農山漁村での宿泊体験活動の
教育効果について
平成22年8月2日
文部科学省
初等中等教育局児童生徒課
子ども農山漁村・自然体験活動プログラム研修小学校学習指導要領 第6章 特別活動 望ましい集団活動を通して、心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り、 集団の一員としてよりよい生活や人間関係を築こうとする自主的、実践的な態 度を育てるとともに、自己の生き方についての考えを深め、自己を生かす能力 を養う。 第2 各活動・学校行事の目標及び内容 〔学校行事〕 1 目標 学校行事を通して、望ましい人間関係を形成し、集団への所属感や連帯 感を深め、公共の精神を養い、協力してよりよい学校生活を築こうとする自主 的、実践的な態度を育てる。 2 内容 (4) 遠足・集団宿泊的行事 自然の中出に集団宿泊活動などの平素と異なる生活環境にあって、見聞 を広め、自然や文化などに親しむとともに、人間関係などの集団生活の在 り方や公衆道徳などについての望ましい体験を積むことができるような活動 を行うこと。
教育振興基本計画(H20.7閣議決定) 第3章 今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策 (3)基本的方向ごとの施策 「・・・今後10年間を通じて目指すべき教育の姿の実現に向け、今後5年間、以下 のような施策を中心に取り組む。」 基本的方向1 社会全体で教育の向上に取り組む 【施策】 ◇ 放課後や週末の子どもたちの体験・交流活動等の場づくり 「・・・関係府省が連携して、小学校で自然体験・集団宿泊体験を全国の児童が一 定期間(例えば1週間程度)実施できるよう目指すとともに、そのために必要な体験 活動プログラムの開発や指導者の育成を支援する。・・・」 基本的方向2 個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる 基盤を育てる 【施策】 ◇ 体験活動・読書活動等の推進 「・生命や自然を大切にする心や他を思いやる優しさ、社会性、規範意識などを育 てるため、全国の小学校、中学校及び高等学校において、自然体験活動や集団宿 泊活動、職場体験活動、奉仕体験活動、文化芸術体験活動といった様々な体験活 動を行う機会の提供について関係府省が連携して推進する。」
豊かな体験活動推進事業 児童の豊かな人間性や社会性を育むためには、自然体験活動をはじめ様々な体験活動を行うことで、命を 大切にする心や他人を思いやる心、規範意識等の育成を図ること等が極めて重要である。 また、一般的に宿泊を伴う体験活動においては3泊4日以上の体験日数を確保することが望ましく、 これを宿泊体験の当面のモデル的な期間とすべきとの研究結果も出ている。 このため、小学校において実施する体験活動のうち、 3泊4日以上の日数での自然の中での集団宿泊活動 を支援することで、3泊4日以上の日数での活動を全国に普及させ、小学校における豊かな体験活動のより 充実した展開を推進する。 活動の支援や成果の普及により、体 験活動のより充実した展開を推進 (2)体験活動推進協議会 66地域 各都道府県・指定都市において、様々な体験活動を推進していく上での課題や成果につい て議論を行ったり、好事例の収集、各学校への情報提供や取組の普及を図る協議会を立ち 上げる。 1.事業内容 (1)自然宿泊体験事業 ~子ども農山漁村交流プロジェクト~ 330校 (66地域各5校) 農林水産省、総務省と連携して実施する「子ども農山漁村交流プロジェクト」として、 農林水産省が指定するモデル地域等において、3泊4日以上の宿泊体験を通じて自然体験 活動等を行う小学校の取組に対する補助を行う。 学校・家庭・地域の連携協力推進事業 平成22年度予算額 13,093 百万円の内数(新規) 2.補助事業者 都道府県・指定都市。また、間接補助事業として行う場合は市町村。 3.補助率 1/3
農山漁村での長期宿泊体験による
教育効果について(報告) H21.11
・平成20年度農山漁村におけるふるさと生活
体験推進校 178校
・2泊3日、3泊4日以上、4泊5日以上で実施
した場合の区分に分類
勉強や運動が不得意な児童を助けるなど、優しさや思いやりの気 持ちが深まった。
班、学級、委員会等の集団で活動する際、リーダーシップをとる 児童が増えた。
主な評価結果 ・ 「人間関係・コミュニケーション能力」、「自主性・自立 心」等、各評価項目の多くの設問において効果を認め た。 ・ いじめ、不登校等の問題行動にも効果が認められる など、全体として多様な効果を期待できる。 ・ 一般的に3泊4日以上の体験日数を確保することが 望ましく、宿泊体験の当面のモデル的な期間とすべき。
農山漁村での長期宿泊体験による
教育効果について(報告) H21.11
・平成20年度農山漁村におけるふるさと生活
体験推進校 178校
・2泊3日、3泊4日以上、4泊5日以上で実施
した場合の区分に分類
H22.7
・平成21年度推進校 306校
・体験プログラム、学校の所在する地域
等による区分に分類
0.0% 2.0% 7.5% 56.3% 69.4% 63.9% 43.8% 28.6% 26.6% 0.0% 0.0% 2.1% 0.0% 0.0% 0.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 10 時間以上(241 校) 5時間以上 10 時間未満(49 校) 5時間未満(16 校) 活動期間中の自然体験などを通じて、周囲の事象に 興味や好奇心を持ち、児童が「学ぶこと」の意義を感じ るなどして、学校での授業により積極的に取り組むよう になった。
