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平成 28 年度市町村課研修生卒業研究報告書

「臨時財政対策債の発行抑制の現状と分析」

市町村課財政グループ 松井 佑輔

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目 次

はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第一章 臨時財政対策債制度と発行の現状 (1)臨時財政対策債と折半ルール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 (2)臨時財政対策債発行の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 第二章 臨時財政対策債への財源保障 (1)地方財政計画と臨時財政対策債の役割・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 (2)臨時財政対策債の元利償還金に対する財源保障・・・・・・・・・・・・・・・5 (ⅰ)地方財政計画によるマクロでの保障・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 (ⅱ)基準財政需要額によるミクロでの保障・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 第三章 臨時財政対策債を発行抑制する要因 (1)発行抑制をする市町村の把握・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 (2)後年度の負担軽減による抑制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 (3)不交付団体への移行予測による抑制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 (4)財政調整基金の状況による抑制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 (5)交付税算入額への影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 第四章 後年度負担に関する分析と検証 (1)地方債の交付税算入別分類の整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 (2)シミュレーション団体の設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 (3)交付税算入面での比較分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 (4)利率面の比較分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 参考文献等一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

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1 はじめに 臨時財政対策債が平成13 年度に創設されてから、16 年が経過しようとしている。元々3 年間の措置として創設された特例債であったが、経済情勢の悪化等から経過措置の更新が 数回行われ、現在は平成28 年度までの措置となっている。しかし、平成 29 年 1 月に公表 された平成29 年度地方財政計画によると、引き続き財源不足が見込まれることから、平成 29 年度から平成 31 年度までの間においては継続する見込みとされている。 その臨時財政対策債については、臨時的かつ例外的な地方債1ではあるが、その元利償還 金については後年度に全額交付税算入されることから、普通交付税の代替措置とされてい る。 しかし、地方公共団体では後年度の負担軽減を図るため、臨時財政対策債の発行を抑制 している事例が見られる。本稿では府内市町村の事例を基に、その現状を明らかにし、分 析を行っていく。 なお、分析内容及び意見に係る部分は、あくまで筆者の私見であり、筆者の所属する組 織の見解を表明するものではないことをお断りしておく。 ※以降の文章中、特に指定の無い場合、府内市町村とは政令市を除く市町村をいう。 ≪本稿の狙い≫ 府内市町村において、臨時財政対策債の発行が抑制されている現状を明らかにした上で、 基本的には発行すべきものとしての考えを示す。また、市町村が抑制を行う要因について 分析し、発行を抑制した場合の後年度負担軽減に関して、その有効性を検証する。 ≪論文の構成≫ 本稿は四章構成である。まず、一章では臨時財政対策債発行について、府内市町村の現 状を明らかにする。次に、二章で地方財政計画を踏まえながら、臨時財政対策債の財源保 障について述べる。三章では発行抑制している府内市町村の個々の要因について分析し、 四章にて抑制を行うことでの後年度負担について比較分析と検証を行う。 1『臨時財政対策債は、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)第六条の三第二項に規定する「地方財政若しく は地方行政に係る制度の改正」として、地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第五条の特例である同法第三十三条 の五の二の規定に基づき発行されている、臨時的かつ例外的な地方債であり、このような特例措置の解消に向けて取り 組んでいくことは当然であると考えている。』(平成21 年 11 月 13 日第 173 回国会鳩山総理大臣答弁)

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2 第一章 臨時財政対策債制度と発行の現状 第一章では、臨時財政対策債制度を踏まえつつ、大阪府及び全国の市町村の臨時財政対 策債発行の現状について明らかにする。 (1)臨時財政対策債と折半ルール 臨時財政対策債は、地方の一般財源の不足に対処するため、投資的経費2以外の経費にも 充当できる地方財政法第5 条の特例として発行される地方債であり、平成 13 年度にその制 度が創設された。この地方の一般財源とは、国税4 税に法定率3を乗じた額と地方法人税の 全額を財源とする地方交付税を指し、地方が一定の行政サービスを提供できるよう財源保 障するものである。臨時財政対策債は、この地方交付税の一部の代替として措置される財 源である。このため、この地方債の発行額については、普通交付税の算定に用いられる基 準財政需要額の一部を振り替える形で発行限度額が設定されている。 なお、地方財政計画における地方交付税及び臨時財政対策債の果たす役割等については、 第二章にて述べる。 ここで、臨時財政対策債創設の経緯に少し触れておきたい。この特例債が創設される平 成12 年度以前は、基本的に財源不足全額を交付税及び譲与税配付金特別会計4で借り入れて 確保し、その償還金を国と地方で折半して負担することとされてきたが、地方負担分の借 入の実態がわかりにくいことや、特別会計からの借入によって国の財政実態もわかりにく くしているなどの問題が指摘されていた。 そこで、国と地方の責任の明確化、財政の透明化を図るものとして、国負担分は半分を 一般会計から繰り入れし、地方負担分は特例の地方債(臨時財政対策債)を発行すること となったのである。 (2)臨時財政対策債発行の現状 その臨時財政対策債の発行については、他の地方債と同様に市町村が発行することとな る。普通交付税の交付決定時に、総務省から臨時財政対策債発行可能額という形で発行限 度額は示されるものの、その限度額内でいくら発行するかは市町村の裁量となっているの である。 2 普通建設事業費など、その支出の効果が資本形成に向けられ、施設等がストックとして将来に残るものに支出される 経費 3 所得税・法人税の33.1%、酒税の 50%、消費税の 22.3% 4 地方交付税、地方特例交付金及び地方譲与税の配布に関する経理を明確にするために設置された国の特別会計

