松井隆一郎 * Ryuichiro Matsui 宮下和也 ** Kazuya Miyashita 松下哲也 ** Tetsuya Matsushita 太田正博 *** Masahiro Ohta * イメージビジネスグループ イメージプロダクト事業部 ソフトウェア開発部 ** PFU ソフトウェア株式会社 ECM ソフトウェア統括部 第三開発部 *** イメージビジネスグループ イメージプロダクト事業部 第三技術部
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まえがき
iPad注1)や iPhone注1)に加え,Android注2)搭載製品
に代表される携帯情報端末での書類参照が身近となっ た.また,クラウドサービス利用者が急増していること から,書類を簡単に電子化するニーズはますます高まっ ている. パーソナルドキュメントスキャナ「ScanSnap(ス キャンスナップ)シリーズ」(以降,ScanSnap)は, そうしたニーズを受けて進化を続けており,オフィスや 家庭で活用シーンがますます広がっている. 本稿では,「ScanSnap S1300i」(以降,本製品) の開発の背景や狙い,製品概要,技術的な取り組みにつ いて述べる参1).
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製品化の背景と狙い
ScanSnap は,製品コンセプトを「簡単・スピーディ・ コンパクト」とするパーソナルドキュメントスキャナで ある.コンパクトなボディでありながら,書類をワンプッ シュで高速に電子化し,より有効に活用,管理できるオ注1) iPad,iPhone は,Apple Inc. の商標である.
注2) Android は,Google Inc. の登録商標または商標である.
パーソナルドキュメントスキャナ ScanSnap シリーズのうち 「ScanSnap S1300」 の後継となる新製品 「ScanSnap S1300i」 は,iPad や iPhone に加えて,お客様からの要望が高かった Android™ 搭載製品対応 を実現するとともに,電子化したデータをクラウドサービス等で活用しやすいよう機能を強化した.
Our new product, the "ScanSnap S1300i", which is a successor to the "ScanSnap S1300" personal document scanner ScanSnap series, now supports products with Android™, which many of our customers wanted, in addition to iPads and iPhones. The functions of the "ScanSnap S1300i" have been enhanced so that scanned data can easily be used with cloud services. フィスツールとして市場に受け入れられてきた. 2010 年より販売を開始した ScanSnap S1300 シリーズは,オフィス内だけでなく,外出先でも使え る携帯性を兼ね備え,オフィスユーザーだけでなく, パーソナルユーザーにも広く利用されている.今回, 「ScanSnap S1300」 の後継となる本製品は,お客様 の更なる利便性の向上を狙いとして,以下に取り組んだ. 1) スマートフォンやタブレット連携強化による利 用シーンの拡大 2) クラウドサービスへのアクセシビリティ向上 3) 基本性能向上による使い勝手の向上
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本製品概要と特長
3.1 概要 本製品は,ADF注3)を装備したイメージスキャナであ る.本製品の仕様を表 - 1に,外観を図 - 1に示す. 3.2 特長 本製品では,ScanSnap 本来の簡単に読み取りでき る自動化インテリジェント機能と合わせ,ソフトウェア◆表 - 1 ScanSnap S1300i 両面カラースキャナ仕様◆
OS 種別 Windows® ※1 Mac※2 OS
製品名 ScanSnap S1300i 読取方式 自動給紙方式(オートドキュメントフィーダ),両面同時読み取り 読取モード 片面/両面,カラー/グレー/白黒/自動(カラー,グレー,白黒の自動識別) 光学系/光源 CIS(コンタクトイメージセンサー× 2)/ RGB3 色 LED 光源 読取速度 (AC アダプ ター使用時) ノーマル カラー/グレー 150dpi,白黒 300dpi 相当:両面・片面 12 枚 / 分 ファイン カラー/グレー 200dpi,白黒 400dpi 相当:両面・片面 9 枚 / 分 スーパーファイン カラー/グレー 300dpi,白黒 600dpi 相当:両面・片面 6 枚 / 分 エクセレント カラー/グレー 600dpi,白黒 1,200dpi 相当:両面・片面 1 枚 / 分 読取速度 (USB バスパ ワー動作時) ノーマル カラー/グレー 150dpi,白黒 300dpi 相当:両面・片面 4 枚 / 分 ファイン カラー/グレー 200dpi,白黒 400dpi 相当:両面・片面 3 枚 / 分 スーパーファイン カラー/グレー 300dpi,白黒 600dpi 相当:両面・片面 2 枚 / 分 エクセレント カラー/グレー 600dpi,白黒 1,200dpi 相当:両面・片面 1 枚 / 分 読取範囲 標準モード サイズ自動検出,A4,A5,A6,B5,B6,はがき,名刺,レター,リーガル,カスタムサイズ(最 大:216 × 360mm,最小:50.8 × 50.8mm) 