見てみると、
2008 年秋のリーマン・ショック以降、バス、鉄道の利用回数が大きく増える一方、タクシーの利用
が大きく減少するという動きが顕著となった。このことは、消費者の多くが支出を切り詰めるため
に単価の高いタクシーの利用を控え、バス、鉄道の利用に切り替えたことを意味しており、消費者
の節約志向の高まりを反映したものと捉えることができるだろう。
こうした動きは 2009 年秋頃まで続いたが、ここにきて両者の関係は逆転している。すなわち、
バス、鉄道の利用回数が前年比で減少に転じる一方、タクシーの利用回数は小幅ながらも増加に転
じている。
▲15%
▲10%
▲5%
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5%
10%
15%
20%
25%
0601 0604 0607 0610 0701 0704 0707 0710 0801 0804 0807 0810 0901 0904 0907 0910 1001
鉄道、バス、タクシーの利用回数
(前年比)
(注)利用回数は購入頻度(100世帯当たり)、3ヵ月移動平均
(資料)総務省統計局「家計調査」
(年・月)
バス 鉄道
タクシー
▲25%
▲20%
▲15%
▲10%
▲5%
0%
5%
10%
15%
20%
25%
0601 0607 0701 0707 0801 0807 0901 0907 1001
▲15
▲10
▲5
0
5
10
15
タクシー利用回数(前年比)-バス・鉄道利用回数(前年比)
節
約
志
向
低
(注)バス・鉄道利用回数(前年比)は両者の平均値
高
(前年比) 消費者の節約志向は一段落か (前年差、ポイント)
(年・月)
消費者態度指数(右目盛)
(資料)総務省統計局「家計調査」、内閣府「消費動向調査」
また、景気の急速な悪化を受けて、
外食を控え家庭で食事する内食志向の
高まりが指摘されることも多いが、最
近の外食費の動向を見てみると、平均
単価は依然として下落が続いているも
のの、外食の回数は 2009 年終わり頃か
ら増え始めている。
▲6%
▲4%
▲2%
0%
2%
4%
6%
8%
0701 0704 0707 0710 0801 0804 0807 0810 0901 0904 0907 0910 1001
外食の回数(=購入頻度)
平均単価(=1回当たり支出額)
外食費(学校給食を除く)の推移
(前年比)
(注)平均単価(1回当たり支出額)=支出金額/購入頻度で計算。3ヵ月移動平均
(資料)総務省統計局「家計調査」
外食費
(年・月)
足もとでは回数の増加が単価の下落
を上回ることにより、家計の外食費は
増加に転じている。
●正念場は 2010 年度後半か
このように、2009 年春以降の政策効果はここにきて弱まりつつある一方、雇用・所得環境の持ち
直し、消費者心理の改善、節約志向の一段落などが消費を下支えしている。
先行きの個人消費を取り巻く環境についてみると、好調な輸出を背景とした企業収益の急回復が
続いているため、企業部門から家計部門への波及が次第にはっきりしてくることが期待されること
に加え、6 月からは子ども手当の支給が始まり、家計の可処分所得を押し上げることが見込まれる。
雇用・所得環境の悪化が個人消費の腰折れにつながるリスクはここにきてかなり低下したと考えら
れ、2010 年度前半の個人消費は引き続き堅調に推移する可能性が高い。
個人消費が正念場を迎えるのは各種対策が期限切れを迎える 2010 年度後半だろう。エコカー補
助金は 2010 年 9 月末、エコポイント制度は 2010 年 12 月末に終了する予定となっており、その前
後には駆け込み需要とその反動減が生じることが予想される。その頃までに雇用・所得環境の改善
が明確になっていることが、個人消費の回復が持続するための条件と言えるだろう。
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