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3 臨時財政対策債発行可能額の設定イメージ では、実際のところ、臨時財政対策債発行の現状はどうなっているのだろうか。総務省 が行った地方財政状況調査5を基に、府内市町村の臨時財政対策債の発行状況について整理 したのが表1 である。 表1:府内市町村の臨時財政対策債発行状況(H24~H27) (総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成) 表1 を見ると、国が設定した臨時財政対策債発行可能額の内、平成 24 年度は約 8.73%、 平成25 年度は 11.18%、平成 26 年度は 9.41%、平成 27 年度は 9.45%と、約 1 割程度が毎 年府内市町村で発行されていないことになる。 では、全国的に見るとどうだろうか。表2 は、全国市町村(特別区・政令市除く)の臨 時財政対策債の発行状況について、先程と同様に地方財政状況調査を基に整理したもので ある。表2 を見ると、全国的に臨時財政対策債の一部を発行していない市町村が存在する ことと、未発行割合について、大阪府はどの年度も全国平均を上回っていることがわかる。 なお、未発行割合の高い都道府県のうち、愛知県や東京都については、財政力指数が高 く、第三章にて後述する不交付団体になる可能性の高い市町村が含まれていることが比率 の高い要因と推察される。 地方財源の保障を目的とする臨時財政対策債が、大阪府内及び全国の市町村において、 発行を可能とされた額のうち、一部が発行されていない。これが現状である。 5 地方公共団体の毎年度の決算状況について、普通会計を対象に調査するもの。臨時財政対策債発行可能額については 表紙(0 表)、発行額については(33 表)に計上されている。 ※振替額は団体規模、財政力指数によって異なる 普通交付税 基準財政需要額 基準財政需要額の一部を、臨時財政対策債発行可能額として振替 基準財政収入額 (単位:百万円) 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 91,753 96,686 90,996 79,935 83,746 85,881 82,434 72,381 8,007 10,805 8,562 7,554 8.73% 11.18% 9.41% 9.45% 臨時財政対策債発行額総額(B) 未発行総額(A-B)(C) 未発行総額の割合(C/A) 臨時財政対策債発行可能額総額(A)

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4 表2:全国市町村の臨時財政対策債発行状況(H24~H27) 発行 可能額 発行額 未発行 割合 発行 可能額 発行額 未発行 割合 発行 可能額 発行額 未発行 割合 発行 可能額 発行額 未発行 割合 北海道 792 779 1.60% 816 804 1.50% 771 761 1.29% 724 713 1.55% 青森県 257 249 3.43% 260 252 3.02% 248 243 1.84% 235 229 2.30% 岩手県 262 253 3.58% 259 253 2.33% 248 236 4.89% 232 223 3.65% 宮城県 241 229 5.19% 239 221 7.60% 225 214 5.21% 209 196 5.90% 秋田県 225 221 2.14% 224 218 2.90% 213 208 2.10% 199 195 2.28% 山形県 221 221 0.02% 219 219 0.05% 212 212 0.01% 196 195 0.14% 福島県 422 395 6.32% 412 375 8.87% 365 346 5.40% 330 307 6.80% 茨城県 511 492 3.79% 512 492 3.90% 477 449 5.95% 430 403 6.28% 栃木県 363 305 16.01% 366 293 19.74% 325 272 16.37% 255 228 10.55% 群馬県 396 394 0.49% 409 409 0.09% 364 364 0.04% 309 308 0.27% 埼玉県 894 851 4.83% 892 864 3.13% 846 815 3.63% 750 715 4.66% 千葉県 675 613 9.21% 675 601 10.90% 612 556 9.18% 529 487 7.81% 東京都 475 403 15.14% 447 364 18.46% 380 320 15.71% 274 239 12.76% 神奈川県 396 331 16.43% 367 306 16.46% 333 299 10.15% 284 245 13.69% 新潟県 336 331 1.60% 334 330 1.02% 314 308 1.87% 303 299 1.50% 富山県 227 226 0.72% 240 240 0.00% 227 227 0.00% 211 211 0.00% 石川県 241 238 1.19% 260 255 1.87% 241 235 2.35% 208 202 2.93% 福井県 151 147 2.83% 163 157 3.34% 155 151 2.88% 148 138 6.58% 山梨県 180 148 17.66% 189 158 16.17% 173 144 16.63% 161 136 15.60% 長野県 457 433 5.10% 478 453 5.28% 445 426 4.27% 403 386 4.26% 岐阜県 418 322 22.98% 443 347 21.70% 406 335 17.54% 370 308 16.71% 静岡県 372 334 10.06% 372 327 12.12% 330 290 12.07% 275 255 7.07% 愛知県 632 519 17.81% 584 484 17.14% 490 394 19.61% 403 323 19.82% 三重県 346 298 13.93% 360 300 16.73% 326 262 19.53% 283 245 13.15% 滋賀県 280 268 4.29% 293 293 0.00% 271 271 0.00% 236 236 0.00% 京都府 226 217 3.96% 243 235 3.28% 223 221 0.85% 200 197 1.69% 大阪府 918 837 8.73% 967 859 11.18% 910 824 9.41% 799 724 9.45% 兵庫県 758 729 3.79% 802 760 5.25% 764 750 1.88% 688 670 2.67% 奈良県 261 258 1.26% 270 268 0.94% 255 250 1.77% 234 228 2.46% 和歌山県 196 196 0.02% 205 205 0.11% 196 196 0.01% 186 186 0.01% 鳥取県 119 112 5.56% 122 109 10.37% 116 107 7.64% 109 101 6.98% 島根県 155 152 2.03% 162 157 3.08% 158 152 3.77% 148 146 1.35% 岡山県 266 266 0.00% 277 273 1.65% 251 249 0.62% 230 228 0.85% 広島県 361 358 0.78% 379 378 0.35% 359 348 2.90% 311 295 5.15% 山口県 298 274 8.07% 313 281 10.41% 284 248 12.91% 261 222 14.67% 徳島県 151 143 4.82% 155 146 5.87% 151 141 6.23% 133 126 4.88% 香川県 192 168 12.56% 207 179 13.49% 191 165 13.49% 176 153 13.03% 愛媛県 277 237 14.52% 302 271 10.15% 273 248 9.44% 261 242 7.44% 高知県 155 148 4.41% 162 155 4.24% 157 156 0.40% 147 146 0.44% 福岡県 455 455 0.00% 460 460 0.00% 430 430 0.00% 398 398 0.00% 佐賀県 156 152 2.26% 158 156 1.37% 145 145 0.01% 139 135 2.72% 長崎県 265 265 0.00% 279 271 2.92% 272 267 1.81% 252 232 7.82% 熊本県 216 212 1.95% 213 206 3.44% 206 201 2.41% 191 186 2.69% 大分県 226 200 11.64% 244 191 21.78% 229 189 17.68% 207 189 8.55% 宮崎県 205 205 0.19% 214 214 0.28% 201 200 0.72% 187 186 0.47% 鹿児島県 329 328 0.22% 342 340 0.53% 323 320 0.93% 300 295 1.58% 沖縄県 229 219 4.25% 245 238 2.81% 237 230 2.72% 218 210 3.57% 合計(※) 16,185 15,132 6.51% 16,537 15,370 7.06% 15,328 14,376 6.21% 13,730 12,921 5.89% 単位:億円 都道府県名 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 (総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成) ※未発行割合は全国平均