長尺読取 可(863mm まで) 原稿の厚さ 64 ~ 104.7g/m2(55 ~ 90kg/ 連) 原稿搭載枚数 最大 10 枚(A4:80g/m2) インターフェース USB2.0/USB1.1 電圧・電圧範囲 AC100V ± 10% または 5V(USB バス給電) 消費電力 AC アダプター使用時:9W 以下(スリープ時:2.6W 以下) USB バスパワー動作時:5W 以下(スリープ時:2W 以下) 動作環境 温度:5 ~ 35℃,湿度:20 ~ 80% 外形寸法 284mm(幅)× 99mm(奥行き)× 77mm(高さ) 質量 1.4kg 環境対応 グリーン購入法,国際エネルギースタープログラム,RoHS 指令準拠 マルチフィード検出 原稿長さ検出 ドライバ 独自(TWAIN,ISIS™ インターフェース非対応) 独自(TWAIN インターフェース非対応) 添付ソフト ウェア ドライバ ScanSnap Manager V5.1 ScanSnap Manager V3.2 PDF・JPEG ファイル整理・ 閲覧ソフトウェア ScanSnap Organizer V4.1 - 名刺管理ソフトウェア 名刺ファイリング OCR V3.1 CardMinder V1.1 OCR ソフトウェア ABBYY FineReader for ScanSnap™ 4.1(米 国 ABBYY 社製) - ECM 連携ソフトウェア Scan to Microsoft® ※ 1 SharePoint® ※ 1 3.4
(米国 knowledgeLake 社製)
- 家計簿ソフトウェア や さ し く 家 計 簿 エ ン ト リ ー for ScanSnap™
V1.0(メディアドライブ社製)
-
Evernote※3ソフトウェア Evernote for Windows 4.4 (Evernote 社製 ) Evernote for Mac 2.2 (Evernote社製) ※1 Windows,Microsoft,SharePoint は,米国 Microsoft Corporation の米国,日本およびその他における登録商標または商標である. ※2 Mac は,Apple Inc. の商標である.
とハードウェア両面からお客様が求める利用シーンの拡 大,使い勝手や操作性の向上を図った.ここでは,主な セールスポイントについて述べる. (1) Android 搭載スマートフォンやタブレットとの連 携を実現 Android 端末用アプリケーション(以降,アプリ) 「ScanSnap Connect Application」提供により,連
携できるスマートフォンやタブレットを拡大した. (2) 様 々 な ク ラ ウ ド サ ー ビ ス と 連 携 可 能 な 「ScanSnap Folder」を搭載 「ScanSnap Folder」は,ScanSnap をパソコン 内の一つのフォルダとして扱うことができる機能であ り,様々なクラウドサービスやアプリへダイレクトに読 み取ったデータを取り込むことを可能とした. (3) 読み取り速度の向上 使い勝手を大きく左右する読み取り速度を従来製品比 1.5倍の12枚/分(A4カラー,150dpi,ACアダプター 利用時)に高めた.
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開発での主なポイント
以下に 3 章の特長を実現している技術及び開発のポ イントについて述べる. 4.1 Android 端末との連携を実現ScanSnap Connect Application は,ScanSnap で読み取ったイメージデータを,ScanSnap が接続さ れたパソコンを操作することなく,Wi-Fi 経由で直接 スマートフォンやタブレットで受信し保存,管理できる iPad や iPhone 用アプリである. 今回新しく Android 端末用(Android OS 2.2 以 降対応)を開発した.これにより,iPad と iPhone だけでなく,Android 搭載のスマートフォンやタブ レットにおいても,ScanSnap で読み取ったイメージ データ(PDF 及び JPEG ファイル)をパソコンから Wi-Fi 経由で簡単に受け取り,持ち運べるようになった (図 - 2参照). (1) Android OS と iOS注4)の違い
Android 端末用開発にあたり,iPad や iPhone と 仕様の異なる点があるため,異なる点を十分考慮して開 発する必要があった.主な相違点は表 - 2のとおり. (2) Android 端末用開発における課題と対策 Android 端末用を開発するにあたり,課題とし て,「PDF ファイルの表示」,「キャッシュデータ」, 「Android OS 互換性」があったが,次に示す対応によ り,実現した. 1) PDF ファイルの表示対応 Android OS は,iOS と異なり,PDF ファイル の表示機能をサポートしていない.ScanSnap の最 大の特長である「簡単に PDF ファイル作成」への対 応が課題となった.表示機能をサポートすることに加 え,各出力(カラー/グレー/モノクロ)や各解像度 (150dpi ~ 1,200dpi)への対応や PDF 特有の機 能(パスワード付加/ OCR /タイムスタンプ等)に も対応する必要があった. 上記解決のため,一から PDF 解析機能を実装する のは困難のため,PDF 解析ライブラリから出力され るイメージファイルを,最適な画像サイズで展開する 機能を開発し,Android の限られたメモリ上での表 示を可能とした. 2) キャッシュデータへの対応 Android OSは,パソコンと同様に,フォルダ(デー タ保存領域)に他アプリがアクセスすることができる.