自然体験活動
児童の学習意欲等
5 非常によく感じる 4 よく感じる 3 どちらとも言えない 2 あまり感じない 1 全く感じない 5 非常によく感じる 4 よく感じる 3 どちらとも言えない 2 あまり感じない 1 全く感じない10.0% 17.6% 13.0% 24.7% 55.0% 47.1% 70.4% 60.0% 35.0% 35.3% 16.7% 14.4% 0.9% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 4時間以上(215 校) 2時間以上 4時間未満(54 校) 2時間未満(17 校) 実施していない(20 校) きちんとあいさつをしようとする児童が増加した。
農林漁業にかかる作業体験
マナー・モラル・心の成長
5 非常によく感じる 4 よく感じる 3 どちらとも言えない 2 あまり感じない 1 全く感じない 5 非常によく感じる 4 よく感じる 3 どちらとも言えない 2 あまり感じない 1 全く感じない5.6% 10.2% 15.4% 10.1% 55.6% 64.4% 60.8% 74.7% 27.8% 25.4% 22.3% 14.1% 1.0% 1.5% 0.0% 11.1% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1時間以上(99 校) 30 分以上 1時間未満(130 校) 30 分未満(59 校) 設けていない(18 校) 相手の言うことをよく聞き、理解し合い、相手のことを 思いやるようになった。
児童の自治的な話合いの時間
人間関係・コミュニケーション能力
5 非常によく感じる 4 よく感じる 3 どちらとも言えない 2 あまり感じない 1 全く感じない 5 非常によく感じる 4 よく感じる 3 どちらとも言えない 2 あまり感じない 1 全く感じない0.0% 0.0% 10.0% 16.9% 42.9% 40.0% 60.0% 57.4% 57.1% 60.0% 20.0% 24.3% 1.4% 10.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 4時間以上(284 校) 2時間以上 4時間未満(10 校) 2 時間未満(5 校) 実施していない(7 校) 進んで清掃や係の仕事をしようとするようになった。
現地の人々との交流の時間
自主性・自立心
5 非常によく感じる 4 よく感じる 3 どちらとも言えない 2 あまり感じない 1 全く感じない 5 非常によく感じる 4 よく感じる 3 どちらとも言えない 2 あまり感じない 1 全く感じない17.5% 20.4% 12.9% 17.8% 50.4% 48.1% 55.7% 53.3% 29.2% 31.5% 30.0% 26.7% 2.2% 2.9% 0.0% 1.4% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 山間農業地域(45 校) 中間農業地域(70 校) 平地農業地域(54 校) 都市的地域(137 校) 児童が自然体験を行ったことで、自然への関心や環 境保全に対する意識が向上した。
学校が所在する市区町村の農業地域類型の違い
環境教育
5 非常によく感じる 4 よく感じる 3 どちらとも言えない 2 あまり感じない 1 全く感じない 5 非常によく感じる 4 よく感じる 3 どちらとも言えない 2 あまり感じない 1 全く感じない主な評価結果 ・ 「人間関係・コミュニケーション能力」、「自主性・自立 心」等、各評価項目の多くの設問において活動時間 数に応じて効果を認めた。 ・ 「児童の自治的な話合いの時間」については、全体を 通じて概ね活動時間数に応じて高い効果が現れてい る。また、「農林漁業にかかる作業体験」については、 一定のまとまった活動時間数を確保することで、より高 い効果が現れている。 ・ 学校が所在する地域ごとの比較では、日常生活での 実体験活動の不足については、農業地域類型を問わ ず共通の課題。
宿泊体験活動の計画・実施に当たっての
留意事項
○ 日常の学校生活を離れて実施する宿泊体験活動期 間中に、児童生徒に課題や目標を共有させ、集団生 活の充実感を感得させることにより、連帯感や仲間意 識の向上を図ること。 ○ 宿泊体験活動を児童生徒の人間形成や社会性涵 養のきっかけとして、事前、現地での活動及び事後の 指導を充実させ、教科学習、他の学校行事などと関連 を持たせて継続的に取り組むこと。 ○ 児童同士が話合いの時間を持てるよう、プログラム に余裕を持たせること。 ○ 児童の自治的な話合いの時間については、十分な 時間を確保し、真に自発性を引き出す活動とすること。○ 児童が協力し合わなければできないような課題性を 持たせたプログラムにすること。 ○ 特定の児童だけでなく、いろいろな児童にリーダー 経験をさせること。 ○ 自分たちでルールを考えさせ、守らせること。 ○ 自然体験活動と教科や総合的な学習の時間等の学 習との関連を児童に意識させ、自然への関心を高める など児童の好奇心を刺激すること。
○ 宿泊体験活動において、児童同士の口論・喧嘩など 一時的な感情の衝突が起こった場合にも、その機会を 捉えて相互理解していくための指導を行うこと。 ○ 何か問題が起こった際にも、まず児童が自分で考え 解決できるよう、自発的・自治的な活動の指導を重視 すること。 ○ 実施に当たっては、事故防止に努めるとともに、気 象状況等を十分に注意し、より一層の安全確保に努 めること。