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5 第二章 臨時財政対策債への財源保障 第一章では、臨時財政対策債の一部が発行されていない現状について明らかにした。し かしながら、臨時財政対策債は普通交付税の代替措置である。第二章では、その元利償還 金に対する後年度の財源保障について述べる。 (1)地方財政計画と臨時財政対策債の役割 地方財政計画は、地方交付税法第7 条において、「内閣は、毎年度左に掲げる事項6を記載 した翌年度の地方団体の歳入歳出総額の見込額に関する書類を作成し、これを国会に提出 するとともに、一般に公表しなければならない」と規定されており、その役割は、地方公 共団体が標準的な行政水準を確保できるよう地方財源を保障すること、地方公共団体の毎 年度の財政運営の指針となることとされている。 その地方財政計画の歳入面において、一般財源として地方交付税が計上されており、そ れでも地方全体の一般財源が不足する場合は、その代替措置として臨時財政対策債を発行 することとして、地方財源を保障しているのである。 (2)臨時財政対策債の元利償還金に対する財源保障 臨時財政対策債が地方交付税の代替措置とされるのは、地方財政法附則第33 条の 5 の 2 に基づき、その償還に関して厳密に財源保障されていることが根拠の一つである。 そこで、地方財政計画と、地方交付税制度において、どのような保障がなされているか について整理する。図 1 は、地方財政計画の歳入歳出と、普通交付税算定の基準財政需要 額と基準財政収入額との関係性を表したものである。地方財政計画に計上された歳出のう ち、基準財政需要額に算入されるのは地方が一般財源で対応する分とされている。 図1:地方財政計画と地方交付税の関係 (出典:地方財務協会「地方交付税のあらまし」より) 6 歳入総額の見込み額(各税収、使用料及び手数料、起債額、国庫支出金等)、歳出総額の見込み額(給与関係経費、一 般行政経費、投資的経費、公債費等) 地財 ←不交付団体の財源超過額等 地方財政計画の歳出の内、 一般財源対応分を算入 地財 給与関係経費 一般財源 特定財源 地方債 地方交付税 普通交付税 【歳出】 投資的経費 補助 単 独 国 一般行政経費 保 補助 【歳入】 独 単 公 企 繰 他 特別交 付税 地方税・地方譲与税 基準財政需要額 その 営 業 出 国庫支出金 その他 普通交付税 対象一般財源 基準財政収入額 公債費