このため,ScanSnap Connect Application の 管理フォルダ内のイメージデータが,他アプリにより, 編集される可能性があるため,管理するイメージデー タと対となるキャッシュデータ(サムネイルやページ 情報など)との整合性を維持することが課題となった.
当課題は,ScanSnap Connect Application の 管理フォルダ内のファイルについて,更新されたかど
注4) iOS は,iPad や iPhone に搭載されている Apple 社製の独自 OS である.
◆図 - 1 本製品外観◆
マイズされており,様々な製品で検証や対応を行う必 要が生じている. 今回,文字フォントや,ボタンサイズを固定にせず, ディスプレイサイズに合わせて,変更させることによ り,ディスプレイサイズや,OS バージョンに依存し ないよう対応し,様々な製品での検証を行った. 4.2 様々なクラウドサービスやアプリと連携可能 な ScanSnap Folder 機能を搭載 (1) ScanSnap Folder の特長 ScanSnap では,読み取り後に連携するアプリを簡 単に選択することができるクイックメニュー機能を提 供しているが,全く新しい連携機能として ScanSnap Folder を 搭 載 し た.ScanSnap Folder を 利 用 す れ ば,Windows 上 で ScanSnap が 一 つ の フ ォ ル ダ(ScanSnap Folder)として位置づけられる. クラウドサービスやアプリのファイル選択画面より ScanSnap Folder を選択すると,読み取ったイメー ジデータを直接利用できる.予めパソコンにデータ保存 しておく必要がなく,一連の操作の中で準備できること を実現した. Web メールに書類を電子化データとして添付する 場合を例に,従来との操作手順の違いを以下に示す. 図 - 3,図 - 4はそれぞれの操作イメージである. 1) 従来の手順 ① Web メールを起動し,メール本文を入力する. ② ScanSnap に書類をセットし,読み取り実行し, データを保存する. ③ Web メールに切り替え,ファイルの添付ボタン をクリックする. ④ 添付するファイルを探して添付する. 2) ScanSnap Folder を使った場合の手順 ① Web メールを起動し,メール本文を入力後,ファ イルの添付ボタンをクリックし,フォルダの選択 画面から「ScanSnap Folder」を選択する. ② ScanSnap から読み取り実行する. ③ 読み取ったデータを添付する. 前記のように,メールに電子化データを添付する場 合,電子化データを作成する作業と,メール作成の作 業は,それぞれ独立した作業であった.ユーザーは, メール作成の作業を中断することになるため,どの データを添付するのか探すことに時間を取られたり, 誤ったファイルを添付したり,添付ファイルを忘れた りする要因となることがあった. ScanSnap Folder を使用することで,メール作 成作業の一連の操作で電子化データを取り込むことが 可能となるため,添付するデータを間違うことが少な くなり,効率良く作業できるようになる. 3) 様々なアプリとの連携 ScanSnap Folder はファイルを「開く」という OS の標準的なインターフェースに準拠している.新 うかチェックする機能を追加開発し,更新されていた 場合,再度ファイル情報を更新して登録するよう対応 し,解決した. 3) Android OS 互換性対応 Android OS は,搭載製品により,OS がカスタ
◆表 - 2 Android 端末と iPad 及び iPhone の仕様比較◆
端末種別 Android iPad,iPhone OS Android OS iOS 端末メーカー Samsung,Fujitsu, Panasonic,Sony, NEC,HTC など Apple※1 画面 480 × 800, 480 × 854, 600 × 1,024, 720 × 1,280, 1,024 × 600, 1,280 × 800 など 2,048 × 1,536 (9.7 インチ), 960 × 640 (3.5 インチ) 開発言語 Java※2 Objective-C 開発環境 Windows,Mac,Linux Mac アプリ公開 Google※3 Play App Store ※1 Apple は,Apple Inc. の商標である. ※2 Java は,Oracle Corporation 及びその子会社,関連会社 の米国及びその他の国における登録商標である. ※3 Google は,Google Inc. の登録商標または商標である. ◆図 - 2 本製品と ScanSnap Connect Application の連携 イメージ◆ (Fig.2- Linkages between the ScanSnap S1300i and ScanSnap Connect Application) スキャン 自動転送 ルータ Wi-Fi USB