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6 (ⅰ)地方財政計画によるマクロでの保障 臨時財政対策債の元利償還金については、地方財政計画上ではその費用の総額が歳出の 公債費(①)にて計上されている。地方財政計画での歳入歳出総額は客観的に推測される 標準的な水準の見込み額7とされており、公債費については、過去の地方債計画8に計上され た地方債のうち、発行された総額をベースに理論上で算出された償還額が計上することと されている。 しかし、臨時財政対策債に関しては「過去に発行された額」ではなく、「過去に起こすこ とができることとされた額」、いわば過去に振り替えてきた発行可能額をベースに償還額を 算出し計上されている。よって、理論上ではあるものの、臨時財政対策債の元利償還金の 総額については、その発行の有無を問わず全額が当該年度の地方財政計画に計上され、そ の歳出に対して歳入が一致するよう地方財政対策が講じられていることになる。これがマ クロベースでの財源保障である。 (ⅱ)基準財政需要額によるミクロでの保障 基準財政需要額とは普通交付税の算定に用いられる数値で、地方公共団体の標準的な財 政需要額を示すものである。図1 で示すとおり、地方財政計画の歳出での公債費について、 その全額が基準財政需要額へ算入されている訳ではない。 現在、基準財政需要額への算入方法は事業費補正方式、公債費方式、標準事業費方式な どが主に使用されているが、算入の割合は地方債の種類によって異なる。 例えば地域活性化事業債は、事業費補正方式により、その元利償還金のうち30%が理論 値で算入されている。 しかし、臨時財政対策債の元利償還金については、理論償還方式9ではあるものの、算入 率が100%とされており、当該年度に係る元利償還金の全額が基準財政需要額に算入される こととなる(②)。これがミクロベースでの財源保障である。 以上のことから、臨時財政対策債については、後年度の元利償還金を地方財政計画と地 方交付税制度の双方から財源保障することで、引き続き地方公共団体が標準的な行政水準 を確保できるよう地方財源を保障し、地方の単独負担とならないように配慮されているこ とが理解できる。 なお、臨時財政対策債について、国は特例措置の解消に向けて取り組んでいくこととし ているものの、発行しないことの是非に関して明言はしていない。しかし、折半ルールに 基づき財源不足額のうち半分を負担していること、普通交付税の代替措置としての地方債 であることを踏まえると、筆者は臨時財政対策債については基本的に発行すべきものとし て考える。 7 遠藤安彦『地方交付税法逐条解説[第三版]』(1986)101 ページ 8 国の予算、財政投融資計画及び地方財政対策等を踏まえて策定される、総務大臣等が同意又は許可をする地方債の予 定額の総額に関する書類。地方公共団体の地方債を起こす上での指針となる。 9 地方債の同意・許可額に一定の率を乗じて理論的な元利償還額を算定する方法。その他に実際の地方債元利償還額を 使用して算定する「実額償還方式」がある。

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7 第三章 臨時財政対策債を発行抑制する要因 第二章で述べたとおり、筆者は臨時財政対策債について、基本的には発行すべきものと してとらえる。では、臨時財政対策債の一部を発行していない市町村にはどういった背景 があるのだろうか。第三章ではその要因について考察していく。 (1)発行抑制をする市町村の把握 まず、臨時財政対策債を抑制している市町村について把握するため、平成27 年度の府内 市町村において、未発行となった総額7,554 百万円の構成団体を一覧にしたのが図 2 であ る。表中、未発行の割合が高く、意図的に抑制していると考えられる団体は、平成27 年度 において8 団体見受けられた。この 8 団体について、A~H団体とする。 図2:府内市町村における平成 27 年度臨時財政対策債未発行総額の構成団体 (総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成) 次に、A~H団体の近年の発行状況について、一覧にしたのが表3 である。F団体、H 団体については平成27 年度のみ抑制しており、その他の団体については、過去から継続し て抑制していることがわかる。つまり、この6 団体については、臨時財政対策債の発行抑 制を継続的に行っていることになる。 以降においては、A団体~E団体、G団体の6 団体を、臨時財政対策債を抑制している 団体と捉え、その要因について考察していく。

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8 表3:A~H団体の未発行額推移(H24~H27) (総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成) (2)後年度の負担軽減による抑制 まず、本来発行すべきとされている地方債をどうして抑制するのか。その要因について、 抑制している団体の見解を議会答弁等からまとめたところ、次に示すような形となった。 (単位:百万円) 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 91,753 96,686 90,996 79,935 83,746 85,881 82,434 72,381 8,007 10,805 8,562 7,554 8.73% 11.18% 9.41% 9.45% うち、A団体からH団体の未発行額と、発行可能額に占める未発行額の割合 2,727 3,365 3,139 2,528 45.25% 50.49% 51.14% 45.73% 3,908 3,395 3,240 1,966 100% 100% 100% 100% 123 761 318 975 4.68% 28.59% 13.44% 46.99% - 210 614 676 - 4.99% 15.31% 17.9% 516 571 445 472 25.59% 27.56% 22.89% 26.65% - - - 370 - - - 22.7% 456 1,953 351 294 12.47% 50.42% 10.88% 11.19% - - - 257 - - - 24.44% G団体 H団体 臨時財政対策債発行額総額(B) 未発行総額(A-B)(C) 未発行総額の割合(C/A) 臨時財政対策債発行可能額総額(A) A団体 B団体 C団体 D団体 E団体 F団体 ・ 後年度の公債費負担を軽減させるため ・ 交付税の算入額には影響せず、公債費抑制にもつながり、 将来にわたる健全な財政運営を図るため ・ 後年度負担の軽減及び財政の持続可能性の向上のため ・ 将来返済していかなければならない地方債でもあるので、 将来の公債費負担を抑えるため ・ 将来世代への負担の抑制のため 臨時財政対策債抑制に対して、団体の主な見解

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9 上記により、抑制している団体は、臨時財政対策債を他の地方債と同様に、後年度の負 担軽減を図るため、発行を抑制していることがわかる。また、交付税の算入額に影響しな いことも抑制する要因の背景にあると考えられ、詳しくは第三章(5)にて述べる。では、 毎年度発行を抑制している団体は、抑制する判断をどの時点で行っているのか。平成27 年 度の予算決算を基に整理したのが図3である。 図3:抑制団体の平成 27 年度当初予算と決算の状況 (総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成) B団体を除き、その他の団体では、当初予算において臨時財政対策債を満額発行する方 針で予算編成が行われていることがわかる。当初予算と発行可能額で乖離があるのは、臨 時財政対策債発行可能額の確定時期が、普通交付税が算定される7 月頃であり、当初予算 の編成時には正確な数値を把握できていないことが要因であろう。 以上のことから、B団体においては当初予算段階から臨時財政対策債の発行を抑制する 前提で財政運営を行っているが、それ以外の団体では、当初は発行するものとして財政運 営を行っていたが、結果的に決算で剰余金が見込まれ、その剰余金を臨時財政対策債の代 わりに一般財源へ充当することで抑制していると推察される。 (3)不交付団体への移行予測による抑制 後年度の負担軽減以外の要因として、例外的に考えられるのが不交付団体になるリスク を考えての抑制である。普通交付税は基準財政需要額から基準財政収入額を差し引いて算 出するが、もし基準財政収入額が需要額を上回った場合、その市町村の税収入等のみを財 源として行政サービス水準を維持できると判断され、普通交付税は交付されなくなる。こ のような市町村を不交付団体という。 (単位:百万円) 団体名 当初予算の臨時財政対策債の発行見込額 同年度の普通交付税算定時に設定された発行可能額 決算(実際の発行額) A団体 5,000 5,528 3,000 B団体 0 1,966 0 C団体 1,900 2,075 1,100 D団体 3,450 3,776 3,100 E団体 1,715 1,772 1,300 G団体 2,950 2,628 2,334

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10 表4:B団体における財政力指数の推移 表4 は近年のB団体における財政力指数の推移である。財政力指数は基準財政収入額を 基準財政需要額で除した数値であり、「1」を上回った場合は不交付団体となる。B団体に おいては高い水準で推移しており、平成27 年度では「0.984」と、いつ不交付団体になっ てもおかしくない状況である。 不交付団体になると、過去に発行した臨時財政対策債の元利償還金について、そのすべ てを自団体の税収入で負担することとなり、将来の財源を「先食い」しているかのように 見えてしまうことから、財政運営の戦略の一つとして、発行抑制をすることも考えられる のである。 (4)財政調整基金の状況による抑制 もう一つ例外的な要因として考えられるのが、財政調整基金の存在である。財政調整基 金とは地方財政法第 7 条に基づき、地方公共団体が各年度に生じた剰余金の一定額を積み 立てる基金で、その役割は、長期的視点での計画的な財政運営の確保を目的としている。 一般的に、市町村は、ある年度において財源不足が生じた場合は、財政調整基金を取り 崩すことで財源の調整を行っているのである。表 5 は抑制している団体の財政調整基金残 高を、その団体の標準財政規模10に占める割合で整理し、各年度の推移を表している。 表 5:抑制団体の財政調整基金残高割合の推移 (総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成) 財政調整基金の適正な水準について、何かの指標で公表されているものではない。 ただ、1 つの団体では数十年に一度、標準財政規模の約 10%程度を財政調整基金から取 り崩すような財政状況の悪化が起こりうるとされており、そうした事態に陥った際の再建 10 地方公共団体の一般財源の標準的な大きさを示す指標。 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 B団体 0.963 0.969 0.975 0.984 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 A団体 22.6% 22.3% 22.0% 20.2% B団体 15.6% 15.1% 13.6% 13.8% C団体 35.9% 36.7% 36.2% 31.9% D団体 10.3% 8.3% 6.4% 5.9% E団体 16.6% 16.9% 16.8% 16.8% G団体 14.5% 12.6% 11.6% 11.0% 府内平均 15.3% 14.4% 13.7% 12.5%