たなクラウドサービスやアプリであっても,「開く」 という OS の標準的なインターフェースに準拠させ たものであれば,新たな連携機能の提供を待たなくて も ScanSnap Folder と連携が可能となる. (2) ScanSnap Folder 開発における課題と対策
ScanSnap Folder 開発にあたり,OS の仕様を踏 まえ,使い勝手やアクセシビリティ向上を目的に開発に 取り組んだ.課題として,「フォルダ選択の容易性考慮」, 「電子化データ保存期間の柔軟性考慮」,「ScanSnap Folder 機能使用者と不使用者」があったが,次に示す 対応により,実現した. 1) フォルダ選択の容易性対応 フォルダの選択画面から「ScanSnap Folder」 を選択する際,「ScanSnap Folder」がフォルダの どこに有るか一々探さねばならないのでは使い勝手 が悪い.そこで,「開く」ダイアログを表示したとき, ScanSnap Folder は,「コンピューター」(OS に よりマイコンピュータ)の下にいつも表示されるよう 工夫した. ま た, 選 択 し や す く す る た め,Windows Vista®注5)以降で導入された,「お気に入り」(OS に よりお気に入りリンク)にショートカットが入るよう 対応した. 2) 電子化データ保存期間への対応
ScanSnap Folder は,ScanSnap で読み取った 原稿のファイルを一時的に保存するフォルダである. 保存された電子化データが,いつまでも残ることで, ディスク資源を圧迫しないようにすることが必要であ る.そこで,保存した電子化データは,一定日数が経 過したら自動的に削除する機能を実装した. また,読み取り,保存した電子化データを連携する
注5) Windows Vista は,米国 Microsoft Corporation の米国,日 本およびその他における登録商標または商標である. ◆図 - 3 従来の手順◆ (Fig.3-Conventional procedure) Web メール メール作成 読み取りデータを保存 ファイルの添付 ファイルの選択 メールに添付 保存したファイルを 探す ① ② ③ ④ 読み取りデータを保存 ① ② ③ ファイルの選択 メールに添付 ファイルの添付 ScanSnap Folder を選択 コンピューター ◆図 - 4 ScanSnap Folder の手順◆ (Fig.4-Procedure using ScanSnap Folder)
アプリに引渡し後,即時削除する機能も実装した. これにより,共有パソコンで ScanSnap Folder を使用した場合,他人に電子化データが流出するリス クを下げられる. 3) ScanSnap Folder 機能使用者と不使用者への 対応
ScanSnap Folder は,ScanSnap Manager をインストールした後は,常に「コンピューター」(OS によってはマイコンピュータ)配下にアイコンが見え 続ける. ScanSnap Folder を利用しないユーザーへ配慮 し,ScanSnap Folder を無効化する機能を設定画 面に追加した.必要になったときに有効化することも できる. 実現にあたり,OS のシステム領域への登録や解除 を行う処理が必要となるが,これは設定画面のプロセ スの実行権限では実行できないため,プロセスの権限 を制御する対応により,実現した. 4.3 読み取り速度を 1.5 倍に向上 使い勝手を大きく左右する読み取り速度向上について は,ボトルネックであった画像処理回路の変更及び駆動 系の制御の見直しを行った. 課題として,EMI注6)への対応が必要となったが,プ リント基板の配線,シールド強化などの工夫により,最 小限の開発期間,コストで実現した.これにより,読み 取り速度向上と EMI 対策を両立させ,従来製品比 1.5 倍の 12 枚 / 分(A4 カラー,150dpi,AC アダプター 利用時)に高め,使い勝手の向上を可能とした.