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11 期間を考慮すると、20%程度はあったほうがよい、といった見解11がある。 その水準に当てはめると、抑制団体のうち、A団体とC団体は各年度においても 20%を 超えていることが見受けられ、C団体では平成 27 年度で 31.9%と、他の市町村と比べても 高い数値を示している。団体によっては、財政調整基金の残高状況も、臨時財政対策債の 一部を発行抑制する一因となっていることも考えられる。 なお、先般から財政制度等審議会にて地方全体の基金残高の増加を指摘されているとこ ろでもあり、基金の保有割合が高くなると、地方の財政実態が適切に判断されなくなる可 能性があることを留意すべきであろう。 (5)交付税算入額への影響 本章では抑制する要因について述べてきたが、そもそも抑制する要因の背景として、抑 制しても交付税の算入に影響しないことが考えられる。 臨時財政対策債の基準財政需要額への算入については、第二章(2)(ⅱ)で述べたとお り、実際に発行した額に算入を受ける他の地方債とは違い、発行可能額を基準に後年度に 交付税算入を受けることとなっている。よって、発行を抑制した場合であっても、後年度 の交付税算入には影響がなく、結果、実際の償還額と乖離が生まれることとなる。 抑制している団体のうち、B団体において、平成 13 年度から平成 27 年度の発行状況を 基に、実際どれだけ乖離が生まれているのか表したのが図 4 である。 図 4:B団体における臨時財政対策債の元利償還金の比較(H13~H27) 図 4 のうち、実際の元利償還金については地方財政状況調査から、基準財政需要額への 11 『地方財務』2016 年 11 月号 「第 8 回財政課職員の知恵袋」より抜粋

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12 算入額については普通交付税算出資料を用いて算出した。B団体は過去から毎年継続的に 発行抑制を行っており、図 4 で見ると、途中から実際の元利償還金と算入額との乖離が始 まっていることがわかる。 その差は徐々に広がり、平成 27 年度においては算入額と実際の元利償還額との間に約 10 億円ものギャップが生じていることになる。なお、団体は臨時財政対策債を抑制した分を 他の財源で対応して行政サービスを提供していることから、単純に新たな財源が生じてい る訳ではない。ただし、未発行分の元利償還金の利子分については、基準財政需要額に算 入されるものの、実際には負担していないことになる。 第四章 後年度負担に関する分析と検証 第三章で述べたように、発行を抑制している市町村においては、後年度の負担を考慮し て抑制を行っているのが実情である。しかし、筆者は、後年度負担軽減のために地方債の 抑制を図るのであれば、100%の財源保障がなされていない他の地方債を抑制するほうが良 いのではないか、といった疑問を呈する。第四章ではその疑問に対して検証を行う。 (1)地方債の交付税算入別分類の整理 最初に、抑制している団体が臨時財政対策債の発行を抑制した年度で、他の地方債をど の程度発行していたかについて整理する。地方財政状況調査を基に、臨時財政対策債と、 交付税措置のある地方債と、交付税措置のない地方債とに分類を行うこととする。 ここでいう交付税措置のある地方債とは、事業費補正方式や公債費方式など、元利償還 金の一部割合が基準財政需要額に算入されるものを指し、地方債の種類ごとの区分は下記 表 6 のとおりである。 表 6:交付税措置のある地方債と交付税措置のない地方債の区分 平成 24 年度から平成 27 年度において、抑制している団体にて発行された地方債を、表 6 の区分に基づきまとめた結果、表 7 のようになった。 (※2)公共事業等債など、財源対策債分による引き上げがある事業債は交付税措置のある地方債に計上 交付税措置のある地方債 公共事業等債、災害復旧事業債、緊急防災・減災事業債、 全国防災事業債、学校教育施設等整備事業債、一般廃棄物処理事業債、 一般補助施設整備等事業債、施設整備事業債、一般事業債、 地域活性化事業債、防災対策事業債、公共施設最適化事業債、 過疎対策事業債、補正予算債 など 交付税措置のない地方債 公営住宅建設事業債、学校教育施設等整備事業債、 社会福祉施設整備事業債、一般補助施設整備等事業債、一般事業債、 地方道路等整備事業債 など (※1)学校教育施設等整備事業債など、事業内容によって交付税措置の有無が変わるものは両方に計上

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13 表 7:各年度に発行した地方債の交付税算入別分類 (総務省「地方財政状況調査」を基に筆者作成) どの団体においても基本的に交付税措置のある地方債は発行額が大きく、交付税措置の ない地方債は発行額が少ない傾向にある。そして臨時財政対策債の割合が高いことから、 後年度負担を軽減するためには、臨時財政対策債発行を抑えざるをえないことが推察され る。 しかし、着色の箇所においては、筆者が疑問としている、臨時財政対策債未発行額に対 して、交付税措置のない地方債を発行した額が上回る事態が見受けられた。 (2)シミュレーション団体の設定 その着色箇所において、今回の仮説を検証するためのモデル団体を設定する。ただし、 交付税措置のない地方債といっても、国庫補助事業の地方負担額に充当する地方債など、 国の事業と関連性が高いものも含まれているため、そのすべてが発行抑制出来るものとは 限らないことは留意すべき点である。 そこで、交付税措置のない地方債のうち、市町村が単独事業を実施する際に発行する一 般単独事業債に着目し、精査をしたところ、全団体にて該当する事例が見受けられた。 その中で、平成 25 年度のC団体をシミュレーションする事例として設定することとし、 表 7 中の発行した地方債を整理したのが表 8 である。 年度 分 類 A団体 B団体 C団体 D団体 E団体 G団体 臨時財政対策債 3,300 0 2,500 3,978 1,500 3,200 交付税措置のある地方債 2,205 2,104 370 2,365 700 1,465 交付税措置のない地方債 0 279 142 2,329 269 0 臨時財政対策債未発行額 2,727 3,908 123 0 516 456 臨時財政対策債 3,300 0 1,900 4,000 1,500 1,920 交付税措置のある地方債 3,228 1,706 561 1,659 673 2,289 交付税措置のない地方債 0 180 1,219 330 521 0 臨時財政対策債未発行額 3,365 3,395 761 210 571 1,953 臨時財政対策債 3,000 0 2,050 3,400 1,500 2,878 交付税措置のある地方債 4,999 3,476 913 1,018 598 2,810 交付税措置のない地方債 69 758 284 0 291 690 臨時財政対策債未発行額 3,139 3,240 318 615 445 351 臨時財政対策債 3,000 0 1,100 3,100 1,300 2,334 交付税措置のある地方債 3,119 2,977 1,160 1,470 167 1,310 交付税措置のない地方債 0 1,297 81 0 720 359 臨時財政対策債未発行額 2,528 1,966 975 676 472 294 平成27年度 平成24年度 (単位:百万円) 平成25年度 平成26年度

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14 表 8:平成 25 年度にC団体が発行した地方債の内訳 C団体は平成 25 年度に用地取得を主な目的として一般単独事業債を発行し充当している。 交付税措置もなく、国庫補助事業の継ぎ足し単独事業にも該当しない。 もし、借入も年度末に行っていたとすれば、臨時財政対策債と同様のタイミングで発行 抑制について検討はできたものと考える。 C団体は当該年度に臨時財政対策債を 761 百万円未発行としているが、仮に臨時財政対 策債ではなく、上記事業で一般単独事業債を抑制した場合について、後年度負担は変化す るのだろうか。そこで、元利償還金の返済シミュレーションを行い、償還後の元利償還金 について比較をする。 なお、シミュレーションを行うに当たっての償還条件などは次のとおりに設定する。 【シミュレーション条件】※すべて元利均等償還方式 ①臨時財政対策債発行可能額:2,661 百万円(実際の発行額は 1,900 百万円) 償還条件 20 年 据置期間 3 年 利率 0.6% 交付税算入率 100% ②交付税措置のある地方債(公共事業等債):92 百万円 償還条件 20 年 据置期間 3 年 利率 1.0% 交付税算入率(※1) ③交付税措置のある地方債(緊急防災・減災事業債(補助)):204 百万円 償還条件 10 年 据置期間 0 年 利率 0.4% 交付税算入率(※2) ④交付税措置のある地方債(学校教育施設等整備事業債):265 百万円 償還条件 25 年 据置期間 3 年 利率 1.2% 交付税算入率 50%(※3) ⑤交付税措置のない地方債(一般単独事業債):1,219 百万円 償還条件 20 年 据置期間 3 年 利率 0.7% (※1)公共事業等債についての交付税算入は財源対策債分(40%)のうち 50% (※2)補助事業 131 百万円分が 80%、単独事業 73 百万円分が 70% (※3)補正予算債であるため 分 類 事 業 債 名 発 行 額 交付税措置のない地方債 一般単独事業債 1 ,2 1 9 公共事業等債 92 緊急防災・減災事業債(補助) 204 学校教育施設等整備事業債 265 交付税措置のある地方債合計 5 6 1 交付税措置のある地方債 (単位:百万円)

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15 (3)交付税算入面での比較分析 最初に、交付税算入面での比較を行う。発行した地方債の元利償還金が、後年度にどれ だけ財源保障されているのかというのは、後年度負担の考え方の一つとして考えられる。 交付税算入割合が低ければ、市町村が単独で負担する金額が増え、後年度に負担がかかっ てしまうこととなる。そこで、上記条件において、現状と一般単独事業債を抑制した場合 とのシミュレーションを行った結果が表 9 である。 なお、臨時財政対策債の後年度の交付税算入額は発行可能額に基づくことから、本シミ ュレーションにおいては当初発行出来るとされた 2,661 百万円をベースに算出している。 表 9:元利償還金に係る後年度の交付税算入額の比較 結果、現状のAパターンでの交付税算入される割合は 79.9%となり、一方のBパターン では 80.1%と、若干の差が生じた。これは、借入利率が臨時財政対策債より交付税措置の ない地方債の方が高いことが要因であり、後年度に負担する元利償還金の合計では約 918 万円の差が生じ、AパターンのほうがBパターンを上回る結果となった。 なお、交付税算入割合について大きく差が生じなかったのは、臨時財政対策債の交付税 算入が発行可能額に基づいていることが要因であろう。仮に発行額に基づいた場合は交付 税算入の割合は減少することとなり、同様のことが交付税措置のある地方債を抑制した場 合にも言える。 (4)利率面の比較分析 AパターンとBパターンについて、交付税算入される割合で比較分析を行った結果、借 入利率の違いから若干の差が生じており、また、元利償還金の合計でも差が生じていた。 現在の地方債計画において、公的資金と民間等資金12の資金割合は概ね4:613とされて おり、臨時財政対策債は公的資金の配分が保障されているのに対し、その他の地方債は必 12 公的資金(財政融資資金、地方公共団体金融機構資金)、民間等資金(市場公募資金、銀行等引受資金) 13 橋本・青山『地方債元利償還金に対する交付税措置と実償還額について』(2016)18、19 ページ 【Aパターン】 臨時財政対策債を抑制した場合(現状) (単位:円) 分 類 発行額 元利償還金合計 交付税算入額(理論値) 臨時財政対策債 1,900,000,000 2,035,593,124 2,853,390,300 交付税措置のある地方債 561,000,000 623,188,781 327,724,220 交付税措置のない地方債 1,219,000,000 1,320,697,178 0 合計 3,680,000,000 3 ,97 9,4 79 ,08 3 3,181,114,520 7 9.9 % 【Bパターン】 臨時財政対策債の代わりに、交付税措置のない地方債を抑制した場合 分 類 発行額 元利償還金合計 交付税算入額(理論値) 臨時財政対策債 2 ,66 1,0 00 ,00 0 2,850,901,743 2,853,390,300 交付税措置のある地方債 561,000,000 623,188,781 327,724,220 交付税措置のない地方債 45 8,0 00 ,00 0 496,209,440 0 合計 3,680,000,000 3 ,97 0,2 99 ,96 4 3,181,114,520 8 0.1 % 9,1 79 ,11 9 交付税 算入割合 交付税 算入割合 AパターンとBパターンの元利償還金合計の差

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16 ずしも公的資金が配分される訳ではなく、民間等資金での借入となるケースが多い。 今回の事例では利率の差が 0.1%であったため、差額はわずかで済んでいるものの、民間 資金での借入利率は変動的であり、大きなリスクを抱えている。 例えば、地方債協会発行の平成 26 年版地方債統計年報によると、平成 25 年度の府内市 町村における民間資金の平均借入利率は「0.773」とされており、全国で見ると2番目に高 い数値となっている。 仮に、交付税措置のない地方債の利率を「0.773」にして比較を行った場合、表 10 のと おり実償還額での後年度負担の差は約 1,590 万円となり、Bパターンのほうが後年度負担 の軽減をしていることといえる。 表 10:利率面で見た後年度の元利償還金の比較 以上のことから、民間資金で借入を行う際、借入利率が高くなるリスクがある資金調達 能力の低い市町村においては、臨時財政対策債より交付税措置のない地方債を抑制した方 が後年度負担は軽減される可能性が高いことがわかる。 しかし、地方債には「後年度にわたって住民負担の均衡を図るためのもの」といった性 質もあり、投資的経費である建設事業債の抑制を図ることが必ずしも正しいわけではない。 ただ、大きな金額ではないかもしれないが、後年度において負担する金額に差が出るこ ともあることから、財政運営を行っていくに当たって留意する点の一つとして考えられる のではないだろうか。 【Aパターン】 臨時財政対策債を抑制した場合(現状) (単位:円) 分 類 発行額 元利償還金合計 臨時財政対策債 1,900,000,000 2,035,593,124 交付税措置のある地方債 561,000,000 623,188,781 交付税措置のない地方債(※) 1,219,000,000 1,331,467,526 合計 3,680,000,000 3,990,249,431 【Bパターン】 臨時財政対策債の代わりに、交付税措置のない地方債を抑制した場合 分 類 発行額 元利償還金合計 臨時財政対策債 2 ,6 6 1 ,0 0 0 ,0 0 0 2,850,901,743 交付税措置のある地方債 561,000,000 623,188,781 交付税措置のない地方債(※) 4 5 8 ,0 0 0 ,0 0 0 500,256,052 合計 3,680,000,000 3,974,346,576 1 5 ,9 0 2 ,8 5 5 AパターンとBパターンの元利償還金合計の差 (※)利率を「0.773」に変更している

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17 まとめ 本稿では、臨時財政対策債は基本的に発行すべきものと考え、市町村の現状と分析を行 った。しかしながら、地方財政計画の本来の姿で言えば、地方全体の一般財源の不足は地 方交付税で補填され、財源不足が生じないことが理想である。 そのため、国はこの臨時財政対策債による財源不足への対応という特例措置を解消でき るように取り組むことが求められる。 一方、市町村は、この制度の趣旨をしっかりと認識した上で、交付税措置等による後年 度負担を的確に見極め、地方債の計画的な発行に取り組む必要がある。 臨時財政対策債については、臨時的かつ例外的な地方債であることから、様々な議論が なされてきたところである。しかし、市町村は、臨時財政対策債について安易に発行を抑 制するのではなく、抑制を検討するのであれば、改めて地方財政計画と地方交付税制度の 目的を振り返り、その性質を認識した上で適切に判断していくのが理想であろう。 今回、「臨時財政対策債の発行抑制の現状と分析」と題して考察を行ったが、本稿が財政 運営マネジメントの一手法の参考となれば幸いである。 【参考文献等一覧】 ・遠藤安彦(1996)『地方交付税逐条解説[第三版]』(ぎょうせい) ・ぎょうせい『地方財務』2016 年 4 月号、2016 年 11 月号、2017 年 3 月号 ・小西砂千夫(2012)『地方財政のヒミツ』(ぎょうせい) ・地方債協会『地方債』2012 年 8 月号 ・地方財政状況調査関係資料「地方財政状況調査表データ」 http://www.soumu.go.jp/iken/jokyo_chousa_shiryo.html ・地方財務協会『平成28 年度地方交付税のあらまし』 ・地方財務協会『地方交付税制度解説』平成14~27 年度 ・総務省「同意等債理論償還設定条件一覧」平成14~27 年度 ・橋本剛、青山拓矢(2016)「地方債元利償還金に対する交付税措置と実償還額について」

参照

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